株式会社昭文社ホールディングス

ブランドなど:マップル
情報・通信業出版スタンダードTOPIX Small 2

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E00721 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間(2023年4月1日~2023年12月31日)におけるわが国経済は、海外経済の回復ペースが鈍化しつつも供給制約が解消したことで輸出や鉱工業生産が堅調に推移し、雇用・所得環境が緩やかに改善しております。長期にわたり世界経済に大きな影を落とした新型コロナウイルス感染症は、わが国においてなお新たな変異株流行が報告されながらも、2023年春より感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同等の5類に移行されたことで、人々の経済活動における不安がほぼ解消される状況となり、当社グループが主たる事業を営む旅行・観光市場や宿泊・飲食サービス関連市場においては、全国旅行支援制度が延長されたことも追い風となり順調な回復を見せております。また、経済の正常化や地政学リスクの増大に伴って生じた世界的なインフレの影響がわが国にも波及し、物価が継続的に上昇していることが新たな懸念材料となる一方で、大企業を中心に昨年に続き2024年も高水準の賃上げが実施されるものと見られ、物価と賃金の好循環が始まることで、長きにわたり日本経済の健全な成長を阻んでいたデフレからの脱却がようやく実現することも期待されております。なお、日銀の大胆な金融緩和政策が継続されていることから歴史的な円安水準が続いており、国境をまたぐ渡航においては、ゼロコロナ政策の影響で海外渡航の正常化が遅れた中国からの訪日客を除けば、インバウンド市場が急速な回復を見せておりますが、その一方で、アウトバウンド市場の回復は低調なものとなっております。

当社グループにおきましては、長期化したコロナ禍に対処すべく、これまでグループの事業再編や、主力の市販出版物事業における事業構造改革、DXによる業務の合理化及び効率化、そしてグループ保有資産の有効活用等の施策を大胆に実施してまいりました結果、市場環境の回復とともに、前年度に3期ぶりの当期純利益の黒字化に漕ぎつけました。今後においても持続的成長を実現し、財務基盤をより盤石なものに強化していくことが重要な課題であると認識しております。特にDX推進や脱炭素社会に向けた取り組み等について、改めて当社グループの経営理念「安心な暮らしと楽しい旅をサポートする企業」と軌を一にしたサステナビリティ戦略の一環として位置づけつつ、引き続き、既存事業の効率化、新規事業開発、業務提携による商品・サービス開発等の取り組みに注力しております。

当第3四半期連結累計期間の売上高は、上記の通り旅行やお出かけの需要拡大期に合わせて新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行し、また全国旅行支援制度の延長もあって、旅行需要が昨年以上に高まったことにより、旅行関連の市販出版物、同サブスクリプションサービス及び電子書籍、さらに広告、特別注文品の売上が順調に伸び、売上高は4,212百万円となり前第3四半期連結累計期間に比べ636百万円(17.8%)増加いたしました(前年同期は3,575百万円)。損益面におきましては、売上の堅調な増加に比べて売上原価、販売費及び一般管理費の増加が抑制されていることから、営業利益は44百万円となり、前第3四半期連結累計期間に比べ309百万円改善いたしました(前年同期は265百万円の営業損失)。なお、営業外費用として2024年2月5日付の「営業外費用(デリバティブ評価損)の計上に関するお知らせ」にて公表したとおり135百万円のデリバティブ評価損を計上したことから経常損失は前第3四半期連結累計期間に比べ141百万円の改善に留まり42百万円となりました(前年同期は183百万円)。また、当期間において2023年10月20日付の「固定資産の譲渡、特別利益の計上及び通期業績予想の修正に関するお知らせ」にて公表した固定資産売却益を特別利益として計上いたしました結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,478百万円改善し、1,351百万円となりました(前年同期は親会社株主に帰属する四半期純損失127百万円)。

当社グループのセグメント別の業績は以下の通りとなっております。

 

[メディア事業]

メディア事業では、市販出版物及び電子書籍・アプリの企画制作販売、雑誌広告・Web広告の販売、特別注文品の企画制作販売、出版物に由来するブランドや商標権の権利許諾等を行っております。

当第3四半期連結累計期間において、旅行需要が昨年以上に高まったことにより、まっぷるマガジンを中心とした旅行雑誌等の市販出版物において、国内版はもとよりソウルや台湾等近傍アジア諸国・地域版等についても売上が増加し、かつ読み放題サービスを含む電子書籍も順調に伸びており、また、急速な市場回復を追い風に広告や特別注文品収益も増加したことなどから前年に比べて売上が大幅に増加いたしました。旅行・お出かけ関連の市販出版物では、定番の旅行雑誌等の拡充に加え、17のテーマで北海道179市町村を完全ガイドする北海道の旅のバイブル『北海道旅事典』や、楽しく社会を学べるガイドブック『まっぷる工場見学 社会科見学 首都圏/京阪神・名古屋周辺』、シリーズ2年ぶりの新刊となる『埼玉・群馬特別編集版 日帰り 大人の小さな旅』、そして海外ガイドブックの新シリーズ『まっぷる WORLD』5点などを発売いたしました。また、地図製品ではコロナ明けで再活性化している鉄道ファン市場に向け、ベストセラー『レールウェイマップル 全国鉄道地図帳』の全面改訂版及び同電子書籍版を発売し、ご好評をいただいている「地図でスッと頭に入る」シリーズにおいては、海外エリア紹介編の『アフリカ55の国と地域』及び『オーストラリアと太平洋の島々』や、昨今の国際情勢に合わせた『地図でスッと頭に入る世界の資源と争奪戦』及び『地図でスッと頭に入る世界の軍事情勢』を、そして大長編小説「源氏物語」のあらすじと作者・紫式部の人と生涯がわかる 『図解でスッと頭に入る紫式部と源氏物語』を発売いたしました。

この結果、メディア事業の売上高は3,050百万円となりました(前年同期は2,472百万円)。営業利益は262百万円となりました(前年同期は、営業損失73百万円)。

 

[ソリューション事業]

ソリューション事業では、当社グループのコアコンピタンスである地図・ガイドデータベースの販売、同データベースを活用したシステム製品やソリューションの販売及び受託開発等を行っております。

当第3四半期連結累計期間において、引き続き景気動向に左右されにくい警察・消防を中心に官公庁等向けの受注獲得や民間法人向けストック型商材の契約更新に注力しております。スマホによる無料ナビアプリや同連携車載システム普及等の影響で市場が縮小している市販PNDに代わり、現在着実に受注を拡大している業務用カーナビでは、最新版の『業務用カーナビSDK Ver.8.0』の提供を開始したことに加えて、いわゆる物流業界の2024年問題における課題解決の一助とすべく、ベテランドライバーの経路ナレッジがスムーズに共有でき、ルート配送や収集、点検、送迎といった固定ルートを巡回する業務に特化したカーナビアプリ 『MAPPLE ルートナビゲーター』を発売いたしました。また、2023年10月開始のインボイス制度に関連して、国税庁が公表している適格請求書(インボイス)発行事業者リストと取引先リストをスムーズに照合したいというニーズに対応すべく住所正規化に機能を特化した『アドレスクレンジングツール』を製品化いたしました。小中学校における通学路の安全対策をサポートする『通学路安全支援システム』においては、導入校・PTAのご要望にお応えし「データ共有機能」等の新機能を追加したリニューアル版を発売いたしました。なお、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みにおいては、千葉県と『電気自動車充電設備導入促進に関する協定』を締結しております。

この結果、ソリューション事業の売上高は1,069百万円となりました(前年同期は1,052百万円)。営業損失は256百万円となりました(前年同期は、営業損失210百万円)。

 

[その他事業]

その他事業では、当社グループが保有する土地建物等の有形固定資産について外部取引先に向けて譲渡または貸与する不動産事業及び販売代理事業を行っております。

当第3四半期連結累計期間において、その他事業は予定通り実施しております。

この結果、その他事業の売上高は92百万円となりました(前年同期は49百万円)。営業利益は38百万円となりました(前年同期は営業損失15百万円)。

 

(2) 財政状態の分析

当第3四半期連結会計期間末における総資産は、17,780百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,201百万円(14.1%)増加いたしました。この主な要因は、現金及び預金が1,576百万円、商品及び製品が79百万円、仕掛品が179百万円、流動資産その他が776百万円、無形固定資産その他が63百万円、投資有価証券が155百万円、投資その他の資産その他が411百万円増加した一方で、売掛金が149百万円、建物及び構築物(純額)が473百万円、土地が420百万円減少したことであります。負債合計は、5,788百万円となり、前連結会計年度末に比べ722百万円(14.3%)増加いたしました。この主な要因は、未払法人税等が165百万円、返金負債が197百万円、流動負債その他が214百万円、固定負債その他が135百万円増加したことであります。純資産においては、前連結会計年度末に比べその他有価証券評価差額金が107百万円増加したことに加えて親会社株主に帰属する四半期純利益を計上いたしております。これにより純資産合計は1,478百万円(14.1%)増加し、11,991百万円となりました。

この結果、自己資本比率は67.4%と0.1ポイント低下しております。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結累計期間末における連結ベースの現金及び現金同等物の残高は、6,317百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,576百万円の増加となりました。

当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は735百万円となり前年同期が415百万円の資金の獲得だったのに比べ1,150百万円の増加となりました。

これは主に、税金等調整前四半期純利益が1,528百万円となり、前年同期と比べ1,634百万円改善したことに加え、デリバティブ評価損135百万円を計上した一方で、固定資産売却益が1,452百万円増加したこと、棚卸資産の増減額が259百万円の増加となり280百万円増加したこと、営業活動によるキャッシュ・フローその他が977百万円の資金の使用となり1,075百万円増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は2,312百万円となり、2,028百万円増加しました。

これは主に、有形固定資産の売却による収入が2,014百万円増加したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は0百万円となりました。

 

(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。

 

(5) 経営方針・経営戦略等

当第3四半期連結累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(7) 研究開発活動

当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、2百万円であります。

なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(8) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

資本の財源及び資金の流動性につきましては、当社グループの運転資金需要のうち主なものは製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要で主なものは、データベースやソフトウェア等の固定資産取得及び当社事業戦略に沿った提携先や当社事業との相乗効果が見込まれる事業会社への出資または取得(M&A)によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

運転資金は内部資金及び銀行等金融機関からの借入や社債発行を基本としております。

なお当四半期会計期間の末日における有利子負債の残高は770百万円となっております。また、当四半期会計期間の末日における現金及び現金同等物の残高は6,317百万円となっております。