売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E01569 Japan GAAP

売上高

5,059.8億 円

前期

4,301.6億 円

前期比

117.6%

時価総額

747.1億 円

株価

287 (07/12)

発行済株式数

260,324,529

EPS(実績)

-60.81 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

1,000.3万 円

前期

893.3万 円

前期比

112.0%

平均年齢(勤続年数)

42.2歳(13.3年)

従業員数

1,721人(連結:3,496人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当連結会計年度における当社グループは、当社及び連結子会社14社、持分法適用関連会社4社により構成されています。

総合エンジニアリング企業グループとして、顧客のニーズを的確に把握し最も効率的な解決方法を提供する機能をビジネスの軸としており、高度先端技術を駆使し、グループ各社の持つ遂行機能を最適に組み合わせ、各社が一体となったオペレーションを展開することにより、時代や社会・地域の要請や顧客のニーズに柔軟に対応しています。なお、事業内容は、「エンジニアリング事業」と「その他の事業」に区分しており、事業の概要は以下のとおりです。また、主要な関係会社は、4〔関係会社の状況〕に記載のとおりです。

 

① エンジニアリング事業(各種プラント、産業用設備のコンサルティング、計画、設計、施工、調達、試運転及び

メンテナンス等)

当社は本事業を主要事業としており、各種産業用・民生用設備並びに公害防止・環境改善及び災害防止用設備に関する総合的計画、装置・機器の設計・調達・設置、土木・建築・電気・計装・配管等工事及び試運転等、その他これらに付帯する一切の事業を行っています。

当社の事業の特殊性は、広範多岐に亘る技術の高度の総合化が要請される近代的産業用設備、とりわけ化学工業設備の建設を、その設計から機器の調達、現場建設、試運転、メンテナンスに至るまで一貫して遂行することにあり、従って、生産方式は受注生産方式をとっています。

 

 当該事業における各関係会社とのかかわりは次のとおりです。

 

 千代田エクスワンエンジニアリング㈱は、国内のエネルギー・化学関連設備/医薬品・研究施設/各種産業用機械設備に関する電気・計装・制御/社会インフラ設備を対象としたエンジニアリング事業を主要な事業として手掛けており、当社は施工する工事の一部を上記関係会社へ発注しています。同社は、2023年4月1日付で、当社旧連結子会社の千代田工商㈱、千代田システムテクノロジーズ㈱及び千代田テクノエース㈱3社の統合によって設立されました。

 

 Chiyoda Philippines Corporation(連結子会社)はフィリピンにおいて、当社の海外設計拠点として事業活動を担当しています。Chiyoda Malaysia Sdn. Bhd.(マレーシア・連結子会社)、Chiyoda Almana Engineering LLC(カタール・連結子会社)、PT. Chiyoda International Indonesia(インドネシア・連結子会社)、Chiyoda & Public Works Co.,Ltd.(ミャンマー・連結子会社)、Chiyoda Sarawak Sdn. Bhd.(マレーシア・連結子会社)、Chiyoda International Corporation(アメリカ・連結子会社)、Chiyoda Oceania Pty.Ltd(オーストラリア・連結子会社)、CHIYODA ENERGIES PTY LTD(オーストラリア・連結子会社)、Chiyoda France S.A.S(フランス・連結子会社)、Chiyoda Petrostar Co. Ltd.(サウジアラビア・持分法適用関連会社)は、当社の海外工事遂行拠点として事業活動を担当しています。

 

② その他の事業

 アロー・ビジネス・コンサルティング㈱(連結子会社)は財務・会計に関するコンサルティングを行っており、当社は経理業務を委託しています。

 千代田ユーテック㈱(連結子会社)はエネルギー・環境全般の技術的コンサルティング事業、人材派遣業、アウト

ソーシング事業等を行っており、当社は各種コンサルティングを発注し、また技術者及び事務系社員の派遣業務を委託しています。

 ㈱PlantStream(持分法適用関連会社)は空間自動設計システム「PlantStream®」の開発・販売を行っており、当社はライセンスを購入しています。

 TIS千代田システムズ㈱(持分法適用関連会社)は統合ITシステムのコンサルティング・開発・運用等を行っており、当社は主にシステム・ソフトウェアの開発、コンピュータ管理・情報システムの運用・管理業務を委託しています。

 以上述べた関係を事業系統図によって示すと、次のとおりです。

 

 

<事業系統図>

 

※画像省略しています。

 

24/07/01

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年7月1日)現在において判断したものです。

 

<経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容>

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、中東情勢の不安定化等地政学リスクの高まりや、インフレ抑制に向けた各国の金融政策の引締めもあり、全体として先行き不透明な状況が継続しました。

 当社グループを取り巻く事業環境においては、気候変動問題への対応として低・脱炭素化社会の実現に向けた需要が拡大する一方、エネルギーの安定供給に向けたLNG需要も拡大するなど、人と地球の持続的で豊かな未来の実現が求められています。

 当社では、中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」(2019年度~2023年度)において、リスク管理体制の高度化とEPC(設計・調達・建設)遂行管理力の進化による安定的な収益基盤の拡大に取り組んでまいりました。同時に、事業ポートフォリオ革新に向けて、エネルギーの安定供給とエネルギートランジションを支える資源となるLNG(液化天然ガス)を主体とする既存事業の深化に加え、再生可能エネルギー、水素、炭素循環、エネルギー運用最適化、ライフサイエンスなどの新規事業も強化してまいりました。

 このような状況の中、当社グループが米国テキサス州にて遂行しているGolden Pass LNG プロジェクト*(GPXプロジェクト)に関し、共同遂行している米国Zachry Industrial, Inc.(Zachry社)が、2024年4月に入り、GPXプロジェクトからの離脱の具体的な可能性が生じたため、顧客である米国Golden Pass LNG Terminal LLC(GPX社)、ならびに、共同遂行している一方のパートナーである米国CB&I LLCとの間で、本プロジェクトの継続の為の新体制の協議を継続してまいりました。しかしながら、本協議が纏まらず、加えて、その後Zachry社が2024年5月21日付にて米国連邦破産法第11章(Chapter11)に基づく申し立てを行い、法的再建手続きに入ることとなったこと等により、当連結会計年度末において修正後発事象に該当する事由が生じることとなりました。

 当連結会計年度においては、Zachry社のGPXプロジェクトからの離脱の可能性を踏まえ今後のプロジェクト完工に向けて必要と見積られる工事原価を考慮し、工事収益総額については、現時点までに合意された書面に基づき見積りを行うことといたしました。

 

 

* Golden Pass LNGプロジェクト:

2019年からZachry社、CB&I LLC社および当社の米国子会社であるChiyoda International Corporationがジョイントベンチャーを組成し、設計、調達、建設(EPC)業務を共同遂行しているプロジェクト。テキサス州サビンパスにあるゴールデンパスLNG基地に、年産1,560万トン(520万トン×3系列)のLNG液化設備の設計・調達・建設工事及び試運転を行うもの。現在、建設工事が本格化している。

 

 当連結会計年度における業績は、次のとおりです。

 

(受注工事高)

 受注工事高は、前連結会計年度比53.3%増の2,375億45百万円となりました。なお、当連結会計年度末受注残高は

9,938億78百万円となりました。受注工事高の概要は、「報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況」に記載のとおりです。

 

(完成工事高)

 完成工事高は、前連結会計年度比17.6%増の5,059億81百万円となりました。完成工事高の概要は、「報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況」に記載のとおりです。

 

(完成工事総損益)

 完成工事総損益は、堅調に進捗した案件があった一方で、GPXプロジェクトの完工に向けて必要と見込まれる十分な費用を計上したことから、前連結会計年度の完成工事総利益327億9百万円に対し、1億57百万円の完成工事総損失となりました。また、完成工事総利益率は前連結会計年度の7.6%から7.6ポイント減少し0.0%となりました。

 

 

 

 

(販売費及び一般管理費)

 販売費及び一般管理費は、新型コロナウイルス感染症の規制緩和に伴う営業活動の活発化および成長戦略を推進するための研究開発費の増加等により、前連結会計年度に比べ2億57百万円増加し148億49百万円となりました。また、販売費及び一般管理費比率は前連結会計年度の3.4%から0.5ポイント減少し2.9%となりました。

 

(営業損益)

 営業損益は、完成工事総損益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ331億23百万円減少し150億6百万円の営業損失となりました。

 

(営業外収益・営業外費用)

 営業外収益は、海外プロジェクト資金の運用利益等により、前連結会計年度に比べ81億79百万円増加し125億37百万円となりました。また、営業外費用は、為替差損等により、前連結会計年度に比べ8億39百万円増加し29億92百万円となりました。この結果、営業外収支は95億45百万円の収益となりました。

 

(経常損益)

 経常損益は、完成工事総損益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ257億83百万円減少し54億61百万円の経常損失となりました。

 

(特別利益・特別損失)

 特別利益及び特別損失は、前連結会計年度が5億7百万円の収益超過であったのに対し、当連結会計年度は、退職給付制度終了損および投資有価証券評価損等の計上により6億97百万円の損失超過となりました。

 

(法人税、住民税及び事業税・法人税等調整額)

 税金等調整前当期純損益は、前連結会計年度に比べ269億88百万円減少し61億59百万円の損失となりました。

 法人税、住民税及び事業税は84億88百万円、法人税等調整額は51百万円となり、前連結会計年度に比べ29億10百万円の増加となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純損益)

 親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ310億18百万円減少し158億31百万円の親会社株主に帰属する当期純損失となりました。

 

報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況は、次のとおりです。

 

[エネルギー分野]

(LNG・その他ガス関係)

 海外では、カタール、アメリカでLNGプラントのEPC業務を遂行中です。年産800万トンのLNGプラント4系列の増設案件であるカタールNorth Field East LNG輸出基地案件(NFEプロジェクト)及びアメリカのゴール

デンパスLNGプロジェクトの建設工事がそれぞれ本格化しています。

その他ガス分野では、カタールで当社グループ会社がLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件に係る複数の設計業務を遂行中です。

 国内では、当社グループが建設したLNG受入基地の改造・改修工事を遂行中です。

 当連結会計年度の受注工事高は504億30百万円(前連結会計年度比17.0%減)となり、完成工事高は2,448億51百万円(同1.0%増)となりました。

 

(石油・石油化学関係)

 国内では、石油会社向けに、製油所の設備更新工事や省エネ、カーボンニュートラルに資する各種検討業務などを遂行中です。また、国内製油所や石油・石油化学事業所に対して、これまで培った高度解析技術(3次元流動解析やダイナミック・シミュレーション、構造解析、耐震)と最新のデジタル技術を組み合わせ、運転最適化と設備保全効率化ならびに運転・保全業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けたO&M(Operation & Maintenance)事業を展開しています。加えて、石油化学分野では機能材案件のEPC業務を完工しました。

 また、マイクロ波化学㈱、三井化学㈱とマイクロ波加熱を利用した革新的ナフサクラッキング技術の共同開発を進めています。本事業は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム重点課題推進スキーム」に採択されました。本技術の確立により、従前の化学業界の重要課題である「ナフサの熱分解で排出されるCO2の大幅な削減」に貢献します。

 当連結会計年度の受注工事高は374億2百万円(同4.1%増)となり、完成工事高は303億47百万円(同2.7%増)となりました。

 

[地球環境分野]

(医薬・生化学・一般化学関係)

 医薬・生化学分野では、AGC㈱向けのバイオ医薬品原薬製造設備のEPC業務を、また、製薬会社向けに、バイオ医薬品原薬製造設備、医薬品製造設備のEPC業務を複数遂行中です。

 更に、石油分野で培った連続生産技術の医薬品分野への導入、実装において、新たに装置の基本計画、基本設計業務を受注しました。また、NEDO助成事業にて、産学連携で「植物による高度修飾タンパク質の大量生産技術の開発」を進めています。

 一般化学分野では、㈱クレハ向けフッ化ビニリデン樹脂生産設備のEPC業務を遂行中です。

 当連結会計年度の受注工事高は892億33百万円(同233.6%増)となり、完成工事高は311億16百万円(同8.7%減)となりました。

 

(環境・新エネルギー・インフラ関係)

 環境分野では、インドにおける環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社のCT-121排煙脱硫プロセスが複数の案件に活用されています。

 新エネルギー分野では、再生可能エネルギーの効率的な活用に資する蓄エネルギー活用や地域分散型のエネルギー供給システムへの取組みを強化しています。当連結会計年度において、当社が構築した東急不動産㈱向けの北海道松前町の地域マイクログリッドの運用が開始されました。この経験を活かし、今後も地域の再生可能エネルギーの地産地消やレジリエンス強化に資するプロジェクトに尽力して参ります。加えて、洋上風力分野では、国内事業者に対する着床式発電所に関する各種ソフト業務・遂行支援や、浮体式発電所建設のFS(Feasibility Study)業務等を進めています。

インフラ分野では、インドネシアで単一製造ラインとして世界最大規模となる銅製錬工場のEPC業務を遂行中です。

また、国内では、主に電気自動車における航続距離拡大・充電時間の短縮・安全性向上が期待される次世代電池に関して、無機電池材料の実証プラントプロジェクトを遂行中です。加えて、2024年1月に発生した能登半島地震に因る工場被災の復旧工事についても遂行中です。

 当連結会計年度の受注工事高は536億75百万円(107.6%増)となり、完成工事高は1,947億12百万円(同63.3%増)となりました。

 

≪脱炭素ビジネスの取組み≫

 水素・アンモニア、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)/CCU(Carbon dioxide Capture and

 Utilization)、エネルギーマネジメントの取組みは以下のとおりです。

 

(水素・アンモニア)

 水素分野では、当社の独自技術であるSPERA水素®技術の優位性を生かした水素サプライチェーンの構築に向けて、シンガポール、欧州、国内で具体的な案件や検討を進めています。

 シンガポールでは、商用規模のクリーン水素サプライチェーン事業の実現に向けて、同国有数の総合ユーティリティで政府系コングロマリットであるSembcorp Industries社及び三菱商事㈱と概念設計を遂行中で、2020年代後半の商業水素供給開始を目標としています。

 欧州では、イギリス・スコットランドからオランダ・ロッテルダム港への水素海上輸送プロジェクト(LHyTS(ライツ)プロジェクト)に参画、事業化調査を2023年11月に完了しました。

 国内では、水素バリューチェーン推進協議会の理事会社として、社会実装プロジェクトの創出と政策支援の実現に向けて活動しています。また、2023年4月に中部電力㈱及び豪州Hazer社と、HAZER®Processによる水素製造に係る覚書を締結し、中部圏でのカーボンフリー水素と副生固体炭素(カーボングラファイト)の製造拠点プロジェクトの開発計画の検討を継続中です。

 また、2024年2月にトヨタ自動車㈱と大規模水電解システムの共同開発および戦略的パートナーシップの構築に係る協業基本合意書を締結、発表しました。20MW級の標準パッケージを開発して、2025年度からトヨタ自動車㈱本社工場水素パーク内への水電解システムの導入を開始します。

そのほか、オーストラリアでは、日本水素エネルギー㈱が取り組んでいる液化水素サプライチェーンの商用化実証を目的としたFEED(Front End Engineering Design)業務を効率的に遂行するために、2024年1月に川崎重工業㈱をリーダーとして、東洋エンジニアリング㈱、日揮グローバル㈱、当社の4社によるJV協定書を締結し、日本が目指す2050年までのカーボンニュートラル実現に貢献していきます。

 アンモニア関連分野では、当社が主幹事会社となり、NEDOのグリーンイノベーション基金事業として、産学官連携で製造コストの低減を実現する新規アンモニア合成技術の開発を進めています。さらに、㈱JERA、㈱日本触媒と共同で既存の技術より競争力のあるアンモニア分解技術の開発を進めており、NEDOの技術開発事業に採択されています。

 その他、国内におけるアンモニア受入設備や水素燃料供給に関する複数の検討業務を遂行中です。

 

(CCS/CCU)

 CO2の回収・CCSシステム設計におけるグローバルリーダーであるPace CCS社とCCS分野での協業に関する覚書を締結、CCSプロジェクトのFSやコンセプトデザインからFEED/EPCまで幅広く展開していきます。

また、大規模な天然ガス火力発電所で発生する排ガスから固体吸収材を用いてCO2を分離・回収する技術開発をNEDOのグリーンイノベーション基金事業として進めています。

 東南アジアでは、インドネシア国営石油会社プルタミナ社と脱炭素循環技術の共同検討業務契約を、タイ発電公社EGAT社とクリーン水素・アンモニア バリューチェーン検討覚書をそれぞれ2023年3月に締結し、両国におけるカーボンニュートラル社会への早期移行に貢献すべく関連検討業務を遂行しています。

国内では三菱商事㈱向けのCCSバリューチェーン構築に係る検討業務、石油資源開発㈱向けの東新潟CCS圧入設備概念設計業務、三菱ガス化学㈱向けの新潟CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)ハブ&クラスター構想事業化に関する調査、電源開発㈱向けのCO2分離回収・圧縮液化設備FS業務を完了しました。

また、当社、日本郵船㈱、Knutsen NYK Carbon Carriers ASは、当連結会計年度に液化CO2のCCUSの技術として想定される常温昇圧(EP)・中温中圧(MP)・低温低圧(LP)の3方式について、回収したCO2の液化から一時貯蔵、海上輸送などCCUSバリューチェーンを通じた経済性や実現性検証に関する共同検討を実施しました。今後事業者に対してEP方式に関する具体的な提案を行うべく、引き続き検討を実施します。

また、三菱重工業㈱と、同社CO2回収技術の包括ライセンス契約を締結、国内向けCO2回収プロジェクトを対象に、同社が関西電力㈱と共同開発したCO2回収技術である「KM CDR ProcessTM」および「Advanced KM CDR ProcessTM」のライセンス供与を受け、戦略的に協業を推進します。

CCU分野では、産学官連携で、CO2の回収・資源化やCO2を原料とするパラキシレン製造の研究開発に取組んでいます。

e-fuel分野ではドイツのINERATEC社とe-fuel製造による脱炭素化促進に向けた戦略的協業に関する覚書を2022年9月に締結し、同社の最先端PtXテクノロジー活用を推進しています。加えて、CO2と水素を用いた合成燃料製造に関し、㈱INPEX向けの400Nm3-CO2/h メタネーション(合成メタン(e-methane))試験設備工事及びENEOS㈱向けの1BD(1 Barrel per day)合成燃料実証試験設備建設工事を遂行中です。

また、CO2をCOへ90%以上の高効率で変更する技術(ケミカルルーピング反応技術)を用いた積水化学工業㈱向けCO2処理プラントの基本設計業務を受注し完了しました。

 

(エネルギーマネジメント)

 2023年3月に完工した北海道北部風力送電㈱向け世界最大級の大型蓄電池システムの20年間に亘る保守業務を遂行中です。また、蓄電池事業においてはENEOS㈱向け系統用蓄電池建設に関する複数の工事を遂行中です。

その他、スタートアップ企業と連携して国内向けにVPP(Virtual Power Plant)事業などの取組みを強化しています。

 

 

≪DXの取組み≫

 「社会の“かなえたい”を共創(エンジニアリング)する」の実現のために、全社DXを加速させています。コーポレートDX、及びプロジェクトDXで、自社の変革を推し進め、全社員がデジタルプラットフォーム上で業務を行うことにより、業務が効率化・自動化されると同時に広く情報が共有され、意思決定を加速することを目指しています。また、デジタルとフィジカルを融合したO&M-X事業にて業界の変革を顧客と協業して推進しています。そして、それらの変革の原動力としてデジタルコア人財の育成・拡充を進めています。

コーポレートDXでは、リソース計画・人財管理をデジタル変革し、全社リソースの最適配分・配置の実現を進めています。今期より運用を開始したリソースマネジメントシステムにより受注計画と人員稼働状況から事業計画シナリオを描くことが可能となっており、半期に一度の事業計画の見直しに活用を始めています。併せて、人財育成を実行するプラットフォームであるタレントマネジメントシステムの運用も開始しており、従業員一人一人のキャリア情報を格納し、組織長や人財育成担当者であるHRO(Human Resources Officers)と共有することで効果的なキャリア開発の実現や人的資本開示の充実化を進めています。

また、働き方改革の一環として、ノーコード・ローコードによるRPA(Robotic Process Automation)の市民開発環境や業務用生成AIサービスの提供を開始し、意見交換・議論を目的としたコミュニティサイトも設置しました。

プロジェクトDXでは、EPC遂行管理力の進化を目指してかねてより開発・適用を開始していたAWP(Advanced Work Packaging)が海外主要プロジェクトに本格適用され、サブコントラクターとの透明性のある情報共有により作業効率が明確に向上しています。また、当社及び㈱Arentが共同出資した㈱PlantStreamが開発した革新的な空間自動設計システムは、国内外のプラントオーナーやコントラクターによる導入が進んでおり、初期設計や建設計画の効率化に貢献しています。当社では詳細設計においても部分的な適用を開始しています。

デジタル変革ビジネスでは、プラント運転・保守ソリューションとDX事業を再編・統合し、顧客のプラント運転・保全業務の変革を支援するソリューション事業を展開し、新たなO&M(保守・運用)トータルソリューションサービスとしてplantOS®の提供を開始しました。plantOS®は、千代田エクスワンエンジニアリング㈱をはじめ、当社グループがこれまで提供してきた産業/プラント向けメンテナンス分野におけるフィジカルサポートと当社が長年培ってきた高度解析・診断、IOT、AI等のデジタル技術を、ハイブリッドに融合したO&M向けサービスです。

また、plantOS®の構築・提供に際し各種のサービスプロバイダーとの連携を進めております。plantOS®のクラウドシステム構築では日本ビジネスシステムズ㈱との覚書を締結し、あわせて回転機診断のためのソリューション開発においては中山水熱工業㈱との協業を開始しております。plantOS®の中核であるデジタルツインソリューションをプラント運転・保守の領域において効果的に活用するため米国のデジタルツインコンソーシアムに加入し、既に協業を開始しているVisionaize社のV-Suiteを活用したデジタルツインソリューションの提供を開始しております。さらに、㈱センシンロボティクスと資本業務提携関係を構築し、同社がインフラ保全領域で磨いてきた技術力を融合、ロボットやドローン、AR/VR技術を使ってデータを収集し3Dデジタルツインプラットフォームへ集約、新たな価値を生み出すソリューションの共創を開始しております。

加えて、plantOS®提供事業の一環として、インドネシアのドンギ・スノロLNG社(以下「DSLNG社」)より技術サポート提供業務を受注しました。本件はDSLNG社が保有するLNGプラントにおけるエンジニアリングサービス、プロセス安全サポートなどを対象としています。当社がこれまで培ってきたコンサルティング能力や先進的なデジタル技術を活用し、プラントの安全・安定運転の実現に向けてDSLNG社に最適なソリューションを提供していきます。

 

 経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項、及び、それらに対する対応については、3.事業等のリスクに記載しています。

 米国ゴールデンパスLNGプロジェクト、カタール・インドネシアにおける大型プロジェクトのほか、手持ちEPC案件を着実に遂行していくことに加え、当社を取り巻く事業環境と当社グループの強みを掛け合わせることで、多様で柔軟な事業ポートフォリオの確立に努めてまいります。

当社グループは、最大の資産である人財(従業員)が能力を最大限に発揮することが自らのパーパス実現や競争力向上に不可欠であると考え、しなやかなマインドセット・スキルを持つ人財と自由闊達な組織風土の実現に向けた人的資本経営を進めています。その一環として、従業員を支えるため健康経営にも取り組んでおり、経済産業省と日本健康会議が共同で認定する「健康経営優良法人」を2021年から4年連続で取得しています。

これらに加え、2019年から5年間の再生計画期間中に集中的に取り組んできた、リスクマネジメントの継続強化を含むリスク・リターンの最適化とDX加速による底上げによって、安定収益体質を確りと定着させます。

 

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

 ① 受注実績

事業部門の名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

受注高

受注残高

受注高

受注残高

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

<前年同期比>

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

1 エンジニアリング事業

154,347

99.6

1,148,890

100.0

236,975

99.8

993,878

100.0

(93,065)

<53.5%増>

(113,423)

エネルギー

分野

(1) LNGプラント関係

55,508

35.8

811,656

70.6

48,494

20.4

708,960

71.3

(80,503)

<12.6%減>

(90,741)

(2) その他ガス関係

5,223

3.4

5,162

0.5

1,936

0.8

4,158

0.4

(0)

<62.9%減>

(△20)

(3) 石油・石油化学関係

35,929

23.2

26,655

2.3

37,402

15.8

32,214

3.2

(△6,911)

<4.1%増>

(△1,494)

地球環境

分野

(4) 医薬・生化学

  ・一般化学関係

26,750

17.2

42,698

3.7

89,233

37.6

98,021

9.9

(△384)

<233.6%増>

(△2,793)

(5) 環境・新エネルギー

  ・インフラ関係

25,851

16.7

259,129

22.6

53,675

22.6

145,055

14.6

(19,767)

<107.6%増>

(26,962)

(6) その他

5,085

3.3

3,589

0.3

6,233

2.6

5,467

0.6

(89)

<22.6%増>

(27)

2 その他の事業

627

0.4

569

0.2

(   -)

<9.3%減>

(   -)

総 合 計

154,975

100.0

1,148,890

100.0

237,545

100.0

993,878

100.0

(93,065)

<53.3%増>

(113,423)

 

  なお、国内及び海外の受注高並びに受注残高の内訳は、次のとおりです。

国内外内訳

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

受注高

受注残高

受注高

受注残高

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

<前年同期比>

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

国   内

87,161

56.2

92,247

8.0

159,463

67.1

164,237

16.5

(△5,846)

<83.0%増>

(△2,068)

海   外

67,813

43.8

1,056,643

92.0

78,081

32.9

829,640

83.5

(98,911)

<15.1%増>

(115,492)

合   計

154,975

100.0

1,148,890

100.0

237,545

100.0

993,878

100.0

(93,065)

<53.3%増>

(113,423)

(注)  受注残高の( )内の数字は、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しています。

 

 ② 売上実績

事業部門の名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

<前年同期比>

構成比(%)

1 エンジニアリング事業

429,535

99.8

505,412

99.9

<17.7%増>

エネルギー

分野

(1) LNGプラント関係

239,315

55.6

241,931

47.7

<1.1%増>

(2) その他ガス関係

3,068

0.7

2,920

0.6

<4.8%減>

(3) 石油・石油化学関係

29,551

6.9

30,347

6.0

<2.7%増>

地球環境

分野

(4) 医薬・生化学

  ・一般化学関係

34,096

7.9

31,116

6.2

<8.7%減>

(5) 環境・新エネルギー

  ・インフラ関係

119,227

27.7

194,712

38.5

<63.3%増>

(6) その他

4,275

1.0

4,383

0.9

<2.5%増>

2 その他の事業

627

0.2

569

0.1

<9.3%減>

総 合 計

430,163

100.0

505,981

100.0

<17.6%増>

 

  なお、国内及び海外の売上実績の内訳は、次のとおりです。

国内外内訳

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

<前年同期比>

構成比(%)

国   内

93,189

21.7

85,404

16.9

<8.4%減>

海   外

336,974

78.3

420,576

83.1

<24.8%増>

合   計

430,163

100.0

505,981

100.0

<17.6%増>

  (注) 1  当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していません。

       2  主な相手先別の売上実績及び総売上高に対する割合は次のとおりです。

前連結会計年度

当連結会計年度

 相手先

金額

(百万円)

割合

(%)

 相手先

金額

(百万円)

割合

(%)

カタールエナジー

146,126

34.0

カタールエナジー

188,383

37.2

ピーティー・フリーポート・インドネシア

91,256

21.2

ピーティー・フリーポート・インドネシア

172,252

34.0

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は1,662億8百万円となり、前連結会計年度末残高より595億26
  百万円増加しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。

 

営業活動による資金収支

税金等調整前当期純損失の計上の一方、工事進捗に伴う運転資金負担の改善などにより、当連結会計年度における営業活動による資金収支は627億47百万円のプラスとなりました。

 

投資活動による資金収支

投資有価証券の売却の一方、無形固定資産及び有形固定資産の取得などにより、当連結会計年度における投資活動による資金収支は15億67百万円のマイナスとなりました。

 

財務活動による資金収支

長期借入金の返済などにより、当連結会計年度における財務活動による資金収支は、58億51百万円のマイナスとなりました。

 

② 資金需要

当社グループの資金需要のうち主なものは、当社が受注した国内外のプラント建設に関わる費用、販売費及び一般管理費のほか、今後の成長戦略を支えるための投資です。販売費及び一般管理費のうち主なものは、従業員給与 手当等の人件費のほか、業務委託費等です。当社の研究開発費は、研究開発に携わる従業員の人件費が過半を占めています。

今後の成長戦略を支えるための投資については、LNGや金属、医薬品といった既存EPC分野の事業基盤を維持しながら、水素やCCSを含む脱炭素ソリューション、バイオ、先端素材、O&M-Xソリューション、エネルギーマネジメント等の新規分野の事業機会の創出に向けた成長投資を進めていきます。

 

③ 財務政策

当社グループは、資金需要に対して内部資金又は借入により資金調達することとしています。資金の流動性については、三菱商事㈱の完全子会社である三菱商事フィナンシャルサービス㈱と総額100億円の融資枠を締結し十分に確保しています。

上記財源を適切に活用し、事業ポートフォリオの革新と高収益体質への変革、サステナブルな社会の実現への貢献を進め、当社グループを安定的に運営する資金を創出していきます。

 

(4) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが要求されます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて判断及び見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。

 当社グループの見積りや判断を含む重要な会計方針は、連結財務諸表注記の「4 会計方針に関する事項」に記載しています。また、会計方針の適用において使用される当社の判断と見積りのうち、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられるものについては、連結財務諸表注記の「4 会計方針に関する事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。