売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率

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最終更新:

E38683 

売上高

13.5億 円

前期

9.10億 円

前期比

148.7%

時価総額

133.4億 円

株価

2,841 (05/01)

発行済株式数

4,693,776

EPS(実績)

48.69 円

PER(実績)

58.35 倍

平均給与

799.2万 円

平均年齢(勤続年数)

38.2歳(2.9年)

従業員数

82人(連結:85人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3 【事業の内容】

当社はAI開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

当社は、「INFRASTRUCTURE+LIFE+INNOVATION」(インフラ ライフ イノベーション)を企業理念と定め、社会インフラにイノベーションを起こし、インフラ全体の最適化を目指し、社会に貢献することをミッションに活動しております。

現在の社会経済は、エネルギー価格の変動、サプライチェーンの寸断、カーボンニュートラル(注1)に向けたエネルギー消費の効率化、DX化に伴う業務の効率化等、様々なリスクや課題を抱えております。その中で迅速に最適解を選択し、施策や事業を管理運営していくことが、企業ひいては社会の持続的な成長に必要不可欠となっております。

電力、物流、サプライチェーンといった社会インフラも同様に、ビジネス上の様々な要素を考慮した上で計画的に管理運営されておりますが、その計画業務は熟練の人材による多大な労力と時間により成立しており、現在の複雑かつ不確実性の高い環境下で迅速に最適解を選択することは困難な状況となっております。

そこで当社は、属人性を排し、インフラのオペレーションに関わる様々な制約を変数として、複雑かつ不確実性の高い多数の要素も考慮した上で、AI技術を用いて短時間で最適な計画を提供するため、計画最適化事業を展開しております。具体的には、当社の社会インフラに関する業務知識の豊富なエンジニアが各顧客の計画対象業務を数式化することにより、複雑な業務を再現するシミュレータを開発し、デジタル空間上に機器、設備、人、車両等の動きを再現します。シミュレータ上では、仮想的に設備、車両等を動かし、業務のシミュレーションを行うことができるため、ビッグデータを使用せずにシミュレーション結果を生み出すことが可能となります。そしてその結果から得られるデジタルデータを基にKPI(注2)の最大化や計画の最適化を可能とするアルゴリズムを開発し、業務システムに組み込みます。

計画の最適化は、組合せ最適化の一種となります。組合せ最適化とは、一般に、複数の制約を満たす有限個の解から最良の解(最適解)を探し出すことを意味し、その解法として数理最適化(注3)やメタヒューリスティクス(注4)等の手法が用いられてきました。複雑な業務の計画は様々な要素を考慮して策定されるため、最適解を探し出すには膨大な数の組合せを考慮する必要があり、実務に耐えうる時間で最適解を導くことは高い技術を必要とします。

そこで当社では数理最適化やメタヒューリスティクスの手法に加えて、機械学習(注5)や強化学習(注6)等のAI技術を応用し、各種の計画に適した数理最適化の手法とAI技術を組み合わせたアルゴリズムをAIエンジンとして開発することで、最適解を探索する範囲を限定し、実務に耐えうる時間で最適解を導く手法を採用しました。また、AIエンジン開発を中心に、その前段となるコンサルティングフェーズから、AIエンジンを組み込んだシステム実装・運用フェーズまでを手掛けることで顧客生涯価値(CLTV)(注7)を最大化し、かつ運用・サポートサービスを担うことで、安定的な収益に繋げることをビジネスモデルとしております。

 

[開発プロセス]

※画像省略しています。

 

AI技術による計画の最適化を事業展開するにあたり、当社が注力している分野は、電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティ(注8)の3分野となります。

機械学習・強化学習をはじめとしたAIアルゴリズム開発手法に加え、数理最適化等の手法を用い、ビジネス課題の解決に必要な技術手法を用いることで、実効性の高い効率的な各種計画の策定を支援するAI開発事業を展開しております。

以下では(1)事業分野、(2)事業の特徴、(3)テクノロジー、についてそれぞれ説明いたします。

 

(1) 事業分野

自動運転、翻訳、スマートフォン、画像認識等コンシューマー向け分野ではAIの実用化が進んでおりますが、インダストリアル分野、特に社会インフラ領域ではAIの実用化は必ずしも進んでおりません。当社は「インフラと社会を、その先へ」をミッションとし、AI技術の実用化に主眼を置き、社会インフラ領域における計画最適化のエンジニアリング及びサービス事業を展開しております。

計画最適化は生産計画、輸送計画、材料開発、拠点配置計画、スケジューリング計画、適正価格設定等様々な用途で活用が期待されておりますが、組み合わせるシナリオの数の多さに起因して計算量が増大し、現実的な時間内での計算が困難になることや問題の定式化に伴う実装の難しさから導入されている分野は限定的でした。当社は、画像認識、需要予測といった領域で広く利用が進んでいるAI技術を計画最適化に応用し、問題の難易度や要求事項に対して柔軟にAIアルゴリズムを組み合わせることで、エネルギー消費量の削減、輸送効率や生産効率の向上といった顧客の課題を解決しております。また、当社は社会インフラ領域にフォーカスし、特に①電力・エネルギー分野、②物流・サプライチェーン分野、③都市交通・スマートシティ分野の3つの分野に注力しており、各分野における計画最適化は化石燃料の削減に直結するため、重要な社会問題であるカーボンニュートラルの実現にも貢献することができると考えております。

 

[注力する社会インフラ3分野]

 

※画像省略しています。

 

① 電力・エネルギー分野

国内電力事業者向けに発電所の需給計画の最適化プログラムを開発納入しております。電力自由化に伴い、電力需要に即した需給計画の立案が今後ますます重要になると思われ、脱炭素社会実現の観点からも効率的な需給計画を立案し、発電所を稼働させることが求められます。当社は電力需要を予測し同予測に基づく発電が可能となるよう、各発電所の需給計画をAIアルゴリズムで最適化する技術サービスを提供しております。これにより各発電所の発電機を電力需要に即して起電、停電させることで過剰な発電を抑え、発電に要する燃料の使用量を低減させることが可能になります。

② 物流・サプライチェーン分野

原油、セメント、鉄鋼、製紙、化学品、消費財等様々な分野で生産者は原材料や商品を船舶やトラック等で運搬しており実際の輸送計画は人の経験と知識に基づいて立案されているケースが殆どであります。輸送計画は気象条件、積荷集配箇所、納期等多くの制約条件に基づいて作成されるにもかかわらず、計画最適化に適したソフトウエアが開発されていないため、これまで特定の人材の知識と経験に基づいて計画作成が行われておりました。そのため、輸送計画業務が属人化することや、立案した輸送計画が最適な計画かどうかを検証することが難しいという問題が顕在化しております。

当社は、輸送計画にAIアルゴリズムを取り入れることで輸送計画を最適化する技術サービスを提供しております。様々なビジネス上の制約を加味しながら計算時間を短縮したAIエンジンの開発を行い、最適な輸送計画によって輸送に要する燃料コストの削減を実現しております。

また、輸送計画最適化の応用分野としてサプライチェーン分野での計画最適化の技術サービスも提供しております。調達、在庫、生産、配送、販売に至るサプライチェーンの全工程をデジタル空間に再現し、全体最適や部分最適に関し顧客のKPIに応じて対応可能な技術を有しております。製造事業者向けプロジェクトが複数進行中で、裾野の広い各種製造業分野への計画最適化の活用を促進しております。

③ 都市交通・スマートシティ分野

当社はスマートシティ分野でのAIの活用を新たな成長分野と位置付けております。当社はAIを用いて人の動き、消費活動、ビルのエネルギー使用状況等をデジタル空間に再現し、都市空間における人の動き、消費活動、エネルギー制御等の最適化を可能とするシミュレータを開発しております。その他にも、自動運転車やロボット、住宅等、モノや人がインターネットで繋がり、集めたデータを活用して最適なサービスを提供するスマートシティプロジェクトにおいて、エネルギーマネジメントのAI開発部分を担当しております。

また、計画最適化の他にも機械学習を応用し高速道路の渋滞予測システムを提供しており、スマートシティ周辺の都市交通からスマートシティへの導線を最適化するといったプロジェクトへの応用も考えられる点で、スマートシティ分野とのシナジー効果をもたらしております。

 

(2) 事業の特徴

当社は、新しいテクノロジーにチャレンジするアーリーアダプター顧客(注9)に向けて顧客要望に応じたAIエンジニアリングプロジェクトを成功させ、これまでに確立したノウハウをReNom APPS(注10)として集約し、クラウドサービス化して展開しております。AI技術を用いた社会インフラ領域における計画最適化にフォーカスし、PoC(Proof of Concept:概念実証)ではなく本番導入を前提としたAIエンジンの開発から入り、実装に至る実績を積み上げてまいりましたが、当社は、①明確な経済的導入効果、②CO2削減効果、③大手企業中心の顧客構成、④CLTV最大化、⑤ソリューション提供手法の共通化、⑥クラウドサービス提供、⑦人材戦略といった特徴を有しております。以下では、特徴に関し、それぞれ説明いたします。

① 明確な経済的導入効果

典型的なAI適用領域である画像認識や需要予測は、経済的な導入効果が曖昧と言われておりますが、AIによる計画最適化は、化石燃料削減やオペレーションコスト削減といった直接的なコスト削減効果をもたらすことが可能となります。顧客は利害関係者にAIに対する投資対効果を明確に説明することができ、新しいテクノロジーの価値に見合った規模の投資が可能になります。このようにAI導入効果をROI(注11)として明確に数値化できることは、受注確度を高める効果があり、当社の収益性の基盤となっております。

② CO2削減効果

当社が注力分野としている電力・エネルギー分野、物流・サプライチェーン分野、都市交通・スマートシティ分野の社会インフラ3分野はいずれも計画最適化により化石燃料の消費を削減することができ、結果としてCO2削減効果を期待することができます。顧客は利害関係者にカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとしてAIに対する投資効果を説明することができ、脱炭素経営の一環としての投資が可能になります。

③ 大手企業中心の顧客構成

電力・石油元売り・プラント・物流・都市交通等、当社がターゲットとする各種社会インフラ分野では、日本経済を支え続けている大手企業が活躍しております。当社の顧客は大半が大手企業となっております。当社は、社会インフラ領域におけるAI技術を用いた計画最適化に特化しているほか、明確な経済的導入効果の提示が可能であること、またCO2削減効果も期待できるといった特徴から大手企業に受け入れられているものと思われます。このような大手企業に最新のAIテクノロジーを提供することで、社会にイノベーションをもたらしていると考えております。

④ CLTV (Customer Life-Time Value)最大化:顧客との長期ライフサイクルビジネス

当社はAI技術の概念実証ではなく実用化をゴールにしていることから、AIエンジンの開発にとどまらずAIエンジンを搭載した業務システムの実装、その後のAIエンジンの性能維持や障害監視・対応を行う運用・サポートまでを総合的に提供することを前提としております。このため、単発のAIエンジン開発のみでは終わらず、顧客との中長期的な関係を構築しております。

⑤ ソリューション提供手法の共通化

当社事業の進め方は、異なる事業分野の計画問題を、共通のプラットフォームや開発メソッドに落とし込み、同一のアーキテクチャーで開発を行うことを特徴としております。既に、輸送計画最適化、電力需給計画最適化、生産計画最適化、スマートシティ分野での都市オペレーション最適化については、共通の設計思想に基づいてAIエンジンの開発を行っております。これにより、システム全体のアーキテクチャーが統一され、水平展開を行う際には、過去のモジュール等を再利用してソリューションを提供することが可能となります。その結果、計画最適化システムを効率的に開発することができると考えております。

⑥ クラウドサービス提供

ReNom APPSはAI技術を活用した計画最適化のためのインダストリークラウド(注12)となります。従来、個別プロジェクト用に開発したシミュレータや最適化モデルで利用したアルゴリズムをモジュール化(注13)・体系化の上、顧客ごとに組み合わせてプラットフォームとして提供するとともに、業種ごとの業務ベストプラクティスを前提としたシステム画面を用意しております。サービス提供の事業分野を、社会インフラ3分野に絞り込むことで、各分野内でのノウハウの再利用性を高めることが可能であり、高度な技術を多数の顧客にクラウドサービスとして提供することが可能となります。現在では、日々変動する需要に基づき最適な需給計画を自動立案するReNom POWER、配船の日々の運航計画を自動立案するReNom VESSEL、サプライチェーンにおける生産や物流計画の最適化を行うReNom SCM、企業価値最大化のシナリオをシミュレーションするReNom ValuationをReNom APPSとして展開しております。

⑦ 人材戦略

当社は、データサイエンティストやITエンジニアだけではなく、重電や社会インフラ業界出身で現場オペレーションに造詣が深い技術者を積極的に採用し、入社後にデータサイエンス教育(注14)を施すことにより社会インフラの業務知識を兼ね備えたAI技術者を多数育成しております。現場の業務をよく理解している技術者が、自らの業務知識とAI技術を掛け合わせ、実用的かつ効果的な計画最適化アルゴリズムの提供を実現しております。

人材育成の手法として、当社独自の育成プログラムを用意して様々な事業分野での経験と知識を持つ技術者をAIアルゴリズム開発の最前線で活躍できる人材に育成しております。

また、社外取締役を含めAIや産業分野を専門とする大学の研究者と連携することで、最新の研究技術を取り込む体制を構築しております。

 

(3) テクノロジー

当社は、社会インフラ分野でのAIの実用化を強く意識した独自のAI技術体系を確立しております。

① ReNom APPS

組合せの数の多さに起因して計算量が増大し、現実的な時間内で計算が困難になることや、問題の定式化に伴う実装の難しさといった技術課題に対応するため、シミュレータ開発技術と機械学習・深層学習・深層強化学習を組み合わせた当社独自のデジタルツインテクノロジー(注15)を搭載したReNom APPSを開発しました。シミュレータに実際の制約条件を組み込んでシミュレーションすることで現実に発生しうる状況のみを再現することができ、現実に発生し得ない状況を前提とした組合せを計算するといった無駄を排除しております。また、シミュレーションに基づき機械学習・深層学習・深層強化学習を用いて最適な計画を探索し、その結果策定された計画を評価し、学習することで、より最適な計画を策定することが可能となります。これまでの当社開発実績から共通化できる部分を取り纏め開発用にモジュール化したものの総称がReNom APPSとなります。

ReNom APPSにより、各産業分野における計画最適化のAIエンジン開発の効率化を図るとともに、それを顧客に提供する業務システムやクラウドベースのインフラ基盤を併せてプラットフォーム化し、顧客のシステムの導入までのリードタイムを大幅に短縮しております。

② ReNom SIMBASE:シミュレータ開発フレームワーク

シミュレータを開発する際に共通する処理や、拠点、ネットワーク、輸送手段、消費、生産、備蓄といった社会インフラ分野の計画業務全般で用いられる汎用的な機能をフレームワークとして開発し、実際のAIエンジニアリングプロジェクトで活用しております。これにより、複雑な業務を再現するシミュレータを短期間で開発することが可能となっております。

シミュレータを利用することで、デジタル空間上に機器、設備、物、人の流れを再現し、仮想的に設備や車両を動かし、その結果から得られるデジタルデータを基に、KPIの最大化や計画の最適化を行うことが可能になります。例えば、生産設備のシミュレータを利用することで、ボトルネックの発見と改善、在庫の削減、設備・人の稼働率向上、燃料費や材料費の削減を実現します。

③ Algorithm MIX = 最新技術と旧来技術の融合

組合せ最適化とは様々な制約の下で、無数にある選択肢の中から、ある指標(価値)を最も良くする変数の値(組合せ)を求める手法となります。例えばA地点からB地点へ向かうトラックの最短かつ最少燃料になる経路を求めるような問題があげられます。これは、無数の組合せの中から解を導く必要がありますが、当社は、最新のAI関連技術である機械学習や強化学習、旧来手法である数理最適化の手法を顧客課題ごとに柔軟に組み合わせることで、実ビジネスの課題を解決する手法を確立しました。例えば、無数の組合せの中から、過去に発生した組合せを機械学習で学習させることで、検討する組合せの範囲を絞り込み、その上で絞り込まれた範囲で、数理最適化の手法を用いることで計算時間を短縮し、実ビジネスで運用可能な計算時間による最適化システムを提供しております。

④ 量子アルゴリズムの研究開発

量子コンピュータ(注16)は次世代のコンピュータとして期待されておりますが、当社は量子アルゴリズム(注17)について2017年より研究開発を行っており、2018年より様々な論文発表、2021年より関連技術の特許出願を行っております。現在当社が行っている計画最適化分野においても量子コンピュータは広く活用が期待されている分野であり、計算の高速化や、コンピュータ上に再現できる状態の規模や精度においても現在のコンピュータを上回る可能性が示唆されております。当社は、最新のAI関連技術に加えて量子インスパイアコンピューティング(注18)等も適宜活用し、既存のコンピュータと組み合わせることで、実ビジネスの課題解決を加速していきます。今後さらに本格的な量子コンピュータが実用化された際には、研究開発で得た知見を活かし、量子テクノロジーを駆使したサービスを提供することが可能であると考えております。

 

(注) 1.カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを指します。

2.KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、組織の目標達成の度合いを定義する補助となる計量基準群を指します。

3.数理最適化とは、利用可能な値の集合体から、ある条件に対して最も良い値を選択する手法で、複数の変数及び制約条件が与えられた関数(目的関数)を最大又は最小にする変数の値、並びに最大値、最小値を求める数学的方法を指します。

4.メタヒューリスティクスとは、現実空間において膨大な組合せが発生する最適化問題を解くための経験的手法(ヒューリスティクス)を有機的に結合させたアルゴリズムを指します。ある組合せをスタートに、少しずつ変化させていき、その組合せが良ければ採用、良くなければ別の変化を試す、といったことを繰り返して探索することを基本的な考え方とする手法となります。

5.機械学習とは、経験からの学習により自動で改善するコンピュータアルゴリズム又はその研究領域で、人工知能の一種であるとみなされている手法であり、訓練データ又は学習データと呼ばれるデータを使って学習し、その学習結果を用いて何らかのタスクをこなす手法を指します。

6.強化学習とは、人工知能の一種であり、訓練データ又は学習データを使わずに、選択した行動に対する報酬を最大化するようにシステム自身が試行錯誤しながら、行動を最適化する手法を指します。

7.CLTVとは、Customer Life-Time Value(顧客生涯価値)の略で、マーケティングでは、企業にとってある一人の顧客が将来の関係全体に寄与する価値の予測を指します。

8.スマートシティとは、「ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場」(「スマートシティ・ガイドブック」内閣府、2021年1月)を指します。

9.アーリーアダプター顧客とは、米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)が提唱したイノベーション普及に関する理論で、流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人であり、他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる顧客のことを指します。

10.ReNom APPSとは、シミュレータや最適化モデルを部品化・体系化し、計画最適化サービスをプラットフォームとして提供するためのインダストリークラウドを指します。

11.ROIとは、return on investmentの略で、投じた費用に対してどれだけの利益を上げられるかを示す指標を指します。

12.インダストリークラウドとは、特定の業界、業種に合わせたサービスを提供するクラウドソリューションを指します。

13.モジュール化とは、計画最適化システムのプログラムソースコードを、当該システムを構成する機能単位で分解することを指します。これにより顧客の要望に応じた機能ごとにモジュールを組み合わせて提供することが可能となります。

14.データサイエンス教育とは、データを扱う手法である情報科学、統計学、アルゴリズム等を横断的に扱うための教育で、統計学、パターン認識、機械学習、データマイニング、可視化等、データサイエンティストを育成するための教育を指します。

15.デジタルツインテクノロジーとは、物理空間(現実空間)にある情報を基にデジタル空間上に当該物理空間を再現する技術をいい、当社では顧客のビジネス環境や業務環境全体をデジタル空間上に再現する技術を指します。

16.量子コンピュータとは、重ね合わせや量子もつれと言った量子力学的な現象を用いて従来のコンピュータでは現実的な時間や規模で解けなかった問題を解くことが期待されるコンピュータを指します。

 

17.量子アルゴリズムとは、量子コンピュータ上で動作するアルゴリズムを指します。

18.量子インスパイアコンピューティングとは、量子コンピュータで表現される量子の特性を従来のコンピュータ上で擬似的に表現する技術を指します。

 

[事業系統図]

 

※画像省略しています。

 

23/09/29

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 財政状態の状況
(資産)

当事業年度末における総資産は1,576,114千円となり、前事業年度末と比較して273,177千円増加いたしました。流動資産は1,277,296千円となり、258,862千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が53,346千円、売掛金及び契約資産が197,881千円増加したことによるものであります。固定資産は298,818千円となり、14,315千円増加いたしました。これは主にソフトウエア及びソフトウエア仮勘定が11,987千円減少した一方で、繰延税金資産が28,722千円増加したことによるものであります。

(負債)

当事業年度末における負債は409,737千円となり、前事業年度末と比較して44,645千円増加いたしました。これは主に長期借入金が60,100千円減少した一方で、契約負債が64,685千円、未払費用が27,213千円、その他に含まれる未払消費税等が16,874千円増加したことによるものであります。

(純資産)

当事業年度末における純資産は1,166,377千円となり、前事業年度末と比較して228,532千円増加いたしました。これは当期純利益の計上により利益剰余金が228,532千円増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス対策の緩和と終了による社会経済活動の再開に伴い、コロナ前の水準へと回復が見られました。しかしながら、ロシア・ウクライナ危機の長期化や世界的な金融引き締めによる経済への悪影響が懸念されるなど、先行きの不透明な状況が続いております。その影響はエネルギー価格の変動にも波及し、地政学リスクを踏まえた上での安定的かつ経済的なエネルギーの需給体制が求められ、エネルギー消費の効率化が社会全体の重要な課題の一つとして考えられております。

一方で、エネルギー関連の課題も含め様々な課題解決に向けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、AI技術の実装による変革は多くの企業にとって重要な戦略として位置付けられ、その投資は底堅い成長を続けております。IT専門調査会社IDC Japan株式会社によると、2022年の国内AIシステムの市場規模は3,883億円となり、2022年から2027年までの年間平均成長率は23.2%で推移し、2027年には1兆1,034億円になる予測となっております(出典:2023年4月27日 IDC Japan 2023年国内AIシステム市場予測)。

このような状況下、当社は電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3分野に注力し、電力需給計画、プラント制御、配船計画、生産計画、都市計画、空調熱源制御等に対して計画最適化を行うAIエンジン及びプラットフォームの開発、運用・サポートを一貫して提供しております。これまでの計画業務は、オペレーションを熟知した熟練人材による多大な労力により成立しておりましたが、AI技術や数理最適手法を用いた当社の計画最適化サービスは、複雑かつ不確実性の高いビジネス環境下でも短時間で最適な計画を提供し、属人性を排することを可能としております。加えて、電力や物流等の事業会社を中心にエネルギー消費量の削減を可能とし、投資効果を明示できるサービスでもあることから、当社の事業に対する期待は一層高まっております。

当事業年度は、引き続き電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3分野に注力いたしましたが、電力・エネルギー及び物流・サプライチェーンを中心に既存顧客の本番導入に向けた開発が加速いたしました。加えて、大型の運用・サポート案件が開始されたこともあり、顧客平均売上が増加するとともに、ストック型売上比率も大幅に上昇いたしました。一方で取引先数については全体として減少したものの、これは前事業年度においてAI開発、プラットフォーム開発、運用・サポートの3区分に属さない販売単価の小さいその他の売上が複数計上された影響であり、当該3区分においては増加いたしました。

当社は、AIエンジン及びプラットフォーム開発をフロー型売上、運用・サポートをストック型売上として定義しておりますが、2023年6月期の電力・エネルギー分野の合計売上高は398百万円(前期比80.7%増)、うちフロー型売上は285百万円(前期比31.5%増)でストック型売上は112百万円(前期比3,241.8%増)、物流・サプライチェーン分野の合計売上高は625百万円(前期比90.9%増)、うちフロー型売上は503百万円(54.4%増)でストック型売上は121百万円(8,026.1%増)、都市交通・スマートシティ分野の合計売上高は286百万円(前期比8.8%減)、うちフロー型売上は273百万円(前期比13.0%減)でストック型売上は13百万円(前期は計上なし)、社会インフラ3分野に分類されないその他の合計売上高は43百万円(前期比9.8%減)となりました。

また、当社は開発体制の強化に向けて優秀なエンジニアの積極採用を行うことで今後の事業拡大に向けた取り組みを進めており、当事業年度末におけるエンジニアは60名(前期比25.0%増)となりました。加えて、管理体制の強化も進めており、営業・管理部門は25名(前期比13.6%増)となりました。このことから、製造費用におけるエンジニアの人件費は489百万円(前期比33.7%増)、販管費における営業・管理部門の人件費は327百万円(前期比8.2%増)となりました。

以上より、2023年6月期について、売上高は1,353百万円(前期比48.7%増)となり、営業利益208百万円(前期比193.4%増)、経常利益204百万円(前期比201.7%増)、当期純利益228百万円(前期比148.5%増)となりました。また、ストック型売上比率は18.3%(前期比17.8ポイント増)、顧客平均売上は46.7百万円(前期比64.1%増)、取引先数は29社(前期比9.4%減)、うちAI開発、プラットフォーム開発、運用・サポートの3区分では27社(前期比12.5%増)となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は671,809千円となり、前事業年度末と比較して53,346千円増加いたしました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は150,321千円(前年同期は55,735千円の資金の使用)となりました。主な収入要因は、税引前当期純利益202,099千円、契約負債の増加64,685千円、減価償却費37,179千円、未払費用の増加27,213千円、主な支出要因は、売掛金及び契約資産の増加197,881千円によるものであります。

(投資活動に関するキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は36,874千円(前年同期は103,371千円の資金の使用)となりました。主な支出要因は、無形固定資産の取得32,814千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は60,100千円(前年同期は5,400千円の資金の使用)となりました。これは長期借入金の返済によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績

当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。

b 受注実績

当事業年度の受注実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

AI開発事業

1,355,279

△1.8

972,260

0.1

 

c 販売実績

当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

売上高(千円)

前期比(%)

AI開発事業

1,353,869

48.7

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2021年7月1日

 至 2022年6月30日)

当事業年度

(自 2022年7月1日

  至 2023年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

北海道電力株式会社

39,500

4.3

202,811

15.0

ソフトバンク株式会社

139,745

15.3

19,213

1.4

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。当社はAI開発事業の単一セグメントであるため、セグメントの記載を省略しております。 

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)

当事業年度における売上高は1,353,869千円(前年同期比48.7%増)となり、前事業年度と比較して443,469千円の増収となりました。これは主に本番システム導入に向けた既存顧客からの継続的な受注によるものであり、既存顧客への売上は1,240,885千円と全体の91.7%を占めることとなりました。

(売上原価、売上総利益)

当事業年度における売上原価は397,287千円(前年同期比59.1%増)となりました。主な内訳は、エンジニアの人件費及びソフトウエア関連費用であります。この結果、売上総利益は956,581千円(前年同期比44.8%増)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当事業年度における販売費及び一般管理費は747,942千円(前年同期比26.9%増)となりました。主な内訳は、人件費、研究開発費、技術販管費であります。この結果、営業利益は208,639千円(前年同期比193.4%増)となりました。

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

当事業年度において、営業外収益は1,691千円、営業外費用は6,195千円発生しました。これは主に受取利息499千円、受取保険料844千円、物品売却益258千円、上場関連費用6,016千円が発生したことによるものであります。この結果、経常利益は204,135千円(前年同期比201.7%増)となりました。

(特別損益、当期純利益)

当事業年度において、特別損失は固定資産除却損2,035千円が発生しました。税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を△26,432千円を計上した結果、当期純利益は228,532千円(前年同期比148.5%増)となりました。

 

② 資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の給与手当、プロジェクトに必要なソフトウエア関連費用、地代家賃等の販売費及び一般管理費の営業費用であり、営業活動によるキャッシュ・フローでまかなうことを基本としております。また、事業運営上必要な資金を安定的に確保するとともに、事業を拡大していく中で最適な資本構成を構築するため、自己資金だけではなく金融機関からの借入も積極的に行っていくことを考えております。当社は3行の金融機関との間で合計500,000千円の当座貸越契約を締結(当事業年度末現在で借入実行残高はありません)しており、手許資金の流動性が不足すると想定される場合には、当座貸越契約を活用し金融機関からの短期借入金を通じて、必要な資金残高を確保することを考えております。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化、優秀な人材の確保、市場のニーズに合った製品やサービスの展開等により、当社の経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応してまいります。

 

④ 経営者の問題意識と今後の方針に関して

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、様々な課題に対処していく必要があると認識しております。

それらの課題に対応するために、経営者は常に外部環境の変化に関する情報を入手・分析し、現在及び将来における事業環境を認識した上で、当社の経営資源を最適に配分し、有効な解決策を実施していく方針であります。

 

⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析

当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、売上高成長率及び営業利益率を基本的な経営指標としております。過年度における当社の各指標等の進捗は次のとおりであります。

 

 

2019年6月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

売上高

成長率

(全社)

△21.8%

△48.5%

2.0%

28.8%

48.7%

(事業別)

AI開発事業

61.1%

△11.4%

99.4%

33.8%

48.7%

(事業別)

エネルギーソリューション事業

△34.7%

△63.5%

△92.6%

△100.0%

営業利益率

△6.8%

△93.1%

△31.5%

7.8%

15.4%

エンジニア数

28名

44名

43名

48名

60名

 

 

当社は2016年6月期よりAI開発事業を開始し、エネルギーソリューション事業からAI開発事業への事業転換に向け、2019年6月期よりエンジニア及び営業人員の人的資源をAI開発事業へ拡大集中させ、2021年6月期にエネルギーソリューション事業から撤退いたしました。結果、エネルギーソリューション事業の縮小に伴い全体の売上高は減少し、一方でエンジニア等の人件費は増加し、2020年6月期には直近5年間で最大となる営業損失644百万円を計上するとともに営業利益率は△93.1%まで低下いたしました。

そのような状況下、2021年6月期以降のAI開発事業の売上高は堅調に推移しており、2023年6月期は1,353百万円へと売上が拡大し、営業利益率は15.4%、売上高成長率は48.7%となりました。また、2019年6月期から2023年6月期にかけての売上高年平均成長率(CAGR)も41.4%となっており、AIの実装が今後も進んでいくと見込まれる中、売上高の成長を目指してまいります。

また、当社はAIエンジンや業務システムの開発について、顧客間で横展開するとともに標準化やモジュール化を進めており、継続して開発のリードタイムを短縮していることから、今後も生産効率の向上とともに売上高の成長を目指しております。このことから売上高の成長が営業利益率の成長に直接的に寄与するものと考えております。

 

⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されておりますが、この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、当社の実態等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、当社が行っております会計上の見積りのうち特に重要なものは次のとおりであります。

(進捗度に基づく収益認識)

財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しており、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合には、進捗度に基づき収益を認識しております。

進捗度の測定は、各報告期間の期末日までに発生した工数が、総工数の見積りに占める割合に基づいて行っております。

進捗度に基づく収益計上の基礎となる総工数の見積りはプロジェクトごとに行っております。各プロジェクトは顧客の重要な業務システムの構築を請け負うことになり、特に顧客のニーズの多様化に応えるため、総工数の見積りの基礎となる作業内容に不確実性を伴っております。

総工数の見積りはプロジェクトの進行に応じて適宜見直しが行われ、総工数の見積り時点では予見できなかった仕様変更や納期変更等により、総工数の変更が発生し、その結果進捗度が変動する可能性があり、翌事業年度の財務諸表において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

(繰延税金資産の計上)

当社は繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることに加え、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提となる条件や仮説に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額が変動し、当期純利益に影響を与える可能性があり、重要と考えております。