売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E37069 


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

(経営成績)

当社は、前事業年度に臨床パイプラインが1本から3本に増加いたしました。当第1四半期累計期間(2024年3月1日~2024年5月31日)においては、パイプラインの着実な開発進展と、社内・社外両方のソースによるパイプラインの更なる拡大に取り組んでまいりました。

各パイプラインの概況は次のとおりです。

 

①TMS-007関連の活動

急性期脳梗塞を適応症とするTMS-007(JX10)は、SMTP化合物ファミリーの中でもプラスミノーゲンを介した血栓溶解による血流再開と、sEH阻害を機序とした抗炎症の両方のメカニズムを併せ持っており、単剤で「血流再開」と「抗炎症」の両方の治療戦略に対応することが可能な薬剤候補です。「血流再開」と「抗炎症」の効果を併せ持った化合物はほとんど知られていないことなどから、他の薬剤及び薬剤候補物質に対する優位性があると考えられます。

当社が日本国内で実施した前期第Ⅱ相臨床試験において、TMS-007は良好な結果を得ております。既存薬(t-PA)の投与可能時間が発症後4.5時間以内であるのに対し、発症後12時間以内(TMS-007群の平均9.5時間)の被験者を組み入れました。その中で安全性においては、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)4以上の悪化を伴う症候性頭蓋内出血の症例がTMS-007群では報告されず(プラセボ群における発症率2.6%)、有効性においては、生活自立度を評価するモディファイド・ランキン・スケール(mRS)のスコアのゼロ又は1への転帰率において、TMS-007は統計的な有意差を伴う有効性を示し、急性期脳梗塞のゴールド・スタンダード・エンドポイントを達成しております。

なお、現在当社は、TMS-007の日本における独占的な開発販売権と、Ji Xing Pharmaceuticals (Hong Kong) Limited(以下「JIXING」)から、日本を除く全世界における開発・販売に対するマイルストーン一時金及びロイヤリティを受領する権利を有しています。当第1四半期においては、JIXINGを主体として実施されている、次相臨床試験開始準備に協力してまいりました。

なお、SMTP化合物関連の特許として、「脳出血を治療又は予防するための薬剤及び該薬剤を用いて脳出血を治療又は予防する方法」についての特許が、2024年5月に日本で成立しました(米国では2021年5月に特許成立)。

 

②JX09関連の活動

JX09は、治療抵抗性又はコントロール不良の高血圧患者さんの治療を適応とした、経口の低分子アルドステロン合成阻害剤です。アルドステロン合成酵素阻害剤においては、アルドステロン合成酵素であるCYP11B2のみを選択的に阻害し、類似した構造を持つCYP11B1(コルチゾール合成酵素)を阻害しないことが重要と考えられていますが、JX09はCYP11B2に対する高い選択性を示しており、ベスト・イン・クラスの可能性があると考えられます。

JX09について、当社は、JIXINGより日本における独占的な開発販売権を許諾されています。現在、JIXINGによりオーストラリアにおいて第Ⅰ相臨床試験が実施されており、当社は、今後日本での臨床試験を実施することにより、グローバル治験の一翼を担う計画を検討しています。

 

③TMS-008関連の活動

急性腎障害及びがん悪液質を適応症と想定し開発を進めているTMS-008については、血栓溶解作用をほとんど持たず、sEH阻害による抗炎症作用を有するSMTP化合物です。炎症性疾患を標的として広範な適応症が期待できると考えられます。

当社は、JIXINGよりTMS-008における特定の適応に関して、全世界における独占的な開発販売権の許諾を得ています。

当第1四半期累計期間においては、当社は第Ⅰ相臨床試験の投与開始に向けた準備を進めました。本治験は、TMS-008のFirst in Human試験として、薬物動態・薬物力学・安全性等を評価する目的で、健康な成人男性を対象としてTMS-008を漸増的に投与するものです。なお、当第1四半期累計期間終了後に、1例目の投与が完了しております。

 

④パイプラインの拡充に関する活動

当社は、当第1四半期累計期間において、社内プログラム及び社外プログラムの2つの軸において、パイプラインの拡充を図るための研究開発活動を積極的に推進しました。

社内プログラムにおいては、当社がこれまでSMTP化合物の研究開発によって培った可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害に関する知識と経験を活かし、AIを活用した化合物生成による創薬の最適化や天然物ライブラリーのスクリーニングを含む複数のアプローチを活用し、新たなsEH阻害剤の候補となる化合物の探索を行いました。その中から有望な候補化合物を取得し、当該化合物の評価を進めました。また、TMS-008の開発対象となる適応の追加についても検討を進めました。社外プログラムにおいては、アカデミア等の研究機関や創薬企業等の早期研究開発段階にあるプログラムの探索及び評価を継続しました。独占評価を実施中の北海道大学の2件のシーズについては、様々な観点からの評価活動を着実に実施しました。なお、このうち、2022年7月に同大学とオプション契約を締結して評価を行ってきたシーズについては、当第1四半期累計期間終了後の2024年7月3日にライセンス契約を締結し、脊髄損傷治療薬候補(TMS-010)として、当社は全世界における独占的ライセンスを取得しました。

 

以上の活動の結果、当第1四半期累計期間における営業費用は、TMS-008をはじめとする研究開発費として154,173千円を、その他の販売費及び一般管理費として69,077千円を計上したことから、合計では223,250千円となりました。

これらの結果、営業損失は223,250千円(前年同四半期は営業損失151,762千円)、経常損失は223,808千円(前年同四半期は経常損失148,619千円)、四半期純損失は247,670千円(前年同四半期は四半期純損失148,856千円)となりました。

なお、当社は医療品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績については記載を省略しております。

 

  (財政状態)

(資産)

当第1四半期会計期間末の資産合計は、前事業年度末に比べ228,493千円減少し、3,326,260千円となりました。

これは主に、営業費用等の支出により、現金及び預金が190,597千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

当第1四半期会計期間末の負債合計は、前事業年度末に比べ15,526千円増加し、113,216千円となりました。

これは主に、研究開発費の増加に伴い委託先等への未払金が17,014千円増加したことよるものであります。

 

(純資産)

当第1四半期会計期間末の純資産は、前事業年度末に比べ244,020千円減少し、3,213,044千円となりました。

これは主に、四半期純損失247,670千円を計上したことに伴う利益剰余金の減少によるものであります。

 

(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(3)経営方針・経営戦略等

当第1四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第1四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はあり ません。

 

(5)研究開発活動

当第1四半期累計期間における研究開発費の総額は154,173千円であります。

 なお、当第1四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(6)経営成績に重要な影響を与える要因

当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 1 事業等のリスク」を参照ください。

 

(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または増資により資金調達しております。当第1四半期累計期間中に、重要な資金調達は行っておりません。