売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E31946 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当第3四半期累計期間(2023年1月1日~2023年9月30日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行され、行動制限や海外からの入国制限の緩和等により社会経済活動は正常化が進みました。一方、ウクライナ情勢の長期化、資源・エネルギー価格の高止まり、欧米を中心としたインフレ抑制のための金融引締めの長期化、中国経済の内外需要の低迷など、世界経済の景気後退が懸念される状況となっております。わが国経済におきましても、急速な円安進行がインフレに拍車をかけ、物価上昇による景気の下振れが懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 

体外診断用医薬品業界におきましては、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症は、その後3年以上にわたり新たな変異株による感染拡大を繰り返すなかで、感染拡大防止を目的とした遺伝子検査や抗原検査等の検査需要が急激に高まりました。一方、インフルエンザをはじめとした既存の感染症は、新型コロナウイルス感染症に対する感染防御の効果の波及や受診控え等により、検査需要が減少するという影響を受けました。

現在主流のオミクロン変異株は、感染力は高いものの重症化リスクは低減しているといわれており、行動制限の段階的な緩和に伴い社会経済活動は正常化に向かいました。さらに本年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行され、新型コロナウイルス感染症と共生する社会へと大きくかじが切られました。この大きな社会環境の変化に伴い、過去3年程の間に免疫獲得の機会を十分に持てなかった様々な既存の感染症(インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルス等)が急激な増加傾向を示しました。また、新型コロナウイルス感染症につきましても、夏場の第9波は収束したものの、冬場に向けて再拡大の兆しが現れるのかどうかなど、感染症全般にわたり今後の動向を注視する必要があります。

 

このようななか、当社は、新型コロナウイルス検査薬(遺伝子検査キット及び抗原キット)をはじめ、5類移行後、現在も流行拡大が続くインフルエンザ検査薬や急激な増加傾向を示しているその他感染症項目の検査薬の増産に取り組み、安定供給の維持に尽力いたしました。他方では、クイックチェイサー Immuno ReaderⅡ等を用いる高感度検出キット(銀増幅イムノクロマト法)として、2023年1月に新型コロナウイルス抗原とインフルエンザウイルス抗原を同時に検出する「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2/Flu」を発売するなど、クイックチェイサー Auto シリーズの検査項目の拡充を図りました。また、遺伝子POCT検査機器試薬システムにつきましては、スマートジーンシリーズの新たな検査項目の開発に注力するとともに、次世代の遺伝子POCT検査装置として、測定時間のさらなる迅速化や遺伝子マルチ検査システムの開発にも取り組んでおります。

 

このような環境下におきまして、当第3四半期累計期間の売上高は、79億90百万円(前年同期比39.8%減)となりました。

当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントでありますが、市場分野別の売上高は、以下のとおりであります。

病院・開業医分野におきましては、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の位置づけの5類移行という大きな環境の変化に伴い、遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」の出荷数は、約56万テスト(前年同期は第6波及び第7波拡大の影響により169万テスト)となりました。一方、新型コロナウイルス抗原キット(銀増幅イムノクロマト法による抗原キット含む)は、第9波及びインフルエンザの同時流行を背景として、主に新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス抗原同時検出キットの需要が急増し、出荷数は約304万テスト(前年同期は過去最大の第7波の影響により335万テスト)となり、新型コロナウイルス検査薬全体の売上高は、57億78百万円(前年同期比51.0%減)となりました。

インフルエンザ検査薬につきましては、異例の夏場の流行以降も拡大が継続しており、インフルエンザ単独検査薬全体の売上高は、4億58百万円(前年同期比111.0%増)となりました。

 

その他感染症項目の検査薬につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により長らく需要が低迷しておりましたが、5類移行という社会環境の変化に伴い、多くのその他の感染症が急増しており、RSウイルス/ヒトメタニューモウイルスをはじめ、アデノウイルス(咽頭結膜熱)、A群β溶血連鎖球菌(Strep A)、ノロウイルス及びアデノ眼(流行性角結膜炎)など、ほぼ全ての項目において前年同期比で増収となりました。「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」につきましては、当第3四半期累計期間は約200台を出荷し、累計販売台数は約5,200台となりました。これらの結果、その他感染症項目の検査薬を含むその他の検査薬及び機器全体の売上高は、その他感染症項目の大幅な需要回復に伴い、14億96百万円(前年同期比46.6%増)となりました。

以上により、病院・開業医分野全体の売上高は、77億32百万円(前年同期比40.7%減)となりました。

 

OTC・その他分野におきましては、妊娠検査薬及び排卵日検査薬は、新型コロナウイルス感染症の影響から脱しつつあり、OTC・その他分野全体の売上高は、2億57百万円(前年同期比4.9%増)となりました。

 

利益面につきましては、主に新型コロナウイルス遺伝子検査キットの減収や、これに伴う売上構成比の変化による売上原価率の上昇により、営業利益は37億89百万円(前年同期比56.4%減)となりました。なお、外国為替相場の急激な変動に伴い、為替差益1億68百万円を営業外収益に計上しております。これは主に当社が保有する外貨建資産を期末為替レートで換算したことにより発生したものであります。これらの結果、経常利益は39億95百万円(前年同期比54.5%減)、四半期純利益は28億27百万円(前年同期比53.9%減)となりました。

 

インフルエンザ検査薬は、過去7年(2013年~2019年)ほどにわたり、当社の売上高の約50%を占める主力製品でありましたが、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、インフルエンザの流行は世界的に著しく低い水準に抑えられ、2020年よりインフルエンザ検査薬の売上高は大幅に減少しております。

一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、遺伝子検査の需要が急激に高まるなか、2020年より発売を開始した遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」の売上高が急激に増加しました。また、5類移行後は各種抗原キットの需要も高まり、新型コロナウイルス検査薬全体の売上高が大幅に増加しております。結果として、2020年以降はインフルエンザ検査薬への依存度が低下し、新型コロナウイルス検査薬への依存度が高まる状況となっております。

今後につきましては、新型コロナウイルス検査薬は、感染拡大の動向や医療・検査体制の変化などによって、本検査薬の需要や売上高は大きく左右される可能性があります。また、3年ぶりに流行入りしたインフルエンザは異例の夏場の流行以降も冬場に向けてさらに拡大傾向が継続しており、これらの事業環境の変化に伴い特定製品への依存度がさらに変化する可能性があります。

当事業年度(第47期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益は、以下のとおりであります。

 

第47期(2023年12月期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益

 

 (単位:百万円)

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第47期 合計

売上高

2,391

2,183

3,414

7,990

 内 新型コロナウイルス検査薬

1,829

1,354

2,594

5,778

 内 インフルエンザ検査薬

147

116

194

458

営業利益

1,027

875

1,885

3,789

 

 

(ご参考) 直近2事業年度の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益

 

第46期(2022年12月期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益

 

(単位:百万円)

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第46期 合計

売上高

4,188

3,125

5,967

4,300

17,581

 内 新型コロナウイルス検査薬

3,684

2,730

5,383

3,381

15,179

 内 インフルエンザ検査薬

107

30

78

198

416

営業利益

2,743

1,832

4,120

2,407

11,104

 

 

 

第45期(2021年12月期)

 

(単位:百万円)

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第45期 合計

売上高

2,443

3,910

4,222

2,561

13,137

 内 新型コロナウイルス検査薬

1,557

3,118

3,303

1,815

9,794

 内 インフルエンザ検査薬(注)3

38

37

56

106

239

営業利益

877

2,246

2,544

1,029

6,698

 

(注)1.新型コロナウイルス検査薬には、「スマートジーン SARS-CoV-2」、「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2」、「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2/Flu」、富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬、「クイックチェイサー SARS-CoV-2」及び「クイックチェイサー SARS-CoV-2/Flu(Flu A,B)」が含まれております。

2.インフルエンザ検査薬には、「クイックチェイサー Flu A,B」、「クイックチェイサー Auto Flu A,B」、富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬及び「スマートジーン Flu A,B」が含まれております。

3.返品分を除いた金額を記載しております。

 

当第3四半期会計期間末の財政状態につきましては、以下のとおりであります。

当第3四半期会計期間末における資産の残高は、前事業年度末に比べ13億77百万円減少し、177億24百万円となりました。これは主に、棚卸資産の増加2億37百万円、現金及び預金の増加2億23百万円及び有形固定資産のその他に含まれている機械及び装置の増加1億28百万円があったものの、売掛金の減少15億15百万円及び電子記録債権の減少3億17百万円があったことによるものであります。

当第3四半期会計期間末における負債の残高は、前事業年度末に比べ18億23百万円減少し、29億95百万円となりました。これは主に、賞与引当金の増加1億24百万円があったものの、未払法人税等の減少16億31百万円、電子記録債務の減少1億24百万円、買掛金の減少1億14百万円があったことによるものであります。

当第3四半期会計期間末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ4億46百万円増加し、147億29百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加4億46百万円によるものであります。

 

(2) 事業上及び財務上の対処すべき課題

当第3四半期累計期間において、当社の事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。

 

(3) 研究開発活動

当第3四半期累計期間における研究開発活動の総額は4億76百万円であります。

なお、当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

当第3四半期累計期間において、生産実績及び販売実績が著しく減少しております。これにつきましては、「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。