売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E02404 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

① 事業全般の概況

 当第3四半期連結累計期間におけるわが国の経済は、新型コロナウィルスの影響による行動制限が緩和され、経済活動の正常化が進み、訪日外国人観光客数の増加や個人消費の持ち直しの動きなど、緩やかな回復がみられています。世界経済においても、持ち直しの傾向が続くと期待される一方、世界的な金融引締め等による影響や物価上昇、金融資本市場の変動等の影響など、その先行きについては依然として不透明な状況にあります。

 このような状況の中、当社グループは、2023年2月に「第8次中期経営計画(2023年12月期~2025年12月期)」を発表しました。グローバルで急速に変化し続ける事業環境に柔軟に対応し、サステナブルな成長を確かなものとするため、3つの基本戦略(ブランド戦略、基幹商品戦略、地域戦略)の実行による既存事業領域での持続的な成長に加え、自社の知見が活用できる新たな成長領域の探索・育成にも注力することで、事業構造の再構築を積極的に行ってまいります。そして、当社の存在意義である「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」の実現に向けて、各施策の実行に取り組んでまいります。

 当第3四半期連結累計期間においては、売上高は日本事業、中国事業及びランシノ事業が牽引した事に加え、円安の影響等もあり、729億42百万円(前年同期比3.2%増)となりました。利益面においても、増収による利益増に加え、海上輸送費の低下や商品販売構成比の改善等で、売上総利益率が前期比で2.3ポイント改善したことなどが販管費の増加を吸収し、営業利益は101億83百万円(同11.9%増)となりました。経常利益は111億49百万円(同3.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は72億81百万円(同4.8%増)となりました。

 なお、当第3四半期連結累計期間の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは次のとおりです。

・米ドル:138.17円(128.31円)

・中国元: 19.62円( 19.38円)

注:( )内は前年同期の為替換算レート

 

② セグメント別の概況

 当社グループの報告セグメントは、「日本事業」、「中国事業」、「シンガポール事業」及び「ランシノ事業」の計4セグメントとなっております。各セグメントにおける概況は以下のとおりです。

<日本事業>

 当事業は、「ベビーケア」、「子育て支援」、「ヘルスケア・介護」等で構成されております。当事業全体の売上高は275億72百万円(前年同期比3.2%増)、セグメント利益は16億38百万円(同77.3%増)となりました。

 ベビーケア(育児及び女性向け用品)の売上高は、2月より実施した哺乳器・乳首を含むベビー関連用品の一部価格改定等の効果もあり、前年同期を上回りました。基幹商品である哺乳器・乳首、ベビースキンケアに加え、おしりふきなどの消耗品についても販売強化が功を奏したことにより好調に推移しました。ベビーケアにおいては、8月より、鼻の奥に溜まりがちな鼻水を素早く吸引する「電動鼻吸い器SHUPOT(シュポット)」や、思い出の詰まった哺乳びんを日常使いできるようにするための「母乳実感パーツ」シリーズなどの販売を開始しました。なお、2月に続いて9月より、哺乳器・乳首やスキンケアを含むベビー関連用品の一部商品において価格改定を実施しています。

 また、消費者コミュニケーションとして、当社商品の特長をお客様と直接やり取りしながら分かりやすく紹介するための「インスタライブ」を不定期で開催し、アーカイブ視聴を含め合計10万人以上の方にご視聴いただいています。この他、赤ちゃんの防災や赤ちゃんにやさしいまちづくりを進める「あかちゃんとそなえの輪 推進プロジェクト」では、23都道府県32自治体に賛同いただき様々な取り組みを実施するなど、お客様とのエンゲージメント強化等に取り組んでいます。

 なお、当社のグループ会社であり、スキンケア製品等の生産を担うピジョンホームプロダクツ株式会社はこれまでの第1工場、第2工場を集約した新工場を静岡県富士市に竣工し、9月より本格稼働を開始しました。新たなスキンケア製品等で顧客価値の創造を目指し、開発体制の強化や生産能力向上に加え、環境対策にも注力していきます。

 ヘルスケア・介護用品については、介護用品ブランド「ハビナース」で販売している、炭酸飲料にも使用可能なとろみ調整食品「液体とろみ かけるだけ」などの新商品を中心に、引き続きブランドの活性化を図りました。また、ヘルスケア・介護関連商品の一部においても、2月に続いて9月より価格改定を実施しています。

 子育て支援については、事業所内保育施設等61箇所にてサービスを展開しており、今後もサービス内容の質的向上を図りながら事業を展開していきます。

<中国事業>

 当事業の売上高は273億1百万円(前年同期比4.1%増)、セグメント利益は86億13百万円(同6.3%増)となりました。

 中国本土においては、基幹商品である哺乳器・乳首の売上高は好調に推移した一方、消耗品の販売が伸び悩んだ影響等により、現地通貨の売上高は前年同期並みで終了しました。前期の第3四半期(7月~9月期)の売上高においては、上海ロックダウンからの回復に伴う反動増が発生しており、当第3四半期はその影響も見られました。

 出生数減少への対策の一環として、主力のベビー向け製品に加え、6月より販売を開始した高月齢の赤ちゃん向け哺乳器「自然離乳シリーズ」や、昨年末に発売した「キッズ向けスキンケア商品」の販売拡大など、エイジアップ商品の強化にも積極的に取り組んでいます。消費者コミュニケーションでは、動画プラットフォームTikTokの中国本土版「Douyin(抖音)」での販売強化や、SNSやライブ配信等のデジタルマーケティングを活用する事に加え、実店舗での店頭販売促進や病産院活動等の強化も引き続き実施し、安定的な事業拡大に向けた取り組みを進めています。

 また、当事業が管轄する韓国においては、当期より国内の流通体制を見直し、現地販売子会社を起点とした新規顧客の獲得及び既存顧客の更なる深耕による販売力・マーケティング力強化に取り組んでいるほか、北米市場でのピジョンブランドの育児用品の販売においても、引き続き取り組みを強化しています。

<シンガポール事業>

 当事業の売上高は101億18百万円(前年同期比6.1%減)、セグメント利益は12億25百万円(同38.1%減)となりました。

 当事業が管轄するASEAN地域及びインドでは、主要市場において前年発生したコロナ禍からの急回復に伴う反動減や出荷調整の継続等もあり、売上高は前年同期を下回りました。シンガポール国内では、ガラスのような透明感を実現した新素材のプラスチック「T-Ester(ティーエスター)」を使用した哺乳器や、自然由来で赤ちゃんの肌にやさしく、地球環境にもやさしいスキンケアシリーズ「ナチュラル・ボタニカル・ベビー」などを中心に、基幹商品の更なる販売強化に取り組んでいます。引き続き、上位中間層以上のお客様をターゲットとした商品の開発・投入を推進するとともに、当社ブランドの市場浸透を目指して積極的な営業・マーケティング活動を展開していきます。

<ランシノ事業>

 当事業の売上高は136億51百万円(前年同期比10.2%増)、セグメント利益は8億81百万円(同84.8%増)となりました。

 主力市場である北米においては、第2四半期連結会計期間に発生した主要取引先での出荷時期ズレは解消したものの、消耗品の市場競争激化、米国内での粉ミルク供給不足問題の終息に伴う当社母乳育児関連商品に対する特需の一巡などもあり、現地通貨の売上高は前年同期を下回りました。一方、ドイツ、イギリスを含む欧州地域では主力商品である乳首クリームなどを中心に売上高は伸長しました。なお、8月より、下着の内側に装着し、ハンズフリーで快適にさく乳をすることができる新商品「Wearable Breast Pump」を北米市場にて新たに発売しました。また、新規カテゴリである「産前・産後ケア商品」は、北米及び欧州において売上高は好調に推移しており、主力商品である母乳育児関連商品の拡充とともに、新規カテゴリ商品の拡充を進めながら、Eコマース強化やブランド強化等の取り組みを進めていきます。

 

(資産)

 当第3四半期連結会計期間末における資産の残高は1,054億32百万円となり、前連結会計年度末と比べ36億98百万円の増加となりました。流動資産は9億46百万円の増加、固定資産は27億52百万円の増加となりました。

 流動資産の増加の主な要因は、現金及び預金が31億80百万円減少したものの、受取手形及び売掛金が28億24百万円、商品及び製品が7億38百万円それぞれ増加したことによるものです。

 固定資産の増加の主な要因は、有形固定資産のその他が12億35百万円減少したものの、建物及び構築物が41億9百万円増加したことによるものです。

(負債)

 当第3四半期連結会計期間末における負債の残高は230億17百万円となり、前連結会計年度末と比べ12億36百万円の増加となりました。流動負債は8億47百万円の増加、固定負債は3億89百万円の増加となりました。

 流動負債の増加の主な要因は、その他流動負債が8億85百万円増加したことによるものです。

 固定負債の増加の主な要因は、その他固定負債が4億6百万円増加したことによるものです。

(純資産)

 当第3四半期連結会計期間末における純資産の残高は824億14百万円となり、前連結会計年度末と比べ24億61百万円の増加となりました。

 純資産の増加の主な要因は、利益剰余金が18億71百万円減少したものの、為替換算調整勘定が41億37百万円増加したことによるものです。

 

(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(3)経営方針・経営戦略等

① 経営方針

 当社グループでは、社員一人ひとりが大切にする企業理念として「Pigeon DNA・Pigeon Way」を設定しております。「Pigeon DNA」は経営理念と社是で構成され、ピジョンの核であり、この先も貫いていくものです。「Pigeon Way」は、存在意義、基本となる価値観、行動原則で構成されており、私たちの“心”と“行動”の拠り所であり、すべての活動の基本となる考え方です。

 私たちピジョングループは、Pigeon Wayの軸である存在意義(赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします)の実現に向けて、5つの重要課題(マテリアリティ)を設定し、事業活動を行うすべての国・地域において、環境負荷を減らし、赤ちゃんとご家族を取り巻く社会課題の解決をすること、さらに新しいビジネスにも挑戦することで、社会になくてはならない存在として持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。

 

② 事業環境

 当社グループを取り巻く事業環境は、コロナ禍を経て大きく変化しております。人々の生活様式や価値観の変化はもちろん、人々の将来に対する不安が増大し、世界各地で一時的な出生数の急減が見られました。また、赤ちゃんやそのご家族を取り巻く子育て環境も大きく変化したことで、育児用品に対するニーズや購買行動も急速に変化しております。

 一方、当社グループにおける主要市場の一角を担う中国は、経済力や出生数規模からも依然巨大市場であり、ブランド力向上や顧客ニーズへの柔軟な対応等による事業伸長余地が大きく、またアジア各国やその他新興国においても、中長期的には経済成長に伴う消費の拡大、またEコマースの浸透・発達が見込まれること等により、成長が十分期待できるものと考えております。

 

③ 経営戦略

 このような環境の中、当社グループは2023年2月より「第8次中期経営計画(2023年12月期~2025年12月期)」を発表し、グローバルで急速に変化し続ける事業環境に柔軟に対応し、サステナブルな成長を確かなものとするため、下記に示す3つの基本戦略を着実に実行してまいります。また既存事業領域での持続的な成長はもとより、自社の知見が活用できる新たな成長領域の探索・育成にも注力することで、事業構造の再構築を積極的に行ってまいります。

1.ブランド戦略:

存在意義を企業活動の軸とし、商品を通じたブランド力向上に注力する。

2.商品戦略:

ものづくりを強化し、自社の優位性を活かせる哺乳器・乳首、ベビースキンケアへの集中と新規領域の探索を行う。

3.地域戦略:

各事業での自己完結体制を強化し、市場特性に合わせた生産・販売体制の革新による効率化や収益性改善、サプライチェーンの安定化、新規市場への拡大準備を積極的に行う。

 

 既存事業領域においては、自社の優位性・競争力を活かせる基幹商品として、特に哺乳器・乳首、ベビースキンケアカテゴリをさらに強化するべく、ライフスタイル提案、新素材の検討、環境やローカルニーズへの対応など、ポストコロナの社会変化に沿った製品・サービスの充実を図ります。合わせて、各事業における各種商品・販売戦略の抜本的な見直しやサプライチェーン改善等の構造改革の実行によって、持続的な成長を目指してまいります。

 一方、当社グループが未参入、かつ自社優位性の応用が期待できる領域として、顧客ターゲットの拡張につながるキッズ向け商品(エイジアップ)や、顧客親和性の高い女性ケア商品などをはじめとする新規商品カテゴリの創出・育成や、アフリカ地域をはじめとした新規市場への参入なども積極的に検討することで、次世代の成長を担う新規領域の探索・育成にも注力してまいります。

 加えて、当社グループ全体を統括するグローバルヘッドオフィス(GHO)の機能は引き続き強化するとともに、事業の運営と成長を担う4つの事業部門(日本事業、中国事業、シンガポール事業及びランシノ事業)の役割と責任を明確にし、相互に連携することで、事業の永続的な成長及びコーポレートガバナンス等の経営基盤の強化を図ってまいります。

 なお、当社グループにおける事業継続計画につきましては、既に構築されておりますグローバルリスクマネジメント体制をより一層充実させてまいります。また、当社では、Pigeon ESG/SDGs基本方針を設定し、環境(E)、社会(S)及びガバナンス(G)の観点から持続可能なオペレーションを追求するとともに、製品やサービスの提供による新たな価値の創造により、SDGsに代表される社会課題の解決に貢献すべく事業活動を展開してまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はなく、また、新たな発生もありません。

 

(5)研究開発活動

 当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費の総額は26億54百万円です。

 なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。