売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E30917 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループ(当社及び当社の関係会社)が判断したものであります。

 

(1)  経営成績の状況

  ①当第3四半期連結累計期間の概況

当第3四半期連結累計期間(2023年4月1日~2023年12月31日)における世界経済は、米国では良好な雇用情勢と賃金上昇により個人消費が堅調に推移する一方で、欧州や中東での地政学リスクの長期化を背景としたエネルギーコストの上昇や資材価格の高騰、世界的なインフレに伴う金融不安等の影響等により、依然として先行き不透明な状況が継続しております。

このような環境の中、当社グループの主力事業である建機用フィルタ事業においては、中国市場では、依然として需要の低迷が継続しております。一方、北米市場では、住宅着工件数は調整局面が継続する中、住宅に対する潜在需要は根強く、需要は堅調に推移いたしました。また、日本市場、並びに欧州及びアジア市場においても、建機の稼働時間と新車需要は概ね堅調に推移いたしましたが、前年度におけるコロナ禍からの回復需要に伴う増収の影響等により、当第3四半期連結累計期間における当社の売上高は減収となりました。

利益面では、当該外部環境変化への対応策として、適正価格への価格転嫁の実施により収益性の改善は着実に図られた一方で、販売数量の減少やアルミや鋼材等の主要原材料価格やエネルギーコストの高騰の影響等により減益となりました。

当社グループは、既存のガラス繊維を使用したフィルタ製品から、環境負荷低減に貢献するナノファイバーを使用したロングライフのフィルタ製品や油の汚染度やフィルタの交換時期を感知する差圧センサを搭載した高付加価値フィルタ製品の主要得意先への提案を進めており、各建機メーカの新機種への製品供給が開始されております。また、カーボンニュートラルへの取り組みの一環として、バイオマス樹脂を用いたナノファイバーの開発、リサイクル樹脂の不織布を用いたフィルタ製品の開発を推進しております。

一方、減益要因となっている原材料価格やエネルギーコストの高騰に対しては、適正価格への更なる価格転嫁を実行するとともに、原価改善の取り組みとして、プロジェクトPAC23の推進に加え、設計開発段階での機能や材料の見直し、生産プロセスの効率化、品質管理の更なる強化等を行うことにより製品ライフサイクル全体でのコストの削減に取り組み利益の改善に努めてまいります。更には、サプライチェーンの見直しや生産地移管によるグローバル生産供給体制の構築により、原材料調達の安定化と物流コストの低減を実現することで、外部環境変化やリスクへの適応力の強化を図り、資本効率の更なる改善と収益性の拡大に努めてまいります。

 

エアフィルタ事業においては、主力製品であるビル空調用フィルタの交換需要の回復により、売上高は増加いたしました。利益面では、価格転嫁の実施に加え、収益性の高い中性能フィルタの販売増加、経費削減等の効果により、増益となりました。また、新たにロングライフ、低圧損、高捕集率のナノファイバー製エアフィルタ(製品名:NanoWHELP)の、オフィスビルや商業施設、ホテル、病院、工場等への採用が進展しております。当社製品であるNanoWHELPはその素材の特性により他社製エアフィルタに比し、年間で約30%近いCO2の削減効果と同時に光熱費も大きく低減できる製品であることから、温室効果ガス削減のための有用な手段の一つとして、ビル用空調システム市場を中心に今後大きく成長することが見込まれます。また、当社グループは国内では唯一、エアフィルタ性能規格として最も権威のあるアメリカ暖房冷凍空調機学会(ASHRAE)の定めるエアフィルタの性能等級であるMERV(16の等級に区分され最高性能等級は16)では当社のNanoWHELPはMERV14・15・16の3つの等級を取得しているフィルタメーカであり、この高い競争力と信頼性を生かし、今後、欧米市場をはじめとした、海外市場の開拓にも積極的に取り組んでまいります。また、このNanoWHELP開発の技術を生かして、これまで実用が困難であった熱可塑性高分子系不織布によるナノファイバーHEPAフィルタの開発に取り組んでおります。本製品は従来のガラス繊維HEPAフィルタのように水を使用しない工程での生産が可能となり、かつ有機フッ素化合物も使用していないPFAS対応の製品であることから、環境問題への意識高まる中でガラス繊維ろ材に置き換わる製品になることが期待されております。

今後も当社グループは、総合フィルタメーカとして「環境」「空気」「健康」をテーマに持続可能な社会・経済活動に貢献する企業として社会的責任を果たしてまいります。

 

以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は133億7百万円(前年同四半期比5.7%減)となり、営業利益は9億38百万円(前年同四半期比12.1%減)、経常利益は9億41百万円(前年同四半期比12.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は6億37百万円(前年同四半期比16.7%増)となりました。

 

  ②連結業績

  当第3四半期連結累計期間(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)業績について

 (単位:百万円)

 

前第3四半期

当第3四半期

増減額

増減率

外部売上高

14,118

13,307

△810

△5.7%

営業利益

(利益率)

1,067

(7.6%)

938

(7.1%)

△128

△12.1%

経常利益

(利益率)

839

(5.9%)

941

(7.1%)

102

12.2%

親会社株主に帰属する四半期純利益

(利益率)

546

(3.9%)

637

(4.8%)

91

16.7%

 

売上高については、建機用フィルタ事業において、6.8%の減収、エアフィルタ事業において0.8%の増収となったことから、全体では5.7%の減収となりました。

営業利益については、エアフィルタ事業においては増益となりましたが、建機用フィルタ事業において、価格転嫁の実施による収益改善が図られたものの、販売数量減少やアルミや鋼材等の主要原材料価格やエネルギーコストの高騰の影響等により15.3%の減益となったことにより連結では12.1%の減益となりました。

経常利益については、為替差損の減少等により12.2%の増益となりました。

親会社株主に帰属する四半期純利益については、16.7%の増益となりました。

なお、当社は、グループ経営の効率化及び競争力強化を目的とし、北米拠点である連結子会社YAMASHIN AMERICA INC.の事業構造改革を実施しております。当第3四半期において、事業構造改革に伴う費用及び損失として10,278千円を特別損失に計上しており、第2四半期累計期間に発生した費用及び損失41,676千円と合わせ、事業構造改革費用として51,955千円を特別損失に計上しております。

この事業構造改革については、当事業年度中に完了する見通しであります。

 

 

 ③事業セグメント別の売上高と営業利益

 

(建機用フィルタ事業)(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)業績について

(単位:百万円)

 

前第3四半期

当第3四半期

増減額

増減率

外部売上高

12,151

11,325

△826

△6.8%

営業利益

(利益率)

1,022

(8.4%)

866

(7.6%)

△156

△15.3%

 

売上高については、建機の稼働時間と新車需要は堅調に推移したものの、主要得意先の在庫調整の影響等により、6.8%の減収となりました。

営業利益については、主要得意先への価格転嫁実施により収益性は回復傾向にありますが、主要原材料価格やエネルギーコストの高騰、売上高の減少の影響等により15.3%の減益となりました。

 

(エアフィルタ事業)(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)業績について

(単位:百万円)

 

前第3四半期

当第3四半期

増減額

増減率

外部売上高

1,967

1,982

15

0.8%

営業利益
   (利益率)

44

(2.3%)

72

(3.7%)

27

61.5%

 

売上高については、主力製品であるビル空調用フィルタの交換需要の回復等により、0.8%の増収となりました。

営業利益については、価格転嫁の実施に加え、収益性の高い中性能フィルタの販売増加、経費削減等の効果により、増益となりました。

 

 

 

(2)  財政状態の状況

資産、負債及び純資産の状況は、次のとおりであります。

 (流動資産)
  当第3四半期連結会計期間末における流動資産の残高は、前連結会計年度末比4億73百万円増加(前連結会計年度末比3.7%増)し、133億97百万円となりました。その主な要因は、現金及び預金が9億25百万円増加(前連結会計年度末比22.5%増)した一方で、商品及び製品が4億7百万円減少(前連結会計年度末比16.3%減)したことによるものです。

 

 (固定資産)
 当第3四半期連結会計期間末における固定資産の残高は、前連結会計年度末比1億57百万円減少(前連結会計年度末比1.2%減)し、125億円となりました。その主な要因は、建物及び構築物が1億43百万円減少(前連結会計年度末比2.8%減)、機械装置及び運搬具が1億円減少(前連結会計年度末比7.4%減)した一方で、投資その他の資産のその他が93百万円増加(前連結会計年度末比71.2%増)したことによるものです。

 

 (流動負債)
 当第3四半期連結会計期間末における流動負債の残高は、前連結会計年度末比5億68百万円増加(前連結会計年度末比17.0%増)し、39億11百万円となりました。その主な要因は、支払手形及び買掛金が1億59百万円増加(前連結会計年度末比10.9%増)、短期借入金が5億20百万円増加(前連結会計年度末比185.7%増)した一方で、賞与引当金が1億19百万円減少(前連結会計年度末比50.2%減)したことによるものです。

 

(固定負債)
 当第3四半期連結会計期間末における固定負債の残高は、前連結会計年度末比2億98百万円減少(前連結会計年度末比23.7%減)し、9億62百万円となりました。その主な要因は、長期借入金が3億2百万円減少(前連結会計年度末比41.8%減)した一方で、退職給付に係る負債が23百万円増加(前連結会計年度末比9.3%増)したことによるものです。

 

(純資産)

 当第3四半期連結会計期間末における純資産の残高は、前連結会計年度末比45百万円増加(前連結会計年度末比0.2%増)し、210億23百万円となりました。その主な要因は、資本金が71百万円増加(前連結会計年度末比1.1%増)、資本剰余金が71百万円増加(前連結会計年度末比1.2%増)、利益剰余金が2億7百万円増加(前連結会計年度末比2.7%増)、為替換算調整勘定が1億47百万円増加(前連結会計年度末比32.6%増)した一方で、自己株式が4億40百万円増加(前連結会計年度末は0百万円)したことによるものです。

 

 

(3)経営方針、経営環境及び対処すべき課題

 1.経営方針

当社グループの経営理念は「仕濾過事」(ろかじにつかふる)であります。この経営理念には、当社の創業者である山崎正彦のフィルタビジネスを通じて社会に貢献するという意思が込められており、当社グループは、この不変のDNAを通じ、フィルタビジネスを通じて「環境」、「空気」、「健康」をテーマに持続可能な社会の実現のための課題解決に取り組み、コーポレートサスティナビリティの更なる強化に努めるとともに、企業価値の最大化を図ってまいります。

 

2.目標とする経営指標

当社は経営指標として「MAVY’s(マービーズ)」という独自の指標を設けております。MAVY’sは投下資本を通じ獲得される事業収益から創出される付加価値の定量指標であり、当社の企業価値の持続的成長を判断する最重要経営指標であります。また、「MAVY’sのスプレッド」の目標を毎期設定し、常に資本コスト(WACC)の最適化と収益力(ROIC) の最大化を図ることにより長期的持続的成長に努めてまいります。このMAVY’s経営においては達成すべき目標値(KGI)としてROEやPBRを重要な経営指標として設定するとともに、各KGIを達成するための主要プロセス目標(KPI)を具体的に設定し、KGI やKPIを達成するための各部門別行動目標(KSF)や従業員各人別の目標を定量・定性的に明確に設定することにより、全社一体となった企業価値向上に向けた取り組みを行っております。

 

3.中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

   効率的な資本運用による持続的な企業価値の向上

当社は企業価値指標としての「MAVY’s」の持続的な拡大を経営の基本としております。しかしながら今期当社の平均資本コスト(WACC)は約7.5%、またROEは約3.0%であり資本コスト割れの状況であります。このためROEを8.0%以上に改善することが喫緊の重要課題となっております。そのためには、主力事業の建機フィルタ事業における事業構造の改善を促進すると同時に、ナノファイバー技術による先端素材を建機フィルタ事業やエアフィルタ事業により積極的に展開し、新規事業分野への進出等を図り、より付加価値の高いビジネスを創出してまいります。この事業計画は中期経営計画として開示を行ってまいります。また、当社のエクイティストーリーを反映した事業計画書を策定開示することにより、当社の目指す長期的持続的な成長性を明確に示しPBRの向上にも努めてまいります。

 

② 持続可能な環境や社会を実現するための取り組み

当社は持続可能な環境・社会を実現するための取り組みとして、気候変動に対する取り組み、及び人的資本への積極的な投資を掲げております。具体的には、「気候関連財務情報開示タスクホース(TCFD)]に賛同を表明し、CDPを通じ当社の二酸化炭素排出量削減や気候変動に対してどのような取り組みを行っているのかを開示しておりますが、更に中長期的な温室効果ガス排出量の削減目標を具体的に設定することにより、SBT(Social Based Targets)の認定取得に向けた取り組みを進めてまいります。また、人的資本への投資としては、「多様な価値観を持つ人的資本」への投資を図ることを通じ、従業員等にとり「ウェル・ビーイング」な社会を実現すべく努めてまいります。

 (注)サスティナビリティ―レポート (https://www.yamashin-filter.co.jp/ja/sustainability.html)

 

 

③ コーポレート・ガバナンス機能の充実

当社グループは、コーポレート・ガバナンス及び経営課題に関する事項等について幅広く議論し、コーポレート・ガバナンス機能の継続的な充実を図ることを目的とした取締役会の諮問機関として、ガバナンス委員会を設置しております。同委員会は、取締役会の経営の監督機能の実効性の評価、課題に対する取締役会への助言、改善提案、報告、執行役員への通知といった活動を行っております。同委員会は透明性及び客観性を確保するため、委員は独立社外取締役で構成されております。

また、グループ会社が行う業務執行に関するリスクの監視・牽制機能(モニタリング)、内部監査で実施される評価業務の支援を目的とした社内委員会として、取締役社長の諮問機関である業務監理委員会を設置しております。この内部統制組織の拡充強化を通じ、当社連結グループ全体のガバナンス及びコンプライアンスの更なる改善を図ってまいります。当社はこのようなガバナンス委員会及び業務監理委員会の活動を通じ、より一層牽制機能の強化等による業務執行の適切な監督を行うことで経営の透明性と質の向上を図り、アカウンタビリティ(説明責任)をより明確に果たし、コーポレート・ガバナンスの強化に努めてまいります。

(注)有価証券報告書 (https://www.yamashin-filter.co.jp/ja/ir/library/securities.html)

 

(4)経営方針、経営戦略等

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針、経営戦略等については、(3)経営方針、経営環境及び対処すべき課題に記載のとおりであり、重要な変更はありません。

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題については、(3)経営方針、経営環境及び対処すべき課題に記載のとおりであり、重要な変更はありません。

 

(6)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間における研究開発費の総額は3億7百万円であります。

なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。