売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E02059 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)財政状態及び経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間(2023年4月1日から2023年12月31日まで)における当社グループを取り巻く事業環境において、世界経済はロシア・ウクライナ情勢に加えて中東地域に起因した地政学的緊張が続くなか、エネルギーや食料価格のインフレ率鈍化が示されるものの主要国での中央銀行による金融引き締め後の高い金利水準の維持などから、経済成長の減速が見られました。このような情勢下、IT市場では、モバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルネットワークなどに関連した技術革新や利便性向上などが見られました。なお、同期間の主要通貨に対する円相場は、各国の景気や金融・貿易政策等に対する見方を反映し、前年同期の平均レートと比較すると対ドルでは小幅に円安、対ユーロでも円安、対中国元でも僅かに円安となりました。なお、為替変動による連結業績への影響は、売上高を45億円押し上げ、営業利益を8億円押し上げたと試算しております。

 

このような事業環境の下、当社グループは、2021年5月12日に発表した2025年3月期を最終年度とする中期経営方針『Wacom Chapter3』及び2023年5月11日に発表したその「アップデート・レポート」における施策に則って、ペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握り、「意味深い成長(財務的な成長だけではなく、私たちのお客様が製品・サービスのユーザー体験を通じて感じる成長であり、私たちが日々の暮らしを営む社会やコミュニティ全体が新たな学びを積み重ねていくことであり、一人一人の自己実現を通じた成長で構成される多面的な意味を持つ成長)」を目指して事業運営にあたりました。当第3四半期連結累計期間では、XR(クロスリアリティ)、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)、教育などといった成長分野において、事業モデルを一段と進化させるための戦略を協業パートナーと推し進めるとともに、生産性やコスト構造の改善にも努め、経営判断の質の向上を通して経営課題に取り組みました。

 

ブランド製品事業については、創造性発揮のための最高体験をお客様にお届けするため、技術革新に取り組むとともに、顧客サービスの向上に努めました。当第3四半期連結累計期間では、主力のクリエイティブソリューションにおいて、ディスプレイ製品、ペンタブレット製品ともに売上高が前年同期を下回ったことから、ブランド製品事業全体としての売上高は、前年同期を下回りました。

 

テクノロジーソリューション事業については、デジタルペン技術(アクティブES:Active Electrostatic、EMR:Electro Magnetic Resonance)の事実上の標準化に取り組むとともに、タブレット・ノートPC市場での利用拡大や教育市場での事業機会の拡大に努めました。当第3四半期連結累計期間では、AESテクノロジーソリューション及びEMRテクノロジーソリューションともに売上高が前年同期を上回ったことから、テクノロジーソリューション事業全体としての売上高は、前年同期を上回りました。

 

中期経営方針の戦略軸に沿った全社的な取り組みとしては、当社グループの事業を取り巻く環境が大きく変化し、企業価値の中長期的な向上を目指す観点から当社グループの事業構造を変革させる必要が生じているとの認識の下で、中期経営方針『Wacom Chapter3』の後半2年(2024年3月期から2025年3月期まで)を「事業構造変革期間」と位置付けました。上述の「アップデート・レポート」において示した8つの施策「① 商品ポートフォリオの刷新と粗利改善」「② 集中領域での事業構築」「③ 販路マネジメントの強化」「④ 在庫マネジメントの改善」「⑤ 顧客と用途の拡大」「⑥ 一般教育分野での事業開拓」「⑦ 資本政策と株主還元のアップデート」「⑧ 新ビジネスへの投資と立上げ」に引き続き取り組みました。

 

事業成長の促進を図るための取り組みとしては、新たなコア技術やビジネスモデルの開発への積極的な投資を行うとともに、2023年11月には、人間の創造性の源に思いを馳せ、アート、教育、テクノロジーなど多様な領域のパートナーと共創する「創造的混沌」をテーマとしたコミュニティイベント「Connected Ink(コネクテッド・インク)2023」を開催しました。最新のデジタルインク・テクノロジーを駆使した教育向けサービスやクリエイターの権利保護、創作過程の価値のAI解析による可視化、リモート環境での創作の質を飛躍的に向上させる最新技術、VR(仮想現実)空間での創作を支援するWacom VR Penの開発状況など、多様な分野でのパートナーとの取り組みを発表しました。

 

これらの結果、当第3四半期連結累計期間の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。

 

① 財政状態

当第3四半期連結会計期間末における資産の残高は、85,561,164千円となり、前連結会計年度末に比べ10,282,392千円増加しました。これは主に、売掛金が5,926,977千円、現金及び預金が5,528,901千円増加したことによります。

負債の残高は、45,929,461千円となり、前連結会計年度末に比べ11,140,353千円増加しました。これは主に、買掛金が5,141,372千円、長期借入金が5,000,000千円増加したことによります。

純資産の残高は、39,631,703千円となり、前連結会計年度末に比べ857,961千円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益4,893,381千円、為替換算調整勘定の増加642,864千円により増加し、自己株式の増加3,317,102千円、剰余金の配当3,124,752千円により減少したものであります。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ7.5ポイント減少し、46.3%となりました。

 

② 経営成績

当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高が89,151,482千円(前年同期比6.1%増)、営業利益は5,269,089千円(同22.6%増)、また、営業外収益において為替差益1,438,496千円(同177.4%増)を計上したことなどが影響し、経常利益は6,655,931千円(同37.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は4,893,381千円(同33.1%増)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

なお、事業環境の変化に適合し、第1四半期連結会計期間より、各セグメントの業績説明におけるカテゴリーの範囲、名称を一部変更しております。

 

a. ブランド製品事業

 

<クリエイティブソリューション>

クリエイティブソリューションは、市場環境の変化による影響を受けるなか、ディスプレイ製品、ペンタブレット製品ともに販売が減少し、前年同期の売上高を下回りました。

 

○ ディスプレイ製品

「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)」は、2023年10月に「Wacom Cintiq Pro 17」及び「Wacom Cintiq Pro 22」を発表しラインアップを拡充したものの、既存モデルの需要が減少したことなどから、前年同期の売上高を下回りました。「Wacom Cintiq(ワコム シンティック)」は、需要が減少したことなどから、前年同期の売上高を下回りました。「Wacom One(ワコム ワン)」は、2023年8月に新たな液晶ペンタブレットを発表してラインアップの強化を図り、前年同期の売上高を小幅に上回りました。これらの結果、ディスプレイ製品全体の売上高は、前年同期を下回りました。

 

○ ペンタブレット製品

「Wacom Intuos Pro(ワコム インテュオス プロ)」は、経年に加えて需要が減少したことなどから、前年同期の売上高を大幅に下回りました。中価格帯モデルは、「Wacom Intuos(ワコム インテュオス)」に加えて、2023年8月に新たなペンタブレット「Wacom One(ワコム ワン)」を発表してラインアップの強化を図ったものの、「Wacom Intuos(ワコム インテュオス)」の需要が減少したことなどから、前年同期の売上高を僅かに下回りました。低価格帯モデル「One by Wacom(ワン バイ ワコム)」は、需要が減少したことなどから、前年同期の売上高を大幅に下回りました。これらの結果、ペンタブレット製品全体の売上高は、前年同期を下回りました。

 

<ビジネスソリューション>

流動的な市況や案件進捗の動向の影響があるなか、ビジネスソリューション全体の売上高は、前年同期を僅かに上回りました。

 

これらの結果、ブランド製品事業の売上高は27,235,950千円(前年同期比18.7%減)、セグメント損失は3,069,179千円(前年同期はセグメント損失1,310,243千円)となりました。

 

b. テクノロジーソリューション事業

 

<AESテクノロジーソリューション>

市場環境の変化による影響を受けるなか、AESテクノロジーソリューション全体の売上高は、前年同期を上回りました。

 

<EMRテクノロジーソリューション>

OEM提供先の需要が増加したことから、EMRテクノロジーソリューション全体の売上高は、前年同期を上回りました。

 

これらの結果、テクノロジーソリューション事業の売上高は61,915,532千円(前年同期比22.5%増)、セグメント利益は12,051,277千円(同30.7%増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、5,564,515千円増加(前年同期は8,561,928千円減少)し、当第3四半期連結会計期間末には25,544,419千円となりました。

 

当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの内訳は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、7,960,733千円(前年同期は9,140,125千円の使用)となりました。これは、当第3四半期連結累計期間において税金等調整前四半期純利益6,770,828千円、棚卸資産の減少額5,287,119千円及び仕入債務の増加額4,396,971千円などの収入要因が、売上債権の増加額5,749,472千円及び法人税等の支払額2,194,290千円などの支出要因を上回ったことによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、1,619,469千円(前年同期は2,736,501千円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出1,339,180千円及び無形固定資産の取得による支出320,157千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、2,063,500千円(前年同期は2,094,475千円の収入)となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入7,000,000千円、自己株式の取得による支出3,357,517千円、配当金の支払額3,120,520千円及び短期借入金の返済による支出2,000,000千円であります。

 

(3)経営方針・経営戦略等

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の総額は、5,631,765千円であります。

なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。