売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E37978 

売上高

1,927.7億 円

前期

1,170.1億 円

前期比

164.7%

時価総額

7,529.9億 円

株価

4,214 (04/19)

発行済株式数

178,687,405

EPS(実績)

110.60 円

PER(実績)

38.10 倍

平均給与

858.8万 円

前期

799.0万 円

前期比

107.5%

平均年齢(勤続年数)

49.4歳(7.3年)

従業員数

2,167人(連結:2,526人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは、ロジック半導体市場の中で、「ソリューションSoC」という新しくかつ独自のビジネスモデルのもとで顧客にカスタムSoCを開発・提供しているファブレスの半導体ベンダーです。SoCは、System on chipの略語で、装置やシステムの動作に必要な機能を1つのチップ(半導体)に実装したものです。当社グループは、このSoCのうち、特定の顧客固有に設計されるカスタムSoCを中心に事業を行っています。新しいサービス・製品の差別化のために独自の先端SoCを必要とする顧客のパートナーとして、また、IP(※1)、EDA(※2)ツール、ソフトウエアからプロセス、アセンブリ、テストに至るまでの最新の技術を提供するサプライヤーと協働して、顧客、さらにはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、豊かな社会を実現することを目指しています。

 当社グループは、従来、顧客から受領したSoCの仕様に基づき物理設計のみを担う従来型のASIC(※3)や、分野・アプリケーションを限定して機能・目的を特化させた汎用的なASSP(※4)を中心に事業を展開しておりましたが、2019年3月期以降、従来型のASIC及びASSPに加え、自社製品における差別化を求める顧客に対して、顧客とともに仕様の策定や論理設計を行い、先端テクノロジを組み合わせて顧客にとって最適なSoCを提供するビジネスモデルへのシフトを進め、この「ソリューションSoC」ビジネスモデルによるカスタムSoCを中心に事業を展開しております。

 カスタムSoCには主として3つのビジネスモデルが存在します。まず従来型ASICでは、アーキテクチャ設計、企画・仕様設計及び論理設計等SoC設計における上流設計を顧客自身が行い、それ以降の工程を外部のカスタムSoCベンダーが担当します。そのため、従来型ASICは上流設計を自ら行う能力を有する顧客に利用が限定されます。他方、当社グループのソリューションSoCビジネスモデルでは、当社グループが顧客とともにこれらの上流設計を行うため、上流設計を行う能力を保有していない顧客にも製品を提供することができます。また、ASSPをベースにカスタマイズされたASICを提供するモデルでは、ベンダー自身のASSPをベースとしてカスタマイズするため、カスタマイズの幅が限定されるとともに、顧客からはベンダーロックイン(※5)への警戒感が生じることとなります。これに対し、ソリューションSoCビジネスモデルでは、外部ベンダーが提供する最先端の技術も活用し、顧客に最適なSoCを提供しつつ、ベンダーロックインを回避することができます。

※画像省略しています。

 近年、半導体製造技術の進展やこれを使ったネットワーク、クラウド、AI等様々な革新的技術の普及と融合により、自動運転、AR/VR等今までにない新たなサービスや製品が次々と出現しています。それらのサービス/製品を開発する企業は、自社のサービス/製品の差別化のために先端テクノロジを活用した高性能かつ拡張性の高い独自のSoCを必要としています。

 一方で、半導体産業においては、プロセス技術(※6)、パッケージング技術(※7)、テスト技術のほか、IP、EDAツール、ソフトウエアまでも含めてそれぞれを専業にする企業が出現し、常に最先端のイノベーティブな技術が生み出され、誰もがその最先端の技術を市場から入手することが可能なエコシステムへと進化を遂げています。その一方で、それらの様々な技術を選択し、組み合わせて顧客にとって最適なSoCを設計開発する難易度は上昇しています。

そのため、独自のSoCを必要とする多くの企業は、SoCのアーキテクチャに対する知識はもとより、SoCが搭載される最終製品やサービスに関する理解が深く、差別化のために、先端のハードウエアからソフトウエアに至るまでの技術を組み合わせて最適なソリューションを提案できるパートナーを求めています。

こうした市場の変化の中、当社グループは、ソフトウエアまでも含めた設計開発能力を有し、適切な選択で顧客と共同して技術的課題を解決できるエンジニアリソース群を抱えていることに加えて、量産・品質保証・SCMまでトータルにサポートできる総合力を有しているといった強みを持っております。これにより、従来型のASIC、ASSP及びASSPをベースにカスタマイズされたASICでは満足できない顧客に対して、顧客とともにSoCの仕様を決めていく共同開発プロセスを通じて、顧客にとってより最適なカスタムSoCを提供することができるビジネスモデルとして「ソリューションSoC」を確立しました。また、こうした新たな最先端の市場で経験を積み重ね、ノウハウを蓄積すると同時に、競争力をさらに強化するため、差別化のための先端技術や種々の技術の組み合わせとその実証にも積極的に投資するとともに、事業部ごとの壁を取り除き、開発機能ごとに集約し、その中から各プロジェクトに必要なリソースを割り当てていくフラットな研究開発体制へと移行しました。これらの結果、7nm以下の先端プロセスノード(半導体の製造技術(半導体プロセス)の世代を表す指標。1nmは100万分の1mmであり、nm数が小さくなるほど先端のテクノロジを表す。)を活用する案件がNRE売上(※8)に占める割合は、2018年3月期の1%から2023年3月期には59%へと拡大しました。

 また、ビジネスモデルのシフトに加え、注力する事業領域に関しても、それまでのテレビ等のコンシューマ向け中心の分野から、「オートモーティブ」「データセンター/ネットワーク」「スマートデバイス」といった先端成長分野へと大幅な転換を果たしました。その結果、これらの先端分野がNRE売上に占める割合は、2018年3月期の50%から2023年3月期には76%へと拡大しました。

現在、当社グループは、「オートモーティブ」におけるAD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)や車載センシング、「データセンター/ネットワーク」における携帯基地局やAIアクセラレータ、「スマートデバイス」におけるAR/VR等の先端成長分野で商談を獲得し、開発実績を積み上げ、一部の製品においては既に量産化を開始しています。また、当社グループは、これらの注力分野に加え、現在安定的な収益を計上しているFA(Factory Automation)、テスター等の「インダストリアル」分野や、特異な技術で今後の成長が期待できる電波式測距センサー等の「IoT&レーダーセンシング」分野でも事業を展開しています。

 半導体製品が顧客に採用され量産に至るまでには一般的に長い期間が掛かります。商談獲得後の設計開発及び顧客の評価完了から量産開始まで通常2年以上を必要とし、さらに量産を終了するまでには相当の期間が掛かります。このため、顧客の基幹部品を長期間にわたって開発、供給する責任を有する企業として、強固な財務基盤(2023年3月期末における自己資本比率56.6%、現預金451億円)のもと事業を行っております。

 当社グループは、設計開発段階において、顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領し、量産段階において、当社グループの売上全体の大半を占める製品売上を受領しております。また、当社グループは、水平分業が進む半導体業界のメリットを最大限活かすべく、工場を持たないファブレスの事業形態を採っております。製品の製造についてはTAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFACTURING COMPANY LIMITED(以下「TSMC」という。)を始めとするファウンドリやOSAT(※9)等の専業メーカに委託しております。

 顧客の最先端の製品やサービスには、常に新たなSoCが求められ、そのような先端SoCを求める顧客や市場も変化し続けます。当社グループもこの変化をいち早く捉えるべく、先行開発投資や開発力の強化を進め、今後も常に持続的な成長を目指します。

 

※1 IPとは、Intellectual Propertyの略語であり、半導体業界においては、半導体を構成するための部分的な機能単位でまとめられている回路情報のことです。外部から購入する調達IPと自社で開発を行う自社IPとに分けられます。

2 EDAとは、Electronic Design Automationの略語であり、半導体の設計作業を自動化して行うソフトウエアやツールです。

3 ASICとは、Application Specific Integrated Circuitの略語であり、特定の顧客向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称です。

4 ASSPとは、Application Specific Standard Productの略語であり、分野/アプリケーションを限定して、機能/目的を特化させた大規模集積回路のことです。ASSPは、特定の顧客用にカスタマイズされておらず、顧客を限定しないため、複数の顧客に提供する汎用部品です。

5 ベンダーロックインとは、特定ベンダーが提供する製品やサービスを一旦採用してしまうと、将来他のベンダーが提供するよりよい製品やサービスへの乗り換えが困難となり、顧客側の選択肢が限定されることをいいます。

6 プロセス技術とは、半導体の製造工程のうち前工程と呼ばれるシリコンウエハに回路を形成するまでの工程における技術のことです。

 

7 パッケージング技術とは、半導体の製造工程のうち後工程と呼ばれる半導体チップを外部から守るパーツで保護し、かつ電気的に接続するための工程における技術のことです。

8 NRE売上とは、Non-Recurring Engineering 売上の略語であり、製品の量産化前の開発段階において顧客から受け取る売上のことを指します。NRE売上は、人件費、IP、設計ツール、レチクル(半導体製造の露光工程で使用され、設計した回路をシリコンウエハに転写するためのフォトマスク)、試作品製造等といった、開発段階で発生する設計開発コストに対応し、通常、開発のマイルストーン進捗に応じて複数回にわたって計上されます。

9 OSATとは、半導体製造の後工程における請負製造サービス(Out-sourced Semiconductor Assembly and Test)の略語です。

 

 

 事業の系統図は以下のとおりです。

※画像省略しています。

 

 

23/06/29

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a 経営成績

当連結会計年度における世界経済は、需要と供給の両面で新型コロナウイルス感染拡大の危機から回復傾向にあり、穏やかな持ち直しの動きもありました。一方、高いインフレ率と金融引き締めにより、当連結会計年度後半にかけては景気回復のペースが鈍化しました。為替相場は、2022年11月以降は円高方向に振れたものの、前連結会計年度と比較して円安が進行しました。また、ロシアのウクライナ侵攻の長期化、米中貿易摩擦、新型コロナウイルス変異株の出現等で、将来に対する不透明感がますます高まりました。

このような経済環境のもと、スマートフォン、PC、コンシューマ製品等の需要低迷により、2022年の半導体市場の成長率は前年比で大幅に低下しました。一方、当連結会計年度後半からは、半導体供給の制約条件となっていた半導体製造企業(ファウンドリやOSAT)の生産能力のひっ迫状況は緩和されました。

当社グループにおいては、2018年4月の現CEO就任以降、ビジネスモデルの転換、グローバルな大型商談が見込まれる成長分野/先端分野へのシフト、さらに大胆な事業体制の変革などの構造改革を進めてまいりました。その結果、注力分野であるオートモーティブ、データセンター/ネットワーク、スマートデバイス分野を中心に多くの商談を獲得しています。年間の商談獲得金額(1USドル=100円で換算)は、構造改革以前は1,000億円程度でしたが、構造改革後の3年間は2,000億円程度、さらに当連結会計年度は2,500億円程度の規模へと拡大しました。

当連結会計年度は開発をより効率的に行うため、当社グループ独自のソリューションSoCのビジネスモデルに最適な開発体制への変革を行いました。グローバルな半導体エコシステムの中で各パートナーとの連携を強化し、システムアーキテクチャーやIP、デザインメソドロジーなど先端テクノロジを熟知したエンジニアで構成されるチームの役割を明確にしました。それに加え、決定されたSoCの仕様に基づいた開発を管理するプロジェクトマネジメント部門、実際に開発を行う部門の3つの階層で構成された開発体制とし、各々の階層でグローバル競争力を強化する取り組みを開始しました。この取り組みにより、商談の初期段階から顧客との連携をより密にして、顧客ニーズにあったSoC開発を実現しております。

当社グループにおける研究開発費は、注力分野における商談獲得に繋げるための先行開発と獲得した商談の製品開発から構成されています。当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度比14.2%増の49,324百万円となりました。これは主に獲得した商談の開発が増加していることによるものです。先行開発では、日々進化する半導体のエコシステムにおいて最新の技術を活用するために、パートナー各社とも密に連携し、3nm以細のプロセステクノロジ、チップレットなどの先進的なパッケージング技術、最新設計ツールの実用化及びプラットフォーム化の推進等に対して積極的に投資を行いました。一方、製品開発においては、ADAS向け5nm世代品のテープアウトを当連結会計年度第1四半期に完了いたしました。また、当連結会計年度よりデータセンター/ネットワーク向けに7nm製品の本格量産を開始し、2024年3月期には自動車向け7nm製品の量産がスタートします。

当社グループにおける売上は、設計開発に要する費用を段階的に受領するNRE売上と、量産段階で受領する製品売上から構成されています。当連結会計年度のNRE売上は、昨今のテクノロジの進展もあり、前連結会計年度比24.0%増の34,867百万円となりました。また、当連結会計年度の製品売上は大幅に増加し、前連結会計年度比85.3%増の156,751百万円となりました。これは、2020年3月期以降に獲得した商談で製品開発が完了し、徐々に量産段階に移行していることで先端プロセスを中心に製品の売上数量が増加したことや、中国の一部顧客において短期的に当初想定以上の特需が発生したこと等によるものです。さらに、製造委託先での生産能力ひっ迫の状況が緩和されたことも、製品売上の増加に寄与しました。当連結会計年度における為替が円安に推移したことも売上及び営業利益の増加に影響しています。なお、海外売上比率が55.6%と半数を超える水準に増加したことから、グローバルにサプライチェーンマネジメントを担うために台湾に支店を新設しました。これにより、顧客へのタイムリーな製品の供給とリードタイムの短縮等によるコスト削減を実現しました。

 

これらの結果、当連結会計年度の経営成績は、製品売上の拡大及び円安影響により、売上高は192,767百万円(前連結会計年度比64.7%増)、売上原価は103,922百万円、販売費及び一般管理費は67,134百万円となり、営業利益は21,711百万円(前連結会計年度比156.5%増)となりました。これに加え、営業外収益の為替差益の発生により経常利益は23,440百万円(前連結会計年度比159.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は19,763百万円(前連結会計年度比164.2%増)となりました。円安に推移したことによる経営成績に与える影響は、前連結会計年度比(当連結会計年度の米国ドルの平均為替レートは135.5円、前連結会計年度に比べ23.1円の円安となりました。)で、売上高256億円、営業利益98億円、経常利益106億円のプラスとなりました。

 

なお、当社グループの事業セグメントは、ソリューションSoCビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は行っておりません。

 

b 財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は156,067百万円となり、前連結会計年度末に比べ65,451百万円増加しました。これは主に、ウエハーの供給がひっ迫していたことから顧客要望に基づく先行手配を行っていることで棚卸資産及び未収入金が増加したことに加え、製品売上の拡大に伴い売掛金及び棚卸資産等が増加したことによるものであります。固定資産は37,878百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,066百万円増加しました。これは主に、獲得した商談の製品開発に係るレチクルやIPマクロ等の取得に加え、開発規模拡大に伴うデータセンターの増強によるものであります。

 この結果、総資産は193,945百万円となり、前連結会計年度末に比べ75,517百万円増加しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は82,338百万円となり、前連結会計年度末に比べ54,897百万円増加しました。これは主に、顧客要望に基づく先行手配や、製品売上拡大に伴う製造委託先からの購入金額増加による買掛金、有償支給に係る負債及び未払金の増加によるものであります。

 この結果、負債合計は84,081百万円となり、前連結会計年度末に比べ55,262百万円増加しました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は109,864百万円となり、前連結会計年度末から20,255百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加19,763百万円によるものであります。

 この結果、自己資本比率は56.6%となりました。顧客要望に基づく棚卸資産の先行手配等により一時的に比率が低下しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末より1,135百万円減少し、45,136百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは18,019百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益23,440百万円に対して、製品売上の拡大による売上債権が15,162百万円増加したことによるものであります。棚卸資産の増加につきましては、このうち主な要因である顧客要望に基づく先行手配分については顧客にキャッシュの負担を頂いており、当該取引による影響が「その他の資産の増減額」及び「その他の負債の増減額」に含まれています。この取引によるトータルでのキャッシュへの影響はありません。

 

 投資活動によるキャッシュ・フローは19,725百万円の支出となりました。これは主に、獲得した商談の製品開発に係るレチクル、テストボード及び開発環境増設のための有形固定資産の取得による支出12,629百万円と、IPマクロ等の無形固定資産の取得による支出7,144百万円によるものであります。

 

 財務活動によるキャッシュ・フローは333百万円の支出となりました。これは、リース債務の返済によるものであります。

 

 当社は、従来株式会社みずほ銀行との間で10,000百万円の借入枠に係るコミットメントライン契約を締結しておりましたが、製品売上水準拡大に伴う運転資金の増加や、世界景気の減速や地政学リスクの高まりなどに対応して、2022年12月に株式会社三井住友銀行との間で新たに10,000百万円の借入枠に係るコミットメントライン契約を締結し、その結果合計で20,000百万円の借入枠を確保しております。なお、当連結会計年度においてコミットメントライン契約に基づく借入は行っておりません。

 

③ 生産・受注及び販売の実績

 当連結会計年度における生産実績、受注実績及び販売実績は次のとおりであります。

 なお、当社グループの事業セグメントは、ソリューションSoCビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

a 生産実績

 当社グループは、ファブレスモデルのビジネス形態となっており、製品の製造については、製造委託先(ファウンドリ、OSAT)へ委託しております。当社グループ製品は、顧客の特定製品向け専用で設計し搭載されるものが主であり、受注生産を行っていることから、生産実績は販売実績と概ね同等の金額となるため、生産実績の記載は省略しております。

 

b 受注実績

 当社グループは、商談獲得後、設計開発業務に係る受注を受けて設計開発を開始し、開発終了後にサンプルを製作の上、顧客に提供し評価を受けます。設計開発開始後、顧客の評価完了までの間、受注した設計開発業務に係る売上が段階的に計上されます。顧客により製品の性能等に問題がないことが確認されると、製品の量産段階に移行し、顧客の買取責任が発生する形で製品の量産に係る受注を受け、当社グループは製造委託先へ製造を委託します。当社グループの当連結会計年度における設計開発及び製品の量産に係る受注高及び受注残高は以下のとおりです。製品の量産に係る受注については、通常受注後1年以内に製品を出荷し、随時売上として計上されますが、昨今の半導体不足等を背景とした顧客の在庫確保及び積上げのため、例年よりは前倒しで受注を受ける傾向にあり、受注した製品の出荷に1年以上を要することがあります。なお、下記の受注高及び受注残高は、当社グループの経営指標である商談獲得金額及び商談獲得残高とは算定方法及び基準時点が異なります。

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年度比

受注高 (百万円)

274,605

180,018

65.6%

受注残高(百万円)

243,196

256,897

105.6%

 

c 販売実績

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年度比

売上高 (百万円)

117,009

192,767

164.7%

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 ・加賀FEI株式会社への前連結会計年度及び当連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、42,403百万円、36.2%及び、57,178百万円、29.7%であります。

 ・KAGA FEI AMERICA,Inc.への前連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、12,062百万円、10.3%であります。

 ・CRS TECHNOLORY Co., LTDへの当連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、35,779百万円、18.6%であります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

 当連結会計年度の売上高は192,767百万円(前連結会計年度比64.7%増)となりました。うち「製品売上」は156,751百万円(同85.3%増)となりました。ビジネスモデルや事業領域の転換以降獲得したデータセンター/ネットワーク分野の商談等で一部量産段階に進んだほか、スマートデバイスやオートモーティブ等の分野で増加しました。また、中国の一部顧客において短期的に当初想定以上の特需が発生したことや、当連結会計年度における為替が円安に推移したことも製品売上の増加に影響しています。「NRE売上」は34,867百万円(同24.0%増)となりました。海外顧客を中心に商談獲得が大きく増加し、それらのプロジェクトの開発が繁忙となり、対価としてのNRE売上が増加しました。今後、開発が完了し顧客での評価後量産段階に移行した場合には製品売上高の増加に貢献することが見込まれます。「その他」は、知的財産等の譲渡及びライセンスによる収入が減少しました。

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年度比

製品売上 (百万円)

84,584

156,751

185.3%

NRE売上(百万円)

28,117

34,867

124.0%

その他  (百万円)

4,308

1,149

26.7%

売上高合計(百万円)

117,009

192,767

164.7%

 

b.売上原価・販売費及び一般管理費並びに営業利益

①売上原価

 当連結会計年度の売上原価は103,922百万円、売上総利益は88,845百万円(前連結会計年度比32.1%増)となりました。主に、製品売上及びNRE売上の増加による売上総利益の増加になります。売上原価率は、製造委託先の能力確保のための一時的なコスト負担や品種構成の変動により上昇しました。

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年度比

売上原価率

42.5%

53.9%

11.4ポイント

売上総利益(百万円)

67,258

88,845

132.1%

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 売上原価率:売上原価/売上高×100

 

②販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は67,134百万円で前連結会計年度比8,339百万円増加しました。商談獲得が大きく進んだことから研究開発費が49,324百万円と前連結会計年度比6,147百万円増加したことによるものです。研究開発費を除いた販売費及び一般管理費は17,810百万円で前連結会計年度比2,192百万円増加しました。

 

③営業利益

 当連結会計年度の営業利益は21,711百万円、前連結会計年度比13,248百万円増加となりました。主に、売上高の増加及び円安影響によるものです。当連結会計年度の米国ドルの平均為替レートは135.5円、前連結会計年度に比べて23.1円の円安となりました。

 

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年度比

営業利益(百万円)

8,463

21,711

256.5%

営業利益率

7.2%

11.3%

4.1ポイント

EBITDA(百万円) ※

17,282

33,786

195.5%

 ※ EBITDAは、「営業利益」及び「減価償却費」を合計して算出しております。

 

c.税金等調整前当期純利益

 円安の継続により営業外収益として為替差益1,601百万円が発生し、営業外収益及び営業外費用の差引額は1,729百万円の収益となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は23,440百万円、前連結会計年度比14,390百万円の増加となりました。

 

d.親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税の額が7,382百万円、法人税等調整額が△3,705百万円となった結果、親会社株主に帰属する当期純利益は19,763百万円、前連結会計年度比12,283百万円の増加となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループは、経営環境が急激に変化したとしても、顧客にとっての基幹部品である当社製品を長期にわたり供給していく責任があることから、内部留保を厚くし資金の流動性を高く維持する方針としております。

 

 当連結会計年度末における総資産は193,945百万円(前連結会計年度末比75,517百万円増)となりました。当社グループはファブレスによる事業運営のため、資産構成上流動資産の割合が高く、総資産の80.5%を流動資産が占めております。流動資産のうち、前連結会計年度末と比較すると、棚卸資産が31,306百万円増加しました。これは主に、ウエハー供給がひっ迫していたことから顧客要望に基づく先行手配を行っていることによるもので2024年3月期以降の売上に貢献いたします。

 ・財政状態及び財務指標

 

前連結会計年度末

(2022年3月31日)

当連結会計年度末

(2023年3月31日)

前年度比

流動資産(百万円)

90,616

156,067

65,451

流動資産比率(%)

76.5

80.5

4.0ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 流動資産比率:流動資産/総資産×100

 

 当連結会計年度末の負債合計は84,081百万円(前連結会計年度末比55,262百万円増)となりました。これは主に、顧客要望に基づく先行手配や、製品売上拡大に伴う製造委託先からの購入金額増加による買掛金、有償支給に係る負債及び未払金の増加によるものです。

 

 ・財政状態及び財務指標

 

前連結会計年度末

(2022年3月31日)

当連結会計年度末

(2023年3月31日)

前年度比

流動負債(百万円)

27,441

82,338

54,897

流動比率(%)

330.2

189.5

△140.7ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 流動比率:流動資産/流動負債×100

 

 純資産は109,864百万円(前連結会計年度末比20,255百万円増)となりました。利益剰余金が19,763百万円の増加、為替換算調整勘定が492百万円の増加となっております。

 

 以上の結果、自己資本は109,852百万円となり、自己資本比率は56.64%に、ROEは19.82%となりました。引き続き、経営環境の変化に柔軟に対応できるよう、収益力と財務体質の改善に取り組んでまいります。

 

 ・財政状態及び財務指標

 

前連結会計年度末

(2022年3月31日)

当連結会計年度末

(2023年3月31日)

前年度比

自己資本比率(%)

75.66

56.64

△19.02ポイント

ROE(%)

8.74

19.82

11.08ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

自己資本比率:自己資本/総資産

ROE(自己資本利益率):親会社株主に帰属する当期純利益/((前連結会計年度末自己資本+当連結会計年度末自己資本)/2)

 

 従来株式会社みずほ銀行との間で10,000百万円の借入枠に係るコミットメントライン契約を締結しておりましたが、製品売上水準拡大に伴う運転資金の増加や、世界景気の減速や地政学リスクの高まりなどに対応して、2022年12月に株式会社三井住友銀行との間で新たに10,000百万円の借入枠に係るコミットメントライン契約を締結し、その結果合計で20,000百万円の借入枠を確保しております。なお、当連結会計年度においてコミットメントライン契約に基づく借入は行っておりません。

 

b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当社グループは、売掛債権の回収期間及び棚卸資産の滞留日数の短縮に取り組んでおり、運転資金及び成長に必要な資金を、営業キャッシュ・フローから確実に確保できるよう努めております。

 

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは18,019百万円のプラス、投資活動によるキャッシュ・フローは19,725百万円のマイナスとなり、フリー・キャッシュ・フローは1,706百万円のマイナスとなりました。製品売上の増加による売掛金の増加や、商談獲得が進んだことによる製品の開発、製造に必要なレチクル等の固定資産の取得等によるものです。

 

 ・当社グループのキャッシュ・フロー関連指標

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年度比

Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

16,355

18,019

1,664

Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△7,938

△19,725

△11,787

Ⅰ+Ⅱ フリー・キャッシュ・フロー(百万円)

8,417

△1,706

△10,123

 

 以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は45,136百万円と、前連結会計年度比で1,135百万円減少しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社グループの見積りが当連結会計年度に及ぼすと考えられる特に重要な会計方針は以下のとおりであります。

 

a.繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産に関して、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。

 

b.棚卸資産の評価

 棚卸資産に関して、正味売却価額が取得原価より下落した場合に簿価の切下げを行います。また、一定期間を超えて滞留する棚卸資産について、将来の需要や市場動向を反映した正味実現可能額まで簿価の切下げを行います。

 

c.固定資産の減損

 固定資産に関して、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上いたします。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化による将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。