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最終更新:

E22024 Japan GAAP

売上高

4.28億 円

前期

4.48億 円

前期比

95.6%

時価総額

33.7億 円

株価

105 (04/19)

発行済株式数

32,128,012

EPS(実績)

-25.29 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

676.0万 円

前期

609.8万 円

前期比

110.9%

平均年齢(勤続年数)

50.6歳(10.6年)

従業員数

19人(連結:21人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは、当社及び連結子会社日本革新創薬株式会社(以下、「JIT」)の2社で構成されており、プロテインキナーゼ(*)阻害剤(*)を中心とした医薬品の研究開発を行い、開発品を製薬会社等にライセンスアウトすることによって収益を獲得する創薬事業を展開しております。

 

 当社グループ事業の系統図は以下のとおりです。

 

※画像省略しています。

 

(1)創薬事業について

① 新薬開発の流れ

 一般的に新薬の開発に際しては、基礎研究、非臨床試験、臨床試験、厚生労働省(あるいはアメリカ食品医薬品局(FDA)等の各国の医薬品許認可審査機関)への製造(輸入)承認申請、医薬品としての承認取得、薬価申請・収載を経て販売が開始され、患者様へ提供することが可能となります。このうち基礎研究活動は、新薬候補化合物の合成、スクリーニング(*)、スクリーニング毒性(*)の手続により実施されます。前述の基礎研究活動が終了した後、人に対する臨床試験の前に医薬品として満たすべき条件を、実験動物を用いて副作用及び安全性、安定性の検証を行う非臨床試験によって検証します。その後の臨床試験は、第Ⅰ相臨床試験、第Ⅱ相臨床試験、第Ⅲ相臨床試験の段階をもって実施されます。(下図参照)

 

※画像省略しています。

 

② 創薬事業の概要

 通常、新薬の研究開発過程において、非臨床試験から臨床試験へと開発が進捗するにしたがって、開発コストは大幅に増加し、また一定規模以上の自社臨床開発体制が必要となります。

 当社グループは、研究開発活動の結果として、比較的早期の開発段階において開発品を製薬会社等へライセンスアウトしておりますが、これにより、臨床開発の推進に強みを持つ製薬会社等が開発を行うこととなり、自社での開発を継続する場合に比べて、低コストでの開発体制を維持できます。

 このように、当社グループの創薬事業の特徴は、一般的な医薬候補品を開発するベンチャー企業に比べ、比較的早期の研究開発段階においてライセンスアウトが達成される点にありますが、これは、当社グループが基礎研究推進における独自の技術力を有していることと、その技術を基礎研究段階において十分に活用することにより効率的な研究開発が行われていることが要因と考えております。

 当社グループの売上高は、主にライセンスアウト時に受領するフロントマネー収入、臨床開発進行に伴いその節目毎に受領するマイルストーン収入、製品上市(*)後販売額の一定比率を受領するロイヤリティ収入等によるものです。既に「リパスジル塩酸塩水和物(グラナテック点眼液0.4%(以下、「グラナテック」)、グラアルファ配合点眼液(以下、「グラアルファ」)及び「K-321」)」、「DW-1002」及び「DW-1001」はいずれも製薬会社にライセンスアウト済みであり、「グラナテック」、「グラアルファ」及び「DW-1002(欧州・米国等)」については、上市されロイヤリティ収入を得ております。これらのフロントマネー収入、マイルストーン収入、ロイヤリティ収入等を新規開発プロジェクトに投入することによって、次なる新規開発品の開発を進めております。

 

※画像省略しています。

当社グループの主な売上高は、以下のもので構成されております。

売上高

内容

フロントマネー収入

ライセンスアウト時に受領する収入。契約締結時に発生するため、契約一時金とも言う。

マイルストーン収入

臨床開発進行に伴いその節目毎に受領する収入。

ロイヤリティ収入

製品上市後販売額の一定比率を受領する収入。特許を実施する際に得られる収入のため実施料、ライセンス料とも言う。

 

③ 開発パイプラインについて

 現在、当社グループが保有する開発パイプラインは以下のとおりです。

(イ)上市品

製品名等

対象疾患

地域

ライセンスアウト先

リパスジル塩酸塩水和物

グラナテック点眼液0.4%

緑内障・高眼圧症(*)

日本、アジア(注)

興和

リパスジル塩酸塩水和物/ブリモニジン酒石酸塩

グラアルファ配合点眼液

緑内障・高眼圧症

日本

DW-1002

ブリリアントブルーG

ILM-Blue、TissueBlue™

内境界膜染色

欧州・米国等

DORC

ブリリアントブルーG/トリパンブルー

MembraneBlue-Dual

内境界膜、網膜上膜及び増殖硝子体網膜症における増殖膜染色

欧州等

(注)アジア一部地域において上市されております。

 

(ロ)開発パイプライン

開発コード等

対象疾患

開発段階

地域

ライセンスアウト先

K-321

リパスジル塩酸塩水和物

フックス角膜内皮変性症(*)

第Ⅲ相臨床試験

米国、欧州等

興和

DW-1002

ブリリアントブルーG

内境界膜染色

申請

中国

DORC

第Ⅲ相臨床試験

日本

わかもと製薬

水晶体前嚢染色

第Ⅲ相臨床試験

日本

ブリリアントブルーG/トリパンブルー

内境界膜及び網膜上膜染色

申請準備中

米国

DORC

DW-1001

眼科用治療剤(非開示)

第Ⅰ相臨床試験

日本

ロート製薬

H-1337

緑内障・高眼圧症

後期第Ⅱ相臨床試験

米国

自社開発

DW-5LBT

帯状疱疹後の神経疼痛

申請

米国

メドレックスと共同開発

DWR-2206

水疱性角膜症(*)

非臨床試験

日本

アクチュアライズと共同開発

 

各開発パイプラインの詳細は以下のとおりです。

(イ)リパスジル塩酸塩水和物

(a)グラナテック点眼液0.4%(対象疾患:緑内障・高眼圧症)

 本開発品は、プロテインキナーゼ(*)の一種であるRhoキナーゼ(*)を選択的に阻害するイソキノリンスルホンアミド化合物(*)であり、眼圧下降作用により緑内障・高眼圧症を治療する点眼剤です。緑内障治療剤における世界初の作用機序(*)を有しており、Rhoキナーゼを阻害することにより、線維柱帯-シュレム管を介する主流出路からの房水流出を促進することで眼圧を下降させます。

 当社は、2002年に本開発品の全世界の権利を興和株式会社(以下、「興和」)にライセンスアウトいたしました。その後は興和により臨床試験が進められ、2014年に緑内障・高眼圧症を適応症として国内上市されました。さらに、海外展開も進められ、アジア一部地域において承認取得、販売開始されております。

(b)K-321(対象疾患:フックス角膜内皮変性症)

 Rhoキナーゼ阻害剤(*)であるグラナテックは、眼内にあるキナーゼに作用する可能性があることが示唆されており、他眼科疾患への適応可能性が検討されておりました。適応拡大に向けた取り組みとして、2019年に米国第Ⅱ相臨床試験のIND申請(治験許可申請)がなされ、興和にてフックス角膜内皮変性症を適応症とした試験が行われました。その後、2022年に米国第Ⅲ相臨床試験が開始され、2023年3月に米国を含めたグローバル第Ⅲ相臨床試験が開始されました。フックス角膜内皮変性症は病態の進行にともない角膜内皮障害に至ります。重度の視覚障害を有する角膜内皮疾患のこれまでの治療法は角膜移植であり、有効な治療薬の開発が望まれています。

(c)グラアルファ配合点眼液(対象疾患:緑内障・高眼圧症)

 本開発品は、リパスジル塩酸塩水和物とブリモニジン酒石酸塩を含有する世界で初めての組み合わせの配合点眼剤です。2020年より、興和にて緑内障・高眼圧症を適応症として国内第Ⅲ相臨床試験が行われ、2022年に国内上市されました。緑内障の治療は、多剤併用が標準的な治療法となりつつあります。本開発品により、アドヒアランスの向上が期待され、緑内障患者様の治療に貢献できるものと考えております。

 

(ロ)DW-1002(単剤の対象疾患:内境界膜染色、水晶体前嚢染色、配合剤の対象疾患:内境界膜、網膜上膜及び増殖硝子体網膜症における増殖膜染色)

 本開発品は、国立大学法人九州大学の研究グループが発見したBBG250(Brilliant Blue G-250)という染色性の高い色素を主成分とした眼科手術補助剤について、独占的ライセンスに基づき開発している開発品で、眼内にある内境界膜又は水晶体を保護するカプセルを一時的に安全に染色し、硝子体・白内障(*)の手術を行いやすくするものです。当社は、2017年に本事業を譲受いたしました。

 日本以外の全世界向けの独占的なサブライセンスをDutch Ophthalmic Research Center International B.V.(以下、「DORC」)に付与しており、DORCは2010年から欧州等において、硝子体手術時の内境界膜染色を対象とした単剤(ブリリアントブルーG)並びに硝子体手術時の内境界膜、網膜上膜及び増殖硝子体網膜症における増殖膜染色を対象とした配合剤(ブリリアントブルーG/トリパンブルー)を製造・販売しております。2020年には米国においても単剤の販売を開始し、現在は、欧州・米国を含む世界76の国と地域で販売されております。また、単剤は2023年5月に中国へ承認申請し、さらに、配合剤は7月に米国でオーファンドラッグ指定を受けました。

 国内については、わかもと製薬株式会社(以下、「わかもと製薬」)に独占的サブライセンスを付与しており、わかもと製薬は硝子体手術時の内境界膜染色、白内障手術時の水晶体前嚢染色を対象として、製造販売承認取得に向けて開発を進めております。

 

(ハ)DW-1001(対象疾患:非開示)

 本開発品は、2015年に英国企業から導入した眼科用治療剤です。

 他の疾患を適応症として既に市販されている化合物を眼科適応への適応拡大を目指す、いわゆるリポジショニングの手法での開発を目指しており、開発のコスト並びにリスクは相対的に低くなることが期待されます。

 2019年に日本における独占的実施権をロート製薬株式会社(以下、「ロート製薬」)にライセンスアウトいたしました。ロート製薬では、非臨床試験を進め、2022年に国内第Ⅰ相臨床試験が良好な結果で終了いたしました。現在、国内第Ⅱ相臨床試験の準備が進められております。

 

(ニ)H-1337(対象疾患:緑内障・高眼圧症)

 本開発品は、プロテインキナーゼ阻害剤を中心とする当社化合物ライブラリー(*)のシード化合物を基にして最適化された、緑内障・高眼圧症を対象疾患とする開発品です。当社初となる自社臨床開発を行っており、2018年に米国第Ⅰ相/前期第Ⅱ相臨床試験を終了いたしました。試験結果は良好で、有効性の主要評価項目で本開発品の有効性が確認され、安全性に関して重篤な有害事象は認められませんでした。2023年8月に米国後期第Ⅱ相臨床試験の投与を開始しております。

 また、適応拡大の研究を進めており、滲出型加齢黄斑変性に対する治療効果、並びに肺高血圧に対する治療効果も動物試験において確認されております。

 

(ホ)DW-5LBT(対象疾患:帯状疱疹後の神経疼痛)

 本開発品は、イオン液体を利用した株式会社メドレックス(以下、「メドレックス」)の独自技術ILTS(Ionic Liquid Transdermal System)を用いた新規のリドカイン(*)テープ剤であり、リドカインパップ剤Lidodermの市場をターゲットとして開発が進められております。メドレックスが帯状疱疹後の神経疼痛治療薬として開発を進めており、当社は2020年に共同開発を開始いたしました。2020年に米国FDA(米国食品医薬品局)に承認申請いたしましたが、2021年に審査完了報告通知を受領いたしました。承認取得のために必要であると指摘を受けた追加試験は良好な結果で終了しており、2023年3月に再申請を行いましたが、9月に審査完了報告通知を受領したため、FDA指摘事項に対応し、2024年1月に再度申請を行いました。

 

(ヘ)DWR-2206(対象疾患:水疱性角膜症)

 本開発品は、水疱性角膜症を適応症とした再生医療用細胞製品で、培養ヒト角膜内皮細胞とROCK阻害剤を含有した懸濁液を前房内に注入し、角膜内皮の再生の治療に用いられます。アクチュアライズ株式会社が開発を進めており、当社は2022年に共同開発を開始いたしました。当社初となる再生医療品であり、現在、国内臨床試験に向けた準備を進めております。

 

④ 研究プロジェクトについて

 当社グループは、プロテインキナーゼ阻害剤を中心とした新薬候補化合物の創出を行っております。プロテインキナーゼを対象とする疾患は様々ですが、特に眼科関連疾患に注力した研究を推進しております。また、自社の創薬基盤技術を活かし、他社との提携を積極的に推進しております。

主なプロジェクトとしては、眼科関連疾患や神経系、呼吸器系疾患等を対象としたシグナル伝達阻害剤開発プロジェクトを当社開発研究所(国立大学法人三重大学の研究施設)において行っております。また、共同研究として、ユビエンス株式会社との標的タンパク質(*)分解誘導薬プロジェクト、ラクオリア創薬株式会社との眼疾患治療薬創製プロジェクト等、複数のプロジェクトを進めております。

 

⑤ 創薬事業における当社グループ技術と研究開発の特徴について

 創薬事業における当社グループ技術と研究開発の特徴は以下のとおりです。

 

(イ)プロテインキナーゼ阻害剤を中心とした新薬候補化合物の創製

 当社グループは主にプロテインキナーゼ阻害剤を中心とした研究開発を進めております。

 プロテインキナーゼは、細胞の分化、増殖等の細胞内情報伝達(*)機能を担っている重要な酵素であるとされており、そのプロテインキナーゼに対し、有望な新薬候補品である阻害剤を投与することによって治療効果を高めるのが当社グループの開発の特徴であります。

 当社は、有望な新薬候補品を創製するために、独自に開発した化合物ライブラリーを保有しており、これらの開発過程で蓄積したデータやノウハウを活用して、新薬候補化合物を合成しておりますが、これらの技術力が高いことから有効な新薬候補化合物が見つかる可能性が高いと考えております。

 

(ロ)当社独自の標的タンパク質の同定(*)方法であるドラッグ・ウエスタン法(*)の活用

 当社は、ドラッグ・ウエスタン法という独自に開発した方法を使って、新薬候補化合物の標的タンパク質を同定しております。生物学の分野では、標的タンパク質を同定するために様々な方法が利用されてきましたが、当社は、それらを踏まえて医薬品開発への応用を図り、ドラッグ・ウエスタン法を完成させました。

 この方法の活用により、他の手法を活用した際に困難である新薬候補化合物の標的タンパク質の特定が容易になるほか、1回のスクリーニングで多数の標的タンパク質を同定することが可能です。既存の方法に対して、生物材料や化合物の消費量が少ないこと、スクリーニングの操作が単純であり短時間で完了すること等の長所を持ちます。

 ドラッグ・ウエスタン法を活用した際の効果は、以下のとおりと考えられます。

 

a. 有効性:高い有効性を持つ新薬候補化合物の開発の可能性が高まります。新薬候補化合物の標的タンパク質を早期に同定することによって、その新薬候補化合物の作用機序が明らかになり、その結果から、有効な新薬候補化合物の開発へとつなげていくことが可能になると考えております。

 

b. 安全性:副作用や他の医薬品との相互作用の予測により、高い安全性を持つ新薬候補化合物の開発の可能性が高まります。早期に標的タンパク質を同定することによって、副作用が起こるメカニズムの推測もしやすくなり、それにより、安全性の高い新薬候補化合物の開発が可能となります。また、作用メカニズムが明らかになることにより、他の薬剤との併用の可能性の分析がしやすくなり、薬としての利用機会の拡大とリスクの低減につながりやすいと考えます。

 

(ハ)細胞内情報伝達研究に由来する分子薬理学(*)に関する経験及びノウハウの活用

 当社グループの創業者は、長年にわたって細胞内情報伝達の研究活動及び創薬活動に従事してきており、その研究・創薬活動の中で、これまでに製薬会社と共同で2つの上市薬の誕生に貢献しております。当社グループは、こうした活動において獲得した経験とノウハウを基盤に、研究開発活動を行い、2014年には当社設立以来初の上市薬が誕生いたしました。

 当社グループの新薬の開発は、この分子薬理学に関する経験及びノウハウを駆使し、新薬候補化合物を設計し、合成することによって開始されております。ここで合成された新薬候補化合物の薬理学的傾向は、過去の分子薬理学に関する経験及びノウハウからある程度予測することが可能であるため、その予測を基に効率的な研究開発が可能になると考えております。

 

(ニ)提携関係を活用した研究開発体制

 当社グループは、国立大学法人三重大学との産学官連携講座(後述「第一部 企業情報 第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」参照)による共同研究等の提携関係を構築し、技術の取り込みを図り研究活動を進めております。また、研究開発の推進に向けては、業務受託企業等外部の企業を積極的に活用しております。こうした企業外部との提携関係を活用することによって、効率的な研究開発体制を構築することが可能となっております。

 

当社グループと外部機関との関係図(研究開発体制)

※画像省略しています。

 

 

<用語解説>(アルファベット、あいうえお順)

 

* Rhoキナーゼ

 タンパク質リン酸化(*)酵素(プロテインキナーゼ)の一つであり、Rho-ROCK経路を介する多彩な細胞応答の制御機構に関与する酵素です。

 

* イソキノリンスルホンアミド化合物

 当社が開発している化合物の有する骨格(形)の名称です。

 

* 化合物ライブラリー

 当社が長年にわたり蓄積してきた新薬候補化合物のタネとなる化合物群です。これらの化合物の一つ一つが特徴的な性質を有しており、基礎研究や新薬候補化合物発見に利用されます。

 

* 細胞内情報伝達

 神経刺激やホルモン等の細胞外からのシグナル(信号)を細胞内の必要な箇所へ伝えるシステムのことを言います。細胞内シグナル伝達とも言います。

 

* 作用機序

 薬物が作用する仕組みのことを言います。近年では薬物作用の明確化の重要性が高まっており、この作用機序の解明が新薬開発において注目されております。

 

* 上市(じょうし)

 新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)ことを言います。

 

* 水疱性角膜症

 角膜内皮細胞が障害を受け、角膜浮腫が起こり、角膜が白く濁って視力が著しく低下する病気。フックス角膜内皮ジストロフィ、白内障や緑内障等の眼科手術により角膜内皮細胞が減少することが原因にあげられます。治療法は角膜移植手術になります。

 

* スクリーニング

 新薬を開発するには、多数の候補化合物の中から、効果があり安全性が高いものを選び出すことが必要となります。このような多数の化合物から新薬の候補を探す一連の流れをスクリーニングと言います。

 

* スクリーニング毒性

 細菌を用いる復帰突然変異試験(化学物質による、発癌性を含めた遺伝子に与える変化である変異原性を、細菌を用いてテストする試験)、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験(明確な染色体構造を持たない細菌においては、染色体異常を検出できないため、人為的に生体外で培養したほ乳動物の細胞を用いて、染色体に対する遺伝毒性がないかをテストする試験)及びほ乳類を用いる28日間の反復毒性試験(ラット等の動物に一定期間毎日反復投与したときに現れる生体機能及び形態の変化を観察する試験)によって検出される毒性を指します。

 

* 阻害剤

 生体内の様々な酵素分子に結合して、その酵素の活性を低下もしくは消失させる物質を指します。化学物質が特定の酵素の活性を低下もしくは消失させることにより、病気の治療薬として利用されることがあります。

 

* タンパク質リン酸化

 タンパク質にリン酸基を移転する化学反応であり、タンパク質の働きを調節すると考えられております。

 

* 同定

 単離した化学物質等の標的が何であるかを決定することを指します。

 

* ドラッグ・ウエスタン法

 薬物の標的タンパク質の同定に用いられる手法で、当社がバイオテクノロジーを応用して発明し、特許を有しておりました。煩雑なタンパク質精製プロセスを介さずに、薬物が結合する少量のタンパク質を検出し、その遺伝子を特定することにより標的タンパク質を同定することができる方法です。

 

* 白内障

 水晶体が白く濁り、視力障害を引き起こす病気です。主な原因は加齢によるもので、症状が進行している場合には、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する手術が行われます。日本では年間およそ120万件の手術が行われています。

 

* 標的タンパク質

 薬物が作用する対象となるタンパク質を標的タンパク質と呼びます。生体においては多くのタンパク質が相互に作用することによって様々な機能を果たしており、多くの病気が特定のタンパク質の異常な働きによって引き起こされております。これらの病気には、これらのタンパク質を標的タンパク質として、その異常な動きを抑制する薬剤が有効となりうると考えられております。

 

* フックス角膜内皮変性症

 角膜内皮細胞に障害がおき、角膜浮腫・混濁が生じ、視力が低下していく疾患です。欧米で多くみられ、日本では患者数が少ないとされています。現在の治療法は角膜移植しか存在せず、有効な治療薬の開発が望まれています。

 

* プロテインキナーゼ

 ATP(アデノシン三リン酸と言われ、体内で作られる高エネルギー化合物)等、生体においてエネルギーの元となる低分子物質等のリン酸基を、タンパク質分子に転移する(リン酸化)酵素です。一般にリン酸化を触媒する酵素をキナーゼと呼び、特にタンパク質をリン酸化するキナーゼをプロテインキナーゼと言います。

 

* 分子薬理学

 薬理学とは、薬物が生体に対してどのような作用により、影響・効果を発揮しているかを調べたり、薬物を用いて生体の機能を明らかにしたりする学問のことです。分子薬理学とは、その薬理学の調査の対象を生物の化学的性質を失わない最小の構成単位、つまり遺伝子のレベルで調べる学問です。

 

* リドカイン

 神経末端において痛みの信号を遮断することにより痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種です。

 

* 緑内障・高眼圧症

 緑内障とは、視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患です。適切に治療されずに放置すると視野狭窄から失明に至る疾患であり、日本の中途失明原因の第一位(2005年)となっております。また、高眼圧症とは、視野狭窄が無いものの、眼圧が正常値を超えている病態です。

 現在、緑内障のエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は、「眼圧を下降すること」とされており、原発開放隅角緑内障(広義)に対する治療では、薬物治療が第1選択とされております。

24/03/27

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

 当連結会計年度において、当社グループは新薬の継続的な創出と開発パイプラインの拡充を目指し、研究開発活動を推進いたしました。

 上市品(緑内障治療剤「グラナテック点眼液0.4%」、緑内障治療剤「グラアルファ配合点眼液」、眼科手術補助剤「DW-1002」(単剤及び配合剤))については、ライセンスアウト先において順調に販売されております。特に、「DW-1002」は販売数量の増加並びに円安の影響を受け、前期比増収で推移いたしました。

 開発パイプラインについては、ライセンスアウト済み開発品であるフックス角膜内皮変性症治療剤「K-321」が3月にグローバル第Ⅲ相臨床試験を開始いたしました。また、眼科手術補助剤「DW-1002」の単剤は5月に中国へ承認申請し、さらに、配合剤は7月に米国でオーファンドラッグ指定を受けました。共同開発品である神経疼痛治療薬「DW-5LBT」は3月に再申請を行いましたが、9月に審査完了報告通知を受領したため、FDA指摘事項に対応し、2024年1月に再申請を行いました。また、再生医療用細胞製品「DWR-2206」は7月に開発計画を決定し、臨床試験に向けて準備を進めております。自社開発品である緑内障治療剤「H-1337」は8月に米国後期第Ⅱ相臨床試験の投与を開始いたしました。

 研究プロジェクトについては、眼科関連疾患を中心に新薬候補化合物の探索のための研究開発活動及び他社との共同研究を推進いたしました。

 以上の結果、売上高については、各上市品のロイヤリティ収入等により、合計428百万円(前期比4.4%減)を計上し、売上原価に36百万円(前期比33.0%増)を計上いたしました。

 販売費及び一般管理費については、1,190百万円(前期比63.8%増)となりました。その内訳は、研究開発費が「H-1337」及び「DWR-2206」の開発費用の増加等により930百万円(前期比98.2%増)、その他販売費及び一般管理費が259百万円(前期比1.1%増)となりました。

 これらにより、営業損失は798百万円(前期営業損失305百万円)、経常損失は796百万円(前期経常損失295百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は特別損失30百万円を計上したことにより、812百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失429百万円)となりました。

 

② 財政状態の状況

 総資産は、前連結会計年度末から583百万円減少し、2,373百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末から521百万円減少し、2,137百万円となりました。固定資産は、前連結会計年度末から61百万円減少し、235百万円となりました。

 負債は、前連結会計年度末から10百万円増加し、1,093百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末から17百万円減少し、194百万円となりました。固定負債は、前連結会計年度末から27百万円増加し、899百万円となりました。

 純資産は、前連結会計年度末から593百万円減少し、1,279百万円となりました。この結果、自己資本比率は53.9%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、前連結会計年度末に比べ467百万円減少し、1,867百万円となりました。

 なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は586百万円(前期は354百万円の支出)となりました。これは主に未払金の増加額95百万円及び売上債権の減少額53百万円等があった一方で、税金等調整前当期純損失826百万円があったこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は15百万円(前期は139百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出12百万円があったこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は134百万円(前期は867百万円の収入)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出120百万円があった一方で、長期借入れによる収入166百万円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入88百万円があったこと等によるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

(イ)生産実績

 該当事項はありません。

 

(ロ)受注実績

 該当事項はありません。

 

(ハ)販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

創薬事業

428,364

95.6

合計

428,364

95.6

(注)1 当連結会計年度の主な販売実績は、ロイヤリティ収入です。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

Dutch Ophthalmic Research Center International B.V.

220,662

49.2

277,698

64.8

興和株式会社

170,924

38.1

140,336

32.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は下記のとおりであります。なお、当社グループは、創薬事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態の分析

(イ)資産

 総資産は、前連結会計年度末から583百万円減少し、2,373百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末から521百万円減少し、2,137百万円となりました。主な要因は、現金及び預金が467百万円、売掛金が53百万円減少したこと等によるものです。固定資産は、前連結会計年度末から61百万円減少し、235百万円となりました。主な要因は、契約関連無形資産が41百万円、投資有価証券が12百万円減少したこと等によるものです。

 当連結会計年度末における現金及び預金は1,867百万円であり、今後の現金及び預金の残高推移については十分に注視しつつ、研究開発活動を推進してまいります。

 

(ロ)負債

 負債は、前連結会計年度末から10百万円増加し、1,093百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末から17百万円減少し、194百万円となりました。主な要因は、1年内返済予定の長期借入金が110百万円減少した一方で、未払金が97百万円増加したこと等によるものです。固定負債は、前連結会計年度末から27百万円増加し、899百万円となりました。要因は、転換社債型新株予約権付社債が128百万円減少した一方で、長期借入金が156百万円増加したことによるものです。

 当連結会計年度末における借入金の残高は279百万円であり、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。

 

(ハ)純資産

 純資産は、前連結会計年度末から593百万円減少し、1,279百万円となりました。主な要因は、転換社債型新株予約権付社債の転換及び新株予約権の行使等により資本金が117百万円、資本剰余金が117百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が812百万円減少したこと等によるものです。

 この結果、自己資本比率は53.9%となりました。

 

② 経営成績の分析

(イ)売上高、売上原価

 売上高は、「グラナテック」、「グラアルファ」、「DW-1002(欧州・米国等)」のロイヤリティ収入等により、合計428百万円(前期比4.4%減)を計上し、売上原価に36百万円(前期比33.0%増)を計上いたしました。当連結会計年度は契約一時金及びマイルストーン収入がなかったため、売上高は前期比減少しておりますが、ロイヤリティ収入は増加しております。特に「DW-1002」は、販売数量の増加並びに円安の影響を受け、前期比増収で推移いたしました。

 

(ロ)販売費及び一般管理費、営業利益

(a)研究開発費

 当社グループの研究開発費は、自社創製品を発明している基礎研究と保有する全ての開発品の開発を進める臨床開発で使われているものに大別されますが、臨床開発をどのステージまで行うか、どの程度の規模で行うかによって費用が大きく増減します。当連結会計年度における研究開発費は、「H-1337」の米国後期第Ⅱ相臨床試験の費用、「DWR-2206」の開発費用、自社創製品の発明のための基礎研究並びに他社との共同研究を推進したこと等により、930百万円(前期比98.2%増)となりました。

 なお、当社グループのライセンスアウト済みパイプラインの研究開発費は、「DW-1002(日本)」の一部を除いてライセンスアウト先の資金により賄われており、当社グループにおいて研究開発費負担は発生しておりません。

 

(b)その他販売費及び一般管理費

 その他販売費及び一般管理費は、主に研究開発費以外の本社費用等となります。当連結会計年度においては、259百万円(前期比1.1%増)となりました。

 これらにより、営業損失は798百万円(前期営業損失305百万円)となりました。

 

(ハ)経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益

 経常損失は796百万円(前期経常損失295百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は特別損失30百万円を計上したことにより、812百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失429百万円)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。当社グループは、事業活動の結果得られた資金(ライセンス契約に基づくフロントマネー収入、マイルストーン収入及びロイヤリティ収入等)、並びに金融機関からの借入、金融・資本市場からの資金調達により得た資金を主な財源とし、医薬品の研究開発を進めております。新薬開発に関わる研究開発活動は長期間を要するため、資金需要の発生時に機動的に対応できるよう資金の流動性を確保しております。当社グループの現在の財政状態及びキャッシュ・フローの展望を勘案し、自社研究施設は引き続き所有しない方針を継続します。
 なお、当連結会計年度末における借入金の残高は279百万円であります。また、当連結会計年度においては転換社債型新株予約権付社債の発行及び新株予約権の行使による株式の発行による資金調達を行っており、現金及び現金同等物の残高は1,867百万円となっております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と相違する場合があります。なお、連結財務諸表の作成にあたって採用している会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に、以下の重要な会計方針が連結財務諸表の作成において使用される見積りと判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

(固定資産の減損)

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産について、当該資産から得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

(投資有価証券及び関係会社株式の評価)

 当社では、投資有価証券及び関係会社株式の実質価額の下落の有無を確認し、帳簿価額に対して著しく下落している場合は、回復の可能性が合理的に認められる場合を除いて評価損を計上することとしております。回復の可能性は事業計画や市場環境等を踏まえて判断しておりますが、実質価額の下落が明らかになった場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、保有する開発パイプラインの変動であると考えております。この変動とは、保有する開発パイプラインの新規のライセンスアウト、新規開発パイプラインの導入、開発パイプラインの臨床開発の中止・失敗・期間延長及びライセンス契約の解約等が想定されます。これらの状況により当社グループの経営成績は大きく変動いたします。

 なお、事業展開上のリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について

 現在、当社は複数の上市品を有しており、保有する開発パイプラインの開発も順調に進んでおります。近年は、海外での事業展開にも力を入れており、「DW-1002」の中国への承認申請、米国における配合剤の開発決定、「K-321」のグローバル第Ⅲ相臨床試験の開始、「H-1337」の米国後期第Ⅱ相臨床試験の開始を行いました。開発が順調であることは、当社の企業価値に影響するだけでなく、当社の保有する基盤技術の証明になるものと考えております。

 このような中、経営者の問題認識としては、今後当業界において有益な開発パイプラインの創製もしくは保有することがより一層重要になると考えております。このため、当社グループは「開発パイプラインの拡充」と「事業領域の拡大」をテーマとして、魅力ある開発パイプラインの創製、他社からの開発パイプラインの導入と自社による臨床開発を進めております。

 今後の方針としては、これまでの取り組みを継続して、当社グループの開発パイプラインの充実を図っていくと共に、保有する開発パイプラインが上市され、患者の皆様への満足度の高い治療の提供と当社収益額の向上を図ってまいります。

 なお、経営環境及び対処すべき課題等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。