E36937
前期
57.6億 円
前期比
133.7%
株価
2,992 (05/02)
発行済株式数
2,224,600
EPS(実績)
197.79 円
PER(実績)
15.13 倍
前期
711.4万 円
前期比
103.9%
平均年齢(勤続年数)
39.8歳(2.8年)
従業員数
140人
当社は、企業の基幹システムの基盤環境をオンプレミス(※1)からクラウドへ移行するサービス並びにクラウド環境移行後の保守・運用サービスを提供することを主軸としたクラウドソリューション事業を展開しております。中でもSAPシステムのクラウド移行・環境構築及び移行後の運用については、創業当初から当社が特化してきたサービスであります。
当社を取り巻くクラウド市場においては、Gartnerの調査(世界のIaaS(※2)パブリッククラウドサービスの市場シェア2020年-2021年)によると、パブリッククラウド(※3)の市場シェアは2021年に41.4%成長し、当社が取扱いをしている「Amazon Web Services」(AWS)(※4)、「Microsoft Azure」(Azure)(※5)及び「Google Cloud」(※6)も成長しております。
IDC Japanの調査(国内クラウド需要調査2022年10月実施)によると、複数のクラウドを統合管理したいというニーズは、現状は21.9%でありますが、2年後に目指す姿としては44.7%となっており、企業におけるマルチクラウド(複数のパブリッククラウド)の利用は進んでいくものと見ております。また、ERP市場においては、ITRの調査(ITR Market View:ERP市場2022)によると、ERPパッケージのIaaSでの稼働は、2019年度から2021年度にかけて20%程度成長しており、今後もこの傾向が続くと予測され、ERPのクラウド化が進んでいくものと見ております。
SAPシステムにおいては、2027年にSAP ERP6.0の保守終了が予定されており、自社のSAPシステムの環境をどのように遷移させていくかというアップグレード・クラウド移行戦略は、大変重要なポイントとなっております。
SAPシステムの基盤環境としてパブリッククラウドを選定する場合には、基盤製品の保守期限だけでなく、各種ライセンス持ち込み要件や技術制約についても配慮が必要であることから、当社では、顧客企業毎に最適化されたアップグレード・クラウド移行戦略の重要性を理解しており、単純なパッケージ更新作業ではなく、システムを支える製品全体のライフサイクルを考慮したシナリオ策定を含めてシステムを更改するというサービスの提供をしております。
クラウドに移行することのメリットとしては、「コスト削減効果が得られる」、「ハードウエア保守、ハードウエアのライフサイクルからの解放」、「ITガバナンス向上、セキュリティ強化に寄与」、「災害対策に有効」があると考えており、加えて、SAPシステムにおいては、ERP保守終了リスクも考慮した「次世代ERPプラットフォームへの対応がし易くなる」というメリットもあると考えております。
そのような環境の中、当社では「デジタルトランスフォーメーション(※7)」及び「マルチクラウド」という2つの領域を軸にサービスを展開しており、顧客企業毎に使用している基幹システムに最適なパブリッククラウドの選定、基幹システムをパブリッククラウド上で最適な状態で利用するためのコンサルティング、クラウド環境の設計・構築、クラウド環境への移行、及びクラウド環境での運用業務の提供を行っております。
クラウドソリューション事業としては、「クラウドインテグレーション」、「MSP(マネージドサービスプロバイダ)」及び「クラウドライセンスリセール」の3つのサービスを提供しております。
(1)当社サービスの特徴
当社の事業は「クラウドソリューション事業」の単一セグメントでありますが、「クラウドインテグレーション」、「MSP(マネージドサービスプロバイダ)」及び「クラウドライセンスリセール」の3つのサービスを事業展開しております。
サービス区分 |
主なサービス内容 |
クラウドインテグレーション |
・SAP環境クラウド移行コンサルティング ・クラウド利用コンサルティング ・クラウド基盤設計・運用コンサルティング ・クラウド導入・環境構築サービス ・SAP環境クラウド移行サービス ・アプリケーション開発 |
MSP(マネージドサービスプロバイダ) |
・クラウド環境運用・監視サービス ・SAP基盤(BASIS)監視 ・ヘルプデスクサービス ・顧客企業別状況コンソール提供 |
クラウドライセンスリセール |
・クラウドライセンス販売 ・請求代行サービス ・他社ライセンス販売 ・クラウド技術問い合わせ |
① クラウドインテグレーション
SAPシステムを中心とした基幹システムの基盤環境をオンプレミス環境からクラウド環境(パブリッククラウド等の最新のIaaSやPaaS(※2)基盤)へ移行するための一連の業務を提供するサービスが主力であります。
本主力サービスは、準備(調査・分析)、計画(設計)及び実行(構築・移行)のフェーズ毎に区分でき、各フェーズにおける主な内容は次のとおりであります。
準備(調査・分析)には、顧客企業の既存システムをクラウド移行するにあたって、必要項目やリスクの洗い出し、検討項目の調査、クラウド基盤を最適化するための分析、コスト等も含めて網羅的に最適化された移行戦略の策定等のコンサルティングやサービスがあります。
計画(設計)には、クラウド毎に特有なサービス・運用仕様に基づき、顧客企業向けに最適化された基幹クラウド基盤を設計するサービス及びクラウド移行を事前に実環境で検証するサービス等があります。
実行(構築・移行)には、クラウドごとに特有なサービス・運用仕様に基づき、顧客企業向けに最適化された基幹クラウド基盤を構築するサービス、SAPシステム及び周辺システムを短期間で安全にオンプレミス環境からクラウド環境へ移行するサービス等があります。
上記、クラウド移行の他、既存のSAP ERPシステムからSAP S/4HANAにコンバージョン(※8)するサービス、並びにクラウドの利点(俊敏性・拡張性)を生かしたアプリケーションを開発するサービスがあります。
当社は、SAPシステムのクラウド化に携わってきたコンサルタントが集結しており、かつAWS、Microsoft、Google、SAPが提供する各種認定技術者資格を保有する数多くのエンジニアを育成しております。SAPシステム基盤とクラウド両方を理解し、かつ運用にも精通したエンジニアが細やかな技術対応を実施することから、勘所を押さえた提案ができることが当サービスの特徴でもあります。
また、SAPシステム等の大規模基幹システム以外においても、顧客の事業用Webサービス等のクラウド移行並びにクラウド利用を前提とした「データ分析基盤構築」及び「クラウドアプリケーション開発」も手掛けております。加えて、当社は、取り扱えるパブリッククラウドがAWS、Azure及びGoogle Cloudの3種類あることから、企業のIT基盤のクラウド上での活用方法を最適な形でコンサルティングするサービスも得意としております。
クラウドインテグレーションのプロジェクト数の実績は以下のとおりであります。
(単位:件)
2021年2月期 |
2022年2月期 |
2023年2月期 |
|||||||||
第1 四半期 |
第2 四半期 |
第3 四半期 |
第4 四半期 |
第1 四半期 |
第2 四半期 |
第3 四半期 |
第4 四半期 |
第1 四半期 |
第2 四半期 |
第3 四半期 |
第4 四半期 |
102 |
126 |
116 |
108 |
119 |
133 |
132 |
145 |
191 |
160 |
164 |
176 |
② MSP(マネージドサービスプロバイダ)
顧客企業がクラウド環境に構築したシステムの仮想サーバーやネットワークの監視及び運用保守等を顧客企業の代わりに行うサービスを提供しております。
本サービスの監視は、単純なサーバーの監視だけでなく、CPU・メモリ・ディスク等の使用率やネットワークトラフィック量など各種リソース監視を行い、不足または不足の予兆が見られた場合は、改善策のご提案を行うサービスを提供しており、上位のミドルウエア、アプリケーションの監視にも対応しております。
本サービスの運用保守は、24時間365日、リモート遠隔運用体制により、クラウド、オンプレミスを問わず、顧客企業の環境に合わせたフレキシブルな対応が可能となっております。また、各種クラウド基盤に精通したエンジニアが万全の体制で顧客企業のシステムをサポートするとともに、SAPシステムへの対応においては、SAP認定コンサルタントが対応に参加することで、インフラからSAPシステム基盤である「SAP BASIS(※9)」まで網羅的なサポートを提供しております。
当社は、兄弟会社である「株式会社スカイ365」に、24時間365日対応の問い合わせ窓口の機能を業務委託している他、インフラからアプリケーション層をカバーする性能監視、障害監視・復旧、バックアップ等の運用サービスの業務も一部委託しており、当社とともに運用保守のサービスが提供できる体制を整えております。
MSPの顧客数の実績は以下のとおりであります。
(単位:社)
|
2019年2月期 |
2020年2月期 |
2021年2月期 |
2022年2月期 |
2023年2月期 |
期末月顧客数 |
9 |
33 |
49 |
58 |
66 |
※1 期末月顧客数:期末である2月に取引のあったエンドユーザーの数(社数)
※2 2020年2月期の期末月顧客数は、株式会社テラスカイのAWS事業を吸収分割により事業承継し統合した結果、大きく増加しております。
③ クラウドライセンスリセール
a.クラウドライセンス販売
顧客企業が利用するクラウド環境の提供元であるAWS社、Microsoft社及びGoogle社からライセンスを仕入れて、顧客企業に販売することで月額課金を代行する業務が主なサービスであります。当サービスには、単に再販するだけではなく、当社が提供する付加価値としての請求代行を行うサービスや問い合わせ対応サービスも含まれており、顧客企業は当サービス経由で各クラウドを利用することにより、従来ハードウエアの調達やその管理に費やしていた時間やコストを削減することができます。
また、パブリッククラウドベンダーから課金されるクラウド利用料は外国通貨で請求されることが一般的でありますが、当サービスにおいては、当社が日本円建ての請求書を発行することにより、顧客企業は一般的な日本円での銀行振込による支払いが可能となります。
AWS利用料、Azure利用料及びGoogle Cloud利用料は、基本的に初期費用が不要であり、顧客企業のクラウド利用時間に応じて顧客企業に課金されますが、顧客企業が利用するサーバースペックと利用期間を予約することにより大幅な割引を得ることのできるReserved Instance(リザーブドインスタンス)(※10)またはSavings Plans(※10)と呼ばれる取引形態が存在します。
AWS、Azure及びGoogle Cloudのアカウント数合計の実績は以下のとおりであります。
(単位:個)
2021年2月期 |
2022年2月期 |
2023年2月期 |
|||||||||
第1 四半期 |
第2 四半期 |
第3 四半期 |
第4 四半期 |
第1 四半期 |
第2 四半期 |
第3 四半期 |
第4 四半期 |
第1 四半期 |
第2 四半期 |
第3 四半期 |
第4 四半期 |
86 |
112 |
122 |
143 |
170 |
214 |
234 |
249 |
260 |
277 |
352 |
380 |
b.ソフトウエアライセンス販売
情報漏洩対策など顧客企業の関心が高いセキュリティ対策ソフトウエア・サービスは、クラウド環境を安全に運用し顧客企業の不安を払拭するうえで不可欠なものとなっております。当社は、顧客企業のクラウド環境を運用するうえで有効な各種ソフトウエア・サービスの仕入れ販売を行っております。
(2)当社のビジネスモデルについて
当社のサービスは、クラウドコンピューティング(※2)の中でもIaaS及びPaaSの領域に属しております。クラウドインテグレーションによる売上を「フロー売上」(主に、顧客企業へのコンサルティング、基盤設計、基盤構築、移行を行うサービスであり、主として顧客企業の検収時まで一定の期間にわたり売上が計上される一過性の売上)として位置付け、導入企業を開拓することによりフロー売上を拡大させるとともに継続利用企業を蓄積することで、「ストック売上」(クラウド上のサーバーの監視・バックアップ等の運用代行及び保守等に関するサービス(前述(1)② MSP)並びに顧客企業にパブリッククラウドやセキュリティソフトウエア等のライセンスを販売し月額課金を代行するサービス(前述(1)③ クラウドライセンスリセール)による継続的な売上)の拡大による安定収益化を図っております。ただし、「フロー売上」で獲得した顧客が「ストック売上」に移行しない場合もあります。
[事業系統図]
※画像省略しています。
〔用語解説〕
※1 オンプレミス
顧客企業が情報システムを自社で保有し、自社の設備において自社運用する形態を意味します。
※2 クラウドコンピューティング
ソフトウエア、データベース、サーバー及びストレージ等をインターネットなどのネットワークを通じてサービスの形式で必要に応じて利用する方式のことを意味し、「IaaS」「PaaS」「SaaS」の大きく3つの種別に分類されます。
クラウドの種別 |
代表例 |
説明 |
IaaS (Infrastructure-as-a-Service) |
AWS |
インターネットを経由して、CPUやメモリなどのハードウエア、サーバーやネットワークなどのITインフラを提供するサービス |
PaaS (Platform-as-a-Service) |
AWS、Microsoft Azure、Google Cloud |
インターネットを経由して、アプリケーションを実行するためのプラットフォームを提供するサービス |
SaaS (Software-as-a-Service) |
Salesforce.com、Office365 |
インターネットを経由して、従来パッケージ製品として提供されていたソフトウエアを提供・利用する形態 |
※3 パブリッククラウド
広く一般のユーザーや企業向けに、サーバーやストレージ、データベース、ソフトウエアなどのクラウドコンピューティング環境をインターネット経由で提供するサービスを意味します。
代表的なサービス名として、「Amazon Web Services(AWS)」、「Microsoft Azure」、「Google Cloud」などがあります。
※4 AWS
Amazon.com,Inc.の関連会社 Amazon Web Services,Inc.を意味します。Amazon Web Services,Inc.が提供するWebサービスを通じてアクセスできるよう整備されたクラウドコンピューティングサービス群の総称も「AWS」といいます。
※5 Azure
Microsoft Corporationが提供する、Webサービスを通じてアクセスできるよう整備されたクラウドコンピューティングサービス群の総称のことを意味します。
※6 Google Cloud
Google Inc.が提供する、Webサービスを通じてアクセスできるよう整備されたクラウドコンピューティングサービス群の総称のことを意味します。Google Cloudには、Google Cloud Platform、G Suite、エンタープライズ向けAndroidおよびChrome OS、機械学習のためのApplication Programming Interfaces(API)、エンタープライズ向けマップサービスなどが存在しております。
※7 デジタルトランスフォーメーション
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することを意味します。
※8 コンバージョン
ある形式で記録されたデータやファイルを、別の形式に変換することを意味します。変換、転換、交換などを意味し、ITの分野ではデータ形式などの変換や、消費者から顧客への転換などの意味で用いられることが一般的であります。
※9 SAP BASIS
SAP ERP システムの場合、一般的なアプリケーションとは異なり、OS上に「SAP BASIS」というミドルウエアコンポーネントをインストールします。SAP ERPはBASISの上で稼働する構造になっており、BASISは、SAP独自のプログラミング言語であるABAP(アバップ)やJava、Webサービスを実行・利用するためのランタイム機能を担います。
※10 Reserved Instance(リザーブドインスタンス)、Savings Plans
クラウド利用料の購入形態の一つであり、利用期間(1年または3年の期間)で特定の使用量を予約するかわりに、都度精算する形態である従量課金の料金と比較して低料金となるため、コストを削減できるサービスであります。Reserved Instance(リザーブドインスタンス)はサーバースペックのタイプを指定する形態であり、Savings Plansは1時間当たりの利用費を約束する形態であります。
※11 2023年2月末日現在、各ベンダーの認定資格取得数及び人数は以下のとおりであります。
ベンダー |
資格取得数 |
取得者人数(延べ人数) |
AWS |
199 |
54 |
Microsoft |
34 |
13 |
|
15 |
8 |
SAP |
12 |
7 |
※12 APN
AWS Partner Network の略称であります。AWSパートナー企業のビジネス、技術、マーケティング、市場開拓等における活動を支援・促進するためのさまざまなサポートを提供する制度であります。AWSの活用を支援する「コンサルティングパートナー」と、AWSを使ったソフトウエア・サービスを提供する「テクノロジーパートナー」の2つに大分されます。APNコンサルティングパートナーは、AWSに関する営業体制を保有し、AWSを活用したシステムインテグレーションやアプリケーション開発能力をAmazon Web Services,Inc.に認定されたパートナーの総称であり、営業・技術力、導入実績、貢献度等に応じて「レジスタード」「セレクト」「アドバンスド」「プレミア」の4階層が存在します。最上位のプレミアコンサルティングパートナーは、APNコンサルティングパートナーの中でも最も優れた実績を残したパートナーとして位置づけられ、2023年2月末日現在、プレミアコンサルティングパートナー数は日本で12社となります。
なお、当社は「アドバンスドコンサルティングパートナー」であります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産合計は、3,329,424千円となり、前事業年度末から737,826千円の増加となりました。
当事業年度末における流動資産は、3,039,400千円となり、前事業年度末から711,408千円の増加となりました。これは主に、売掛金の回収により現金及び預金が142,437千円、売上の増加により売掛金が264,879千円、契約資産が255,429千円、AWSのリザーブドインスタンス(契約期間1年間、3年間)及びSavings Plans(契約期間1年間)の購入等に伴い前払費用が74,356千円増加したこと等によるものであります。
当事業年度末における固定資産は、290,024千円となり、前事業年度末から26,417千円の増加となりました。これは主に、繰延税金資産が10,993千円、自社開発のクラウド運用サービスツール「BSC:BeeX Service Console」の追加機能開発等により無形固定資産が17,378千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は、1,680,324千円となり、前事業年度末から361,949千円の増加となりました。
当事業年度末における流動負債は、1,680,324千円となり、前事業年度末から362,140千円の増加となりました。これは主にクラウドライセンスリセール売上が増加したことに伴うライセンスの仕入高が増加したことにより買掛金が319,581千円及びクラウドライセンスリセール売上に対する契約負債が93,736千円増加したこと、未払金が36,272千円、未払法人税等が90,517千円増加した一方で、取引先の銀行へ借入金を返済したことに伴い短期借入金が200,000千円減少したこと等によるものであります。
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末から191千円の減少となりました。これは、本社オフィスの賃貸契約にフリーレントが含まれており、当該フリーレント分を取崩したことにより長期未払金が191千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、1,649,099千円となり、前事業年度末から375,876千円の増加となりました。これは、第三者割当増資の実施により資本金及び資本準備金がそれぞれ34,739千円、当期純利益の計上による繰越利益剰余金が299,527千円増加したこと等によるものであります。
②経営成績の状況
当事業年度(2022年3月1日~2023年2月28日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、緩やかな景気回復を背景に投資再開の動きが広がるなか、足元では新たな変異株による感染症の再拡大や米中貿易摩擦の長期化、世界的な半導体不足や原材料価格の高騰、さらには原油価格や為替相場の急激な変動など、今後の動向や影響についての予測は困難な状況が続いております。
情報サービス産業においては、昨年からのテレワーク環境の整備・強化に向けた需要が一巡した一方、業績悪化を理由に抑制が続いていた企業のICT投資が再開され、特に事業の強化や変革を推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の需要が増加しております。
当社を取り巻くクラウド市場においては、Gartnerの調査(世界のIaaSパブリッククラウドサービスの市場シェア2020年-2021年)によると、パブリッククラウドの市場シェアは2021年に41.4%成長し、当社が取扱いをしている「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」(Azure)及び「Google Cloud」も成長しております。
IDC Japanの調査(国内クラウド需要調査2022年10月実施)によると、複数のクラウドを統合管理したいというニーズは、現状は21.9%でありますが、2年後に目指す姿としては44.7%となっており、企業におけるマルチクラウド(複数のパブリッククラウド)の利用は進んでいくものと見ております。
また、ERP市場においては、ITRの調査(ITR Market View:ERP市場2022)によると、ERPパッケージのIaaSでの稼働は、2019年度から2021年度にかけて20%程度成長しており、今後もこの傾向が続くと予測され、ERPのクラウド化が進んでいくものと見ております。
SAPシステムにおいては、2027年にオンプレ環境を含むSAP ERP6.0の保守終了が予定されており、自社のSAPシステムの環境をどのように遷移させていくかというアップグレード・クラウド移行戦略は、大変重要なポイントとなっております。
このような状況下、当社では「デジタルトランスフォーメンション」及び「マルチクラウド」という2つの領域を軸にクラウドソリューション事業を展開しており、SAP社が提供する基幹システムを中心に、顧客企業毎に使用している基幹システムに最適なパブリッククラウドの選定、基幹システムをパブリッククラウド上で最適な状態で利用するためのコンサルティング、クラウド環境の設計・構築、クラウド環境への移行、及びクラウド環境での運用業務の提供を行ってまいりました。また、クラウドソリューション事業においては、テレワーク環境下での働き方が推進されている状況が追い風となっており、クラウドに関する顧客企業からの引合いは増加基調にあります。
以上の結果、当事業年度における売上高は5,759,268千円(前期比32.2%増)、営業利益は403,090千円(前期比46.9%増)、経常利益は409,288千円(前期比57.2%増)、当期純利益は299,527千円(前期比56.9%増)となりました。
なお、当社の事業はクラウドソリューション事業の単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりません。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前事業年度末に比べ142,437千円増加し、1,163,141千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は335,766千円となりました(前事業年度は237,980千円の獲得)。これは主に、増加要因として、税引前当期純利益の計上409,025千円(前年同期は260,318千円)、AWSのリザーブドインスタンス(契約期間1年間、3年間)及びSavings Plans(契約期間1年間)の契約数が増加したことによる契約負債の増加額93,736千円(前年同期は前受金の増加額127,125千円)、クラウドライセンスリセールに係る仕入高が増加したことによる仕入債務の増加額319,473千円(前年同期は仕入債務の増加額119,532千円)等があった一方で、減少要因として、クラウドソリューション事業の売上高が増加したことによる売上債権及び契約資産の増加額481,165千円(前年同期は売上債権の増加額37,634千円)、AWSのリザーブドインスタンス(契約期間1年間、3年間)及びSavings Plans(契約期間1年間)の購入等に伴う前払費用の増加額74,342千円(前年同期は前払費用の増加額123,965千円)、法人税等の支払額37,676千円(前年同期は法人税等の支払額123,087千円)等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は56,724千円となりました(前事業年度は68,744千円の支出)。これは主に従業員の増加に伴うPC等の購入により有形固定資産の取得による支出7,872千円(前年同期は有形固定資産の取得による支出9,815千円)、自社開発のクラウド運用サービスツール「BSC:BeeX Service Console」の追加機能開発等により無形固定資産の取得による支出48,851千円(前年同期は無形固定資産の取得による支出58,928千円)があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は136,605千円となりました(前事業年度は348,912千円の獲得)。これは、株式の発行による収入69,478千円(前年同期は新株式の発行による収入353,280千円)があった一方、取引先の銀行へ借入金を返済による支出200,000千円(前年同期は取引先の銀行へ借入金を返済による支出はありませんでした)があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しておりま す。
b.受注実績
当事業年度のクラウドソリューション事業における受注実績をサービス別に示すと、次のとおりであります。
サービス区分の名称 |
受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
クラウドインテグレーション |
1,753,729 |
33.3 |
221,373 |
91.9 |
(注)クラウドインテグレーションに係る受注の状況を記載しております。
c.販売実績
当社は「クラウドソリューション事業」の単一セグメントとしておりますが、当事業年度の販売実績をサービス区分ごとに示すと次のとおりであります。
サービス区分の名称 |
当事業年度 (自2022年3月1日 至2023年2月28日) |
前年同期比(%) |
クラウドインテグレーション(千円) |
1,647,704 |
16.9 |
MSP(千円) |
655,629 |
18.5 |
クラウドライセンスリセール(千円) |
3,455,935 |
44.5 |
合計(千円) |
5,759,268 |
32.2 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 (自2021年3月1日 至2022年2月28日) |
当事業年度 (自2022年3月1日 至2023年2月28日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
AGC株式会社 |
893,085 |
20.5 |
1,123,907 |
19.5 |
株式会社テラスカイ |
661,700 |
15.2 |
707,954 |
12.3 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績の分析
(売上高)
当事業年度における売上高は、前事業年度に比べ1,404,422千円増加し、5,759,268千円(前期比32.2%増)となりました。当社は、クラウドソリューション事業の単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりませんが、サービス区分別の売上高は次のとおりであります。
クラウドインテグレーション売上については、既存顧客からの追加案件の受注及び新規顧客の獲得もあってプロジェクト数が順調に積み上がり、1,647,704千円(前期比16.9%増)となりました。
MSP売上及びクラウドライセンスリセール売上については、新規顧客の獲得により取引社数が堅調に推移し、加えて、複数の既存顧客のアップセルがあったことにより、MSP売上高は655,629千円(前期比18.5%増)、クラウドライセンスリセール売上高は3,455,935千円(前期比44.5%増)となりました。
サービス区分別売上高
サービス名称 |
前事業年度 (自 2021年3月1日 至 2022年2月28日) |
当事業年度 (自 2022年3月1日 至 2023年2月28日) |
前事業年度比 |
|||
売上高(千円) |
構成比(%) |
売上高(千円) |
構成比(%) |
差額(千円) |
増減率(%) |
|
クラウドインテグレーション |
1,409,336 |
32.4 |
1,647,704 |
28.6 |
238,367 |
16.9 |
MSP |
553,140 |
12.7 |
655,629 |
11.4 |
102,488 |
18.5 |
クラウドライセンスリセール |
2,392,368 |
54.9 |
3,455,935 |
60.0 |
1,063,566 |
44.5 |
合計 |
4,354,845 |
100.0 |
5,759,268 |
100.0 |
1,404,422 |
32.2 |
(売上原価、売上総利益)
当事業年度における売上原価は、前事業年度に比べ1,174,463千円増加し、4,707,404千円(前期比33.2%増)となりました。
クラウドインテグレーション売上およびMSP売上の増加に伴い業務委託費が296,869千円増加した一方で、クラウドライセンスリセール売上が増加したことによりライセンスの仕入高が818,145千円増加、自社開発のクラウド運用サービスツール「BeeX Service Console」(ソフトウエア)の追加機能をリリースしたことに伴う減価償却費が11,415千円増加しました。
以上の結果、売上総利益は1,051,864千円(前期比28.0%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ101,329千円増加し、648,773千円(前期比18.5%増)となりました。
これは主に、営業・管理部門の採用が順調に進捗したこと及びエンジニア数名がプリセールスに異動したこと等により給料及び手当が34,595千円増加し、社外の専門家の利用により業務委託費が5,119千円増加し、採用活動において紹介会社による紹介手数料が増加した等もあり採用費が21,052千円増加したこと等によるものであります。
以上の結果、営業利益は前事業年度に比べ128,630千円増加し403,090千円(前期比46.9%増)となりました。
(営業外損益、経常利益)
当事業年度における営業外収益は11,731千円(前期比1,184.7%増)となりました。これは主に、受取手数料収入10,651千円を計上したこと等によるものであります。また、営業外費用は5,534千円(前期比63.2%減)となりました。これは主に、為替差損4,635千円を計上したこと等によるものであります。
以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ148,969千円増加し409,288千円(前期比57.2%増)となりました。
(特別損益、当期純利益)
当事業年度における特別損失は、262千円(前期は計上無し)となりました。これは固定資産売却損を計上したことによるものであります。
当事業年度における法人税等合計は、前事業年度に比べ40,067千円増加し109,498千円(前期比57.7%増)となりました。
以上の結果、当期純利益は前事業年度に比べ108,639千円増加し、299,527千円(前期比56.9%増)となりました。
c.キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しておりますが、特に下記の会計方針が財務諸表作成における重要な見積りの判断等に影響を及ぼすと考えております。
(履行義務の充足に係る進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益)
当社は、請負契約など成果物の引渡し義務を伴う受注制作ソフトウエア開発において、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合を除き、履行義務の充足に係る進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益を認識しております。履行義務の充足に係る進捗度の見積りは、各報告期間の期末日までに発生した原価または工数実績の見積総原価または見積総工数に対する割合として算定しております。
履行義務の充足に係る進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益の計上にあたっては、履行義務の充足に係る進捗度について、受注総額、総製造原価及び総工数の見積りに大きく依存しており、契約及び見積りの管理や計画管理の正確性が求められております。受注総額、総製造原価及び総工数の見積りについて、実績との乖離が発生した場合は見直しを行い収益計上の精度を確保しておりますが、適切な対応が遅れた場合には当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、AWS及びAzureのクラウドライセンスリセールにおける仕入のほか、クラウドインテグレーションに係る外注費及び社内人件費(製造原価)及び販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
なお、当社の資金の源泉は主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入による資金調達でありますが、今後、急激に資金繰りが悪化した場合においても、追加で資金調達が迅速に行える当座貸越契約を金融機関と締結しております。
④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、まだ成長途上の段階にあり、事業規模の速やかな拡大と利益創出基盤の拡大が急務であると考えており、当面の指標としては売上高及び経常利益を重視しております。また、持続的な成長のためには財務基盤の強化を図る必要があると考えており、財務的安定性の指標として、自己資本比率についても着目しております。
いずれの指標も継続的に増加させていくことを目指しております。
2023年2月期については、売上高、経常利益及び自己資本比率はいずれも前事業年度を上回りました。
各指標についての推移は以下のとおりであります。
|
2022年2月期 |
2023年2月期 |
売上高 |
4,354,845千円 |
5,759,268千円 |
経常利益 |
260,318千円 |
409,288千円 |
自己資本比率 |
49.1% |
49.5% |
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は「2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業内容や外部環境、事業体制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は常に業界動向に留意しつつ、優秀な人材を確保し市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
⑥経営者の問題認識と今後の方針について
当社が属する業界においては、今後一層、デジタルトランスフォーメーションの考えが浸透し、クラウド化が進んでいくことに伴い、顧客企業のITに対する理解も急速に高度化されていく事が予想され、クラウド化の波は、ますます加速化するものと見ております。クラウドの加速化は、当社にとっては追い風である一方で、オンプレミスベースの既存顧客企業を保有する大手システムインテグレーター企業等が相次いで市場に参入し、技術力競争及び価格競争等が激化することが予測されます。また、当社が提供するサービスも、単なる工数提供の対価を得るということではなく、顧客企業にとっての価値を実現するという価値実現の対価を得る、という付加価値を提供するというサービスにシフトしていく必要があると考えております。
このような状況下において、当社が更なる成長を実現し、持続的に成長していくために、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の内容について重点的に取り組んでいく方針であります。