売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E37069 


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当第3四半期報告書提出日時点において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

(経営成績)

当第3四半期累計期間(2023年3月1日~2023年11月30日)におけるわが国経済は、経済活動の正常化が一段と進み、個人消費やインバウンド需要の持ち直しが見られる一方、長期化する地政学的リスクを背景とした資源・原材料価格の高騰にともなう物価上昇、及び日銀の金融政策修正によるインフレ率の上振れや、長期金利の上昇が想定され依然として先行きが不透明な状況が続いております。

このような状況の下、当第3四半期累計期間において、当社は従来にないメカニズムに基づく独自の医薬品を開発して上市につなげることを目指し、以下のとおり事業活動を進めてまいりました。

 

① TMS-007関連の活動

2021年5月にBiogen MA Inc.(以下「バイオジェン社」という。)へ導出した急性期脳梗塞を適応症とするTMS-007(BIIB131)については、バイオジェン社において2023年上半期に後期第Ⅱ相臨床試験を開始する計画

にて開発が進められ、2023年3月10日にClinicalTrials.govに当該試験の概要が登録されました(予想開始時

期2023年4月17日)が、バイオジェン社は、2023年4月25日の2023年第1四半期決算発表において、TMS-007(BIIB131)の後期第Ⅱ相臨床試験の開始を一時停止し、当該臨床試験を開始すべきかどうかを再評価すると発表しました。

その後、バイオジェン社から、当社とバイオジェン社が2018年に締結したオプション契約(以下「オプション契約」という。)の契約上の地位を、Ji Xing Pharmaceuticals, Limited(ケイマン諸島、以下「JIXING」という。)の100%子会社であるJi Xing Pharmaceuticals(Hong Kong)Limited(香港、以下「JIXING HK」という。)に対して譲渡することを検討しているとの連絡があり、2024年1月11日に譲渡が行われました。これに並行して、当社はJIXING及びJIXINGの株式を80%以上所有する米国ニューヨーク所在の投資会社RTW Investments, LP(以下「RTW」という。)と協議に入り、上記のバイオジェン社からJIXINGへのオプション契約の譲渡と同時に、オプション契約の変更を含む一連の契約を締結し、JIXING及びRTWとの間で提携関係(以下「本提携」という。)を結びました。本提携の概要は以下のとおりです。

 

[本提携(資本業務提携)の内容]

本提携は、A) JIXING HKがオプション契約における契約上の地位をバイオジェンから引き継ぎ、同時にオプション契約の内容を修正すること(当社によるJIXING株式の取得を含む)、B) 当社がJIXING HKから同社のパイプラインであるJX09の日本における開発販売権を無償で獲得すること、C) RTWが運用するファンドが当社の株式を取得すること、から構成されています。

 

A) オプション契約

・JIXING HKは、バイオジェンから本オプション契約の地位を引き継ぎ、TMS-007及びTMS-008を含むSMTP化合物の全世界における知的財産権を取得します。

・当社は、バイオジェンより権利を引き継いだJIXING HKから、日本におけるTMS-007の開発販売権を無償で取得し、またTMS-008を含むグラントバック化合物の特定の適応における開発販売権を無償で取得します。

・当社は、アップフロントとしてJIXINGの普通株式500万ドル相当(持分比率0.87%相当(潜在株式等を考慮した割合))を無償で取得します。

・当社とJIXING HKは、Joint Development and Commercialization Committeeを設置し、TMS-007の開発について定期的に情報交換と協議を実施します。

・当社は、JIXING HKによるTMS-007の開発・商業化の進捗に応じて以下の対価を受領する可能性があります。

a.開発マイルストーンとして最大総額1,250万ドル

b.販売マイルストーンとして最大総額3億5,500万ドル

c.日本を除く地域のTMS-007販売高に対して一桁後半~10%台前半の段階的料率を乗じたロイヤリティ

なお、TMS-007の具体的な開発方針は、今後JIXING HKにて検討されます。

・JIXINGは、TMS-007のグローバル開発の一環として当社が日本でおこなう開発費の75%を、1,000万ドルを上限として負担します。

B) JX09の日本における開発販売権の無償ライセンス

・当社は、JIXING HKからJX09の日本におけるロイヤリティ・フリーの独占的なライセンスを取得し、JIXINGは、JX09のグローバル開発の一環として当社が日本でおこなう開発費の75%を、500万ドルを上限として負担することを内容とした、拘束力のある基本合意を締結しています。

・今後正式な契約の締結に向けて、当該基本合意に基づく詳細の詰めの協議を行います。

・JX09は、治療抵抗性又は制御不能な高血圧患者さんの治療を適応としてJIXINGが開発中の、経口の低分子アルドステロン合成阻害剤であり、2024年前半に第Ⅰ相臨床試験が開始される予定です。JX09は、非臨床試験において優れたアルドステロン合成阻害活性及び良好な安全性プロファイルを示し、ベスト・イン・クラスの治療薬となる可能性があります。

C) RTWによる当社株式の取得

・RTWが運用する割当予定先となるファンドは、当社が発行する株式を、1株当り株価187円、総額6億8,432万円で取得します。当該株価は、本株式の発行に係る取締役会決議の前営業日(2024年1月10日)までの直近5取引日間における当社普通株式の普通取引の売買高加重平均価格(VWAP)で決定されました。

・RTWは、2019年にJIXINGを設立し、その後の複数の追加投資ラウンドを主導しており、現時点においてJIXINGの80%以上の株式を運用するファンドを通じて所有しています。

・RTWは、ヘルスケア業界に特化した世界的に有力な投資家であり、2023年9月30日時点において約54億 ドルの運用資産を有しています。

 

② TMS-008関連の活動

急性腎障害及びがん悪液質を適応症と想定し開発を進めているTMS-008については、第Ⅰ相臨床試験に向けたCMC(Chemistry, Manufacturing, and Control)面における準備活動、及びGLP(Good Laboratory Practice)に基づく安全性試験を継続実施いたしました。臨床試験用原薬については、製造を完了し、製剤製造を進めています。承認申請関係においては、2023年11月に2回目の当局(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)と事前面談を行い、今後、3回目の事前面談後、対面助言に臨む段取りを整えています。治験実施体制に関しては、CRO(Contract Research Organization)、治験実施施設及び検査測定委託会社の選定も完了しました。また、当開発にかかる日本での特許が2023年9月に、中国での特許が12月に成立し、順次主要各国において審査される予定です。当該特許について当社はバイオジェン社より無償使用許諾を受けています。かかる無償許諾は、当該特許がバイオジェン社からJIXING HKに譲渡された後も、無継続して受けられることとなります。

TMS-008のバックアップとして位置づけているTMS-009については、現在、具体的な製造方法の検討を進めております。

 

③ パイプラインの拡充に関する活動

当社は、引き続き、社内プログラム及び社外プログラムの2つの軸において、パイプラインの拡充を図るための研究開発活動を積極的に推進しました。社内プログラムにおいては、当社がこれまでSMTP化合物の研究開発によって培った可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害に関する知識と経験を活かし、AIを活用した化合物生成による創薬の最適化や天然物ライブラリーのスクリーニングを含む複数のアプローチを活用し、新たなsEH阻害剤の候補となる化合物の探索を推進しました。社外プログラムにおいては、アカデミア等の研究機関や創薬企業等の早期研究開発段階にあるプログラムの探索及び評価を継続しました。2023年5月8日に、北海道大学との間で独占的評価及び実施許諾に関するオプション契約を締結した医薬品候補物質については、独占評価期間の第1期を終え第2期に進めています。また更に金沢大学を含めた三者共同研究契約を締結しました。他に、2022年7月に同大学とオプション契約を締結して評価を行ってきたプロジェクトについては、評価を完了し、得られた結果を受け次のステップに関する協議を行っています。2023年4月に東京農工大学に開設した共同研究講座(以下項目④参照)においては、大学との連携を活用して新たなパイプライン候補の育成を進めています。

 

④ 研究開発体制の強化

当社の共同創業者であり取締役会長の蓮見惠司は、2023年3月31日をもちまして東京農工大学教授を定年退職し、4月1日より当社の常勤取締役として、研究分野を主導することとなりました。これを受けて、当社は、より強力な研究開発体制による事業の推進を目的に、取締役1名が研究開発全体を担うこれまでの体制から、2名の取締役が研究と開発のそれぞれの分野を担当する体制に変更いたしました。

また、当社は、研究開発機能の向上を図るべく2023年4月に東京農工大学に共同研究講座を開設いたしました。

 

新担当職務

氏 名

役 職

旧担当職務

研究担当

蓮見 惠司

取締役会長

-

開発担当

稲村 典昭

取締役

研究開発担当

 

以上の活動の結果、当第3四半期累計期間における営業費用は、TMS-008の開発費をはじめとする研究開発費として364,393千円、その他の販売費及び一般管理費として202,112千円となったことから、合計では566,505千円となりました。

これらの結果、営業損失は566,505千円、(前年同四半期は営業損失412,616千円)、経常損失は563,602千円(前年同四半期は経常損失753,942千円)、四半期純損失は564,315千円(前年同四半期は四半期純損失753,159千円)となりました。

なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績については記載を省略しております。

 

  (財政状態)

(資産)

当第3四半期会計期間末の資産合計は、前事業年度末に比べ560,377千円減少し、3,229,837千円となりました。

これは主に、営業費用の支出により、現金及び預金が522,134千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

当第3四半期会計期間末の負債合計は、前事業年度末に比べ6,391千円減少し、69,769千円となりました。

これは主に、支払報酬料等の計上により未払費用が17,137千円増加した一方で、外注費及び事業税の支出により

未払金が14,223千円、未払法人税等が13,674千円それぞれ減少したことによるものであります。

 

(純資産)

当第3四半期会計期間末の純資産は、前事業年度末に比べ553,986千円減少し、3,160,067千円となりました。

これは主に、四半期純損失564,315千円を計上したことに伴う利益剰余金の減少によるものであります。

 

(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(3)経営方針・経営戦略等

当第3四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はあり ません。

 

(5)研究開発活動

当第3四半期累計期間における研究開発費の総額は364,393千円であります。

 なお、当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(6)経営成績に重要な影響を与える要因

当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 1 事業等のリスク」を参照ください。

 

(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または増資により資金調達しております。当第3四半期累計期間中に、重要な資金調達は行っておりません。