売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E37709 


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当第3四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

 ①経営成績の状況

 当第3四半期累計期間における世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻による戦況が膠着状態となり、引き続き世界経済に影響を与えました。一方、2023年10月7日に攻撃が始まった、パレスチナとイスラエルの紛争で、エネルギー価格の高騰が心配されましたが、中国経済の停滞状況もあって、大きな変化はありませんでした。インフレ抑制のための各国の政策金利の上昇は、上昇のペースが落ちたこともあり、米国景気への影響はほとんどなく、世界の景気状況に大きな動きはありませんでした。

 当社製品の主要なビジネス分野であるLGD市場は、当第3四半期累計期間において引き続き市場規模が拡大しております。イスラエルには当社の大口ユーザーがあり、上記の中東での紛争がその操業に大きな影響を与えました。それまでは、当第3四半期会計期間より大口ユーザーの発注が以前のレベルに戻るとの予測を行っておりましたが、それが実現するような状況ではなくなり、当社は計画していた出荷ができませんでした。

 LGD製造企業の中で、インド企業がその生産能力を大きく拡大しており、これによって小型宝石出荷量が拡大した状況に変化はありませんでした。この結果、LGD価格の低下傾向は継続しており、他の地域のLGD企業が困難な状況に陥っていると見られます。インドにおいては種結晶価格の低下が著しく、当社も価格情報を入手して、対応を進めております。こうした情勢の下、種結晶の売上は、前年同期比で大幅な減少となりました。しかし、大型種結晶の需要の増加は顕著であり、新たなビジネスにつなげるため、当社は2023年8月に13x13mm及び14x14mm種結晶を発売いたしました。また、2023年11月には15x15mm種結晶も発売し、合わせて大型宝石製作のための種結晶をラインアップいたしました。

 ダイヤモンドデバイス開発は、世界中で活発に取り組まれており、電気自動車のパワー制御や、量子コンピューターとしての応用が期待されております。日本及び世界各国にダイヤモンドデバイスの開発に取り組む企業が誕生し、各国の開発支援策も整ってきました。当社は創立当初からダイヤモンドデバイスの開発に資する各種基板、ウエハを出荷してきましたが、パワーデバイスの開発を後押しすべく、2023年8月には低抵抗基板の実用化を公表し、当該基板の販売を開始いたしました。大学や研究所だけでなく、世界各地のベンチャー企業からも基板やウエハの受注は順調に推移いたしました。こうした情勢の下、これらの受注が第4四半期会計期間の売上に寄与することは確実な情勢です。

 一方、これまでの為替の円安傾向は、当第3四半期会計期間においては逆行傾向が見られました。

 以上の結果、当第3四半期累計期間の売上高は499,550千円(前年同期比76.3%減)、営業損失は236,630千円(前年同期は1,056,127千円の営業利益)、経常損失は156,696千円(前年同期は1,047,839千円の経常利益)、繰延税金資産の取崩しの影響により、四半期純損失は170,923千円(前年同期は727,170千円の四半期純利益)となりました。また、当第3四半期累計期間の製品種類別の売上高は、種結晶380,415千円(前年同期比81.2%減)、基板及びウエハは82,067千円(前年同期比126.8%増)、光学系及びヒートシンクは23,383千円(前年同期比12.8%減)、工具素材は13,684千円(前年同期比15.2%減)となりました。

 なお、当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載をしておりません。

 

②財政状態の状況

 (資産)

 当第3四半期会計期間末における総資産は5,275,498千円となり、前事業年度末に比べ740,958千円減少いたしました。これは主に、一時的に製品等の輸出取引を保留したことにより、現金及び預金が1,399,798千円減少したものの、製品が349,217千円、有形固定資産が382,058千円増加したこと等によるものであります。

 

 (負債)

 当第3四半期会計期間末における負債は484,430千円となり、前事業年度末に比べ601,523千円減少いたしました。これは主に長期借入金(1年内返済予定を含む)が96,103千円、未払法人税等が365,374千円、役員賞与引当金が25,000千円減少したこと等によるものであります。

 

 (純資産)

 当第3四半期会計期間末における純資産は4,791,068千円となり、前事業年度末に比べ139,434千円減少いたしました。これは主に、譲渡制限付株式報酬としての新株式の発行により資本金が15,744千円、資本準備金が15,744千

円増加したこと、四半期純損失計上により利益剰余金が170,923千円減少したことによるものであります。

 

(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(3)経営方針・経営戦略等

 当第3四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当第3四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

 当社の研究開発活動は、(ⅰ)生産技術に関する研究開発(ⅱ)新製品に関する研究開発(ⅲ)製造装置及び方法に関する研究開発の3つのカテゴリーにおいて優先順位を考慮して実施しております

 開発テーマは開発審査会を経て選定され、年度計画の下で開発作業を行っています。また、半期単位で開発報告会を開催して、進捗状況を社内に周知しています。

 当第3四半期累計期間における研究開発費の総額は、145,586千円であります。当第3四半期会計期間から、生産部においても開発活動の一部を担う体制ができ、研究開発費は大幅に増加いたしました。

 また、当第3四半期累計期間における研究開発活動の状況の変更内容は、次のとおりであります。

 研究開発活動の結果、当第3四半期累計期間において、①宝石原石の成長条件の開発、②大型単結晶の開発、③研磨速度の高速化について成果がありました

 

 研究開発活動の結果の具体的な内容は、以下に示すとおりです。

 なお、当社は、ダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(ⅰ) 生産技術に関する研究開発

当第3四半期累計期間において、引き続き製作するダイヤモンドの品質向上に取り組んできました当社のダイヤモンド結晶は、微量の窒素不純物や欠陥があるために、薄茶色を呈しております。種結晶や基板として利用する場合に、これが問題となる応用もあります。色をほとんどなくすには、窒素不純物量を減少することで可能となりますが、成長速度の低下や、多結晶の発生などの問題が出てくる場合があります。これらの問題が生じずに成長できる条件の検討を開始しております。この中では、どのような親結晶を使用するかも重要であり、合わせて検討を行っております。

 また、砥石を使用する新しい研磨手法を開発し、粗研磨に利用できることが判明いたしました。これによって、大型の基板等においては、粗研磨の時間が従来の1/3程度まで短縮でき、研磨コストの低減が実現いたしました。

 

(ⅱ) 新製品に関する研究開発

当社が想定している新製品は、応用分野によって分かれており、以下のとおりであります。

①ダイヤモンド半導体デバイス開発に必要な素材の開発

a.ウエハの開発

ダイヤモンド半導体デバイス等の製作において必須の素材であり、2インチウエハの実用化を目指しています。

単結晶サイズの大型化の研究を継続的に進めておりますが、その成果をもとにして大型のモザイク結晶を開発する計画です。このための接続技術や研磨技術等の周辺技術の開発も、同時並行で検討してまいります。

 

b.低抵抗基板の開発

ダイヤモンドのパワーデバイスにおいては、縦型デバイス構造が重要であり、これに使用する抵抗値の低いボロンドープ基板を開発してきました。縦型デバイスでは、デバイスの底面から上面(または逆方向)へ電流を流すため、抵抗値の低い基板が必要で、高濃度のボロンをドーピングすることで実現できます。

当社は以前よりこのような低抵抗のダイヤモンドが成長する条件を開発しており、2023年8月に0.2mm厚の自立基板と、従来結晶上に薄膜を形成したエピ基板の両者の製品発表を行いました。この低抵抗ダイヤモンドは、生産部に技術を移管して、本格的な生産を開始しておりますこの製品を効率的に生産するため、ウォータージェットレーザーを2023年11月に導入いたしました。これによって大型の自立基板を作製することが可能となり、ダイヤモンドパワーデバイス開発に貢献できると考えております。

 

②光学部品として必要な高品質結晶の開発

 研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

③宝石原石の成長条件の開発

 当社が原石の販売に進出するとの方針を実現するため、成長条件の検討を行ってきました。特に、大型宝石に対応するための大型原石作製については、当社の持っている大型種結晶によって特徴ある原石を生産できる可能性があるので、良質な原石を成長する条件を検討してきました。その結果、1カラット以上の宝石を製作するために必要な厚さの原石を、再現性良く製作できるようになりました。

 

(ⅲ) 製造装置及び方法に関する研究開発

2022年11月に稼働しました島工場に産総研などとの共同研究の成果である新型成長装置を導入しましたこの装置によって成長面積が拡大出来ることが判明しましたさらに成長面積の拡大や成長速度の増大を期して成長装置内のホルダー等の部品について検討を継続しています

 

(6)主要な設備

 当第3四半期累計期間において、主要な設備及び主要な設備計画等の著しい変動はありません。