売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E00932 IFRS

売上高

1.11兆 円

前期

1.26兆 円

前期比

88.2%

時価総額

9.68兆 円

株価

5,768 (03/29)

発行済株式数

1,679,057,667

EPS(実績)

193.84 円

PER(実績)

29.76 倍

平均給与

1,198.1万 円

前期

1,214.4万 円

前期比

98.7%

平均年齢(勤続年数)

42.0歳(15.0年)

従業員数

4,903人(連結:7,604人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

 

3【事業の内容】

当企業集団は、連結財務諸表提出会社(以下、「当社」という。)、子会社15社及び親会社の子会社2社により構成されており、主な事業内容と企業集団を構成する各会社の当該事業に係る位置づけの概要は次のとおりであります。

 

医薬品事業18社

国内事業:当社が製造した医薬品を、全国の特約店を通じて販売しております。

製造については、一部医薬品の原材料をエフ・ホフマン・ラ・ロシュ・リミテッド[本社:スイス]から購入しております。また、中外製薬工業㈱及びジェネンテック・インコーポレーテッド[本社:米国]に医薬品の製造を委託しております。

研究業務については、㈱中外医科学研究所に医薬品の研究業務の一部を委託しており、また同社に研究用施設等の管理業務を委託しております。

開発業務については、㈱中外臨床研究センターに臨床開発業務の一部を委託しております。

また、中外製薬ビジネスソリューション㈱は当社の事務処理業務を請け負っております。

 

海外事業:欧州では、中外ファーマ・ヨーロッパ・リミテッドが販売統轄会社として位置づけられております。

エフ・ホフマン・ラ・ロシュ・リミテッドが当社一部製品を輸入し販売しております。

欧州において、中外ファーマ・ヨーロッパ・ロジスティクス・エスエーエスが当社製品を輸入し販売しております。中外ファーマ・ヨーロッパ・リミテッド及び中外ファーマ・ユー・ケー・リミテッドが英国における販売活動を、中外ファーマ・フランス・エスエーエスがフランスにおける販売活動を、中外ファーマ・ジャーマニー・ジーエムビーエイチがドイツにおける販売活動を行っております。

台湾において、台湾中外製薬股份有限公司が医薬品の販売を行っております。

中国においては、日健中外製薬有限公司が医薬品の販売を行い、医薬品学術情報を提供しております。また、泰州日健中外製薬工業有限公司が医薬品の生産を行っております。

海外での研究開発活動は、中外ファーマ・ユー・エス・エー・インコーポレーテッド(米国)、中外ファーマ・ヨーロッパ・リミテッド(英国)、日健中外製薬有限公司(中国)及び台湾中外製薬股份有限公司(台湾)が医薬品の開発・申請業務を、中外ファーマボディ・リサーチ・ピーティーイー・リミテッド(シンガポール)が医薬品の研究を行っております。

また、2023年7月に中外ベンチャー・ファンド・エルエルシー(米国)を設立しました。

 

 

企業集団の関係概要図は次のとおりであります。

2023年12月31日現在

※画像省略しています。

・子会社のうち、上場している会社はありません。

・2023年7月に中外ベンチャー・ファンド・エルエルシーを設立しております。

 

24/03/28

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

(単位:億円)

 

2023年
12月期実績

2022年
12月期実績

前年同期比

連結損益(Core実績)

売上収益

11,114

11,678

△4.8

製商品売上高

9,745

10,392

△6.2

その他の売上収益

1,369

1,286

+6.5

売上原価

△4,120

△4,750

△13.3

売上総利益

6,994

6,928

+1.0

研究開発費

△1,628

△1,437

+13.3

販売費及び一般管理費

△1,020

△988

+3.2

その他の営業収益(費用)

161

14

12

営業利益

4,507

4,517

△0.2

当期利益

3,336

3,177

+5.0

 

連結損益(IFRS実績)

売上収益

11,114

12,597

△11.8

営業利益

4,392

5,333

△17.6

当期利益

3,255

3,744

△13.1

 

Core EPS(円)

202.71

193.11

+5.0

Core 配当性向(%)

39.5

40.4

 

 

 

<連結損益の概要(IFRSベース)>

当連結会計年度の売上収益は11,114億円(前年同期比11.8%減)、営業利益は4,392億円(同17.6%減)、当期利益は3,255億円(同13.1%減)となりました。これらには当社が管理する経常的業績(Coreベース)では除外している無形資産の償却費16億円、無形資産の減損損失51億円及び事業所閉鎖に伴う固定資産売却益を含む事業所再編費用等55億円(収益)、早期退職優遇措置に関わる費用103億円が含まれています。なお、前年第1四半期に当社とアレクシオン ファーマスーティカルズ インコーポレーテッドとの間において締結した和解契約による一時金収入等907億円を計上したことによる単発的な影響により売上収益、営業利益、当期利益は前年同期比で減少しています。上記以外の前年同期との比較については<連結損益の概要(Coreベース)>をご覧ください。

 

<連結損益の概要(Coreベース)>

当連結会計年度の売上収益は、その他の売上収益が伸長したものの、製商品売上高が減少し、11,114億円(前年同期比4.8%減)となりました。

 

売上収益のうち、製商品売上高は9,745億円(同6.2%減)となりました。国内製商品売上高は、新製品のポライビー、バビースモ等の順調な伸長に加え、主力品のエンスプリング、ヘムライブラ、テセントリク等が好調に推移したものの、ロナプリーブの政府納入による売上の大幅な減少や、薬価改定、後発品浸透の影響を受けたことにより前年比で減少しました。海外製商品売上高は、ロシュ向けのヘムライブラ輸出及びアレセンサ輸出が大幅に増加したため、前年を上回りました。その他の売上収益は、ヘムライブラに関する収入の増加に加え、一時金収入の増加等により1,369億円(同6.5%増)となりました。製商品原価率は、為替影響の一方で製品別売上構成比の変化等により42.3%と前年同期比で3.4%ポイント改善しました。結果、売上総利益は6,994億円(同1.0%増)となりました。

研究開発費は中外ライフサイエンスパーク横浜の全面稼働を含む創薬・早期開発への投資や、開発プロジェクトの進展に伴う費用の増加等により1,628億円(同13.3%増)、販売費及び一般管理費は諸経費等の増加により1,020億円(同3.2%増)となりました。その他の営業収益(費用)は製品譲渡に係る収益や有形固定資産の売却益が発生し、161億円の収益(前年同期は14億円の収益)となりました。以上から、Core営業利益は前年同期並みの4,507億円(同0.2%減)、Core当期利益は法人所得税の減少及び金融収支等の改善で7期連続の増益を達成し、3,336億円(同5.0%増)となりました。

 

※Core実績について

当社はIFRS移行を機に2013年よりCore実績を開示しております。Core実績とは、IFRS実績に当社が非経常事項と捉える事項の調整を行ったものであります。なお、当社が非経常事項と捉える事項は、事業規模や範囲などの違いによりロシュと判断が異なる場合があります。当社ではCore実績を、社内の業績管理、社内外への経常的な収益性の推移の説明、並びに株主還元をはじめとする成果配分を行う際の指標として使用しております。

株主還元を行う際の指標には、Core EPS及びCore配当性向を指標として使用しております。Core EPSは、Core実績をもとに算出された、当社株主に帰属する希薄化後1株当たり当期利益であり、Core配当性向は、Core EPS対比の配当性向です。

 

※連結経営成績に関する表示方法の変更について

当連結会計年度より、連結経営成績に関する表示方法の変更を行っております。当連結会計年度においては、比較情報である前連結会計年度についても当該変更を適用した金額を表示しております。なお、本変更による営業利益から当期利益までの項目、1株当たり当期利益及びCoreベースの概念への影響はありません。

 

<製商品売上高の内訳>

(単位:億円)

 

2023年
12月期実績

2022年
12月期実績

前年同期比

製商品売上高

9,745

10,392

△6.2

国内製商品売上高

5,580

6,547

△14.8

オンコロジー領域

2,602

2,560

+1.6

スペシャリティ領域

2,978

3,986

△25.3

海外製商品売上高

4,165

3,846

+8.3

 

 

[国内製商品売上高]

国内製商品売上高は、新製品及び主力品が好調に市場浸透したものの、ロナプリーブの政府納入の大幅な売上減少や薬価改定、後発品浸透の影響により、5,580億円(前年同期比14.8%減)となりました。

 

オンコロジー領域の売上は、2,602億円(同1.6%増)となりました。後発品浸透及び薬価改定の影響、並びに競合状況の変化により、抗悪性腫瘍剤/抗VEGFヒト化モノクローナル抗体「アバスチン」、抗悪性腫瘍剤/抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「ハーセプチン」、抗悪性腫瘍剤/抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体「カドサイラ」などの売上が減少したものの、新製品の抗悪性腫瘍剤/微小管阻害薬結合抗CD79bモノクローナル抗体「ポライビー」の売上が大幅に増加し、主力品の抗悪性腫瘍剤/抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク」も堅調に推移しました。

スペシャリティ領域の売上は、2,978億円(同25.3%減)となりました。新製品の眼科用VEGF/Ang-2阻害剤抗VEGF/抗Ang-2ヒト化二重特異性モノクローナル抗体「バビースモ」や脊髄性筋萎縮症治療剤「エブリスディ」が順調に伸長したことに加え、主力品のpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体「エンスプリング」や血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤抗血液凝固第Ⅸa/Ⅹ因子ヒト化二重特異性モノクローナル抗体「ヘムライブラ」が引き続き好調に推移しました。また抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」の売上がインフルエンザの流行により大幅に増加しました。一方、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入は売上が大幅に減少し、薬価改定及び後発品浸透の影響により、骨粗鬆症治療剤「エディロール」や持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ」などの売上が減少しました。

 

[海外製商品売上高]

海外製商品売上高は4,165億円(前年同期比8.3%増)となりました。ロシュ向け輸出については、「ヘムライブラ」や抗悪性腫瘍剤/ALK阻害剤「アレセンサ」が前年比で大幅に増加しました。

 

 

② 財政状態の状況

(単位:億円)

 

2023年
期末実績

2022年
期末実績

前期末比

純営業資産(NOA)及び純資産

純運転資本

4,226

5,516

△1,290

長期純営業資産

4,783

4,478

305

純営業資産(NOA)

9,009

9,993

△984

ネット現金

7,390

5,031

2,359

その他の営業外純資産

△143

△781

638

純資産合計

16,256

14,244

2,012

 

連結財政状態計算書(IFRS実績)

資産合計

19,325

18,698

627

負債合計

△3,070

△4,454

1,384

純資産合計

16,256

14,244

2,012

 

 

当連結会計年度末における純営業資産(NOA)は前連結会計年度末に比べ984億円減少し、9,009億円となりました。うち、純運転資本は、ロナプリーブ等の営業債権の減少などにより前連結会計年度末に比べ1,290億円減少4,226億円となりました。また、長期純営業資産は主に藤枝工場における合成原薬製造棟(FJ3)等への投資により前連結会計年度末から305億円増加し、4,783億円となりました。

次項「③ キャッシュ・フローの状況」で示すとおり、有価証券や有利子負債を含むネット現金は前連結会計年度末に比べ2,359億円増加し、7,390億円となりました。その他の営業外純資産は、主に未払法人所得税の減少により前連結会計年度末から638億円増加し、△143億円となりました。

これらの結果、純資産合計は前連結会計年度末に比べ2,012億円増加し、16,256億円となりました。

 

※純営業資産(NOA)及び純資産について

連結財政状態計算書は国際会計基準第1号「財務諸表の表示」に基づいて作成しております。一方で、純営業資産(NOA)及び純資産は、連結財政状態計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、純営業資産(NOA)及び純資産にはCore実績のような除外事項はありません。

 

※純営業資産(NOA)について

純営業資産(NOA:Net Operating Assets)は金融取引や税務上の取引とは独立に当社グループの業績を評価することを可能としております。純営業資産は純運転資本及び有形固定資産、使用権資産、無形資産等を含む長期純営業資産から引当金を控除することで計算しております。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

(単位:億円)

 

2023年
12月期実績

2022年
12月期実績

前年同期比

フリー・キャッシュ・フロー

営業利益

4,392

5,333

△17.6

調整後営業利益

4,915

5,706

△13.9

営業フリー・キャッシュ・フロー

5,401

3,084

+75.1

フリー・キャッシュ・フロー

3,638

1,664

+118.6

ネット現金の純増減

2,359

311

+658.5

 

連結キャッシュ・フロー計算書(IFRS実績)

営業活動によるキャッシュ・フロー

4,099

2,436

+68.3

投資活動によるキャッシュ・フロー

△373

△1,455

△74.4

財務活動によるキャッシュ・フロー

△1,393

△1,456

△4.3

現金及び現金同等物の増減額

2,365

△456

現金及び現金同等物の期末残高

4,587

2,222

+106.4

 

 

営業利益から、営業利益に含まれる減価償却費などのすべての非現金損益項目及び純営業資産に係るすべての非損益現金流出入を調整した調整後営業利益は、4,915億円(前年同期比13.9%減)となりました。

有形固定資産の取得による支出719億円等があった一方で、純運転資本等の減少1,306億円等により、営業フリー・キャッシュ・フローは5,401億円(同75.1%増)の収入となりました。純運転資本等の減少要因は前項「② 財政状態の状況」に記載したとおりです。

営業フリー・キャッシュ・フローから法人所得税1,761億円を支払ったこと等により、フリー・キャッシュ・フローは3,638億円(同118.6%増)の収入となりました。

フリー・キャッシュ・フローから配当金の支払1,316億円等を調整したネット現金の純増減は2,359億円の増加となりました。

また、有価証券及び有利子負債の増減を除いた現金及び現金同等物は2,365億円増加し、当期末残高は4,587億円となりました。

 

※フリー・キャッシュ・フロー(FCF)について

連結キャッシュ・フロー計算書は国際会計基準第7号「キャッシュ・フロー計算書」に基づいて作成しております。一方で、FCFは、連結キャッシュ・フロー計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、FCFにはCore実績のような除外事項はありません。

 

※連結キャッシュ・フロー計算書に関する表示方法の変更について

当連結会計年度より、連結キャッシュ・フローに関する表示方法の変更を行っております。当連結会計年度においては、比較情報である前連結会計年度についても当該変更を適用した金額を表示しております。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産の状況

当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

1,128,272

0.8

合計

1,128,272

0.8

 

(注)IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は売価換算(仕切単価ベース)であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。

 

b. 商品仕入実績

当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の商品仕入実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

3,557

18.2

合計

3,557

18.2

 

(注)IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は実際仕入高であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。

 

c. 受注の状況

当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

d. 販売の状況

当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

1,111,367

△11.8

合計

1,111,367

△11.8

 

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

当連結会計年度

前連結会計年度

販売高
(百万円)

割合
(%)

販売高
(百万円)

割合
(%)

エフ・ホフマン・ラ・
ロシュ・リミテッド

511,881

46.1

482,737

41.3

厚生労働省

85,542

7.7

203,655

17.4

アルフレッサ株式会社

81,155

7.3

91,655

7.8

 

2.IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は百万円未満を四捨五入して記載しております。

3.販売高は売上収益(製商品売上高とその他の売上収益)であります。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況 及び ② 財政状態の状況」に記載しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、これまで、運転資金並びに設備投資及び研究開発活動を自己資金で充当しております。2021年度に始動しましたTOP I 2030 は「R&Dアウトプットの持続的な創出」に代表されるイノベーションへの継続的な経営資源の配分を掲げています。引き続き資金流動性の確保と事業活動から創出されるキャッシュ・インフローの最大化に努めるとともに、継続的なイノベーション投資に必要な財務健全性を維持していく方針です。また、計画外の急な資金需要が生じた場合の財源につきましては、金融機関からの借入や短期社債等を利用するなどの体制を整えており、既存の手許資金も含めて十分な流動性を確保しております。

今後についても資本財源は事業活動を通じて獲得した資金を基盤とする方針であり、継続的なイノベーションへの投資を通じ、持続的な企業価値の向上を目指す方針です。なお、資本配分としての配当につきましては、継続的で安定的な配当の実施を目標としており、Core EPS 対比45%(5年平均)を目安としております。

 

③ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度においては、Core売上収益は、ロシュ向け輸出や国内における新製品・主力品の市場浸透が好調だったことから、11,114億円(公表予想比3.9%増)となり、2年連続で1兆円を超えました。製商品原価率は、製品別売上構成比の変化等により42.3%(同1.7%pts減)、研究開発費・販売費及び一般管理費・その他の営業収益(費用)の合計は2,487億円(同0.5%減)となりました。この結果、Core営業利益は4,507億円(同8.6%増)となりました。また、長期にわたる投資効率の指標として重点的に管理することとしているCore ROICの実績は、前年と概ね同水準の34.6%となりました。

 

2021年に開始した成長戦略「TOP I 2030」の3年目となる2023年は、創薬、開発、製薬、Value Delivery、成長基盤という5つの改革分野において、概ね順調な進展が見られました。

創薬においては、現在のところ、R&Dアウトプット倍増という非常にチャレンジングな目標に対して、種々の取り組みが進捗しておりますが、目標達成のためには更なる強化の余地があると考えています。現在、抗体、低分子に続く第3のモダリティとして中分子医薬品開発に取り組んでおり、初の中分子プロジェクトであるLUNA18の臨床試験において、経口投与での吸収(血中移行)を確認しました。最大耐用量の取得に時間を要しているため、ePoC取得は期初に目指していた2024年より遅延する見込みです。なお、研究段階含む中分子プロジェクト数が増加するなど、中分子ポートフォリオの拡充は、順調に進展しております。また、自社の強みとする抗体医薬品においても、次世代抗体技術の開発とプロジェクトの創出が進んでおります。このような自社での創薬研究を加速すべく、2023年4月に全面稼働した「中外ライフサイエンスパーク横浜」では、クライオ電子顕微鏡をはじめ、ロボティクスやAI等のデジタル基盤を活用した、創薬力を最大限に発揮する体制を整備しました。加えて、オープンイノベーションを加速すべく、創薬スタートアップ企業等への投資を目的にした、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である「Chugai Venture Fund, LLC」を設立いたしました。このように種々の取り組みは進捗しておりますが、先に述べたチャレンジングな目標達成に対して、これらの取り組みを元に、さらに外部連携やデジタル活用を推進してまいります。

 

開発については、2023年は合計4プロジェクトが承認・発売され、新薬・適応拡大を含め8プロジェクトが承認申請に移行しました。また、ロシュ品・自社品含めて計5プロジェクトの第Ⅲ相国際共同治験、7プロジェクトの第Ⅰ相臨床試験を開始しました。また、複数のプロジェクトで承認取得前からの複数疾患同時開発を準備・実施しており、製品価値最大化に取り組んでおります。

製薬では、R&Dアウトプット倍増及び効率的な生産体制の実現を目指して、宇都宮・浮間両工場において複数の設備投資の意思決定を行いました。宇都宮工場においては、臨床開発から初期商用までのバイオ原薬生産を行う「UT3」で、従来のバッチ生産方式に加え、灌流培養の導入などによる連続生産機能を実装し、次世代バイオ医薬品工場の実現に向けた基盤強化を推進いたします。また初期商用向けの新規注射剤棟である「UTA」では、スマートファクトリーの実現を目指し、生産オペレーションを支えるデジタル基盤(SPIRITS)を展開するほか、ロボティクスの活用により生産性向上を目指しています。浮間工場においては、臨床開発から初期商用までのバイオ原薬製造棟である「UK3」の生産能力を3倍に増強することで、バイオ原薬の供給スピード・フレキシビリティ向上を目指しています。なお、両工場とも、当社が掲げる中期環境目標2030の達成に寄与する製造設備といたします。

Value Deliveryにおいては、多様化する顧客ニーズに対応すべく、医療関係者や患者さんが求める情報を的確かつ迅速に提供する体制の強化が進んでおり、顧客満足度調査において高く評価をいただいております。また、個別化医療に資する独自エビデンスの創出を目指し、社内外データの統合的な活用にも継続して取り組んでいます。

成長基盤は、「人・組織」について、経営課題の推進とセカンドキャリアを考える従業員への支援の両面を目的として、早期退職優遇措置を実施し、374名が応募しました。新薬創出力の高度化や全てのバリューチェーン効率化の柱である「デジタル」については、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に4年連続で選定されるとともに、「DXプラチナ企業2023-2025」にも選定されました。世界水準でのサステナブル基盤としての「環境」については、2030年の環境目標を設定し、種々の取り組みを行っており、概ね順調に進捗しておりますが、廃棄物の削減については達成に向けた課題があり、検討を継続しております。なお、サステナビリティにおいて重要な指標である「Dow Jones Sustainability Index World」に4年連続で選定されました。その他、質と効率を両立する次世代クオリティマネジメントを目指す「クオリティ」も着実に対応するとともに、「インサイトビジネス」では、子宮内膜症における痛みのデータを活用したバーチャルケアに向け、Biofourmis社と新たなパートナーシップを締結しました。これらの活動を通して、イノベーション創出に必要な成長基盤の強化を図っています。

 

※ROICについて

投下資本利益率(ROIC:Return On Invested Capital)は事業活動のために投じた資金(投下資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益に結びつけているかを知ることができます。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループはIFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 1.重要な会計方針等 (2)重要な会計上の判断、見積り及び前提」に記載のとおりです。