E00990 Japan GAAP
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(注) 1 コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。
2 EBITDAは、コア営業利益に、減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)を加算しています。
3 売上高における実質増減率は、為替影響、当第3四半期連結累計期間・前第3四半期連結累計期間におけるすべての事業譲渡影響および譲渡に係る移行期間中のサービス提供に関わる影響(以下「事業譲渡影響」という。)を除いて計算しています。
当第3四半期連結累計期間(2023年1月1日~2023年9月30日)は、ウクライナ情勢の長期化や物価上昇等に伴う先行き不透明感が継続した一方で、個人消費は緩やかな回復が続きました。
国内化粧品市場は、生活費の高騰に伴う節約志向が高まる一方で、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行したことを受けた経済の回復や外出機会の増加に加え、訪日外国人旅行者数の回復に伴うインバウンド消費の増加により、回復しました。海外化粧品市場の動向は地域ごとにばらつきが見られました。中国では、前年の上海を中心としたロックダウンの反動影響もあり上期は堅調に成長しましたが、第3四半期には景況感の悪化により不透明な市場環境となりました。また、韓国・中国海南島の免税市場では、規制強化に伴う流通在庫調整等により厳しい環境が継続しました。一方、欧米化粧品市場は全カテゴリーで力強く成長しました。
当社グループは、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、環境問題やダイバーシティ&インクルージョンの実現といった社会課題の解決に向けたイノベーションに積極的に取り組み、2030年のビジョン「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指しています。
当社は2021年にコロナ禍の難局に対応する中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を策定し、スキンビューティー領域への注力や事業ポートフォリオの再構築、欧米事業を中心とした収益性改善など、より収益性とキャッシュ・フローを重視した経営を目指した抜本的な改革を進めてきました。
そして、本格的な市場回復が期待される2023年より、新たな中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」をスタートさせました。ブランド、イノベーション、人財という重点領域への投資強化や付加価値型経営モデルの確立を通じ、2025年までにコア営業利益率12%、2027年までに15%の達成を目指します。新中期経営戦略の1年目となる当連結会計年度は、各地域でシェア拡大・市場伸長を上回る売上成長を実現すべく、戦略的マーケティング投資によるブランド価値の強化に取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間の売上高は前年比5.3%減の7,224億円、現地通貨ベースでは前年比8.9%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは5.0%増となりました。実質ベースの売上高は、規制強化、旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰・市場正常化の流れを受けた流通在庫調整が継続したトラベルリテール事業では、前年を下回りました。また、中国事業においては、堅調だった上期に対し、当第3四半期連結会計期間は景況感の悪化やALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えの影響を受け、前年比マイナスに転じました。一方、日本事業は、市場の回復やインバウンド需要の増加を捉えた戦略的な新商品の発売・マーケティング活動の強化等によって着実な伸長を果たしたほか、米州事業、欧州事業、アジアパシフィック事業においても、力強い成長を実現しました。
コア営業利益は、トラベルリテール事業における流通在庫調整の影響等はあったものの、市場動向を適切に捉えた戦略的なマーケティング投資により実質増収を実現したほか、機動的なコストマネジメントを推進したことなどから、前年に対し6億円増益の368億円となりました。
親会社の所有者に帰属する四半期利益は、コア営業利益が増加した一方で、非経常項目においてパーソナルケア製品の生産事業譲渡に係る減損損失、構造改革費用および事業譲渡損、大阪府内自社2工場の統合に係る減損損失等を計上したことなどから、前年に対し85億円減益の205億円となりました。
なお、EBITDAマージンは、10.4%となりました。
当第3四半期連結累計期間における連結財務諸表項目(収益および費用)の主な為替換算レートは、1ドル=138.0円、1ユーロ=149.6円、1中国元=19.6円です。
各報告セグメントの経営成績は次のとおりです。なお、報告セグメントの区分方法の変更については「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記」の「5. 事業セグメント」をご参照ください。
(単位:百万円)
(注)1 第1四半期連結会計期間より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「プロフェッショナル事業」に計上していた業績を「その他」に計上しています。なお、前第3四半期連結累計期間のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 第1四半期連結会計期間より、グループ内部取引をより適切に管理するため、米州事業の「セグメント間の内部売上高又は振替高」の一部を純額表示から総額表示に変更して集計しています。なお、前第3四半期連結累計期間のセグメント情報については、変更後の集計方法により作成したものを記載しています。
3 「その他」に計上しているパーソナルケア製品生産事業に係る売上高は、資生堂久喜工場の譲渡に伴い、2023年4月1日以降、一部を除き発生していません。
4 売上高における実質増減率は、為替影響および「事業譲渡影響」を除いて計算しています。
5 「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、生産事業および飲食業等を含んでいます。
6 コア営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率です。
7 コア営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
日本事業では、マスク着用の緩和に伴う需要回復や、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行したことなどを受けた外出機会の増加に合わせ、多くのブランドで革新的な新商品を展開しました。「クレ・ド・ポー ボーテ」や「SHISEIDO」では愛用者数の着実な増加と共に力強い成長を実現したほか、「エリクシール」はリニューアル商品を中心に好調を維持、また外出機会の増加を受けたサンケア市場の成長を捉えた「アネッサ」も力強い成長を実現しました。また、訪日外国人旅行客等の増加を受けてインバウンド消費も徐々に回復しました。
以上のことから、売上高は1,916億円となりました。前年比は7.3%増、事業譲渡影響を除く実質ベースでは7.8%増となりました。コア営業損失は2億円、売上増による差益増や費用効率化などにより、前年に対し57億円改善し、当第3四半期連結会計期間においては黒字に転換しました。
中国事業では、大型プロモーションを中心とした成長から、より消費者のニーズを捉えたブランド・商品の価値伝達による持続的成長への転換を進めています。上期においては、「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」が全体をけん引し堅調な成長を実現した一方で、当第3四半期連結会計期間には景況感の悪化やALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えの影響を受け前年比マイナスに転じました。特にEコマース売上が大きく影響を受けました。
以上のことから、売上高は1,781億円となりました。前年比は3.6%増、現地通貨ベースでは前年比1.2%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比3.9%増となりました。コア営業利益は20億円、上期における売上増による差益増と、市場環境変化を受けて減収となった当第3四半期連結会計期間におけるマーケティング活動の一部見直しや機動的なコストコントロールにより、前年に対し106億円改善しました。
アジアパシフィック事業の国・地域では、台湾が成長に転じたほか、韓国や東南アジアでは力強い成長が継続しました。「NARS」や「SHISEIDO」が好調を維持し、全体の成長をけん引しました。
以上のことから、売上高は488億円となりました。前年比は0.1%増、現地通貨ベースでは前年比5.1%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比14.2%増となりました。コア営業利益は17億円、売上増に伴う差益増の一方、マーケティング投資、人件費の増加等により、前年に対し24億円の減益となりました。
米州事業では、戦略的マーケティング活動を通じて、市場の継続的な拡大を確実に捉えました。SNSマーケティングが奏功した「Drunk Elephant」が引き続き大きく伸長したほか、「NARS」や「SHISEIDO」も着実に成長しました。
以上のことから、売上高は817億円となりました。前年比は16.6%減、現地通貨ベースでは前年比22.3%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比17.9%増となりました。コア営業利益は65億円、売上増に伴う差益増の一方、人件費の増加、事業譲渡影響等により、前年に対し3億円の減益となりました。
欧州事業では、デジタルマーケティングの強化や積極的な新商品展開により「NARS」が全体を引き続きけん引したほか、新商品「All of Me」が貢献した「narciso rodriguez」も力強い成長を遂げました。また、店舗拡大を進めた「Drunk Elephant」や「クレ・ド・ポー ボーテ」等が着実に伸長しました。
以上のことから、売上高は825億円となりました。前年比は8.0%減、現地通貨ベースでは前年比16.4%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比16.0%増となりました。コア営業利益は44億円、事業譲渡影響等により、前年に対し42億円の減益となりました。
トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和に伴う旅行客数の増加により、日本では力強い回復を実現しました。一方、韓国・中国海南島では、規制強化、旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰・市場正常化の流れを受けた流通在庫調整の影響を大きく受け、前年を下回りました。
以上のことから、売上高は1,085億円となりました。前年比は9.7%減、現地通貨ベースでは前年比15.9%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比11.3%減となりました。コア営業利益は190億円、売上減に伴う差益減により、前年に対し79億円の減益となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、当連結会計年度期首残高1,190億円に比べ63億円減少し、1,127億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益(287億円)に減価償却費及び償却費(552億円)などの非資金費用、営業債権の減少(293億円)があった一方、営業債務の減少(380億円)、固定資産処分益(111億円)などにより、前年同期に比べ789億円増加の611億円の収入となりました。在庫回転日数(DSI)は、195日となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入(174億円)および関連会社株式の売却による収入(85億円)があった一方、ITシステムへの投資等の無形資産の取得による支出(225億円)や、工場設備への投資等である有形固定資産の取得による支出(175億円)により、前年同期に比べ64億円支出は減少し、172億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加(199億円)があった一方、配当金の支払額(415億円)、リース負債の返済による支出(198億円)、長期借入金の返済による支出(159億円)などにより、前年同期に比べ394億円支出は増加し、590億円の支出となりました。
有価証券報告書(2023年3月24日提出)の記載から重要な変更または新たな発生はありません。
有価証券報告書(2023年3月24日提出)の記載から重要な変更または新たな発生はありません。
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、197億円(売上高比2.7%)です。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当第3四半期連結累計期間において、従業員数に著しい増減はありません。
当第3四半期連結累計期間において、生産、受注および販売の実績について著しい変動はありません。
当第3四半期連結累計期間において、主要な設備の重要な異動または前連結会計年度末において計画中であったものに著しい変更はありません。
売上高については、主にトラベルリテール事業、中国事業において、規制強化、旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰・市場正常化の流れを受けた流通在庫調整のほか、中国における景況感の悪化やALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えによる影響により、実質ベース(為替影響および事業譲渡影響を除く)では前回予想を下回る見込みです。一方、円安による為替換算差の影響もあり全体としては概ね前回予想どおりとなる見込みです。
コア営業利益については、売上高の実質ベースでの減少により前回予想を下回る見込みです。税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益については、コア営業利益の減少のほか、不動産売却に伴う固定資産売却益100億円および大阪府内自社2工場の統合に係る減損損失60億円を織り込んでいます。
本業績修正に伴う2023年12月期の配当予想に変更はありません。当期は、中間配当30円(実施済)、期末配当30円と、年間60円の配当を実施する予定です。
2023年12月期 通期連結業績予想(2023年1月1日~2023年12月31日)
前回発表予想: ドル=130円、ユーロ=140円、中国元=19.0円
今回発表予想: ドル=140円、ユーロ=150円、中国元=19.8円
(10) 資本の財源および資金の流動性についての分析
資金調達と流動性マネジメントの基本方針は、有価証券報告書(2023年3月24日提出)の記載から変更ありません。なお、当第3四半期連結会計期間末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は引き続き高いと考えています。
ムーディーズ・ジャパン株式会社より取得している2023年10月31日現在の発行体格付けはA3(見通し:安定的)となっています。
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、円安により資産の換算額が増加、また、棚卸資産および無形資産が増加した一方、配当金の支払いなどによる現金及び現金同等物の減少、営業債権及びその他の債権の減少、売却目的で保有する資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ240億円減の1兆2,837億円となりました。負債は、営業債務及びその他の債務の減少などにより、472億円減の6,347億円となりました。資本は、配当金支払いにより利益剰余金が減少した一方、円安により在外営業活動体の換算差額が増加したことなどから、232億円増の6,490億円となりました。
また、自己資本に対する現預金を除いた有利子負債(リース負債除く)の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオは0.06倍となりました。