E00058 Japan GAAP
前期
2.08兆 円
前期比
115.0%
株価
2,941 (05/08)
発行済株式数
528,656,011
EPS(実績)
211.46 円
PER(実績)
13.91 倍
前期
1,128.0万 円
前期比
103.2%
平均年齢(勤続年数)
43.9歳(18.1年)
従業員数
8,129人(連結:19,396人)
当社グループは、当社、子会社188社、関連会社108社で構成され、当社は土木事業、建築事業、開発事業等の事業活動を展開するとともに、国内関係会社が主に日本国内において多様な事業を、海外関係会社が海外地域において建設事業、開発事業等を展開している。
当社グループに属する各社の事業に係る位置づけ及びセグメント情報との関連は、次のとおりである。なお、次の5つは、セグメント情報と同一の区分である。
当社が建設事業のうち、土木工事の受注、施工等を行っている。
当社が建設事業のうち、建築工事の受注、施工等を行っている。
当社が不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業を行っている。
当社の国内関係会社が主に日本国内において行っている事業であり、大興物産㈱が建設資機材の販売を、カジマメカトロエンジニアリング㈱が建設用機械の納入を行っているほか、鹿島道路㈱、ケミカルグラウト㈱、㈱クリマテック、㈱イリア等が専門工事の請負を行っており、その一部を当社が発注している。
また、鹿島リース㈱が総合リース業を、鹿島建物総合管理㈱が建物総合管理業を行っており、その一部を当社が発注している。
イートンリアルエステート㈱が不動産の売買及び賃貸等を、鹿島東京開発㈱がビル賃貸・ホテル経営を、鹿島八重洲開発㈱がビル賃貸事業を、㈱森林公園ゴルフ倶楽部がゴルフ場の経営を行っているほか、熱海インフラマネジメント合同会社が有料道路の運営・管理を行っている。
当社の海外関係会社が海外地域において行っている事業であり、主にカジマ ユー エス エー インコーポレーテッドが米国を中心とする北米で、カジマ ヨーロッパ リミテッドが欧州で、カジマ アジア パシフィック ホールディングス ピー ティー イー リミテッドがアジアで、カジマ オーストラリア ピー ティー ワイ リミテッドが大洋州でそれぞれ建設事業、開発事業等を行っている。
事業の系統図は次のとおりである。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
売上高は、当社建設事業売上高及び海外関係会社売上高の増加を主因に、前連結会計年度比15.0%増の2兆3,915億円(前連結会計年度は2兆796億円)となった。
利益については、当社建設事業や国内関係会社、海外関係会社における売上総利益の増加が、研究開発費などの販管費増加を補い、営業利益は前連結会計年度比0.1%増の1,235億円(前連結会計年度は1,233億円)となった。経常利益は、営業外収益の増加等により同3.0%増の1,567億円(同1,521億円)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損益が改善したことから、同7.6%増の1,117億円(同1,038億円)となった。なお、当連結会計年度において政策保有株式を売却(17銘柄100億円)しており、投資有価証券売却益などを特別利益に計上している。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことから、前連結会計年度比11.0%増の3,016億円(前連結会計年度は2,718億円)となった。
営業利益は、売上高増加に加え、売上総利益率が向上したことから、前連結会計年度比48.9%増の293億円(前連結会計年度は196億円)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、当期受注工事を含め大型工事の施工が順調であったことから、前連結会計年度比18.0%増の1兆862億円(前連結会計年度は9,206億円)となった。
営業利益は、売上高増加の効果があったものの、資機材価格上昇の影響等により売上総利益率が前連結会計年度と比べ低下したことを主因に、前連結会計年度比6.8%減の466億円(前連結会計年度は501億円)となった。
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
不動産賃貸事業は堅調であったものの、当連結会計年度は不動産販売案件が少なかったことを主因に、売上高は前連結会計年度比14.2%減の449億円(前連結会計年度は524億円)、営業利益は同36.3%減の71億円(同112億円)となった。なお、国内開発事業資産(固定資産)等を計画的に売却しており、固定資産売却益49億円を特別利益に計上している。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
建設事業、開発事業等ともに売上高及び売上総利益が増加し、売上高は前連結会計年度比11.5%増の3,526億円(前連結会計年度は3,161億円)となり、営業利益は同6.9%増の174億円(同162億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、為替変動の影響もあり全ての地域において増加し、前連結会計年度比18.5%増の7,392億円(前連結会計年度は6,239億円)となった。
営業利益は、建設事業、開発事業等ともに堅調に推移したものの、北米や欧州において高い水準であった前連結会計年度実績を下回り、前連結会計年度比14.1%減の227億円(前連結会計年度は264億円)となった。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比4,319億円増加し、2兆7,697億円(前連結会計年度末は2兆3,377億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の増加1,730億円、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の増加1,583億円及び有形固定資産の増加509億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比3,243億円増加し、1兆7,085億円(前連結会計年度末は1兆3,841億円)となった。これは、有利子負債残高※の増加1,778億円、支払手形・工事未払金等の増加1,019億円及び未成工事受入金の増加257億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、5,377億円(前連結会計年度末は3,599億円)となった。
純資産合計は、株主資本8,814億円、その他の包括利益累計額1,710億円、非支配株主持分87億円を合わせて、前連結会計年度末比1,075億円増加の1兆611億円(前連結会計年度末は9,535億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比2.5ポイント悪化し、38.0%(前連結会計年度末は40.5%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、291億円の支出超過(前連結会計年度は302億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,672億円に減価償却費247億円等の調整を加味した収入に加えて、仕入債務の増加879億円及び未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加230億円の収入があった一方で、売上債権の増加1,546億円、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の増加1,406億円及び法人税等の支払額543億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、817億円の支出超過(前連結会計年度は511億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出607億円、貸付けによる支出276億円、投資有価証券の取得による支出222億円及び無形固定資産の取得による支出162億円があった一方で、投資有価証券の売却等による収入260億円及び有形固定資産の売却による収入118億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が1,574億円の収入超過となった一方で、配当金の支払額295億円及び自己株式の取得による支出100億円があったこと等により、1,118億円の収入超過(前連結会計年度は209億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から145億円増加し、2,822億円(前連結会計年度末は2,677億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
e 繰越工事高(2023年3月31日現在)
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、国内建設事業(土木事業・建築事業)の着実な利益確保に加え、北米の流通倉庫開発事業を中心とする海外関係会社の貢献等により、2期連続で前連結会計年度比増収増益となり、ROE(自己資本利益率)は11.2%となった。売上高(2兆3,915億円)は過去最高、親会社株主に帰属する当期純利益(1,117億円)は過去2番目の水準である。連結業績に貢献した海外関係会社の業績について、売上高、親会社株主に帰属する当期純利益ともに過去最高水準になるなど、従前から進めてきた戦略的な投資の成果が継続的に現れている。
業績予想との比較では、売上高は業績予想と同水準となり、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は業績予想を上回った。
当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円)
財政状態については、当連結会計年度末の資産合計が前連結会計年度末比4,319億円増加し、2兆7,697億円となった。建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が売上高の増加等に伴って増加し、計画に基づく国内外の不動産開発投資の進捗により、開発事業資産(販売用不動産、開発事業支出金及び有形固定資産など)も増加している。投資有価証券については、政策保有株式の中長期的な縮減に向けて、保有する株式の一部(17銘柄100億円)を売却したものの、海外開発事業推進に伴う出資や為替変動に伴う外貨換算増などにより増加した。なお、計画に掲げた政策保有株式の縮減目標(前連結会計年度から3年間で総額300億円以上の売却)に対しては、当連結会計年度までの2年間で累計249億円を売却しており順調に進捗している。連結自己資本は、1,000億円を上回る親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴い前連結会計年度末から1,067億円増加の1兆524億円、自己資本比率は38.0%となった。連結有利子負債残高は、海外の不動産開発投資において外部資金を活用したことなどにより前連結会計年度末から1,778億円増加し、5,377億円となったものの、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.51倍であり、財務の健全性は十分に維持できていると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、国内外の建設事業及び開発事業における需要やコストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度においては、国内建設需要は、堅調な公共投資に加え、民間企業の旺盛な設備投資意欲により高い水準を維持した。受注競争は主に大型工事において厳しさが続いているものの、全体としては高水準の建設需要を背景に緩和の兆しが見られた。海外における建設需要は、欧米では製造業を中心に底堅く推移し、東南アジアでは経済活動の正常化が一段と進んだことにより回復傾向が続いた。コストに関しては、国内外ともに資機材価格は総じて高い価格水準に留まっており、労務費にも上昇の傾向が見られるため、動向に注視した適切な対応が必要と考えている。
今後については、国内建設事業は、堅調な建設需要が継続し、受注競争が落ち着くことが期待される。また、受注高の増加により、施工が繁忙な状態になると予想されるため、工期遵守や品質保全、着実な利益確保に資する適切な施工体制の確保に取り組むとともに、2024年度から適用される時間外労働上限規制などへの備えとして、ICTツール等を積極的に活用した施工の自動化、デジタル化、遠隔管理化などによる生産性向上やノンコア業務のアウトソーシングなどを推進していく。また、長期的には建設技能労働者が減少していく見通しであることから、賃金・休暇面での処遇改善やデジタル技術活用による建設業の魅力向上など次世代の担い手確保に向けた施策に取り組んでいる。海外事業においては、ウクライナ情勢等の地政学的リスクの高まりや、欧米を中心とするインフレ及び金利上昇などが事業環境に与える影響を見極めつつ、リスク管理を徹底した事業展開を進めていく。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことなどから増収となり、3,000億円台に回復した。売上総利益率は、当連結会計年度に竣工を迎えた工事の損益改善や複数工事における追加収入等により、前連結会計年度における16.5%から18.0%に改善した。営業利益は、増収の効果も重なり増益となった。
土木事業における建設需要は、インフラ更新などの国土強靭化に関連した分野や風力発電などのエネルギー分野における需要の拡大により、今後も堅調に推移すると考えている。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、1兆2,000億円に迫る豊富な期首繰越高に加えて、生産施設など当連結会計年度に受注した大型工事の施工が順調に進捗したこと等から増収となり、1兆円を上回った。売上総利益率は、資機材価格上昇の影響などにより、前連結会計年度における10.3%から8.5%に低下したものの、早期調達等のコスト上昇対策や生産性向上の取り組みなどにより、期首に予想した売上総利益率を確保した。2024年3月期の売上総利益率については、竣工を迎える複数の大型工事の損益改善などを見込み、9.7%までの回復を予想している。
大型工事を中心に厳しい競争環境が継続しているが、建設コストの価格動向に留意した見積作成に加えて、働き方改革を踏まえた適正工期や適切な施工体制の確保に努めるとともに、技術力や提案力を軸とした受注活動により、採算性の維持・向上を図っていく。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
開発事業等の売上高及び営業利益は、不動産販売案件が少なかったことを主因に、前連結会計年度と比較すると減少した。不動産賃貸事業については、前連結会計年度に完成した「横濱ゲートタワー」など当社が保有する賃貸ビルは総じて高い稼働率を維持しており、堅調に推移した。
2024年3月期は、複数のオフィスや分譲マンションなどの売却を計画しているため、当連結会計年度の売上高及び営業利益を大きく上回る見通しである。中期経営計画に基づき推進している国内不動産開発投資の成果として、今後も複数のプロジェクトが完成し、不動産賃貸事業の収益力は着実に高まると考えている。また、市況を見極めた最適なタイミングでの売却を進めていく。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)
当連結会計年度における国内関係会社の売上高及び営業利益は、前連結会計年度を上回った。売上高は、建設事業における順調な工事進捗と資機材販売の増加を主因に増収となり、営業利益は、原材料高騰による合材販売事業の採算低下が見られたものの、建設事業における増収効果や建物リース物件の売却益などにより増益となった。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響により低迷していたゴルフ場の稼働率は、感染拡大前の水準を上回り、ホテルの稼働率についても観光需要の回復に伴って上昇している。
2024年3月期は、建設事業が堅調であると見込むとともに、開発系国内関係会社が保有する不動産開発物件の売却を計画している。合材販売事業においても、原材料高騰について顧客への価格転嫁が進むことから収益改善を見込んでいる。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
当連結会計年度における海外関係会社の売上高は、外貨換算増の影響もあり、過去最高水準となった。建設事業は、東南アジアにおける新型コロナウイルス感染症対策の緩和に伴う工事進捗ペースの回復などにより大幅に伸長したものの、開発事業等は、北米における流通倉庫開発事業の物件売却数が減少したことを主因に微減となった。営業利益は、建設事業、開発事業等ともに堅調に推移したものの、高水準であった前連結会計年度と比較すると減少した。
海外関係会社の開発事業は、事業展開地域の市場特性に合わせて、倉庫、住宅、オフィス、ホテル、学生寮など幅広い分野への投資を実施している。北米では、流通倉庫開発事業を中心に積極的な展開を進めており、当連結会計年度においては、10件を物件売却し、13件の新規開発に着手している。今後も、事業採算性とリスクを見極めつつ、物件売却と新規開発を進めていく方針である。東南アジアでは、ホテルやオフィスなど複合開発による長期保有型ビジネスを中心に展開しており、当連結会計年度においては、経済活動が再開したことに伴い、運営しているホテルの稼働率や客室単価などが回復している。欧州においては、市場拡大が見込まれる再生可能エネルギー施設開発に取り組んでおり、関連技術や知見を保有する企業の持分を取得するなど、事業拡充と強化を図っている。従前からの戦略的な投資の成果により、海外開発事業は高い収益性を実現していると考えている。
2024年3月期については、東南アジアにおける業績回復などを主因に、売上高の増加を予想している。利益面では、欧米における景気不透明感などを踏まえて、特に開発事業において、売却益などを慎重に見込んでいる。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、資機材価格が上昇した中でも、国内建設事業で着実な利益を確保するとともに、北米流通倉庫開発事業における物件売却などによりキャッシュを創出した。これに加え、政策保有株式の売却や有利子負債の増加等を原資として、投資計画に基づく国内外の不動産開発投資や人材育成施設及び技術開発・オープンイノベーション拠点の建設など当社グループの経営基盤強化に繋がる投資を積極的に実施した。また、配当に加え、機動的な株主還元として、100億円の自己株式取得を実施し、株主還元を拡充している。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ145億円増加し2,822億円となった。当連結会計年度は、完成工事未収入金など売上債権の増加や開発投資に伴う開発事業支出金及び有形固定資産の増加等により、営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローはともに支出超過となったが、サステナビリティ・リンク・ボンドなどのサステナブルファイナンスも含めた有利子負債による資金調達が支出を上回り、現金及び現金同等物の残高が増加した。今後の建設事業における資金需要の予測は難しいものの、2024年3月期については大型工事の完成に伴う売上債権の回収により建設事業収支の改善を見込んでいる。なお、現金及び現金同等物の残高は月商程度の水準を上回っているとともに、コミットメントラインを設定する等、安定的な資金運営に向けた多様な資金調達手段を備えていることから、資金面に懸念はないと考えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」の投資計画に基づき推進している国内外の不動産開発投資やR&D・デジタル投資、M&A等の戦略的投資などの原資として、今後も国内外における建設事業の収益力を高め、資金の創出に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却や中長期的な政策保有株式の縮減を進めていく方針である。株主還元については、配当性向の目安を30%とするとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した自己株式の取得など機動的な株主還元を行うことを基本方針としている。
また、投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、投資効率の向上に向けて、金利動向を見極めながら弾力的に外部資金を活用しているため、2024年3月末の連結有利子負債残高は6,300億円に増加する見通しであるものの、拡大する開発事業資産などに対するリスク耐性を備えた財務健全性は維持していく方針である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。