売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E03753 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第3四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)財政状態の分析

<資産の部>

 当第3四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比5兆3,210億円(20.1%)増加の31兆7,343億円となりました。内訳は流動資産が同5兆2,839億円(21.2%)増加の30兆1,567億円であり、このうち現金・預金が同7,098億円(18.4%)増加の4兆5,766億円、トレーディング商品が同4,314億円(5.7%)減少の7兆1,942億円、営業貸付金が同6,596億円(32.7%)増加の2兆6,746億円、有価証券担保貸付金が同4兆1,847億円(50.2%)増加の12兆5,263億円となっております。固定資産は同371億円(2.4%)増加の1兆5,775億円となっております。

 

<負債の部・純資産の部>

 負債合計は前連結会計年度末比5兆2,678億円(21.3%)増加の30兆56億円となりました。内訳は流動負債が同4兆9,215億円(22.8%)増加の26兆5,028億円であり、このうちトレーディング商品が同7,092億円(13.0%)増加の6兆1,518億円、約定見返勘定が同8,049億円(69.6%)減少の3,509億円、有価証券担保借入金が同4兆1,506億円(52.3%)増加の12兆803億円、銀行業における預金が同5,775億円(14.7%)増加の4兆5,103億円となっております。固定負債は同3,462億円(11.0%)増加の3兆4,984億円であり、このうち社債が同206億円(1.6%)減少の1兆2,838億円、長期借入金が同3,666億円(21.5%)増加の2兆736億円となっております。

 

 純資産合計は同532億円(3.2%)増加の1兆7,287億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,785億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を819億円計上したほか、配当金447億円の支払いを行ったこと等により、同356億円(4.0%)増加の9,218億円となっております。自己株式の控除額は同356億円(49.9%)増加の1,071億円、その他有価証券評価差額金は同222億円(90.0%)増加の469億円、為替換算調整勘定は同348億円(46.6%)増加の1,096億円、非支配株主持分は同25億円(1.0%)増加の2,613億円となっております。

 

(2)経営成績の分析

① 事業全体の状況

 当第3四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比58.2%増の9,054億円、純営業収益は同25.9%増の4,263億円となりました。

 受入手数料は2,547億円と、同23.0%の増収となりました。委託手数料は、株式取引が増加したことにより、同33.6%増の640億円となりました。引受業務では、エクイティの引受案件等が増加し、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、同55.1%増の299億円となりました。

 金融収支は、受取利息や有価証券貸借取引収益が増加したことから同42.2%増の643億円となりました。

 トレーディング損益は、債券収益が改善したこと等により、同26.4%増の712億円となりました。

 販売費・一般管理費は前年同期比8.0%増の3,197億円となりました。取引関係費は支払手数料や広告宣伝費等が増加したことから同10.9%増の594億円、人件費は、業績に連動する賞与及び賃上げによる給与の増加により、同9.1%増の1,615億円となっております。

 以上より、経常利益は同110.0%増の1,178億円となりました。

 これに特別損益を加え、法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比75.3%増の819億円となりました。

 

② セグメント情報に記載された区分ごとの状況

 純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

純営業収益

経常利益又は経常損失(△)

 

 

2022年

12月期

2023年

12月期

対前年同期

増減率

構成比率

2022年

12月期

2023年

12月期

対前年同期

増減率

構成比率

(注)

リテール部門

123,785

149,118

20.5%

35.0%

19,614

38,143

94.5%

32.4%

ホールセール部門

117,547

158,457

34.8%

37.2%

△786

30,631

26.0%

 

グローバル・

マーケッツ

77,695

107,528

38.4%

25.3%

△3,327

24,034

20.4%

 

グローバル・イ

ンベストメント

・バンキング

39,852

50,929

27.8%

11.9%

1,502

5,152

242.8%

4.4%

アセット・マネジメント部門

52,825

53,961

2.1%

12.7%

32,528

32,220

△0.9%

27.3%

 

証券アセット・マネジメント

32,536

34,402

5.7%

8.1%

14,098

14,903

5.7%

12.7%

 

不動産アセット・マネジメント

20,289

19,558

△3.6%

4.6%

18,430

17,317

△6.0%

14.6%

投資部門

9,399

14,677

56.2%

3.4%

6,505

12,982

99.6%

11.0%

その他・調整等

34,931

50,111

11.7%

△1,748

3,830

3.3%

連結 計

338,488

426,326

25.9%

100.0%

56,112

117,808

110.0%

100.0%

(注)経常利益又は経常損失(△)の構成比率は、当第3四半期連結累計期間において経常利益であったセグメントの経常利益合計に占める、各セグメントの経常利益の割合としております。

 

[リテール部門]

 リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。

 当第3四半期連結累計期間においては、エクイティ収益は委託手数料が増加したほか、大型のエクイティ引受案件があったことにより増収となりました。債券収益は外債の販売額の減少等により減収となりました。株式投資信託については、資産管理型ビジネスモデルへの移行の着実な進展と良好なマーケット環境が相まって販売額が増加したことにより、募集手数料、代理事務手数料ともに増収となりました。また、ラップ関連収益についても、契約資産残高が増加したことにより増収となりました。

 その結果、当第3四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比20.5%増の1,491億円、経常利益は同94.5%増の381億円となりました。

 

[ホールセール部門]

 ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受けやM&Aアドバイザリー業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。

 グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益及びトレーディング収益であり、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。

 グローバル・マーケッツは増収増益となりました。エクイティ収益は、国内株式及び外国株式の相場上昇を背景に顧客フローが増加したことから増収となりました。フィクスト・インカム収益は、主に国内においてクレジットを中心とした顧客フローが増加したことから増収となりました。その結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は1,075億円(前年同期776億円)、経常利益は240億円(前年同期は33億円の経常損失)となりました。

 

 グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料であり、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。

 グローバル・インベストメント・バンキングは増収増益となりました。引受け・売出し手数料は、主にエクイティにおいて複数の大型案件の取扱いが寄与し、増収となりました。また、M&Aビジネスでは、国内外で多数の案件を遂行しました。これらの結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は509億円(前年同期398億円)、経常利益は51億円(前年同期15億円)となりました。

 その結果、当第3四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は1,584億円(前年同期1,175億円)、経常利益は306億円(前年同期は7億円の経常損失)となりました。

 

[アセット・マネジメント部門]

 アセット・マネジメント部門は、証券アセット・マネジメントと不動産アセット・マネジメントで構成されます。

 証券アセット・マネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和アセットマネジメントにおける投資信託の組成と運用に関する報酬です。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益は、当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、マーケット環境によって変動するお客様の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、お客様の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。

 証券アセット・マネジメントは増収増益となりました。大和アセットマネジメントにおける公募投資信託の運用資産残高は、資金純増に加え株式相場の上昇も寄与し、前連結会計年度末比16.4%増の25.1兆円となりました。その結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比5.7%増の344億円、経常利益は同5.7%増の149億円となりました。

 不動産アセット・マネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、大和証券オフィス投資法人及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益です。また、当社持分法適用関連会社であるサムティ株式会社及び大和証券リビング投資法人の不動産運用収益からの利益は、当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、国内の不動産市場・オフィス需要の動向が挙げられます。

 不動産アセット・マネジメントは減収減益となりました。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前連結会計年度末比3.1%増の1兆4,111億円となりましたが、賃貸原価の上昇などにより、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比3.6%減の195億円、経常利益は同6.0%減の173億円となりました。

 当第3四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における純営業収益は前年同期比2.1%増の539億円、経常利益は同0.9%減の322億円となりました。

 

[投資部門]

 投資部門は主に、当社連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬、株式への配当、売電収入などのインカムゲインです。

 当第3四半期連結累計期間において、大和企業投資では、国内外の成長企業への投資や上場支援に貢献しながら、投資先の売却益により収益を確保しました。また、大和PIパートナーズでは、ローン、不良債権、不動産、国内外のPE投資を着実に実行し、大和エナジー・インフラでは、太陽光発電所の取得など、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を拡大しながら、インカムゲイン及びキャピタルゲインを計上しました。

 その結果、当第3四半期連結累計期間の投資部門における純営業収益は前年同期比56.2%増の146億円、経常利益は同99.6%増の129億円となりました。

 

[その他]

 その他の事業には、主に大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務などが含まれます。

 大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に遂行したほか、高付加価値のソリューション提案により、お客様との関係を強化したこと、また、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。

 大和ネクスト銀行では、引き続き、銀行代理業者である大和証券と連携して各種キャンペーンを実施しました。当第3四半期連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比14.9%増の4兆5,274億円、銀行口座数は同6.1%増の176万口座となりました。

 当第3四半期連結累計期間において、その他セグメントに属する一部のグループ会社が前年同期比で増益となったため、その他・調整等に係る純営業収益は501億円(前年同期349億円)、経常利益は38億円(前年同期は17億円の経常損失)となりました。

 

③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第86期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。

 

④ 経営成績の前提となる当第3四半期連結累計期間のマクロ経済環境

<海外の状況>

 世界経済は、2020年前半の新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みからの急回復が一服し、経済活動の正常化が進むにしたがってその改善ペースは鈍化しています。IMF(国際通貨基金)が2024年1月に公表した世界経済見通しによれば、2020年の大幅な落ち込みからの反動もあり、2021年の世界経済成長率は+6.3%と、IMFが成長率を公表する1980年以降で最も高い成長となりました。一方、2022年の世界経済成長率は+3.5%へと低下し、2023年には+3.1%へと一段と減速した模様です。歴史的に高いインフレ率や、それに対応するための当局による金融引き締めが、景気の拡大ペースを鈍化させたとみられます。また、2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの侵攻を契機とした地政学的緊張の高まりも、世界経済におけるリスクとなっています。

 米国の2023年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率+2.2%となり、2022年10-12月期以降減速基調にありました。記録的なペースでの物価上昇が続く中、2022年3月以降、FRB(連邦準備制度理事会)が利上げを進めたことなどが背景にあります。こうした影響をとりわけ強く受ける住宅投資で減少が続きました。一方、高いインフレ率が引き続き家計の重荷になったものの、雇用者報酬が増加したことなどが個人消費を下支えしました。こうした状況の中、3月に銀行の連鎖破綻が発生し、米国経済の先行きの不透明感は強まりました。4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率+2.1%となり、1-3月期に続いて減速しました。内訳をみると、個人消費は、大幅な伸びとなった1-3月期からは減速したものの、増加を維持しています。加えて、設備投資が大幅に増加したことも米国経済をけん引しました。一方、金利上昇の影響を主因に住宅投資は減少が続きました。7-9月期の実質GDP成長率は、前期比年率+4.9%となり、4-6月期から加速しました。内訳をみると、個人消費の大幅な増加が米国経済をけん引しました。また、減少基調にあった住宅投資も増加に転じました。10-12月期の実質GDP成長率は、前期比年率+3.3%となり、前期からは減速したものの堅調さを維持しています。設備投資の伸び率が小幅に拡大したことに加え、個人消費が引き続き好調でした。

 金融面では、FRBは歴史的な高インフレの鎮静化に努めていますが、足元では利上げのペースは減速傾向にあります。インフレ率がFRBの目標である2%を大幅に上回っていることを背景に、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が0.25%pt引き上げられ、2020年3月以降続いてきた実質的なゼロ金利政策が終了し、その後も、政策金利は段階的に引き上げられました。2023年3月に入ると金融システム不安が強まったことを受け、FRBはBank Term Funding Programと呼ばれる危機対応策を打ち出しましたが、インフレ抑制の姿勢を崩さず、3月と5月のFOMCではそれぞれ0.25%ptの利上げを決定しました。その後、6月のFOMCでは政策金利の誘導目標レンジが据え置かれ、7月のFOMCでは0.25%ptの利上げを決定しましたが、9月、11月、12月のFOMCでは3会合連続で誘導目標レンジが据え置かれました。

 欧州経済(ユーロ圏経済)は、2022年後半以降、一進一退の動きとなっています。ユーロ圏の実質GDP成長率は、2022年10-12月期にマイナス成長に転じました。その後、2023年1-3月期には小幅のプラス成長に復しました。4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.5%と、小幅ながらも2四半期連続のプラス成長となりました。しかし、7-9月期には前期比年率▲0.5%と再度マイナス成長を記録しており、停滞感が強まっています。経済規模の大きいドイツがマイナス成長に転じたことに加え、アイルランドも大幅なマイナス成長となったことが全体を押し下げました。10-12月期には前期比年率+0.1%と極めて小幅ながらプラス成長に転じましたが、ほぼゼロ成長であり停滞が続いています。

 金融面では、ECB(欧州中央銀行)はインフレの抑制に努めていますが、足元では利上げのペースは減速傾向にあります。2022年7月のECB理事会では、0.50%ptの利上げに踏み切り、2014年に導入された預金ファシリティ金利のマイナス状態が8年ぶりに解消されました。その後も段階的に利上げを実施し、2022年12月の理事会では、主要リファイナンス・オペ金利の誘導目標を2.50%に引き上げることを決定しました。2023年に入ると欧州の金融システムに対する不安が一時広まったものの、2月と3月の理事会においても、それぞれ0.50%ptの利上げを決定しました。その後、9月の理事会まで連続で利上げを決定したものの、2023年5月の理事会以降の引き上げ幅はいずれも0.25%ptとなっており、景気に停滞感がみられる中、利上げのペースは抑制されています。さらに、10月と12月の理事会では、政策金利の水準が据え置かれました。

 IMFによると、2022年の新興国の実質GDP成長率は、+4.1%の成長となりました。2023年にも+4.1%の成長率が見込まれているものの、先進国において景気後退懸念が高まる中、新興国経済でも景気減速のリスクが高まりつつあります。

 新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、2023年1-3月期の実質GDP成長率は、前年同期比+4.5%となりました。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.3%となり、1-3月期の伸び率を上回るペースでの成長となりました。ただし、2022年4-6月期には上海市でロックダウンが行われた影響で経済成長が停滞していたことを考慮すると、反動増は小幅にとどまったといえます。7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.9%となりました。10-12月期には前年同期比+5.2%となり、前期から成長率が高まりました。消費の持ち直しが景気の回復をけん引しているとみられます。

 中国以外の新興国は、経済活動の正常化が進展したことなどを背景に、2022年以降は総じてみれば持ち直しの動きが続きました。2022年には高インフレや米国での金利上昇に伴う資金流出抑制のため、多くの国が利上げを余儀なくされましたが、2023年に入り利上げを行う国は減少しています。

<日本の状況>

 日本経済は持ち直しの基調が続いています。2023年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+5.0%と2四半期連続のプラス成長となりました。経済活動の正常化が進む中、個人消費の増加が経済成長をけん引しています。4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.6%となり、高成長が続きました。物価高騰を主因に個人消費が減少しましたが、インバウンド消費の増加などが追い風となっています。さらに、半導体不足に起因する供給制約の緩和が進んだことも、経済を下支えしています。しかし、7-9月期は前期比年率▲2.9%のマイナス成長となりました。個人消費が引き続き減少したことに加え、輸入の増加が成長率を下押ししました。10-12月期には、内需の停滞が続くものの、輸出の増加にけん引される形でプラス成長が見込まれています。

 需要項目ごとにみると、個人消費には停滞感がみられます。2023年1-3月期は耐久財やサービスの消費の回復が顕著でした。サービスに関しては、全国旅行支援が旅行需要を喚起しました。耐久財に関しては、自動車の供給制約の緩和により新車販売台数が増加しました。しかし、4-6月期に入ると供給制約の緩和が一段と進展し、新車販売台数は増加基調を維持した一方、家電やスマートフォンの販売が落ち込んだことで、個人消費は減少しました。7-9月期には、けん引役であった自動車販売が振るわなかったこともあり、個人消費は減少が続きました。10-12月期には、非耐久財やサービス消費が減少したとみられます。

 企業部門の需要である設備投資は減少が続いています。2023年1-3月期の設備投資は、供給制約の緩和により企業の自動車購入が増加したことなどもあり、前期から増加しましたが、4-6月期は減少に転じました。欧米での金融引き締めを背景とした海外経済の先行き不透明感の強まりが、輸出企業の設備投資の重しになったとみられます。7-9月期に入っても、設備投資は減少が続きました。外需の先行きに不透明感が漂う中、製造業を中心に投資意欲が減退しているとみられます。10-12月期に入っても、建設投資や知的財産生産物を中心に設備投資の停滞は続いているとみられます。

 2023年1-3月期の輸出は減少したものの、4-6月期に入り持ち直しに向かい、7-9月期に入っても回復基調が続きました。自動車や同関連財の輸出が堅調であり、加えて、訪日外国人の増加によってインバウンド消費が急増していることがサービス輸出を押し上げています。10-12月期には、知的財産権等使用料の大幅増に加え、訪日外客数の増加が輸出全体をけん引しました。

 金融面では、短期金利に加えて長期金利(10年国債利回り)も操作対象とする日本銀行の金融緩和措置(イールドカーブ・コントロール)が継続しています。日本銀行による緩和的な金融政策が続くなか、米国での銀行の連鎖破綻を背景に2023年3月に入って米国長期金利が低下したことで、日本の長期金利でも低下圧力が強まりました。その後、金融不安が解消に向かったこともあり、米国の長期金利は緩やかな上昇に転じました。これにより日本の長期金利の低下圧力も緩和しましたが、2023年度に入ってからは、7月半ばまでの間、日本銀行が誘導目標とする範囲の上限である0.50%を下回る水準で推移していました。しかし、7月の金融政策決定会合で、日本銀行はイールドカーブ・コントロールの運用を柔軟化することを決定し、指値オペの買入利回りを従来の0.50%から1.00%に引き上げました。さらに、10月の金融政策決定会合で、日本銀行は長期金利の上限の目途を1.00%とし、指値オペの利回りは金利の実勢を踏まえて適宜決定する方針を示しました。こうしたイールドカーブ・コントロールの柔軟化措置によって、長期金利は一時0.9%台半ばまで高まりましたが、その後、米国の長期金利が低下したことなどを受け、12月末時点では0.647%となっています。

 為替市場をみると、2023年度以降、総じて円安傾向で推移しました。米国では高インフレを抑制するためにFRBが利上げを進めた結果、長期金利の上昇が続いた一方、日本ではイールドカーブ・コントロールによって長期金利の上昇が抑制された結果、日米金利差が拡大し、対ドルレートは速いペースで円安方向に動きました。年初時点で130円台だった対ドルレートは、12月末には141円台を付けました。対ユーロでも年初時点の137円台から12月末には156円台まで円安が進みました。

 株式市場では、2023年の株価は上昇傾向にありました。2023年1-3月期には、米国や欧州で金融システム不安が顕在化したものの、政策当局の迅速な対応によって市場が落ち着きを取り戻したことで株価は上昇しました。4-6月期に入ると、円安が進行したことや、外国人投資家による買い増しを主因に上昇テンポが加速しました。7-9月期には、6月までの急上昇の反動に加え、中国経済の先行きに不透明感が広がったことなどもあり、株価は軟調に推移しました。10-12月期に入ると、米国の長期金利が低下したことなどを背景に、株価は持ち直しました。

 2023年12月末の日経平均株価は33,464円17銭(同年9月末比1,606円55銭高)、10年国債利回りは0.647%(同0.127%ptの低下)、為替は1ドル141円40銭(同7円37銭の円高)となりました。

 

(3)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第3四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。

 

(4)研究開発活動

 該当事項はありません。

 

(5)資本の財源及び流動性に係る情報

① 流動性の管理

<財務の効率性と安定性の両立>

 当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続するうえで十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。

 当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。

 財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。

 当社は、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、当第3四半期日次平均のLCRは131.4%です。当第3四半期末のNSFRは所定の比率を上回る見込みとなっております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCR及びNSFRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。

 当第3四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。

 

 

 

(単位:億円)

 

 

 

 日次平均

(自 2023年10月

  至 2023年12月)

適格流動資産

(A)

29,304

資金流出額

(B)

42,213

資金流入額

(C)

19,922

連結流動性カバレッジ比率(LCR)

 

 

 

算入可能適格流動資産の合計額

(D)

29,304

 

純資金流出額

(E)

22,290

 

連結流動性カバレッジ比率

(D)/(E)

131.4%

 

<グループ全体の資金管理>

 当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社グループ固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。

 

<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>

 当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。

 当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。

 また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び一部の海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。

 なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。

 

② 株主資本

 当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。

 当第3四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比9億円増加し、1兆2,932億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,785億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を819億円計上したほか、配当金447億円の支払いを行ったこと等により、前連結会計年度末比356億円増加の9,218億円となりました。自己株式の控除額は同356億円増加し、1,071億円となっております。