売上高

利益

資産

キャッシュフロー

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総資本回転率

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最終更新:

E36433 Japan GAAP

売上高

57.5億 円

前期

47.6億 円

前期比

120.9%

時価総額

300.5億 円

株価

2,730 (03/28)

発行済株式数

11,005,525

EPS(実績)

50.65 円

PER(実績)

53.90 倍

平均給与

550.0万 円

前期

540.2万 円

前期比

101.8%

平均年齢(勤続年数)

42.0歳(3.9年)

従業員数

264人

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 光の時代といわれる21世紀。光技術の可能性を追求し、その成果を少しでも早く少しでも多く社会に還元したい。それが創業以来変わらない私たちの願いです。当社は、ミッションとして、「豊かな未来を光の技術で実現する」を掲げております。

 当社は、単結晶(*1)、光部品(光デバイス)、レーザ光源、光計測装置などの光学関連製品を、主に光を使った計測分野の装置メーカーや光学製品メーカー向けに開発・製造・販売しております。例えば、当社が製造・販売する放射線を検出するシンチレータ(*2)単結晶は、がんの診断用のPET検査装置に使用されており、当社のレーザ光源は、半導体製造に使用されるシリコンウエハの品質検査装置に使用されております。

 2000年の創業以来、当社は単結晶・レーザのグローバルニッチトップカンパニー(*3)をめざし、「研究成果を社会に還元し、キーマテリアル(*4)を世界に向けて発信する」、「顧客へマテリアルソリューション(*5)を提供し、社会の発展に貢献する」、「単結晶を核とした製品を開発し、未来の市場機会を創造し続ける」という経営理念の下、光学分野のバリューチェーン(*6)の川上に位置する単結晶の開発・製造から事業を開始し、単結晶開発技術を生かしつつ、光学分野での川下の製品群(光部品、レーザ光源、光計測装置)へと展開してまいりました。

 これまで光学分野での先端技術を継続的に蓄積、保有し、その独創性及び競争優位性の確立をめざしてまいりました。単結晶分野において、当社は、FZ法(Floating Zone Method)、CZ法(Czochralski Method)、VB法(Vertical Bridgeman Method)、TSSG法(Top Seeded Solution Growth Method)、DCCZ法(Double Crucible CZ Method)、KY法(Kyropoulos Method)、EFG法(Edge-defined Film-fed Growth Method)など、多くの単結晶育成技術及び装置を保有しております。国内外の企業、大学、研究所などから技術、製品への問い合わせ、引き合いをいただいております。2014年には経済産業省の「グローバルニッチトップ100選」(*3)にも選定されております。今後も、当社の光学技術は、その応用範囲及び新たな用途の拡張をめざしてまいります。

 当社は、光学事業の単一セグメントでありますが、製品の用途から「光計測・新領域事業」、「半導体事業」、「ヘルスケア事業」の3つの事業に区分しております。

 「光計測・新領域事業」において単結晶技術、光学分野でのコア技術の新用途・新製品を立案・開発し、試作・開発ベースでの小規模案件を中心にビジネスを進めております。「光計測・新領域事業」での開発技術であり成果が事業化し、量産化を確立したのが「半導体事業」と「ヘルスケア事業」です。

 こうした展開は、当社がこれまでに国内外の企業や大学等から埋れた技術や事業を買収し、製品化・事業化して蓄積したノウハウにより、可能となったと考えております。

 また、工学・理学系の博士号・修士号を保有する技術者が、研究開発及び製造に従事する役職員の約30%を占め、研究開発型の事業会社として成長していることなども当社の特徴であり、独創性及び競争優位性の源泉と考えております。

 各事業の概要は次のとおりです。

 

光計測・新領域事業

 当事業は、国内外の光計測機器/光学製品メーカー及び大学等研究機関に単結晶、光部品、レーザ光源及び光学測定装置を開発、製造、販売しております。当事業年度における当事業の売上高は、741百万円です。同時に、当社のコア技術である単結晶技術/光学技術を活用し、さまざまな顧客ニーズへの対応、光学分野での問題解決策の提供及びそうしたプロセスの中で有望な新用途/新製品をインキュベートしております。

 国内外の展示会、学会への出展、当社ホームページへのアクセスなどを通じて、研究開発/試作の受託を重ねております。また、当社のコア技術である単結晶技術や光学技術を活用し、さまざまな顧客ニーズへの対応や問題解決策を提供しております。これらの活動が、新用途/新領域のビジネスに繋がり、当社の将来ビジネスへのアンテナ、種まきの機能を担っております。当事業においてすでに商品化段階に至った主な製品は、以下のとおりです。

製品

製品の説明

主な用途

単結晶・デバイス

波長変換(*7)部品(デバイス)

波長変換部品(デバイス)は、光学単結晶を用いてレーザ光の波長を他の波長へ変換する(例えば、赤外光を可視光や紫外光に変換することが挙げられます。)製品です。

量子分野では、もつれ光子対の発生に利用されます。

医療

理化学

情報家電

工業用加工

セキュリティ

娯楽

量子

GPS(Ce:Gd2Si2O7)単結晶

放射線が入射すると発光するシンチレータとしての特性を持つ単結晶です。高発光量、高エネルギー分解能等の特長を有しております。高温環境でも特性劣化が小さいため、広い分野での応用が期待されます。

放射線汚染モニタリング

セキュリティ

石油探査

医療

アイソレータ用単結晶

一方向のみ光が透過する光学部品である光アイソレータに搭載される単結晶です。レーザ機器のレーザ光出射口は、外部からレーザ機器に光が入ると損傷したり、不安定になります。レーザ光出射口に光アイソレータを設置することにより、外部からの光を遮断し、不具合を防ぐことが可能となります。

5G

データセンタ通信用デバイス

GaN(*8)用基板単結晶(SAM(*9))

GaNをエピタキシャル成長させる際に基板となる単結晶です。GaNと基板の格子定数及び熱膨張率のミスマッチが小さいため、高品質のGaN薄膜が得られます。

可視光レーザ

高周波デバイス

パワー半導体

レーザ

114nmレーザ

真空紫外光と呼ばれる紫外線の中で最も波長の短い光を発生するレーザ装置です。単結晶に加えガスを用いた波長変換技術を利用して、赤外光を114nmに変換しております。このように波長が短くエネルギーの高い光は、最先端の研究開発分野で材料の分析に有効です。特に、量子コンピューティング等への利用が期待される新材料の研究開発に利用されております。

光電子分光

フェムト秒レーザ

深紫外光のレーザ光を短いパルスで照射することにより、非加熱加工を行います。これにより、バリやクラックが発生しない高精度な微細加工が可能になります。

半導体

測定器

光学的ノイズ(スペックルノイズ)測定器

スペックルノイズは、レーザを利用したディスプレイ(レーザ光を投影した画面)において発生する、画質の劣化要因のひとつです。例えば、レーザ光を投影した画面に映る画像が、荒い画像に見えること等が挙げられます。当社は、スペックルノイズを定量的に表すことができる測定器を開発し、製造・販売しております。この装置は、国際標準に認定されたスペックルノイズ測定器であり、ディスプレイメーカーは画質の評価に使用しております。

プロジェクター

照明

 

 

 NoT(Network of Things)やAI(人工知能)のさらなる活用により、クラウドを通じた工作機器の連携と自動化/無人化がさらに進むと考えられます。このようなイノベーションを支える半導体の微細化、医療機器の高度化等に伴い需要が高まっている、レーザ光源の高出力化や短波長化の技術開発を推進してまいります。また、量子コンピューターの開発により既存の暗号技術は脅威にさらされることになります。この脅威に対抗するため量子暗号通信技術の開発が世界中で進展しております。さらに、量子コンピューター等の量子デバイスを繋ぐ量子インターネットの研究開発も注目されております。そのネットワークの要となる量子もつれ光源や量子中継器に使用するメモリ用結晶の開発を新たに開始しました。一方、世界規模のテーマであるカーボンニュートラル実現に向け、デジタルインフラの省エネ化・高性能化のキーマテリアルであるパワー半導体向けSiCウエハの、溶液法による超高品質化及び大口径化の開発にも注力してまいります。

 

半導体事業

 当事業は、半導体ウエハ(*10)の検査装置メーカー向けの単結晶・レーザの開発・製造・販売を行っております。当事業年度における当事業の売上高は、3,239百万円です。当社の単結晶のうち、非線形光学効果(*11)の強い単結晶及びその単結晶を搭載したレーザは、波長や出力をはじめとする各種性能・品質の観点から、販売先の最新機種に搭載されております。

 半導体製造工程の「前工程」と呼ばれるウエハ処理工程では、投入するシリコンウエハの品質検査が半導体チップの歩留まり管理上不可欠であり、専用のウエハ検査装置が利用されております。当社の単結晶と単結晶を搭載したレーザは、そのウエハ検査装置に搭載されております。半導体の微細化に伴い、検査装置に搭載する単結晶及びレーザも、次世代製品の開発が常に求められております。当社は、こうした市場の要求に対し、材料工学、光学などの観点から常に開発・提案を行い、あるいは、一部製品に関しては特許権者からのライセンスを受け、次世代製品への取り組みを継続しております。

 拡大する半導体市場の微細化への要求については、光学分野では短波長化と高出力化が重要となります。当社の単結晶、レーザ光源は、波長変換による短波長化(266nm)と2W以上の高出力化の特徴を有しております。その結果、単結晶については、2006年に開発を受託、その成功を受けて、2011年から量産へ、またレーザは、2010年に株式会社マグネスケールより事業を買収し生産を開始しました。その後、2011年に開発を受託、その成功を受けて2016年から量産に移行しております。顧客の新製品投入に合わせてこうした「開発」→「量産」のプロセスが繰り返されております。

 一方、顧客が製造販売する検査装置においては、エンドユーザーである世界の半導体工場にて昼夜連続での稼働が要求事項となっております。その結果、搭載された単結晶、レーザはその使用に応じて定期的なメンテナンス需要が発生します。メンテナンスの内容は、概ね1〜2年の一定期間ごとに使用に伴って劣化した単結晶や光学ユニットを交換するものです。これらのメンテナンス需要は、ほぼ事前予想が可能なため、景況の山と谷のギャップが激しいと言われる半導体分野での事業としては収益安定要素と言えます。加えて、10年以上の長期間稼働が求められるレーザの新規出荷売上に従い、累積的に増えることが見込まれるリカーリングの性質を持つ売上収益となります。当事業年度におけるメンテナンス売上高は、当事業売上の13%程度を占めております。

 

ヘルスケア事業

 当事業は、がんの診断に使用されるPET検査(*12)装置に搭載されるシンチレータ単結晶の開発、製造、販売を行っております。具体的には、製造したシンチレータ単結晶を加工した各辺数mm角の直方体(PET用素子と呼びます。その素子を数万本、PET検査装置内に配列して使用します。)の形状で国内外のPET検査装置メーカーに販売しております。当事業年度における当事業の売上高は、1,772百万円です。当社のシンチレータ単結晶は、継続的な品質向上とコスト低減の実績及び品質管理体制の構築により、既に主流となっている全身用TOF-PET検査装置(*13)に採用されております。当社の単結晶は、全身用TOF-PET検査装置におけるシンチレータ単結晶の世界市場の内、約20%のシェアを獲得しております。(国立研究開発法人 日本研究開発機構 産学連携部 2017年12月20日(71ページより推定〜(出所)平成28年度 日本企業のモノとサービス・ソフトウェアの国際競争ポジションに関する情報収集(NEDO)(平成29年3月)))

 また、当社のシンチレータ単結晶は、乳房検査専用PET検査装置や、重粒子線を用いたがん治療中の粒子線位置をリアルタイムで確認することができるOpen-PET検査装置に採用されております。Open-PET検査装置は、従来のがん診断だけでなく、治療にも使われる装置として、国内においては量子科学技術研究開発機構を中心として研究が進んでいるものです。

 加えてPET検査装置は、将来、がんの診断以外にアルツハイマー型認知症(*14)診断への適用範囲拡大が見込まれており、当社でも用途拡大に対応すべく研究開発活動を進めております。認知症は、国内外の高齢化により増加傾向が見られることに加え、昨年、アルツハイマー型認知症の治療薬が米国にて迅速認証を受けたことから、今後、治療薬の普及に伴い、頭部専用PETによる診断への需要が高まってくることが期待されます。(出所:World Alzheimer Report 2021)

[事業系統図]

光計測・新領域事業

 

※画像省略しています。

① 単結晶材料の提供(商社経由の場合あり)

② 代金の支払い(商社経由の場合あり)

③ 単結晶・光部品(デバイス)・レーザ・計測器の販売(商社経由の場合あり)

④ 代金の支払い(商社経由の場合あり)

 

半導体事業

 

※画像省略しています。

① 電気・光学部品の提供

② 代金の支払い

③ 単結晶・レーザの販売/メンテナンスサービスの提供

④ 代金の支払い

⑤ 特許使用の許諾(ライセンスが必要な場合)

⑥ 特許許諾料の支払い

 

ヘルスケア事業

 

※画像省略しています。

① 単結晶材料の提供(商社経由の場合あり)

② 代金の支払い(商社経由の場合あり)

③ 単結晶の販売(商社経由の場合あり)

④ 代金の支払い(商社経由の場合あり)

 

<用語解説>

(*1)単結晶

・原子、分子が規則正しく配列している固体を結晶と総称します。その結晶の中でも、物質内のどの部分においても原子、分子配列の向きがまったく同一である物質を単結晶と呼びます。

・結晶に、電気信号を加えたり、圧力をかけたり、光を当てることにより、各結晶の持つ特性が現れますが、単結晶の場合は、その特性(例えば、光を当てることにより光の波長を変換したり、電気信号を加えることにより光の強度を調整すること。)が強く現れます。この特性を活用して、産業分野で単結晶応用製品が実用化されております。

 

(*2)シンチレータ

放射線が当たると微弱な光を出す物質をいいます。

 

(*3)グローバルニッチトップカンパニー

「グローバルニッチトップ100選」は経済産業省が2013年度より継続している事業です。「グローバルニッチトップ企業」の定義は、「昨今の産業構造の変化や、求められるニーズに迅速に対応するため、大企業や主要業界団体だけでなく、ニッチ分野(比較的小規模な市場や潜在的ニーズはあるが、まだ事業の対象として考えられていないような分野)において高い世界シェア(占有率)を有し、優れた経営を行っている中堅・中小企業」です。経済産業省として、認定と顕彰を通じて、対象企業の知名度向上や海外展開を支援するとともに、新たにグローバルニッチトップを目指す企業が経営上の羅針盤として活用することが目的となっております。

 

(*4)キーマテリアル

世の中の役に立つ材料を意味します。

 

(*5)マテリアルソリューション

材料と光に関する問題解決を意味します。

 

(*6)バリューチェーン

単結晶、ウエハ、チップ、光部品、レーザ光源、計測装置の光学分野における川上から川下に至る一連の製品供給プロセスを意味します。

 

(*7)波長変換

波長(周波数や色とも表現されます)は光の重要な性質を表すものであり、波長変換はレーザ光を元々の波長から紫外線や赤外線の領域に拡げる技術です。波長を変換する手法は数多くありますが、原理はレーザ光という強い光と物質の相互作用による非線形光学効果(*11)を用いております。

 

(*8)GaN

Ⅲ属元素とⅤ属元素が1:1の割合で結合した化合物半導体の一種で、融点が高く窒素の蒸気圧が高いため、シリコン(Si)のように融液から大型の単結晶を作製することが困難です。そのため、気相法によって薄膜状の単結晶が作製されます。最近では、GaN半導体は、光デバイスだけでなく、パワーデバイスや高周波デバイスとしても着目されており、そのために高品質なGaN単結晶が必要とされております。

 

(*9)SAM

ScAlMgO4の化学式で表される、スカンジウム(Sc)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の三種類の金属元素を1:1:1の等しい割合で含む酸化物です。

 

(*10)半導体ウエハ

半導体素子の製造材料です。一般的にはシリコンを素材とするインゴット(円柱形の塊)を、0.5mm~1mm程度の厚さにスライスした円盤状の板を指します。半導体の主要な応用例はスマートフォン等です。

 

(*11)非線形光学効果

光を受けた物質の内部では、通常の弱い光の場合、光の吸収や散乱などの現象が光の強度に比例して現れますが、レーザ光のような強い光の場合、比例関係から外れた新たな現象が発現します。その効果を非線形光学効果と呼びます。

 

(*12)PET検査

被検者に、がん患部に集まる薬剤を注射し、薬剤が放つ放射線を検出器でとらえて病巣を探るがんの検査方法です。従来のX線検診、CT検診では困難であった早期のがん細胞まで発見することが可能で、全身を一度に診断できることも特長です。

 

(*13)全身用TOF-PET検査装置

最先端のPET検査装置のことで、薬剤が放つ放射線の僅かな検出時間差を計測することで、高精細な診断画像を得ることができます。高速なシンチレータが要求され、当社LGSOシンチレータが搭載されているPET装置の多くがTOF-PETです。

 

(*14)アルツハイマー型認知症

脳が少しずつ萎縮していき、認知機能が低下していく病気で、認知症の半分以上はアルツハイマー型認知症です。

 

23/05/26

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における総資産につきましては、前事業年度末に比べ2,080百万円増加し、10,791百万円となりました。これは主に、有形固定資産が990百万円、原材料及び貯蔵品が539百万円、仕掛品が436百万円増加した一方、現金及び預金が708百万円減少したこと等によるものであります。

 

(負債)

 当事業年度末における負債につきましては、前事業年度末に比べ1,439百万円増加し、5,563百万円となりました。これは主に、短期借入金が600百万円、長期借入金が349百万円増加したこと等によるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産につきましては、前事業年度末に比べ640百万円増加し、5,228百万円となりました。これは主に、利益剰余金が557百万円増加したこと等によるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当事業年度における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴う資源、エネルギー価格の高騰、インフレーション抑制にむけた米国、欧州各国の政策金利引き上げ、加えてゼロコロナ政策による中国経済の一時的な失速により、停滞が鮮明となりました。一方、日本経済は、新型コロナウイルス感染症による経済への抑制効果が軽減し、経済活動の正常化が進展、内需を中心に持ち直し傾向にあります。

 当社の当事業年度は、ロシア・ウクライナ情勢や世界的なインフレ懸念の影響は軽微でした。また、急激な円安の影響は最小限に止まっておりますが、一方で、半導体事業における外部からの調達部材の一部に不具合が発生したために、第3四半期の売上げが停滞し、通期では20%超の増収は確保したものの、追加部材費用や研究開発費等を吸収しきれず、営業利益は減益となりました。しかしながら、経常利益以下各段階利益は、子会社株式取得資金の支払いに伴い設定した為替予約により時価評価益を192百万円計上したことが寄与し、プラスに転じました。当社は、光学事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しておりますが、以下に製品の市場別に売上高の状況等を説明いたします。

 光計測・新領域事業におきましては、単結晶技術、光学分野でのコア技術の新用途・新製品を立案・開発し、試作・開発ベースでの小規模案件を中心にビジネスを進めております。当事業年度は、量子技術分野におけるデバイス開発を開始いたしました。当事業年度における同事業の売上高は、増収基調で推移し、前期比27.9%増の741百万円となりました。

 半導体事業におきましては、先端ロジック半導体の需要が前年度に引き続き好調であったことから、ユーザーである半導体ウエハ検査装置メーカーなどからの当社製品への引き合い及び受注状況は増勢で推移しております。顧客からの増産要求に対応するため、横浜事業所の増床及び第4工場建設などの設備投資を行い、生産キャパシティの拡大を進めております。一方で、第3四半期に発生した外部からの調達部材の一部の不具合については、根本的な原因解明、再発防止策等を策定し、安定した調達体制の構築を進めております。当事業年度における同事業の売上高は、前期比31.4%増の3,239百万円となりました。

 ヘルスケア事業におきましては、PET検査装置の世界需要は概ね堅調に推移いたしました。従来同様、ユーザーにおける当社のシェアアップへの取り組みを継続する一方で、原材料費上昇分の製品価格への転嫁による増収確保を進めました。第3四半期までは概ね順調に推移しましたが、2023年初頭より、主力ユーザーでの在庫調整などから当社への発注が停滞し、当事業年度の売上高の伸びは限定的となりました。当事業年度における同事業の売上高は、前期比3.5%増の1,772百万円となりました。

 その結果、当事業年度の売上高は5,752百万円(前年同期比20.9%増)、営業利益は537百万円(前年同期比10.0%減)、経常利益は687百万円(前年同期比14.8%増)、当期純利益は557百万円(前年同期比12.4%増)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ708百万円減少し、当事業年度末には1,438百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、使用した資金は119百万円(前事業年度は443百万円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益693百万円(前事業年度は税引前当期純利益590百万円)、減価償却費356百万円(前事業年度は減価償却費268百万円)が生じた一方で、棚卸資産の増加額1,157百万円(前事業年度は棚卸資産の増加額433百万円)が生じたこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は1,732百万円(前事業年度は849百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,483百万円(前事業年度は有形固定資産の取得による支出789百万円)等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、得られた資金は1,121百万円(前事業年度は1,375百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入れによる収入1,200百万円(前事業年度は発生していない)や、短期借入金の純増額600百万円(前事業年度は短期借入金の純減額850百万円)が生じた一方、長期借入金の返済による支出725百万円(前事業年度は長期借入金の返済による支出275百万円)が生じたこと等によるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は、光学事業の単一セグメントであります。当事業年度における生産実績を事業区分別に記載すると以下のとおりです。

事業区分

当事業年度(千円)

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

前年同期比(%)

光計測・新領域事業

399,138

61.0

半導体事業

1,888,225

136.2

ヘルスケア事業

1,365,424

125.4

合計

3,652,788

116.7

(注)金額は製造原価によっております。

 

b.受注実績

 当社は、光学事業の単一セグメントであります。当事業年度における受注実績を事業区分別に記載すると以下のとおりです。

事業区分

当事業年度

(自 2022年3月1日 至 2023年2月28日)

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

光計測・新領域事業

552,560

92.2

163,647

51.7

半導体事業

3,893,540

89.1

3,118,239

126.5

ヘルスケア事業

1,616,369

85.9

143,337

47.9

合計

6,062,470

88.5

3,425,224

111.2

 

c.販売実績

 当社は、光学事業の単一セグメントであります。当事業年度における販売実績を事業区分別に記載すると以下のとおりです。

事業区分

当事業年度(千円)

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

前年同期比(%)

光計測・新領域事業

741,145

127.9

半導体事業

3,239,369

131.4

ヘルスケア事業

1,772,147

103.5

合計

5,752,663

120.9

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2021年3月1日

至 2022年2月28日)

当事業年度

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

販売高

(千円)

割合

(%)

販売高

(千円)

割合

(%)

Marubeni America Corporation

1,668,535

35.1

1,667,305

29.0

Skyverse Technology Co., Ltd.

638,650

13.4

1,253,566

21.8

株式会社日立ハイテク

960,334

20.2

956,049

16.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表を作成するにあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社は、光学事業の単一セグメントでありますが、事業区分別に売上高を以下に記載いたします。

a.売上高

  当事業年度において、半導体事業では、先端半導体メーカーの旺盛な設備投資意欲を背景に当社のユーザーである半導体検査装置メーカーからの引き合い、受注が引き続き増勢で推移し、前年同期比31.4%増の3,239百万円となりました。ヘルスケア事業では、主要顧客における在庫生産調整により第4四半期の売上が低調に推移し、前年同期比3.5%増の1,772百万円となりました。光計測・新領域事業では、研究機関向けのスポット売上が寄与し、前年同期比27.9%増の741百万円となりました。全社では、前年同期比20.9%増の5,752百万円となりました。当社が経営目標として掲げる前年同期比増収率20%を0.9ポイント超過となりました。来期以降も引き続き目標クリアに取り組んでまいります。

 

b.売上総利益

 当事業年度の全社の増収額995百万円は、半導体事業で773百万円と過半を占めます。半導体事業は、ヘルスケア事業、光計測・新領域事業に比べて相対的に原価率が低いため、前年同期比で売上総利益率は5.3ポイント上昇し、売上総利益は648百万円増加し、2,279百万円となりました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

 前年同期比で研究開発費が360百万円、給料及び手当が71百万円、役員報酬が20百万円増加し、販売費及び一般管理費は708百万円増加し、1,742百万円となりました。その結果、営業利益は、前年同期比59百万円減少し、537百万円となりました。当社が経営目標として掲げる営業利益率10%に対して当事業年度は9.3%と、0.7%未達となりました。

 

d.経常利益

 当事業年度における営業外収益は、288百万円となりました。その主な内訳は、為替差益173百万円及び補助金収入98百万円です。営業外費用は、137百万円となりました。その主な内訳は、支払手数料95百万円及び支払利息34百万円です。

 これらの結果、当事業年度における経常利益は、前年同期比88百万円増加し、687百万円となりました。

 

e.特別利益及び特別損失

 当事業年度における特別利益は5百万円となりました。これは社内評価用装置を売却したことによる固定資産売却益の計上によるものです。

 

f.税引前当期純利益

 当事業年度における税引前当期純利益は、前年同期比102百万円増加し、693百万円となりました。

 

g.法人税等

 当事業年度における法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額は、前年同期比40百万円増加し、135百万円となりました。

 

h.当期純利益

 当事業年度における当期純利益は、前年同期比61百万円増加し、557百万円となりました。当事業年度におけるROE(自己資本利益率)は、11.4%であり、今後ROEなど使用自己資本の効率や資本コストを意識した経営目標を検討してまいります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

 当社の資金需要のうち主なものは、製造用の設備の取得費、研究開発費、原材料等の購入費用、一般管理費等の営業費用であります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 日々の営業活動及び製品製造のための仕入れに係る資金の受け取りと支払いの差により発生する短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入で賄い、自己資本では賄えない固定資産投資等への対応資金である長期運転資金の調達につきましては、金融機関引き受けの私募社債の発行、また金融機関からの長期借入やリースを中心に、また必要に応じて資本での調達も検討することとしております。

 なお、当事業年度末における社債、借入金、リース債務及び割賦未払金を含む有利子負債の残高は3,679百万円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,438百万円となっております。

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、成長性、収益性及び資本効率性を判断する指標として、売上高成長率及び営業利益率を経営指標として捉えております。当事業年度における売上高成長率は20.9%、営業利益率は9.3%となっております。

 売上高成長率の向上を目指す施策としては、新たな用途と顧客の開拓を進めてまいります。新たな用途につきましては、光技術の応用範囲は世界規模で拡大しており、レーザによる加工や計測といった新領域・新用途への事業領域の拡大を進めております。新たな顧客の開拓の主な候補は、半導体事業やヘルスケア事業での現在の顧客の競合先が当社にとっての新たな顧客となります。

 営業利益率の向上を目指す施策としては、より付加価値の高い製品の開発を進めてまいります。具体的には、研究開発活動を行っております、放射能汚染モニタリング・セキュリティ・石油探査・医用SPECT装置を用途とするGPS単結晶、5G・データセンタ通信用デバイスを用途とするアイソレータ用単結晶、パワー半導体向け単結晶、量子もつれ光源モジュールを用途とする量子通信デバイス等となります。