売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E32854 IFRS


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。

 

(1)経営成績の状況

 当社グループは、眼科領域に特化しグローバルに医療用医薬品、医療機器の研究開発を行う眼科医療ソリューション・カンパニーです。

 当第3四半期連結累計期間における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の新規感染者が抑えられてきたことによる経済の持ち直しが期待されておりましたが、いまだ予断を許さない状況が継続していることに加え、ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー問題等による原材料や輸送コストの高騰、急激な為替変動等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような市場環境のもと、当社グループは以下のとおり研究開発を進めました。

 

[医療機器]

(ウェアラブル近視デバイス(Kubota Glass))

 当社グループが開発中のクボタメガネ・テクノロジーは、網膜に人工的な光刺激を与えて近視の進行の抑制、治療を目指す当社独自のアクティブスティミュレーション技術です。2020年に、米国子会社のクボタビジョン・インクが、被験者12名に対し、クボタメガネ・テクノロジーを用いた試作機である卓上デバイスにて眼軸に与える影響を検証した結果、対照眼と比較し眼軸長の短縮を確認しました。次いで、同技術を用いたウェアラブルデバイスでも、18歳から35歳の25名の近視傾向のある被験者に対しても同様の効果検証が完了しました。また、クボタメガネ・テクノロジーを用いた卓上デバイスにて、成人患者に対し、4ヶ月間、週3〜5回、1日1.5時間の光刺激(近視性デフォーカス)を与え、対照眼と比較した臨床試験では、年間換算で近視の進行を等価球面度数で見た場合、平均101%抑制し、眼軸長の伸展の38%の減少が見られました。通常、眼軸長は、年齢と共に伸びる、若しくは成長が止まるものであり、人工的な光により眼軸長が対照眼と比較して短くなるということは、世界でも前例がありません。当社では、このテクノロジーをスマートメガネ、スマートコンタクトレンズに応用し、メガネのいらない世界の実現に向けて開発を推進しております。2021年には、台湾における医療機器の製造許可取得及び医療機器のデザイン・開発会社として「ISO 13485:2016」の認証を取得しました。また2022年には、米国FDAでの医療機器登録の完了及び、ソフトローンチとして、米国及び日本の一部眼科医院で販売を開始、2022年12月に初の直営店となる「Kubota Glass Store」を東京にオープンしました。現在、販売拡大に向けた準備を進めるとともに、より多くのエビデンスを得るための臨床試験等を継続しております。今後は日本におけるマーケティング活動の強化に加え、他社とのコラボレーションを積極的に行うことで事業成長につなげていく方針です。

 

(在宅・遠隔医療モニタリング機器)

 当社が開発する超小型モバイルOCT(光干渉断層計)のPBOSは、眼科において網膜の状態の検査に用いられるOCTの超小型モデルのことで、モバイルヘルスを含む在宅・遠隔医療分野での需要を見据えた在宅眼科医療機器ソリューションです。ウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の網膜浮腫による網膜疾患患者が自宅にて患者自身で網膜の状態を測定することを可能にする検査デバイスです。インターネットを介して、網膜の構造や視力の変化といった病状の経過を、医師が遠隔で診断できるシステムを確立することにより、個別の患者に適した眼科治療を実現し、視力の維持向上を目指します。2023年1月より、ハーバード大学医学部付属ジョスリン糖尿病センターで、糖尿病網膜症患者のスクリーニング装置として実用可能であるかの評価、及び、市販のOCT装置と比較する臨床試験を実施しております。今後も理想的な実用モデルを検証しつつ、パートナー企業との共同開発、商業化の可能性を模索しております。

 

[低分子化合物]

 エミクススタト塩酸塩については、スターガルト病を対象とする第3相臨床試験として、2018年11月には最初の被験者登録を、最終的には194名の被験者登録を完了し、当第3相臨床試験は終了しました。当該臨床研究のデータベースの集計及び分析の結果、主要評価項目及び副次的評価項目を達成せず、治療群間の有意差も示されませんでした。主要評価項目である黄斑萎縮の進行率は、エミクススタト投与群で1.280mm2/年、プラセボ投与群で1.309mm2/年でした(p=0.8091)。但し、エミクススタトの忍容性は良好で、先行研究と同様の安全性プロファイルが示されております。

 その後の更なる分析の結果、ベースライン時の萎縮病巣面積がより小さい被験者グループでのプラセボ投与群と比較したところ、エミクススタト投与群の萎縮病巣の進行率が有意に低いことが示唆され、それを検証するべく、サブグループ解析を実施しました。ベースライン時の萎縮病巣領域が小さい被験者グループに対して変数減少法による単変量と多変量分析を行い、このサブグループにおける萎縮病巣の進行に影響する独立したベースラインの因子を特定しました。この解析の結果、エミクススタト投与群の24カ月目の黄斑萎縮の進行率が、プラセボ投与群に比べ40.8%抑制されました(p=0.0206、エミクススタト投与群 n=34、プラセボ群 n=21)。上記の結果を受けて、当社は、引き続き共同開発パートナーを探す等の活動を継続するとともに、エミクススタトの今後の計画について改めて検討してまいります。

 

 当第3四半期連結累計期間の事業収益は31百万円(前年同四半期比965.5%増)、売上原価は10百万円(前年同四半期比263.6%増)となりました。研究開発費、販売費及び一般管理費については以下のとおりです。

 

(研究開発費)

 当第3四半期連結累計期間の研究開発費は、前年同四半期と比較して722百万円減少(前年同四半期比△55.3%)し、584百万円となりました。これは、エミクススタト塩酸塩及び、ウェアラブル近視デバイスの開発費用が減少したことが主な要因です。

 

 

 

 

(単位:%を除き、千円)

 

前第3四半期

当第3四半期

増減額

増減率(%)

研究開発費

1,305,802

583,655

△722,147

△55.3

 

(販売費及び一般管理費)

 当第3四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、前年同四半期と比較して46百万円増加(前年同四半期比11.0%)し、468百万円となりました。これは前年同四半期と比較して特許関連費用が増加したことが主な要因です。

 

 

 

 

(単位:%を除き、千円)

 

前第3四半期

当第3四半期

増減額

増減率(%)

販売費及び一般管理費

421,391

467,876

46,484

11.0

 

(2)財政状態の分析

(流動資産)

 当第3四半期連結会計期間末の流動資産は、前連結会計年度末と比べて910百万円減少し3,272百万円となりました。これは、現金及び現金同等物が減少したことが主な要因です。

 

(非流動資産)

 当第3四半期連結会計期間末の非流動資産は、前連結会計年度末と比べて0百万円増加し238百万円となりました。これは、その他の非流動資産が減少した一方、有形固定資産が増加したことが主な要因です。

 

(流動負債)

 当第3四半期連結会計期間末の流動負債は、前連結会計年度末と比べて97百万円減少し264百万円となりました。これは、未払債務、及び未払報酬が減少したことが主な要因です。

 

(非流動負債)

 当第3四半期連結会計期間末の非流動負債は、前連結会計年度末と比べて2百万円減少し108百万円となりました。これは、リース負債が減少したことが要因です。

 

(資本)

 当第3四半期連結会計期間末の資本は、前連結会計年度末と比べて811百万円減少し3,139百万円となりました。これは、四半期損失の計上により繰越損失(利益剰余金のマイナス)が拡大したことが主な要因です。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 現金及び現金同等物は、取得日後3ヶ月以内に満期が到来する短期の流動性の高いすべての投資を含み、現金同等物はマネー・マーケット・ファンドで構成されております。取得日現在の満期が3ヶ月から1年の間である投資は、短期投資に分類されます。

 当社グループが保有する現金、現金同等物及び短期・長期の金融商品は、前第3四半期連結会計期間末及び当第3四半期連結会計期間末において、それぞれ4,373百万円及び3,131百万円でありました。第三者金融機関への預金額は、連邦預金保険公社及び証券投資家保護公社の適用ある保証上限を超える可能性があります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 前第3四半期連結累計期間及び当第3四半期連結累計期間における営業活動に使用した現金及び現金同等物(以下、資金)は、それぞれ1,679百万円及び1,048百万円となりました。使用した資金が631百万円減少した主な要因は、前第3四半期連結累計期間に比べ、当第3四半期連結累計期間は研究開発及び一般管理費等の支払いに関する資金が減少したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 前第3四半期連結累計期間における投資活動により得られた資金は566百万円、当第3四半期連結累計期間に使用した資金は21百万円となりました。これは、前第3四半期連結累計期間は、その他の金融資産の満期償還による収入があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 前第3四半期連結累計期間及び当第3四半期連結累計期間における財務活動により得られた資金は、それぞれ1,161百万円及び111百万円となりました。得られた資金が1,050百万円減少した主な要因は、前第3四半期連結累計期間に比べ、当第3四半期連結累計期間は新株予約権の権利行使に伴う普通株式の発行による収入が減少したことによるものです。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当第3四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

 前第3四半期連結累計期間及び当第3四半期連結累計期間における研究開発費の総額は、それぞれ1,306百万円及び584百万円となりました。

 なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。研究開発費の詳細は、「(1)経営成績の状況 (研究開発費)」をご参照ください。