売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E05739 Japan GAAP

売上高

5,490.0億 円

前期

5,084.0億 円

前期比

108.0%

時価総額

7,429.5億 円

株価

3,145 (07/12)

発行済株式数

236,233,411

EPS(実績)

206.88 円

PER(実績)

15.20 倍

平均給与

803.2万 円

前期

751.7万 円

前期比

106.9%

平均年齢(勤続年数)

40.0歳(14.0年)

従業員数

5,834人(連結:21,972人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当社グループは、主として当社、連結子会社51社及び持分法適用会社58社で構成されています。主な業務は、情報化投資に関わるアウトソーシング業務・クラウドサービス、ソフトウェア開発、ソリューションの提供であり、これらの業務に関連するコンサルティング業などの業務も行っております。また、管理事業など付帯関連する業務についてもサービスを提供しております。

 

当社グループの事業内容と連結子会社並びに持分法適用会社の当該事業に係る位置づけを報告セグメントの区分で示すと次のとおりであります。当社は、オファリングサービス、金融IT、産業ITの各セグメントにおいて、グループの中心となって事業を展開しています。

なお、オファリングサービス、BPM、金融IT、産業IT、広域ITソリューションは、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げる報告セグメントの区分と同一であります。

 

(1) オファリングサービス

当社グループに蓄積したベストプラクティスに基づくサービスを自社投資により構築し、知識集約型ITサービスを提供しております。

〔主な連結子会社〕

TISシステムサービス株式会社、日本ICS株式会社、MFEC Public Company Limited

 

(2) BPM

ビジネスプロセスに関する課題をIT技術、業務ノウハウ、人材などで高度化・効率化・アウトソーシングを実現・提供しております。

〔主な連結子会社〕

株式会社アグレックス

 

(3) 金融IT

金融業界に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しております。

 

(4) 産業IT

金融以外の産業各分野に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しております。

〔主な連結子会社〕

クオリカ株式会社、AJS株式会社

 

(5) 広域ITソリューション

ITのプロフェッショナルサービスを地域や顧客サイトを含み、広範に提供し、そのノウハウをソリューションとして蓄積・展開して、課題解決や事業推進を支援しております。

〔主な連結子会社〕

株式会社インテック、TISソリューションリンク株式会社

 

(6) その他

各種ITサービスを提供する上での付随的な事業等で構成されています。

〔主な連結子会社〕

TISビジネスサービス株式会社、ソランピュア株式会社

 

以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

 

※画像省略しています。

 

24/06/26

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりとなります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、足踏みがみられながらも緩やかに回復しました。先行きについては、引き続き緩やかな回復が期待されるものの、世界的な金融引き締め等、海外景気の下振れによる我が国の景気の下押しリスク、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。

当社グループの属する情報サービス産業においては、期中に公表された日銀短観におけるソフトウェア投資計画(金融機関を含む全産業)がいずれも前期比増を示す等、DX技術を活用した業務プロセスやビジネスモデルの変革がグローバルで進展する中で、IT投資需要の更なる増加が期待されています。

当連結会計年度は、「グループビジョン2026」の達成に向け、セカンドステップとして策定した中期経営計画(2021-2023)の最終年度となり、「Be a Digital Mover 2023」をスローガンに、戦略ドメインへの事業の集中を推進するとともに、DX提供価値の向上を基軸とした事業構造転換の加速に向けて諸施策を推進いたしました。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

増減額

流動資産

268,682

291,556

+22,873

固定資産

193,637

233,899

+40,261

資産合計

462,320

525,456

+63,135

流動負債

117,179

140,277

+23,098

固定負債

35,914

60,453

+24,538

負債合計

153,094

200,730

+47,636

純資産合計

309,226

324,725

+15,498

 

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ63,135百万円増加の525,456百万円(前連結会計年度末462,320百万円)となりました。これは主に受取手形、売掛金及び契約資産が12,653百万円増加、のれん及びその他無形固定資産が日本ICS株式会社および株式会社レスコの株式取得(連結子会社化)等に伴い30,202百万円増加、建物及び構築物・土地がシステム運用業務における長期安定的な事業継続性の確保を目的とした不動産信託受益権の分割取得等により6,842百万円増加、投資有価証券が保有株式の時価変動等により3,597百万円増加したこと等によるものであります。

 

(負債合計)

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ47,636百万円増加の200,730百万円(前連結会計年度末153,094百万円)となりました。これは主に未払法人税等が納付により4,330百万円減少した一方、借入金がM&Aや不動産信託受益権の分割取得等に伴い21,863百万円増加、繰延税金負債が日本ICS株式会社および株式会社レスコの株式取得(連結子会社化)等に伴い8,162百万円増加したこと等によるものであります。

なお、有利子負債合計としては、前連結会計年度末に比べ21,928百万円増加の37,972百万円(前連結会計年度末16,043百万円)となり、有利子負債比率も7.2%(前連結会計年度末比3.7ポイント増)となりました。

(注)有利子負債にはリース債務を含めておりません。

 

(純資産合計)

純資産は、前連結会計年度末に比べ15,498百万円増加の324,725百万円(前連結会計年度末309,226百万円)となりました。これは主に利益剰余金が36,269百万円増加、その他有価証券評価差額金が保有株式の時価変動等により3,815百万円増加、自己株式を取得後、消却を行ったことにより資本剰余金が28,155百万円減少したこと等によるものであります。

なお、利益剰余金の増加は、親会社株主に帰属する当期純利益により48,873百万円増加、剰余金の配当により12,604百万円減少した結果です。

 

セグメント別の財政状態は以下のとおりです。

 

イ.オファリングサービス

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて13,174百万円増加し、159,816百万円となりました。

ロ.BPM

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて205百万円増加し、12,972百万円となりました。

ハ.金融IT

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて2,766百万円増加し、88,392百万円となりました。

ニ.産業IT

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて3,378百万円増加し、75,557百万円となりました。

ホ.広域ITソリューション

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて12,119百万円増加し、123,022百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の業績は、売上高549,004百万円(前期比8.0%増)、営業利益64,568百万円(同3.6%増)、経常利益68,553百万円(同8.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益48,873百万円(同11.9%減)となりました。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前期比

売上高

508,400

549,004

+8.0%

売上原価

366,668

397,365

+8.4%

売上総利益

141,732

151,639

+7.0%

売上総利益率

27.9%

27.6%

△0.3P

販売費及び一般管理費

79,403

87,070

+9.7%

営業利益

62,328

64,568

+3.6%

営業利益率

12.3%

11.8%

△0.5P

経常利益

63,204

68,553

+8.5%

親会社株主に帰属する

当期純利益

55,461

48,873

△11.9%

 

売上高については、顧客のデジタル変革需要をはじめとするIT投資ニーズへの的確な対応による事業拡大等により、前期を上回りました。営業利益については、人材投資をはじめとする将来成長に資する投資を積極的に実行しながらも、増収に伴う増益分に加え、高付加価値ビジネスの提供、生産性向上施策の推進等により前期比増益となりましたが、収益性については、不採算案件の影響が大きく、売上総利益率は27.6%(前期比0.3ポイント減)、営業利益率は11.8%(同0.5ポイント減)となりました。経常利益については、営業利益の増加に加え、営業外損益の改善を背景として前期比増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、主に前期において政策保有株式を縮減したことによる特別利益の反動減により、前期比減益となりました。

なお、2023年4月に連結子会社化した日本ICS株式会社の業績等は第2四半期連結会計期間から反映されており、当連結会計年度の業績に計上した同社業績は売上高58億円及び営業利益18億円、同社に関するのれん等償却額は12億円となりました。

 

<営業利益要因別増減分析(前期比)>

※画像省略しています。

セグメント別の状況は以下の通りです。なお、各セグメントの売上高にはセグメント間の売上高を含んでいます。

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前期比

オファリング

サービス

売上高

111,752

130,759

+17.0%

営業利益

6,426

7,659

+19.2%

営業利益率

5.8%

5.9%

+0.1P

BPM

売上高

43,255

41,953

△3.0%

営業利益

5,123

4,551

△11.2%

営業利益率

11.8%

10.8%

△1.0P

金融IT

売上高

101,184

106,304

+5.1%

営業利益

13,896

15,185

+9.3%

営業利益率

13.7%

14.3%

+0.6P

産業IT

売上高

113,632

121,896

+7.3%

営業利益

16,728

18,287

+9.3%

営業利益率

14.7%

15.0%

+0.3P

広域IT

ソリューション

売上高

160,010

172,376

+7.7%

営業利益

19,343

18,497

△4.4%

営業利益率

12.1%

10.7%

△1.4P

その他

売上高

8,957

9,581

+7.0%

営業利益

878

777

△11.5%

営業利益率

9.8%

8.1%

△1.7P

 

イ.オファリングサービス

当社グループに蓄積したベストプラクティスに基づくサービスを自社投資により構築し、知識集約型ITサービスを提供しています。

当連結会計年度の売上高は130,759百万円(前期比17.0%増)、営業利益は7,659百万円(同19.2%増)となりました。決済、基盤系、経営管理分野をはじめとするIT投資が拡大したことや、海外事業が売上高伸長に寄与したことに加え、2023年4月に連結子会社化した日本ICS株式会社の業績等が第2四半期連結会計期間から反映されたこと等により、前期比増収増益となり、営業利益率は5.9%(同0.1ポイント増)となりました。

 

ロ.BPM

ビジネスプロセスに関する課題をIT技術、業務ノウハウ、人材等で高度化・効率化・アウトソーシングを実現・提供しています。

当連結会計年度の売上高は41,953百万円(前期比3.0%減)、営業利益は4,551百万円(同11.2%減)となりました。既存のデータエントリー業務が苦戦した影響が大きく、前期比減収減益となり、営業利益率は10.8%(同1.0ポイント減)となりました。

 

ハ.金融IT

金融業界に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しています。

当連結会計年度の売上高は106,304百万円(前期比5.1%増)、営業利益は15,185百万円(同9.3%増)となりました。クレジットカード系の根幹先顧客および公共系金融機関の大型開発案件が主に上期において牽引したことにより、前期比増収増益となり、営業利益率は14.3%(同0.6ポイント増)となりました。

 

ニ.産業IT

金融以外の産業各分野に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しています。

当連結会計年度の売上高は121,896百万円(前期比7.3%増)、営業利益は18,287百万円(同9.3%増)となりました。製造業大型開発案件の反動減があったものの、製造業や流通業をはじめとした幅広い業種におけるIT投資拡大の動きやERP関連が全体を牽引し、前期比増収増益となり、営業利益率は15.0%(同0.3ポイント増)となりました。

 

ホ.広域ITソリューション

ITのプロフェッショナルサービスを地域や顧客サイトを含み、広範に提供し、そのノウハウをソリューションとして蓄積・展開して、課題解決や事業推進を支援しています。

当連結会計年度の売上高は172,376百万円(前期比7.7%増)、営業利益は18,497百万円(同4.4%減)となりました。売上高については、医療系や銀行、ネットワーク事業をはじめとするIT投資拡大の動きにより、前期比増収となりました。一方、営業利益については、不採算案件の影響が大きく、前期比減益となり、営業利益率は10.7%(同1.4ポイント減)となりました。

 

ヘ.その他

各種ITサービスを提供する上での付随的な事業等で構成されています。

当連結会計年度の売上高は9,581百万円(前期比7.0%増)、営業利益は777百万円(同11.5%減)となり、営業利益率は8.1%(同1.7ポイント減)となりました。

 

前述の通り、当連結会計年度は中期経営計画(2021-2023)の最終年度として、同計画の5つの基本方針である「社会・社員との共創価値の善循環」「DX提供価値の向上」「次なる強みへの投資拡大」「グローバル経営の深化と拡張」「人材の先鋭化・多様化」のもと、「Be a Digital Mover 2023」をスローガンに、戦略ドメインへの事業の集中を推進するとともに、更なるDX提供価値の向上を基軸とした事業構造転換の加速に向けて取り組みました。同計画で定めた重要な経営指標のうち主要なものについては、前連結会計年度に1年前倒して達成したことを受け、さらなる持続的な成長と企業価値向上を目指し、当連結会計年度におけるグループ経営方針を以下のとおりとし、各種施策を推進してまいりました。

注)戦略ドメイン:「グループビジョン2026」で目指す、2026年に当社グループの中心となっているべき4つの事業領域

 

※画像省略しています。

 

中期経営計画の5つの基本方針における当連結会計年度の主な取り組み状況等は以下の通りです。

 

イ.社会・社員との共創価値の善循環

ステークホルダーとの共創を通じた社会課題解決を促進し、企業の社会的責任に対する認識をより一層深め、コーポレートサステナビリティに関する取り組みを強化するとともに、本社機能の高度化・効率化による経営基盤の整備を継続的に推進することとしています。

サステナビリティ先進企業としてのプレゼンスの確立を目指していく中、2023年4月より、コーポレートサステナビリティ委員会の位置づけや構成を変更しました。社外取締役を含む全取締役を中心とした構成とし、サステナビリティ経営を実践する上での潮流を捉え、課題の議論を通じて注力すべき課題の選定と対応の方向性を示すとともに、取締役会を通じてその執行を監督することで、サステナビリティ活動の継続的な高度化を目指します。

また、情報開示の充実による経営の透明性向上を図る一環として、当社グループのサステナビリティ経営の全体像やESGに対する取り組み、関連する非財務情報を網羅的にまとめたESGデータブックを発行しました。

コーポレート・サステナビリティ基本方針に基づき、喫緊の重要な社会課題として優先度の高いテーマである、人権や環境に関する取り組みも継続して進めています。人権問題に関しては、ビジネスと人権に関する指導原則を満たす人権リスク管理体制を明確化しました。環境問題に関しては、気候変動の原因とされる温室効果ガス(以下、GHG)の排出量削減に取り組む重要性を認識し、2030年度の事業所におけるGHG排出量(Scope1+2)(注1)削減目標を2019年度比で27.5%削減から50%削減まで引き上げるとともに、2040年度におけるGHG排出量(Scope1+2)のカーボンニュートラル、2050年度におけるGHG排出量(Scope1+2+3)をネットゼロ(注2)とする目標を設定しました。また、2021年に取得したSBT(Science Based Targets)(注3)の「2℃水準」を更新し、「1.5℃水準」との認定を受けました。

さらに、当社は多様なステークホルダーとの適切な協働・共創のため、2023年4月に「マルチステークホルダー方針」を策定しました。価値協創や生産性向上によって生み出された収益・成果について、マルチステークホルダーへの適切な分配を行うことが賃金引上げのモメンタムの維持や経済の持続的発展につながるという観点から、従業員への分配や取引先への配慮が重要であることを踏まえ、今後も取り組みを進めてまいります。

その他、当社グループの地域社会への貢献のあり方の一つとして、事業ではカバーできない3つの領域(将来のユーザーを支援する活動、社会にデジタル技術の恩恵を広める活動及び社会のデジタル技術による負の影響を軽減する活動)を対象に、企業版ふるさと納税の活用やNPOと協働するプロジェクト等も継続しています。

本社機能の高度化・効率化による経営基盤の整備の観点においては、従前から取り組んでいる「本社系機能高度化プロジェクト“G20”」の適用範囲を拡大するとともに、間接業務のシェアード化と更なる高度化に取り組む一環として、TISビジネスサービス株式会社を中心とした体制を通じて、グループ全体のバックオフィス業務のシェアードサービス化及びDX化を推進しました。

注1)GHGの算定や集計方法についての国際的な基準として機能している集計方法。2001年頃「GHGプロトコル」によって定められ、Scope1は自社からの直接排出、Scope2は購入した電力由来等の間接排出、Scope3はそれ以外の間接排出でバリューチェーンも対象

注2)人為的なGHG排出量と除去量のバランスが取れており、大気中へのGHG排出量が正味ゼロの状態

注3)最新の気候変動科学に基づいた国連気候変動枠組条約のパリ協定の目標を達成するために必要な削減量に整合した目標

 

ロ.DX提供価値の向上

社会を変革する構想力を高めるべく、ステークホルダーとの共創促進、DXコンサルティング機能の強化、ITデリバリーの高度化を推進することとしています。

ステークホルダーとの接点であるフロントラインの更なる強化にあたり、顧客に対する価値を高めるべく、戦略立案や事業課題に対するDXコンサルティング機能をより一層強化する施策を進めています。社外からの積極採用、DX戦略人材会議に基づくグループ全体における内部育成ローテーション施策にとどまらず、職種やスキルに応じた当社独自の育成プログラムをグループ全体に適用し、優秀なDXコンサルタントの増員とともに、コンサルティングメソドロジーの拡充を推進しています。また、データ分析・AIのコンサルティングに強みを有する連結子会社である澪標アナリティクス株式会社及び優秀なデザインコンサルティング力を有する子会社であるFixel株式会社とは、事業面に加えて人材面の連携強化も進めており、今後も戦略的な経営資源配置を加速させることで顧客のDX推進に対する価値提供体制の拡充に注力してまいります。

また、当社では、社員の働き方改革として、多様な働き方を可能にする人事制度の導入、オフィスやIT環境等の整備を推進してきましたが、DXによる働き方改革として、社内の各システムに保存されているデータを一箇所に集約し、さらに働き方を高度化させ全体のパフォーマンスを高めるためのデータ基盤を構築しました。これらのデータから導き出された分析結果を基に、社員の働き方を更に高度化する施策を展開してまいります。

当社グループでは、DXを3つの領域で捉え、よりよい社会を実現していく「社会DX」、顧客の事業を革新していく「事業DX」、そして当社グループ自身を進化させていく「内部DX」を相互に強く影響しあう一つの連なりとして、統合的な視点で取り組み、新たな価値の好循環を生んでいくことを目指しています。内部DXの一環として、当社では、Microsoft「Azure OpenAI Service」の環境を利用した、社内専用のChatGPT環境である「TIS AIChatLab」をリリースしました。急速な技術発展の中、ChatGPTを始めとする生成AIの分野は特にその進化が顕著であり、セキュアに利用できる環境を整備し、全社員が生成AIを実際に使うことで、業務効率化を進めるとともに、ビジネスへの効果的な活用に繋げることを目指します。

2024年3月には、当社及び株式会社インテックは、日本生命保険相互会社及びニッセイ情報テクノロジー株式会社との間で資本業務提携契約を締結しました。当社グループと日本生命グループは、これまでもIT分野における人材交流やシステム開発等に取り組んでまいりましたが、今回の提携を機に、日本生命グループにおけるIT戦略やDXへの取り組みをさらに強化し、さまざまな市場環境の変化やお客様ニーズの多様化に対応してまいります。

 

ハ.次なる強みへの投資拡大

事業構造転換を実現する実行力を高めるべく、社会課題解決型サービス事業をはじめとする注力領域への経営資源の重点分配とマネジメントの高度化施策を継続的に推進することとしています。

当社グループの強みである決済領域においては、リテール決済ソリューションのトータルブランド「PAYCIERGE」のもと、決済領域全般における事業展開を進めています。なお、前年度下期にサービスインしたクレジットカードプロセッシングサービスは安定的に稼働しており、さらなる取引の拡大に向けて営業活動を推進しています。また、連結子会社である株式会社ULTRAの有する決済のフロントエンド機能と、当社グループが従来から有する決済のバックエンド機能構築の強みと合わせ、決済機能の一気通貫での組み込みを可能とする等、「Embedded Finance」の事業展開の準備も進めています。加えて、当社は三井住友カード株式会社と、事業者の自社アプリへの決済機能搭載を実現する新たな決済プラットフォーム「三井住友カード モバイル決済パッケージ」の提供を開始しました。当サービスは、アプリに決済機能を搭載するうえで必要な機能が予め用意されており、事業者は戦略に応じて必要な機能を選択することで、従来よりも低価格かつ短期間で、自社アプリへの決済機能搭載が実現できるパッケージサービスです。今後も事業者のニーズや戦略の変化に対応できるように進化させることで、事業者のニーズや戦略の変化に応じたキャッシュレスに関する取り組みを総合的に支援してまいります。こうした中、昨今のライトな決済ニーズの広がり等、市場環境や顧客ニーズの趨勢に合わせて「クレジット」「デジタル口座」「次世代決済」「新たな価値創造」の4つの領域を軸とした新たな決済戦略を策定しました。新戦略の下では、従前のプロダクトやサービス単位から、それらの組み合わせによる複合的なサービス提供をはじめとした決済の進化や拡張により、金融領域への参入障壁を下げるとともに、決済に社会変容のテーマを掛け合わせて社会課題を解決していくことで、引き続きキャッシュレス社会の進展に貢献してまいります。

また、中期経営計画(2021-2023)において構造転換に向けた諸施策を推進する中、戦略ドメインの一つであるITオファリングサービス(注1)の成長を加速させることを目的として、税理士事務所とその顧問先企業をメインターゲットに、財務会計パッケージ及び関連サービスの提供を事業として展開する日本ICS株式会社を2023年4月に連結子会社化しました。当社の金融機関向けビジネスと同社の税理士等の士業向けビジネスを組み合わせて、士業の高度化、金融機関の高度化及び両社の取り組みの新たな企業への展開を推進し、顧客基盤の拡大や新たなビジネススキームの実現を目指す中、同社では、中長期にわたって税理士が抱える様々な課題を解決すべく、「税理士 360構想」を策定しました。今後、生成AI等のデジタル技術の活用や当社グループ内外の企業との連携・協業強化により、従来から提供している税務・会計ソフト提供を主軸に置きつつ、税理士を取り巻く周囲360度すべての支援メニューを展開することで、税理士および顧問先企業の発展に貢献してまいります。また、当社との連携を通じて、同社ではこれまでに経営運営体制の構築やガバナンスの強化・統合、当社独自の品質マネジメントシステム「Trinity」の導入等を推進しました。引き続き、士業高度化・顧問先のDX化に向けた当社サービスと関係性の深い経費精算や金融機関による財務諸表取込との連携、当社が取り組んできたR&Dや協業ノウハウ、最先端テクノロジーの共有により、当社顧客と同社の協業検討の推進及び開発体制の強化と、品質改善に向けた管理プロセスの強化を推進してまいります。2023年7月には、トークンエコシステムを一気通貫で実現することができるweb3プラットフォーマーの株式会社フィナンシェと資本業務提携契約を締結しました。Web2からWeb3への大規模な適応の中で顕在化してきた各種の課題解決と多様なニーズに応えるべく、両社が有する知識や経験、幅広い人脈を活用して、Web3の普及と発展を牽引する施策の展開を目指してまいります。

さらに、当社グループが事業を通じて解決を目指す社会課題の一つである「健康問題」に対する取り組みの一環として、当社は「多様なステークホルダー間の協調を促進し、PHR(Personal Health Record、注2)サービス産業の発展を通じて、国民の健康寿命の延伸や豊かで幸福な生活(Well-being)に貢献すること」を目的に2023年7月に設立されたPHRサービス事業協会に参画し、執行役(副会長)、ならびに技術・教育委員会の委員長に就任しました。当社は医療機関を中心に管理されている医療健康データを、健康増進に活用できるようにPHRとして整備するヘルスケアプラットフォームを提供しており、そのノウハウとデジタル技術を活かし、データ利活用のためのガイドライン整備に貢献するとともに、PHRサービスを提供するIT事業者として標準化を促進する役割を担うことで、PHRサービス産業の発展に貢献してまいります。また、PHRを活用して個人に最適な予防・治療を実現するネットワークを拡大させていくための施策の一環として、全ゲノム検査事業を展開するスタートアップ企業であるジーネックス株式会社に出資しました。

ヘルスケアプラットフォームのさらなる拡大に向けては、精神科病院等向けに電子カルテを提供する株式会社レスコを2023年12月に連結子会社化しました。同社が精神科向け電子カルテシステム市場で培った知見や情報資産と、当社のネットワークを活かした医療業界を中心とする各業界との連携や、当社が有するシステム人材とセキュリティ技術を相互に活用することで、医療DXや保険・製薬DXの推進、メンタルヘルスケア領域での新たな事業の創出を目指します。

注1)当社グループに蓄積したノウハウと、保有している先進技術を組み合わせることで、顧客より先回りしたITソリューションサービスを創出し、スピーディに提供する事業領域

注2)生涯にわたる個人の保健医療情報(健診(検診)情報、予防接種歴、薬剤情報、検査結果等診療関連情報及び個人が自ら日々測定するバイタル等)

 

ニ.グローバル経営の深化と拡張

事業戦略に基づく出資先との関係強化や共同事業の展開による更なる市場の深耕を図ることで、グローバルへの展開力を高め、グローバルパートナーシップ網を拡充することとしています。

当社グループはASEANトップクラスのIT企業連合体の組成を目指し、ローカル市場拡大のための「チャネル」、新規事業・サービス創出や次世代の技術開拓のための「テクノロジー」に加え、バリューチェーン拡大を実現するための「コンサルティング」という3つを軸として、各領域の優良企業との資本・業務提携を通じてパートナーシップの拡充を進めています。

「チャネル」においては、タイのMFEC Public Company Limitedが、CVCとして設立したSynergy Group Ventures Co., Ltd.を通じて当社グループの事業拡大を企図した投資活動を加速させており、タイ現地の有望なスタートアップ企業への出資や出資先企業との協業を推進しています。

「テクノロジー」においては、有力な技術およびサービスの更なる拡充を目的として、アメリカの量子コンピュータのスタートアップ企業であるAtom Computing Inc.およびQuEra Computing Inc.へのマイナー出資を行いました。将来的な競争激化が想定される量子コンピュータ技術において、最新テクノロジーの情報収集を加速させ、長期的な協業も検討してまいります。加えて、エンタープライズ向けソフトウェア企業への投資を専門とするアメリカのVista Equity Partners Management, LLCへの出資・協業により、同社グループ製品群を活用した高付加価値なITサービスの提供と、同社投資先企業の成功事例ノウハウの獲得を目指します。

 

「コンサルティング」においては、インド地場企業において大手の経営コンサルティング企業であるVector Management Consulting Pvt. Ltd.を持分法適用会社とした後、グローバル新規顧客の開拓を進めるとともに、同社のコンサルティング領域におけるノウハウを活用することで、当社グループのインド、日本、ASEAN地域及び中国の顧客企業に対するITサービスの高付加価値化の実現を目指し、協業を推進しています。

今後も戦略的投資によるアライアンスを最大限活用するとともに、それぞれの持つ強みを融合させた事業展開とASEANを面でカバーできる連携力の構築・強化による事業領域拡大を推進し、FY2026におけるグローバル事業の連結売上高1,000億円の目標達成を目指してまいります。

 

ホ.人材の先鋭化・多様化

多様な社員がプロフェッショナルとして活躍すべく、報酬の見直しや教育投資をはじめとする人材投資を継続し、人材の付加価値向上を目指すこととしています。

多様な個が活躍できる環境・組織風土の整備、新たな労働環境を見据えた次世代の働き方改革の推進、人材データベースのデジタル化による人材ポートフォリオマネジメントの高度化、HRビジネスパートナーの本格稼働を通じて、社員のエンゲージメント向上や自律的なキャリア開発の支援等の取り組みを進めています。また、構造転換をさらに加速するため、コンサルティング、グローバル、サービスビジネス等、先鋭人材の戦略的な確保と育成とともに人材の最適配置に努めています。

当社グループでは、グループビジョン2026の実現に向けた「構造転換」を果たすため、それを担う最重要の経営資本である人材の成長による付加価値向上に注力しています。以前より「働く意義」「働く環境」「報酬」の3つの軸で社員エンゲージメントを高める人材投資を進めてまいりましたが、「働く意義」と「報酬」の改革をさらに推し進めるため、当社においては、2023年4月より、報酬・評価・等級制度等を全面的に刷新した新人事制度を導入しました。報酬制度では特に事業を牽引する高度人材と若手層へ重点的に投資し、最大17%、平均では6%アップとなる基本給の引き上げをはじめとして、グループ全体で処遇改善に向けた取り組みを推進しており、これにより、当連結会計年度は前期比約52億円の人件費増となりましたが、当社グループの持続的成長に不可欠な人的資本に対する先行投資と位置付けています。こうした施策を引き続き実施し社員エンゲージメントを高めることにより、従業員が能動的に考え動き、期待を上回る高いパフォーマンスを発揮することで、人材の成長による企業競争力の向上を通じた企業成長の加速と、付加価値向上を目指します。

また、当社グループでは、グループダイバーシティ&インクルージョン方針のもと、グループで働く一人ひとりの人生の質の向上を目指し、「心身の健康」「働きがいの向上」「生活力の向上」を実現する施策を推進しています。こうした中、当社と株式会社インテックは健康経営をさらに高度化し、社員の生産性向上及びエンゲージメント向上、社会との価値交換性の向上を目指すため、2023年7月に「社員の健康をつうじた日本企業の活性化と健保の持続可能性の実現」というビジョンに共感する148の企業・団体(2023年6月30日時点)が活動する健康経営アライアンスに参画しました。健康経営に関する取り組みの進展に伴い、経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人」に認定されるグループ会社数は増加し、「健康経営優良法人2024」においては計6社となり、当社と株式会社インテックについては「健康経営優良法人2024~ホワイト500~」にも認定されました。加えて、「働きがいの向上」に向けて、意識調査結果の分析と社員の声から様々な施策を継続的に推進した結果、当社は、2023年12月実施の「働きがいのある会社」調査において、Great Place to Work® Institute Japanの「働きがい認定企業」に選出されました。

今後も、グループ全体で人材の価値を高めるために積極的な投資を行い、会社と社員と社会の高付加価値化の善循環を生みだすことで、当社グループのさらなる成長と企業価値を向上し、より豊かな社会の実現を目指してまいります。

 

その他、経営環境の変化に柔軟に対応した機動的な資本政策を遂行し、株主利益及び資本効率の向上を図る一環として、株主還元の基本方針である「総還元性向45%」に基づいて総額6,199百万円(総数1,678,900株)の自己株式を2023年5月から7月までの間に取得しました。また、2024年2月には、複数の当社事業法人株主の売却意向を踏まえ、当該売却による短期的な当社株式需給及び既存の株主様への影響を軽減する観点から、22,422百万円(6,766,000株)の自己株式を自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)により取得しました。また、自己株式については原則として発行済株式総数の5%を上限として保有し、5%を超過する保有分については消却する方針及び将来の株式の希薄化懸念を払拭すること等を勘案し、上述の取得分を含めて保有する自己株式のほぼ全てにあたる8,212,000株(消却前の発行済株式総数に対する割合3.4%)を2024年3月に消却しました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて8,415百万円増加し、当連結会計年度末には102,722百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は62,578百万円(前期比28,944百万円増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益69,193百万円(同12,299百万円減)に、資金の増加として、減価償却費17,340百万円(同1,640百万円増)、その他流動負債の増加額12,956百万円(同9,377百万円増)などがあった一方、資金の減少として、法人税等の支払額23,636百万円(同6,076百万円減)、売上債権及び契約資産の増加額10,568百万円(同8,223百万円減)などがあったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は32,817百万円(前期比44,118百万円増)となりました。これは主に、資金の増加として、投資有価証券の売却及び償還による収入6,995百万円(同16,690百万円減)などがあった一方で、資金の減少として、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出20,724百万円(前期計上なし)、有形固定資産の取得による支出13,081百万円(同8,743百万円増)、無形固定資産の取得による支出5,850百万円(同194百万円減)などがあったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は21,889百万円(前期比42,684百万円減)となりました。これは主に、資金の増加として、長期借入れによる収入23,159百万円(同19,659百万円増)などがあった一方で、資金の減少として、自己株式の取得による支出34,585百万円(同4,580百万円増)、配当金の支払額12,604百万円(同1,153百万円増)などがあったことによるものです。

 

なお、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計であるフリーキャッシュ・フローは29,761百万円の黒字(前期比15,173百万円減)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

オファリングサービス(百万円)

115,594

116.7

BPM(百万円)

39,809

97.6

金融IT(百万円)

103,524

105.5

産業IT(百万円)

123,064

79.0

広域ITソリューション(百万円)

167,335

146.1

報告セグメント計(百万円)

549,328

108.1

その他(百万円)

合計(百万円)

549,328

108.1

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

オファリングサービス

123,518

122.8

42,248

127.3

BPM

39,976

100.2

7,543

101.3

金融IT

101,977

93.7

45,954

94.2

産業IT

120,253

106.3

37,009

97.2

広域ITソリューション

167,214

103.6

55,289

104.6

合計

552,940

105.5

188,044

104.3

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

オファリングサービス(百万円)

116,115

117.1

BPM(百万円)

39,882

97.4

金融IT(百万円)

104,822

105.4

産業IT(百万円)

121,309

107.4

広域ITソリューション(百万円)

164,786

107.3

報告セグメント計(百万円)

546,916

108.1

その他(百万円)

2,088

86.0

合計(百万円)

549,004

108.0

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の財政状態の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載したとおりであります。

当社グループは、経営環境の変化に柔軟に対応した機動的な資本政策を遂行し、株主利益及び資本効率の向上を図る一環として、株主還元の基本方針である「総還元性向45%」に基づいて総額6,199百万円(総数1,678,900株)の自己株式を2023年5月から7月までの間に取得しました。

また、2024年2月には、複数の当社事業法人株主の売却意向を踏まえ、当該売却による短期的な当社株式需給及び既存の株主様への影響を軽減する観点から、22,422百万円(6,766,000株)の自己株式を自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)により取得しました。

自己株式については原則として発行済株式総数の5%を上限として保有し、5%を超過する保有分については消却する方針及び将来の株式の希薄化懸念を払拭すること等を勘案し、上述の取得分を含めて保有する自己株式のほぼ全てにあたる8,212,000株(消却前の発行済株式総数に対する割合3.4%)を2024年3月に消却しました。

自己資本比率は59.5%となり、積極的な成長投資を可能とする財務健全性を堅持しています。

なお、当連結会計年度末の現金及び預金は保有方針である月商の2ヶ月程度を上回る状況にありますが、今後の資金需要等を考慮すれば適正な水準であると考えています。キャッシュアロケーションに関しては、構造転換の着実な進展による利益成長及び政策保有株式の縮減を加速させたことでキャッシュ創出力が当初想定よりも強まっており、これを受けて、投資・株主還元の強化に加えて資本構成適正化や財務健全性に向けた財務施策を積極的に実行することができています。今後もこうした善循環を推進することで経営の質の転換を進めてまいりたいと考えています。

 

b.経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に記載したとおりであります。

中期経営計画(2021-2023)の基本方針に沿って、引き続き将来成長に資する投資を実行する中においても収益性を向上させる取り組みを推進することができたと考えています。具体的には、構造転換推進のための先行投資コストの前期比増加7.8億円に加え、最重要の経営資本である人材に対する処遇改善の積極化に伴う人材投資コストの前期比増加52.1億円等がある中においても高付加価値ビジネスの提供や生産性向上施策等を推進しました。また、日本ICS株式会社の連結子会社化をはじめとした事業ポートフォリオの見直しによる収益基盤の強化にも取り組みました。当連結会計年度においては残念ながら不採算案件の影響を大きく受けたことで売上総利益率は前期比0.3ポイント減の27.6%、営業利益率は同0.5ポイント減の11.8%となりましたが、この一過性要因の影響を除いた場合には前期を上回る水準を実現できていると認識しており、また、こうした影響を受けた中でも営業利益は同 3.6%増の645.6億円と前期を上回る結果となりました。

 

c.経営成績等に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2.事業の状況 3 事業等のリスク」に記載したとおりであります。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループの経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、「第2.事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載したとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。

事業から創出されるキャッシュおよび政策保有株式をはじめとする非事業資産の資産最適化等に伴うキャッシュをベースに積極的な成長投資と株主還元の強化の両立を目指す中期経営計画(2021-2023)における財務投資戦略及びキャッシュアロケーションの考え方に基づいて、当連結会計年度においては営業活動によるキャッシュ・フローの大幅な増加によりキャッシュを創出し、R&D、人材投資、M&A及びソフトウエア投資といった成長投資を目的とした支出に充当しました。

当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、297億円の黒字となりました。前期に比べて151億円減少しておりますが、成長投資による構造転換が進捗し、利益成長及び安定的なキャッシュ創出力は高い水準を維持しているものと考えております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

イ.資金需要

当社グループの資金需要について、営業活動においては、人件費・外注費及び材料費などの支払いに充当する運転資金が主な内容になります。投資活動においては中期経営計画の3年間で約1,000億円を想定する投資戦略に基づき、DX提供価値の向上や新技術獲得のためのM&Aやソフトウエア開発投資、R&D、人材育成や処遇改善をはじめとした人材投資などへの成長投資を実施しております。この成長投資の一環として、2023年4月に日本ICS株式会社の連結子会社化を実施しております。また、働き方改革を推進するため経常的な設備の更新、増設等を目的とした設備投資に加え、システム運用業務における長期安定的な事業継続性の確保を目的とした不動産信託受益権の分割取得を実施しております。これら取得資金を自己資金及び借入金により充当しております。

 

ロ.財務政策

自己資本当期純利益率(ROE)については、事業収益力の向上に伴う当期純利益率の向上を牽引役として12.5%~13%を中期経営計画(2021-2023)における目標とし、長期的には構造転換を進めることで、安定的に15%を実現できる企業への成長を目指しています。

当連結会計年度のROEについては、継続する事業成長に加え、バランスシートマネジメントの強化等を通じた財務施策の推進も奏功し16.0%となり、中期経営計画の目標水準を上回りました。主な財務施策としては、事業法人株主の売却意向に応じて自己株式の取得(約224億円相当)を実施しています。

なお、当社グループは、必要となる資金につきましては、内部資金より充当し、不足が生じた場合は有利子負債の調達を実施することを基本とし、現金及び預金は月商の2ヶ月程度を保有する方針としております。借入金、社債等の調達については、調達コストの抑制の観点から格付「A」の維持を考慮して実施する前提としております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。