売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E00056 Japan GAAP

売上高

4,035.0億 円

前期

4,252.2億 円

前期比

94.9%

時価総額

1,737.9億 円

株価

4,015 (04/19)

発行済株式数

43,285,560

EPS(実績)

184.20 円

PER(実績)

21.80 倍

平均給与

845.9万 円

前期

840.9万 円

前期比

100.6%

平均年齢(勤続年数)

44.0歳(19.0年)

従業員数

2,635人(連結:4,406人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは、建設事業及びその周辺関連事業を主たる事業としている。事業の内容及び当該事業に係わる位置づけは次のとおりである。

  なお、以下は主要な事業の内容により区分しており、セグメント情報におけるセグメント区分と同一ではない。

 建設事業     当社及び連結子会社である㈱ガイアート、関連会社である笹島建設㈱他が建設事業を営んでいる。

  また、連結子会社であるテクノス㈱は建設事業のほか、建設用資機材の製造販売等を行っている。

 その他の事業   連結子会社である㈱テクニカルサポートは保険事業及び事務代行事業を営んでおり、当社は事務業務の一部を委託している。

  また、連結子会社である㈱ファテックは建設技術商品の提供事業を営んでおり、当社はその一部の提供を受けている。

 

 事業の系統図は次のとおりである。

 

※画像省略しています。

 

23/06/29

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

① 財政状態及び経営成績の状況

  当連結会計年度における我が国経済は、ウィズコロナの生活様式の定着が進む中で、個人消費に持ち直しの動きがみられ、設備投資もソフトウエア投資を中心に堅調に推移したが、円安や資源高による物価上昇などの下押し要因もあり企業収益に一部弱さが残るなど、景気の回復は緩やかなものにとどまった。

  建設業界においては、住宅建設は建設コストや金利上昇への懸念から弱含んでいるものの、民間企業の建設投資は企業の設備投資意欲の高まりを背景に堅調であり、公共投資も関連予算の執行により底堅く推移したことなどから、受注環境は総じて堅調であった。しかしながら、資材高や労務費の増加等による建設コストの上昇もあり、採算面においては一部に厳しさが残った。

  このような経営環境のもと、当社グループは2021年5月に策定した①建設請負事業の深化、②建設周辺事業の進化、③新たな事業領域の開拓、④経営基盤の強化を基本方針とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、持続的成長へ向けた事業の推進へ注力してきた。なお、2021年11月には、株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るため現中期経営計画期間(2021~2023年度)に総額100億円規模の自己株式を取得する方針を決定しており、当該方針に基づき当連結会計年度においては約40億円の自己株式の取得を実施した。これにより、当連結会計年度における総還元性向は121.6%となる見通しである。

  この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。

a 財政状態

・資産

 総資産は、前連結会計年度末に比べ55億円(1.5%)増加し、3,766億円となった。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ35億円(1.2%)減少し、2,982億円となった。大型工事における支出先行等により、現金預金が264億円減少している。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ91億円(13.2%)増加し、783億円となった。米国における不動産開発事業への投資や保有株式の時価上昇等により、投資有価証券が62億円増加している。

・負債

 負債は、前連結会計年度末に比べ49億円(2.5%)増加し、2,067億円となった。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ44億円(2.6%)減少し、1,709億円となった。未払法人税等が35億円減少している。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ94億円(35.9%)増加し、358億円となった。長期借入金が92億円増加している。

・純資産

 純資産は、前連結会計年度末に比べ5億円(0.3%)増加し、1,698億円となった。資本剰余金が当連結会計年度に取得した自己株式の消却により40億円減少し、また、利益剰余金は、剰余金の配当により54億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益79億円の計上により25億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.5ポイント低下し、45.1%となった。

 

b 経営成績

・売上高(完成工事高)

 売上高は、工事の中断等による手持工事の進捗鈍化などの影響により、前連結会計年度に比べ217億円(5.1%)減少し、4,035億円となった。

 なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。

・売上総利益(完成工事総利益)

 売上総利益は、売上高の減少並びに売上総利益率(完成工事総利益率)の低下により、前連結会計年度に比べ102億円(23.6%)減少し、332億円となった。

・販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は、新型コロナウイルス感染症の影響により抑制されていた営業活動や役職員の移動が回復したこと及び広告宣伝費の増加等により、前連結会計年度に比べ10億円(4.8%)増加し、217億円となった。

・営業利益

 営業利益は、売上総利益の減少並びに販売費及び一般管理費の増加により、前連結会計年度に比べ112億円(49.5%)減少し、114億円となった。

・営業外損益

 営業外収益は、受取配当金の増加等により、前連結会計年度に比べ5千万円増加し、13億円となった。

 営業外費用は、シンジケートローン手数料の増加等により、前連結会計年度に比べ2億円増加し、5億円となった。

・経常利益

 これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ114億円(48.4%)減少し、122億円となった。

・特別損益

 特別利益は、受取損害賠償金8千万円や会員権売却益7千万円など合計1億円を計上した。

 特別損失は、加算税等1億円など合計3億円を計上した。

・法人税等

 法人税、住民税及び事業税37億円、将来加算一時差異の増加等により法人税等調整額3億円を計上した。

・親会社株主に帰属する当期純利益

 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ78億円(49.7%)減少し、79億円となった。

 

セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。

a 土木事業

受注高は、前連結会計年度比8.6%減の1,012億円であった。
売上高は、同4.4%減の899億円、営業利益は、同26.9%減の17億円となった。

 

b 建築事業

受注高は、前連結会計年度比3.3%増の2,473億円であった。
売上高は、同11.6%減の2,093億円、営業利益は、同59.2%減の62億円となった。

 

c 子会社

 売上高は、前連結会計年度比11.8%増の1,143億円、営業利益は、同31.6%減の34億円となった。
 なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。

 

② キャッシュ・フローの状況

  営業活動によるキャッシュ・フローは、188億円のマイナス(前連結会計年度は82億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、84億円のマイナス(前連結会計年度は33億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、4億円のプラス(前連結会計年度は96億円のマイナス)となった。
 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ264億円(39.2%)減少し、409億円となった。

③ 生産、受注及び販売の実績

  当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。

   なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

区分

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

第85期

 

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

土木工事

167,023

110,826

277,850

94,077

(183,772)

183,772

建築工事

299,098

239,409

538,507

236,943

(301,564)

301,684

466,122

350,236

816,358

331,021

(485,336)

485,457

第86期

 

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

183,772

101,273

285,046

89,936

(195,109)

195,109

建築工事

301,684

247,373

549,058

209,381

(339,677)

339,733

485,457

348,647

834,104

299,317

(534,786)

534,842

(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。

2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。

3 収益認識に関する会計基準等の適用により、第85期の土木工事の前期繰延工事高を修正しており、これによる減少額は123百万円である。

 

b 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第85期

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

土木工事

14.0

86.0

100

建築工事

33.0

67.0

100

第86期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

18.2

81.8

100

建築工事

28.4

71.6

100

(注) 百分比は請負金額比である。

 

c 完成工事高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

第85期

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

土木工事

44,742

49,335

94,077

建築工事

20,790

216,152

236,943

65,532

265,488

331,021

第86期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

41,502

48,434

89,936

建築工事

19,010

190,370

209,381

60,512

238,805

299,317

(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。

第85期

西日本高速道路株式会社

中国自動車道(特定更新等)北房IC~大佐スマートIC間(上り線)

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構

北陸新幹線坂井高架橋

東急不動産株式会社・株式会社

NIPPO・大成有楽不動産株式会社・JR西日本プロパティーズ株式会社

(仮称)江東区豊洲五丁目計画新築工事

住友商事株式会社・レンゴー株式会社

(仮称)レンゴー淀川工場跡地開発計画新築工事

森永製菓株式会社

森永製菓 高崎第3工場建設計画

第86期

西日本高速道路株式会社

新名神高速道路 原萩谷トンネル西工事

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構

北陸新幹線芦原温泉駅高架橋他

株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス ・ 日下部洋子 ・ 株式会社サン・エトワール ・ 星野浩一 他

(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画 新築工事

医療法人徳洲会

湘南鎌倉総合病院外傷・救命救急センター先端医療センター増築工事

日本電産株式会社

(現 ニデック株式会社)

日本電産株式会社 向日町プロジェクトC棟建築工事(仮称)

2 第85期及び第86期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

d 次期繰越工事高(2023年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

土木工事

81,645

113,463

195,109

建築工事

56,658

283,074

339,733

138,303

396,538

534,842

(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。

東日本高速道路株式会社

東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事

中日本高速道路株式会社

東名高速道路(特定更新等)酒匂川橋他2橋床版取替工事

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-3街区)

西新宿五丁目中央南地区市街地再開発組合

西新宿五丁目中央南地区第一種市街地再開発事業 施設建築物等新築工事

アパホーム株式会社・アパマンション株式会社

(仮称)アパホテル&リゾート〈大阪難波駅タワー〉新築工事

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 経営成績の分析

 当社グループの売上高については、工事中断等の影響により複数の工事で進捗が鈍化したこと、また、コロナ禍及び物価高騰等に伴う着工時期の見直しなどの影響により期中受注工事の売上貢献が少なかったことから前連結会計年度実績、期首計画値をともに下回った。

 利益については、売上高の減少及び建設コストの上昇の影響により、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度実績、期首計画値をともに下回る結果となった。

 自己資本比率は45.1%と前連結会計年度と比べ0.5ポイント低下し、ROEは親会社株主に帰属する当期純利益の減少、自己資本の増加により4.7%と前連結会計年度の水準を下回った。

 受注高は、企業の設備投資が堅調に推移し、前年同水準を確保したものの期首計画値を下回った。

 

b セグメントごとの経営成績の分析

・土木事業

 受注高は、鉄道関連で大型案件を受注したものの電力エネルギー分野の受注が減少したことにより、前連結会計年度比8.6%減の1,012億円となった。

 売上高は、東京外環道など一部大型工事の中断の他、設計の遅れによる工事着工遅れ等により、同4.4%減の899億円となった。営業利益は、売上高の減少に加え、追加設計変更交渉が不調となった案件等の影響もあり、同26.9%減の17億円となった。

・建築事業

 受注高は、競合優位性がある医療・福祉施設において大型の移転工事等を受注したことや教育・研究・文化施設にて複数の大型案件を受注したことなどにより、同3.3%増の2,473億円となった。

 売上高は、コロナ禍及び物価高騰等により、大型工事の着工時期が遅れ当期受注工事の売上貢献が少なかったことや、一部資材の納入遅れから進捗が伸びなかった工事の影響等により、同11.6%減の2,093億円となった。営業利益は、売上高の減少に加え、コロナ禍で市場環境が厳しい時期に戦略的に受注した低採算工事の影響により、同59.2%減の62億円となった。

・子会社

 売上高は、華熊営造股份有限公司の好調な受注を背景に、同11.8%増の1,143億円となった。営業利益は、一部の子会社における競争の激化及び建設資材の高騰等の影響により、同31.6%減の34億円となった。

 

c 中期経営計画の達成状況

 『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』で掲げた指標の計画値及び経営戦略に対する当連結会計年度までの達成状況は次のとおりである。

指標

2023年度(計画値)

2022年度(実績値)

差異

連結売上高   (百万円)

470,000

403,502

△66,497

連結経常利益  (百万円)

33,000

12,236

△20,763

ROE      (%)

12.0

4.7

△7.3

配当性向     (%)

30.0

72.4

42.4

 

 事業戦略①:建設請負事業の深化

■国内土木事業

 「インフラ大更新分野」では、2021年9月に完成した「東北道十和田リニューアル工事」において、コッター床版工法による橋梁床版の取替を4橋施工し、現場打ちコンクリートが不要な「フルプレキャスト施工」にも成功した。2021年に受注した「酒匂川橋床版取替工事」では基本契約方式による13橋の床版取替が予定されており、今後も床版取替工事の需要拡大が期待される。コッター床版に関しては、関連会社との連携による周辺技術を含めたパッケージ商品化も計画しており、事業体制の構築(目地材料販売:株式会社ファテック、工法技術開発:テクノス株式会社)を検討している。また、道路を供用しながら主桁から床版を切り離す工法として開発された「切り方じょうず」は、従来工法と比較し、床版取替期間を50%短縮し、騒音が小さく泥水が発生しないため、周辺環境への影響を低減でき、コッター床版工法と並んで普及が期待される。

 「防災・減災、国土強靭化分野」では、熊本地震後の防災対策工事への導入効果が高く評価された「無人化施工技術」を高めるため、継続して研究開発を進めているほか、高機能遠隔操作室と建設機械をパッケージ商品化するなど、新たなビジネスモデルの確立を目指している。2022年3月にはローカル5Gを技術研究所に導入し、その高速性と低遅延性を活かして建機と操作室間の映像伝送の高度化を進めている。また、元施工ダム数の優位性を活かすべく、「国土強靭化」「インフラ長寿命化(ダム再生)」案件受注のためのリニューアル工事に関する技術開発に注力している。

 

■国内建築事業

 「中大規模木造建築分野」では、2021年3月、「環境と健康をともにかなえる建築」をコンセプトとして、住友林業株式会社と立ち上げた中大規模木造建築ブランド「with TREE」で、中大規模建築の木造化・木質化を推進している。また、オリジナル木材「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ・ウッド)」は全ての主要構造部(柱/梁/床/壁)で耐火認定を取得し、純木造建築を階数制限なく建築できることになった。これらの技術を応用し、木造/S造ハイブリッド構造で当社福井本店を建て替えた。また、野村不動産のオフィスビルブランドであるH1Oシリーズにおいて「H1O外苑前」を完成、第2弾となる「H1O芝公園」を施工中である。

 「市街地再開発分野」では、2021年9月、三田駅前Cブロック地区再開発の事業協力者に決定し、事業推進中である。

 

■海外建設事業

 「台湾における圧倒的な地位の確立」では、台湾現地法人である華熊営造股份有限公司は、「TAIPEI 101」「陶朱隠園」などのランドマーク的な大型物件の施工によって高めたブランド力により、数多くの大型案件を受注し飛躍的に業績を伸ばしてきた。2022年6月には台北で新たなランドマークとなる「台北雙子星大楼(台北ツインタワーC1.D1)新築工事」を受注した。

 

 事業戦略②:建設周辺事業の進化

■再生可能エネルギー事業

 「住友林業株式会社との協業を含む木質バイオマス発電事業」では、福島県飯舘村において木質バイオマス事業を計画しており、2024年の稼働開始を目指して準備を進めている。

 風力・太陽光発電事業では当社で最初の売電事業となる静岡県浜松市での太陽光発電事業2021年2月に参入したベトナムの太陽光発電事業CatHiep メガソーラー事業がそれぞれ順調に稼働して当社の収益に貢献しているほか国内外のセカンダリー案件への事業参画事業承継についても積極的に検討している

 

■不動産開発事業

 都市再生・まちづくり事業では飯田橋駅東口再開発事業について東京都は2020年9月飯田橋駅周辺基盤再整備構想を策定新宿区も2022年1月に都市計画を決定した2022年度は(仮称)飯田橋駅前地区基盤整備ビジョンや具体的な整備方針の策定が予定されるなど再開発計画は徐に形になりつつあり当社も一地権者として積極的に参画していく

 住友林業株式会社との協業にて2020年1月に事業参画したインドネシア・ジャカルタの高層コンドミニアム及び商業複合施設開発事業はコロナ禍の影響を受けて施設計画を変更しながらも検討が進む一方2022年2月住友林業株式会社と同社100%子会社の米クレセント社が運用を開始した米国不動産私募ファンドに参画し成長著しい米国の都市圏でLEED等の環境認証を取得するESG配慮型の賃貸集合住宅4件(総戸数約1,000戸資産規模約700億円運用期間5年)を開発するまた新たに米テキサス州ダラス近郊にて木造7階建てのESG配慮型オフィス開発に参画した。これら住友林業株式会社との協業を通じて海外事業での中長期的な収益拡大を目指す

 また将来において再開発区域となることが見込まれる国内の優良な収益物件を購入したほか台湾で不動産開発を担当する現地法人(華熊建設股份有限公司)が現地デベロッパーとの連携による老朽化住宅の建替えの提案活動等を行っている

 

■インフラ運営事業

 PPP・コンセッション事業では2021年10月に福井市新学校給食センター整備運営事業」、「周南地区衛生施設組合新斎場整備運営事業」、2022年10月に八王子駅南口集いの拠点整備・運営事業をそれぞれ当社が所属する企業グループが落札した引き続き国内では当社が得意とする給食センターや庁舎体育館などのPFI事業に参画することを目指していく

 また香港のMOM事業(有料道路の管理・運営・保守事業)については受託済みの案件(イースタン・ハーバー・クロッシングテーツケントンネル)も併せた管理効率を考慮した受注活動を継続し利益を確保していく

 

■技術商品販売事業

 バイオマス燃料開発・販売事業では清本鐵工株式会社とともに高品質なバイオマス燃料ブラックバークペレットを共同開発した廃棄物であるバーク材(木の皮)を原料として林業の活性化石炭火力発電の混焼材としてカーボンニュートラルへの貢献を目指す2023年5月にブラックバークペレットの製造・販売事業会社ローカルエナジーシステム株式会社を設立したバーク材調達は住友林業フォレストサービス株式会社が担い国産地域材を原料とする環境にやさしい地産地消のエネルギー循環システムとして2023年度愛媛県に生産設備の建設を開始する

 

 事業戦略③:新たな事業領域の開拓

 2021年12月、新事業を創出するためのプロジェクトを始動し、初弾として行った全社員対象の新事業に関するアイデア募集では100件を超える応募があった。プロジェクトチームを組成し、受領したアイデアを参考に検討を進め、ビジネスモデルを2件に絞り、事業化に向けたフェーズに移行した。今後も新たな事業領域の開拓に挑戦し、目指す社会の実現に貢献できる領域を拡大するとともに、事業環境の変化に対応できるよう事業機会の創出を目指す。

 

 経営基盤の強化

■デジタル化

 基幹システムの刷新により業務プロセスの効率化・自動化を進め、また、社員のITリテラシー向上、DX人財の確保を通じてビジネスの変革を目指して、2021年度よりDX推進の専任部署として「DX推進部」を設置した。2021年度は導入済みシステムの定着化に加え、新基幹システムの開発、作業所業務の効率化のための各種ツール導入を進める一方、社員に対して動画・メルマガ配信による教育を行った。今後も、2021年9月に策定された「DX方針」に基づいて活動していく。なお、2022年5月には経済産業省が定めるDX認定制度に基づき、「DX認定事業者」に認定された。

 

※画像省略しています。

 

■技術開発

 低炭素コンクリートに代表される低炭素技術、中大規模木造建築に代表される木化・緑化技術、エネルギー関連技術など、脱炭素・環境型社会に資する研究開発、AI、ロボティクス技術に代表されるデジタル社会に対応する技術開発、さらに建設高度化に資する技術開発を、技術開発における3本の柱として開発を進め、技術開発による先進性、優位性を追求していく。

 ロボティクス分野では、2021年9月、建設会社16社による「建設施工ロボット・loT分野における技術連携に関するコンソーシアム」に参加、業界を挙げて技術革新にも取り組んでいく。

 

d 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」に記載のとおりである。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益120億円にとどまったことに加え、大型工事における支出先行や法人税等の支払いなどにより、188億円のマイナス(前連結会計年度は82億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、設備の取得更新や米国における不動産開発事業への投資等により、84億円のマイナス(前連結会計年度は33億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや自己株式の取得等があった一方、借入れの実行により、4億円のプラス(前連結会計年度は96億円のマイナス)となった。
 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ264億円(39.2%)減少し、409億円となった。

 

b 資本の財源及び資金の流動性

・資本政策の基本方針

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は409億円保有しており、自己資本比率も45.1%と一定水準を保っていることから、現状では財務健全性に懸念はない。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は174.5%、固定長期適合率は38.1%と高い安全性を保っている。

・資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。大型工事における支出先行及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。また、中期経営計画に掲げている4つの基本方針に基づき、競争力強化と収益源多様化による安定収益確保のために、400億円規模の投資を計画している。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は221億円となっている。

 

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・株主還元

 現中期経営計画において、連結配当性向30%目途を財務目標に掲げている。しかし、さらなる株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るために2021年11月11日開催の取締役会において、現中期経営計画期間(2021~2023年度)に総額100億円規模の自己株式を取得する方針を決定した。当該方針に基づき、前連結会計年度に引き続き当連結会計年度においても、約40億円の自己株式の取得を実施し、2022年5月13日開催の取締役会決議に基づき取得した自己株式1,511,300株の消却を実施した。

 

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・資金調達

 当社グループは、金融機関からの借入を主な資金調達の手段としている。資金調達のより一層の安定化並びに効率化を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、そのうち長期のターム・ローンの当連結会計年度末の契約総額は150億円、コミットメントラインの当連結会計年度末の契約総額は200億円(借入実行残高0円)である。

 安定的な資金調達手段を確保できており、突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。

  当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、一定の期間にわたり収益を認識する方法(いわゆる旧工事進行基準)による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。

  連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。

  なお、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに及ぼす重要な影響はないとしている。