売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E01569 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 当第3四半期連結累計期間において、世界経済は長引くロシア・ウクライナ情勢の影響継続や中東情勢の不安定化、インフレ抑制に向けた各国の金融政策の引締めもあり、その先行きは依然として不透明な状況が続いています。

このような状況のもと、当社グループを取り巻く事業環境においては、気候変動問題への対応としてカーボン

ニュートラルの実現と、エネルギーの安定供給との両立化が求められています。

当社では、中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」に基づき、リスク管理体制の高度化とEPC(設計・調達・建設)遂行管理力の進化を進め、安定的な収益基盤の拡大に取り組んでいます。

また、事業ポートフォリオ革新に向けて、エネルギーの安定供給とエネルギートランジションを支える資源となるLNG(液化天然ガス)を主体とする既存事業の深化に加え、再生可能エネルギー、水素、炭素循環、エネルギー運用最適化、ライフサイエンスなどの新規事業を強化しております。

中期経営計画の最終年度となる当年度においては、既存事業の着実な進捗と新規事業の強化により、事業ポートフォリオ革新を深化させ、収益構造の変革を実現し、「エンジニアリングの新たな価値を創出」することで、持続的な成長と企業価値の一層の向上を目指します。

 

 

 当第3四半期連結累計期間の経営成績及び財政状態は、次のとおりです。

 

 当第3四半期連結累計期間の連結受注工事高は1,737億39百万円(前年同四半期比44.1%増)、連結完成工事高は3,974億63百万円(同28.8%増)であった結果、連結受注残高は9,896億71百万円(前連結会計年度末比13.9%減)となり、営業利益は178億18百万円(前年同四半期比30.8%増)、経常利益は236億40百万円(同51.2%増)となりました。また、法人税等の計上により、親会社株主に帰属する四半期純利益は156億92百万円(同25.2%増)となりました。

 資産については、現金預金の増加393億83百万円の一方で、ジョイントベンチャー持分資産の減少412億13百万円、受取手形・完成工事未収入金及び契約資産の減少57億9百万円などにより、資産合計は前連結会計年度末に比べ241億59百万円減少しました。

 負債については、契約負債の減少204億39百万円、工事損失引当金の減少40億81百万円、支払手形・工事未払金の減少24億59百万円などにより、負債合計は前連結会計年度末に比べ341億7百万円減少しました。

 純資産については、為替換算調整勘定の減少によりその他の包括利益累計額が減少した一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、純資産合計は322億58百万円となりました。

 

 当社の報告セグメントであるエンジニアリング事業の概況は、次のとおりです。

 

[エネルギー分野]

(LNG・その他ガス関係)

海外では、カタール、アメリカで LNGプラントのEPC業務を遂行中です。年産800万トンのLNGプラント4系列の増設案件であるカタールNorth Field East LNG輸出基地案件(NFE プロジェクト)及びアメリカのゴール

デンパスLNGプロジェクトの建設工事がそれぞれ本格化し進捗しています。また、インドネシアのタングーLNG拡張プロジェクト(第3系列)は2023年8月に顧客へのプラントの引渡しを完了し、生産が開始されています。

その他ガス分野では、カタールで当社グループ会社がLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件に係る複数の設計業務を遂行中です。

国内では、当社グループが建設したLNG受入基地の改造・改修工事を遂行中です。

 

(石油・石油化学関係)

国内では、石油会社向けに、製油所の設備更新工事や省エネ、カーボンニュートラルに資する各種検討業務などを遂行中です。また、国内製油所や石油・石油化学事業所に対して、これまで培った高度解析技術(3次元流動解析やダイナミック・シミュレーション、構造解析、耐震)と最新のデジタル技術を組み合わせ、運転最適化と設備保全効率化ならびに運転・保全業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けたO&M(Operation & Maintenance)事業を展開しています。加えて、石油化学分野では機能材案件のEPC業務を完工しました。

また、マイクロ波化学㈱、三井化学㈱とマイクロ波加熱を利用した革新的ナフサクラッキング技術の共同開発を進めています。本事業は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム 重点課題推進スキーム」に採択されました。本技術の確立により、従前の化学業界の重要課題である「ナフサの熱分解で排出されるCO2の大幅な削減」に貢献します。

 

[地球環境分野]

(医薬・生化学・一般化学関係)

医薬・生化学分野では、新たにAGC㈱よりバイオ医薬品原薬製造設備のEPC業務を受注しました。また、製薬会社向けに、バイオ医薬品原薬製造設備、医薬品製造設備のEPC業務を複数遂行中です。

当社は、シオノギファーマ㈱が主導する原薬・中間体の開発製造受託事業会社Pharmira㈱に対して、石油分野で培った連続生産技術の医薬品分野への導入、実装に貢献しています。また、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業にて、産学連携で「植物による高度修飾タンパク質の大量生産技術の開発」を進めています。

一般化学分野では、㈱クレハ向けフッ化ビニリデン樹脂生産設備のEPC業務を遂行中です。

 

(環境・新エネルギー・インフラ関係)

環境分野では、インドにおける環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社のCT-121排煙脱硫プロセスが複数の案件に活用されています。

新エネルギー分野では、再生可能エネルギーの効率的な活用に資する蓄エネルギー活用や地域分散型のエネルギー供給システムへの取組みを強化しています。加えて、洋上風力分野では、国内事業者に対する着床式発電所に関する各種ソフト業務や、Technip Energies社と共同での特定海域における浮体式発電所建設のFS(Feasibility Study)業務を進めています。

インフラ分野では、インドネシアで単一製造ラインとして世界最大規模となる銅製錬工場のEPC業務を遂行中です。

また、国内では、主に電気自動車(EV)における航続距離拡大・充電時間の短縮・安全性向上が期待される次世代電池に関して、無機電池材料の実証プラントプロジェクトを受注し、遂行中です。

 

≪脱炭素ビジネスの取組み≫

水素・アンモニア、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)/CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)、エネルギーマネジメントの取組みは以下のとおりです。

 

(水素・アンモニア)

水素分野では、当社の独自技術であるSPERA水素™技術の優位性を生かした水素サプライチェーンの構築に向けて、シンガポール、欧州、国内で具体的な案件や検討を進めています。

シンガポールでは、商用規模のクリーン水素サプライチェーン事業の実現に向けて、同国有数の総合ユーティリティで政府系コングロマリットであるSembcorp Industries社及び三菱商事㈱と概念設計を遂行中で、2020年代後半の商業水素供給開始を目標としています。

欧州では、イギリス・スコットランドからオランダ・ロッテルダム港への水素海上輸送プロジェクト(LHyTS(ライツ)プロジェクト)に参画、事業化調査を2023年11月に完了しました。

国内では、水素バリューチェーン推進協議会の理事会社として、社会実装プロジェクトの創出と政策支援の実現に向けて活動しています。また、2023年4月に中部電力㈱及び豪州Hazer社と、HAZER®Processによる水素製造に係る覚書を締結し、中部圏でのカーボンフリー水素と副生固体炭素(カーボングラファイト)の製造拠点プロジェクトの開発計画の検討を継続中です。

アンモニア関連分野では、当社が主幹事会社となり、NEDOのグリーンイノベーション基金事業として、産学官連携で製造コストの低減を実現する新規アンモニア合成技術の開発を進めています。さらに、㈱JERA、㈱日本触媒と共同で既存の技術より競争力のあるアンモニア分解技術の開発を進めており、NEDOの技術開発

事業に採択されています。その他、国内におけるアンモニア受入設備や水素燃料供給に関する複数の検討業務を遂行中です。

 

(CCS/CCU)

CO2の回収・CCSシステム設計におけるグローバルリーダーであるPace CCS社とCCS分野での協業に関する覚書を締結、CCSプロジェクトのFSやコンセプトデザインからFEED(Front End Engineering Design)/EPCまで幅広く展開していきます。

また、大規模な天然ガス火力発電所で発生する排ガスから固体吸収材を用いてCO2を分離・回収する技術開発をNEDOのグリーンイノベーション基金事業として進めています。

東南アジアでは、インドネシア国営石油会社プルタミナ社と脱炭素循環技術の共同検討業務契約を、タイ発電公社EGAT社とクリーン水素・アンモニア バリューチェーン検討覚書をそれぞれ2023年3月に締結し、両国におけるカーボンニュートラル社会への早期移行に貢献すべく関連検討業務を遂行しています。

国内では三菱商事㈱向けのCCSバリューチェーン構築に係る検討業務、石油資源開発㈱向けの東新潟CCS圧入設備概念設計業務、三菱ガス化学㈱向けの新潟CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)ハブ&クラスター構想事業化に関する調査、電源開発㈱向けのCO2分離回収・圧縮液化設備FS業務を遂行中です。

CCU分野では、産学官連携で、CO2の回収・資源化やCO2を原料とするパラキシレン製造の研究開発に取組んでいます。また、アメリカBlue Planet社、三菱商事㈱との協業で、排ガス等に含まれるCO2を原料にしてコンクリート原料である骨材を製造する技術開発を推進しています。

e-fuel分野ではドイツのINERATEC社とe-fuel製造による脱炭素化促進に向けた戦略的協業に関する覚書を2022年9月に締結し、同社の最先端PtXテクノロジー活用を推進しています。加えて、CO2と水素を用いた合成燃料製造に関し、㈱INPEX向けの400Nm3-CO2/h メタネーション(合成メタン(e-methane))試験設備工事及びENEOS㈱向けの1BD(1 Barrel per day)合成燃料実証試験設備建設工事を遂行中です。

 

(エネルギーマネジメント)

2023年3月に完工した北海道北部風力送電㈱向け世界最大級の大型蓄電池システムの20年間に亘る保守業務を遂行中です。また、蓄電池事業においてはENEOS㈱向け系統用蓄電池建設に関する複数の工事を遂行中です。

その他、スタートアップ企業と連携して国内向けにVPP(Virtual Power Plant)事業などの取組みを強化しています。

 

≪DXの取組み≫

全社DXの基盤となるデジタル人財の育成やDX意識・文化の醸成等を図るとともに、プロジェクトDX、コーポレートDX、デジタル変革ビジネスの取組みを進めています。

プロジェクトDXでは、EPC遂行管理力の進化に向けて、AWP(Advanced Work Packaging)を大型プロジェクトに順次適用しています。また、㈱Arent及び当社が共同出資した㈱PlantStreamが開発した革新的な空間設計システムは、当社グループの設計業務を改革するとともに、国内外のプラントオーナーやEPCコントラクターでの導入が進んでいます。

コーポレートDXでは、デジタル技術を活用したリモートワーク環境の更なる整備、リソース計画・人財管理の高度化、ロボティックスプロセスオートメーション導入による管理業務の効率化を推進しています。

デジタル変革ビジネスでは、プラント運転・保守ソリューションとDX事業を再編・統合し、顧客のプラント運転・保全業務の変革を支援するソリューション事業を展開しています。 このため、新たなO&MトータルソリューションサービスとしてplantOSTMの提供を開始しました。plantOSTMは、千代田エクスワンエンジニアリング㈱をはじめ、当社グループがこれまで提供してきた産業/プラント向けメンテナンス分野におけるフィジカルサポートと当社が長年培ってきた高度解析・診断、IOT、AI等のデジタル技術を、ハイブリッドに融合したO&M向けサービスです。

また、plantOSTM提供事業の一環として、インドネシアのドンギ・スノロLNG社(以下「DSLNG社」)より技術サポート提供業務を受注しました。本件はDSLNG社が保有するLNGプラントにおけるエンジニアリングサービス、プロセス安全サポートなどを対象としています。当社がこれまで培ってきたコンサルティング能力や先進的なデジタル技術を活用し、プラントの安全・安定運転の実現に向けてDSLNG社に最適なソリューションを提供していきます。

 

≪その他≫

2023年4月1日付で千代田エクスワンエンジニアリング㈱が事業を開始しております。

 

 

受注高、完成工事高、受注残高の実績は、次のとおりです。

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

前第3四半期連結累計期間

(自 2022年4月1日

  至 2022年12月31日)

当第3四半期連結累計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年12月31日)

受注高

(構成比)

完成工事高

(構成比)

受注残高

(構成比)

受注高

(構成比)

完成工事高

(構成比)

受注残高

(構成比)

1 エンジニアリング事業

120,041

307,991

1,279,474

173,335

397,059

989,671

( 99.6%)

( 99.8%)

(100.0%)

( 99.8%)

( 99.9%)

(100.0%)

エネルギー

分野

(1) LNGプラント関係

52,885

181,471

879,452

29,393

196,148

690,656

( 43.9%)

( 58.8%)

( 68.7%)

( 16.9%)

( 49.3%)

( 69.8%)

(2) その他ガス関係

4,604

2,414

5,197

1,526

2,192

4,464

( 3.8%)

( 0.8%)

( 0.4%)

( 0.9%)

( 0.6%)

( 0.5%)

(3) 石油・石油化学関係

28,062

23,298

31,515

22,597

22,203

26,102

( 23.3%)

( 7.5%)

( 2.5%)

( 13.0%)

( 5.6%)

( 2.6%)

地球環境

分野

(4) 医薬・生化学

  ・一般化学関係

14,967

23,014

42,052

78,263

22,146

96,031

( 12.4%)

( 7.5%)

( 3.3%)

( 45.1%)

( 5.6%)

( 9.7%)

(5) 環境・新エネルギー

  ・インフラ関係

15,828

74,957

317,623

37,731

151,194

168,213

( 13.1%)

( 24.3%)

( 24.8%)

( 21.7%)

( 38.0%)

( 17.0%)

(6) その他

3,692

2,834

3,632

3,822

3,174

4,202

( 3.1%)

( 0.9%)

( 0.3%)

( 2.2%)

( 0.8%)

( 0.4%)

2 その他の事業

490

490

403

403

( 0.4%)

( 0.2%)

(  -)

( 0.2%)

( 0.1%)

(  -)

合   計

120,531

308,481

1,279,474

173,739

397,463

989,671

(100.0%)

(100.0%)

(100.0%)

(100.0%)

(100.0%)

(100.0%)

国   内

59,140

58,155

99,504

122,818

56,434

153,819

( 49.1%)

( 18.9%)

( 7.8%)

( 70.7%)

( 14.2%)

( 15.5%)

海   外

61,390

250,325

1,179,969

50,920

341,028

835,852

( 50.9%)

( 81.1%)

( 92.2%)

( 29.3%)

( 85.8%)

( 84.5%)

(注)受注残高を算出するに当たっては、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約
   に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しております。

 

(2) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等について重要な変更はありません。

 

(3) 研究開発活動

 当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、15億71百万円です。
 なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。