売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E34973 Japan GAAP

売上高

86.3億 円

前期

73.0億 円

前期比

118.3%

時価総額

250.0億 円

株価

622 (04/25)

発行済株式数

40,187,944

EPS(実績)

-52.47 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

1,040.2万 円

前期

976.5万 円

前期比

106.5%

平均年齢(勤続年数)

34.6歳(2.9年)

従業員数

296人(連結:397人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

 

3 【事業の内容】

(1) ミッション

当社グループは「データによって人の価値を最大化する」をミッションに掲げ、世の中に溢れるデータをあらゆる生活者(注1)にとって価値のあるものとして還元し、豊かな体験を流通させることを目的に、当社グループの提供するCX(注2)(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」をウェブサイトやスマートフォンアプリを運営する事業者に向け、クラウド方式(注3)で提供しております。

ネットショッピングはもちろんのこと、旅行や金融、人材、不動産、学習、行政など、官民問わず様々なサービスがインターネットを介して提供されるようになった今、ウェブサイトやスマートフォンアプリに生活者が求めることは、「自宅にいながら買い物できる」「予約ができる」と言った単なる利便性だけではなく、自分の興味や状況に合わせた最適な提案が受けられる良質なコミュニケーションやその先の体験へとシフトしていると当社グループは考えております。

DX(デジタル・トランスフォーメーション、注4)やデジタル投資、オンラインの顧客体験向上に取り組む企業が増える一方、企業がそれを実現するには、データを蓄積し、統合し、分析し、顧客の状態を理解し、それらに基づいてメールやウェブサイト、スマートフォンアプリ上で顧客とコミュニケーションする、あるいはメールやウェブサイト、スマートフォンアプリをそれぞれの顧客に合わせてパーソナライズ(注5)する仕組みや社内体制を構築する必要があり、この取り組みは企業にとって複雑で難易度の高いものとなっているのが現状です。

 

事業者は「KARTE」を活用することにより、様々なデータを、ユーザー単位で整理・解析し、オンラインの顧客を、PV(注6)やUU(注7)といった塊の「数字」として認識するだけではなく、一人ひとりの「人」として認識・理解しやすくなると当社グループは考えております。その上で、事業者は、ウェブサイト、スマートフォンアプリを顧客や顧客セグメント(注8)に合わせてパーソナライズしたり、メールやLINE、チャットを通じてコミュニケーションしたり、また、それらのコミュニケーションやパーソナライズ結果の検証を行うことなどができます。

 

当社グループは、データによる顧客理解からパーソナライズした多様なコミュニケーション施策までを、一気通貫で行うことのできるプラットフォームを提供し、「KARTE」を導入するすべての事業者と共に、データを通じた生活者の顧客体験の向上を実現してまいります。

 

(注1) 世の中一般の不特定多数の人々を「生活者」、当社グループの直接の取引先である法人等を「事業者」又は「企業」、事業者が商品・サービスを提供する相手を「顧客」又は「ユーザー」と表記しております。

(注2) Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)の略語であり、一般的に「顧客体験」と訳されますが、顧客がよいと感じられる体験、つまり「顧客が体験して得られる価値」までも含めて定義しております。

(注3) クラウドコンピューティングの略語であり、ソフトウェア等のシステムをインターネットを経由してサービス提供することを前提とした仕組みの総称であります。

(注4) Digital Transformationの略語であり、新しいデジタル技術を活用し、企業におけるこれまでの組織やシステム、ビジネスモデル等を、より付加価値の高いものへと変貌させ、利益や生産性の向上を図ることをいいます。

(注5) ウェブサイトやスマートフォンアプリ、メールやLINE、チャットなどを顧客ごとに改変することをいいます。

(注6) Page View(ページビュー)の略語であり、ウェブサイト内の特定のページが開かれた回数を表し、ウェブサイトがどのくらい閲覧されているかを測るための指標の一つです。

(注7) Unique User(ユニークユーザー)の略語であり、特定の集計期間内にウェブサイト又はスマートフォンアプリに訪問したユーザーの数を表す数値です。

(注8) 一定の条件に基づき抽出された顧客のまとまりを表す言葉です。

 

 

(2) サービス概要

当社グループはCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」の開発を行い事業者に対して提供しております。「KARTE」は、事業者が運営するウェブサイトやスマートフォンアプリに組み込むことにより、事業者が「KARTE」上でそれらのウェブサイトやスマートフォンアプリを訪れるユーザーのウェブサイトやスマートフォンアプリでの行動のデータを収集・解析し、ユーザー単位でデータを整理・可視化し、それらに基づいてウェブサイトやスマートフォンアプリ、メールやLINE、チャットでのコミュニケーションをユーザー又はユーザーのセグメントそれぞれにパーソナライズするための、クラウド方式で提供されるSaaS(Software as a Service)(注9)です。

 

(注9) サービス・プロバイダーがネットワーク経由でソフトウェアを提供し、事業者側はコンピューターにソフトウェアをインストールするのではなく、ネットワーク経由でソフトウェアを利用する形態のサービスを指します。

 

(3) 当社グループとして考える、「KARTE」が必要とされる理由

1.企業におけるデジタル人材の枯渇

「KARTE」を導入、活用することで、社内エンジニアや外注先に仕事を依頼せずに、ウェブサイトやスマートフォンアプリにおけるユーザー分析や多様なマーケティング施策及び、ユーザビリティの改善を実施することが可能です。エンジニアや外注による開発を経ずに、実行や検証のサイクルを素早く回すことによるウェブサイトやスマートフォンアプリの差別化などを目的として、「KARTE」を活用する企業が増えています。

 

2.統合された顧客体験の提供

店舗に加えてウェブサイトやスマートフォンアプリ、メールやLINEなど、顧客接点が増えるに従い、企業はメール配信ツールや分析ツールなど様々なサービスを導入した結果、顧客に関わるデータが企業内で分散・サイロ化し、顧客体験を分断してしまう弊害が生まれています。「KARTE」では、店舗などオフラインのデータを含む多種多様なデータの収集・蓄積からパーソナライズした施策の実施までを一気通貫して行うことが可能なので、より良い顧客体験に繋がるコミュニケーションが実現します。

 

3.幅広い部署・部門で利用が可能

デジタルマーケティング部やCX戦略部等はもちろんのこと、カスタマーサポートや新規事業開発など、企業内の幅広い部門で「KARTE」を活用することが可能です。活用のノウハウや成功事例を社内外で発信・共有する場も多く、「KARTE」を媒介とした社員同士や企業間の繋がりが生まれています。

 

4.事業シナジーの創出

多様な事業、サービスを展開する企業が「KARTE」を導入することで、グループ企業共通の顧客及びマーケティング基盤を構築することが可能です。グループ全体の膨大な顧客接点を統合して顧客の解像度を上げ、新たなニーズを発見して新規事業を生み出すといった、中長期の経営計画やDX(デジタル・トランスフォーメーション)戦略の一環として、「KARTE」が採用されています。

 

5.「KARTE」が企業の環境変化に寄り添いアップデートし続けるSaaSであること

当社グループは「KARTE」の核となるリアルタイムのデータ解析基盤はもちろんのこと、大部分の開発を自社のエンジニアが行っており、毎日のようにサービスが改善されたり、新機能が追加されています。「KARTE」を利用する企業は、オプションとして提供される以外の機能はすべて月額料金の中で利用することができ、高い技術力を用いたサービスの進化を享受し続けることが可能です。

 

6.「人」の良さを活かすというプロダクトコンセプトへの共感

人は数字よりも人を直接見ることで、何かを考えたり、新しい発想をすることに長けていると当社グループでは考えており、事業に携わる人自身に備わる発想や創造力を発揮できる環境を作ることこそが、企業の競争力の源泉になると確信し、「KARTE」を開発しています。デジタル化がもたらす効率化や定量化、自動化といった技術の恩恵は取り入れつつも目的とせず、人の能力を拡張することを主眼におき、人が介在することの価値を高めることを目指した「KARTE」のプロダクトコンセプトが、多くの企業に受け入れられています。

 

また、当社グループサービスの料金体系は、以下のとおりです。

「KARTE(for Web)」(注10)、「KARTE for App」及びその他のオプションのサービス契約期間は原則単年(12ヶ月)契約であり、料金体系としては、毎月一定のプロダクト利用料をいただく月額課金型(サブスクリプションモデル)を採用しております。「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」は原則として事業者のサービス(ウェブサイト等)のMAU数(注11)に応じて料金が決定されます。「KARTE Datahub」については「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」のオプション商品の位置付けとなり、事業者のサービス(ウェブサイト等)のMAU数及びレコード総数(注12)に応じて料金が決定されます。

 

(注10) SaaS事業分野のサービスの総称である「KARTE」と同名称のため、ウェブサイト向けのサービスについては、わかりやすくするために(for web)を付記しております。

(注11) Monthly Active Users(マンスリーアクティブユーザーズ)の略語であります。ウェブサイトやネットサービス、スマートフォンアプリなどで、ある一ヶ月の間に一回でも利用や活動のあった利用者の数の合計を指します。

(注12) データファイルの行数の総計を指します。

 

当社グループの報告セグメントは、SaaS(Software as a Service)事業及び広告事業でありますが、広告事業の全セグメントに占める割合が僅少であり、開示情報としての重要性が乏しく、セグメント情報を記載していないため、事業分野別に記載しております。当社グループの主な事業分野は①SaaS事業、②その他周辺事業となり、SaaS事業分野のサービスは、a.KARTE(for Web)、b.KARTE for App、c.その他のオプションで構成されます。

 

(4) 当社グループの主な事業分野別の内容

① SaaS事業
a.KARTE(for Web)

「KARTE(for Web)」は、ウェブサイト向けに提供している「KARTE」であります。主な特徴は以下のとおりです。

ア.顧客一人ひとりを可視化

ウェブサイト等に来訪する顧客の行動データを顧客ごとに蓄積します。一人ひとりのウェブサイト等における顧客行動を把握することにより、事業者が顧客の状態やニーズを直感的に理解し、より良い体験を得られるような様々な施策を実行・検証することが可能になります。

イ.リアルタイム解析基盤

過去のデータではなく、「会員登録の途中で迷っている」「特定の商品で長時間悩んでいる」など、ウェブサイトに来訪する顧客の「今」を解析することが可能であり、顧客の購入意向の高まりなどを見逃すことなく、適切にコミュニケーションすることができます。

ウ.ワンストップで施策実行

顧客分析やメール配信、ウェブチャットやSMS(注13)など様々なマーケティングツールがありますが、「KARTE」は「顧客分析」と「施策制作・配信・自動化」を同サービス上でまとめて実行することができます。ツールやデータを社内で分散・分断させることなく、一元化することが可能です。さらに、PDCAを通じた分析や施策アクションは、ナレッジとしてKARTEに蓄積していきます。また、顧客分析、企画、デザイナーへの依頼、エンジニアへの依頼など、複数部署に依頼をして、数週間要していたようなサイト上のマーケティング施策の実行が「KARTE」担当者1名でも可能になるので、デジタル人材の不足に悩む企業にも活用されています。

具体的には、行動によるセグメンテーションから、ユーザーをリアルタイムに可視化することで、施策制作・配信を行い、データを収集するというPDCAを通じたナレッジの蓄積を行うことができます。

 

(注13) Short Message Service(ショートメッセージサービス)の略語であります。一般的に、携帯電話番号だけで手軽にメッセージが送られるサービスのことを指します。

 

 

b.KARTE for App

「KARTE(for Web)」とほぼ同じ機能をスマートフォンアプリ上で実現するサービスであり、iOS、Androidのスマートフォンアプリ向けのSDK(注14)であります。

「KARTE for App」を導入することで、事業者はスマートフォンアプリを利用する顧客の行動をリアルタイムに解析し、「アプリインストール直後のユーザー」や「ロイヤルカスタマー(注15)」など、個々の顧客を柔軟な条件を元にグループ化してプッシュ通知やアプリ内メッセージを配信できるようになります。

また、現代の消費者行動として同一サービスのウェブサイトとスマートフォンアプリを行き来しながら情報取得や購買行動を行うことが一般的になりつつあります。なお、「KARTE for App」とあわせて「KARTE(for Web)」を導入している事業者は、共通の「KARTE」管理画面からウェブサイトとスマートフォンアプリ双方を使う顧客の行動を一覧で可視化・解析することも可能であります。さらに、メールやSMS、ウェブチャット、LINEなど、様々な顧客接点を統合したコミュニケーションを作り、届けることが可能になります。

 

(注14) Software Development Kit(ソフトウェア開発キット)の略語であります。特定のソフトウェアを開発するために必要となるプログラムやツール等をひとまとめにしたパッケージのことを指します。

(注15) ある商品又はサービスに対しての忠誠心が高い顧客を指します。

 

 

c.その他のオプション

「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」に付随して利用いただくオプションであります。主なオプションは、「KARTE Datahub」であります。

「KARTE Datahub」は様々なデータを用いて事業者が顧客理解をさらに深め、より良い体験を顧客に提供することの実現を目指しております。具体的には、事業者は「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」で蓄積した顧客の体験データを自社の顧客データベースなどと統合・分析したり、外部CRM(注16)ツールへ連携して、チャネルを横断したマーケティング活動全体での顧客体験の設計を行うことが可能となります。上記(3)2.において記載した顧客に関わるデータが企業内で分散・サイロ化し、顧客体験を分断してしまう弊害に悩む事業者の課題を解決することにも繋がると考えております。

システムの統合やデータ環境の構築、ツール導入・活用のコンサルティングを行うパートナー企業が「KARTE Datahub」を扱うことで「KARTE(for Web)」や「KARTE for App」と合わせて「KARTE」をパートナー企業が持つソリューション全体像の中心部分として活用する可能性が広がるものと認識しております。

 

「KARTE」を利用しているウェブサイト及びスマートフォンアプリにおける業界別割合(注17)と導入企業例は下図のとおりです。サービス開始当初より導入されているファッション、美容・健康などの各種EC事業者にとどまらず、金融、人材サービス、不動産、メディア・ポータルウェブサイトなどの運営事業者にまで導入が広がっており、特定の業界を問わない幅広い事業者に利用されています。

 

※画像省略しています。

 

(注16) Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)の略語であり、一般的に「顧客関係管理」の意とされます。顧客の情報を一元管理することで、顧客と密接でより良い関係を構築し、顧客の満足度を上げるための活動を指します。

(注17) 2023年9月末時点における、各業界の導入ウェブサイト及びスマートフォンアプリ数の合計をすべての導入ウェブサイト及びスマートフォンアプリ数の合計で除して算出しております。

 

2015年3月に正式リリースして以来、SaaS事業における各サービスは継続的に成長し、2023年9月期第4四半期会計期間におけるARR(注18)は、8,035,156千円、サブスクリプション売上高(注19)は、1,968,720千円に達しており、サブスクリプション売上高比率(注20)は84.8%となっております。また、顧客社数(注21)も成長を続けており、2023年9月期第4四半期会計期間末では1,064社となっております。なお、各指標の過去推移は下表のとおりであります。

 

各指標の推移

 

 

2021年9月期

第1四半期

2021年9月期

第2四半期

2021年9月期

第3四半期

2021年9月期

第4四半期

ARR(千円)

4,773,065

5,169,000

5,426,679

5,807,400

サブスクリプション売上高(千円)

1,163,458

1,256,104

1,338,882

1,432,740

サブスクリプション売上高比率(%)

96.2

95.0

95.5

94.9

顧客社数(社)

500

502

517

538

 

 

 

2022年9月期

第1四半期

2022年9月期

第2四半期

2022年9月期

第3四半期

2022年9月期

第4四半期

ARR(千円)

6,377,440

6,637,596

6,463,285

6,638,342

サブスクリプション売上高(千円)

1,578,629

1,627,292

1,625,654

1,641,650

サブスクリプション売上高比率(%)

89.7

87.7

90.2

87.5

顧客社数(社)

686

699

691

725

 

 

 

2023年9月期

第1四半期

2023年9月期

第2四半期

2023年9月期

第3四半期

2023年9月期

第4四半期

ARR(千円)

6,858,051

7,293,256

7,603,077

8,035,156

サブスクリプション売上高(千円)

1,686,694

1,800,045

1,879,886

1,968,720

サブスクリプション売上高比率(%)

86.4

83.8

85.0

84.8

顧客社数(社)

744

995

1,011

1,064

 

 

(注18) Annual Recurring Revenue(アニュアルリカーリングレベニュー)の略語であり、各期末の月次サブスクリプション売上高を12倍することにより算出しております。既存の契約が更新のタイミングで全て更新される前提で、既存の契約のみから、期末月の翌月からの12ヶ月で得られると想定される売上高を表す指標です。

(注19) 売上高のうち、経常的に得られる「KARTE」の利用料の合計額を指します。

(注20) 売上高に占める、サブスクリプション売上高の割合を指します。

(注21) 各期末時点のプロダクト導入顧客社数の合計を指します。

 

② その他周辺事業

当社グループ事業で重要視しているCX(顧客体験)という考え方をより広く伝え、世の中の共感を増やしていく目的から「XD(クロスディー)」というメディア運営を通じてインターネット上で情報の提供をしております。

「XD」はCXをテーマに、様々なサービスと消費者の間に生まれる「体験(Experience)」にフォーカスしたビジネスメディアであり、「世の中のあらゆる体験を魅力的に」をコンセプトに、企業が消費者に提供する体験をよりよくするためのヒントとなる情報を、様々な観点からお届けしており、CX(顧客体験)の考え方を広めることに寄与していると考えております。また、オフラインの大規模イベント「CX DIVE」を開催し、CXを考え、広げていくコミュニティとしての活動を行っております。

 

 

[事業系統図]

当社グループの事業を事業系統図によって示すと以下のとおりとなります。

 

※画像省略しています。

 

24/01/18

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産は、151,652千円増加し、5,300,501千円となりました。主な内訳は、現金及び預金が3,827,359千円、受取手形及び売掛金が980,467千円であります。

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産は、1,023,559千円減少し、918,893千円となりました。主な内訳は、のれんが339,833千円、敷金及び保証金が303,862千円、投資有価証券が56,137千円であります。

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債は、579,610千円増加し、2,461,527千円となりました。主な内訳は、未払金が742,290千円、契約負債が504,487千円、1年内返済予定の長期借入金が384,628千円であります。

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債は、130,209千円減少し、1,009,033千円となりました。内訳は、長期借入金が990,540千円、繰延税金負債が18,493千円であります。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、1,321,307千円減少し、2,748,833千円となりました。主な内訳は、資本金が2,945,895千円、資本剰余金が5,029,365千円、利益剰余金が△5,424,590千円であります。

 

② 経営成績の状況

当社グループは「データによって人の価値を最大化する」をミッションに掲げ、世の中に溢れる様々なデータを生活者(注1)にとって価値あるものとして還元し、豊かな体験を流通させることを目的に、当社の提供するCX(注2)(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」をウェブサイトやスマートフォンアプリを運営する企業に向けて、クラウド方式(注3)で提供しております。

ショッピングや旅行、金融など様々なサービスがインターネットを介して提供されるようになった今、生活者が企業にもとめることは、「自宅にいながら買い物できる」「予約できる」といった単なる利便性だけではなく、自分の興味や状態に合った最適な提案を受けられる良質なコミュニケーションやその先の体験へとシフトしていると当社グループは考えております。

一方で、企業がそれに応えるためには、データの蓄積、統合、分析を通じて一人ひとりの状態を正しく理解し、それに基づいて適切なコミュニケーションを図る、あるいはウェブサイトやスマートフォンアプリをパーソナライズさせる仕組みを構築する必要がありますが、これらの取り組みは企業にとって複雑で難易度の高いものとなっているのが現状です。

企業は「KARTE」を活用することにより、ウェブサイトやスマートフォンアプリ上のリアルタイム行動データを中心とする様々なデータを、ユーザー単位で解析することができます。それによって、一人ひとりの興味や状態が可視化され、ユーザーをPV(注4)やUU(注5)といった塊の「数字」としてだけではなく、一人の「人」として理解しやすくなると当社グループは考えております。その上で企業は、「KARTE」内で一人ひとりの興味や状態に合わせた多様なコミュニケーション施策を実施し、その結果を検証することなどができます。

顧客体験向上やデータ活用に対する企業の関心が高まる中、「KARTE」はウェブサイトやスマートフォンアプリ上のマーケティング領域に留まらず、カスタマーサポート領域など様々な企業活動において活用いただいております。今後も「KARTE」の機能強化や各種プロダクトの提供を通じて、企業が統合的にユーザーを理解できるデータ環境の拡充を進めていきます。

当連結会計年度においては、「KARTE」の販売強化に向けた組織変更や人員増強を行ったほか、更なる事業領域の拡大に向けた取り組みも行いました。

 

この結果、当連結累計期間の末日における当社グループのARR(注6)は8,035,156千円となり、売上高は8,633,638千円(前期比18.3%増)、営業損失は881,423千円(前期は営業損失882,541千円)、経常損失は938,343千円(前期は経常損失983,503千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,108,610千円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失930,777千円)となりました。

なお、当社グループの報告セグメントは、SaaS事業及び広告事業でありますが、広告事業の全セグメントに占める割合が僅少であり、開示情報としての重要性が乏しいため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

(注1) 世の中一般の不特定多数の人々を「生活者」、企業が商品・サービスを提供する相手を「ユーザー」と表記しております。

(注2) Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)の略語であり、一般的に「顧客体験」と訳されますが、顧客がよいと感じられる体験、つまり「顧客が体験して得られる価値」までも含めて定義しております。

(注3) クラウドコンピューティングの略語であり、ソフトウェア等のシステムをインターネット経由でサービス提供することを前提とした仕組みの総称であります。

(注4) Page View(ページビュー)の略語であり、ウェブサイト内の特定ページが開かれた回数を表し、ウェブサイトがどのくらい閲覧されているかを測るための指標の一つです。

(注5) Unique User(ユニークユーザー)の略語であり、特定の集計期間内にウェブサイト又はスマートフォンアプリに訪問したユーザーの数を表す数値です。

(注6) Annual Recurring Revenueの略語であり、各期末の月次サブスクリプション売上高を12倍して算出。既存の契約が更新のタイミングで全て更新される前提で、既存の契約のみから、期末月の翌月からの12ヶ月で得られると想定される売上高を表す指標です。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ413,217千円減少し、当連結会計年度末には3,827,359千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は325,088千円(前期比59.8%減)となりました。これは主に減損損失1,133,159千円、株式報酬費用205,477千円、のれん償却額185,848千円、未払金の増加額201,707千円を計上した一方で、税金等調整前当期純損失2,125,760千円を計上したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は89,033千円(前期比34.1%減)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出46,714千円及び連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出49,416千円等があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は905千円(前期比99.9%減)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出207,506千円、長期借入れによる収入1,080,997千円、長期借入金の返済による支出1,488,985千円、預り保証金による収入300,000千円、非支配株主からの払込みによる収入407,847千円等があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループは、インターネット上での各種サービスを主たる事業としており、生産に該当する事項が無いため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

b.受注実績

当社グループは、受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。

 

c.販売実績

当社グループの報告セグメントは、SaaS事業及び広告事業でありますが、広告事業の全セグメントに占める割合が僅少であり、開示情報としての重要性が乏しいため、セグメント情報の記載を省略しております。

なお、当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

 

事業分野別の名称

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

販売高(千円)

前期比(%)

SaaS事業及び広告事業

8,633,638

118.3

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、連結財務諸表作成時に入手可能な情報及び合理的な基準に基づき判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、安定的な収益獲得を実現し、持続的な成長を達成するために、経常的に獲得される収益としてARRを重要な経営指標として掲げており、その拡大のために、サブスクリプション売上高、サブスクリプション売上高比率、顧客社数を特に経営成績に影響を与える主要な経営指標と捉えております。

当連結会計年度においては、「KARTE」の販売強化に向けた組織変更や人員増強を行ったほか、更なる事業領域の拡大に向けた取り組みも行いました。この結果、主要な経営指標の推移は以下のとおりとなっております。

当連結会計年度の末日におけるARRは8,035,156千円、サブスクリプション売上高は7,335,347千円、サブスクリプション売上高比率は85.0%、顧客社数は1,064社となりました。これは主に、CX(顧客体験)及び「KARTE」の認知拡大のために実施したマーケティング活動による新規顧客開拓並びに当社カスタマーサクセスチームに加えてパートナー企業と連携した「KARTE」の活用支援の強化等により、「KARTE」の利用領域の拡大が進み導入企業数及び導入ウェブサイト数等の件数が拡大したことによるものであります。

 

(売上高)

当連結会計年度の売上高は8,633,638千円(同18.3%増)となりました。主な要因は、「KARTE」の利用領域の拡大が進み導入企業数が1,064社となったことに加え、アジト株式会社を連結の範囲に含めたことも影響しております。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は2,396,873千円(同24.3%増)となりました。これは、導入企業数の増加に伴い、サーバー利用料等が増加したことによるものであります。この結果、売上総利益は6,236,764千円(同16.2%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は7,118,188千円(同13.9%増)となりました。これは主に、人員増強に伴う人件費の増加、株式報酬費用及び通信費の増加等によるものであります。この結果、営業損失は881,423千円(前期は営業損失882,541千円)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常損失)

当連結会計年度の営業外損益は主に助成金収入及び受取手数料等による営業外収益4,164千円(同27.5%増)、支払利息及び支払手数料等による営業外費用61,084千円(同41.4%減)を計上いたしました。この結果、経常損失は938,343千円(前期は経常損失983,503千円)となりました。

 

 

(特別損益、親会社株主に帰属する当期純損失)

当連結会計年度の特別損益は、特別損失として減損損失及び投資有価証券評価損を計上いたしました。この結果、親会社株主に帰属する当期純損失は2,108,610千円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失930,777千円)となりました。

 

なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループの運転資金需要のうちの主なものは、サーバー利用料、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 

なお、当連結会計年度末における借入金の残高は1,376,828千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,827,359千円となっております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。

これらリスク要因の発生を回避するためにも、提供するサービスの機能強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。