売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E37978 

売上高

2,212.5億 円

前期

1,927.7億 円

前期比

114.8%

時価総額

6,955.2億 円

株価

3,886 (07/12)

発行済株式数

178,979,780

EPS(実績)

146.02 円

PER(実績)

26.61 倍

平均給与

921.0万 円

前期

858.8万 円

前期比

107.2%

平均年齢(勤続年数)

49.8歳(8.1年)

従業員数

2,168人(連結:2,534人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは、ロジック半導体市場の中で、「ソリューションSoC」という新しくかつ独自のビジネスモデルのもとで顧客にカスタムSoCを開発・提供しているファブレスの半導体ベンダーです。SoCは、System on chipの略語で、装置やシステムの動作に必要な機能を1つのチップ(半導体)に実装したものです。当社グループは、このSoCのうち、特定の顧客固有に設計されるカスタムSoCを中心に事業を行っています。新しいサービス・製品の差別化のために独自の先端SoCを必要とする顧客のパートナーとして、また、IP(※1)、EDA(※2)ツール、ソフトウエアからプロセス、アセンブリ、テストに至るまでの最新の技術を提供するサプライヤーと協働して、顧客、さらにはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、豊かな社会を実現することを目指しています。

 当社グループは、従来、顧客から受領したSoCの仕様に基づき物理設計のみを担う従来型のASIC(※3)や、分野・アプリケーションを限定して機能・目的を特化させた汎用的なASSP(※4)を中心に事業を展開しておりましたが、2019年3月期以降、従来型のASIC及びASSPに加え、自社製品における差別化を求める顧客に対して、顧客とともに仕様の策定や論理設計を行い、先端テクノロジーを組み合わせて顧客にとって最適なSoCを提供するビジネスモデルへのシフトを進め、この「ソリューションSoC」ビジネスモデルによるカスタムSoCを中心に事業を展開しております。

 カスタムSoCには主として3つのビジネスモデルが存在します。まず従来型ASICでは、アーキテクチャ設計、企画・仕様設計及び論理設計等SoC設計における上流設計を顧客自身が行い、それ以降の工程を外部のカスタムSoCベンダーが担当します。そのため、従来型ASICは上流設計を自ら行う能力を有する顧客に利用が限定されます。他方、当社グループのソリューションSoCビジネスモデルでは、当社グループが顧客とともにこれらの上流設計を行うため、上流設計を行う能力を保有していない顧客にも製品を提供することができます。また、ASSPをベースにカスタマイズされたASICを提供するモデルでは、ベンダー自身のASSPをベースとしてカスタマイズするため、カスタマイズの幅が限定されるとともに、顧客からはベンダーロックイン(※5)への警戒感が生じることとなります。これに対し、ソリューションSoCビジネスモデルでは、外部ベンダーが提供する最先端の技術も活用し、顧客に最適なSoCを提供しつつ、ベンダーロックインを回避することができます。

 

※画像省略しています。

 

 近年、半導体製造技術の進展やこれを使ったネットワーク、クラウド、AI等様々な革新的技術の普及と融合により、自動運転、AR/VR等今までにない新たなサービスや製品が次々と出現しています。それらのサービス/製品を開発する企業は、自社のサービス/製品の差別化のために先端テクノロジーを活用した高性能かつ拡張性の高い独自のSoCを必要としています。

 一方で、半導体産業においては、プロセス技術(※6)、パッケージング技術(※7)、テスト技術のほか、IP、EDAツール、ソフトウエアまでも含めてそれぞれを専業にする企業が出現し、常に最先端のイノベーティブな技術が生み出され、誰もがその最先端の技術を市場から入手することが可能なエコシステムへと進化を遂げています。その一方で、それらの様々な技術を選択し、組み合わせて顧客にとって最適なSoCを設計開発する難易度は上昇しています。

そのため、独自のSoCを必要とする多くの企業は、SoCのアーキテクチャに対する知識はもとより、SoCが搭載される最終製品やサービスに関する理解が深く、差別化のために、先端のハードウエアからソフトウエアに至るまでの技術を組み合わせて最適なソリューションを提案できるパートナーを求めています。

こうした市場の変化の中、当社グループは、ソフトウエアまでも含めた設計開発能力を有し、顧客と共同して技術的課題を解決できるエンジニアリソース群を抱えていることに加えて、量産・品質保証・SCMまでトータルにサポートできる総合力を有しているといった強みを持っております。これにより、従来型のASIC、ASSP及びASSPをベースにカスタマイズされたASICでは満足できない顧客に対して、顧客とともにSoCの仕様を決めていく共同開発プロセスを通じて、顧客にとってより最適なカスタムSoCを提供することができるビジネスモデルとして「ソリューションSoC」を確立しました。また、こうした新たな最先端の市場で経験を積み重ね、ノウハウを蓄積すると同時に、競争力をさらに強化するため、差別化のための先端技術や種々の技術の組み合わせとその実証にも積極的に投資するとともに、事業部ごとの壁を取り除き、開発機能ごとに集約し、その中から各プロジェクトに必要なリソースを割り当てていくフラットな研究開発体制へと移行しました。また2023年4月には、大規模先端技術分野のモデルプロジェクトを通じた開発基盤構築に取り組む組織として、グローバルリーディンググループを設けました。ソリューションSoCのビジネスモデルに相応しいコンピュータアーキテクチャベースの開発基盤と標準的な開発プロセスの構築、開発の効率化・可視化、開発マネジメント改革を一体として実現する取り組みを進めています。これらの結果、7nm以下の先端プロセスノード(半導体の製造技術(半導体プロセス)の世代を表す指標。1nmは100万分の1mmであり、nm数が小さくなるほど先端のテクノロジーを表す。)を活用する案件がNRE売上(※8)に占める割合は、2018年3月期の1%から2024年3月期には71%へと拡大しました。

 また、ビジネスモデルのシフトに加え、注力する事業領域に関しても、それまでのテレビ等のコンシューマ向け中心の分野から、「オートモーティブ」「データセンター/ネットワーク」「スマートデバイス」といった先端分野へと大幅な転換を果たしました。

当社グループは、AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)や車載センシング等の「オートモーティブ」、データセンターや携帯基地局等の「データセンター/ネットワーク」、アクションカメラやネットワークカメラ等の「スマートデバイス」等の先端分野を注力分野としています。また、FA(Factory Automation)機器や計測機等の「産業機器」の分野でも先端テクノロジーの活用、ソリューションSoCへの需要が拡大する傾向にあり、今後は「産業機器」についても当社グループの注力分野として位置付けることとします。これらの注力分野に加え、特異な技術で今後の成長が期待できる電波式測距センサー等の「IoT&レーダーセンシング」分野でも事業を展開しています。

 半導体製品が顧客に採用され量産に至るまでには一般的に長い期間が掛かります。商談獲得後の設計開発及び顧客の評価完了から量産開始まで通常2年以上を必要とし、さらに量産を終了するまでには相当の期間が掛かります。このため、顧客の基幹部品を長期間にわたって開発、供給する責任を有する企業として、強固な財務基盤(2024年3月期末における自己資本比率70.1%、現預金697億円)のもと事業を行っております。

 当社グループは、設計開発段階において、顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領し、量産段階において、当社グループの売上全体の大半を占める製品売上を受領しております。また、当社グループは、水平分業が進む半導体業界のメリットを最大限活かすべく、工場を持たないファブレスの事業形態を採っております。製品の製造についてはTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(以下「TSMC」という。)を始めとするファウンドリやOSAT(※9)等の専業メーカに委託しております。

 顧客の最先端の製品やサービスには、常に新たなSoCが求められ、そのような先端SoCを求める顧客や市場も変化し続けます。当社グループもこの変化をいち早く捉えるべく、先行開発投資や開発力の強化を進め、今後も常に持続的な成長を目指します。

 

※1 IPとは、Intellectual Propertyの略語であり、半導体業界においては、半導体を構成するための部分的な機能単位でまとめられている回路情報のことです。外部から購入する調達IPと自社で開発を行う自社IPとに分けられます。

2 EDAとは、Electronic Design Automationの略語であり、半導体の設計作業を自動化して行うソフトウエアやツールです。

3 ASICとは、Application Specific Integrated Circuitの略語であり、特定の顧客向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称です。

4 ASSPとは、Application Specific Standard Productの略語であり、分野/アプリケーションを限定して、機能/目的を特化させた大規模集積回路のことです。ASSPは、特定の顧客用にカスタマイズされておらず、顧客を限定しないため、複数の顧客に提供する汎用部品です。

5 ベンダーロックインとは、特定ベンダーが提供する製品やサービスを一旦採用してしまうと、将来他のベンダーが提供するよりよい製品やサービスへの乗り換えが困難となり、顧客側の選択肢が限定されることをいいます。

6 プロセス技術とは、半導体の製造工程のうち前工程と呼ばれるシリコンウエハに回路を形成するまでの工程における技術のことです。

7 パッケージング技術とは、半導体の製造工程のうち後工程と呼ばれる半導体チップを外部から守るパーツで保護し、かつ電気的に接続するための工程における技術のことです。

8 NRE売上とは、Non-Recurring Engineering 売上の略語であり、製品の量産化前の開発段階において顧客から受け取る売上のことを指します。NRE売上は、人件費、IP、設計ツール、レチクル(半導体製造の露光工程で使用され、設計した回路をシリコンウエハに転写するためのフォトマスク)、試作品製造等といった、開発段階で発生する設計開発コストに対応し、通常、開発のマイルストーン進捗に応じて複数回にわたって計上されます。

9 OSATとは、半導体製造の後工程における請負製造サービス(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)の略語です。

 

 

 事業の系統図は以下のとおりです。

※画像省略しています。

 

 

24/06/27

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a 経営成績

当連結会計年度における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化等により国際情勢が一段と不安定化したことで減速傾向が継続しました。また、世界的な物価上昇圧力や、米国、欧州を中心とした政策金利の高止まり、中国での内需停滞等が、経済活動を下押しすることとなりました。このように、世界経済は不確実性が高い状況が継続しており、低い成長率にとどまりました。なお、各国の金融政策の違い等により、為替相場は円安基調が続きました。

半導体市場は、前連結会計年度後半からの最終製品の在庫調整等により需要の低迷が続き、当連結会計年度前半には底を打ったものの、しばらく低調な状況が続きました。当連結会計年度後半からは需要も徐々に改善し、市場全体としてはゆるやかな回復基調となり、年間では一桁のマイナス成長に留まりました。製品別では、メモリ、マイクロプロセッサーを中心に、ほとんどの製品カテゴリーで前連結会計年度比マイナス成長となりましたが、当社グループが手掛けるロジック半導体については、プラスの成長となりました。アプリケーション別では、スマートフォンやパソコンを中心に需要が落ち込みましたが、当社グループが注力する分野のうち、特にデータセンター/ネットワーク分野やオートモーティブ分野で前連結会計年度比プラスの成長となりました。また、これら分野では最先端の技術を用いた半導体への需要はますます高まっています。

当社グループにおいては、2018年4月の現CEO就任以降、ビジネスモデルの転換、グローバルな大型商談が見込まれる成長分野/先端分野へのシフト、さらに大胆な事業体制の変革等の構造改革を進めてまいりました(「第一の変革」)。その結果、注力分野であるオートモーティブ、データセンター/ネットワーク、スマートデバイス分野を中心に多くの大型商談を獲得しています。年間の商談獲得金額(1米ドル=100円で換算)は、構造改革以前は1,000億円程度でしたが、構造改革後は2,000億円程度へ、さらに2023年3月期以降は2,500億円程度の規模へと拡大しました。また、獲得した商談の量産が徐々に始まり、確実に売上拡大につながってきています。さらに、競争力のある開発体制の構築やグローバル企業に相応しい組織風土を目指す「第二の変革」を進めています。グローバルな顧客、半導体エコシステムを構成するプレーヤー、投資家等とのコミュニケーションを通じて、社内の体制、組織の構造、従業員の意識を変える取り組みを強化しています。

2023年4月に、大規模先端技術分野のモデルプロジェクトを通じた開発基盤構築に取り組む組織として、グローバルリーディンググループを設けました。ソリューションSoCのビジネスモデルに相応しいコンピュータアーキテクチャベースの開発基盤と標準的な開発プロセスの構築、開発の効率化・可視化、開発マネジメント改革を一体として実現するため、不断の改善を進めてきました。今後も積極的に先端技術開発を強化していきます。また、子会社であるSocionext America Inc.の支店として、2023年8月にインド・ベンガルールに新拠点を開設し、グローバルな設計・開発力を強化しました。

生産・調達部門について、台湾と日本の関連する組織を一体化し、グローバルな生産・調達体制の構築を進めました。半導体関連サプライヤーが集中する台湾において、委託先の生産をコントロールするチームを現地(台湾)に配置することでダイレクトインターフェースを構築し、サプライヤーとの連携がより強固なものとなりました。これにより、製造委託先の供給状況の変化にも迅速に対応する体制が整いつつあります。

ここ数年の大型先端開発案件の商談獲得に伴い、半導体業界を取り巻くエコシステムを形成するグローバル企業との関係強化を進めてきました。特に、北米や台湾等に本社を置くグローバル企業とのマネジメントレベルでの関係構築・強化により、これらの企業との先端技術分野での共同開発プロジェクト等において進捗がありました。

当社グループにおける研究開発は、注力分野における商談獲得に繋げるための先行開発と、獲得した商談の製品開発から構成されています。当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度比8%増の532億79百万円となりました。これは主に獲得した商談の製品開発が増加していることによるものです。先行開発では、日々進化する半導体エコシステムにおいて最新の技術を活用するために、パートナー各社とも密に連携し、2nm以細のプロセステクノロジー、チップレット等の先進的なパッケージング技術、最新設計ツールの実用化及びプラットフォーム化の推進等に対して積極的に取り組みを行いました。2023年10月には、Arm Holding plc及びTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(TSMC)との2nmプロセスのマルチコアCPUチップレットPoC(Proof of Concept)に関するプロジェクトと、3nm車載プロセスを採用した高度ADAS及び自動運転向けSoCの開発に着手したことを発表しました。今後は、2nm以細の最先端プロセスノードを使用したSoCの開発やチップレット技術の開発、設計開発へのAI導入等にも取り組んでいきます。

 

当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高は前連結会計年度から増加し、221,246百万円(前連結会計年度比14.8%増)となりました。当社グループの売上は、設計開発に要する費用を段階的に受領するNRE売上と、量産段階で受領する製品売上から構成されています。当連結会計年度のNRE売上は、オートモーティブ分野での商談獲得が活況なことから、7nmより微細な先端テクノロジーに関するNRE売上の比率が高まり、前連結会計年度比7.9%増の37,609百万円となりました。また、当連結会計年度の製品売上は、オートモーティブ向け7nm製品の量産が開始される等、2019年以降に獲得した注力分野の商談が量産フェーズに移行したことにより増加し、前連結会計年度比16.7%増の182,876百万円となりました。

また、売上原価は111,243百万円(前連結会計年度比7.0%増)、販売費及び一般管理費は74,493百万円(前連結会計年度比11.0%増)となり、営業利益は35,510百万円(前連結会計年度比63.6%増)となりました。これに加え、営業外収益の為替差益の発生により経常利益は37,122百万円(前連結会計年度比58.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は26,134百万円(前連結会計年度比32.2%増)となりました。営業利益増加の主な要因は、製品売上増加による粗利益の増加と製造原価率の改善です。

円安に推移したことによる経営成績に与える影響は、前連結会計年度比で、売上高117億円、営業利益25億円の増加です。

当連結会計年度の1米ドルの平均為替レートは144.6円、前連結会計年度比9.1円の円安となりました。

 

なお、当社グループの事業セグメントは、ソリューションSoCビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は行っておりません。

 

b 財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は138,901百万円となり、前連結会計年度末に比べ17,166百万円減少しました。これは主に、製品売上の拡大や顧客要望に基づく先行手配の減少で棚卸資産及び未収入金が減少したことによるものであります。一方で、現金及び預金は、売掛金の回収が進んだことや、ストック・オプションの権利行使による払込等により増加しました。

 固定資産は47,939百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,061百万円増加しました。これは主に、獲得した商談の製品開発に係るレチクルやIP等の取得に加え、開発規模拡大に伴うデータセンターの増強によるものであります。

 この結果、総資産は186,840百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,105百万円減少しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は53,094百万円となり、前連結会計年度末に比べ29,244百万円減少しました。これは主に、顧客要望に基づく先行手配の減少で買掛金や未払金が減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は55,820百万円となり、前連結会計年度末に比べ28,261百万円減少しました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は131,020百万円となり、前連結会計年度末から21,156百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益26,134百万円の計上により利益剰余金が増加したことや、ストック・オプションの権利行使による払込4,766百万円によるものであります。

 この結果、自己資本比率は70.1%となり、前連結会計年度末から13.5ポイント増加しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末より24,602百万円増加し、69,738百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは52,882百万円の収入(前連結会計年度は18,019百万円の収入)となりました。これは主に、法人税等の支払額10,739百万円がある一方で、税金等調整前当期純利益37,122百万円や、減価償却費13,396百万円に加え、売掛金回収が進んだことで売上債権が8,379百万円減少したことによるものであります。

 

 投資活動によるキャッシュ・フローは23,155百万円の支出(前連結会計年度は19,725百万円の支出)となりました。これは主に、獲得した商談の製品開発に係るレチクル、テストボード及び開発環境増設のための有形固定資産の取得による支出11,879百万円と、IP等の無形固定資産の取得による支出11,187百万円によるものであります。

 財務活動によるキャッシュ・フローは6,624百万円の支出(前連結会計年度は333百万円の支出)となりました。これは主に、ストック・オプションの行使による収入4,766百万円がある一方で、配当金の支払額11,160百万円によるものであります。

 

 当社は、製品売上水準拡大に伴う運転資金の増加や、世界景気の減速や地政学リスクの高まり等に対応して、借入枠20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度においてコミットメントライン契約に基づく借入は行っておりません。

 

③ 生産・受注及び販売の実績

 当連結会計年度における生産実績、受注実績及び販売実績は次のとおりであります。

 なお、当社グループの事業セグメントは、ソリューションSoCビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

a 生産実績

 当社グループは、ファブレスモデルのビジネス形態となっており、製品の製造については、製造委託先(ファウンドリ、OSAT)へ委託しております。当社グループ製品は、顧客の特定製品向け専用で設計し搭載されるものが主であり、受注生産を行っていることから、生産実績は販売実績と概ね同等の金額となるため、生産実績の記載は省略しております。

 

b 受注実績

 当社グループは、商談獲得後、設計開発業務に係る受注を受けて設計開発を開始し、開発終了後にサンプルを製作の上、顧客に提供し評価を受けます。設計開発開始後、顧客の評価完了までの間、受注した設計開発業務に係る売上が段階的に計上されます。顧客により製品の性能等に問題がないことが確認されると、製品の量産段階に移行し、顧客の買取責任が発生する形で製品の量産に係る受注を受け、当社グループは製造委託先へ製造を委託します。当社グループの当連結会計年度における設計開発及び製品の量産に係る受注高及び受注残高は以下のとおりです。製品の量産に係る受注については、通常受注後1年以内に製品を出荷し、随時売上として計上されますが、昨今の半導体不足等を背景とした顧客の在庫確保及び積上げのため、例年よりは前倒しで受注を受ける傾向にあり、受注した製品の出荷に1年以上を要することがあります。なお、下記の受注高及び受注残高は、当社グループの経営指標である商談獲得金額及び商談獲得残高とは算定方法及び基準時点が異なります。

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年度比

受注高 (百万円)

180,018

114,307

△36.5%

受注残高(百万円)

256,897

175,124

△31.8%

 

c 販売実績

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年度比

売上高 (百万円)

192,767

221,246

14.8%

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 ・CRS TECHNOLORY Co., LTDへの前連結会計年度及び当連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、35,779百万円、18.6%及び、60,171百万円、27.2%であります。

 ・加賀FEI株式会社への前連結会計年度及び当連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、57,178百万円、29.7%及び、56,408百万円、25.5%であります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

 当連結会計年度の売上高は221,246百万円(前連結会計年度比14.8%増)となりました。うち「製品売上」は182,876百万円(前連結会計年度比16.7%増)となりました。オートモーティブ向け7nm製品の量産が開始される等、ビジネスモデルや事業領域の転換以降獲得した注力分野の商談が量産フェーズに移行したことにより増加しました。また、中国の一部顧客において短期的に当初想定以上の特需が発生したことや、当連結会計年度における為替が円安に推移したことも製品売上の増加に影響しています。「NRE売上」は37,609百万円(前連結会計年度比7.9%増)となりました。オートモーティブ分野での商談獲得が活況なことから、先端テクノロジーのプロジェクトの開発が繁忙となり、対価としてのNRE売上が増加しました。今後、開発が完了し顧客での評価後量産段階に移行した場合には製品売上高の増加に貢献することが見込まれます。「その他」は、知的財産等の譲渡及びライセンスによる収入が減少しました。

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年度比

製品売上 (百万円)

156,751

182,876

16.7%

NRE売上(百万円)

34,867

37,609

7.9%

その他  (百万円)

1,149

761

△33.8%

売上高合計(百万円)

192,767

221,246

14.8%

 

b.売上原価・販売費及び一般管理費並びに営業利益

①売上原価

 当連結会計年度の売上原価は111,243百万円、売上総利益は110,003百万円(前連結会計年度比23.8%増)となりました。主に、製品売上及びNRE売上の増加による売上総利益の増加によるものです。売上原価率は、製造委託先の能力確保のための一時的なコスト負担が減少したことや、品種構成の変動により減少しました。

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年度比

売上原価率

53.9%

50.3%

△3.6ポイント

売上総利益(百万円)

88,845

110,003

23.8%

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 売上原価率:売上原価/売上高×100

 

②販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は74,493百万円(前連結会計年度比7,359百万円増)となりました。商談獲得が大きく進んだことから研究開発費は53,279百万円(前連結会計年度比3,955百万円増)、研究開発費を除いた販売費及び一般管理費は21,214百万円(前連結会計年度比3,404百万円増)であります。

 

③営業利益

 当連結会計年度の営業利益は35,510百万円(前連結会計年度比13,799百万円増)となりました。主に、売上高の増加及び円安影響によるものです。当連結会計年度の1米ドルの平均為替レートは144.6円、前連結会計年度に比べて9.1円の円安となりました。

 

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年度比

営業利益(百万円)

21,711

35,510

63.6%

営業利益率

11.3%

16.1%

4.8ポイント

EBITDA(百万円) ※

33,786

48,906

44.8%

 ※ EBITDAは、「営業利益」及び「減価償却費」を合計して算出しております。

 

c.税金等調整前当期純利益

 円安の継続により営業外収益として為替差益1,224百万円が発生し、営業外収益及び営業外費用の差引額は1,612百万円の収益となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は37,122百万円(前連結会計年度比13,682百万円増)となりました。

 

d.親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税の額が10,694百万円、法人税等調整額が294百万円となった結果、親会社株主に帰属する当期純利益は26,134百万円(前連結会計年度比6,371百万円増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループは、経営環境が急激に変化したとしても、顧客にとっての基幹部品である当社グループ製品を長期にわたり供給していく責任があることから、内部留保を厚くし資金の流動性を高く維持する方針としております。

 

 当連結会計年度末における総資産は186,840百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,105百万円減少しました。当社グループはファブレスによる事業運営のため、資産構成上流動資産の割合が高く、総資産の74.3%を流動資産が占めております。流動資産のうち、棚卸資産が前連結会計年度末に比べ22,211百万円の減少となりました。これは主に、製品売上の拡大や顧客要望に基づく先行手配の減少によるものです。

 ・財政状態及び財務指標

 

前連結会計年度末

(2023年3月31日)

当連結会計年度末

(2024年3月31日)

前年度比

流動資産(百万円)

156,067

138,901

△17,166

流動資産比率(%)

80.5

74.3

△6.2ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 流動資産比率:流動資産/総資産×100

 

 当連結会計年度末の負債合計は55,820百万円となり、前連結会計年度末に比べ28,261百万円減少となりました。これは主に、製造委託先からの購入金額の減少や顧客要望に基づく先行手配の減少による、買掛金、有償支給に係る負債及び未払金の減少によるものです。

 

 ・財政状態及び財務指標

 

前連結会計年度末

(2023年3月31日)

当連結会計年度末

(2024年3月31日)

前年度比

流動負債(百万円)

82,338

53,094

△29,244

流動比率(%)

189.5

261.6

72.1ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 流動比率:流動資産/流動負債×100

 

 当連結会計年度末の純資産は131,020百万円となり、前連結会計年度末に比べ21,156百万円増加となりました。これは主に、利益剰余金が14,974百万円の増加、為替換算調整勘定が1,200百万円の増加によるものです。

 

 以上の結果、当連結会計年度の自己資本は131,020百万円となり、自己資本比率は70.12%に、ROEは21.70%となりました。引き続き、経営環境の変化に柔軟に対応できるよう、収益力と財務体質の改善に取り組んでまいります。

 

 ・財政状態及び財務指標

 

前連結会計年度末

(2023年3月31日)

当連結会計年度末

(2024年3月31日)

前年度比

自己資本比率(%)

56.64

70.12

13.48ポイント

ROE(%)

19.82

21.70

1.88ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

自己資本比率:自己資本/総資産

ROE(自己資本利益率):親会社株主に帰属する当期純利益/((前連結会計年度末自己資本+当連結会計年度末自己資本)/2)

 

 当社は、製品売上水準拡大に伴う運転資金の増加や、世界景気の減速や地政学リスクの高まり等に対応して、借入枠20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度においてコミットメントライン契約に基づく借入は行っておりません。

 

b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当社グループは、売掛債権の回収期間及び棚卸資産の滞留日数の短縮に取り組んでおり、運転資金及び成長に必要な資金を、営業キャッシュ・フローから確実に確保できるよう努めております。

 

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは52,882百万円のプラス(前連結会計年度は18,019百万円のプラス)、投資活動によるキャッシュ・フローは23,155百万円のマイナス(前連結会計年度は19,725百万円のマイナス)となり、フリー・キャッシュ・フローは29,727百万円のプラス(前連結会計年度は1,706百万円のマイナス)となりました。製品売上の増加による棚卸資産の減少や、商談獲得が進んだことによる製品の開発、製造に必要なレチクル等の固定資産の取得等によるものです。

 

 ・当社グループのキャッシュ・フロー関連指標

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年度比

Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

18,019

52,882

34,863

Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△19,725

△23,155

△3,430

Ⅰ+Ⅱ フリー・キャッシュ・フロー(百万円)

△1,706

29,727

31,433

 

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは6,624百万円のマイナス(前連結会計年度は333百万円のマイナス)となり、これは主に、ストック・オプションの行使による収入4,766百万円がある一方で、配当金の支払額11,160百万円によるものです。

 

 以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は69,738百万円となり、前連結会計年度末に比べ24,602百万円増加しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社グループの見積りが当連結会計年度に及ぼすと考えられる特に重要な会計方針は以下のとおりであります。

 

a.繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産に関して、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。

 

b.棚卸資産の評価

 棚卸資産に関して、正味売却価額が取得原価より下落した場合に簿価の切下げを行います。また、一定期間を超えて滞留する棚卸資産について、将来の需要や市場動向を反映した正味実現可能額まで簿価の切下げを行います。

 

c.固定資産の減損

 固定資産に関して、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上いたします。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化による将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。