売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E21706 Japan GAAP

売上高

125.2億 円

前期

115.6億 円

前期比

108.3%

時価総額

102.2億 円

株価

413 (04/15)

発行済株式数

24,740,000

EPS(実績)

40.60 円

PER(実績)

10.17 倍

平均給与

645.8万 円

前期

652.4万 円

前期比

99.0%

平均年齢(勤続年数)

35.2歳(7.2年)

従業員数

365人(連結:759人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

(1)当社グループの事業の内容について

 当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社リニカル)及び連結子会社であるLINICAL USA,INC.、LINICAL TAIWAN CO., LTD.、Linical Singapore Pte. Ltd.、LINICAL KOREA CO., LTD.、LINICAL Europe Holding GmbH、LINICAL Europe GmbH、LINICAL Spain, S.L.、LINICAL France SARL、LINICAL Netherlands B.V.、LINICAL POLAND sp. z o.o.、LINICAL Czech Republic s.r.o.、Linical U.K. Limited、Linical Hungary Kft.、Linical Romania S.R.L.、Linical Italy SRL、Linical Accelovance America, Inc.、Linical Accelovance China Ltd.及びLinical China Co., Ltd.等で構成され、製薬会社の医薬品開発における治験の一部を受託する医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主たる業務としており、その他に、医薬品製造販売後支援事業(育薬事業)を展開しております。

 なお、次の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (セグメント情報)」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

① CRO事業

 近年、製薬会社は、先発医薬品(新薬)の特許切れや薬価下落の問題を背景として、多額の研究開発費を投じて、新薬開発に挑んでおります。このような中、製薬会社は主要市場国での早期・同時上市を目指しており、CROに対するアウトソーシングのニーズが高まっております。

 既存のCROは、製薬会社が有する様々なニーズに応えるため、業務内容を多角化すると共に業務形態も多角化させ、治験業務全般の受託や臨床開発モニター(CRA)(注1)の派遣等、あるいはそれらの混合型などのビジネスモデルを展開しております。

 しかしながら、当社グループは同業他社との差別化を図り、製薬会社から高い評価を獲得するためには、業務内容や業務形態を多角化するよりも、選択と集中を推し進めることが重要であると考えております。実際にCRO先進国といわれる欧米では特定領域の治験に注力することにより製薬会社から高い評価を得ているCROが存在しております。

 このような考えの下、当社グループは主に、医薬品開発の中でも難易度・重要度の高いフェーズⅡ及びフェーズⅢにおけるモニタリング業務を中心に、それに付随する品質管理業務、データマネジメント、統計解析、メディカルライティング、ファーマコビジランスなどの業務の他、治験の企画や薬事対応、承認申請などに関するコンサルティング業務に注力し、受託特化型の業務形態を取っております。

② 育薬事業

 当社グループは、CRO事業で得たノウハウを活かすことができる事業として、企業・医師主導臨床研究の組織体制構築業務、製造販売後の企画業務・モニタリング業務・監査業務を展開しております。

 

(注1)CRA(Clinical Research Associate)とは、臨床開発モニターと訳されます。医薬品開発段階での治験が、薬機法、その他の関連法令及び治験実施計画書を遵守して行われているかどうかを監視(モニタリング)する担当者のことをいいます。

 

 

当社グループの事業系統図は次のとおりであります。

[事業系統図]

※画像省略しています。

(2)製薬会社における医薬品の研究開発の概要

 製薬会社の医薬品開発には、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に他の製薬会社が同じ成分で発売する安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の発売が可能になることや、医薬品の価格改定による薬価下落の問題があり、さらに、新薬として製品化するまでの成功確率が低いという特徴があるため、製薬会社は多額の研究開発費を投じて、次々に新薬の開発に挑んでおります。

 なお、製薬会社における医薬品の研究開発の概要は以下のとおりであります。

※画像省略しています。

 医薬品の研究開発は上記に示したとおり、研究(①~②)と開発(③~④)との2つの段階に大別されます。研究段階では主に新規の化合物等を探すことから始まり、基礎研究(①)にて新規物質の創製・医薬品候補物質の選別を行い、非臨床試験(動物実験)(②)にて実験動物を用いてその化合物等の生体への作用及び安全性の検討を行います。開発段階では、研究によって証明された化合物等がどの疾患に適応するか、どのような用量であれば安全かつ有効に使用できるか、どのように既存治療薬との差異化を行うかを企画し、治験を通じて検証します(③)。そうして研究・開発のすべての段階を経て規制当局によって承認されると新薬の販売が開始されることになります(④)。

 なお、販売が開始された新薬について、治験で判明しなかった副作用・有効性を広範囲に追跡調査するため、製薬会社は製造販売後調査(⑤)を行っております。

 以上が製薬会社における医薬品の研究開発の概略ですが、特に治験については、規制当局の定めたガイドラインに沿って治験実施計画書(注2)に様々な基準を設定し、これに従って実施する必要があります。このため、医薬品の研究開発期間の長期化や、研究開発費の増大の主な原因となっています。

(注2)治験実施計画書とは、プロトコルともいい、治験を実施するにあたって、治験を実施する医療機関、治験を依頼する製薬会社その他、その治験にかかわる関係者が遵守しなければならない事項を網羅的に記載した計画書を指し、治験依頼者(製薬会社)により作成されます。

(3)製薬会社及びCROにおける治験の概要

 治験とは、製薬会社が新薬候補物質についてヒトに対する有効性及び安全性を確認し、厚生労働省から医薬品としての認可を受けることを目的として実施する臨床試験であり、医療機関において健常成人や患者を被験者として実施されます。

 なお、製薬会社及びCROにおける治験の概要は以下の通りであります。

※画像省略しています。

 治験は医薬品開発のために不可欠なものであり、治験依頼者(製薬会社)は、フェーズⅠ~Ⅲまでのすべてのステージで、医療機関において法令に則り倫理的・科学的に治験が行われているかどうかを確認(モニタリング)することが法令で義務付けられております。このことから、製薬会社は治験を成功させる(その薬物の用法・用量を決定し、人体での有効性・安全性について既存治療薬との差異化を実証する)ため、膨大な費用、時間、労力を費やすこととなります。

 なお、フェーズⅡに関しては、通常、治験の目的と対象となる患者数の規模により、前期(Ⅱa)及び後期(Ⅱb)に段階を区分して実施されており、このフェーズⅡのうち患者にとって最適な用法・用量を決定する後期フェーズⅡ試験(Ⅱb)及び既存薬との有効性を比較するフェーズⅢ試験が、目標患者数、実施医療機関数も多く、期間・費用・労力のかかる難易度の高い治験となっています。

 また、治験の業務内容は、主要業務であるモニタリング業務及びそれに付随する品質管理業務、コンサルティング業務のほか、治験薬が投与された症例の有効性・安全性データが記載された症例報告書(注3)を入力しデータベース化するデータマネジメント業務、治験実施計画書・届出書類・治験によって得られたデータをまとめた申請書類など監督官庁に提出する各種文書の作成を行うメディカルライティング業務、及び治験の実施状況を調査して治験データの信頼性の保証を目的とする監査業務等から構成され、多岐に亘っております。

(注3)症例報告書とは、治験実施計画書に規定されているすべての情報を記録するために、被験者ごとに作成される報告書(電子記録のものも含む)をいいます。

(4)当社グループにおけるモニタリング業務、品質管理業務及びコンサルティング業務の概要

 モニタリング業務とは、治験の主要業務であり、製薬会社またはCROのモニタリング担当者であるCRAが、医療機関の治験実施可能性の調査、医療機関への治験の依頼、法令に基づく治験実施に関する契約(製薬会社、医療機関及びCROとの3者契約)の締結手続き、治験責任医師等に対する治験薬概要書(注4)及び治験実施計画書の説明、医療機関への治験薬の搬入、治験実施時の薬機法・GCP(注5)等の法令及び治験実施計画書の遵守状況の確認、治験の進捗管理、治験データの確認及び症例報告書の回収、治験薬の回収などを行う業務をいいます。

 品質管理業務とは、CRAが作成したモニタリング報告書や入手した手続書類、症例報告書の記載形式や記載内容について、品質管理担当者が関連法規、治験実施計画書及び治験標準業務手順書(注6)等に則った適切性のチェックを行う業務をいいます。

 コンサルティング業務とは、製薬会社に対して医薬品開発に係る各種コンサルティングを行う業務をいい、具体的には、治験実施計画書の内容及び治験実施方法等に関する提案や、新薬候補物質に関する治験の実施可能性及び治験実施計画等についての調査・報告を行う業務をいいます。

 当社グループにおけるモニタリング業務、品質管理業務及びコンサルティング業務の概要については以下の通りであります。

※画像省略しています。

(注4)治験薬概要書とは、治験実施期間中の被験者の管理に必要な知識を提供するために作成される書類で、その内容は治験薬に関する非臨床試験及び治験の結果を編集したものとなっております。

(注5)GCP(Good Clinical Practice)とは直訳では「適正な治験の実施」を指す包括概念ですが、本邦においては、これを定めた厚生労働省令である「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」及び「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(1997年3月27日付)並びにこれらの運用通知をいいます。

(注6)治験標準業務手順書とは、治験が、倫理的な配慮のもとに科学的に適正に実施され、かつ臨床試験結果の信頼性が確保されるように、医薬品開発の基本的な業務手順を体系的にまとめた手順書のことをいい、GCPに基づいて作成されます。

(5)当社グループの事業の特徴

 当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社リニカル)及び連結子会社であるLINICAL USA,INC.、LINICAL TAIWAN CO., LTD.、Linical Singapore Pte. Ltd.、LINICAL KOREA CO., LTD.、LINICAL Europe Holding GmbH、LINICAL Europe GmbH、LINICAL Spain, S.L.、LINICAL France SARL、LINICAL Netherlands B.V.、LINICAL POLAND sp. z o.o.、LINICAL Czech Republic s.r.o.、Linical U.K. Limited、Linical Hungary Kft.、Linical Romania S.R.L.、Linical Italy SRL、Linical Accelovance America, Inc.、Linical Accelovance China Ltd.及びLinical China Co., Ltd.等で構成され、製薬会社の医薬品開発における治験の一部を受託する医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主たる業務としており、その他に、医薬品製造販売後支援事業(育薬事業)を展開しております。

① CRO事業

 1997年3月の法改正(新GCP)においてCROの定義が明文化されて以来、その社会的認知度も徐々に向上し、人材の確保・育成がなされ、CRO業界は医薬品の基礎研究から非臨床試験、治験、製造販売後臨床試験など医薬品開発のすべての段階において製薬会社から受託を得られるまでに成長してきました。

 しかしながら、特に大手製薬会社は、迅速に治験を進めることにより新薬を早期に開発するために、単なるアウトソーシング先としてのCROではなく、自社開発部門とほぼ同等の能力を有し、同等の立場で医薬品開発を実行・支援できるCROを求めていると、当社グループでは想定しております。

 そのような中、当社グループは人材面において、国内大手製薬会社で医薬品開発経験を有するメンバーが中心となって創業し、医薬品開発の経験者の中途採用を積極的に実施したことを背景として、現在では大手製薬会社との継続的な取引関係を構築しております。

 また、当社グループは前述のとおり、製薬会社の医薬品開発のパートナーとしてのCROを実現するためには、業務内容や業務形態の選択と集中を推し進めることが重要であるという考えに基づき事業展開を行っているため、当社グループのCRO事業は以下のような特徴を有しております。

ⅰ)特定業務及び特定治験段階への注力

 治験の業務は、前述のとおり多岐に亘り、また、治験段階も製造販売後調査を含めるとフェーズⅠ~Ⅳに及びます。これらすべてを網羅的に受託することは当社グループの持つ医薬品開発の知識・技術・経験等の経営資源を分散させることになり、顧客である製薬会社のニーズに対して十分に応えることができなくなると考えております。

 従いまして、当社グループでは、医薬品開発ノウハウの分散を防ぎ、当社グループの持つ知識・技術・経験を有効活用し、顧客のニーズに応えるため、治験の主要業務であるモニタリング業務並びにそれに付随する品質管理業務及びコンサルティング業務を中心とする受託特化型の業務形態を取っております。

 また、治験段階においては、治験の主たる段階であり、特に利益率の高いフェーズⅡ、フェーズⅢを中心として事業を展開しております。

ⅱ)特定の顧客への特化

 大手製薬会社は常に医薬品の開発・承認申請業務に着手しており、最新の医薬品開発情報を豊富に所有しているという特徴を有しております。当社グループはこれらの情報をタイムリーに入手し、更なる知識・技術・経験を積み上げていくため、大手製薬会社を中心として取引を行っております。

 また、製薬会社は、それぞれにその医薬品開発手法及び治験標準業務手順書が独自のものであるという特徴を有しているため、当社グループが多数の製薬会社と取引を行った場合に、それぞれの開発手法及び治験標準業務手順書に対応する必要が生じます。取引先を限られた大手製薬会社各社に特化することは、手法・手順が多数存在することにより発生するエラーやミスを回避し、治験の品質を高め、競争力を向上させる効果が期待できるものと考えております。

ⅲ)治験領域の拡大

 製薬各社がアンメット・メディカル・ニーズに対応するために開発パイプラインを増加させている以下の領域については専門部署を設置し、業務受託を行っております。

イ. がん領域

 がん領域プロジェクトは一般的に重篤な症例が対象となるため、安全性情報報告を中心に慎重かつ迅速な対応が必要になります。よって、がん領域での経験が豊富なマネージャーとCRAを配置し、ノウハウを集約して継続的な受託を実現しております。

ロ. 中枢神経系(CNS)領域

 CNS領域プロジェクトは有効性評価の標準化が難しいため、この領域での経験と高いスキルが求められます。よって、この領域での経験が豊富なマネージャーとCRAを配置し、ノウハウを集約することで、これまでの受託実績に加え、今後開発パイプラインの増加が予想される領域・疾患の受託にも成功しております。

ⅳ)コンサルティング業務(創薬支援)

国内大手製薬会社でライセンス、事業開発、臨床開発、開発薬事、マーケティングといった業務に携わり、開発品の目利きから、導入・導出交渉、臨床開発などで数々の実績と豊富な経験をしているものが中心となり、主に、開発品の市場分析、開発戦略立案、薬事対応、パートナリング支援等のコンサルティングサービスを提供しております。これにより、新薬開発における創薬支援から、臨床開発、製造販売後の臨床試験や臨床研究という承認後のライフサイクルマネジメントまでワンストップのサービスを提供することが可能です。

 

② 育薬事業

 CRO事業が医薬品の開発業務を受託するのに対して、育薬事業では医薬品の製造販売後支援業務を受託しております。

 当社グループの育薬事業は、CRO事業で得たノウハウを活かし、より専門性の求められる企業・医師主導臨床研究の組織体制構築業務、製造販売後の企画業務・モニタリング業務・監査業務を受託することで、同業他社との差別化を図っております。

 

23/06/23

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 1.経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

(1)財政状態

 当連結会計年度における財政状態は、資産合計については、前連結会計年度末と比べ1,748百万円増加し、17,464百万円(11.1%増)となりました。負債合計については、前連結会計年度末と比べ710百万円増加し、9,883百万円(7.7%増)となりました。純資産合計については、前連結会計年度末と比べ1,038百万円増加し、7,581百万円(15.9%増)となりました。

 

(2)経営成績

 当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は2期連続で過去最高を更新し、12,516百万円(前期比8.3%増)となりました。また、利益面では、営業利益は1,256百万円(前期比15.7%増)、経常利益は外貨預金等に為替差益55百万円等が発生したため1,283百万円(前期比8.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は昨年発生したサイバー攻撃関連の保険金の受取り115百万円や子会社清算益35百万円が発生したこと等から1,004百万円(前期比27.1%増)となりました。

 以上の結果、前期比で増収増益を達成するとともに、2022年5月16日に発表した当期の連結業績予想を上回る結果となりました。

 売上高及び営業利益に関する説明は下記のとおりです。

 売上高は、米欧地域の大型国際共同治験等の増加に加え、為替が円安に推移し海外子会社の収益を押し上げたことから、欧州、米国、アジアの海外事業が前期比で増収となり、連結で過去最高となりました。欧米を中心とする海外製薬企業、バイオテクノロジー企業の治験需要は旺盛であり、当社グループの受注残高は高いレベルを維持しています。引き続きこれらの企業からの引き合いを確実に受注できるよう営業活動を強化してまいります。

 営業利益は、日本の増益に加え、米欧地域で第1四半期に大型国際共同治験の開始が遅れ、一時的に要員稼働率が低下したものの、7月後半に開始されて以降はおおむね順調に進捗し、その他新規案件の開始や契約変更による工数増加もあり、要員稼働率が高水準を維持したことによって業績が改善した結果、増益となりました。

 

 次に、各地域の状況は下記のとおりです。

 日本は、上期に依頼者事由による治験開始時期の変更が発生したこと等の影響が大きく、前期比で減収となったものの、営業利益は、採用数調整による人件費の厳密なコントロール等により、情報セキュリティ強化のための費用増加等を吸収し、前期比で大幅な増益となりました。

 米国においては、前述の第1四半期の米欧地域での大型国際共同治験の遅れ等があったものの第2四半期以降は改善したことに加え、円安の影響もあり前期比で増収となりました。一方、営業利益面では、前述の第1四半期の試験遅れ等に伴う一時的な要員稼働率の低下等の影響が大きく、第2四半期以降は改善したものの前期比で減益となりました。

 欧州においては、前期の好調な受注を計画通り消化して売上を計上するとともに、上述の大型国際共同治験においても第2四半期以降は順調に進捗したことに加え、円安の影響もあり、前期比で大幅な増収となりました。一方、営業利益は、いくつかの受託案件で進捗の遅れが発生し第4四半期で予定していた売上が想定を若干下回ったこと等もあり前期比で僅かに減益となりました。

 韓国では、複数の新規案件を獲得・開始したこと等に加え円安の影響もあり前期比で大幅な増収となりました。営業利益は、新規案件に対応するための増員による先行的な人件費増加により第1四半期に営業損失を計上した影響が大きく、第2四半期以降において利益を順調に積み上げたものの、前期比では減益となりました。

 中国では、上期にゼロ・コロナ政策によるロックダウンの影響から一部の受注案件で進捗が遅れた結果、前期比で増収減益となりました。

 台湾では、上期に既存の一部受注案件でコロナの影響から治験の進捗が遅れたものの新規案件の開始もあり、前期比で増収となりました。また、営業利益面でも、増収に加え、費用節減を継続した結果、営業黒字化を達成し、前期から業績が大きく改善しました。

 

  セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

① CRO事業

 当社グループのCRO事業につきましては、売上高は11,669百万円(前期比9.9%増)、営業利益は3,094百万円(前期比21.9%増)と増収増益となりました。

② 育薬事業

 当社グループの育薬事業につきましては、売上高は847百万円(前期比9.8%減)、営業利益は158百万円(前年比42.6%減)と減収減益となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より1,056百万円増加し、7,042百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、1,839百万円(前連結会計年度は1,631百万円の獲得)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益1,378百万円の計上に加え、預り金の増加額999百万円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、14百万円(前連結会計年度は20百万円の獲得)となりました。これは、主に投資有価証券の取得による支出10百万円及び有形固定資産の取得による支出11百万円があったこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、957百万円(前連結会計年度は951百万円の使用)となりました。これは、主に長期借入金の返済による支出539百万円及び配当金の支払額316百万円があったことによるものであります。

 

(4)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 当社グループの業務には生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

② 受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

CRO事業

10,141,745

△28.3

20,450,663

△7.0

育薬事業

794,123

+8.0

482,962

△9.9

合計

10,935,868

△26.5

20,933,626

△7.0

 

③ 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

CRO事業  (千円)

11,669,884

+9.9

育薬事業   (千円)

847,114

△9.8

合計(千円)

12,516,998

+8.3

 (注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりで

    あります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

中外製薬株式会社

1,477,359

12.8

1,322,626

10.6

エーザイ株式会社

1,593,305

13.8

1,314,600

10.5

 

2.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2023年6月23日)において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、引当金の計上等見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。但し、将来に関する事項には不確実性があるため、実際の結果はこれら見積りと異なる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2)当連結会計年度の財政状態の分析

① 資産の部

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ1,748百万円増加し、17,464百万円(11.1%増)となりました。これは、主に現金及び預金、売掛金及び契約資産の増加によるものであります。

② 負債の部

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末と比べ710百万円増加し、9,883百万円(7.7%増)となりました。これは、主に長期借入金が減少する一方、預り金が増加したことによるものであります。

③ 純資産の部

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末と比べ1,038百万円増加し、7,581百万円(15.9%増)となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加によるものであります。

 

(3)当連結会計年度の経営成績の分析

① 売上高

 当社グループの当連結会計年度の売上高は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ961百万円増加し、12,516百万円(前期比8.3%増)となりました。

② 売上原価

 当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べ411百万円増加し、8,355百万円(前期比5.2%増)となりました。

③ 販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ379百万円増加し、2,905百万円(前期比15.0%増)となりました。

④ 営業利益

 当連結会計年度の営業利益は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ170百万円増加し、1,256百万円(前期比15.7%増)となりました。

⑤ 経常利益

 当連結会計年度の経常利益は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ99百万円増加し、1,283百万円(前期比8.4%増)となりました。

⑥ 税金等調整前当期純利益

 当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ346百万円増加し、1,378百万円(前期比33.6%増)となりました。

⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ213百万円増加し、1,004百万円(前期比27.1%増)となりました。

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については「1[経営成績等の状況の概要] (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

② 財務政策及び資金の流動性についての分析

 当社は、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを重要施策と位置づけ、株主の皆様からお預かりした資本に対して如何に報いるかという視点に立ち、業績を勘案した配当施策を行い、安定的に利益還元に努めてまいります。

内部留保金につきましては、将来の事業発展に必要不可欠な成長投資として活用し、中長期的な成長による企業価値向上を通じて株主の皆様の期待にお応えしてまいります。

 当社グループの資金需要のうち主なものは、従業員給付費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、将来の事業発展に必要不可欠な成長投資としてのM&Aによる企業買収等のための資金であります。

当社は、事業活動のために適正な流動性の維持及び効率的な資金の確保を基本方針としており、主に営業活動から得た資金を財源とし、必要に応じて短期または長期の借入による資金調達を実施することとしております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,632百万円、現金及び現金同等物の残高は7,042百万円となっております。また、当社の資金の流動性については、十分な余剰資金に加え、国内金融機関との間で合計2,500百万円の当座借越枠を設定し、当社グループの資金の流動性を補完しております。

 

(5)経営成績等に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(6)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元バランスの最適化を図ることを重要施策と位置付け、安定的な利益還元の源泉となる1株当たり当期純利益を目標とする経営指標にしております。

 当連結会計年度の1株当たり当期純利益は44.47円(前年同期比27.1%増)となりました。これは、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、親会社株主に帰属する当期純利益が前年同期と比して増加したことによるものです。

 1株当たり当期純利益の2023年3月期までの実績値及び2024年3月期の計画値は、次のとおりであります。

経営指標

2020年

3月期実績

2021年

3月期実績

2022年

3月期実績

2023年

3月期実績

2024年

3月期計画

1株当たり当期純利益(円)

21.38

23.91

35.00

44.47

44.63