売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E02128 IFRS


2【経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は,当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。

 

(1)業績の状況

当第3四半期連結累計期間の世界経済は,世界的なインフレや金融引き締めの影響,不安定な資源価格などにより,減速しています。また,中国経済は,不動産部門の低迷が景気を下押しし,力強さを欠いています。わが国経済については,雇用・所得環境が改善する中で,世界的なインフレの影響は受けつつも,景気は緩やかに回復しています。

 

当社グループは,第2四半期連結会計期間において,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる売上収益の減少及び海外連結子会社における訴訟の和解合意に伴う売上収益の減少により多額の損失を計上しました。

出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムについては,地上駐機に対する補償費用や追加整備費用等の発生が見込まれますが,当第3四半期連結会計期間においてその前提条件に変更はありません。現在,工場の整備能力増強や部品の安定確保など,地上駐機の期間短縮に向けた対応を進めています。プログラムパートナーとともに全体で整備能力増強を図り,お客さまであるエアラインへの負担軽減及び信頼回復に取り組んでまいります。

 

当社グループの主力事業である民間向け航空エンジンは,旅客需要の回復に伴って,エンジン本体及びスペアパーツ販売が堅調に推移しています。今後見込まれる民間向け航空エンジンや防衛装備品の需要拡大に応えていくため,増産に向けた能力増強を進めるとともに,世界トップレベルの生産効率実現への取組みを推進していきます。研究開発については,民間向け航空エンジンにおいてカーボンニュートラルを見据えた航空機軽量化や電動化などの次世代航空機に関する技術開発が進捗しています。

また,航空・宇宙・防衛以外の事業では,インフラや機械設備の保全・長寿命化を図るための定期点検工事やアフターサービス工事といったライフサイクルビジネスも堅調であり,今後さらなる拡大が期待されています。社会課題の解決に向けて,バリューチェーンを意識した事業展開を進めています。

 

このような事業環境下において,当社グループの当第3四半期連結累計期間は,前述の売上収益の大幅な減収影響によって,受注高については前年同期比7.5%減の8,770億円となり,売上収益については8.4%減の8,666億円となりました。

 

損益面では,営業損益は,民間向け航空エンジンの本体台数やスペアパーツ販売の増加のほか,ライフサイクルビジネス等での増収はありましたが,前述の売上収益の大幅な減収に加えて,民間航空エンジンでのアフターマーケット関連費用の増加のほか,変革推進に向けた研究開発費や人件費等の増加などもあり,1,687億円減益の1,037億円の損失となりました。親会社の所有者に帰属する四半期損益は,1,095億円の損失です。

 

 

当第3四半期連結累計期間の報告セグメント別の状況は以下のとおりです。

(単位:億円)

報告セグメント

受注高

前第3四半期

当第3四半期

前年同期比

増減率

前第3

四半期

連結

累計期間

当第3

四半期

連結

累計期間

前年

同期比

増減率

(%)

連結累計期間

連結累計期間

(2022.4~2022.12)

(2023.4~2023.12)

(%)

売上収益

営業損益

売上収益

営業損益

売上収益

営業損益

資源・

エネルギー・

環境

2,733

2,278

△16.6

2,587

196

2,777

19

7.4

△90.0

社会基盤

846

1,093

29.3

1,201

56

1,173

26

△2.3

△53.7

産業システム・

汎用機械

3,308

3,495

5.7

3,087

83

3,370

87

9.2

4.8

航空・宇宙・防衛

2,562

1,809

△29.4

2,552

380

1,300

△1,122

△49.0

報告セグメント 計

9,450

8,677

△8.2

9,428

716

8,622

△989

△8.5

その他

377

436

15.7

336

7

368

29

9.4

296.3

調整額

△343

△344

△301

△74

△324

△78

合計

9,484

8,770

△7.5

9,463

649

8,666

△1,037

△8.4

(注)金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。

 

<資源・エネルギー・環境>

当社の連結子会社であるIHI E&C International Corporationでの訴訟の和解合意に伴い,第2四半期連結会計期間において売上収益を146億円減額したことで,受注高は146億円減少,営業損益も146億円減益となっています。以下の記述はこの影響を除いたものです。

受注高は,カーボンソリューションで増加したものの,東南アジアでの大型発電所プロジェクトや原子力の工事で減少しました。

売上収益は,原子力の工事量減少により減収となったものの,東南アジアの大型発電所プロジェクトの進捗やカーボンソリューションのライフサイクルビジネス増加により増収となりました。

営業損益は,増収による増益はあったものの,原子力の減収影響をカバーできず減益となりました。

 

<社会基盤>

受注高は,橋梁・水門やシールドシステムで増加しました。

売上収益は,橋梁・水門,シールドシステムで若干の減収はあるものの概ね横ばいとなりました。

営業利益は,橋梁・水門での原価先行算入により減益となりました。

 

<産業システム・汎用機械>

受注高は,車両過給機などで増加しました。

売上収益は,車両過給機で増収となりました。

営業利益は,販管費の増加やパーキングでの資材価格高騰による減益があったものの,車両過給機の増収により,増益となりました。

 

 

<航空・宇宙・防衛>

出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムにより売上収益を1,460億円減額したことで,受注高は1,460億円減少,営業損益は1,498億円減益となっています。以下の記述はこの影響を除いたものです。

受注高は,民間向け航空エンジン,防衛事業で増加しました。

売上収益は,民間向け航空エンジンの本体・スペアパーツ販売増加に加え,為替が円安に推移したことにより増収となりました。

営業損益は,民間向け航空エンジンでのスペアパーツ販売増及び為替による増益はあるものの量産初期段階のPW1100G-JMエンジン本体の販売が増加したほか,アフターマーケット費用や販管費の増加により減益となりました。

 

(2)財政状態の分析

当第3四半期連結会計期間末における総資産は2兆894億円となり,前連結会計年度末と比較して1,474億円増加しました。主な増加項目は,棚卸資産で833億円,契約資産で173億円,繰延税金資産で158億円,主な減少項目は,使用権資産で36億円,投資不動産で22億円です。

負債は1兆7,455億円となり,前連結会計年度末と比較して2,598億円増加しました。主な増加項目は,有利子負債で1,631億円,返金負債で1,449億円,主な減少項目は,営業債務及びその他の債務で250億円です。返金負債は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる売上収益の大幅な減少に伴い増加したものです。なお,有利子負債については,継続して資金流動性の確保の取り組みを進めています。

資本は3,438億円となり,前連結会計年度末と比較して1,123億円減少しました。これには,親会社の所有者に帰属する四半期損失1,095億円が含まれています。

以上の結果,親会社所有者帰属持分比率は,前連結会計年度末の22.2%から15.2%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は,前連結会計年度末と比較して12億円減少し,1,235億円となりました。

当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは878億円の支出超過(前年同期は531億円の支出超過)となりました。これは,主に棚卸資産及び前払金の増加によるものです。民間向け航空エンジンでは,サプライチェーンの不安定な状態が続く中で,増産に向けて運転資本を積み増しています。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは434億円の支出超過(前年同期は386億円の支出超過)となりました。これは,有形固定資産の取得による支出があったためです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは1,266億円の収入超過(前年同期は478億円の収入超過)となりました。これは,資金確保のためコマーシャル・ペーパーの発行による収入があったためです。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金・設備資金については,借入金や社債,コマーシャル・ペーパー及び自己資金により充当しています。当第3四半期連結会計期間末の有利子負債残高はリース負債を含めて6,826億円となり,前連結会計年度末と比較して1,631億円増加しました。これは,主として事業活動による運転資金の増加を外部借入で調達したことや,コマーシャル・ペーパーを発行したことによるものです。

当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物については,前連結会計年度末と比較して12億円減少し,1,235億円となりました。これは,主として事業活動による運転資金の支出に充てたこと等によるものです。

資金の流動性については,主要銀行との間の当座貸越枠に加え,コミットメントライン契約やコマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を保有しており,上記現金及び現金同等物と合わせて引き続き十分な流動性を確保しています。

また,資金調達の多様性では,2023年9月に策定したサステナブル・ファイナンス・フレームワークを用いて,グリーン/トランジション・ファイナンスによる資金調達を実施しました。ESG経営を進める中で,ファイナンスを事業活動と一体ととらえ,自然と技術が調和する持続可能な社会の実現のために適切な資金調達と事業展開を行なっていきます。

 

 

(5)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は248億円です。なお,当第3四半期連結累計期間において,当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(6)生産,受注及び販売の実績

 a.生産実績

  当第3四半期連結累計期間における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

資源・エネルギー・環境

311,866

17.4

社会基盤

127,317

3.7

産業システム・汎用機械

341,542

9.4

航空・宇宙・防衛

341,440

34.8

報告セグメント 計

1,122,165

17.6

その他

△15,236

△164.7

合計

1,106,929

13.2

(注)1 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引を相殺消去しています。

2 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。

 

 b.受注状況

  当第3四半期連結累計期間における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

期末受注残高

(百万円)

前期末比(%)

資源・エネルギー・環境

227,840

△16.6

520,898

△7.9

社会基盤

109,387

29.3

212,543

△2.7

産業システム・汎用機械

349,575

5.7

212,256

5.6

航空・宇宙・防衛

180,964

△29.4

348,417

18.7

報告セグメント 計

867,766

△8.2

1,294,114

1.2

その他

43,678

15.7

26,100

25.0

調整額

△34,420

合計

877,024

△7.5

1,320,214

1.6

(注)1 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。

2 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引を相殺消去しています。

3 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。

4 航空・宇宙・防衛事業では,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムにより売上収益を

  減額した影響により,受注高が大きく減少しています。

 

 

 c.販売実績

  当第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

資源・エネルギー・環境

277,783

7.4

社会基盤

117,393

△2.3

産業システム・汎用機械

337,031

9.2

航空・宇宙・防衛

130,071

△49.0

報告セグメント 計

862,278

△8.5

その他

36,852

9.4

調整額

△32,467

合計

866,663

△8.4

(注)1 販売実績は売上高をもって示します。

2 金額はセグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。

3 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。

 

(7)経営方針,経営戦略,対処すべき課題

当第3四半期連結累計期間において,経営方針,経営戦略,対処すべき課題について重要な変更はありません。

 

世界経済は,これまでの金融引き締めの影響により減速する見通しですが,世界的なインフレは鈍化傾向にあり,金融政策の転換点を迎えつつある中で,将来的には緩やかに回復していくことが期待されます。高金利の継続による下振れ,緊迫化する中東情勢の影響には引き続き注意する必要があります。中国経済についても,不動産部門の低迷長期化により景気減速感が強まっています。我が国経済は,雇用・所得環境が改善する中で,緩やかに回復していくことが期待されます。

 

当社グループは,2023年度を初年度とする3か年の中期経営方針「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進めています。劇的な環境変化へ対応し,持続的な高成長を実現する事業へ変革するため,当社の成長をけん引する航空エンジン・ロケット分野の成長事業と,将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業へ,経営資源を大胆にシフトし,投資を実行していきます。

世界の航空機需要は今後確実な伸びが予想される中で,当社グループは小型~大型・超大型クラスのベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しています。ボリュームゾーンである中型エンジンの第二世代となるPW1100G-JMの累計販売台数は2022年度に3,000台を達成しており,当社グループは将来増加が見込まれるスペアパーツ需要に応えていきます。また,防衛関連事業についても,需要が拡大していることから能力増強の取組みを進めています。

中核事業である資源・エネルギー・環境,社会基盤,産業システム・汎用機械の各分野では,引き続き事業ポートフォリオの変革を通して継続的な成長シナリオを描き,投資に必要なキャッシュを創出していきます。中核事業におけるライフサイクルビジネスは順調に推移しており,さらなる拡大を図りながら成果の刈り取りを進めていきます。

また,それらを実現するために必要な変革人財の育成・獲得や,デジタル基盤の高度化を進め,企業文化,企業体質の変革を進めていきます。