売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E03061 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本四半期報告書提出日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間(2023年3月1日~11月30日)の連結業績は、営業収益が7兆258億55百万円(対前年同期比4.5%増)、営業利益は1,428億23百万円(前年同期より301億43百万円の増益)、経常利益は1,331億15百万円(前年同期より255億59百万円の増益)となり、いずれも過去最高を更新しました。親会社株主に帰属する四半期純利益は183億59百万円(前年同期より220億42百万円の改善)となりました。

当第3四半期連結累計期間は、原材料価格の高騰やロシアによるウクライナ侵攻、円安等に起因した物価の上昇が続き、高付加価値商品と値ごろ感のある商品への消費の二極化が顕著となる中で、全報告セグメントが増収となりました。営業利益については、収益性の高いプライベートブランド(以下、PB)の拡販、デジタルを活用した生産性の向上や使用電力の削減等のコストコントロールにより、主力の小売事業であるGMS(総合スーパー)事業は損益改善、SM(スーパーマーケット)事業、DS(ディスカウントストア)事業では増益となりました。また、ディベロッパー事業、サービス・専門店事業では、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)下対比で客足の回復が進んだことから、増益となりました。一方で、営業債権残高に合わせて貸倒引当金繰入額が増加した総合金融事業のほか、各国でGDP成長率予測の下方修正が相次ぐ等マクロ経済環境悪化の影響が顕著である国際事業と、コロナ対策関連商品の需要減の影響を受けたヘルス&ウエルネス事業が減益となりました。

 

<グループ共通戦略>

・ 当社はイオングループ中期経営計画(2021~2025年度)で掲げた5つの変革「デジタルシフトの加速と進化」「サプライチェーン発想での独自価値の創造」「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」「イオン生活圏の創造」「アジアシフトの更なる加速」を着実に推進し、「環境・グリーン」の取り組みを進めています。

・ デジタルシフトの加速と進化:

   GMS事業やSM事業では、セルフスキャン、セルフチェックアウトシステムの導入を進めた結果、レジ待ち時間短縮によりお客さまの利便性が高まり、店舗オペレーションの効率化により人時生産性が向上しました。適切な割引価格を提示して廃棄による食品ロスを削減する「AIカカク」、需要を予測して商品発注を最適化する「AIオーダー」、勤務計画を自動起案する「AIワーク」等AIを活用した効率化が進み荒利益率や生産性が改善しています。さらに、イオンフィナンシャルサービス㈱(以下、イオンフィナンシャルサービス)の海外子会社では「AIクレジットスコアリング」や「AI回収スコアリング」を積極的に導入し、外部信用情報のないお客さまが一定数を占める市場においても、「AIスコアリング」による審査の精緻化によるお客さまの資金ニーズにお応えすると同時に、クレジット審査及び回収業務の効率化を目指します。

   オンライン販売では、店舗から出荷するネットスーパーの売上が継続拡大しているほか、7月にはイオンネクスト㈱が顧客フルフィルメントセンター(以下、CFC)から出荷するオンラインマーケット「Green Beans(グリーンビーンズ)」をグランドオープンし、東京都の11特別区、千葉県の8市及び神奈川県川崎市においてサービスを展開しています(2023年11月末時点)。朝7時から夜11時まで1時間単位で配送時間を設定でき、品質の高い生鮮商品やCFC出荷ならではの大容量商品等最大50,000品目で構成するサービスは、共働きや子育て世帯をはじめ、買物時間短縮の必要性が高く、来店機会も限られるお客さまのニーズに応えるものです。第2号CFCは、東京都八王子市にイオンモール㈱(以下、イオンモール)が2025年に開業予定の複合型商業施設に併設する形で、2026年に稼働開始予定です。

・ サプライチェーン発想での独自価値の創造:

   商品について、発売からまもなく50年を迎える当社のPBは、ナショナルブランド同等品質のお値打ち価格でのご提供から、企業理念を具現化した差別化や競争優位性の源泉へとポジションが変化してきました。2025年にPB全体としての売上2兆円を達成すべく、今年度は1.5兆円、うちトップバリュ、トップバリュ ベストプライス、トップバリュ グリーンアイの3ブランドで1兆円の売上を目指しています。具体的な方策として、生鮮品やデリカを除く約5,000品目のうちの約半数を新商品やリニューアル商品へ転換するとともに、付加価値型の商品を強化します。世界中の人気屋台ごはんをアレンジしたチルドレディミール「トップバリュ おうちで楽しむCaféごはん」、健康志向と時間を効率的に使う“タイパ”を意識した冷凍食品「トップバリュ 雑穀米と食べるサラダボウル」、アルコールに対する新たなライフスタイルに合わせた新感覚ドリンク「トップバリュ クラフテル」等を投入し、当社のお客さまの年齢層を拡げていきます。足元では、小麦や食用油等の原材料価格が安定し始めたことを受け、配送形態の見直しやグループ一丸となってのスケールメリットをトップバリュの厳選品目値下げや増量の形でお客さまに還元しています。さらに、2025年までにトップバリュのすべての商品をReduce(リデュース=削減化)、Reuse(リユース=再使用化)、Recycle(リサイクル=再資源化)のいずれか、あるいは複数に対応して開発された環境配慮3R商品に切り替えるべくサプライヤーと協働し、お客さまの日常の消費活動を社会課題の解決につなげます。

   物流について、10月、当社と㈱Mujinは、イオングループ共通物流ネットワークの次世代化に着手するため、次世代自動化モデル構築のテクノロジーパートナーとして提携することに合意しました。「サプライチェーン全体のデータ連携」「物流作業の自動化と知能化」「次世代拠点の最適配置」を進め、データと自動化技術に基づくサプライチェーン全体の最適効率化の実現を目指します。グループ全体の物流構造改革の第1ステップとして次世代自動化モデルセンターの構築に着手し、同モデルのグループ内展開を進めます。

・ 新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化:

   当社は、未病領域を含む新たな健康ニーズに対し、商品・サービス・場の提供を進めます。具体的には、イオンモール等の複合型商業施設や、イオンウエルシア九州㈱が展開する調剤併設型ドラッグストアとSMが融合した新業態店舗を訪れるお客さまに対して、グループシナジーを活かし、医薬品のみならず、健康を支える食材、運動、旅行等をワンストップでご提案します。7月には、主要な栄養素がバランス良く適切に調整された食品を誰もが手軽に摂取できる新たなフードシステムを構築する「一般社団法人 日本最適化栄養食協会」の設立に参画し、食によるウェルビーイングの実現を目指して活動を進めています。

・ イオン生活圏の創造:

   当社が掲げるイオン生活圏の創造は、独自価値の高い商品、デジタルの活用、健康で心豊かに生きるために必要なヘルス&ウエルネス、グリーン戦略等の、中期経営計画で掲げている「5つの変革」が層をなすことで実現されます。各地域のニーズに応じてこれらの要素が重なり合い、複層的に地域を包むことで豊かな生活圏になることを目指しています。11月には、「関東における1兆円のSM構想」のもと、当社による㈱いなげやの51%を取得上限とした株式公開買付けが完了しました。また、ホームセンター業界において従前のDCMホールディングス㈱(以下、DCMHD)、㈱ケーヨー(以下、ケーヨー)と当社グループとの提携関係を引き続き堅持するため、DCMHDによるケーヨーの公開買付けに際し、当社が保有するケーヨー株式の売却代金と同額のDCMHD株式を取得することを決定しました。

   グループ内外に蓄積した販売データと購買履歴情報を組み合わせ、ニーズを可視化して個別のマーケティングに活用し、お客さま満足の向上に取り組みます。ヘルス&ウエルネス事業のウエルシアホールディングス㈱(以下、ウエルシアホールディングス)のグループ店舗で今年度に導入が完了した「WAON POINT」の新規会員数は650万人を突破し、イオンフィナンシャルサービスではイオンカードをお持ちでなくてもグループ外の銀行口座と紐づけてAEON Payをご利用いただける仕組みや、利用者同士で残高を送金できる個人間送金を導入する等利便性向上に努めた結果、イオン生活圏に関わるお客さまが着実に増加しています。

・ アジアシフトの更なる加速:

   アセアンにおいては、人口ボーナス期で消費性向の高いベトナムを最重要国として位置づけ、電子商取引(以下、EC)を含めたマルチフォーマットでのドミナント出店を進めています。これまで日本の国際競争力の向上を目的とした融資を行ってきた国際協力銀行より、小売業に対する初の融資を受けて2030年までに30店舗のGMSの出店を目指すほか、SM等のベトナムでの展開を強化していきます。7月には、2022年の北部ハノイに続き、南部主要経済圏の中心に位置するビンズン新都市にもSSM(大型スーパーマーケット)を出店し、トップバリュや住居余暇部門のPBであるHOME COORDY(ホームコーディ)等の確かな品質を現地にお届けしています。中国においては11月、2年半ぶりに新たなモール「イオンモール武漢江夏(湖北省武漢市)」をオープンしました。ビジネスエリア、公共サービスエリア、企業研究開発エリアに囲まれた当地は車で20分圏内に居住者・就業者合わせて143万人を有し、今後マーケットの成長が期待できる大変有望なエリアです。

・ 環境・グリーン:

   当社は8月、企業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目的に、CO2排出量、使い捨てプラスチック使用量、食品廃棄物発生量の削減目標を掲げ、未達の場合は脱炭素に資する活動をする団体に寄付をするサステナビリティ・リンク・ボンドにて資金を調達しました。同種の債券において、CO2排出量のほか資源循環促進の目標を伴う発行は国内初です。また、容器包装リサイクル法改正前にグループ全社で無料配布を終了していたプラスチック製レジ袋を、イオン、イオンスタイル全523店舗の衣料・くらしの品、日用品等の売場において、環境に配慮したFSC認証紙や植物性インキを使用した有料の紙製に10月以降順次切り替えています。当社はこれからもお客さまとともに資源の無駄使いや使い捨てを見直し、脱炭素社会の実現に向けての取り組みを進めます。

 

セグメントの経営成績は次のとおりであります。 

なお、第1四半期連結会計期間より報告セグメントとして記載する事業セグメントを変更しており、当第3四半期連結累計期間の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。

 

① GMS事業

GMS事業は、営業収益2兆4,901億60百万円(対前年同期比104.1%)、営業損失12億91百万円(前年同期より135億15百万円の改善)となりました。

イオンリテール㈱は、「荒利益額の最大化」「ショッピングセンター収益改善」「デジタル売上拡大」を実行しながら、様々なコスト上昇に耐えうる経営基盤を構築すべく「収益構造改革」を加速しており、当第3四半期連結累計期間は増収となりました。荒利益額の最大化に向けては、成長カテゴリーの売場拡大や品揃えを拡充する中、食品・H&BC(ヘルス&ビューティーケア)が牽引しました。衣料では、売場環境とオペレーションを刷新することで接客を強化する「専門店モデル」を展開拡大し、荒利益率のさらなる改善を進めています。住居余暇においては、今秋にPBのHOME COORDYを一新し、お客さまのライフスタイルに合わせて商品とサービスのコーディネート提案が可能な売場へと変革させていきます。ショッピングセンターにおいても、集客策、空床の削減、テナントの一時利用の拡大等に注力したことでテナントからの家賃収入が改善しました。デジタル売上拡大においては、ネットスーパーの規模拡大や、ECのイオンショップやイオンスタイルオンラインにおける実店舗と連動した「イオン ブラックフライデー」等の施策強化に取り組みました。また、デジタルを活用したヘルス&ウエルネスの進化については、9月にシニアケア事業「MySCUE(マイスキュー)」を開始し、10月からは㈱カケハシ、大塚製薬㈱とともに経済産業省より採択された「ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(PHR 利活用推進等に向けたモデル実証事業)」の実証事業者として“意識することなく健康になっていくヘルスケアサービス”の実現を目指し、薬剤師が健康情報を活用する実証事業を開始しました。収益構造改革においては、商品原価やエネルギー価格の高騰に対して、店舗・本社の経費削減とデジタルを活用した生産性改善の両輪で推進しています。

イオン北海道㈱では、経営ビジョンである「北海道のヘルス&ウエルネスを支える企業」の実現に向けて中期5カ年経営計画の3年目となる当年度を事業モデル確立の年度と位置づけ、「商品と店舗の付加価値向上」「顧客化の推進」「収益構造の改革」「地域との連携」に取り組んでいます。当第3四半期累計期間で電子棚札を20店舗に導入、セルフレジは32店舗への新規・追加導入により累計で118店舗と業務効率の改善を進めながら、3店舗の新規出店と8店舗の大型活性化を行いました。商品については、食品では、「北海道有名ホテル監修チルドレディミール」等オリジナル商品約690品目の開発・リニューアルに加え、禁輸措置の影響を受けるホタテの販売訴求と消費拡大に努めました。衣料、住居余暇でも、オリジナルのアウターや防滑シューズをメーカーと共同開発する等、高まる外出需要に応えました。販売強化を継続するトップバリュは売上高対前年同期比が111.2%と、2桁成長を維持しています。デジタルの活用については、AEON Pay機能の充実やクーポン企画の強化によりiAEONの会員数は当第3四半期累計期間で約1.5倍に増加し、ネットスーパーは4店舗での拠点新設により配送時間の短縮をはかりました。さらに、地域との連携においては「フードドライブ」の取り組みを32店舗で実施したほか、学校法人酪農学園と包括連携協定を締結し、店舗での食品廃棄物の有効活用と肥育肉牛の販売による経済循環を推進しています。

イオン九州㈱では、5月に「私たちの『たからもの』 九州をもっと―」をパーパスとして制定し、特定した6つのマテリアリティ(重要課題)とともに同社のWebサイトにて公表しました。中期経営計画に掲げた「食の強化」「非食品分野の専門化」「DX 推進」「環境・地域社会への貢献」の取り組みを推進し、単体における当第3四半期累計期間の業績は営業収益、各段階利益とも過去最高を更新しました。6月に「イオン九州アプリ」をiAEONに移行してから、同社店舗をお気に入り店舗に登録された会員数は11月末時点でほぼ目標どおり約50万人に達し、AEON Pay決済額と「ガッチャクーポン」利用件数はそれぞれ対前年同期比5.6倍、123.3%と、顧客基盤の拡大や客単価の増加につながりました。福岡県内では、GMS1店舗、都市部でのシェア拡大を目指したコンパクトSM「マックスバリュエクスプレス」を含むSM5店舗、ホームセンター1店舗のほか、SMとドラッグストアが融合した新フォーマット「ウエルシアプラス」4店舗の新規出店により店舗網を拡充しています。買物にご不便のある地域の皆さまに対する「イオンの移動販売」では、大型商品やまとめ買いニーズにもお応えできるよう、ネットスーパーとの連携を進めています。実店舗でのブラックフライデーセールに先行して実施した予約販売会では高単価商品が好調で、ECサイト売上高は対前年同期比155.9%と大幅に伸長しました。

 

② SM事業・DS事業 

SM事業は、営業収益2兆261億57百万円(対前年同期比103.4%)、営業利益218億70百万円(前年同期より144億29百万円の増益)となりました。

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱(以下、U.S.M.H)は、商品と店舗変革による店舗収益の拡大、OMO(Online Merges with Offline)による店舗外収益の拡大、保有する知的財産を活用したビジネス領域の拡大を柱とする、3カ年の中期経営計画に今年度から着手しました。9月からは、同社グループの共同物流センター「U.S.M.H 八千代グロサリーセンター(千葉県八千代市)」より商品供給を開始し、店舗運営を最適化する持続的な物流体制を構築しました。環境負荷低減に貢献するサステナブル商品を扱うU.S.M.HのオリジナルPB「Green Growers」では、米国の植物由来代替肉「BEYOND MEAT」製造企業BEYOND MEAT,INC.との独占販売契約や、化粧品のオルビス㈱との協働企画開発による「INNER COLOR DELI」の展開で、持続可能な社会の実現に向けた独自の価値を訴求しています。同社連結子会社の㈱マルエツでは「オンラインデリバリー」の取り扱いを44店舗、「Uber Eats」を利用したサービスを116店舗に拡大しました。生産性向上においては電子棚札を109店舗に拡大し、需要予測型発注を11月に全店で開始しています。同じく㈱カスミでは7月にお客さまの個別の志向やニーズに合わせて特典を提供するプリペイド機能付きポイントカード「Scan&Go カード」を導入し、11月末時点の発行枚数は105万枚を超えました。これまで蓄積してきた購買データを活用できる体制が整い、一人一人のお客さまに向けた企画やサービスの提供を順次実施しています。同じくマックスバリュ関東㈱では行政と協業して買物困難地域にて移動スーパーを開始したほか、店舗従業員一人一人の声を活かした店舗活性化を3店舗で実施する等、事業会社ごとに地域の特性やニーズに合わせた取り組みを進めています。

㈱フジ(以下、フジ)では、「お客さまと従業員の『圧倒的な安心とワクワク』を実現する」を経営ビジョンに掲げ、お客さまの行動や社会の変化に対して柔軟かつ迅速に対応する、最も地域に貢献する企業集団を目指しています。同社連結子会社の㈱フジ・リテイリング(以下、フジ・リテイリング)では、愛媛県と広島県を重点エリアとして出店計画を進め、店頭の利便性と競争力向上を目指す既存店の活性化にも取り組んでいます。2024年3月1日にフジを存続会社、フジ・リテイリング及びマックスバリュ西日本㈱(以下、マックスバリュ西日本)を消滅会社として吸収合併するに際して、マックスバリュ西日本と食品の共同開発を行う等シナジーの創出に取り組み、9月に本格導入したトップバリュでは食品500品目、衣料品・住居余暇320品目を順次展開します。さらなる事業の拡大に取り組む移動スーパーは、6県48店舗を拠点に84台の専用車両で地域のお客さまの利便性向上に努めた結果、売上高対前年同期比が131.4%へ伸長しました。また、マックスバリュ西日本では、「地域密着」「生鮮強化」を軸にサプライチェーン改革を行い、兵庫県西部、岡山市、広島市、山口県、香川県及び山陰エリアを中心とする出店と既存店の活性化に加え、移動スーパーやECをはじめとするノンストア事業の確立に向けた取り組みを進めています。移動スーパーは9県31店舗を拠点に41台の専用車両にて山間部や島しょ部を中心に事業を拡大し、「Uber Eats」や「Wolt」によるデリバリーサービスを計8店舗で展開する等、お客さまの不便を解消する新しいサービスの提供に注力しています。商品では、地元素材を使用して開発した弁当や加工品のほか、厳選した「バイヤー三ツ星」商品を全店に展開し、トップバリュの販売強化や火曜市の深耕、夕刻以降の出来立て惣菜の拡充に注力しました。プロセスセンターの活用のほか、専用端末でスキャンしながらお買い回りができる「マイピレジ」導入店舗の拡大やiAEONの活用等、デジタルによる生産性向上もはかっています。

マックスバリュ東海㈱では、ブランドメッセージである「想いを形に、『おいしい』でつながる。」を具現化すべく、地域に根差した店舗づくりや商品・サービスの提供に取り組んでいます。商品においては、生産者を応援し地域に親しまれる「じもの」商品の品揃えの拡充や、食事バランスを考慮した商品を通じて健康的な食生活を提案する「ちゃんとごはん」を進める等、体にやさしい商品の開発にも注力しました。節約志向の高まりに対しては、得意日の販促やトップバリュの展開のほか、食べきり・使いきりに適した小分け商品の品揃えを強化しています。また、累計223店舗へのキャッシュレスセルフレジの導入や、気象予測データを活用した生鮮食品の自動発注支援システムの全店舗農産部門への導入で、お客さまの利便性と生産性の向上をはかりました。さらに、iAEONでのクーポン配信、「Uber Eats」を利用した商品配達サービスの計56拠点までの拡大、計13台の移動スーパーの運行等で、顧客接点の創出に注力しています。

DS事業は、営業収益2,997億61百万円(対前年同期比104.9%)、営業利益60億98百万円(前年同期より48億41百万円の増益)となりました。多くの生活必需品の値上げが続き、家計の負担が増していく中、まとめ買いへのニーズ、単位当たりの安さへのニーズに対応したケース販売、大容量商品の訴求により、1点単価、客単価が上昇しています。人件費や物流コストの増加に対しては、積載効率の改善を中心とした配送効率の見直し、物流網・物流拠点の再整備を進めるほか、セルフレジの導入、iAEONやAEON Payの活用でお客さまの利便性の向上をはかっています。

 

③ ヘルス&ウエルネス事業

ヘルス&ウエルネス事業は、営業収益9,145億93百万円(対前年同期比107.6%)、営業利益304億64百万円(前年同期より4億22百万円の減益)となりました。

ウエルシアホールディングス及び同社連結子会社では、当第3四半期連結累計期間において、マスクや抗原検査キット等のコロナ対策関連商品に対する需要は、感染縮小とともに減少しましたが、各国の行動規制緩和を受けたインバウンド需要には回復が見られます。物販部門においては早期のインフルエンザの流行により総合感冒薬等の医薬品や、外出の増加により化粧品の需要が増加し、既存店売上高は堅調に推移しました。オリジナルPBの「からだWelcia」「くらしWelcia」に加え、トップバリュの売上も増加しています。調剤部門においては、調剤併設店舗数の増加(当第3四半期連結会計期間末現在2,117店舗)や医療機関受診頻度の回復により、処方箋受付枚数が増加しました。またWAON POINTサービスを全国の店舗に導入した結果、同社のポイント会員であるウエルシアメンバーが990万人を超えました。販売費及び一般管理費については、店舗のエネルギー消費低減に向けた取り組みや、自動発注の推進による店舗業務の効率化により、経費適正化に努めました。2025年度内にたばこの販売を終了する方針に合わせ、12月より「ウエルシア禁煙応援プログラム」の提供を開始し、禁煙に取り組まれるお客さまを支援しています。

 

④ 総合金融事業 

総合金融事業は、営業収益3,551億58百万円(対前年同期比106.6%)、営業利益272億49百万円(前年同期より147億23百万円の減益)となりました。

イオンフィナンシャルサービスは国内及び海外において、グループ共通ポイントを活用した利便性の向上、モバイルサービスの拡充、新規事業の創出等、中長期的な成長に向けた投資及び基盤整備を進めるとともに、デジタル金融包摂の進展に取り組んでいます。

国内では、お客さまの生活様式や価値観の変化を受けて、実店舗の強みを活かした対面でのご相談とともに、IT 技術の活用による利便性の向上に取り組んでいます。2024年1月に制度改正されるNISAをはじめとした資産運用ニーズの高まりに合わせた口座開設キャンペーン実施やクラウドファンディングの参画等商品ラインナップの拡充を進め、AEON Payの利用可能場所の拡大及び加盟店と共同での利用促進企画等当社グループ内外で連携を強化した結果、㈱イオン銀行の預金口座数は854万口座(期首差25万口座増)、国内カード有効会員数は3,132万名(期首差50万名増)、カードショッピング取扱高は5兆2,571億18百万円(対前年同期比109.4%)と堅調に推移しました。

海外では、マクロ環境の悪化やインフレ、各国政府によるコロナ下の支援策の縮小等厳しい収益環境にあるものの、消費活動の回復に伴い、カードショッピング及び個品割賦の取扱高の増加が継続しています。中華圏では、香港の現地法人AEON CREDIT SERVICE (ASIA)CO.,LTD.が銀聯国際(UnionPay International)のコード決済「銀聯QR」をスマートフォンアプリへ搭載して中国本土とシームレスな決済を可能とし、NFC(Near Field Communication)決済も導入して利便性を高めました。メコン圏では、タイ政府の発行する電子決済・口座間送金アプリ「Prompt Pay」と連動するキャッシュバック企画等、デジタルタッチポイントの活用を進めています。ベトナムでは、金融包摂の考えのもと、10月にPost and Telecommunication Finance Company Limitedを完全子会社とすることを決定し、個人ローンを中心とした新たな金融サービスでの事業拡大を目指していきます。マレー圏では、AEON CO.(M)BHD.(以下、イオンマレーシア)との共同利用施策のほか、デジタルやAIを活用した審査の短縮による利便性向上と与信の精緻化に取り組んでいます。インドネシアでは、現地法人PT.AEON CREDIT SERVICE INDONESIAが新たなBNPL(Buy Now Pay Later)の決済サービス「QRIS PayLater」を10月に開始する等、各展開国におけるお客さまの消費動向や資金ニーズに対応した金融サービスの導入を強化しています。

 

⑤ ディベロッパー事業

ディベロッパー事業は、営業収益3,472億68百万円(対前年同期比105.8%)、営業利益345億90百万円(前年同期より12億13百万円の増益)となりました。

イオンモールは、5月に新たに策定した2030年ビジョン「イオンモールは、地域共創業へ。」に基づき「つながる」を創造し、広げ、深め、持続可能な地域の未来につながる営みを共創する企業を目指しています。

国内では、お客さまの外出意欲の改善が続く中、ハロウィンやブラックフライデーでも集客強化に努め、当第3四半期連結累計期間の既存モール専門店売上高(対象91モール)は対前年同期比106.2%と伸長しました。夏のクールシェアに加え、12月から2024年2月には国内のイオンモールをウォームシェアスポットとして登録し、アプリやWAON POINT施策との連動等、マーケティングデータに基づくお客さまの購買意欲を喚起する取り組みと合わせて、モールのアセットを活用しながら時節の集客と売上の拡大をはかります。事業創出の観点では、コーポレート・ベンチャー・キャピタル「Life Design Fund」の設立や専門店テナント企業に対する共同配送サービス等を実施し、ESG経営の実現に向けては、従来の「イオンモール まちの発電所」の拡大に加え、お客さま参加型のEV充電「V2AEON MALL」サービスやバイオガス発電の導入、営農型太陽光発電の新たな取り組みを進めています。

海外においては、2025年度末時点での海外50モール体制実現を目指し、新規出店を加速していきます。最重点出店エリアであるベトナムでは、ホーチミン市を中心とした南部、ハノイ市を中心とした北部の両エリアに加えて、ベトナム第3経済圏である中部エリアの周辺都市においてもドミナント出店を推進します。中国では、成長性の高い内陸部の湖北省・湖南省を重点出店エリアと位置づけ、11月の武漢江夏(湖北省武漢市)に続き、経済成長の著しい湖南省省都の長沙市に2024年、2025年に大型モールの出店を計画しています。カンボジアでは、シハヌークビル港に隣接する経済特区に開設したシハヌークビルFTZロジスティクスセンターが、通関及び倉庫業務すべてを自社運営する新たな物流事業の拠点として7月よりフル稼働しています。モール単一フォーマットによる事業展開から、各国及び各地域が抱える課題を深掘りし、商業施設の枠組みにとらわれない新たな事業機会を探索していくことで、地域ごとの特性に合わせた新たな価値創造モデルで事業展開をはかっていきます。

 

⑥ サービス・専門店事業

サービス・専門店事業は、営業収益5,935億56百万円(対前年同期比104.7%)、営業利益120億75百万円(前年同期より60億42百万円の増益)となりました。

イオンディライト㈱の当第3四半期連結累計期間は全7事業で増収し、中でも省エネ関連工事や改装・修繕工事の受託を拡大した建設施工事業、並びに各種資材の受注を拡大するとともに原価上昇分の売価への適正な反映が進んだ資材関連事業が2桁成長となりました。アカウント営業の強化を通じた提供サービスの拡大や同一顧客における他拠点物件の受託等により顧客内シェアを拡大するとともに、これまで蓄積してきた実績やノウハウを活かしたお客さま起点の提案活動を継続することで、新たに多種多様な施設でサービスの提供を開始しました。また、持続可能な事業モデル構築に向けて、複数の施設を効率的に管理する「エリア管理」の展開や、デジタルデバイスを活用した定型業務の自動化等のDXを強化しました。加えて、11月よりビルクリーニング分野での特定技能外国人の受け入れを開始しました。

㈱イオンファンタジーは、当第3四半期連結会計期間末の店舗数は国内699店舗、海外451店舗、合計1,150店舗となりました。国内事業では、戦略的小型店「TOYS SPOT PALO(カプセルトイ専門店)」と「PRIZE SPOT PALO(プライズ専門店)」の出店や、駅ビルや百貨店等新たな立地の開拓を進めるカプセルトイ部門とプライズ部門に加え、ブラックフライデーキャンペーン期間に販促を行ったメダル部門も好調に推移しました。長年培ったノウハウを結集させてそれぞれ3月、7月にオープンした、子どもと地球の未来を育む、遊んで学べるプレイグラウンド「ちきゅうのにわ」や、エンターテインメント型グランピング施設「ミューの森」も好評を得ています。海外においても、マレーシア、フィリピンが引き続き牽引したアセアン事業は、第3四半期連結累計期間としては売上高、営業利益ともに過去最高となりました。

㈱キャンドゥは、当社グループとの協業によるシナジーを最大限に発揮するため、「販路の拡大」「商品・ブランドの差別化」「企業価値の向上」を掲げ、お客さま満足の向上をはかる取り組みを強化しています。販路の拡大では、当社グループを中心に出店を加速させた結果、当第3四半期連結会計期間末における店舗数は1,272店舗となりました。商品・ブランドの差別化では、お客さまから支持される商品を追求し、生活防衛意識にフィットした100 円商品と、付加価値を提供する他価格帯商品のMD(マーチャンダイジング)を構築し、趣味嗜好品の品揃えも拡充しています。10月には、それまで100円ショップの出店が無かった丸の内・大手町エリア(東京都千代田区)に「ライフスタイル提案型ショップ(New Can★Do)」をオープンしました。また、企業価値の向上では、利便性向上、コスト低減、先行投資をテーマに本部主導のオペレーション導入やセルフレジ導入の検討を進めるほか、什器・備品等を当社グループと共同仕入れすることにより出店コストや設備管理コストを抑制し、IT・デジタル化による収益性向上をはかっています。

㈱コックスは、「ブランド力強化・MD改革による荒利率の改善」「EC運営改善・D to C(Direct to Consumer)強化によるEC売上の拡大」「売り方改革・売場改革による店舗売上の回復」を重点施策に掲げています。当第3四半期連結累計期間においては、ikkaのアパレル・服飾雑貨とLBCの生活雑貨が融合したファミリー向けファッション・ライフスタイルセレクトショップ「ikka THE BEAUTIFUL LIFE GREEN STORE」へのブランドリニューアルを63店舗まで拡大しました。さらに、正価販売の徹底と丁寧な割引販売に加え、中国・アセアン地域から商品調達を拡大して原価低減に努めた結果、荒利益率が対前年同期比で5.1%改善しています。ECでは、自社ECサイトのページを購入者属性に合わせて改修して売上の拡大に取り組み、他社ECサイトではチャネルごとに販促方針を見直し、利益の改善をはかりました。店舗では、接客売上の増加を目指した教育体制の強化や、再来店クーポンの拡充を進めています。

 

⑦  国際事業(連結対象期間は主として1月から9月)

国際事業は、営業収益3,803億17百万円(対前年同期比102.7%)、営業利益70億38百万円(前年同期より18億95百万円の減益)となりました。

アセアン諸国では米中摩擦やウクライナ・ロシア情勢の影響が続いており、GDP成長率予測の下方修正が相次いでいます。その中で、イオンマレーシアでは、対前年同期比でテナントの入居率が改善しました。AEON VIETNAM CO.,LTD.(以下、イオンベトナム)とともに、衣料や住居余暇の売上は厳しいものの、生活必需品では消費者ニーズに応えたEDLP(Everyday Low Price)等の価格訴求策が奏功し、好調を維持しました。両国では、SM新店舗で地域のお客さまのニーズに密着した品揃えを進めた結果、デリカ等の即食を中心に大きなご支持をいただいています。さらに、ネットスーパー「myAEON2go」の売上高は、イオンマレーシアでは対前年同期比で4割増加しています。10月にローンチしたイオンベトナムでもノウハウを共有し、お客さま基盤の拡大をはかっていきます。中国においては、不動産不況や輸出入低調といった困難な環境にあります。政府の消費喚起策や、コロナ下で伸長した食品、住居余暇でのステイホーム需要がいずれも縮小している一方で、ゼロコロナ政策の解除により客数が回復し、衣料品の売上が増加傾向にあるほか、AEON (HUBEI) CO.,LTD.(イオン湖北)は売上高、営業利益ともに好調を維持しています。ECでは、実店舗への人流の回復とコロナ規制下のまとめ買い需要の減退による一時的な市場縮小の中で、自社が運営する永旺APP(イオンアプリ)を強化しており、当年度は前年度と同水準の売上確保を目指します。

 

(2) 財政状態の分析

当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末から6,689億74百万円増加し、13兆104億97百万円(前期末比105.4%)となりました。前連結会計年度末からの増加の主な要因は、受取手形及び売掛金が2,505億83百万円、有価証券が2,325億20百万円、銀行業における貸出金が1,853億46百万円、営業貸付金が761億42百万円それぞれ増加したこと等によるものです。

負債は、前連結会計年度末から5,598億13百万円増加し、10兆9,311億4百万円(同105.4%)となりました。前連結会計年度末からの増加の主な要因は、支払手形及び買掛金が1,056億18百万円、銀行業における預金が838億34百万円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が837億57百万円、短期借入金が491億44百万円増加したこと等によるものです。

 純資産は、前連結会計年度末から1,091億60百万円増加し、2兆793億93百万円(同105.5%)となりました。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(4) 研究開発活動

該当事項はありません。