売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E03199 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

  文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

(1)経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間(2023年3月1日から2023年11月30日)におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行され経済活動の正常化が一段と進んだことに加え、供給制約の緩和、好調な企業収益等もあり、緩やかに回復してまいりました。一方、景気の先行きについては、消費者物価指数の上昇率が縮小傾向にあるものの物価高が継続しているほか、ウクライナ情勢・中東情勢をはじめとする地政学リスクの高まり、天候不順・異常気象の頻発による原材料供給の不安定化などにより、見通し難い状況が続いてまいりました。

当社グループが事業展開する食品スーパーマーケット業界におきましても、個人の消費環境については、実質賃金の前年比マイナスが続き、生活防衛意識が一段と高まっており、企業の事業運営についても人件費や電気料金をはじめとする各種コストの増加、業種・業態を越えた競合企業の新規出店が続くなど、当社を取り巻く経営環境は厳しい状況が続いてまいりました。

 

このような事業環境の下、当社グループは、お客様ニーズの変化、事業運営コストの上昇、競争の激化などに対応する様々な施策を推し進めてまいりました。

営業面につきましては、特に物価高騰対策として、当社グループのプライベートブランドと位置づけている「CGC商品」の拡販に注力し、当第3四半期連結累計期間の同商品取り扱い比率(仕入原価ベース)は前年同期比0.2ポイント上昇し13.2%まで拡大しております。併せて、㈱シジシージャパンとの連携を更に強化し、競合店対策を含む共同販促、容器・包装資材の削減、物流効率化にも取り組んでまいりました。また、カテゴリーマネジメント(※1)による商品構成の見直しについて、取り組み品目を順次拡大しており、直近では㈱ラルズにおいて、低価格帯の輸入ワインの品揃えを充実、ワインカテゴリーの拡販を強化してまいりました。加えて、当社グループの商品調達プロジェクトが中心となり、販売・仕入・在庫に係る新基幹システムの利活用を従来に増して推し進めてまいりました。具体的には、2023年9月にシステム統合した㈱オータニを含むグループ全社横断の比較分析を行い、在庫水準の適正化やロス率削減といったグループ全体の効率改善に取り組んだほか、CGC商品をはじめとする重点商品の徹底した拡販、季節催事商品を中心にMD(※2)の好事例を展開強化してまいりました。また、東北3社で酒類の帳合統一による商流効率化を進め、同カテゴリーの売上総利益率を0.7%強改善したほか、地元銘菓の売れ筋商品を域外のグループ会社で販売する試みもグループシナジー強化の施策として進めております。

 

物流面におきましても、2023年4月からの実証実験を経て10月から「ゆとり配送」を本格導入し、物流体制を再構築してまいりました。前日発注の徹底、ゆとりを持たせた納品時間の設定、荷下ろし作業の効率化、高速道路活用などにより、輸送ピークの平準化やドライバーの労働時間短縮を進めております。本取り組みは物流の「2024年問題」への対応のみならず、物流コストやCO2排出量の削減等にも資するものとなっております。

新日本スーパーマーケット同盟(※3、以下同盟)におきましては、同盟結成以降の社会情勢の変化を踏まえ、2023年3月に、より現状の経営課題に資する取り組みとなるよう、5つの分科会(マネジメント分科会、商品分科会、業務改革分科会、サステナビリティ分科会、次世代領域開発分科会)に再編し、生産性を高める取り組み(人手不足対策、コスト削減、2024年物流問題、IT・DX等)やサステナビリティ推進の取り組み(エネルギー問題、環境問題、人的資本経営等)、地域スーパーマーケット共通の課題(過疎化対策としての移動店舗・小規模店舗の展開、物価高に対応した商品や資材の調達等)について協議・対応を深めてまいりました。特に、システム・POSレジなどのデータの利活用、お取引先様との連携によるDX推進、ベーカリー部門の冷凍生地の利活用、人事交流や店舗フォーマットの開発等、物理的距離が障害とならない様な取り組みや、モーダルシフト(※4)の推進といった物流分野における研究課題について具体的に協議を進めております。また、2023年12月からは、同盟結成5周年を記念した様々なオリジナル商品の拡販並びにキャンペーンを実施しております。

 

ネットスーパーの取り組みにつきましては、㈱ラルズが運営する「アークスオンラインショップ」において配送拠点を7店舗に増やし、配送エリアを順次拡大してまいりました。個人のお客様や従来の法人取引に加え、新たな販路開拓としてリゾート地の宿泊顧客向けの販売サービスも開始いたしました。2023年6月に開始した㈱ベルジョイスの運営による「アークスオンラインショップ」の売上も順調に推移しております。また、両社において会員ステージ制度(※5)を開始したほか、期間限定の招待キャンペーン(※6)を行うなど、更なるサービスの拡充にも取り組んでおります。加えて、ネットスーパー事業の更なる拡充のため、2023年12月にAmazon社との協業による「Amazonネットスーパー アークス」をスタートさせました。札幌市・北広島市の一部地域にお住まいのAmazonプライム会員様を対象として最短2時間で商品を配送するサービスを提供しており、今後は配送エリアの拡大を検討してまいります。

 

生産性の向上及びコスト削減策として、エネルギー価格の高騰に対し、引き続きエネルギー監視システムの利活用や冷凍ケースのリーチイン化といった節電に資する取り組みを進めてまいりました。そのほか、給与明細や年末調整手続きの電子化等の業務改善も実施しております。また、DX推進委員会を中心にRPA(※7)を推進し、ルーチン業務を自動化することで、当社グループ全体で年間約16,000時間の作業時間を削減できる仕組みを導入いたしました。今後は事例の横展開を更に進め、合計で年間約29,000時間の削減効果を見込んでまいります。

 

当社グループの基盤強化につきましては、岩手県遠野市を中心にスーパーマーケット4店舗を展開する㈱みずかみと2023年9月に経営統合し、同社を㈱ベルジョイスの連結子会社といたしました。現在は同社の店舗修繕並びに商品仕入先の㈱ベルジョイスへの統合を進めております。

店舗展開につきましては、当第3四半期連結会計期間(2023年9月1日から2023年11月30日)において、2023年10月に青森県八戸市に「パワーズUシンフォニープラザ店」(㈱ユニバース)を新規出店するとともに、㈱ラルズ3店舗、㈱ユニバース3店舗、㈱ベルジョイス2店舗、㈱福原1店舗、㈱道北アークス2店舗、㈱東光ストア1店舗、㈱道南ラルズ1店舗の計13店舗の改装を行いました。なお、改装店舗のうち、㈱ラルズの「(旧)ビッグハウス野幌店」、㈱ベルジョイスの「(旧)ジョイス花巻高木店」はスーパーアークスへの業態変更を伴う改装となっております。また、㈱福原にて「フクハラ長崎屋店」、㈱東光ストアにて「東光ストア南郷18丁目店」を閉店し、当第3四半期連結累計期間(2023年3月1日から2023年11月30日)では新規出店3店舗、改装21店舗、閉店3店舗、前述の㈱みずかみ4店舗を加え第3四半期末日現在の総店舗数は377店舗となりました。第4四半期においては2023年12月に青森県八戸市に出店した「ユニバース城下店」の新店1店舗、改装4店舗、閉店1店舗を計画しております。

 

サステナビリティ推進活動につきましては、2024年4月に「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」に基づく情報開示を行い、6月には「アークス統合報告書~地域のライフラインとして」(以下、統合報告書)を発行し、8月に統合報告書の英語版も当社ホームページ上に公開いたしました。また、㈱ラルズ、㈱ベルジョイス、㈱福原、㈱道北アークス、㈱東光ストア、㈱道南ラルズ、㈱伊藤チェーンにおいてフードドライブ(※8)の取り組みを一段と加速させ、実施店舗は当第3四半期末で7社合計74店舗まで拡大したほか、㈱ユニバースで販売している「エコにんじん」「特別栽培めぇにんじん」(※9)について、プロサッカークラブ「ヴァンラーレ八戸」とのコラボパッケージ商品を販売し、地域スポーツ振興として売上の一部を同クラブに寄付する等の取り組みを実施しました。加えて、再生可能エネルギー利用によるCO2排出量の削減に資する取り組みとして、2023年8月に㈱伊藤チェーンの本部及び3店舗、2023年12月にはラルズ東光生鮮流通センターに太陽光発電システムを導入いたしました。

 

以上の結果、当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高4,364億10百万円(前年同期比4.2%増)、営業利益110億94百万円(対前年同期比7.9%増)、経常利益123億41百万円(対前年同期比7.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益79億7百万円(対前年同期比1.8%増)となりました。堅調な売上高及びシステムメリットを活かした売上高総利益率の改善により総利益高が対前年同期比で5.0%増加いたしました。販管費については、人件費や電気料金の上昇がありながらも、生産性向上の取り組みや節電施策等により対前年同期比4.7%の増加に抑えたことから、増収増益となっております。既存店売上高につきましては、節約志向が一段と強まる中、既存店客数が対前年同期比で0.9%の増加となり、既存店客単価も同3.2%増となったことから、既存店売上高は対前年同期比4.1%の増加となりました。既存店客単価の内訳は、1人当り買上点数が対前年同期比3.4%減少した一方、物価上昇に伴い1点単価が同6.8%の増加となっております。

なお、予算対比では、売上高は101.4%、売上総利益高は100.7%と予算を達成したほか、前述のコスト抑制策を進めた結果、販管費は99.4%と予算内執行となり、経常利益は予算比114.4%、親会社株主に帰属する四半期純利益は予算比112.3%と予算を大きく上回る利益水準を確保しております。

 

 

(※1)小売業者が自社の戦略や目標に基づいて商品分野(カテゴリー)を設定し、商品の管理をすること。消費者にとって適切なタイミングで、適切な場所(売場・棚)に、適切な商品を適切な価格で提供することで、需要の活性化を図ることを目的とします。

 

(※2)マーチャンダイジングの略で、商品をお客様に適切に届けるために、品揃え・価格設定・販売方法等、原材料から消費の終了までの全過程を自ら設計しコントロールすることです。

 

(※3)㈱バローホールディングス(本社:岐阜県)、㈱リテールパートナーズ(本社:山口県)、当社の3社により、2018年12月に資本業務提携契約を締結した地域密着型の独立系食品流通企業の連合体です。

 

(※4)日本の貨物輸送の大半を担っているトラック輸送を、より環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。CO2排出量削減のほか、輸送効率の向上、ドライバー不足への対応策として期待を集めています。

 

(※5)毎月の購入金額に応じて「ゴールド」「ダイヤモンド」「プラチナ」の会員ランクを付与し、ランクに応じてクーポンや抽選券の発行を行う制度です。

 

(※6)会員が新規会員を招待(紹介)した場合に、新規会員にショップ内で使える値引き券をプレゼントするキャンペーンです。新規会員がサービスをご利用した場合は、招待者にも値引き券がプレゼントされます。㈱ラルズの運営するアークスオンラインショップでは2023年11月11日から12月31日、㈱ベルジョイスの運営する同ショップでは2023年11月1日から2024年2月29日の期間に実施しております。

 

(※7)ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略で、作成したシナリオに基づいて動作するロボットにより、主にデータ入力等のルーチン業務や事務ミスの検知等を自動化する仕組みであり、業務の効率性並びに正確性を向上させることが期待されます。

 

(※8)賞味期限内でまだ食べられるにもかかわらず、ご家庭で眠っている・買い過ぎてしまった食料品などを、食品を必要としている地域のフードバンク等の生活困窮者支援団体、子ども食堂、福祉施設等に寄付する活動です。農林水産省や消費者庁、環境省が中心となって推進しています。

 

(※9)「エコにんじん」「特別栽培めぇにんじん」ともに、㈱ユニバースの店舗で発生した野菜や肉・魚、惣菜などの食品残渣を堆肥として使用した人参となります。加えて「特別栽培めぇにんじん」は、農薬および化学肥料の使用を低減(5割減)して栽培した人参です。

 

(2)財政状態の状況

(資産)

  当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して、44億13百万円増加し、2,705億69百万円となりました。この主な要因は、売掛金が10億69百万円、棚卸資産が27億52百万円、土地が21億38百万円、及び投資有価証券が21億73百万円増加した一方で、現金及び預金が37億24百万円、未収入金が13億87百万円、及びソフトウエアが11億95百万円減少したことなどによるものです。

(負債)

  当第3四半期連結会計期間末の負債合計は、前連結会計年度末と比較して、22億44百万円増加し、967億13百万円となりました。この主な要因は、買掛金が43億67百万円、未払費用が14億7百万円、及び契約負債が11億78百万円増加した一方で、短期借入金が16億77百万円、未払法人税等が10億95百万円、賞与引当金が13億73百万円、及び長期借入金が12億16百万円減少したことなどによるものです。

(純資産)

  当第3四半期連結会計期間末の純資産合計は、前連結会計年度末と比較して、21億69百万円増加し、1,738億55百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が46億33百万円、及びその他有価証券評価差額金が17億29百万円増加した一方で、自己株式が42億98百万円増加したことなどによるものです。

  この結果、当第3四半期連結会計期間末の自己資本比率は、前連結会計年度末より0.2ポイント低下し64.3%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

  当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)の残高は、前連結会計年度末と比較して37億21百万円減少し688億73百万円(対前年同期末比26億45百万円の増加)となりました。

  当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動の結果得られた資金は、162億47百万円(対前年同期比43.8%増)となりました。これは主に、税金等調整前四半期純利益123億11百万円、減価償却費71億99百万円、賞与引当金の減少額13億73百万円、契約負債の増加額11億62百万円、売上債権の増加額10億46百万円、棚卸資産の増加額26億49百万円、仕入債務の増加額41億75百万円、及び法人税等の支払額53億73百万円などによるものです。また、得られた資金が増加した要因は、売上債権が減少したこと及び仕入債務が増加したことなどによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果使用した資金は、78億64百万円(対前年同期比28.8%増)となりました。これは主に、新規出店や店舗改装等に伴う有形固定資産の取得による支出73億95百万円などによるものです。また、使用した資金が増加した要因は、新規出店や店舗改装等に伴う有形固定資産の取得による支出が増加したことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果使用した資金は、121億3百万円(対前年同期比135.4%増)となりました。これは主に、長期借入れによる収入10億円、長期借入金の返済による支出47億70百万円、自己株式の取得による支出43億8百万円、及び配当金の支払額32億45百万円などによるものです。また、使用した資金が増加した要因は、長期借入れによる収入が減少したことに加えて、自己株式の取得による支出が増加したことなどによるものです。

 

(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(5)経営方針・経営戦略等

  当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

  当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(7)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針

  当第3四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。

 

(8)研究開発活動

  該当事項はありません。