E02998 Japan GAAP
前期
1,562.9億 円
前期比
114.1%
株価
1,392 (04/19)
発行済株式数
31,042,900
EPS(実績)
176.79 円
PER(実績)
7.87 倍
前期
817.3万 円
前期比
101.0%
平均年齢(勤続年数)
43.9歳(10.4年)
従業員数
190人(連結:3,185人)
当社グループは、当社(アルコニックス株式会社)、連結子会社60社、関連会社6社により構成されており、アルミ、銅、ニッケル、レアメタル・レアアース等の各種製品並びにそれらの原材料の輸出、輸入及び国内取引の業務を行うほか、金属加工を中心とした製造業への事業拡大を行っています。特に近年、製造業のM&A、事業投資に注力した結果、利益面で製造業の比率が飛躍的に高まっており、商社機能と製造業を融合した新しい企業集団の形成が進んでおります。
(1)非鉄金属業界における当社グループの位置付けについて
当社グループを取り巻く非鉄金属業界は鉱山会社、精錬メーカー、圧延・加工メーカーと各工程に介在する商社で成り立っており、当社グループの事業は大きく区分すると、アルミニウム、銅等のベースメタル製品、並びにレアメタル等の原料から製品を取扱う商社流通事業、及び非鉄金属等を素材とした金属加工と金属加工に絡む装置材料等の製造事業に分けられます。
これらを体系図で示すと下記の通りとなります。
※画像省略しています。
(2)当社グループの報告セグメント及びその事業内容
・商社流通
「電子機能材事業」は、日本企業が世界をリードする電子材料・部品分野であり、特に、需要が拡大するスマートフォン、タブレット端末、電気自動車並びにハイブリッド車や、IT関連機器等に使用される電子部品、化合物半導体、結晶材料、またこれら材料の生産に不可欠なレアメタル(チタン、タングステン、モリブデン、レアアース等)の取扱いを行っております。とりわけ当社グループにおけるレアメタルの取扱いは他の企業とは異なり、原料から材料・製品まで一貫して取扱っているのが特徴であります。
また、新たな商流、分野、素材による成長機会、及びモノづくり支援による成長機会の獲得を目的としてコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)とその運営子会社を設立いたしました。「先端・高成長分野での事業取組機会の確保」「素材、モノづくり分野での当社プレゼンスの拡大」「事業投資から生じる財務収益の取込み」をファンド運営の目的とし、将来有望なスタートアップ企業等に出資してまいります。
当セグメントには、当社の電子・機能材本部、海外ネットワーク機能としての現地法人のほか、チタン、タングステン、モリブデン、レアアース等レアメタルに特化し鉱石から地金、中間原料までを一貫して取扱う国内連結子会社(当該子会社は中国及びシンガポールに海外現地法人を設立)に加え、CVC運営子会社とCVCファンドが所属しております。
「アルミ銅事業」は、歴史のある安定成長ビジネスとして多くの優良な取引先・商権を持つ「製品」と、世界的な地球温暖化防止、省エネルギーで脚光をあびる非鉄金属のリサイクル原料、再生原料を手掛ける「原料」が主要な事業であります。「製品」は国内市場においてはすでに成熟しておりますが、世界的な視点でみると自動車、家電、半導体向けの需要増加が見込まれており、将来性のある事業であります。
当セグメントでは主にアルミ圧延品、伸銅品、及びバルブ部品等の建設資機材の輸出、三国間取引及び国内取引を中心に事業を展開しております。一方、「原料分野」は自動車業界の軽量化に伴うアルミリサイクル原料の需要増加、環境問題に端を発した各リサイクル法の制定という事業環境を背景に市場規模が拡大傾向にあるアルミ、銅スクラップ、アルミ再生地金を手掛ける他、マグネシウム地金や金属珪素の取扱いも行っております。
当セグメントは当社の軽金属・銅製品・チタン本部、非鉄原料・産業資材本部、海外ネットワーク機能としての現地法人、国内流通・問屋機能を有する流通子会社の他、スクラップヤードを保有し非鉄スクラップリサイクルを手掛ける国内連結子会社が所属しております。
・製造
「装置材料事業」は、非鉄金属の総合企業を目指した積極的なM&Aの推進により当社グループに加わった製造子会社群で構成されており、収益の柱として成長を続ける「製造」分野の一つであります。当セグメントにおける主な製品並びに製造子会社は次の通りでありますが、特に海外を中心に当社の企画力・販売力とのシナジーによる事業拡大を目指しております。
・めっき材料
海外連結子会社であるUNIVERTICAL HOLDINGS INC.の主要製品であります。米国が本社でありますが中国にも生産拠点を持ち、主要製品である銅・ニッケルアノードのほか、硫酸ニッケル等のめっき用化成品を製造し、自動車及びエレクトロニクスの巨大市場である米国並びに中国を中心に世界の約20か国で販売を展開しております。
・溶接材料
国内連結子会社である東海溶業株式会社の主要製品であります。愛知県に生産拠点を持ち、自動車製造用金型の補修材料の製造販売のほか溶接・溶射施工というニッチな分野において国内大手自動車メーカー等を取引先に持ち、業界内で高い地位を確保する他、海外自動車関連メーカー向けにも輸出販売を行っております。
・非破壊検査装置及びマーキング装置
国内連結子会社であるマークテック株式会社の主要製品であります。同社の手掛ける両製品は国内ではトップシェアを誇り、千葉県に生産拠点を構えて主に大手自動車、鉄鋼、重工メーカー向けに装置の製造・販売に加え、装置の稼働時に使用する探傷剤、インク等の消耗品販売からメンテナンスまで一貫して提供しています。また同社は韓国・中国・タイにも製造拠点を持ちグローバルな事業展開をしております。
・カシューパーティクル(ブレーキ摩擦材)及びカシュー応用製品
国内連結子会社である東北化工株式会社の主要製品であります。同社は、栃木県那須烏山市に生産拠点を構える摩擦調整材、電波吸収体、機能性インク等を製造するメーカーであります。主要製品であるカシューパーティクルは天然由来の素材であり摩擦安定性、耐摩耗性の向上等において自動車・二輪車のブレーキ・クラッチ並びに高性能自転車、鉄道用制輪子等の摩擦材に不可欠な材料であります。同社は独自ノウハウと技術開発力を梃子に、高機能摩擦調整材等を国内主要ブレーキ摩擦材メーカーに納入しております。
・一般産業機械並びに自動車向け小型モータ用カーボンブラシ
国内連結子会社である株式会社富士カーボン製造所の主要製品であります。同社は一般産業用小型モーター等に使用するカーボンブラシを製造するメーカーであります。電動工具から自動車まで幅広く使用される小型モーターの基幹部品であるカーボンブラシの独自ノウハウと技術力を強みに国内有数のシェアを誇る他、同社は創業後の早い段階から海外進出を果たし、現在では中国、台湾、ベトナムに主力生産拠点を構えており、海外拠点をメインに収益をあげるビジネスモデルを展開しております。
「金属加工事業」は、国内有数の製造設備と熟練した人材による優れた技術力により生み出された加工部品がスマートフォン・タブレット端末、半導体製造装置、自動車、航空・宇宙分野等におけるコア部品として使用され高い評価を受けている事業であります。当セグメントにおける主な製品並びに製造子会社は次の通りであります。
・精密切削加工部品
国内連結子会社である株式会社大川電機製作所の主要製品であります。福島県に生産拠点を持ち、アルミ素材の他、チタン・モリブデンなどの難削材の切削加工を行っております。従来は通信機器向け機構部品の加工が主でしたが、複数の大型加工設備を保有していることから、最近では大型・高精密が要求される半導体製造装置、有機EL製造装置部品等の受注が増加、これら需要増に対し第2工場の増設や第3工場の建設による生産能力増加の対応を行っております。
・精密研削加工部品
国内連結子会社の大羽精研株式会社の主要製品であります。愛知県に本社・生産拠点を有し、半導体、自動車、産業機械関連分野における製造装置部品の高精密、高精細研削加工部品の製造を得意としております。特に同社の主要製品であるチップマウンター(表面実装機)向けノズル部品は、その高い技術力が認められ当社グループの収益に寄与しております。また同社は、これら培った精密加工技術を元に自動車向け試作部品並びに小ロット量産品の製造を事業の第2の柱とすべく取り組んでおります。
・自動車向け精密プレス部品
国内連結子会社の株式会社富士プレスの主要製品であります。愛知県に本社及び生産拠点、福岡県に製造事業所を有し、主に自動車パワートレイン系精密プレス部品の製造を行っております。特に自動車メーカーの厳格な納期管理に対応した生産管理体制、技術面における冷間鍛造、並びに精密絞り加工技術による高精度・高難度加工を強みとしており、同社の先進性と技術力が主要取引先である国内大手自動車部品メーカーから高く評価されております。また海外連結子会社であるFUJI ALCONIX MEXICO S.A.de C.V.(株式会社富士プレス80%、当社20%)をメキシコに設置し、自動車部品生産の集積地であるメキシコから北米並びに中米に向けて事業拡大を推進しております。
・空調機器向け金属加工部品
国内連結子会社の株式会社富士根産業の主要製品であります。静岡県に本社及び生産拠点を有し、主にビル、冷凍設備、及び半導体設備向け空調機器用配管部品の製造を行っております。特に当該連結子会社の製品が使用される業務用パッケージエアコン(PAC)の主要部品であるタンク部品の製造加工においては業界でも強みを有しております。また、当社は同社の発行済株式のうち95%を保有し、残り5%については、当社グループの取引先で西日本地区の大手空調配管部品メーカーである千代田空調機器株式会社が資本参加をしております。今後、両社の協業関係構築を推進することで、原材料共通化や生産効率性の向上、及び技術交流等により新規製品分野への開拓を進める他、当該連結子会社の海外加工拠点(タイ)を活用し、当社の商社機能を融合した、金属加工分野におけるグローバル事業展開を加速してまいります。
・端子コネクター向け精密プレス部品
国内連結子会社のジュピター工業の主要製品であります。岩手県宮古市に生産拠点を構え精密コネクタ金属端子部品のプレス加工、及びプレス金型の設計並びに製作を行なっております。主要製品はスマートフォン、タブレット等のデジタルモバイル製品等の民生機器向け高性能精密コネクタ金属端子部品であり、また射出成形によるコネクタといった関連部品の製造も手掛けております。同社の得意先は最終製品向け大手有力電子部品メーカーであり、複雑かつ納期管理が厳しい電子部品・半導体関連のサプライチェーンにおいて、当該会社は独自で培った高い技術力及び確立された開発・量産体制を駆使し製品の安定供給に貢献し顧客から主力ベンダーの一つとして高い評価を得ております。
・車載用リチウムイオン電池向け金属プレス部品
国内連結子会社の株式会社ソーデナガノの主要製品であります。長野県岡谷市に生産拠点を構え金属精密プレス部品の製造、及び金型設計製作等を行なっております。当該会社は主要製品であるリチウムイオン電池用機構部品の製造において多くの特許と意匠を保有し、これに裏付けされた高精度・高速プレス加工を可能にする高い技術力と、充実した加工設備により確立された量産体制、及び徹底した品質管理を強みに、主要取引先である国内大手電池メーカーと強固な取引関係を形成する等、顧客から高い評価を得ております。
当社グループ内の国内外プレス専業会社3社は「総合プレス加工グループ」を形成することで、各社における技術的優位性と不得手分野における補完体制をミックスし、顧客からの多種多様なニーズに対応することで新たな商流の開拓が可能となります。この他、グループ各社での技術交流やノウハウの共有により、グループ全体でのコスト競争力、生産効率性の向上が見込まれ、この結果、高いシナジー効果が期待されます。
当社グループの報告セグメントにおける主な取扱品並びに製品と所属する主要連結子会社は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
主要取扱商品 |
主要連結子会社 |
|
商社流通 |
電子機能材 |
・半導体、エレクトロニクス関連材料としての化合物半導体 ・プリント配線基板、バッテリー等の電子材料 ・二次電池用ニッケル製品 ・チタン、タングステン、モリブデン、ガリウム、インジウム、レアアース等のレアメタル ・投資事業、投資事業組合の運用 |
アドバンスト マテリアル ALCONIX USA,INC., ALCONIX HONGKONG CORP.,LTD. ALCONIX (TAIWAN) CORPORATION. HONG KONG ANDEX ELECTRONIC MATERIAL CO.,LTD. アルコニックスベンチャーズ株式会社 |
アルミ銅 |
・アルミニウム製品(圧延品、押出材、鋳鍛造品、飲料缶、箔 等) ・伸銅品(板・条・管の展伸材、加工品、部品 等) ・アルミニウム二次合金地金及び非鉄スクラップ(アルミ、銅、特金、廃家電 等) ・金属珪素、亜鉛合金塊、マグネシウム地金等 ・各種配管機材及び素形材等 ・アルミダイカスト製品、金型、鋳物製品等 ・金属建具工事、ビル・マンションのリニューアル、リフォーム工事等 ・発電設備、化学工業機器等に使用されるチタン、ニッケル製品 ・流通商社セグメントの子会社管理業務に関するシェアードサービス |
林金属株式会社 アルコニックス・三高株式会社 平和金属株式会社 アルミ銅センター株式会社 ALCONIX(SHANGHAI)CORP. ALCONIX(MALAYSIA)SDN.BHD. ALCONIX VIETNAM CO.,LTD. ALCONIX(THAILAND)LTD. ALCONIX LOGISTICS(THAILAND) LTD. ALCONIX KOREA CORPORATION ALCONIX EUROPE GMBH ACメタルズ株式会社 |
|
製 造 |
装置材料 |
・銅、ニッケルめっき材料及び関連化学品 ・非破壊検査装置、マーキング装置及び関連消耗品 ・金型用肉盛溶接棒、溶射施工 ・カシュー樹脂(ブレーキ摩擦材等)及びカシュー応用製品並びに電波吸収体 ・一般産業用並びに自動車用小型モーター向けカーボンブラシ |
UNIVERTICAL HOLDINGS INC. 東海溶業株式会社 アルコニックス・エムティ 株式会社 アルコニックス・東北化工 株式会社 富士カーボン製造所株式会社 |
金属加工 |
・アルミ、チタン等軽合金の通信機器等用精密機構部品 ・半導体用表面実装機(チップマウンター)、及び自動車、産業機械関連製造装置用精密研削加工部品 ・自動車向け精密プレス金型及びプレス部品 ・空調機器及び自動車部品等の金属加工部品 ・精密コネクタ金属端子部品のプレス部品 ・リチウムイオン電池及びHDD用部品のプレス加工、切削加工部品 |
株式会社大川電機製作所 大羽精研株式会社 株式会社富士プレス FUJI ALCONIX MEXICO S.A.de C.V. 株式会社富士根産業 ジュピター工業株式会社 株式会社ソーデナガノ |
また、事業の系統図によって示すと、次のとおりであります
※画像省略しています。
(注)1.◎は連結子会社であります。
2.当社の連結子会社であるUNIVERTICAL HOLDINGS INC.の連結子会社4社を当社グループの連結子会社としております。
3.当社の連結子会社であるアドバンストマテリアルジャパン株式会社の連結子会社2社、株式会社富士根産業の海外連結子会社1社を当社グループの連結子会社としております。
4.アルコニックス・エムティ株式会社は当社連結子会社のマークテック株式会社の株式全てを保有する当社の中間持株会社の連結子会社であります。またマークテック株式会社の連結子会社8社を当社グループの連結子会社としております。
5.アルコニックス・東北化工株式会社は当社連結子会社の東北化工株式会社の株式全てを保有する当社の中間持株会社の連結子会社であります。また東北化工株式会社の連結子会社1社を当社グループの連結子会社としております。
6.富士カーボン製造所株式会社は当社連結子会社の株式会社富士カーボン製造所の株式全てを保有する当社の中間持株会社の連結子会社であります。また株式会社富士カーボン製造所の連結子会社5社を当社グループの連結子会社としております。
7.FUJI ALCONIX MEXICO S.A. de C.V.は当社20%及び当社の連結子会社である株式会社富士プレス80%出資で設立した当社グループにおける連結子会社であります。
8.HONG KONG ANDEX ELECTRONIC MATERIAL CO.,LTD.は2019年10月10日に当社と合弁事業パートナー企業が共同出資で設立した当社グループにおける連結子会社です。なお、同社の連結子会社1社を当社グループの連結子会社としております。
9.ALCONIX(MALAYSIA)SDN.BHD.は2020年6月17日に現地合弁事業パートナー企業と共同出資でALCONIX CASTLE METALS AND CHEMICALS SDN.BHD.を設立し、同社と同社の連結子会社1社を当社グループの連結子会社としております。
10.アルコニックスベンチャーズ株式会社はコーポレートベンチャーキャピタルの運営事業を手掛ける当社の連結子会社であります。当社は同社とアルコニックスグローバルイノベーションファンド投資事業有限責任組合を二人組合で組成しており、同ファンドを当社の連結範囲に含めております。なお、当該ファンドの出資比率は当社が99%、同社が1%の二人組合であります。
11.ACメタルズ株式会社は2022年4月1日に当社100%出資で設立した、アルミ銅セグメントに所属する流通子会社の管理業務を手掛けるシェアードサービス会社であります。
12.当社は2022年4月27日にジュピター工業株式会社の発行済株式の全てを取得し、同社を当社の連結子会社といたしました。また、同社の海外連結子会社2社を当社グループの連結子会社としております。
13.当社は2022年11月30日に株式会社ソーデナガノの発行済株式の全てを取得し、同社を当社の連結子会社といたしました。
1.業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度における国内外の経済情勢は、中国経済の減速やウクライナ情勢の長期化の他、期を通じて高止まりを続けるエネルギー・資源価格、円安等に伴うインフレの加速や各国での金利上昇もあり、総じて先行き不透明な状況で推移いたしました。
当社グループを取巻く業界では、幅広い用途で需要が拡大してきた半導体・電子部品が当連結会計年度後半以降、それら需要の一服感と、世界的なインフレからくるユーザーの購買力低下等によりスマートフォンをはじめとしたエレクトロニクス製品の販売が減速し、これに伴い一部の半導体製造装置に受注調整が生じる等、需要は低調に推移いたしました。また、自動車関連は当連結会計年度後半に入り部品調達不足の緩和や完成車メーカーによる増産が計画され需要増加に期待感が高まったものの、断続的なサプライチェーンの混乱や台風等自然災害の影響等により国内生産が伸び悩み、本格的な回復基調には至りませんでした。
このような経済環境のもと、当社グループの売上高においては半導体製造装置向け金属加工部品、めっき材料等の出荷、及び電子部品、半導体材料等向けニッケル製品、アルミ圧延品の取扱高が前期に比べ増加いたしましたが、国内自動車生産の低迷の影響を受けた精密金属プレス部品、関連材料の出荷は前期に比べ減少いたしました。損益面においては、円安やエネルギー価格及び原材料価格高騰による仕入価格の上昇や連結子会社の新規取込に伴う販売費及び一般管理費の増加等により営業利益及び経常利益は前期比で減益となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、製造子会社の株式取得に伴う負ののれん発生益を特別利益に計上したものの、税金費用を控除した結果、前期比で減益となりました。
当連結会計年度における主な経営成績は次のとおりであります。
|
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
前期比増減額 (百万円) |
前期比増減率 (%) |
売上高 |
156,286 |
178,333 |
22,046 |
14.1 |
営業利益 |
11,020 |
8,393 |
△2,627 |
△23.8 |
経常利益 |
11,009 |
8,176 |
△2,832 |
△25.7 |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
7,507 |
5,488 |
△2,019 |
△26.9 |
当連結会計年度におけるセグメントの業績は次のとおりであります。また、各セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高を含んでおります。
|
|
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
前期比増減額 (百万円) |
前期比増減率 (%) |
商社流通 -電子機能材 |
売上高 |
36,806 |
42,161 |
5,354 |
14.5 |
セグメント利益 |
4,273 |
3,601 |
△672 |
△15.7 |
|
商社流通 -アルミ銅 |
売上高 |
60,848 |
66,804 |
5,956 |
9.8 |
セグメント利益 |
2,032 |
1,171 |
△861 |
△42.4 |
|
製造 -装置材料 |
売上高 |
36,269 |
42,464 |
6,194 |
17.1 |
セグメント利益 |
1,245 |
998 |
△247 |
△19.8 |
|
製造 -金属加工 |
売上高 |
27,532 |
29,715 |
2,182 |
7.9 |
セグメント利益 |
3,449 |
2,416 |
△1,033 |
△30.0 |
・商社流通-電子機能材事業
電子部品向け部材及び半導体材料等向けニッケル製品は幅広い用途での需要増加を受けて取扱高は堅調に推移いたしましたが、二次電池材料は、世界的なスマートフォン関連需要の減速の影響により前期に比べ取扱高が大きく減少いたしました。一方、レアメタル・レアアースは、自動車関連の低調な生産の影響を受けて取扱数量は伸び悩みましたが、市況の上昇等もあり売上及び利益は前期に比べ増加いたしました。
・商社流通-アルミ銅事業
製品分野においては、堅調な国内建設需要を背景にアルミ圧延品の取扱いが前期に比べ増加いたしましたが、IT関連需要の減速等により電子部品向けを中心とした伸銅品の取扱いが前期に比べ減少いたしました。原料分野においては、低調な自動車生産の影響により銅・アルミスクラップ及びアルミ再生塊の取扱数量は共に前期に比べ減少いたしました。
・製造-装置材料事業
材料分野においては、米国及び中国の両拠点におけるめっき材料の需要拡大と市況上昇により出荷が前期に比べ増加いたしました。装置分野においては、探傷剤及びペイント等消耗材料の出荷が国内外で堅調でありましたが、自動車を中心とした部品の調達不足による顧客の操業低下等の影響により非破壊検査及びマーキング双方における装置需要が落ち込み、出荷が前期に比べ減少いたしました。
・製造-金属加工事業
精密切削加工部品は半導体製造装置のうちプロセス用処理装置の出荷・販売が高水準に推移し、また生産現場の自動化、EVを含む脱炭素関連の設備投資需要を取り込み、出荷が堅調に推移いたしました。また、半導体実装装置向け精密研削加工部品の出荷は、世界的なスマートフォン向け需要の減速の影響を受けて低調でありました。一方、精密金属プレス部品は顧客からの引合は強い一方で低調な自動車生産の影響を受け、出荷は前期に比べ減少いたしました。なお、2022年11月に連結子会社化し、当第4四半期より収益を取込んだ株式会社ソーデナガノの車載向けリチウムイオン電池用プレス部品は概ね当初の計画通りに推移いたしました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ129百万円減少し、25,814百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
|
キャッシュ・フローの状況 |
営業活動による |
営業活動によるキャッシュ・フローは226百万円の増加(前期比3,555百万円の増加)となりました。主な増加要因は税金等調整前当期純利益8,473百万円、及びのれん償却を含む減価償却費等4,851百万円であります。また主な減少要因は法人税等の支払額4,961百万円、仕入債務の減少額4,537百万円、棚卸資産の増加額3,924百万円、及び連結子会社の株式取得に伴う負ののれん発生益346百万円であります。 |
投資活動による |
投資活動によるキャッシュ・フローは7,045百万円の減少(前期比3,788百万円の減少)となりました。主な増加要因は投資有価証券の売却による収入157百万円であります。また主な減少要因は製造子会社を中心とした設備増強に伴う有形及び無形固定資産の取得による支出4,790百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出2,030百万円、及び投資有価証券の取得による支出476百万円であります。 |
財務活動による |
財務活動によるキャッシュ・フローは5,896百万円の増加(前期比135百万円の増加)となりました。主な増加要因は短期借入金の純増加額5,383百万円、及びコマーシャル・ペーパー(CP)の発行による増加額1,997百万円、及び長期借入金の純増加額251百万円であります。また主な減少要因は配当金の支払額1,631百万円、及び社債の償還による支出149百万円であります。 |
(3)仕入及び販売の実績
①仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
|
仕入高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
電子機能材事業 |
38,073 |
102.5 |
アルミ銅事業 |
59,634 |
104.9 |
装置材料事業 |
29,029 |
116.9 |
金属加工事業 |
14,161 |
115.8 |
合計 |
140,898 |
107.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は実際仕入価格によっております。
②販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
電子機能材事業 |
41,418 |
122.9 |
アルミ銅事業 |
65,861 |
110.5 |
装置材料事業 |
41,783 |
116.8 |
金属加工事業 |
29,269 |
107.7 |
合計 |
178,333 |
114.1 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度において総販売実績販売比率が10%を超過する販売先はありません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
・財政状態
① 流動資産
当連結会計年度における流動資産は144,212百万円であり、前連結会計年度末比9,092百万円の増加となりました。主な内訳は棚卸資産の増加5,736百万円、受取手形及び売掛金の増加3,067百万円、及び現金及び預金の増加303百万円であります。
② 固定資産
当連結会計年度における固定資産は47,677百万円であり、前連結会計年度末比6,360百万円の増加となりました。主な内訳は、有形固定資産の増加6,932百万円、無形固定資産の償却による減少950百万円、及び投資その他の資産の増加378百万円であります。
③ 流動負債
当連結会計年度における流動負債は100,348百万円であり、前連結会計年度末比5,704百万円の増加となりました。主な内訳は短期借入金の増加7,175百万円、コマーシャル・ペーパーの増加1,997百万円、支払手形及び買掛金の減少2,497百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少1,126百万円、及び未払法人税等の減少1,047百万円であります。
④ 固定負債
当連結会計年度における固定負債は28,494百万円であり、前連結会計年度末比4,032百万円の増加となりました。主な内訳は長期借入金の増加2,129百万円、長期未払金の増加1,474百万円、及び社債の減少75百万円であります。
⑤ 純資産
当連結会計年度における純資産は63,047百万円であり、前連結会計年度末比5,716百万円の増加となりました。主な内訳は利益剰余金の増加3,834百万円、為替換算調整勘定の増加2,210百万円、繰延ヘッジ損益の減少341百万円、及び上場株式の時価評価等によるその他有価証券評価差額金の減少103百万円であります。
・経営成績
① 売上高
商社流通では半導体材料向けニッケル製品、アルミ圧延品の取扱いが前期に比べ増加いたしましたが、IT関連機器需要の減少により電子材料向け伸銅品、及び自動車生産の低迷の影響によりアルミ原料、銅スクラップ等の非鉄原料の取扱いが前期に比べ減少いたしました。
製造では半導体実装装置向け精密研削加工部品がスマートフォン向け需要の減速の影響を受けて出荷が前期に比べ減少いたしましたが、半導体製造装置向け精密切削加工部品及びめっき材料の出荷が堅調に推移いたしました。しかし自動車向け需要の減少により精密金属プレス部品、カーボンブラシ等素材、非破壊検査及びマーキング等の出荷は前期に比べ減少いたしました。なお、当連結会計年度に連結子会社化した株式会社ソーデナガノの車載向けリチウムイオン電池用プレス部品の収益を取込みました。
この結果、当連結会計年度における売上高は178,333百万円(前期比14.1%増加)となりました。
② 売上総利益
増収であったものの、円安によるインフレやエネルギー・資源価格の高止まりに起因した仕入コストの上昇等により、当連結会計年度における売上総利益は25,075百万円(前期比2.7%減少)となりました。
③ 販売費及び一般管理費
当連結会計年度に連結子会社化したジュピター工業株式会社及び株式会社ソーデナガノの損益取込み、及び営業費用の費消が前期に比べ増加し、当連結会計年度における販売費及び一般管理費は16,682百万円(前期比13.1%増加)となりました。
④ 営業利益
上記の結果、当連結会計年度における営業利益は8,393百万円(前期比23.8%減少)となりました。
⑤ 営業外収益、営業外費用
支払利息の増加等により、営業外収支(営業外収益-営業外費用)は216百万円の支出超となりました。(前期は11百万円の支出超)。
⑥ 経常利益
上記の結果、当連結会計年度における経常利益は8,176百万円(前期比25.7%減少)となりました。
⑦ 特別利益、特別損失
製造子会社の株式取得に伴う負ののれん発生益、及び投資有価証券売却益等による特別利益581百万円を計上する一方、連結子会社によるのれんの一時償却、及び固定資産除却損等の特別損失284百万円を計上いたしました。
⑧ 親会社株主に帰属する当期純利益
税金等調整前当期純利益8,473百万円から法人税等2,934百万円、連結子会社15社における非支配株主に帰属する当期純利益50百万円を差引き、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は5,488百万円(前期比26.9%減少)となりました。
(3)経営戦略の現状と見通し
当社グループは中期経営計画に掲げるVISION「商社機能と製造業を融合する総合企業」を目指し、連結ベースでの企業価値向上と持続的成長の実現に向けて以下の施策を推進しております。
(営業収益力の強化)
①グループ企業間のシナジー
従来型の商社の枠組みを越え、M&Aや事業投資により製造セグメントの事業拡充を図り、商社機能との融合、及び製造セグメント内の企業間シナジーにより営業収益力の飛躍的アップを目指します。
②成長事業の収益力強化
当社グループの飛躍的な成長の原動力となった電子部品関連分野、半導体関連分野、自動車関連分野という3つの事業を重点分野として引き続き強化いたします。
(電子部品関連)
結晶材料、金属粉末、液晶や電池用材料、半導体周辺素材、機能化学品等、次世代自動車や移動通信システム(5G)の普及、及びさらなるAIやIoTの深化に欠かせない電子材料と電子部品分野での取組を強化いたします。
(半導体関連)
IoTの深化に伴い、半導体実装装置を含む半導体製造装置の需要はさらに成長を続けるものと予測されます。この分野の素材調達は商社流通セグメントにおいて、また部品加工と供給は製造セグメントにおいて、セグメントを横断する連携を深めながら取組を強化いたします。
(自動車関連)
・自動車の電装化、パワートレイン系の多様化に伴い、素材、部品等の構成が変化をとげております。これら変化をキャッチアップし、それぞれのセグメントにおいて関連の商品への取組を強化いたします。
・自動車の素材については、燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)、ハイブリッドカー向けの商材等の更なる開発やCASEの浸透に向けた各種商材の取扱いを拡大していきます。
③環境対応関連分野
環境対応に関連した分野において投融資を絡めて事業の強化を図ります。アルミ・銅スクラップの国内ヤードオペレーションに加え、ベースメタルからレアメタル・レアアースまでを含むリサイクル事業のグローバル展開を推進いたします。
④海外事業展開
当社の海外子会社を基点として、現地進出の日系企業及び現地企業との地場取引の拡大を図る他、三国間取引を拡大し、グローバル展開による連結経営での収益拡大を目指します。
(投資案件の推進)
①M&A
業容拡大の柱として、国内外におけるM&Aを積極的に推進しております。M&Aは短期間での連結利益獲得と当社グループとのシナジーによる新たな商流の創出を実現する当社グループの最重要施策であります。当社は現在、「商社機能と製造業を融合する総合企業」を目指すべく、製造業を中心としたM&Aを推進しており、ニッチでありながら優れた技術力を持つ製造業を連結子会社化するとともに当社グループ内にて再編を行い、当社の営業力とグローバルネットワークをフルに活用した新たな商流の開拓を進めてまいります。当連結会計年度においては、2022年4月27日に電子部品用精密コネクタ金属端子部品等を製造するジュピター工業株式会社、及び同年11月30日に車載向けリチウムイオン電池用プレス部品を製造する株式会社ソーデナガノの各社における発行済株式の全てを取得し連結子会社化いたしました。当社グループの金属加工セグメントと親和性の高いこれら2社を当社グループとしたことで、更なるグループ間シナジーが期待されます。当社は引続き製造業を中心としたM&Aにより事業分野の拡充を進めることに加え、既存事業における生産性向上のための設備拡張投資を推進し、安定的な収益力の強化を目指してまいります。
②事業投資
新たな商流の創出、資源確保を目的として国内外事業への投融資を行っており、今後も金属・化学品分野を中心とする事業投資並びに合弁事業設立を推進いたします。また、新たな商流、分野、素材を手掛ける有望なスタートアップ企業や事業の開拓、及びモノづくり支援による成長機会の獲得のために設立したコーポレートベンチャーキャピタル「アルコニックスグローバルイノベーションファンド投資事業有限責任組合」を積極的に活用し「先端・高成長分野での事業取組機会の確保」「素材、モノづくり分野での当社プレゼンスの拡大」「事業投資から生じる財務収益の取込み」を運営目的とし、当社グループにおける新たな価値の創造とシナジーの向上を目指してまいります。
なお、2023年3月期の連結業績をふまえ、新たに数値目標を刷新した2026年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、引き続き積極的にM&Aや事業投資を実施し業容拡大を図りつつ、経営環境の変化にすばやく対応でき、安定収益と持続的成長を可能とする事業基盤を確立してまいります。具体的な数値目標及びその施策につきましては「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、(3)当面の対処すべき課題の内容等」をご参照ください。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの主な運転資金需要は在庫の購入費用、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また投資を目的とした資金需要は、M&A並びに事業投資に係る株式取得関連費用、及び連結子会社化後の製造子会社による設備投資費用等であります。当社グループはこれらの資金需要に応じて金融機関からの短期及び長期の借入、コマーシャル・ペーパーの発行による資金調達手段の多様化の他、グループ全体での資金効率向上のため導入したCMSの活用等、流動性の確保と資金コストの低減を図っております。
なお、当社グループでは財務体質の強化を図るべく、資金調達手段の多様化、及び運転資金の適正化によるフリーキャッシュ・フローの黒字化定着を基本方針としております。具体的な資金の流動性については「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めておりますが、当社グループを取り巻く事業環境を鑑みますと、メーカー間での事業統合を含めた合従連衡、国内生産拠点の海外移転に伴う製造業の空洞化並びに輸出の低迷、地政学的リスクの高まり、非鉄金属の中で代替商品の開発等が予想を超えるスピードで進むこと等の要因により当社グループが収益機会を逸することが懸念されます。これらの問題に対応するため、当社グループは高い専門性を持つ人材の育成に努めるとともに常にアンテナを高くして顧客ニーズを先取りし「新たな素材へ」「新たな市場へ」「新たなサービスへ」「新たな分野へ」をモットーに挑戦し続けることで、当社グループのプレゼンスを向上できるものと確信しております。