E31748 Japan GAAP
前期
11.3兆 円
前期比
98.9%
株価
1,522.5 (03/28)
発行済株式数
3,461,049,500
EPS(実績)
124.54 円
PER(実績)
12.22 倍
前期
798.4万 円
前期比
105.3%
平均年齢(勤続年数)
44.9歳(18.2年)
従業員数
1,485人(連結:227,369人)
(1) 当社グループの事業の内容
日本郵政グループ(以下「当社グループ」といいます。)は、当社、日本郵便株式会社(以下「日本郵便」といいます。)、株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」といいます。)及び株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命保険」といい、日本郵便及びゆうちょ銀行と併せて「事業子会社」と総称します。)を中心に構成され、「郵便・物流事業」、「郵便局窓口事業」、「国際物流事業」、「銀行業」、「生命保険業」等の事業を営んでおります。当該5事業の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に掲げるセグメントの区分と同一であり、報告セグメントに含まれていない事業を「その他」に区分しております。
各事業における事業の内容並びに当社及び関係会社の位置づけは次に記載のとおりであります。
なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当し、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。
(注)1. ○は連結子会社、△は持分法適用関連会社であります。
2.JPトールロジスティクス株式会社は、2023年4月1日付でJPロジスティクスグループ株式会社に商号変更し、報告セグメントは「国際物流事業」から「郵便・物流事業」に変更しております。
3.トールエクスプレスジャパン株式会社は、2023年4月1日付でJPロジスティクス株式会社に商号変更し、報告セグメントは「国際物流事業」から「郵便・物流事業」に変更しております。
① 郵便・物流事業
当事業では、郵便法(昭和22年法律第165号)の規定により行う郵便の業務並びに郵便物の作成及び差出しに関する業務その他の附帯する業務等の郵便事業並びに物流事業等を行っております。
(a) 郵便事業
郵便サービスを全国一律の料金であまねく公平に提供し、国内郵便に加え、万国郵便条約などの条約・国際取り決めに基づく国際郵便(通常・小包・EMS※)を提供しております。
また、お客さまの郵便発送業務一括アウトソーシングのニーズにお応えするため、郵便物などの企画・作成(印刷)から封入・封かん、発送までをワンストップで請け負うトータルサービスを提供しております。
その他、国からの委託による印紙の売りさばき、お年玉付郵便葉書の発行等の業務を行っております。
※ EMS=国際スピード郵便(Express Mail Service)
(b) 物流事業
物流サービスとして、宅配便(ゆうパック等)及びメール便(ゆうメール等)の運送業務を行っており、eコマース市場の成長に伴う多様な顧客ニーズに的確に応えたサービスを提供いたします。一方、多様化・高度化する物流ニーズに対しては、物流ソリューションセンターを中心として、お客さまに最適な物流戦略、物流システムの設計、提案、構築から運用までを行う3PL※サービスの提供を展開しております。
さらに、eコマースを中心とした小口荷物の国際宅配需要を獲得するため、2014年に資本・業務提携した海外物流パートナーである、仏GeoPost S.A.及び香港Lenton Group Limitedとの間で開発した国際宅配便サービスである「ゆうグローバルエクスプレス」により国際郵便で提供できない付加価値サービスに対応いたします。
※ 3PL(サードパーティーロジスティクス)=サード・パーティー(=3PL事業者)が、荷主の物流業務全体又は一部を荷主から包括的に受託するサービスの形態。
(c) その他
(a)及び(b)の業務の他、カタログ等に掲載されている商品若しくは権利の販売又は役務の提供に係る申込みの受付け、商品代金の回収等の業務や、地方公共団体からの委託を受けて高齢者等への生活状況の確認、日用品の注文・図書の貸出の受付、廃棄物等の不法投棄の見回り業務等を行っております。
② 郵便局窓口事業
当事業では、お客さまにサービスを提供するための営業拠点として全国に設置した直営の郵便局(2023年3月31日現在20,142局(内、営業中は20,056局))及び業務を委託した個人又は法人が運営する簡易郵便局※(2023年3月31日現在4,109局(内、営業中は3,589局)。ただし、銀行代理業務等に係る委託契約を締結しているのは3,579局(内、営業中は3,570局)、生命保険募集委託契約を締結しているのは410局(内、営業中は408局))において郵便・物流事業に係る窓口業務、銀行窓口業務等、保険窓口業務等、物販事業を行っている他、不動産事業、提携金融サービスを行っております。
※ 簡易郵便局法(昭和24年法律第213号)第3条に規定する日本郵便が郵便窓口業務及び印紙の売りさばきに関する業務を委託する者が設ける施設であり、日本郵便と受託者との受委託契約により行う業務が異なります。
(a) 郵便・物流事業に係る窓口業務
郵便物の引受・交付、郵便切手類の販売、ゆうパック等物流サービスの引受、印紙の売りさばき等を行っております。
(b) 銀行窓口業務等
ゆうちょ銀行から委託を受け、通常貯金、定額貯金、定期貯金、送金・決済サービスの取扱い、公的年金などの支払い、国債や投資信託の窓口販売などを行っております。
(c) 保険窓口業務等
かんぽ生命保険から委託を受け、生命保険の募集や保険金の支払いなどを行っております。
(d) 物販事業
カタログ等を利用して行う商品又は権利の販売並びに商品の販売又は役務の提供に係る契約の取次ぎ及び当該契約に係る代金回収を行う業務等として、生産地特選品販売、年賀状印刷サービス、フレーム切手販売、文房具等の郵便等関連商品の陳列販売等を行っております。また、社員による販売に加え、インターネット及びDMによる販売を行っております。
(e) 不動産事業
2007年10月の郵政民営化に伴い公社から承継した不動産を基に高度商業地域に位置する旧東京中央郵便局敷地(現:JPタワー)などを開発し、事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業のほか、賃貸用建物の運営管理業務及び分譲事業等の不動産事業を行っております。
(f) 提携金融サービス
かんぽ生命保険以外の生命保険会社や損害保険会社などから委託を受け、変額年金保険、がん保険、引受条件緩和型医療保険、自動車保険、傷害保険等の販売を行っております。
(g) その他の事業
(a)~(f)の業務の他、以下の業務を行っております。
・地方公共団体の委託を受けて行う戸籍謄本や住民票の写し等の公的証明書の交付事務、ごみ処理券等の販売、バス利用券等の交付事務
・当せん金付証票(宝くじ)の発売等の事務に係る業務
・日本放送協会からの委託を受けて行う放送受信契約の締結・変更に関する業務
・郵便局等の店頭スペース等の活用、窓口ロビーへのパンフレット掲出等の広告業務
・会員向け生活支援サービス業務(郵便局のみまもりサービス) 等
③ 国際物流事業
当事業では、Toll Holdings Pty Limited(以下「トール社」といいます。)、同社傘下の子会社及び関連会社並びにJPトールロジスティクス株式会社及びトールエクスプレスジャパン株式会社において、アジア太平洋地域に関わる輸出入を中心としたフルラインでの国際的貨物輸送、及び、アジア太平洋地域に関わる輸送・倉庫管理や資源・政府分野物流等のサービスを行っております。
トール社及び同社傘下の子会社は、下表の2部門で構成されており、不特定の顧客や小さな契約ベースの顧客を対象としたフォワーディング事業、特定顧客のニーズを満たすために構築したロジスティクス事業を提供しております。
(注)1.JPトールロジスティクス株式会社は、2023年4月1日付でJPロジスティクスグループ株式会社に商号変更し、報告セグメントは「国際物流事業」から「郵便・物流事業」に変更しております。
2.トールエクスプレスジャパン株式会社は、2023年4月1日付でJPロジスティクス株式会社に商号変更し、報告セグメントは「国際物流事業」から「郵便・物流事業」に変更しております。
④ 銀行業
当事業では、ゆうちょ銀行が、銀行法に基づき、預入限度額内での預金(貯金)業務、シンジケートローン等の貸出業務、有価証券投資業務、為替業務、国債、投資信託及び保険商品の販売、住宅ローン媒介業務、クレジットカード業務などを営んでおります。また、日本郵便の郵便局ネットワークをメインチャネルに、1.2億人規模のお客さまに生活・資産形成に貢献する金融サービスを提供し、お預かりした貯金を有価証券で運用することを主な事業としております。
また、ゆうちょ銀行及びその関係会社は、銀行業務のほか、金融商品取引業務などを行っております。
(a) 資金運用
ゆうちょ銀行は、2023年3月末日現在、個人貯金が90%超を占める194.9兆円の貯金を、主として有価証券132.7兆円(内、国債38.1兆円、その他の証券(外国債券や主な投資対象が外国債券である投資信託等で構成)78.3兆円)で運用し、資金運用収益を中心に収益を確保しております。
具体的には、想定した市場環境の下、負債の状況等を踏まえて国債等の運用資産・運用期間を適切に管理するとともに、収益源泉の多様化・リスク分散の観点から、国際分散投資の推進、オルタナティブ資産への投資など運用の高度化・多様化を図っているほか、地域経済活性化にも貢献すべく、従来からの地方公共団体向け資金供給の強化に加え、地域金融機関と連携し、地域活性化ファンドへの出資等に取り組んでおります。
こうした金融資産及び金融負債は、市場リスク(金利、為替、株式など様々な市場のリスク・ファクターの変動により、資産・負債(オフ・バランスを含む。)の価値が変動し損失を被るリスク、資産・負債から生み出される収益が変動し損失を被るリスク)や信用リスク(信用供与先の財務状況の悪化等により、資産(オフ・バランス資産を含む。)の価値が減少ないし消失し、損失を被るリスク)を伴うものであるため、デリバティブ取引等で一定のリスクをヘッジしつつ、安定的な収益確保に努めております。
(b) 資金調達、資産・負債総合管理
ゆうちょ銀行は、本支店その他の営業所、日本郵便が展開している郵便局ネットワークを通じて、お客さまから通常貯金、定額・定期貯金などの各種の貯金を預入限度額内でお預かりしております。
また、郵政管理・支援機構が、公社から承継した郵便貯金に相当する預り金を、特別貯金として受け入れております。
さらに、上記(a)の資金運用(資産)と市場取引も含めた資金調達(負債)について、信用・市場リスクや流動性リスク(運用・調達期間の差異や資金流出により、必要な資金調達や通常の金利での資金調達が困難となるリスク)をマネージするため、各商品のリスク特性に合わせた7つのポートフォリオに細分化して管理する枠組みのもとで、資産・負債を総合的に内部管理するALM(Asset Liability Management)を適切に展開し、中期的な安定的収益の確保に努めております。
(c) 手数料ビジネス
ゆうちょ銀行は、本支店その他の営業所(直営店)・日本郵便の郵便局ネットワーク・各種デジタルチャネルを通じて、為替業務、国債・投資信託等の資産運用商品の販売、クレジットカード業務、住宅ローン媒介業務及び各金融機関と連携したATM提携サービスなどを提供し、手数料(役務取引等)収益を確保しております。
⑤ 生命保険業
当事業では、かんぽ生命保険が、保険業法に基づく免許・認可を得て、生命保険の引受け及び有価証券投資、貸付等の資産運用業務を行っております。
また、日本郵便との間で生命保険募集・契約維持管理業務委託契約等を締結し、2023年3月31日現在、20,107局(内、営業中は20,022局)の郵便局で生命保険募集等を行っております。
(a) 生命保険業
かんぽ生命保険は、生命保険業免許に基づき、次の①~③の保険引受業務及び④~⑫の資産運用業務を行っております。ただし、かんぽ生命保険には、他の生命保険会社にはない、業務を行うに当たっての郵政民営化法による制約があります。詳細は下記「(3) 事業に係る主な法律関連事項 ③(i)~(l)」をご参照ください。
(注) かんぽ生命保険と郵政管理・支援機構との間で再保険契約を締結し、郵政民営化法により公社から郵政管理・支援機構に承継された、簡易生命保険契約に基づく郵政管理・支援機構の保険責任のすべてをかんぽ生命保険が受再しております。
(b) 他の保険会社(外国保険業者を含む。)その他金融業を行う者の業務の代理又は事務の代行
かんぽ生命保険は、次の保険会社の商品の受託販売等を行っております。
・アフラック生命保険株式会社
・エヌエヌ生命保険株式会社
・住友生命保険相互会社
・第一生命保険株式会社
・東京海上日動あんしん生命保険株式会社
・日本生命保険相互会社
・ネオファースト生命保険株式会社
・三井住友海上あいおい生命保険株式会社
・明治安田生命保険相互会社
・メットライフ生命保険株式会社
(c) 郵政管理・支援機構から委託された簡易生命保険管理業務
かんぽ生命保険は、郵政民営化法により公社から郵政管理・支援機構に承継された、簡易生命保険契約の管理業務を、郵政管理・支援機構から受託しております。
⑥ その他
上記の各事業のほか、集約により効率性が高まる間接業務をグループ各社から受託するグループシェアード事業、公社から承継した病院及び宿泊施設の運営、成長性の高い企業に出資を行う投資事業、不動産事業等を行っております。
(a) グループシェアード事業
当社グループ各社が個別に実施するよりもグループ内で1か所に集約した方が効率的な実施が見込まれる間接業務(電気通信役務及び情報処理サービスの提供、人事及び経理に関する業務、福利厚生に関する業務、不動産の管理等に関する業務、人材派遣・紹介等の業務、コールセンターに関する業務、人材育成に関する業務及び健康管理業務など)を、事業子会社等から受託して実施することにより、業務を支援するとともに、経営効率の向上を図っております。
(b) 病院事業
当社グループの企業立病院として、東京逓信病院を運営しております。
(注) 逓信病院設置数は2023年3月31日現在、東京逓信病院の1か所であります。
なお、京都逓信病院及び広島逓信病院は、2022年10月1日付で事業譲渡しております。
(c) 宿泊事業
「ゆうぽうと世田谷レクセンター」の運営、管理を行っております。
(注) 宿泊事業における施設設置数は2023年3月31日現在、「ゆうぽうと世田谷レクセンター」の1か所であります。
なお、かんぽの宿は2022年4月に32か所を譲渡し、「かんぽの宿恵那」については、2023年3月に売却をしております。
(d) 投資事業
成長性の高い企業に出資を行うことにより、出資先企業と当社グループとの連携及び中長期的なグループ収益の拡大を図っております。
(e) 不動産事業
事務所・商業施設・住宅・「ホテル メルパルク」等の賃貸・管理事業等を行い、グループ不動産の開発やグループ外不動産への投資、また、他社との連携・協業を通じ不動産事業の強化を図っております。
(注) 「ホテル メルパルク」は、2022年9月末に6か所について営業を終了したため、2023年3月31日現在、営業している施設は、横浜、名古屋、大阪、広島、熊本の5か所であります。
上記のほか、当社は、事業子会社等の経営の基本方針の策定及び実施の確保並びに株主としての権利の行使を行うこととしております。
(2) 当社グループの事業系統図
当社グループの事業系統図は、次のとおりであります。
(注)1.持分法非適用の非連結子会社10社及び関連会社3社は、記載を省略しております。
2.JPトールロジスティクス株式会社は、2023年4月1日付でJPロジスティクスグループ株式会社に商号変更し、報告セグメントは「国際物流事業」から「郵便・物流事業」に変更しております。
3.トールエクスプレスジャパン株式会社は、2023年4月1日付でJPロジスティクス株式会社に商号変更し、報告セグメントは「国際物流事業」から「郵便・物流事業」に変更しております。
(3) 事業に係る主な法律関連事項
当社グループが行う事業に係る主な法律関連事項は、次のとおりであります。
① 日本郵政株式会社法
(a) 趣旨
当社の目的、業務の範囲等が定められております。当社は、本法により政府の規制を受けるとともに、商号の使用制限等の特例措置が講じられております。
(b) 会社の目的
当社は、日本郵便の発行済株式の総数を保有し、日本郵便の経営管理を行うこと及び日本郵便の業務の支援を行うことを目的とする株式会社とされております。(法第1条)
(c) 業務の範囲
当社は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を行うものとされております。(法第4条第1項)
イ. 日本郵便が発行する株式の引受け及び保有
ロ. 日本郵便の経営の基本方針の策定及びその実施の確保
ハ. 日本郵便の株主としての権利の行使等
ニ. イ.からハ.に掲げる業務に附帯する業務
(d) 業務の制限
次に掲げる事項について、総務大臣の認可が必要とされております。
イ. その目的を達成するために法第4条第1項に規定する業務のほかに行う必要な業務(法第4条第2項)
ロ. 募集株式若しくは募集新株予約権を引き受ける者の募集、又は株式交換若しくは株式交付に際して行う株式若しくは新株予約権の交付(法第8条)
ハ. 取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議(法第9条)
ニ. 毎事業年度の事業計画(法第10条)
ホ. 定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く。)、合併、会社分割及び解散の決議(法第11条)
(e) ユニバーサルサービスの提供
当社は、その業務の運営に当たっては、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務を利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的にかつあまねく全国において公平に利用できるようにする責務を有することとされております。(法第5条)
(f) 株式の保有
当社は、常時、日本郵便の発行済株式の総数を保有していなければならないこととされております。(法第6条)
(g) 株式の処分
政府は、保有義務のある3分の1超の株式を除き、その保有する当社の株式について、できる限り早期に処分するものとされております。(法附則第3条)
なお、政府は、当社の株式の売却収入を東日本大震災に係る復興債の償還費用の財源を確保するため、当社の経営の状況、収益の見通しその他の事情を勘案しつつ処分の在り方を検討し、その結果に基づいて、当社の株式をできる限り早期に処分するものとされております。(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法附則第14条)
② 日本郵便株式会社法
(a) 趣旨
日本郵便の目的、業務の範囲等が定められております。同社は、本法により政府の規制を受けるとともに、商号の使用制限等の特例措置が講じられております。
(b) 会社の目的
日本郵便は、郵便の業務、銀行窓口業務及び保険窓口業務並びに郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務を営むことを目的とする株式会社とされております。(法第1条)
(c) 業務の範囲
イ. 日本郵便は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとされております。(法第4条)
ⅰ 郵便法(昭和22年法律第165号)の規定により行う郵便の業務
ⅱ 銀行窓口業務
ⅲ ⅱに掲げる業務の健全、適切かつ安定的な運営を維持するために行う、銀行窓口業務契約の締結及び当該銀行窓口業務契約に基づいて行う関連銀行に対する権利の行使
ⅳ 保険窓口業務
ⅴ ⅳに掲げる業務の健全、適切かつ安定的な運営を維持するために行う、保険窓口業務契約の締結及び当該保険窓口業務契約に基づいて行う関連保険会社に対する権利の行使
ⅵ 国の委託を受けて行う印紙の売りさばき
ⅶ ⅰからⅵに掲げる業務に附帯する業務
ロ. 日本郵便は、イ.に規定する業務を営むほか、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むことができるものとされております。
ⅰ お年玉付郵便葉書等に関する法律(昭和24年法律第224号)第1条第1項に規定するお年玉付郵便葉書等及び同法第5条第1項に規定する寄附金付郵便葉書等の発行
ⅱ 地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律(平成13年法律第120号)第3条第5項に規定する事務取扱郵便局において行う同条第1項第1号に規定する郵便局取扱事務に係る業務
ⅲ ⅱに掲げるもののほか、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務
ⅳ ⅰからⅲに掲げる業務に附帯する業務
ハ. 日本郵便は、イ.及びロ.に規定する業務のほか、イ.及びロ.に規定する業務の遂行に支障のない範囲内で、イ.及びロ.に規定する業務以外の業務を営むことができるものとされております。
ニ. 日本郵便は、ロ.ⅲに掲げる業務及びこれに附帯する業務並びにハ.に規定する業務を営もうとするときは、あらかじめ、総務省令で定める事項を総務大臣に届け出なければならないものとされております。
※ 金融2社は、現在、日本郵便が金融のユニバーサルサービス提供に係る責務を果たすために営む銀行代理業又は保険募集等に係る業務委託契約を日本郵便との間でそれぞれ締結しております。これらの契約を締結している銀行又は生命保険会社を、それぞれ関連銀行、関連保険会社といいます。
(d) 業務の制限
次に掲げる事項について、総務大臣の認可が必要とされております。
イ.新株若しくは募集新株予約権を引き受ける者の募集、又は株式交換若しくは株式交付に際して行う株式若しくは新株予約権の交付(法第9条)
ロ. 毎事業年度の事業計画(法第10条)
ハ. 総務省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするとき(法第11条)
ニ. 定款の変更、合併、会社分割及び解散の決議(法第12条)
(e) ユニバーサルサービスの提供
日本郵便は、その業務の運営に当たっては、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務を利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的にかつあまねく全国において公平に利用できるようにする責務を有することとされております。(法第5条)
③ 郵政民営化法
(a) 趣旨
郵政民営化の基本理念、基本方針等を定めるとともに、公社の解散に伴い、公社の機能を引き継がせる新たな株式会社(以下、本③において「新会社」といいます。)の設立、新会社の株式、新会社に関して講ずる措置、公社の業務等の承継等に関する事項その他郵政民営化の実施に必要となる事項が定められております。
2012年5月8日公布の郵政民営化法等の一部を改正する等の法律の施行に伴い、郵政民営化法が改正され、郵便サービスのみならず、貯金、保険の基本的なサービスを郵便局で一体的に利用できるようにするユニバーサルサービスの確保が義務づけられ、また、当社が保有するゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、その株式の全部を処分することを目指し、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の経営状況、郵政事業に係る基本的な役務の確保の責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとされております。
(b) 株式の処分
当社の発行済株式の総数は政府が保有し、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の発行済株式の総数は当社が保有するものとされており、政府が保有する当社の株式がその発行済株式の総数に占める割合は、できる限り早期に減ずるものとされておりますが、その割合は、常時、3分の1を超えているものとされております。
また、当社が保有するゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式について、その株式の全部を処分することを目指し、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の経営状況、郵政事業に係る基本的な役務の確保の責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとされております。(法第5条、第7条及び第62条)
(c) ユニバーサルサービスの提供
当社及び日本郵便は、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、郵便局ネットワークを維持するものとし、郵便局ネットワークの活用その他の郵政事業の実施に当たっては、その公益性及び地域性が十分に発揮されるようにするものとされております。(法第7条の2)
(d) 同種の業務を営む事業者との対等な競争条件の確保
当社、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の業務については、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するために必要な制限を加えるとともに、ゆうちょ銀行について銀行法等の特例を適用しないこととする日又はかんぽ生命保険について保険業法等の特例を適用しないこととする日のいずれか遅い日以後の最初の3月31日までの期間中に、郵政民営化に関する状況に応じ、これを緩和するものとされております。
また、日本郵便は、日本郵便株式会社法第4条第2項第3号に掲げる業務及びこれに附帯する業務並びに同条第3項に規定する業務(以下「届出業務」といいます。)を営むに当たっては、届出業務と同種の業務を営む事業者の利益を不当に害することのないよう特に配慮しなければならないとされております。(法第8条及び第92条)
(e) ゆうちょ銀行における業務の制限
ゆうちょ銀行は、郵政民営化法により、郵政民営化時に認められていなかった業務(いわゆる新規業務)を行うときは、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を要するものとされております。(法第110条)
認可を要する業務の概要は、以下イ.からヘ.のとおりであります。
また、内閣総理大臣及び総務大臣は、新規業務の認可や下記(g)(h)の規制に係る認可の申請があった場合、下記(f)の規制に係る政令の制定又は改廃の立案をしようとする場合は、郵政民営化委員会の意見を聴かなければならないこととされております。
なお、当社がゆうちょ銀行の株式の2分の1以上を処分した旨を総務大臣に届け出た日以後は、郵政民営化法第110条に係る認可は要しないものの、ゆうちょ銀行が各業務を行おうとするときは、その内容を定めて、内閣総理大臣及び総務大臣への届出を要するとともに、業務を行うに当たっては、他の金融機関等との間の適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害することのないよう特に配慮しなければならないものとされております。(法第110条の2)
イ.外貨預金の受入れ、譲渡性預金の受入れ
ロ.資金の貸付け又は手形の割引(次のⅰからⅵに掲げる業務を除く)
ⅰ 預金者等に対する当該預金者等の預金等を担保とする資金の貸付け
ⅱ 国債証券等を担保とする資金の貸付け
ⅲ 地方公共団体に対する資金の貸付け
ⅳ コール資金の貸付け
ⅴ 当社、日本郵便又はかんぽ生命保険に対する資金の貸付け
ⅵ 郵政管理・支援機構に対する資金の貸付け
ハ.銀行業に付随する業務等のうち、次のⅰからⅻに掲げる業務
ⅰ 債務の保証又は手形の引受け
ⅱ 特定目的会社発行社債の引受け等
ⅲ 有価証券の私募の取扱い
ⅳ 地方債又は社債その他の債券の募集又は管理の受託
ⅴ 外国銀行の業務の代理又は媒介
ⅵ デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理
ⅶ 金融等デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理
ⅷ 有価証券関連店頭デリバティブ取引
ⅸ 有価証券関連店頭デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理
ⅹ 投資助言業務
ⅺ 信託に係る事務に関する業務
ⅻ 地球温暖化防止の観点での算定割当量関連業務
ニ.登録金融機関の業務(金融商品取引法第33条第2項の業務)(次のⅰからⅲに掲げる業務を除く)
ⅰ 投資の目的又は信託契約に基づく有価証券の売買・有価証券関連デリバティブ取引及び書面取次ぎ行為
ⅱ 国債等の募集の取扱い等
ⅲ 証券投資信託の募集の取扱い等
ホ.その他の法律の規定により銀行が営むことができる業務(次のⅰからⅴに掲げる業務を除く)
ⅰ 当せん金付証票の売りさばき等
ⅱ 国民年金基金の加入申出受理業務
ⅲ かんぽ生命保険の一部の生命保険の募集
ⅳ 確定拠出年金(個人型)の加入申込受理業務
ⅴ 拠出年金運営管理業(個人型)
ヘ.その他内閣府令・総務省令で定める業務
(f) ゆうちょ銀行における預入限度額
ゆうちょ銀行は、郵政民営化法により、当座預金に相当する振替貯金を除き、原則として一の預金者から、受入れをすることができる預金等の額が制限されております。(法第107条、郵政民営化法施行令第2条)
2019年3月13日に公布された郵政民営化法施行令の一部を改正する政令に基づき、同政令の施行日である2019年4月1日からの預入限度額は下記のとおりであります。また、預金保険制度による貯金の保護の範囲については変更ありません。
イ.通常貯金・・・1,300万円
ロ.定期性貯金(定額貯金及び定期貯金等。郵政民営化前に預入した郵便貯金(郵政管理・支援機構に引き継がれたもの)を含み、ハ.を除く。)・・・1,300万円
ハ.財形定額貯金、財形年金定額貯金、財形住宅定額貯金・・・あわせて550万円
(g) ゆうちょ銀行における子会社保有の制限
ゆうちょ銀行は、子会社対象金融機関等を子会社(銀行法第2条第8項に規定する子会社)としようとするときは、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を受けなければならないものとされております。(法第111条第1項)
また、銀行(銀行法第16条の2第1項第1号、第2号又は第7号に掲げる会社)を子会社としてはならないものとされております。(法第111条第7項)
(h) ゆうちょ銀行における合併、会社分割、事業の譲渡、譲受けの認可
ゆうちょ銀行を当事者とする合併、会社分割、事業の譲渡、譲受けは、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないとされております。(法第113条第1項、第3項及び第5項)
ただし、内閣総理大臣及び総務大臣は、金融機関(預金保険法第2条第1項各号に掲げる者)との合併その他一定の合併、会社分割、事業の譲渡、譲受けについては、上記認可をしてはならないものとされております。(法第113条第2項、第4項及び第6項)
(i) かんぽ生命保険における業務の制限
かんぽ生命保険は、郵政民営化法により、政令で定めるもの以外の保険の種類の保険の引受けを行おうとするときは、その内容を定めて、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を受けなければならないものとされております。(法第138条第1項)
また、保険業法第97条の規定により行う業務以外の業務を行おうとするときは、その内容を定めて、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を受けなければならないとされております。(法第138条第3項)
なお、保険料として収受した金銭その他の資産を次に掲げる方法以外の方法により運用しようとするときは、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を受けなければならないものとされております。(法第138条第2項)
イ.保険契約者に対する資金の貸付け
ロ.地方公共団体に対する資金の貸付け
ハ.コール資金の貸付け
ニ.当社又は日本郵便に対する資金の貸付け
ホ.郵政管理・支援機構に対する資金の貸付け
ヘ.その他内閣府令・総務省令で定める方法
また、内閣総理大臣及び総務大臣は、新規業務の認可や下記(k)(l)の規制に係る認可の申請があった場合、下記(j)の規制に係る政令の制定又は改廃の立案をしようとする場合は、郵政民営化委員会の意見を聴かなければならないこととされております。
一方、当社がかんぽ生命保険の株式の2分の1以上を処分した旨を総務大臣に届け出た日以後は、郵政民営化法第138条に係る認可は要しないものの、かんぽ生命保険が各業務を行おうとするときは、その内容を定めて、内閣総理大臣及び総務大臣への届出を要するとともに、業務を行うに当たっては、他の生命保険会社との適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害することのないよう特に配慮しなければならないものとされております。(法第138条の2)
当社は2021年6月9日付でかんぽ生命保険の株式の2分の1以上を処分した旨の届出を行ったことから、郵政民営化法第138条の2の定めに基づき、新規業務、新商品の開発・販売、新たな方法による資産運用にかかる認可手続きは不要となり、届出制へと移行しております。なお、郵政民営化委員会から2021年10月14日に公表された「株式会社かんぽ生命保険の新規業務に関する届出制の運用に係る郵政民営化委員会の方針(令和3年10月)」において、届出後に必要に応じて郵政民営化委員会による調査審議が実施される場合があり、その場合の調査審議に要する期間はこれまでの認可制に比べて短縮される旨の方針が示されております。
(j) かんぽ生命保険における加入限度額
かんぽ生命保険の保険契約については、郵政民営化法及び関連法令により、被保険者1人について加入できる保険金額などの限度(加入限度額)が定められております。(法第137条、郵政民営化法施行令第6条、第7条及び第8条)
なお、被保険者が郵政民営化前の簡易生命保険契約に加入している場合には、加入限度額は、以下の金額から簡易生命保険契約の保険金額等を差し引いた額となります。
イ. 基本契約の保険金額の加入限度額
ⅰ 被保険者が満15歳以下のとき 700万円
ⅱ 被保険者が満16歳以上のとき 1,000万円(被保険者が満55歳以上の場合の特別養老保険の保険金額は、加入している普通定期保険及び普通定期保険(R04)とあわせて800万円)
ただし、被保険者が満20歳以上55歳以下の場合は、一定の条件(加入後4年以上経過した保険契約がある場合など)のもとに、累計で2,000万円までとなっております。なお、特定養老保険については、年齢にかかわらず、500万円までとなっております。
ロ. 年金額(介護割増年金額を除きます。)の加入限度額
年額90万円(初年度の基本年金額)(夫婦年金保険及び夫婦年金保険付夫婦保険の配偶者である被保険者に係る額を除きます。)
ハ. 特約保険金額の加入限度額
ⅰ 疾病にかかったこと、傷害を受けたこと又は疾病にかかったことを原因とする人の状態、傷害を受けたことを直接の原因とする死亡及びこれらに類するものに対する保障・・・あわせて1,000万円
ⅱ 上記に掲げるものに関し、治療を受けたことに対する保障・・・1,000万円
(注) 上記の法令で定める加入限度額以外にも、基本契約の保険種類等により付加できる特約の保険金額に一定の制限があります。
ニ. 払込保険料総額の加入限度額
財形積立貯蓄保険及び財形住宅貯蓄保険・・・あわせて550万円(財形商品については、他に、関連法令による払込保険料総額等の制限があります。)
(k) かんぽ生命保険における子会社保有の制限
かんぽ生命保険は、子会社対象会社を子会社(保険業法第2条第12項に規定する子会社)としようとするとき(同法第106条第1項第16号に掲げる会社にあっては、かんぽ生命保険又はその子会社が合算してその基準議決権数を超える議決権を取得し、又は保有しようとするとき)は、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を受けなければならないものとされております。(法第139条第1項)
また、保険会社等(保険業法第106条第1項第1号から第2号の2まで又は第8号に掲げる会社)を子会社としてはならないものとされております。(法第139条第7項)
(l) かんぽ生命保険における保険契約の移転、合併、会社分割又は事業の譲渡若しくは譲受けの認可
かんぽ生命保険がする保険契約の移転、かんぽ生命保険を当事者とする合併、会社分割、事業の譲渡、譲受けは、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないものとされております。(法第141条第1項、第3項、第5項及び第7項)
また、内閣総理大臣及び総務大臣は、当社又はかんぽ生命保険の子会社を移転先会社とする保険契約の移転、保険会社(保険業法第2条第2項に規定する保険会社)との合併その他一定の合併、会社分割、事業の譲渡、譲受けについては、上記認可をしてはならないものとされております。(法第141条第2項、第4項、第6項及び第8項)
(注) 当社がかんぽ生命保険の株式の全部を処分した日又は当社がかんぽ生命保険の株式の2分の1以上を処分した旨を総務大臣が内閣総理大臣に通知した日以後に、かんぽ生命保険と他の生命保険会社との間の適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害するおそれがないと認める決定があった日のいずれか早い日以後は、上記(i)に記載の同法第138条の2に基づく届出は不要となります。加えて、この場合には、上記(i)から(l)までに記載の郵政民営化法上の制限等は適用されないこととされております。(法第134条)
④ 独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構法
(a) 趣旨
郵政管理・支援機構の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定めております。
(b) 概要
郵政管理・支援機構の目的は、公社から承継し政府による支払保証が継続された郵便貯金(積立郵便貯金、定額郵便貯金、定期郵便貯金等)及び簡易生命保険を適正かつ確実に管理し、これらに係る債務を確実に履行することにより、郵政民営化に資するとともに、郵便局ネットワークの維持の支援のための交付金を交付することにより、郵政事業に係る基本的な役務の提供の確保を図り、もって利用者の利便の確保及び国民生活の安定に寄与することとされております。(法第3条)
郵政管理・支援機構は、郵便貯金管理業務(公社から承継した郵便貯金の管理に関する業務等)及び簡易生命保険管理業務(同簡易生命保険契約の管理に関する業務等)をその業務の範囲とし、郵便貯金管理業務の一部をゆうちょ銀行に、簡易生命保険管理業務の一部をかんぽ生命保険に、それぞれ委託しております。(法第13条、第15条及び第18条)
郵政管理・支援機構は、ゆうちょ銀行との間で郵便貯金資産(郵便貯金管理業務の経理を区分する郵便貯金勘定に属する資産)の運用のための預金に係る契約を、かんぽ生命保険との間で簡易生命保険契約の再保険の契約を、それぞれ締結しております。(法第15条及び第16条)
また、郵便局ネットワークの維持の支援に要する費用に充てるため、郵政管理・支援機構が関連銀行(ゆうちょ銀行)及び関連保険会社(かんぽ生命保険)から拠出金を徴収し、日本郵便に対し郵便局ネットワークの維持に要する費用の一部に充てるための交付金を交付することとされております。(法第18条の2及び第18条の3)
⑤ 郵便法
(a) 郵便の実施
郵便の業務については、日本郵便が行うことが郵便法に定められております。(法第2条)
また、日本郵便以外の何人も、郵便の業務を業とし、また、日本郵便が行う郵便の業務に従事する場合を除いて、郵便の業務に従事してはならないとされております。(法第4条)
(b) ユニバーサルサービスの提供
郵便法の目的が、郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進することと規定されているとおり(法第1条)、日本郵便は郵便のユニバーサルサービスを提供することが義務付けられております。
(c) 業務の制限
イ.郵便約款
日本郵便は、郵便の役務に関する提供条件について郵便約款を定め、総務大臣の認可を受けなければならず、これを変更しようとするときも同様とされております。(法第68条)
ロ.郵便業務管理規程
日本郵便は、業務開始の際、郵便の業務の管理に関する規程を定め、総務大臣の認可を受けなければならず、これを変更しようとするときも同様とされております。(法第70条)
ハ.業務の委託
日本郵便は、郵便の業務の一部を委託しようとするときは、他の法律に別段の定めがある場合を除き、総務大臣の認可を受けなければならないとされております。(法第72条)
ニ.料金
日本郵便は、郵便に関する料金を定め、あらかじめ総務大臣に届け出なければならず、これを変更するときも同様とされております。また、第三種郵便物及び第四種郵便物については、日本郵便が料金を定め、総務大臣の認可を受けなければならず、これを変更しようとするときも同様とされております。(法第67条)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
資産の部合計は、前連結会計年度末比7,735,393百万円減の296,111,587百万円となりました。
主な要因は、銀行業等における現金預け金1,740,520百万円の増、銀行業及び生命保険業等における金銭の信託1,025,286百万円の増、銀行業等における貸出金516,275百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業等における有価証券10,402,212百万円の減、銀行業及び生命保険業における買現先勘定785,369百万円の減によるものであります。
負債の部合計は、前連結会計年度末比8,144,667百万円減の281,013,330百万円となりました。
主な要因は、銀行業における貯金689,707百万円の増、銀行業等におけるその他負債554,210百万円の増の一方、銀行業等における借用金4,151,607百万円の減、生命保険業における責任準備金3,015,234百万円の減、生命保険業等における債券貸借取引受入担保金1,809,262百万円の減によるものであります。
純資産の部合計は、前連結会計年度末比409,274百万円増の15,098,256百万円となりました。
主な要因は、非支配株主持分2,641,071百万円の増、繰延ヘッジ損益104,786百万円の増の一方、資本剰余金1,458,718百万円の減、銀行業等におけるその他有価証券評価差額金837,535百万円の減によるものであります。
各事業セグメント別の資産の状況は以下のとおりであります。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比126,093百万円減の2,059,374百万円となりました。
主な要因は、次期基幹システムの更改等によりソフトウェアが25,999百万円増加した一方、子会社への追加出資等により現金預け金が181,153百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比47,403百万円減※の2,585,101百万円となりました。
主な要因は、不動産開発による建設仮勘定の増加等により有形固定資産が68,444百万円増加した一方、子会社への追加出資等により現金預け金が170,728百万円減少したことによるものであります。
※ 当連結会計年度より、当社グループの報告セグメントの区分として従来「郵便局窓口事業」に含まれていたJPビルマネジメント株式会社の営む事業を「その他」に変更しており、前連結会計年度末比については、区分方法の変更に伴う組替後の数値により記載しております。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比29,317百万円減の405,955百万円となりました。
主な要因は、建物が7,586百万円増加した一方、営業未収入金等のその他資産が33,168百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比3,374,032百万円減の229,580,406百万円となりました。
主な要因は、現金預け金が1,555,610百万円、金銭の信託が736,454百万円、貸出金が1,162,399百万円増加した一方、有価証券が6,776,082百万円減少したことによるものであります。
⑤ 生命保険業
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比4,487,407百万円減の62,687,388百万円となりました。
主な要因は、保有契約の減少に伴い保険契約準備金が減少したことに対応し、有価証券が3,576,086百万円減少、貸出金が646,123百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度、当社グループは、中期経営計画「JPビジョン2025」の2年目として、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」の実現のため、さまざまな企業との協業を推進し、コアビジネスの充実・強化に向け、各施策に取り組んでまいりました。
DXの推進に関して、2022年7月に、リアルの郵便局ネットワークとデジタルを融合し、お客さまの体験価値を高める郵便局の実現に向け、「みらいの郵便局」の実証実験プロジェクトを開始しました。
コアビジネスの充実強化に関して、郵便・物流事業では、荷物分野や物流ソリューションにおいて、お客さまニーズを捉えた商品やサービスにより収益拡大に取り組みました。郵便局窓口事業においては、かんぽ生命保険商品の不適正募集等の問題に係る業務改善施策を着実に実行していくほか、お客さま本位のコンサルティング営業の徹底に努めました。国際物流事業では、コスト削減の取組を徹底するとともに、アジアにおけるコントラクトロジスティクスの強化・拡大を目指しました。銀行業では、「ゆうちょ通帳アプリ」・家計簿アプリ「ゆうちょレコ」などのデジタルチャネルから得られる家計データを活用し、新しいリテールビジネスへの変革を進めました。生命保険業では、2年目を迎える「新しいかんぽ営業体制」をさらに推進したほか、2023年4月に学資保険「はじめのかんぽ」の改定を行いました。
ビジネスポートフォリオの転換に関して、当社は、2023年3月にゆうちょ銀行株式の1,112,166,200株を処分し、当社のゆうちょ銀行に対する議決権保有割合は60.6%となりました(株式処分前の議決権保有割合は89.0%)。かんぽ生命保険株式については、2021年5月及び6月等の株式処分等により議決権保有割合は49.8%となっております。引き続き、ゆうちょ銀行株式について「JPビジョン2025」の期間中において、保有割合が50%以下になるまで、できる限り早期に売却することを目指します。金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとする郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。
このような取組を行った結果、当連結会計年度における連結経常収益は11,138,580百万円(前期比126,193百万円減)、連結経常利益は657,499百万円(前期比333,965百万円減)、連結経常利益に、特別損益や契約者配当準備金繰入額等を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、431,066百万円(前期比70,618百万円減)となりました。
各事業セグメント別の業績は、以下のとおりであります。
郵便・物流事業につきましては、郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第70号)の施行に伴うサービスの見直しとして、郵便区内特別郵便物の差出条件の変更を行うとともに、同郵便物の料金の改定を行いました。
また、「手紙の書き方体験授業」支援の展開、スマートフォンを活用した年賀状サービスの提供、手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便の利用の維持を図るとともに、成長するEC市場やフリマ市場を確実に取り込むため、自宅以外で荷物等を受け取り又は差し出すことができる「はこぽす」として利用可能な「PUDOステーション」を拡大するなど、利便性向上に向けた取組を進めてきました。
加えて、日本郵便と楽天グループ株式会社の両社が出資するJP楽天ロジスティクス株式会社において、効率的な配送ネットワークの構築に取り組んだほか、荷量の増加に対応するため、新たな倉庫拠点を開設しました。また、佐川急便株式会社との取組として、「飛脚ゆうパケット便」及び「飛脚グローバルポスト便」の受託を開始したほか、「郵便局カタログ」商品を「飛脚クール便(冷凍)」でお届けする取組を行っております。
さらに、輸送テレマティクス※の導入や輸送ダイヤグラムの最適化等、輸送DXを推進してきたほか、ロボティクス(AGV(無人搬送車)等)や配送の高度化(ドローンや配送ロボット等)についても、将来的な実用化に向けての実証実験・試行に取り組んでまいりました。2023年2月には、DXの本格的な実運用に対応した次世代型郵便局として、市川南郵便局を開局し、AGVや制御管制システムの運用等、DXの取組を進めております。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、郵便物等の放棄・隠匿を含む部内犯罪の根絶、顧客情報の保護、内部通報制度の改善等に取り組みました。
また、当年度の総取扱物数は、郵便物が144億4,510万通(前期比2.8%減)、ゆうパックが9億8,032万個(前期比0.8%減)、ゆうメールが31億1,290万個(前期比7.0%減)となりました。
このような取組を行った結果、当連結会計年度の郵便・物流事業におきましては、厳しい競争環境等によるゆうパック(ゆうパケットを含む。)の取扱数量の減少のほか、年賀葉書の減少等により経常収益は2,001,619百万円(前期比42,005百万円減)、経常費用は引き続きコストコントロールの取組等を進めたものの、水道光熱費の上昇や新規子会社費用の影響等もあり増加し、経常利益は35,212百万円(前期比68,685百万円減)となりました。また、日本郵便の当連結会計年度における郵便・物流事業の営業収益は1,997,817百万円(前期比43,393百万円減)、営業利益は32,852百万円(前期比69,393百万円減)となりました。
※ 輸送テレマティクスとは、スマートフォンアプリやGPS情報等を活用し、運送便の動態管理等を実現することであります。
(注) 1.第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物の概要/特徴は、以下のとおりであります。
2.年賀は、年賀郵便物(年賀特別郵便(取扱期間12月15日~12月28日)及び12月29日~1月7日に差し出された年賀はがきで消印を省略したもの)の物数であります。
3.選挙は、公職選挙法に基づき、公職の候補者又は候補者届出政党から選挙運動のために差し出された通常はがきの物数であります。別掲で示しております。
4.特殊は、速達、書留、特定記録、本人限定受取等の特殊取扱(オプションサービス)を行った郵便物の物数の合計であります。交付記録郵便物用特定封筒(レターパックプラス)及び電子郵便(レタックス、Webゆうびん、e内容証明)を含んでおります。
5.ゆうパックは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
6.ゆうパケットは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。小型の荷物をお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
7.ゆうメールは、一般貨物法制の規制を受けて行っている1kgまでの荷物の愛称であります。主に冊子とした印刷物やCD・DVDなどをお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。
郵便局窓口事業につきましては、郵便局等での積極的な募集活動を停止していたかんぽ生命保険商品、投資信託、提携金融商品(変額年金保険・引受条件緩和型医療保険・傷害保険)について、信頼回復に向けた業務運営を行うことから始めることとし、2020年10月以降、その取組を進めてまいりました。
この取組においては、お客さまからご要望があった場合のみ金融商品のご提案を行ってまいりましたが、2021年4月からは、信頼回復に向けた業務運営を継続する中で、お客さまの想定されるニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を実施することで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しております。
不適正募集の根絶については、新規契約申込時の重層的なチェックの実施のほか、募集品質データの管理基盤を構築し、募集人に対する指導やリスク管理を強化するなど、募集品質の向上や募集管理態勢の高度化に向けた取組を継続してまいりました。
また、窓口業務運営のデジタル化を進めており、非対面・非接触サービスへのニーズの高まりに対応すべく、投資信託のオンライン相談等を開始したほか、がん保険や引受条件緩和型医療保険、自動車保険のデジタル申込み、デジタル発券機や郵便窓口セルフレジの導入等を進めてまいりました。
そのほか、郵便局のショッピングセンター内等への新規出店や既存店舗の配置の見直し等を通じ、郵便局ネットワークの最適化にも取り組んでまいりました。また、郵便局ネットワークの価値を高めるため、地方公共団体事務の受託や郵便局窓口における地域金融機関の手続事務の受付・取次、郵便局窓口と駅窓口の一体運営等、地方公共団体や他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局の展開を進めてまいりました。
あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題に取り組んだほか、資金横領を含む部内犯罪の根絶、顧客情報の保護、マネー・ローンダリング、テロ資金供与及び拡散金融※対策、内部通報制度の改善等に取り組みました。
※ 拡散金融とは、「大量破壊兵器等の拡散に関与する者への資金や金融サービスの提供」をいいます。
また、不動産事業においては、JPタワー等による事務所、商業施設、住宅や保育施設等の賃貸事業等を行いました。不動産事業における主なプロジェクトの概要は以下のとおりであります。
(注) 2023年3月31日時点
このような取組を行った結果、当連結会計年度の郵便局窓口事業におきましては、保険手数料や銀行手数料の減少が続き、経常収益は1,075,762百万円(前期比80,953百万円減※)となる一方、経常費用は2022年4月からの新しいかんぽ営業体制への移行に伴う人件費の減少等により減少した結果、経常利益は50,466百万円(前期比25,980百万円増※)となりました。また、日本郵便の当連結会計年度における郵便局窓口事業の営業収益は1,074,041百万円(前期比77,756百万円減)、営業利益は49,311百万円(前期比24,741百万円増)となりました。
※ 当連結会計年度より、当社グループの報告セグメントの区分として従来「郵便局窓口事業」に含まれていたJPビルマネジメント株式会社の営む事業を「その他」に変更しており、前期比については、区分方法の変更に伴う組替後の数値により記載しております。
③ 国際物流事業
国際物流事業につきましては、日本郵便の子会社であるトール社の経営改善の取組を継続しており、豪州事業の合理化等の効率化施策を推進するとともに、アジア域内で特に成長が見込まれる国や業種を重視した事業展開を進めるなど、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換を進めております。
加えて、JPトールロジスティクス株式会社を活用し、コントラクトロジスティクス※を中心とした BtoB 事業の拡大に取り組みました。
このような取組を行った結果、当連結会計年度の国際物流事業におきましては、2021年8月のエクスプレス事業譲渡の影響による同事業の収益剥落の影響に加え、フォワーディング事業の貨物単価下落等による減収もあり、経常収益は600,179百万円(前期比87,638百万円減)、経常費用はエクスプレス事業の費用剥落等により減少したものの、経常損失は723百万円(前期は21,226百万円の経常利益)となりました。また、日本郵便の当連結会計年度における国際物流事業については、営業収益は599,462百万円(前期比88,044百万円減)、営業利益(EBIT)は10,732百万円(前期比18,055百万円減)となりました。
なお、トール社の債務超過については、日本郵便からの2,000百万豪ドル(約1,800億円)の追加出資により、2023年1月末時点で解消しております。
また、JPトールロジスティクス株式会社及びトールエクスプレスジャパン株式会社について、輸送や在庫・配送業務の効率運営を実現し、「国内BtoBビジネスの拡大」を進めるため、2023年4月に事業を再編し、社名をそれぞれJPロジスティクスグループ株式会社及びJPロジスティクス株式会社に変更し、報告セグメントを「国際物流事業」から「郵便・物流事業」に変更しております。
※ コントラクトロジスティクスとは、売買に関与しない第三者が特定の荷主顧客と契約を結び、輸送や在庫・配送業務の効率運営を図るサービスのことであります。
ゆうちょ銀行では、中期経営計画(2021年度~2025年度)で策定した5つの重点戦略(「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」、「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」、「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」、「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」、「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」)に基づき、着実にビジネスの拡大・強化に取り組んでまいりました。
具体的には、ゆうちょ銀行の持続的な企業価値向上を支える成長エンジンと位置づけている「リテールビジネス」、「マーケットビジネス」及び「新しい法人ビジネス(Σビジネス)」という3つのビジネス・エンジン各々において、5つの重点戦略につき、以下のとおり取り組みました。
第1のエンジン「リテールビジネス」では、主に個人のお客さまを対象に、全国約24,000の店舗ネットワーク、約31,000台のATMネットワーク、すべてのお客さまが利用しやすいデジタルチャネル等を通じて、日本全国あまねく「安心・安全」で「親切・丁寧」な金融サービスの提供に取り組みました。
店舗ネットワークについては、ご自身でスムーズに口座開設等の取引を行えるセルフ型営業店端末「Madotab」をゆうちょ銀行の全直営店(233店舗)に配備したほか、ATMネットワークについては、通帳繰越機能付きATMの配備を進める等、お客さまニーズに応えるとともに、業務効率化を推進しました。
デジタルサービスについては、スマートフォンを利用し、いつでも貯金の現在高や入出金明細の確認、送金、定額・定期貯金の預入・払戻し、投資信託の購入、住所・電話番号の変更等の基本的な銀行取引ができる「ゆうちょ通帳アプリ」の利用口座が700万口座を突破するとともに、スマートフォンを利用して金融資産や毎月の収支の管理ができる家計簿アプリ「ゆうちょレコ」のサービスを開始しました。さらに、キャッシュカード一体型のVisaデビットカード「ゆうちょデビット」の発行を開始する等、キャッシュレス化の取組を推進しました。
資産形成サポートビジネスについては、お客さまのライフプランや家計の状況の変化等に合わせた最適な運用ポートフォリオを提供する「ゆうちょファンドラップ」の提供を開始しました。
第2のエンジン「マーケットビジネス」については、適切なリスク管理の下、市場環境の変化を踏まえつつ、国際分散投資の拡大等に取り組みました。
具体的には、インフレ高進を受けた米欧中央銀行の急速な金融引締め及びそれを受けた景気減速懸念や、米欧の金融システム不安の高まり等を受け、市場環境が大きく変動する中、機動的なポートフォリオ運営により、利益を確保してまいりました。
また、リスク対比リターンやリスク耐性強化を意識しつつ、投資適格領域の外国社債等を中心にリスク性資産残高を拡大するとともに、リスク性資産のうち、プライベートエクイティファンド等の戦略投資領域については、優良案件への選別的な投資に努め、残高を積み上げました。
さらに、市場環境が大きく変動する中、ストレステストの高度化やモニタリングの強化を推進し、リスク管理の一層の深化を図りました。
ゆうちょ銀行は、ビジネスの中長期的なサステナビリティ(持続性)を強化するため、「リテールビジネス」と「マーケットビジネス」に次ぐ第3の新しい成長エンジンとして、「投資を通じたゆうちょ銀行らしい新しい法人ビジネス(Σビジネス)」を2022年11月に公表しました。
Σビジネスは、「社会と地域の発展に貢献する」というゆうちょ銀行のパーパスに合致するとともに、全国津々浦々に展開する店舗ネットワークなど、ゆうちょ銀行の強みを活かした、新しい法人ビジネスであります。具体的には3つの業務の柱があり、まず、第一に、ゆうちょ銀行子会社のJPインベストメント株式会社を中核としたGP業務の本格化により、全国の成長性のある中堅・中小企業に投資(資本性資金の供給)を行い、国内への資金循環を強化してまいります。第二に、投資先のベンチャー企業等の便利な商品・サービスを、ゆうちょ銀行の店舗ネットワークを通じて全国各地で紹介・媒介(マーケティング)し、投資先企業等の成長を支援してまいります。第三に、ゆうちょ銀行の店舗ネットワークを活用して、全国各地の投資先候補の発掘(ソーシング)を行ってまいります。
当連結会計年度においては、GP業務本格化の一環として、JPインベストメント株式会社が設立した「JPインベストメント地域・インパクトファンド1号」に出資したほか、Σビジネスの考え方が投資ガイドライン等に反映されているフロンティア・キャピタル株式会社に出資しました。
また、投資先企業の紹介・媒介(マーケティング)業務として、スマートフォンを活用して訪日外国人向けに簡便な「免税還付手続きの電子化サービス」を提供する株式会社Pie Systems Japanと協業契約を締結し、加盟店開拓業務をスタートしました。
このような取組を行った結果、当連結会計年度の銀行業におきましては、外国債券の売却に伴う外国為替売買益の増加等により、経常収益は2,064,115百万円(前期比86,472百万円増)、経常費用は外貨調達コストの増加等により増加し、経常利益は455,537百万円(前期比35,356百万円減)となりました。
また、ゆうちょ銀行における損益の概要などの詳細な状況については、下記「(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況」「(参考2) 自己資本比率の状況」「(参考3) 資産の査定」に記載のとおりであります。
(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況
当事業年度の業務粗利益は、前事業年度比2,482億円減少の1兆426億円となりました。このうち、資金利益は、外債投資信託の収益減少を主因に、前事業年度比3,623億円の減少となりました。外債投資信託の収益減少は、海外の金利上昇やクレジットスプレッドの拡大等による、為替ヘッジコストの増加、収益認識できない特別分配金の増加、投資信託内債券の早期償還に伴う償還益の減少、投資信託の解約益の減少等によるものであります。役務取引等利益は、2022年1月の料金改定の影響によりATM関連手数料や為替・決済関連手数料等が増加したことを主因に、前事業年度比189億円の増加となりました。その他業務利益は、外国債券の売却に伴う外国為替売買損益の増加を主因に、前事業年度比951億円の増加となりました。
経費は、預金保険料の減少や日本郵便への委託手数料の減少等により、前事業年度比572億円減少の9,236億円となりました。
業務純益は、前事業年度比1,910億円減少の1,189億円となりました。
臨時損益は、プライベートエクイティファンドや不動産ファンドに係る収益の拡大等により、前事業年度比1,477億円増加の3,292億円となりました。
経常利益は、前事業年度比432億円減少の4,482億円となりました。
この結果、当期純利益は3,246億円、前事業年度比303億円の減益となりました。
(注) 1.業務純益=業務粗利益-経費(除く臨時処理分)-一般貸倒引当金繰入額
2.臨時損益とは、損益計算書中「その他経常収益・費用」から一般貸倒引当金繰入額を除き、金銭の信託運用見合費用及び退職給付費用のうち臨時費用処理分等を加えたものであります。
3.「金銭の信託運用見合費用」とは、金銭の信託取得に係る資金調達費用であり、金銭の信託運用損益が臨時損益に計上されているため、業務費用から控除しているものであります。
4.国債等債券損益=国債等債券売却益+国債等債券償還益-国債等債券売却損-国債等債券償還損-国債等債券償却
5.株式等関係損益=株式等売却益-株式等売却損-株式等償却
6.金額が損失又は費用には△を付しております。
(参考) 与信関係費用
(注) 1.金融再生法開示債権に係る費用を計上しております。
2.金額が損失又は費用には△を付しております。
ゆうちょ銀行は、海外店や海外に本店を有する子会社(以下「海外子会社」といいます。)を有しておりませんが、円建の取引を「国内業務部門」、外貨建取引を「国際業務部門」に帰属させ(ただし、円建の対非居住者取引は「国際業務部門」に含む。)、各々の収益・費用を計上した結果、国内業務部門・国際業務部門別の資金利益等は次のとおりとなりました。
当事業年度は、国内業務部門においては、資金利益は2,761億円、役務取引等利益は1,469億円、その他業務利益は△181億円となりました。
国際業務部門においては、資金利益は、海外の金利上昇やクレジットスプレッドの拡大等による、為替ヘッジコストの増加、収益認識できない特別分配金の増加、投資信託内債券の早期償還に伴う償還益の減少、投資信託の解約益の減少等に伴う外債投資信託の収益減少等による外国証券利息の減少や、資金調達費用の増加等により5,089億円に減少、役務取引等利益は△5億円、その他業務利益は1,292億円となりました。
この結果、国内業務部門、国際業務部門の相殺消去後の合計は、資金利益は7,851億円、役務取引等利益は1,463億円、その他業務利益は1,111億円となりました。
(注) 1.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前事業年度4,404百万円、当事業年度10,863百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額(資金貸借に係る利息)は下表のとおりであります。なお、当事業年度末より、当該資金貸借に係る利息の算出方法を見直しております。
当事業年度の資金運用勘定の平均残高は219兆6,067億円、利回りは0.56%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は210兆3,378億円、利回りは0.21%となりました。
国内・国際別に見ますと、国内業務部門の資金運用勘定の平均残高は210兆2,108億円、利回りは0.14%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は204兆2,173億円、利回りは0.01%となりました。
国際業務部門の資金運用勘定の平均残高は76兆6,089億円、利回りは1.20%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は73兆3,333億円、利回りは0.56%となりました。
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引であります。
2.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,629,573百万円、当事業年度2,751,073百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,629,573百万円、当事業年度2,751,073百万円)及び利息(前事業年度△967百万円、当事業年度△2,532百万円)を控除しております。
3.預け金等は、譲渡性預け金、日銀預け金、コールローン、買入金銭債権であります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
4.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。
(注) 1.「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度1,531,380百万円、当事業年度2,357,381百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度1,531,380百万円、当事業年度2,357,381百万円)及び利息(前事業年度5,372百万円、当事業年度13,396百万円)を控除しております。
(注) 1.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度4,160,954百万円、当事業年度5,108,455百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度4,160,954百万円、当事業年度5,108,455百万円)及び利息(前事業年度4,404百万円、当事業年度10,863百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額(資金貸借の平均残高及び資金貸借に係る利息)は下表のとおりであります。なお、当事業年度末より、当該資金貸借に係る利息の算出方法を見直しております。
当事業年度の役務取引等利益は、2022年1月の料金改定の影響によりATM関連手数料や為替・決済関連手数料等が増加したことを主因に、前事業年度比189億円増加の1,463億円となりました。
当事業年度末の貯金残高は、通常貯金等の残高増加を主因に、前事業年度末比1兆5,095億円増加の194兆9,515億円となりました。
○ 預金の種類別残高(末残・構成比)
○ 預金の種類別残高(平残・構成比)
(注) 1.通常貯金等=通常貯金+特別貯金(通常郵便貯金相当)
2.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「振替貯金」は「当座預金」、「通常貯金」は「普通預金」、「貯蓄貯金」は「貯蓄預金」、「定期貯金」は「定期預金」に相当するものであります。「定額貯金」は「その他の預金」に相当するものでありますが、「定期性預金」に含めております。
3.特別貯金(通常郵便貯金相当)は郵政管理・支援機構からの預り金のうち、郵政管理・支援機構が公社から承継した定期郵便貯金、定額郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金に相当する郵便貯金で満期となったものなどであります。
4.上記の通常貯金、定期性預金は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項 ③ 郵政民営化法 (f) ゆうちょ銀行における預入限度額」に記載の郵政民営化法における預入限度額規制上の区分とは異なります。
当事業年度末の運用資産のうち、国債は38.1兆円、その他の証券は78.3兆円となりました。
(注) 「預け金等」は譲渡性預け金、日銀預け金、買入金銭債権であります。
当事業年度末の評価損益(その他目的)は、内外金利の上昇及び海外のクレジットスプレッドの拡大等に伴い、ヘッジ考慮後で、前事業年度末から1兆90億円減少し、2,140億円(税効果前)となりました。
(注) 「有価証券」には、有価証券のほか、現金預け金中の譲渡性預け金、買入金銭債権を含んでおります。
(注) 1.「国内」とは本邦居住者に対する貸出、「国際」とは非居住者に対する貸出であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.「金融・保険業」のうち郵政管理・支援機構向け貸出金は、前事業年度末246,483百万円、当事業年度末157,418百万円であります。
(参考2) 自己資本比率の状況
ゆうちょ銀行の自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、ゆうちょ銀行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
単体自己資本比率(国内基準)
(注) 単体総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(参考3) 資産の査定
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、ゆうちょ銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記(a)から(c)までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
かんぽ生命保険では、2019年度に判明したかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題について、お客さまからの信頼回復に向けた取組を継続してまいりました。再発防止策として、金融庁に提出した業務改善計画において掲げた「健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立」、「適正な募集管理態勢の強化」、「取締役会等によるガバナンスの強化」を着実に実行しました。
また、2022年4月より、専門性と幅広さを兼ね備えた新しいかんぽ営業体制を構築し、当社グループ一体での総合的なコンサルティングサービスを提供しております。
上記の信頼回復に向けた取組のほか、「保険サービスの充実」、「資産運用の深化・高度化」及び「事業運営の効率化・高度化」といった事業基盤の強化、また「お客さま体験価値(CX)の向上」を中心に取り組みました。
「保険サービスの充実」については、人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えするため、2022年4月より、新医療特約「もっとその日からプラス」の取扱いを開始したほか、2022年10月より、ご加入の保険の保険期間が満了を迎えるお客さまの保障継続ニーズ等にお応えするため、契約更新制度を導入しております。
「資産運用の深化・高度化」については、保険金等の確実なお支払いのためALMを基本としつつ、低金利環境下における安定的な利差益の確保を目指し、リスク許容度の範囲で、収益追求資産への投資を継続しております。これまで多様化させてきた資産運用の深化・高度化を掲げて、海外社債投資や国内株式の自家運用、オルタナティブ投資等について継続して取り組んでおります。これら資産運用の取組については、ERMの枠組みのもとで行っており、財務の健全性の確保やリスク対比リターンの向上を図っております。また、ESG投資において、「Well-being向上」、「地域と社会の発展」、「環境保護への貢献」を重点取組テーマとし、かんぽ生命らしい“あたたかさ”の感じられる投資に取り組んでおります。
「事業運営の効率化・高度化」については、事務のペーパーレス化といった業務プロセスの改善にとどまらず、ビジネスモデルの変革等のDXを推進することにより、お客さまサービス向上と業務の効率化及び経費の削減に取り組んでおります。加えて、更なる事業費管理の高度化に向け、自律的にコストコントロールの役割を担う予算管理者を本社各部に設置する等の新たな事業費管理の仕組みを導入し、経費削減を進めております。これにより生じた経営資源は、お客さまサポ ート領域、DX推進等の強化領域にシフトしてまいります。
また、「お客さま体験価値(CX)の向上」のため、保険サービスの抜本的な見直し及びお客さまの利便性・募集品質の向上により、「かんぽ生命に入っていてよかった」と感動いただけるように取り組みました。具体的な取組としては、時間や場所に制約されない非対面等のニーズに対応するため、お客さま自身のスマートフォン等を用いた簡便な手続きの提供に取り組んでおります。2022年4月より、第1回保険料相当額等の払込みにおけるキャッシュレス決済サービスを開始するとともに、契約者さま向けWebサービス(マイページ)において、2022年5月より、新型コロナウイルス感染症による入院保険金請求を可能とし、2022年9月には、貸付金の弁済機能を拡充いたしました。
これらの取組をしてまいりましたが、当連結会計年度、生命保険業におきましては、保有契約の減少による保険料等収入の減少等により、経常収益は6,379,561百万円(前期比74,646百万円減)となりました。加えて、有価証券売却損の増加及び新しいかんぽ営業体制の構築に伴う事業費の増加等により、経常利益は117,892百万円(前期比238,220百万円減)となりました。
かんぽ生命保険における保険引受及び資産運用の状況などの詳細な状況については、下記「(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況」に記載のとおりであります。
(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況
(下表(a)イ.~ニ.の個人保険及び個人年金保険には、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。
(注) 1.件数は、新契約件数に転換後契約件数を加えた数値であります。なお、転換後契約とは、既契約の転換によって成立した契約であります。
2.個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
3.新契約年換算保険料は、新契約に係る年換算保険料に、既契約の転換による転換前後の年換算保険料の純増加分を加えた数値であります。
(参考)かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約の状況
(a) 保有契約高
(注) 計数は、郵政管理・支援機構における公表基準によるものであります。
(b) 保有契約年換算保険料
(注) かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約について、上記ハ.に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、かんぽ生命保険が算出した金額であります。
(注) 1.機構貸付とは、郵政管理・支援機構(簡易生命保険勘定)への貸付であります。
2.不動産については、土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。
(注) 1.利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。
2.一般勘定計には、有価証券信託に係る資産を含めております。
3.海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。
基礎利益は、保険料等収入、保険金等支払金、事業費等の保険関係の収支と、利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる、生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であります。
かんぽ生命保険の当事業年度における基礎利益は、1,923億円となりました。
(注) 当事業年度より、経済的な実態の反映及び各社間の取扱いに一貫性を持たせる観点から、基礎利益の計算方法について一部改正(為替に係るヘッジコストを基礎利益の算定に含め、投資信託の解約益を基礎利益の算定から除外)がなされており、これを適用しております。また、前事業年度の数値は、当事業年度における計算方法を適用した数値であります。
(参考) その他項目の内訳
(単位:百万円)
生命保険会社は将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金を積み立てており、通常予測できる範囲のリスクについては責任準備金の範囲内で対応できます。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末におけるかんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,009.1%と高い健全性を維持しております。
(注) 保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
ⅰ EVについて
エンベディッド・バリュー(以下「EV」といいます。)は対象事業に割り当てられた、資産及び負債から生じる株主への分配可能な利益の価値の見積りであります。ただし、将来の新契約から生じる価値は含みません。この価値は、修正純資産及び保有契約価値で構成されるものであります。
修正純資産は株主に帰属すると考えられる純資産(時価)であり、必要資本とフリー・サープラスで構成されるものであります。
保有契約価値は、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益の評価日時点の現在価値であり、必要資本を維持するための費用等を控除したものであります。
生命保険契約は、一般に販売時に多くのコストが発生するため、一時的には損失が発生するものの、契約が継続することで、将来にわたり生み出される利益によりそのコストを回収することが期待される収支構造となっております。現行の法定会計では、このような収支構造をそのまま各年度の損益として把握しておりますが、EVは、全保険期間を通じた損益を現在価値で評価することとなるため、現行の法定会計による財務情報では不足する情報を補うことができる指標の一つと考えております。
ⅱ EEVについて
EVの開示に関する一貫性と透明性の改善を図る目的で、2004年5月にヨーロッパの主要保険会社のCFO(最高財務責任者)の集まりである、CFOフォーラムが、ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(以下「EEV」といいます。)原則及び指針(ガイダンス)を制定いたしました。
2016年5月には、CFOフォーラムによってEEV原則の改正が公表され、EVに2016年1月から施行された欧州ソルベンシーⅡ等の計算で用いた計算手法及び前提の使用が許容されるようになりました。
ⅲ EEVの計算手法
今回のEEVの計算には、市場整合的手法を用いております。この手法は、資産又は負債から発生するキャッシュ・フローを市場で取引されている金融商品と整合的に評価するものであります。
かんぽ生命保険は、郵政民営化法に基づき、2007年10月1日に発足しました。また、2007年9月末までに契約された簡易生命保険契約は、郵政管理・支援機構に承継されるとともに、郵政管理・支援機構が負う保険責任のすべてについて、かんぽ生命保険が受再しております。
かんぽ生命保険は、郵政管理・支援機構との再保険契約において、簡易生命保険契約を他の保険契約と区分して管理すること(簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金も区分して管理すること)、簡易生命保険契約から生じた利益(危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益も含んでおります。)も区分して管理すること、及び郵政管理・支援機構が簡易生命保険契約に対して既に約款で約束している確定配当所要額と再保険損益(確定配当所要額及び法人税等を除いたこの区分における利益)の8割の合計額を、郵政管理・支援機構へ再保険配当として支払うことを定めております。EEVの計算においては、この郵政管理・支援機構への再保険配当を差し引いた後の利益を反映しております。
このように郵政管理・支援機構への再保険配当の原資に、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益が含まれることから、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金は修正純資産には含めておらず、将来において戻入する前提で保有契約価値に含めて計算しております。
かんぽ生命保険のEEVは以下のとおりであります。
ⅰ 修正純資産
修正純資産は、資産の市場価値のうち、契約者に対する負債及びその他の負債の価値を超過する部分であり、株主に帰属すると考えられる価値であります。株主配当や、2022年8月に開始した自己株式の取得及びキャピタル損を主な理由として、当事業年度末における修正純資産は前事業年度末から減少しております。修正純資産の内訳は以下のとおりであります。
(注) 1.計算対象に子会社を含めているため、かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.簡易生命保険契約に係る部分を除いております。
3.保険契約に係らない有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
当事業年度末の修正純資産を計算する際に除いた保険契約に係る部分は以下のとおりであります。
(注) 1.かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.保険契約に係る部分(②)は、簡易生命保険契約に係る部分を計上しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
3.有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
ⅱ 保有契約価値
保有契約価値は、保有契約の評価日時点における価値を表したもので、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益を現在価値に割り引いております。「ニ.前事業年度末EEVからの変動要因」に記載のとおり、前提条件(経済前提)と実績の差異を主な理由として、当事業年度末における保有契約価値は前事業年度末から減少しております。保有契約価値の内訳は以下のとおりであります。
将来利益の計算において保険契約に係る資産は簿価評価しております。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
ⅲ 新契約価値
新契約価値は、当期間に獲得した新契約(条件付解約による加入契約及び転換契約については正味増加分のみ)の契約獲得時点における価値を表したものであります。
当事業年度の新契約価値は前事業年度から増加しているものの、当事業年度において新契約量の規模が小さい一方、新契約獲得にはその多寡によらない一定の事業費等が必要となるため、当事業年度の新契約価値はマイナスとなります。新契約価値の内訳は以下のとおりであります。
なお、新契約マージン(新契約価値の保険料収入現価に対する比率)は以下のとおりであります。
(注) 将来の収入保険料を、新契約価値の計算に用いたリスク・フリー・レートで割り引いております。
ⅰ 前事業年度末EEVの調整
かんぽ生命保険は当事業年度において自己株式350億円の取得及び358億円の株主配当金を支払っており、修正純資産がその分減少しております。
ⅱ 当事業年度新契約価値
新契約価値は、当事業年度に新契約を獲得したことによる契約獲得時点における価値を表したものであり、契約獲得に係る費用を控除した後の金額が反映されております。当事業年度において新契約量の規模が小さい一方、新契約獲得にはその多寡によらない一定の事業費等が必要となるため、新契約価値はマイナスになっております。
ⅲ 期待収益(リスク・フリー・レート分)
保有契約価値の計算にあたっては、将来の期待収益をリスク・フリー・レートで割り引いておりますので、時間の経過とともに割引の影響が解放されます。これには、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用のうち当事業年度分の解放を含んでおります。修正純資産からは、対応する資産からリスク・フリー・レート(△0.075%)分に相当する収益が発生しております。
ⅳ 期待収益(超過収益分)
EEVの計算にあたっては、将来の期待収益としてリスク・フリー・レートを用いておりますが、実際の会社はリスク・フリー・レートを超過する利回りを期待しております。この項目は、その期待される超過収益を表しております。
ⅴ 保有契約価値からの移管
当事業年度に実現が期待されていた利益が、保有契約価値から修正純資産に移管されます。これには、前事業年度末の保有契約から期待される当事業年度の利益と、当事業年度に獲得した新契約からの、契約獲得に係る費用を含めた当事業年度の損益が含まれております。
これらは保有契約価値から修正純資産への振替えであり、EEVの金額には影響しません。
ⅵ 前提条件(非経済前提)と実績の差異
前事業年度末の保有契約価値の計算に用いた前提条件(非経済前提)と、当事業年度の実績の差額であります。
主に新型コロナウイルス感染症に係る保険金支払の増加により、EEVは548億円減少しました。
ⅶ 前提条件(非経済前提)の変更
前提条件(非経済前提)を更新したことにより、翌事業年度以降の収支が変化することによる影響であります。
主に事業費前提の変更により、EEVは280億円減少しました。
ⅷ 前提条件(経済前提)と実績の差異
市場金利やインプライド・ボラティリティ等の経済前提が、前事業年度末EEV計算に用いたものと異なることによる影響であります。当該影響は、当事業年度の実績及び翌事業年度以降の見積りの変更を含んでおります。
主にキャピタル損により、修正純資産は541億円減少しました。
主に海外金利上昇に伴う外国債券の含み益の減少により、保有契約価値は1,396億円減少しました。
前提条件を変更した場合のEEVの感応度は以下のとおりであります。感応度は、一度に1つの前提のみを変化させることとしており、同時に2つの前提を変化させた場合の感応度は、それぞれの感応度の合計とはならないことにご注意ください。
感応度1から4について、修正純資産の増減額は以下のとおりであります。また、感応度5から11については、保有契約価値のみの増減額となります。
(注) 参考値として、保有契約に係る資産の含み損益も加えた増減額(税引後に換算)を示しております。なお、EEVの計算にあたって、保険契約に係る部分の資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。
当事業年度において新契約量の規模が小さく、新契約価値の感応度に重要性がないため、算定しておりません。
ⅰ 感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp上昇した場合の影響を表しております。金利の変動により時価が変動する債券・貸付金等を再評価するとともに、将来の運用利回りや割引率を変動させて保有契約価値を再計算しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅱ 感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、50bp低下によりリスク・フリー・レートが0%を下回る場合は0%としております。ただし、50bp低下前のリスク・ フリー・レートが0%を下回る場合はその値をそのまま使用しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅲ 感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、感応度2と異なり、リスク・フリー・レートの正負を判定せず、下限を設けずに50bp低下させております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅳ 感応度4:株式・不動産価値10%下落
株式及び不動産の評価日時点の価格が10%下落した場合の影響を表しております。
ⅴ 感応度5:事業費率(維持費)10%減少
事業費率(契約維持に係るもの)が10%減少した場合の影響を表しております。
ⅵ 感応度6:解約失効率10%減少
解約失効率が10%減少(基本となる解約失効率に90%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅶ 感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下
死亡保険について、保険事故発生率(死亡率・罹患率)が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅷ 感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下
年金保険について、保険事故発生率が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅸ 感応度9:必要資本を法定最低水準に変更
必要資本を法定最低水準(ソルベンシー・マージン比率200%水準)に変更した場合の影響を表しております。
ⅹ 感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、株式オプションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ⅺ 感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、金利スワップションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
EEVの計算においては、リスクと不確実性を伴う将来の見通しを含んだ多くの前提条件を使用し、それらの多くは個別会社の管理能力を超えた領域に属するものであります。また、将来の実績がEEVの計算に使用した前提条件と大きく異なる場合もあり得ます。
これらの理由により、本EEV開示は、EEV計算に用いられた将来の税引後利益が達成されることを表明するものではなく、使用にあたっては、十分な注意を払っていただく必要があります。
かんぽ生命保険では、保険数理に関する専門知識を有する第三者機関(アクチュアリー・ファーム)に、EEVについて検証を依頼し、意見書を受領しております。
各報告セグメントにおける事業のほか、病院事業については、地域医療機関との連携や救急患者の受入の強化等による増収対策、業務の効率化による経費削減、また、経営改善が見込めない逓信病院(2か所※1)を譲渡する等、病院の経営改善を進めているところであります。昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた患者数の減少等の影響により、営業収益は13,352百万円(前期比668百万円減)となったものの、業務効率による経費削減等の効果等により営業損失2,938百万円(前期は3,687百万円の営業損失)となりました。今後も引き続き上記増収対策や経費削減等の経営改善に取り組みます。
また、宿泊事業については、ホテル・旅館の運営に実績又は意欲を有する事業者等への譲渡が最善と判断し、譲渡先の選定を進めてまいりました。その結果、かんぽの宿は、当連結会計年度をもって、運営していた33施設全てを事業譲渡等致しました。
不動産事業については、当社の子会社である日本郵政不動産株式会社において、五反田計画や蔵前計画等既存の開発計画の推進、グループ外不動産の取得等、不動産投資(投資額:542.4億円)を行うとともに、「ホテル メルパルク」の賃貸・管理事業を行いました※2。また、日本郵政不動産株式会社における建物管理・運営機能の強化等を目的として、2022年4月1日付で、日本郵便の100%子会社であったJPビルマネジメントの株式の全部を取得し、子会社化を実施しました。同社は、同年8月末に竣工した「広島JPビルディング」及び2023年3月末に竣工した「蔵前JPテラス」の運営管理を受託しております。今後も、建築資材調達費の高騰等の不動産関連市場の動向等を引き続き注視し、不動産事業を慎重に進めてまいります。
投資事業については、当社の子会社である日本郵政キャピタル株式会社において、当社グループの新規事業の種の探索や既存事業とのシナジーの創出のため、ネットワーク、ブランド力等を活用して成長が期待できる企業への出資(当連結会計年度11件、約40億円)を行い、出資先企業と当社グループとの連携を進めました。今後も、投資先の価値や将来の成長性を見極めながら、出資等に取り組みます。
グループシェアード事業については、業務集約による効率化効果が大きいと考えられる業務をグループ横断的に集約し、一括してBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)やDXを行い、効率化・生産性向上を図る取組を進めております。2023年2月には当社の子会社である日本郵政コーポレートサービス株式会社が日本郵便から共通事務集約センターの業務の一部を受託することとしました。今後も、対象業務を順次拡大していく予定であります。
※1 京都逓信病院及び広島逓信病院は、2022年10月1日付で事業譲渡したため、本書提出日現在、当社が運営する施設は東京逓信病院の1か所であります。
※2 「ホテル メルパルク」は、2022年9月末に6か所について営業を終了したため、本書提出日現在、営業している施設は、横浜、名古屋、大阪、広島、熊本の5か所であります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は当期首から1,762,254百万円増加し、70,181,478百万円となりました。
営業活動においては、銀行業における資金の運用や調達、生命保険業における保険料の収入や保険金の支払等の結果、8,151,226百万円の支出(前期は4,984,168百万円の収入)となりました。
主な要因として、借用金の減少3,971,000百万円、責任準備金の減少3,015,234百万円があげられます。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動においては、銀行業及び生命保険業における有価証券の売却、償還による収入等及び有価証券の取得による支出等の結果、9,352,146百万円の収入(前期比7,938,926百万円の収入増)となりました。
主な要因として、有価証券の償還による収入38,666,999百万円や有価証券の売却による収入19,019,006百万円、有価証券の取得による支出47,557,119百万円があげられます。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動においては、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入等の結果、549,640百万円の収入(前期は621,040百万円の支出)となりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
中期経営計画において、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やユニバーサルサービスを含むコアビジネスの充実強化等、グループの成長に資する投資として、デジタルサービスの拡充やデジタル郵便局実現等に向けた戦略的なIT投資や、グループ保有不動産等の不動産投資を計画しております。
また、上記の他に、当社グループ・グループ各社の企業価値向上に資する幅広い分野での資本提携やM&Aも実施いたします。なお、それらの実行にあたっては、投資判断基準等に照らして慎重に検討し、適切と判断したものを実施することとしております。
その財源は、既存のキャッシュ・フローのほか、潤沢な借入余力を活かした借入金や金融2社株式を売却した場合の売却手取金を想定しております。
なお、現在予定している設備の新設計画としては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備等の新設等」の記載をご参照ください。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。
当社グループは、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に以下の重要な会計上の見積りが当社グループの連結財務諸表に大きな影響を及ぼす可能性があると考えております。
① 金融商品の時価評価
当社グループの有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、公表された相場価格に基づいて算定しておりますが、公表された相場価格がない場合には合理的な見積りに基づいて算定された価額によっております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、見積額は変動する可能性があります。
金融商品の時価の算定方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(金融商品関係)に、金融商品のうち有価証券の時価評価に用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
② 有価証券の減損
当社グループの金銭の信託で運用する有価証券を含め売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価又は実質価額が著しく下落したものについては合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。株式市場の悪化等、将来の金融市場の状況によっては、多額の減損損失を計上する可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、原則として内部管理上独立した業績報告が行われる単位を基礎として、資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としております。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき合理的に算定しております。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件が変更された場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得を合理的に見積っております。
当連結会計年度における保険子会社の新契約実績は緩やかな回復に留まっておりますが、当該課税所得の見積りにおいては、当連結会計年度に作成した経営計画を基礎としており、今後、当該計画における取組方針の下、一定の新契約水準に到達する前提で作成しております。なお、保険子会社において計上した繰延税金資産の回収可能性については、当該経営計画を基礎とした前提の下、複数のストレスシナリオを考慮して判断しております。
以上のとおり、繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来、当社グループを取り巻く経営環境に大きな変化があった場合等、その見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
⑤ 責任準備金の積立方法
当社グループは、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。
責任準備金の計算に使用される予定死亡率、予定利率及び予定事業費率などの基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。
なお、責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑥ 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率など将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。
このため、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件の変更が行われた場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。
なお、退職給付債務等の計算の基礎に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(退職給付関係)に、退職給付債務の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
銀行持株会社としての当社の連結自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(6) 目標とする経営指標の達成状況
当社グループにおいては、主要な経営目標として1株当たり当期純利益を採用しており、2023年3月期においては当初業績予想109.36円に対し1株当たり当期純利益120.82円となりました。2023年3月期の経営成績の状況及び分析・検討については、上記「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」に示しております。
当社グループは、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業及び生命保険業を中心とした広範囲な事業を営んでおり、生産、受注といった区分による表示が困難であることから、「生産、受注及び販売の状況」については、上記「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。