株式会社トーハン

卸売業出版

売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E02538 Japan GAAP


3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当中間連結会計期間における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 2019年末から続くコロナ禍がようやく収束の段に入る一方で、国際紛争や円安の進行に伴い、兼ねてより進行していた燃料や食料品等の生活必需品を中心とする諸物価の高騰が続いており、日本経済の先行き不透明感が一層強まる中で、出版物の買い控え傾向もより鮮明となってきております。

 上記を背景に、出版業界が抱える諸課題の解決に向け、業界内外を交えた企業間連携の動きが活発化し、取引の流動性は高まり、業界シェアの構造にも大きな変化が生じています。流通ネットワークの維持継続に向けた業界構造改革の必要性が叫ばれる中、流通を担う当社グループとしましては、高騰する物流経費や人件費等への対応は喫緊の課題であり、全体最適の視点による流通システムの再設計が求められております。

 以上の結果、当中間連結会計期間の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当中間連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ985百万円減少し、346,652百万円となりました。

 当中間連結会計期間末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,915百万円減少し、245,709百万円となりました。

 当中間連結会計期間末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,929百万円増加し、100,943百万円となりました。

 

b.経営成績

 当中間連結会計期間の経営成績は、売上高は189,846百万円(前年同期比0.8%減)となりました。営業損失は197百万円(前年同期は営業損失743百万円)、経常利益は330百万円(前年同期は経常損失641百万円)となりました。

 特別損益を加味した税金等調整前中間純利益は1,989百万円(前年同期は税金等調整前中間純損失833百万円)となり、最終的に法人税等を控除いたしました親会社株主に帰属する中間純利益は1,604百万円(前年同期は親会社株主に帰属する中間純損失957百万円)となりました。

 各セグメントの経営成績は次のとおりであります。

 出版流通事業の売上高は、188,016百万円(前年同期比0.8%減)となりました。

 不動産事業の売上高は、1,706百万円(前年同期比3.5%増)となりました。

 その他事業の売上高は、123百万円(前年同期比10.2%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前中間純利益1,989百万円に、売上債権及び仕入債務の増減、有価証券の取得及び売却、借入金による収支等を加減した結果、当中間連結会計期間末には65,158百万円となり、前年同期と比べ27,688百万円増加しております。

 当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前中間純利益に仕入債務の増加による資金の増加分や、売上債権の減少による資金の増加分等を加減した結果、10,626百万円の増加(前年同期は4,374百万円の増加)となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券等の取得及び売却による収支に、貸付金の回収と支出の加減や有形固定資産の取得及び売却により、6,121百万円の増加(前年同期は663百万円の減少)となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の借入れ及び返済による収支に、自己株式の取得による支出等により、1,262百万円の減少(前年同期は600百万円減少)となりました。

 

③販売及び仕入実績

a.販売実績

 当中間連結会計期間における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当中間連結会計期間

     (自 2023年4月1日

       至 2023年9月30日)

前年同期比(%)

出版流通事業(百万円)

188,016

99.2

不動産事業(百万円)

1,706

103.5

  報告セグメント計(百万円)

189,722

99.2

その他事業(百万円)

123

110.2

合計(百万円)

189,846

99.2

 

 前中間連結会計期間及び当中間連結会計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前中間連結会計期間

(自 2022年4月1日

至 2022年9月30日)

当中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

至 2023年9月30日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱セブン-イレブン・ジャパン

18,258

9.5

16,891

8.8

 

b.仕入実績

 当中間連結会計期間における仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当中間連結会計期間

     (自 2023年4月1日

       至 2023年9月30日)

前年同期比(%)

出版流通事業(百万円)

163,036

100.2

合計(百万円)

163,036

100.2

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループ経営陣は中間連結財務諸表の作成にあたり、中間連結会計期間末日における資産・負債の数値及び中間連結会計期間における損益の数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければならず、売掛債権、固定資産及び偶発債務等に関し、経営陣は過去の実績や現在の状況をふまえ引当金の計上等の見積りに対して合理的かつ継続的判断を行っておりますが、実際の結果は当初の見積りと異なる場合があります。

 当社グループは、以下の重要な会計方針が当社グループの中間連結財務諸表作成において特に重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

a.棚卸資産

 「第5経理の状況 1.中間連結財務諸表等 (1)中間連結財務諸表 注記事項 中間連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、4.会計方針に関する事項(1)重要な資産の評価基準及び評価方法」に記載しております。

b.固定資産の減損

 当社グループが保有する有形固定資産の価値が著しく下落し、投資額の回収が見込めない場合には減損を計上しており、株式については、時価があるものは取得価額を時価が著しく下回った場合に、市場価格のない株式等については、投資額の回収が見込めない場合に評価損を計上しております。

c.引当金等

 貸倒引当金等の引当金については「第5経理の状況 1.中間連結財務諸表等 (1)中間連結財務諸表 注記事項 中間連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、4.会計方針に関する事項(3)重要な引当金の計上基準」に記載しております。

 

②当中間連結会計期間の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)経営成績

 売上高は189,846百万円(前年同期比0.8%減)となり、前中間連結会計期間より1,537百万円減少しました。

 売上原価は、161,259百万円(前年同期比0.7%減)となり、売上総利益は28,586百万円(前年同期比1.0%減)となりました。

 また、販売費及び一般管理費は、28,784百万円(前年同期比2.8%減)となり、営業損失は197百万円(前年同期は営業損失743百万円)、経常利益は330百万円(前年同期は経常損失641百万円)となりました。

 特別利益には、固定資産売却益を計上し、また特別損失は投資有価証券評価損などを計上した結果、税金等調整前中間純利益は1,989百万円(前年同期は税金等調整前中間純損失833百万円)となり、親会社株主に帰属する中間純利益は1,604百万円(前年同期は親会社株主に帰属する中間純損失957百万円)となりました。

 

2)財政状態

ア.キャッシュ・フロー

当中間連結会計期間におけるキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

イ.資金需要

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金において出版物等の仕入にかかるもののほか、運賃、荷造費及び人件費等の営業費用であります。

設備投資資金においては、有形固定資産の取得等にかかるもののほかソフトウエアの取得等であります。

ウ.財務政策

当社グループの運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金または借入等により資金調達をすることとしております。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、事業環境の変化に中長期的に対応し、継続的な企業成長を実現すべく、5ヶ年の中期経営計画「REBORN」を策定し、当期はその最終年にあたります。当期4月1日付の機構改革においては、2024年度から始まる次期中期経営計画を見据え、経営体制の刷新を決定し、併せて組織の再編を行っております。

 その新体制のもと、危機的状況を迎える出版流通ネットワークの安定維持、本業たる出版流通事業の収益正常化、並びに新たな事業機会の開拓と収益化、即ち「本業の復活」「事業領域の拡大」に向けた取り組みを加速させました。

 

1.「本業の復活」のために

①出版流通の構造改革実現に向けて

 出版流通ネットワークの安定化のため、引き続き、返品率改善、効率販売の徹底に取り組みましたが、店頭POSの低迷が響き、書店マーケット返品率は38.2%、前期比プラス0.4ポイントの悪化となりました。

 当社グループが具現化に取り組んできた「マーケットイン型出版流通」は、成果を生み出すフェーズへと移行しております。仕入と配本、そして販売までを一気通貫で結び、出版流通にマーケットインの思想を取り入れる要と位置付ける出版流通情報プラットフォーム「en CONTACT」の普及拡大を通じ、流通の起点を読者・書店へと転換し、出版流通情報の高度な活用によって更なる流通効率化・合理化を図って参ります。リリース以降、利用者の拡大も進み、新刊点数にして80%超のカバー率を達成し、今後さらなる向上を見込んでおります。

 大日本印刷株式会社(以下、大日本印刷)との協業プロジェクトにおいては、当社の桶川センター内に大日本印刷が所有する書籍製造ラインの導入について検討を開始いたしました。POD技術を流通インフラに組み合わせることで、製造と流通の一体化、即ち書籍の適宜適量制作並びに供給体制の実現を推し進めて参ります。

 高騰する物流経費や「2024年問題」等の物流課題に対しては、事業構造の見直しによるコスト抑制施策の他、当社グループの自助努力のみではコストが賄えない取引の見直し及び当該取引先各社との交渉に取り組んで参ります。

 なお、当社グループは、出版業界改革を文化・産業の両面から志向する一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)の考え方に賛同しております。当期におきましても、読書推進及び書店活性化イベント「BOOK MEETS NEXT」や行政との連携強化に協力いたしました。

②デジタル領域での事業拡大

 株式会社メディアドゥ(以下、メディアドゥ)との資本業務提携を通じ、デジタル領域での事業規模拡大に取り組んでおります。

 メディアドゥが手掛けるNFTマーケットプレイス「FanTop」の普及を推し進め、NFTアイテムの流通販路拡大とデジタル付録のバリエーション拡大に注力すると共に、電子図書館サービス「OverDrive」の導入促進並びにコンテンツ拡充に取り組んでおります。デジタル領域において、書店参画が可能なビジネススキームを早期に確立し、書店の収益改善、経営環境の安定化に貢献して参ります。

 

 

2.「事業領域の拡大」のために

①不動産事業

 不動産事業では、引き続き保有不動産の活用を進めております。東京ロジスティックスセンター跡地等を含めた既存物件の売却、活用を進め、新規物件の取得や組み換えにより、不動産事業は大きく伸長し、当社グループの収益を下支えしております。なお、旧本社跡地開発プロジェクトにつきましては、2024年11月以降順次竣工を予定しております。

②その他新規事業

 市場環境の厳しい出版流通事業に過度に集中する現在の事業構成の見直しは、当社グループにとって最重要課題の一つであり、高い成長性と収益性を見込む新規事業の早期確立に向けた取り組みを加速させております。

 参入済み事業であるフィットネス事業、コワーキング事業につきましては、育成期から成長期へと移行し、コロナ禍以降の顧客ニーズを取り入れながら店舗拡大、サービス進化に注力しております。

 また、株式会社マリモクラフト並びに株式会社デルフォニックスは独自のブランド価値と高い商品企画開発力を発揮し、順調に業績を伸長させ、グループの成長に大きく貢献しております。

 前期末にグループ化した株式会社ファイヤーサイドと併せ、引き続き経営資源の再配置や会社間連携の強化を通じ、新たな商品開発、販路拡大、本業とのシナジー創出を推し進めて参ります。

 

 当期は、中期経営計画「REBORN」の総仕上げに取り掛かると共に、次期中期経営計画の策定と体制基盤の確立を同時に推し進めていく、当社グループの展望を描くうえで重要な年度となります。

 業界のリーディングカンパニーとして、責任とリーダーシップを持って出版業界改革を実行し、書店経営が持続可能な環境の実現と多様性に富んだ我が国の豊かな読書環境の保全に、これまで以上に努めて参ります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

資金需要

 当社グループの事業における運転資金需要の主なものは、当社グループの出版流通事業に係る商品仕入代金や配送運賃等の支払、貸金業を営む上での転貸資金の確保、各事業における一般管理費等があります。また、設備資金需要としては、物流拠点及び店舗開発のための有形固定資産投資や、情報処理のための無形固定資産等があります。

 

財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、基本的に当社において子会社各社の経営状況とともに把握しております。

 当社グループの主要業務である出版流通事業に係る商品仕入代金や配送運賃等の支払資金に関しては、企業間信用に基づく掛仕入とこれまでに蓄積してきた内部留保や、金融機関からの借入を資金の源泉としており、安定した支払いを実現しております。

 また、貸金業を営む上での転貸資金は主に金融機関からの借入で賄っておりますが、金融機関には十分な借入枠を有しており、当社グループの維持拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も十分可能であると考えております。