E30118 IFRS
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、社会が直面する様々な課題を解決するため、「人」+「サイバー・フィジカル空間」(HCPS:Human-Cyber-Physical Space)を融合する「サイバニクス(人・AIロボット・情報系の融合複合)技術」を駆使して、「テクノピアサポート社会」の実現、ロボット産業・IT産業につづく新産業「サイバニクス産業」の創出による未来開拓を推進しています。
当社が目指す「テクノピアサポート社会」とは、人とテクノロジーが共生・協調し相互に支援し合うことにより、世代を超えた人々の自立度・自由度を高め、生活・心身等の諸問題を解決できる安心安全な社会です。当社グループは、人間の機能改善・再生・拡張・支援が可能なサイバニクス技術の社会実装を事業として推進することにより、「テクノピアサポート社会」の実現と「サイバニクス産業」の創出を進めています。
事業推進の状況
《医療:サイバニクス治療》
当社グループは、世界初の装着型サイボーグHAL®を利用した脳・神経・筋系の機能改善・機能再生を促進するサイバニクス治療を、グローバルな標準治療として普及させる取り組みを進めています。2025年6月に国際的な医学誌『Global Spine Journal』に掲載されたシステマティック・レビューにおいて、HAL®と、9種類の類似形状の他社外骨格型の製品(ロボット制御で動作が繰り返される装置)と比較した結果、HAL®は、神経可塑性を誘導し、脊髄損傷(SCI)に起因する複数の機能障害に対して全身的かつ包括的な治療効果を有する唯一のデバイスであることが明らかになりました。本論文では、機能的MRI研究の知見を引用し、自発的な運動(active movement)は、受動的運動(passive movement)に比べて中枢神経系に対する神経活動をより強く喚起することが報告されています。また、HAL®の基本原理によって実現される中枢系と末梢系の間で構成される反復的な神経伝達のプロセスが、脳や脊髄における信号の学習と強化を促し、最終的には脊髄損傷部位以下の神経回路の再構築・再活性化、部分的な神経支配の回復へと繋がると考察されています。このような神経可塑性の誘導機構により、HAL®は歩行機能のみならず、排尿・排便機能、疼痛、QOL(生活の質)といったあらゆる二次的健康指標にも一貫した改善効果を示しました。これは、神経系全体への治療的アプローチとして、HAL®が他に類を見ない治療装置であることを臨床的に裏付けるものです。
(日本)
医療用HAL®「下肢タイプ」(両脚モデル)については、有効な治療法が確立されていない緩徐進行性の神経筋難病疾患を対象として、サイバニクス治療の普及に取り組んでいます。使用成績調査で極めて高い有効性と安全性を示す結果が得られたことを踏まえ、「他に有効な治療方法が確立していない緩徐進行性の神経・筋難病疾患の患者に対して、既承認薬も含め前例のない顕著な機能改善効果が確認された」(日本神経治療学会提案の医療技術評価提案書より抜粋) として令和4年度診療報酬改定以降、診療報酬点数が増点されています。
脊髄疾患に関しては、ウィルス性のHTLV-1関連脊髄症(HAM)および遺伝性の痙性対麻痺の2疾患について、2022年10月に適応拡大の承認を取得し、2023年10月から保険適用されています。また、外傷性の脊髄疾患である脊髄損傷については、当局と適応拡大の承認申請について協議しています。
脳卒中に関しては、医療用HAL®「下肢タイプ」(単脚モデル)の医師主導治験(HIT2016試験)の結果を踏まえて、最新の患者像や臨床ニーズを捉えた追加試験(治験)の実施について準備を進めています。
医療用HAL®下肢タイプの小型モデルは、2025年1月に既承認の対象疾患に対する医療機器として承認を取得しました。小型モデルの承認取得により、従来モデル(目安身長150cm以上を対象)の使用が困難であった目安身長100cm~150cmの患者に対してもサイバニクス治療が可能となりました。米国、欧州と合わせた主要3拠点において小型モデルが医療機器として承認・認証されたことを受け、今後、世界各国における小型モデルの医療機器化を推進し、事業を展開してまいります。
HAL®「腰タイプ」については、パイロットスタディにおいて、パーキンソン病患者の運動機能改善に良好な結果が得られたことから、医療機器承認取得に向けた治験実施の準備を進めています。
(米国)
個人向けの医療サービス事業として、子会社のRISEヘルスケアグループ(RHG)社はカリフォルニア州南部を中心に事業を展開しています。当社のHAL®によるサイバニクス治療は現在5拠点で展開しています。
2024年5月には、米国食品医薬品局(FDA)より、世界に先駆けて医療用HAL®の小型モデルの市販承認と脳性麻痺(対象年齢は12歳以上)への適応拡大の承認を取得しました。また、日本で承認済みのHTLV−1関連脊髄症(HAM)、遺伝性痙性対麻痺への適応疾患の拡大についても併せて承認を取得しました。
米国でのサイバニクス治療の実績蓄積と、医療用HAL®の小型モデルの承認及び対象疾患の拡大を踏まえ、個人向けの医療サービス事業と医療用HAL®の製品レンタル事業の両輪で今後の事業を展開してまいります。
(EMEA:欧州や中東)
主要各国でのサイバニクス治療の普及が進んでおり、イタリアでは、医療介護サービスを専門とする大手社会協同組合Coopselios社に対して、HAL®シリーズ36台を導入し、今後更に増台を計画しています。トルコでも、医療ツーリズムの発展とともに、サイバニクス技術に対する関心が急速に高まっており、現在同国内4施設でHAL®が稼働しています。また2024年11月には、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施するウクライナ緊急復旧・復興プロジェクト向けにHAL®シリーズ等のサイバニクス製品を受注しました。ウクライナの首都キーウの医療施設への導入に向けた納品が2025年3月に完了しており、戦禍により障害を負った方などの治療に役立てられることが期待されます。その他、ポルトガルでも新規導入が進んでいます。
ドイツにおいては、公的医療保険の当局であるG-BA(ドイツ連邦共同委員会)が、脊髄損傷に対する公的医療保険適用を前提とした臨床試験の実施を決定しており、治験協力機関の選定が完了し、現在、治験実施施設の選定等の準備が進行しています。
2024年12月には、医療用HAL®の小型モデルが欧州新医療機器規則(MDR)に適合した医療機器認証を取得しており、欧州においても小型モデルを含めたサイバニクス治療の展開を推進してまいります。
(APAC:アジア太平洋)
当社グループのマレーシア法人CYBERDYNE MALAYSIA社を拠点として、東南アジア及びインド・オーストラリア・台湾においてサイバニクス治療の普及を進めています。
マレーシアにおいては、政府系の従業員社会保障機構(PERKESO)との事業連携が更に強化され、PERKESOの被保険者に対してHAL®によるサイバニクス治療が普及しています。2024年5月にはマレーシア人的資源省大臣をはじめとするマレーシア政府関係者と、サイバニクス技術のマレーシア展開に向けたトップレベル会談を当社本社にて開催し、大臣より、東南アジア最大級の医療複合施設である「国立神経ロボット・サイバニクス・リハビリテーションセンター」に、サイバニクス製品の大型導入の意向が表明されました。2024年12月に、当社はPERKESOと、最大5年間、USD 約4.6Million(約7億円 *150円/ドル換算)の導入契約を締結し、2025年8月にHAL®50セット(65台)の設置を完了しました。またPERKESOからは、同センターの次のプロジェクトとして、新たなセンターの建設が正式に発表されており、今後、新センターへのHAL®の導入についての協議を進めてまいります。
台湾展開に向けては、2025年3月、台湾バイオテクノロジー開発センター(Development Center for Biotechnology)、天主教輔仁大学、天主教輔仁大学附属病院、筑波大学サイバニクス研究センターとの間で戦略的パートナーシップを締結したのに続き、2025年6月には国立台湾大学、筑波大学との間でも国際連携のためのMOUを締結しました。2025年11月には、サイバニクス医療健康イノベーションのためのシンポジウムを国立台湾大学と共同開催したことを踏まえ、今後更なる事業展開を推進してまいります。
《介護・自立支援》
当社グループは、主に高齢者の自立度の改善や重度化防止及び加齢により身体機能が低下するフレイル予防や自立維持に向けて、歩行運動に対応した「下肢タイプ」、肘・膝・足首の関節運動に対応した「単関節タイプ」、体幹運動に対応した「腰タイプ」など様々な種類のHAL®自立支援用を展開しています。
(施設型サービスの展開)
HAL®を使用した脳・神経・筋系の機能改善を促すプログラム「Neuro HALFIT®」を提供するロボケア事業は、個人向けの医療ヘルスケアサービス事業のハブ拠点として、当社グループ並びに各地域の事業パートナーとの協働により全国18箇所で展開しており、今後、更なる拠点拡大を計画しています。
(個人向け在宅サービス)
「自宅でNeuro HALFIT®」は、個人のお客様にHAL®をレンタルし、自宅で「Neuro HALFIT®」に取り組んでいただく在宅型プログラムです。サイバーダインのクラウドとデータ連動し、身体動作を指令する生体電位信号や姿勢情報等を可視化するHALモニターによって、装着者自身が視覚的にもフィードバックを得ることができます。セラピストやトレーナーなどの専門スタッフによるオンラインサポートを提供する他、訪問型のサービス事業者とも連携して、自宅での機器のセットアップからプログラム実施までの対面サポートも推進しています。
≪予防・早期発見≫
当社は、一人ひとりに最適化された健康管理や疾病の予防・診断・治療プログラムを提供するため、日常的にメディカル・ヘルスケアデータを収集・解析・AI処理する「Cyvis®(サイビス)」シリーズの開発および製品化を進めています。本シリーズを構成する「小型ホルター心電計 医療用バイタルセンサ Cyvis® M100」は、2024年11月に医療機器認証を取得しました。Cyvis®は心活動データに加えて体表面温度や加速度等も計測が可能であり、医療機関だけでなく、福祉施設入居者、労働者等に対する運用検証も進めています。今後、SpO2等、計測項目の段階的な拡充を予定しています。また、その他のメディカル・ヘルスケアデータを収集可能な新たなデバイスの開発と製品化を推進しています。
《生活・職場分野》
(介護支援用途)
2021年以降の英国ハンプシャー州における介護施設等での「HAL®腰タイプ介護・自立支援用」の運用をモデルケースとして、英国の他のエリアや欧州各国への展開を進めています。
(作業支援、除菌・清掃用途)
世界最高水準のSLAM技術による高速自律走行を実現した次世代型清掃ロボット「CL02」は、エレベーター自動昇降やクラウド連携等によるビルのスマート化と管理コスト削減を実現すべく、ゼネコン等と協力してオフィスビルを中心に導入を進めています。また、モビリティ用途を拡張して、工場内での搬送ロボットとしても稼働しています。
研究・製品開発の状況
造影剤不要・非侵襲で末梢の血管や血液の高解像度3Dイメージングをリアルタイムに実現するLED光源方式(当社保有特許)の光音響イメージング装置「Acoustic X」は、次世代の医療用画像診断装置としての医療機器化を進めています。また、海外の著名な医療機関や研究施設においても、様々な適用に向けて研究が進められています。
また、当社は、2023年度より内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期/人協調型ロボティクスの拡大に向けた基盤技術・ルールの整備」において、テーマ6「超高齢社会における世代を超えた人々が直面する社会課題の解決に向けたHCPS融合人協調ロボティクスの社会実装技術開発」に採択されており、1)住宅、施設、職場等様々な生活空間への適用、2)人情報(生理・身体・行動認知・ 心理等)と統合されたHCPS融合マスター・リモート制御技術(サイバニック化マスター・リモート技術)の活用、3)HCPS融合人協調ロボティクスを通じた人情報の非侵襲での取得・活用、4)高齢者や交通弱者の自立度・自由度を向上させる当課題の他の関連技術との連動等、社会実装へ向けた取り組みを継続して進めています。
川崎市の殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)においては、HAL®と再生医療や薬剤との複合によるサイバニクス治療の体系化や、医療・バイオ系技術とAI・ロボット・情報系の融合技術などの展開を推進するサイバニクス・メディカル・イノベーションベースA棟が稼働しており、今後の事業シナジーを想定したライフサイエンス企業の入居や、再生医療・創薬のC-Startupパートナー等との連携を進めています。
製品稼働状況について
医療用HAL®下肢タイプは、主にAPAC向けレンタルの増加により、2025年9月末時点で臨床試験用も含め国内外あわせて543台(内、国内レンタル契約114台)が稼働中です。HAL®単関節タイプは、医療用の増加に伴い、 2025年9月末時点で704台が稼働中です。HAL®福祉用等の下肢タイプは、2025年9月末時点の稼働台数は362台となっています。また、HAL®腰タイプ介護・自立支援用は、2025年9月末時点で1,072台が稼働中です。HAL®腰タイプ作業支援用は、2025年9月末時点の稼働台数は406台となっています。また、清掃ロボット及び搬送ロボットは、2025年9月末時点において181台が稼働中です。
以上の結果、当中間連結会計期間の経営成績は、売上収益は、欧州での製品レンタル等の売上が増加したため、売上収益1,963百万円(前年同期比8.4%減少)を計上し、売上総利益は1,222百万円(同15.1%増加)となりました。
研究開発費は前年度に引き続き新製品開発、臨床研究及び受託研究事業の実施により437百万円(同7.1%増加)、その他の販売費及び一般管理費は広告宣伝及び消耗品の購入の削減などにより1,187百万円(同13.0%減少)を計上しました。さらに、その他の収益は受託研究事業収入などにより284百万円(同29.1%増加)を計上した結果、営業損失は174百万円(同65.0%減少)となりました。
また、金融収益は投資有価証券評価益などにより627百万円、金融費用は貸倒引当金繰入などにより261百万円、CEJファンドに係る損益109百万円、法人所得税費用は繰延税金費用229百万円などを計上した結果、親会社の所有者に帰属する中間利益は70百万円(前年同期は305百万円の損失)となりました。
なお、当社は独自技術をもったスタートアップ企業との業務提携や資本提携を行っており、当該非上場株式についてIFRS第9号「金融商品」に基づき公正価値を算定しています。当中間連結会計期間において、公正価値を算定した結果、投資有価証券評価益657百万円を「金融収益」及び「CEJファンドに係る損益」に、投資有価証券評価損21百万円を「金融費用」及び「CEJファンドに係る損益」に含めて計上しました。また、当該評価に関する繰延税金費用225百万円を「法人所得税費用」として計上、CEJファンドの外部投資家持分への振替額94百万円を計上した結果、「中間利益(△は損失)」に与える影響額は505百万円となります。
(2)財政状態の分析
① 資産
当中間連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度比で367百万円増加し、48,914百万円となりました。これは主として、現金及び現金同等物が2,513百万円減少したものの、その他の金融資産(流動)が2,740百万円、その他の金融資産(非流動)が445百万円増加したことによるものです。
② 負債
当中間連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末比で348百万円増加し、9,302百万円となりました。これは主として、営業債務及びその他の債務が59百万円、繰延税金負債が220百万円増加したことによるものです。
③ 資本
当中間連結会計期間末における資本は、前連結会計年度末比で19百万円増加し、39,612百万円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する中間利益の計上に伴う利益剰余金の増加等によるものです。
(3)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ2,513百万円減少し4,311百万円となりました。当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは、362百万円の資金流入(前年同中間期は72百万円の資金流出)となりました。これは主に、金融収益627百万円、CEJファンドに係る損益109百万円の資金流出があった一方で、減価償却費及び償却費308百万円、営業債権及びその他の債権の増減額321百万円、金融費用261百万円の資金流入があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,794百万円の資金流出(前年同中間期は791百万円の資金流出)となりました。これは主に、投資の償還による収入7,984百万円の資金流入があった一方で、投資の取得による支出10,000百万円、定期預金の預入による支出744百万円の資金流出があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間における財務活動によるキャッシュ・フローは、97百万円の資金流出(前年同中間期は95百万円の資金流出)となりました。これは主に、リース負債の返済による支出85百万円の資金流出があったことによるものです。
(4)経営方針・経営戦略等
当中間連結会計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当中間連結会計期間の研究開発費の総額は437百万円です。
なお、当中間連結会計期間において当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。