E05739 Japan GAAP
前期
4,825.5億 円
前期比
105.4%
株価
3,289 (04/25)
発行済株式数
236,233,411
EPS(実績)
234.77 円
PER(実績)
14.01 倍
前期
741.0万 円
前期比
101.4%
平均年齢(勤続年数)
40.0歳(14.0年)
従業員数
5,695人(連結:21,946人)
当社グループは、主として当社、連結子会社50社及び持分法適用会社74社で構成されています。主な業務は、情報化投資に関わるアウトソーシング業務・クラウドサービス、ソフトウエア開発、ソリューションの提供であり、これらの業務に関連するコンサルティング業などの業務も行っております。また、管理事業など付帯関連する業務についてもサービスを提供しております。
当社グループの事業内容と連結子会社並びに持分法適用会社の当該事業に係る位置づけを報告セグメントの区分で示すと次のとおりであります。当社は、オファリングサービス、金融IT、産業ITの各セグメントにおいて、グループの中心となって事業を展開しています。
なお、オファリングサービス、BPM、金融IT、産業IT、広域ITソリューションは、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げる報告セグメントの区分と同一であります。
また、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
(1) オファリングサービス
当社グループに蓄積したベストプラクティスに基づくサービスを自社投資により構築し、知識集約型ITサービスを提供しております。
〔主な連結子会社〕
TISシステムサービス株式会社、MFEC Public Company Limited
(2) BPM
ビジネスプロセスに関する課題をIT技術、業務ノウハウ、人材などで高度化・効率化・アウトソーシングを実現・提供しております。
〔主な連結子会社〕
株式会社アグレックス
(3) 金融IT
金融業界に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しております。
(4) 産業IT
金融以外の産業各分野に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しております。
〔主な連結子会社〕
クオリカ株式会社、AJS株式会社
(5) 広域ITソリューション
ITのプロフェッショナルサービスを地域や顧客サイトを含み、広範に提供し、そのノウハウをソリューションとして蓄積・展開して、課題解決や事業推進を支援しております。
〔主な連結子会社〕
株式会社インテック、TISソリューションリンク株式会社
(6) その他
各種ITサービスを提供する上での付随的な事業等で構成されています。
〔主な連結子会社〕
TISビジネスサービス株式会社、ソランピュア株式会社
以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
※画像省略しています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりとなります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあり、持ち直しの動きがみられました。先行きについては、世界的に金融引き締め等が続く中、海外景気の下振れによる我が国の景気の下押しリスク、物価上昇、供給面での制約及び金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
当社グループの属する情報サービス産業においては、期中に公表された日銀短観におけるソフトウエア投資計画(金融機関を含む全産業)がいずれも前期比増を示す等、DX技術を活用した業務プロセスやビジネスモデルの変革がグローバルで進展する中で、IT投資需要の更なる増加が期待されています。
このような状況の中、当社グループは、「グループビジョン2026」の達成に向けた更なる成長のため、現在遂行中の中期経営計画(2021-2023)に基づき、DX提供価値の向上を基軸とした事業構造転換の加速に引き続き取り組んでいます。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ14,321百万円減少の462,320百万円(前連結会計年度末476,642百万円)となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ9,421百万円増加の268,682百万円(前連結会計年度末259,261百万円)となりました。これは主に売上高の増加により受取手形、売掛金及び契約資産が20,126百万円増加し、借入金の返済及び自己株式の取得等により現金及び預金が19,518百万円減少したこと等によるものです。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ23,743百万円減少の193,637百万円(前連結会計年度末217,381百万円)となりました。これは主に政策保有株式の縮減等により投資有価証券が24,024百万円減少したこと等によるものです。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ20,555百万円減少の153,094百万円(前連結会計年度末173,649百万円)となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ22,057百万円減少の117,179百万円(前連結会計年度末139,236百万円)となりました。これは主に短期借入金が23,239百万円減少したこと等によるものです。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ1,502百万円増加の35,914百万円(前連結会計年度末34,412百万円)となりました。これは主に長期借入金が1,839百万円増加したこと等によるものです。
なお、有利子負債合計としては、前連結会計年度末に比べ21,489百万円減少の16,043百万円(前連結会計年度末37,533百万円)となり、有利子負債比率も3.5%(前連結会計年度末比4.4ポイント減)となりました。
(純資産合計)
純資産は、前連結会計年度末に比べ6,233百万円増加の309,226百万円(前連結会計年度末302,993百万円)となりました。これは主に利益剰余金が44,006百万円増加した一方、資本剰余金が自己株式の消却に伴って24,498百万円減少したこと及び政策保有株式の縮減等に伴うその他有価証券評価差額金の減少13,090百万円等によるものです。
なお、利益剰余金の増加は、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加55,461百万円と配当金支払いによる減少11,451百万円の結果です。また、自己株式は4,496百万円増加しましたが、取得により30,005百万円増加した一方で上述のとおり消却により24,498百万円減少した結果によるものです。本消却は、資本構成の適正化を図る一環として取得した約245億円相当の自己株式(6,715,483株、消却前の発行済株式総数に対する割合2.7%)について当社方針及び将来の株式の希薄化懸念を払拭すること等を勘案し、2023年2月28日に当初の予定通り実施したものです。
セグメント別の財政状態は以下のとおりです。
イ.オファリングサービス
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて8,746百万円減少し、146,642百万円となりました。
ロ.BPM
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて69百万円増加し、12,767百万円となりました。
ハ.金融IT
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて6,366百万円減少し、85,625百万円となりました。
ニ.産業IT
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて14,057百万円減少し、72,178百万円となりました。
ホ.広域ITソリューション
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて12,811百万円増加し、110,902百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の業績は、売上高508,400百万円(前期比5.4%増)、営業利益62,328百万円(同13.9%増)、経常利益63,204百万円(同13.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益55,461百万円(同40.5%増)となりました。
(単位:百万円) |
|||
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前期比 |
売上高 |
482,547 |
508,400 |
+5.4% |
売上原価 |
353,699 |
366,668 |
+3.7% |
売上総利益 |
128,848 |
141,732 |
+10.0% |
売上総利益率 |
26.7% |
27.9% |
+1.2P |
販売費及び一般管理費 |
74,108 |
79,403 |
+7.1% |
営業利益 |
54,739 |
62,328 |
+13.9% |
営業利益率 |
11.3% |
12.3% |
+1.0P |
経常利益 |
55,710 |
63,204 |
+13.5% |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
39,462 |
55,461 |
+40.5% |
売上高については、顧客のデジタル変革需要をはじめとするIT投資ニーズへの的確な対応による事業拡大により、前期を上回りました。営業利益については、増収に伴う増益分に加え、高付加価値ビジネスの提供、生産性・品質向上施策の推進等により売上総利益率が27.9%(前期比1.2ポイント増)に向上したことが、構造転換推進のための先行投資コストや処遇改善をはじめとする将来成長に資する投資を中心とした販売費及び一般管理費の増加を吸収し、前期比増益となり、営業利益率は12.3%(同1.0ポイント増)となりました。経常利益については、営業利益の増加により前期比増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、経常利益の増加に加えて特別損益が大きく改善したことから、前期を大きく上回りました。なお、当連結会計年度における特別利益は投資有価証券売却益及び子会社売却益等で22,040百万円(同10,747百万円増)、特別損失は出資金評価損や減損損失等で3,752百万円(同1,769百万円減)を計上しました。
<営業利益要因別増減分析(前期比)>
※画像省略しています。
セグメント別の状況は以下の通りです。当社グループは、更なる構造転換の推進に向け、グループ全体でのマネジメント体制を変更したことに伴い、当連結会計年度からセグメント区分を変更しています。なお、各セグメントの売上高はセグメント間の売上高を含んでおり、前期比(数値)は前期の数値を変更後のセグメントに組み替えたものを用いています。
(単位:百万円) |
||||
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前期比 |
|
オファリング サービス |
売上高 |
103,167 |
111,752 |
+8.3% |
営業利益 |
4,692 |
6,426 |
+36.9% |
|
営業利益率 |
4.5% |
5.8% |
+1.3P |
|
BPM |
売上高 |
42,951 |
43,255 |
+0.7% |
営業利益 |
4,991 |
5,123 |
+2.6% |
|
営業利益率 |
11.6% |
11.8% |
+0.2P |
|
金融IT |
売上高 |
91,651 |
101,184 |
+10.4% |
営業利益 |
12,355 |
13,896 |
+12.5% |
|
営業利益率 |
13.5% |
13.7% |
+0.2P |
|
産業IT |
売上高 |
108,751 |
113,632 |
+4.5% |
営業利益 |
15,356 |
16,728 |
+8.9% |
|
営業利益率 |
14.1% |
14.7% |
+0.6P |
|
広域IT ソリューション |
売上高 |
156,231 |
160,010 |
+2.4% |
営業利益 |
16,492 |
19,343 |
+17.3% |
|
営業利益率 |
10.6% |
12.1% |
+1.5P |
|
その他 |
売上高 |
6,369 |
8,957 |
+40.6% |
営業利益 |
770 |
878 |
+13.9% |
|
営業利益率 |
12.1% |
9.8% |
△2.3P |
イ.オファリングサービス
当社グループに蓄積したベストプラクティスに基づくサービスを自社投資により構築し、知識集約型ITサービスを提供しています。
当連結会計年度の売上高は111,752百万円(前期比8.3%増)、営業利益は6,426百万円(同36.9%増)となりました。海外事業が売上高伸長に寄与するとともに、決済や基盤系のIT投資拡大の動きに加えて生産性・品質向上施策の推進等を通じた収益性改善等により前期比増収増益となり、営業利益率は5.8%(同1.3ポイント増)となりました。
ロ.BPM
ビジネスプロセスに関する課題をIT技術、業務ノウハウ、人材などで高度化・効率化・アウトソーシングを実現・提供しています。
当連結会計年度の売上高は43,255百万円(前期比0.7%増)、営業利益は5,123百万円(同2.6%増)となりました。既存のデータエントリー業務は苦戦も、デジタル化ニーズの高まりを背景として安定的に推移し、前期比増収増益となり、営業利益率は11.8%(同0.2ポイント増)となりました。
ハ.金融IT
金融業界に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しています。
当連結会計年度の売上高は101,184百万円(前期比10.4%増)、営業利益は13,896百万円(同12.5%増)となりました。クレジットカード系の根幹先顧客及び公共系金融機関の大型案件が牽引し、前期比増収増益となり、営業利益率は13.7%(同0.2ポイント増)となりました。
ニ.産業IT
金融以外の産業各分野に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しています。
当連結会計年度の売上高は113,632百万円(前期比4.5%増)、営業利益は16,728百万円(同8.9%増)となりました。製造業やエネルギー系の根幹先顧客を中心としたIT投資拡大の動きに加え、生産性・品質向上施策の推進等を通じた収益性改善により、前期比増収増益となり、営業利益率は14.7%(同0.6ポイント増)となりました。
ホ.広域ITソリューション
ITのプロフェッショナルサービスを地域や顧客サイトを含み、広範に提供し、そのノウハウをソリューションとして蓄積・展開して、課題解決や事業推進を支援しています。
当連結会計年度の売上高は160,010百万円(前期比2.4%増)、営業利益は19,343百万円(同17.3%増)となりました。ソリューション展開の進展に加えて採算性を重視した事業活動の推進等により前連結会計年度中にグループ外へ株式譲渡した企業(中央システム株式会社)の業績除外を打ち返したことから、前期比増収増益となり、営業利益率は12.1%(同1.5ポイント増)となりました。
ヘ.その他
各種ITサービスを提供する上での付随的な事業等で構成されています。
当連結会計年度の売上高は8,957百万円(前期比40.6%増)、営業利益は878百万円(同13.9%増)となり、営業利益率は9.8%(同2.3ポイント減)となりました。主に、2022年4月1日を効力発生日として、グループのシェアードサービス事業を当社からTISビジネスサービス株式会社に継承する吸収分割を行ったことによる影響です。
前述の通り、当社グループは、前連結会計年度から「グループビジョン2026」の達成に向けたセカンドステップとなる中期経営計画(2021-2023)を遂行しています。「Be a Digital Mover 2023」をスローガンに、戦略ドメインへの事業の集中を推進するとともに、DX提供価値の向上を基軸とした事業構造転換の加速に引き続き取り組んでいます。
注)戦略ドメイン:「グループビジョン2026」で目指す、2026年に当社グループの中心となっているべき4つの事業領域
中期経営計画(2021-2023)の2年目となる当連結会計年度は、以下のグループ経営方針に基づき、各種施策に精力的に取り組みました。
<2023年3月期 グループ経営方針>
イ.サステナビリティ経営による社会提供価値と企業価値の長期成長戦略推進
ロ.DX組織能力と投資の強化による付加価値向上の加速
ハ.事業構造転換の促進と中長期的な資産・資本効率の向上施策推進
ニ.ASEANトップクラスのIT企業連合体を目指した成長戦略の推進とガバナンスの確立
ホ.人材の先鋭化と多様化へ向けた人材投資の一層の拡充
※画像省略しています。
グループ経営方針における主な課題や取組み状況は以下の通りです。なお、これらの取組みの結果、中期経営計画(2021-2023)で定めた重要な経営指標のうち主要なものについて、1年前倒しで達成いたしました。詳細については、P.36「第2.事業の状況 4.経営者による財政状況、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照下さい。
イ.サステナビリティ経営による社会提供価値と企業価値の長期成長戦略推進
事業を通じた社会課題解決を促進すると共に、環境・人権・人的資本等のESG高度化や本社機能の高度化・効率化による経営基盤の整備を継続的に推進することとしています。コーポレート・サステナビリティ基本方針に基づき、喫緊の重要な社会課題として優先度の高いテーマである人権や環境に関する取り組みを継続して進めています。このうち、人権問題に関しては、前連結会計年度に人権リスクアセスメントを実施し、潜在的人権リスクを抽出するとともに、今後優先して対応すべき国、事業及びライツホルダー(人権の負の影響を受ける可能性のある対象者)を明らかにしました。これを受けて、当連結会計年度においては、自社に加えて、業務委託先や機器調達先の労働問題に起因する人権リスクの把握と救済の仕組み作り、当社グループのサービスにおける目的外利用の整備等の対応を順次進めていくことにしています。また、環境問題に関しては、脱炭素社会の実現に向け、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減に取り組み、2040年度までに当社グループ自らの温室効果ガス排出量のカーボンニュートラル、及び2050年度までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量のネットゼロの実現を目指していくこととしました。特に、当社グループにおいて最大量の電力を使用するデータセンター運営においては、2023年4月より主要4データセンターの全使用電力に再生可能エネルギー由来の電力を使用していくことを決定し、準備を進めています。
加えて、当社グループの地域社会への貢献のあり方の一つとして、事業ではカバーできない3つの領域(将来のユーザーを支援する活動、社会にデジタル技術の恩恵を広める活動及び社会のデジタル技術による負の影響を軽減する活動)を対象に、企業版ふるさと納税の活用やNPOと協働するプロジェクトの発足等を開始しています。
また、サステナビリティ先進企業としてのプレゼンスの確立を目指していく中、2023年4月以降、コーポレートサステナビリティ委員会の位置づけや構成を変更しています。新たなコーポレートサステナビリティ委員会は、社外取締役を含む全取締役を中心に構成され、サステナビリティ経営を実践する上での潮流を捉え、課題の議論を通じて対応の方向性と目標を示すことを目的としています。
なお、こうしたコーポレートサステナビリティに関する取り組みが着実に進展した結果、2022年6月には「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄に初選定されました。
また、当社グループのブランド理解及び価値向上を目指す一環として、オウンドメディア「TIS INTEC Group MAGAZINE」を立ち上げ、ブランドメッセージである「ITで、社会の願い叶えよう。」をメインテーマとして、様々な領域で社会課題解決を目指す当社グループの具体的な取り組み内容や将来展望を紹介しています。
本社機能の高度化・効率化による経営基盤の整備の観点においては、従前から取り組んでいる「本社系機能高度化プロジェクト“G20”」の適用範囲を拡大するとともに、間接業務のシェアード化と更なる高度化に取り組む一環として、TISビジネスサービス株式会社を中心とした体制を通じて、グループ全体のバックオフィス業務のシェアードサービス化及びDX化を推進しています。
ロ.DX組織能力と投資の強化による付加価値向上の加速
中長期な付加価値向上の源泉となる人材、R&D、ソフトウエアへの一層の投資強化に加え、戦略ドメイン伸長を目的としたM&Aを継続的に推進することとしています。
ステークホルダーとの接点であるフロントラインの更なる強化にあたり、特に顧客に対してはDXを推進するための戦略立案や課題形成など上流領域のコンサルティング機能を強化することが必要であることから、データ分析・AIのコンサルティングに強みを有する連結子会社である澪標アナリティクス株式会社との連携強化を継続しています。また、2022年9月にエンタープライズ向け業務システムのUI(注1)/UX(注2)デザインコンサルティングから事業会社向けのデザインシステムの構築・運用支援などを手掛けるFixel株式会社を子会社化するとともに、お客様のプロダクトやサービスのデザイン、事業の課題抽出からアイデア出し・コンセプト開発などを支援するDXデザインの専門チームを立ち上げました。同社をグループに加えることで、同社の優秀なデザインコンサルティング力と当社の顧客対応力・システム構築力の融合によりDX提供価値を強化していきます。今後もこうした戦略的な経営資源配置と人材育成を通じて、DXコンサルタントを更に増員し、顧客のDX推進に対する価値提供体制の拡充に注力してまいります。
当社グループの強みである決済領域においては、「クレジットカードプロセッシングサービス」(注3)がサービスインしたほか、デジタル口座、モバイルウォレット、サービス連携、セキュリティ、データ利活用というデジタル化する決済に求められる要素をカバーする等、決済領域全般における事業展開を進めています。加えて、2022年3月に国際ブランドプリペイド決済サービスを提供する株式会社ULTRAを連結子会社化し、同社の有する決済のフロントエンド機能と当社グループが従来から有する決済のバックエンド機能構築の強みと合わせ、決済機能の一気通貫での組み込みを可能とする等、「Embedded Finance」の事業展開の準備も進めています。引き続き、キャッシュレス社会の進展に応じて成長が見込まれる決済領域に対し、リテール決済ソリューションのトータルブランド「PAYCIERGE」全体のサービスラインナップの拡充による面展開及び事業規模の拡大を通じて、キャッシュレス決済の更なる普及に貢献してまいります。
今後も当社グループでは、DXを3つの領域で捉え、よりよい社会を実現していく「社会DX」、お客様の事業を革新していく「事業DX」、そして当社グループ自身を進化させていく「内部DX」を相互に強く影響しあう一つの連なりとして、統合的な視点で取り組み、新たな価値の好循環を生んでいくことを目指してまいります。
また、2023年3月には現在賃借中のシステム運用業務及び自社ブランドのクラウドサービス提供の中核拠点である施設について、不動産信託受益権を分割取得することを決定しました。本決定は、当社の事業を支える基盤として必要となる大規模かつ希少性の高い施設については長期安定的な事業継続性を確保する観点から所有することを基本方針としている中で、賃借中の当該施設を所有に切り替える機会を得たこと、賃借から所有に切り替えることでの経済合理性及び大規模な投資の実行が可能である現在の当社財政状態等を総合的に勘案した結果、当社グループの中長期的な企業価値向上に資すると判断したものです。
注1)User Interface/ユーザーインタフェース。ユーザーがPCとやり取りをする際の入力や表示方法などの仕組み。
注2)User Experience/ユーザーエクスペリエンス。サービスなどによって得られるユーザー体験。
注3)クレジットカードのイシュイング業務に必要な環境をトータルで提供するサービス。現在クレジットカード業界で求められている「顧客志向の高度化」「オープンイノベーションへの柔軟性」「高い収益性」といった要件に応え、オリジナル性の高いシステムとカード商品を開発・提供。提供形式がSaaS型のため、導入時にかかる費用を抑制しながら必要な機能・サービスの利用が可能。
ハ.事業構造転換の促進と中長期的な資産・資本効率の向上施策推進
構造転換の進捗に伴う経営の安定性向上と、それを踏まえた中長期的な資産・資本効率の向上への取り組みを推進することとしています。
更なる経営マネジメントの実効性向上を目指して、資本コストを意識した事業マネジメントの導入、グループフォーメーションマネジメントの推進、国内外の企業のM&Aによる事業拡大や事業ポートフォリオの入れ替えを推進しています。また、更なる構造転換の推進と実効性向上に向け、当連結会計年度からグループ全体でビジネスモデルに応じたマネジメント体制をとることとし、これに合わせてセグメント区分を変更しました。各セグメントには、セグメントオーナーを設置して権限と責任の所在を明確化し、グループ各社の強みを活かした成長戦略の実現を推進してまいります。
2023年3月には、税理士事務所及びその顧問先企業向けに会計/税務パッケージ等を提供する日本ICS株式会社(以下、「日本ICS」という)の全株式を取得することを決定し、2023年4月に当社の連結子会社としました。中期経営計画(2021-2023)において構造転換に向けた諸施策を推進する中、戦略ドメインの一つであるITオファリングサービス(注1)の成長を加速させるためには、税理士事務所とその顧問先企業をメインターゲットに、財務会計パッケージおよび関連サービスの提供を事業として展開する日本ICSをグループに迎え入れ、同社のビジネスモデル及び顧客基盤を獲得することが重要であると判断したものです。日本ICSの顧客層である中堅・中小企業や税理士事務所に向けた会計/税務パッケージおよび関連サービスの機能強化や、新技術適用による税理士業務の効率化や確実性向上の実現、当社の顧客層である金融機関と連携した取引先向けのIT化・DX推進を実現する中堅・中小企業向けソリューションの提供等、顧客基盤の拡大や新たなビジネススキームの実現を目指してまいります。一方、当社のデジタルウォレットサービスを拡大することを目的として2020年1月に連結子会社化したSequent Software Inc.に関しては、海外市場における事業展開の状況等を踏まえてペイメント事業とは別の事業を志向する方針が同社の少数株主より提案されたことを受けて検討した結果、同社の有するペイメント事業に関する知的財産及びソフトウエアを当社が取得した上で当社保有の全株式をグループ外へ譲渡しました。
こうした中、戦略ドメインへの経営資源の集中による構造転換の着実な進展とそれに伴う利益成長やキャッシュ創出力の向上等の収益基盤の強化、経営の質が転換してきていることを踏まえ、資本構成の適正化を図る一環として、総還元性向45%に基づく株主還元を目的とした約55億円相当と合わせて総額約300億円(8,223,000株)の自己株式の取得を2022年12月までに完了しました。このうち、資本構成の適正化を図る一環として取得した約245億円相当の自己株式(6,715,483株、消却前の発行済株式総数に対する割合2.7%)については、当社方針および将来の株式の希薄化懸念を払拭すること等を勘案し、2023年2月28日に当初の予定通り消却しました。一方、株主還元の観点から取得した自己株式(約55億円相当)については、原則として発行済株式総数の5%を上限として保有し、5%を超過する保有分については消却するという当社の自己株式保有等に関する方針に沿って対応する予定です。
また、当社グループは、資産効率化及び財務体質の向上の観点から政策保有株式の縮減に努めており、前期末には543億円を計上していた政策保有株式は当期末には276億円となりました。これにより、政策保有株式の貸借対照表計上額の連結純資産に対する比率は8.9%となり、目標としていた10%水準への引き下げの早期実現を達成しました。
注1)当社グループに蓄積したノウハウと、保有している先進技術を組み合わせることで、顧客より先回りしたITソリューションサービスを創出し、スピーディに提供する事業領域。
ニ.ASEANトップクラスのIT企業連合体を目指した成長戦略の推進とガバナンスの確立
事業戦略に基づく出資先との関係強化や共同事業の展開による更なる市場の深耕を図るとともに、グローバルパートナーシップ網を拡充することとしています。
この一環として、2022年3月に持分法適用会社としたインドネシアのPT Aino Indonesia(以下、「AINO」という)とは、協業を加速させています。すでに、スマートフォンを前提とした東南アジア向け交通決済パッケージ「Acasia」の共同開発や次世代交通サービスとしてのMaaS(Mobility as a Service)についての共同事例研究等の成果が認められたこともあり、AINOがJATeLコンソーシアム(注1)メンバーの中核企業としてインドネシア・ジャカルタ市における同国初の統合交通決済基盤「JakLingko」(注2)の案件受注に貢献するとともに、「Acasia」が「JakLingko」のバックエンドシステムとして採用されるに至っています。2022年6月には当社と資本・業務提携関係にある東南アジア最大の配車サービス「Grab」と連携したMaaSサービスが追加されました。今後は東南アジアの交通決済のデジタル化支援に加え、Park and Rideやデータ利活用等ビジネス領域の拡張を図ってまいります。
また、2022年7月には、自動運転EV(電気自動車)向けの共通シャシーを開発する中国の貴州翰凱斯智能技術有限会社(HanKaiSi Intelligent Technology Co., Ltd.)と資本・業務提携しました。自動車のEV化や自動運転技術の進歩に伴い自動車産業が大きく転換し、ソフトウエアの重要性が高まる中において、同社との提携を通じてMaaS、スマートシティ領域等における新たなITサービスの創出を目指してまいります。
さらに、「ASEANトップクラスのIT企業連合体」の実現をより確かなものとするため、これまでのチャネル・テクノロジーに加えて、コンサルティングを新たな軸として追加し、グローバルにおける「コンサルティング+IT」プレイヤーとしてのプレゼンスとケイパビリティを強化していくこととしました。2022年11月には、インド地場企業としては大手の経営コンサルティング企業であるVector Consulting Groupと資本・業務提携契約を締結し、2023年1月に持分法適用会社化が完了しました。全世界においてコンサルティングとテクノロジーの融合が進む中、同社の持つ経営コンサルティング領域におけるノウハウを活用することで、当社グループのインド、日本、ASEAN地域、および中国のお客様に対するITサービスの高付加価値化の実現を目指してまいります。
一方で、上述のSequent Software Inc.の当社保有全株式の譲渡のほか、タイのMFEC Public Company Limitedが同社連結子会社の株式を譲渡して業績貢献の高い領域への再投資に注力する等、海外における事業構造転換の加速に向けた取組みも進めています。
注1)PT Jatelindo Perkasa Abadi、AINO、Thales、Lykoの4社で結成したPT JAKARTA LINGKO INDONESIAの案件に入札することを目的として結成された共同事業体。
注2)ジャカルタに存在する4つの公共交通機関の運賃体系を統合し、1つのアプリで公共交通機関からRidehailing(アプリを使った配車サービス)を跨って利用できるサービス。出発地から公共交通機関の乗車まで、公共交通機関の降車から目的地までの交通手段も含めたルート検索、予約、チケット購入及び利用が可能。
ホ.人材の先鋭化と多様化へ向けた人材投資の一層の拡充
付加価値向上を目指し、報酬や教育投資の向上、キャリア採用を含めた積極的な採用活動を継続することとしています。
多様な個が活躍できる環境・組織風土の整備、新たな労働環境を見据えた次世代の働き方改革の推進、人材データベースのデジタル化による人材ポートフォリオマネジメントの高度化、HRビジネスパートナーの本格稼働を通じて、社員のエンゲージメント向上や自律的なキャリア開発の支援等の取り組みを進めています。また、構造転換をさらに加速するため、コンサルティング、グローバル、サービスビジネス等、先鋭人材の戦略的な確保と育成とともに人材の最適配置に努めています。
また、当社グループでは、グループダイバーシティ&インクルージョン方針のもと、グループ推進体制を構築し、「健康経営」を推進しています。グループで働く一人ひとりの人生の質の向上を目指し、「心身の健康」「働きがいの向上」「生活力の向上」を実現する施策を推進しています。こうした取組みの結果、当社、株式会社インテックをはじめとした計4社は、経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人2023」に認定され、当社と株式会社インテックは「健康経営優良法人2023~ホワイト500~」にも認定されました。
さらに、当社グループでは、グループビジョン2026の実現に向けた「構造転換」を果たすため、デジタル技術を駆使し、ステークホルダーとの共創を通した社会課題解決を推進することを現中期経営計画の目標として掲げ、それを担う最重要の経営資本である人材の成長による付加価値向上に注力しています。当社では、以前より「働く意義」「働く環境」「報酬」の3つの軸で社員エンゲージメントを高める人材投資を進めてまいりましたが、「働く意義」と「報酬」の改革をさらに推し進めるため、2023年4月より、報酬・評価・等級制度等を全面的に刷新した新人事制度を導入しました。報酬制度では、特に事業を牽引する高度人材と若手層へ重点的に投資し、最大17%、平均では6%アップとなる基本給の引き上げをはじめとして、グループ全体で処遇改善に向けた取組みを推進しています。これにより、2024年3月期には前期比50億円規模の人件費増を見込んでいますが、当社グループの持続的成長に不可欠な人的資本に対する先行投資と位置付けています。こうした施策を引き続き実施することにより、従業員が能動的に考え動き、期待を上回る高いパフォーマンスを発揮することを促し、付加価値向上に繋げることで「人材の成長による企業競争力の向上を通じた企業成長の加速」を目指します。
今後も、グループ全体で人材の価値を高めるために積極的な投資を行い、会社と社員と社会の高付加価値化の善循環を生みだすことで、当社グループのさらなる成長と企業価値を向上し、より豊かな社会の実現を目指してまいります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて19,514百万円減少し、当連結会計年度末には94,306百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は33,634百万円(前期比22,492百万円減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益81,492百万円(同20,010百万円増)に、資金の増加として、非資金損益項目である減価償却費15,700百万円(同616百万円増)などがあった一方、資金の減少として、法人税等の支払額29,712百万円(同15,349百万円増)、売上高の増加により売上債権及び契約資産の増加額18,792百万円(同20,510百万円増)、投資有価証券売却益18,313百万円(同13,435百万円増)などがあったことによるものです。
なお、法人税等の支払額の増加は当社が資本・業務提携を通じて株式を保有する海外企業が前連結会計年度中に米国市場で株式を上場したことに伴い、税務上の株式譲渡益が生じた影響も一因となっています。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、得られた資金は11,300百万円(前期比14,725百万円増)となりました。これは主に、資金の増加として、政策保有株式の縮減等による投資有価証券の売却及び償還による収入23,685百万円(同16,558百万円増)などがあった一方で、資金の減少として、無形固定資産の取得による支出6,045百万円(同186百万円減)、有形固定資産の取得による支出4,337百万円(同4,710百万円減)などがあったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は64,573百万円(前期比42,624百万円増)となりました。これは主に、資金の増加として、短期借入金の純増加額10,399百万円(同9,078百万円増)などがあった一方で、資金の減少として、長期借入金の返済による支出35,450百万円(同28,437百万円増)、自己株式の取得による支出30,005百万円(同25,171百万円増)、配当金の支払額11,451百万円(同2,123百万円増)などがあったことによるものです。
なお、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計であるフリーキャッシュ・フローは44,935百万円の黒字(前期比7,766百万円減)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
なお、アウトソーシング業務・クラウドサービス及びソフトウエア開発についてのみ記載しております。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前年同期比(%) |
オファリングサービス(百万円) |
99,057 |
101.4 |
BPM(百万円) |
40,796 |
31.6 |
金融IT(百万円) |
98,081 |
175.6 |
産業IT(百万円) |
114,569 |
231.0 |
広域ITソリューション(百万円) |
155,839 |
106.0 |
報告セグメント計(百万円) |
508,344 |
106.1 |
その他(百万円) |
- |
- |
合計(百万円) |
508,344 |
106.1 |
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
オファリングサービス |
100,617 |
104.8 |
33,199 |
107.9 |
BPM |
39,904 |
95.2 |
7,449 |
87.6 |
金融IT |
108,841 |
120.0 |
48,799 |
123.9 |
産業IT |
113,115 |
99.0 |
38,064 |
100.5 |
広域ITソリューション |
161,477 |
105.9 |
52,861 |
117.7 |
合計 |
523,956 |
105.8 |
180,373 |
111.7 |
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前年同期比(%) |
オファリングサービス(百万円) |
99,132 |
108.2 |
BPM(百万円) |
40,958 |
100.9 |
金融IT(百万円) |
99,432 |
110.5 |
産業IT(百万円) |
112,916 |
105.6 |
広域ITソリューション(百万円) |
153,531 |
101.9 |
報告セグメント計(百万円) |
505,971 |
105.4 |
その他(百万円) |
2,429 |
89.4 |
合計(百万円) |
508,400 |
105.4 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載したとおりであります。
また、当社グループは、資産効率化及び財務体質の向上の観点から政策保有株式の縮減に努めており、前期末には543億円を計上していた政策保有株式は当期末には276億円となりました。これにより、政策保有株式の貸借対照表計上額の連結純資産に対する比率は8.9%となり、目標としていた10%水準への引き下げの早期実現を達成しました。
さらに、資本構成の適正化を図る一環として約245億円相当の自己株式を取得し、当社方針及び将来の株式の希薄化懸念を払拭すること等を勘案して消却を実施しております。
自己資本比率は64.2%となり、積極的な成長投資を可能とする財務健全性を堅持しています。
なお、当連結会計年度末の現金及び預金は保有方針である月商の2ヶ月程度を上回る状況にありますが、今後の資金需要等を考慮すれば適正な水準であると考えています。キャッシュアロケーションに関しては、構造転換の着実な進展による利益成長及び政策保有株式の縮減を加速させたことでキャッシュ創出力が当初想定よりも強まっており、これを受けて、投資・株主還元の強化に加えて資本構成適正化や財務健全性に向けた財務施策を積極的に実行することができています。今後もこうした善循環を推進することで経営の質の転換を進めてまいりたいと考えています。
b.経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に記載したとおりであります。
中期経営計画の基本方針に沿って、構造転換のための積極的な成長投資を進める中においても収益性を向上させる取り組みを推進することができていると考えています。具体的には、構造転換推進のための先行投資コストの増加17.2億円や処遇改善に伴う人材投資コストの増加51.5億円をはじめとする将来成長に資する投資がある中においても、高付加価値ビジネスの提供や生産性向上施策等を推進した結果、売上総利益率は前期比1.2ポイント増の27.9%に向上し、これが牽引する形で営業利益は同 13.9%増の623.2億円、営業利益率は同1.0ポイント増の12.3%となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は554.6億円(同40.5%増)と前期を大きく上回りましたが、主に資産効率化及び財務体質の向上の観点から進めた政策保有株式の縮減や海外における事業構造転換を目的とした連結子会社株式の譲渡に伴って特別利益を計上したことによるものです。
c.経営成績等に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2.事業の状況 3 事業等のリスク」に記載したとおりであります。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載したとおり、当社グループでは、事業規模・収益性および資本効率性を重視した経営指標を設定し、これらの拡大を目指しています。中期経営計画(2021-2023)では、「売上高5,000億円」「営業利益(営業利益率)580億円(11.6%)」「EPS(1株当たり当期純利益)の年平均成長率10%超」「戦略ドメイン比率60%」「社会課題解決型サービス事業売上高500億円」を掲げています。
当連結会計年度は、中期経営計画における重要な経営指標のうち主要なもの(売上高、営業利益及び営業利益率)について1年前倒しで達成する等、戦略ドメインへの経営資源の集中による構造転換は着実に進展しており、継続的な利益成長やキャッシュ創出力向上という成果につながっていると認識しています。
また、自己資本当期純利益率(ROE)については、中期経営計画(2021-2023)において事業収益力の向上に伴う当期純利益率の向上を牽引役として12.5%~13%を目標としており、長期的には構造転換を進めることで、安定的に15%を実現できる企業への成長を目指しています。
当連結会計年度は、事業収益力の向上に加えて特別利益の計上による親会社株主に帰属する当期純利益の大幅な増加とともに、当社グループの経営の質が転換してきていることを踏まえて実施した資本構成の適正化を図る一環としての自己株式取得(約245億円相当)が奏功したことにより、自己資本当期純利益率は18.8%に向上しました。なお、特別利益の計上を除いた事業活動をベースとして算出した場合においても、自己資本当期純利益率水準は中期経営計画の目標を上回る状況にあると認識しています。
※画像省略しています。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。
事業から創出されるキャッシュおよび政策保有株式をはじめとする非事業資産の資産最適化等に伴うキャッシュをベースに積極的な成長投資と株主還元の強化の両立を目指す中期経営計画(2021-2023)における財務投資戦略及びキャッシュアロケーションの考え方に基づいて、当連結会計年度においては営業活動によるキャッシュ・フローの大幅な増加に加え、政策保有株式の縮減およびグループの事業ポートフォリオ見直しによるキャッシュを創出し、3年間で約1,000億円を想定する成長投資の一部を構成する固定資産の取得による支出に充当しました。
当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、449億円の黒字となりました。前期に比べて77億円減少しておりますが、成長投資による構造転換が進捗し、利益成長及び安定的なキャッシュ創出力は高い水準を維持しているものと考えております。
b.資本の財源及び資金の流動性
イ.資金需要
当社グループの資金需要について、営業活動においては、人件費・外注費及び材料費などの支払いに充当する運転資金が主な内容になります。投資活動においては中期経営計画の3年間で約1,000億円を想定する投資戦略に基づき、DX提供価値の向上や新技術獲得のためのM&Aやソフトウエア開発投資、R&Dや人材育成などへの成長投資を実施しております。この成長投資の一環として、2023年4月に日本ICS株式会社の連結子会社化を実施しており、225億円の株式取得資金を自己資金及び借入金により充当しております。その他、働き方改革を推進するため経常的な設備の更新、増設等を目的とした設備投資を実施しております。
ロ.財務政策
自己資本当期純利益率(ROE)については、事業収益力の向上に伴う当期純利益率の向上を牽引役として12.5%~13%を中期経営計画(2021-2023)における目標とし、長期的には構造転換を進めることで、安定的に15%を実現できる企業への成長を目指しています。
当連結会計年度のROEについては、前連結会計年度の14.0%から4.8ポイント上昇の18.8%となり、中期経営計画の目標水準を上回りました。これは、経常利益の増加に加えて特別損益が大きく改善したことで当期純利益率が10.9%(前期比2.7ポイント増)となったことに加えて、資本構成適正化を目的とした自己株式の取得(約245億円相当)が主要因です。なお、一過性の特別損益等を除いた場合でも中期経営計画の目標水準を上回っていると認識しています。
なお、当社グループは、必要となる資金につきましては、内部資金より充当し、不足が生じた場合は有利子負債の調達を実施することを基本とし、現金及び預金は月商の2ヶ月程度を保有する方針としております。借入金、社債等の調達については、調達コストの抑制の観点から格付「A」の維持を考慮して実施する前提としております。
※画像省略しています。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。