売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E01570 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間(2023年4月1日~12月31日)の世界経済は、インフレと欧米の金融引き締めにより減速しました。米国経済は、堅調な個人消費や設備投資が経済を下支えしましたが、金利の上昇により住宅投資は落ち込みました。欧州経済は、物価の高止まりにより個人消費や住宅投資が落ち込んでおり景気低迷が続きました。中国経済は、不動産市場の影響もあり停滞しました。アジア・新興国経済は、中国や欧米向けの輸出が伸び悩んだ一方、内需の回復が経済を下支えし、堅調に推移しました。日本経済は、海外景気の悪化が逆風となる中、個人消費も力強さに欠ける展開となっており、景気回復は緩やかなものに留まりました。

このような事業環境のもと、当社グループでは、2023年度に戦略経営計画「FUSION25」の後半3ヵ年計画を策定し、立案した戦略の実行に取り組んでおります。成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめ、「FUSION25」策定当初から掲げる重点戦略9テーマに「インドの一大拠点化」「高機能・環境材料事業」を新たに加え、重点戦略11テーマの施策展開を進めることで、経済価値・環境価値・社会価値の創造に取り組んでおります。

また、2023年度は、それぞれの地域・事業の進捗状況をきめ細かくフォローしながら、臨機応変に課題に対応することで、環境変化による当社事業への影響を極小化する一方、環境変化をチャンスとした事業拡大・シェアアップに取り組むとともに、収益力の再強化にも取り組んでおります。2023年度の具体的なテーマは以下のとおりです。

・カーボンニュートラル・省エネに資する商品・サービスによる、業務用途・住宅用途での当社シェアの向上

・用途や市場ごとの付加価値提供による、ソリューション事業の収益拡大

・市場環境の変化に柔軟・迅速に対応が可能な、強靭なサプライチェーンの構築

・市場・顧客のニーズにミートした差別化商品の投入による、販売価格政策の推進

・変動費・物流費低減、材料置換、生産性向上など、グローバル横断でのコスト力強化

・積極的な投資を行いながら収益力を向上させるため、デジタルを活用した経営基盤強化による固定費の削減

・実行してきた買収案件・生産能力増強投資の成果創出

当第3四半期連結累計期間の経営成績については、売上高は3兆2,636億52百万円(前年同期比9.3%増)となりました。利益面では、営業利益は3,064億90百万円(前年同期比0.9%増)となりましたが、主に金利上昇による支払利息の増加等により経常利益は2,821億13百万円(前年同期比5.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,938億50百万円(前年同期比7.2%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。

 

①空調・冷凍機事業

空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前年同期比9.8%増3兆13億54百万円となりました。営業利益は、前年同期比1.4%減2,624億3百万円となりました。

国内空調では、業務用市場の需要は、ビル用・設備用・工場用などの需要が回復した一方、市場規模の大きい店舗・オフィス用の需要回復が遅れ、前年同期を下回りました。また、住宅用市場の需要は、記録的な猛暑による需要の拡大が見られたものの、消費者の買い控え傾向などの影響により、前年同期を下回りました。このような状況の中、当社グループは、業務用空調機器市場に向けては、高い省エネ性能と施工性を兼ね備えた「FIVESTAR ZEAS」、個別運転ニーズに応える「machi(マチ)マルチ」、パッケージエアコンに取り付けることで空気清浄機能・除菌機能を付加する『UVストリーマ除菌ユニット』など、高付加価値商品を中心にユーザー提案を強化することで販売を拡大し、売上高は前年同期を上回りました。一方、住宅用空調機器市場に向けては、電気料金の上昇や住宅設備への省エネ性能ニーズの拡大を背景に、高い省エネ性を持つ『うるさらX(エックス)』を中心にユーザー訴求の強化を進めましたが、需要減少の影響を受け、売上高は前年同期を下回りました。

 

米州では、住宅用空調機器については、長引くインフレや住宅ローン金利の高止まりなどにより業界需要が減速し、販売は厳しい状況が続きました。そのような状況の中、上期(4月~9月)は、一部地域の猛暑効果の追い風もあり、ライトコマーシャル機器(中規模ビル向け業務用空調機器)の堅調な需要に伴う増販、前期に買収した会社を活用した販売網強化、さらに価格政策の実施に努めて売上を伸ばしました。しかし、第3四半期(10月~12月)に入り、住宅用市場の需要が減速する中、独立系のディストリビューター(卸)において在庫調整の動きが続いたこともあり、第3四半期累計(4月~12月)の売上高は前年同期並みとなりました。大型ビル(アプライド)空調については、市場が堅調に推移する中、生産能力増強や価格政策の効果により市場の伸びを上回る空調機器の販売となりました。さらに、製造業・データセンター等の成長市場に強みを持つ買収会社及び販売代理店での拡販、計装・エンジニアリング会社を活用したソリューション事業の拡大もあり、売上高は前年同期を大きく上回りました。

中国では、ゼロコロナ政策が解除され、3年ぶりに生産・販売活動を全面的に展開しました。不動産市況の回復は遅れているものの、住宅市場を中心に販売を拡大したこともあり、地域全体の売上高は前年同期を上回りました。利益面では、高付加価値商品の拡販、コストダウン等に取り組み、これまでの高水準を維持しました。住宅用空調機器市場では、景気が大きく減速する中、ユーザーダイレクトのオフラインの小売販売に加え、ショールームを活用したライブ放送、WEB戦略、SNSなどオンラインを組み合わせた当社グループ独自の販売活動が売上拡大に貢献しました。また、空調・換気・ヒートポンプ床暖房に、省エネ・空気質提案などのソリューションサービスを組み合わせた住宅用マルチエアコンの新シリーズ「Daikin Care中央空気システム」を投入し販売を拡大しました。業務用空調機器市場では、カーボンニュートラル政策の推進による政府物件・工場・グリーンビル(環境性能が高まるよう配慮して設計された建物)などの市場の伸びを受け、省エネを切り口とした新商品を投入しました。アプライド空調機器市場では、インフラ・半導体関連など成長分野に資源を投入したことに加え、保守・メンテナンス事業を強化しました。

アジア・オセアニアでは、インドでの好調な販売が牽引し、地域全体の売上高は前年同期を上回りました。アセアン・オセアニア地域では、インフレ率の高止まりによる消費低迷や需要減速の影響を受け、住宅用空調機器の販売は前年同期並みになりました。一方、業務用空調機器については、金融引き締めによる施主やコントラクター等の資金繰りが悪化した影響でプロジェクトが遅延する中、販売店の開発・育成を推進し、売上高は前年同期を上回りました。インドでは、引き続き経済成長を背景に住宅用・業務用空調機器ともに売上高は前年同期を大きく上回りました。

欧州では、金融引き締め政策の長期化で経済環境が悪化する中、昨年来の部材供給の逼迫が緩和され、各国での出荷最大化に取り組みました。住宅用市場を中心に空調機器の需要が減速したことで、現地通貨での地域全体の売上高は前年同期を下回りましたが、為替のプラス効果により、円貨換算後の地域全体の売上高は前年同期を上回りました。住宅用空調機器は、熱波到来によりフランス・スペイン等で夏季の販売が拡大しましたが、景気減速による消費マインドへの影響が大きく、売上高は前年同期を下回りました。住宅用ヒートポンプ式温水暖房機器については、販売店開発や補助金申請支援などの販売力強化と商品ラインナップ拡充に取り組みました。しかし、イタリア・ドイツ・フランス等の主要市場における各国政府による補助金制度の削減等の影響に加え、欧州のガス価格下落により、各国でガスやオイルボイラーからの更新需要の停滞傾向が鮮明化し、売上高は前年同期を下回りました。業務用空調機器では、コロナ規制の緩和による反動需要は一巡しましたが、きめ細かい販売活動の展開により、コロナ後に回復してきたホテル・レストラン向けの需要や、オフィスや店舗等の省エネニーズを着実に取り込み、売上高は前年同期を上回りました。アプライド空調機器では、データセンター向けの販売が拡大したこと等により、売上高は前年同期を上回りました。

中近東・アフリカでは、売上高は前年同期を大きく上回りました。UAE・ナイジェリア等での業務用物件の受注増加が販売を牽引しました。トルコでは、前期より現地で生産を開始した業務用空調機器において短納期対応を強みに販売を拡大しました。また、熱波による需要の取り込みに加え、震災復興需要もあり、住宅用空調機器においても販売が大きく増加しました。

フィルタ事業では、中国・欧州・東南アジア・インドではハイエンド市場への投資減速影響がやや見られたものの、全体として需要は底堅く推移しました。米国では、前期に事業買収した会社を含め代理店販売による病院・製薬・データセンター等のハイエンド市場で販売を強化しましたが、低収益事業からの撤退を進めたこともあり、売上高は減少しました。欧州では、省エネや空気質に対する意識・ニーズは引き続き堅調で、一般ビル・OEM市場向けを中心に販売は安定して推移しました。アジアでは、半導体向け投資が減速した影響もあり、販売は減少しました。また、国内では、電子・半導体市場向けは在庫調整局面に入り伸び悩みましたが、製薬市場向けを中心に高性能フィルタの販売が堅調に推移しました。さらに、ガスタービン・集塵機事業は、引き続き油田向け特殊フィルタの販売が好調に推移しました。このように、販売が好調な地域・事業もありましたが、米国での販売減が影響し、フィルタ事業全体の売上高は前年同期を下回りました。

 

舶用事業では、舶用エアコン・冷凍機の販売を伸ばしましたが、需要減速による海上コンテナ冷凍装置の販売台数が減少し、舶用事業全体の売上高は前年同期を下回りました。

 

②化学事業

化学事業セグメント合計の売上高は、前年同期比2.2%減1,897億29百万円となりました。営業利益は、需要が堅 調な市場での価格政策やコストダウンにより、前年同期比19.3%増390億18百万円となりました。

フッ素化学製品全体は、半導体・自動車分野を中心にした広範囲での需要回復遅れに加え、それに伴う流通在庫調整の動きなどにより、売上高は前年同期を下回りました。

フッ素樹脂は、LAN電線分野での需要減速や自動車分野での流通在庫調整などにより販売が落ち込んだものの、半導体装置向け材料の増産による供給力の向上もあり、売上高は前年同期並みとなりました。一方、フッ素ゴムについては、自動車分野等での販売減により、売上高は前年同期を下回りました。

化成品は、表面防汚コーティング剤や撥水撥油剤、さらには半導体プロセス向けエッチング剤などの需要の落ち込みにより、売上高は前年同期を大きく下回りました。

フルオロカーボンガスについては、原材料市況高騰に対応した価格政策の実施に努め、売上高は前年同期を大きく上回りました。

 

③その他事業

その他事業セグメント合計の売上高は、前年同期比24.0%増725億68百万円となりました。営業利益は、前年同期比3.1%増50億49百万円となりました。

油機事業では、産業機械用油圧機器は、国内市場では工作機械向けを中心に需要が減少したものの、前期に買収した会社の欧米向けの販売の増加が寄与し、売上高は前年同期を上回りました。一方、建機・車両用油圧機器は、国内市場及び米国市場向けの販売が減少したことにより、売上高は前年同期を下回りました。

特機事業では、酸素濃縮装置及びパルスオキシメータ(採血することなく血中酸素飽和度を簡易に測定できる医療機器)の新型コロナウイルスに伴う需要は収束しましたが、第3四半期(10月~12月)に酸素濃縮装置の大口案件の受注等があり、売上高は前年同期を上回りました。

電子システム事業では、品質課題の解決・設計開発期間の短縮・コストダウン支援といった顧客ニーズに合致した設計・開発分野向けデータベースシステム『Smart Innovator(スマートイノベーター)』の販売が増加したことに加え、データサイエンスソフトの増販もあり、売上高は前年同期を上回りました。

 

(2) 財政状態の状況

総資産は、4兆6,818億51百万円となり、前連結会計年度末に比べて3,781億68百万円増加しました。流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,848億55百万円増加2兆6,119億38百万円となりました。固定資産は、建設仮勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,933億12百万円増加2兆699億12百万円となりました。

負債は、短期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,305億41百万円増加2兆1,551億29百万円となりました。有利子負債比率は、前連結会計年度末の20.6%から21.8%となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上や為替の変動によるその他の包括利益累計額の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,476億26百万円増加2兆5,267億21百万円となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結累計期間のキャッシュ・フローについては、営業活動では、棚卸資産の増加幅の減少等により、前年同期に比べて1,729億円収入が増加し、2,974億99百万円の収入となりました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出の増加等により、前年同期に比べて357億48百万円支出が増加し、2,191億59百万円の支出となりました。財務活動では、長期借入金の返済による支出の減少等により、前年同期に比べて502億13百万円支出が減少し、248億69百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた当第3四半期連結累計期間の現金及び現金同等物の増減額は、前年同期に比べて2,039億37百万円増加し、727億64百万円のキャッシュの増加となりました。

 

(4) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

当第3四半期連結累計期間において、当連結会社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に重要な変更はありません。

 

(5) 研究開発活動

当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は899億90百万円であります。