E01875 Japan GAAP
前期
25.0億 円
前期比
101.1%
株価
93 (04/19)
発行済株式数
35,429,300
EPS(実績)
-7.00 円
PER(実績)
--- 倍
前期
781.8万 円
前期比
99.5%
平均年齢(勤続年数)
44.3歳(10.8年)
従業員数
45人(連結:77人)
(1) 事業の内容
当社グループは、当社(株式会社メディアリンクス)と、子会社2社(米国法人であるMEDIA LINKS, INC.およびオーストラリア法人であるML AU PTY LTD)により構成され、主に放送用ネットワークのインフラを形成するための機器・システムを開発・販売するファブレスメーカー(製造設備を自社で保有せず、外部へ製造委託する業務形態をとるメーカー)です。テレビ放送で使用される高品位映像素材を放送事業者の拠点間あるいは拠点内部の部署間をIPで結ぶネットワークを実現するための機器およびシステムなどを開発・販売しています。また、機器単独の販売だけではなく、ソフトウエア、設置工事、保守サービスなどを組み合わせたシステム構築事業も展開しています。当社は主として機器やシステムを通信事業者またはテレビ放送局に対して販売しています。通信事業者に販売した場合、通信事業者は当社の機器やシステムと自社の回線設備などを用いてテレビ放送局に対して映像伝送サービスを提供しています。製品開発においては、実際に使用する通信事業者や放送局のみならず、さらにその先の顧客が受けるサービスを想定して製品の仕様を決定しています。
なお、当社グループは映像通信機器のメーカーとして事業を行っており、当該事業以外に事業の種類がないため、セグメント別に事業を分類していません。
(2) 製品の主な特徴
当社の製品は、放送用映像伝送に特化した機能を有しています。放送では映像が途切れることはあってはならないことであり、放送事業で使われるインフラ機器には絶対の信頼性と安定性が求められます。同時に、ネットワークで伝送される映像素材の品質は劣化させてはならず、伝送遅延も最小限となるよう求められます。一般的な通信機器では放送局が求める高い要求に応えることができませんでしたが、当社の製品は、効率性の高いIP通信の技術をベースにしながら、放送事業で必要とされる厳しい要件をクリアできる性能を実現しました。そのことにより、当社製品はサッカーのワールドカップやオリンピックのような世界中の人々が注目するスポーツイベントの映像伝送装置や欧州や米国などの国を代表するトップ企業の重要な放送用基幹インフラを形成する機器として採用されています。また、放送と通信双方の要素技術を蓄積してきた実績が評価され、近年脚光を浴びているスポーツ中継などを放送局でコントロールするリモートプロダクションや放送局内IP化についても、当社製品が採用されています。
(3) 製品開発について
当社グループの製品開発は、設計開発部門、マーケティング部門との連携で行われています。開発テーマはマーケットニーズや外部環境の変化などから、潜在的なニーズやウォンツ(注1)を探り、今後のマーケット環境を考慮しながらロードマップを描いています。当社は、設立当初より放送局で使用される映像機器の開発を行いながら、一方で通信の要素技術も獲得してきました。これら双方の要素技術を再構築することにより放送と通信の技術を融合させた製品の実現や高機能化など製品の付加価値の向上に寄与しています。また新規開発製品の開発期間の短縮に注力し、スピードある製品開発による新市場へのいち早い製品投入に努めています。ただし、新しいインフラ構築に関わる製品開発には、2~3年かかることが一般的です。新規技術の獲得につきましては、将来を見越した上で必要になりそうな要素技術の獲得に努めています。
(注1) ウォンツ:顧客の顕在化されたニーズに反応するだけではまだ不十分と考える当社は、顧客が本当に欲するものをウォンツと謳っています。
(4) 生産体制について
当社グループは市場や顧客のニーズに対しタイムリーに製品を生産し、コスト削減やスピード化を図るため、工場などの製造設備の資産や人員を自社で持たず、外部に委託するファブレスという事業形態を採っています。
製造委託先は1社だけではなく、3社以上との提携を基本と考えています。この製造委託先の一貫生産と検査体制により、1台から数千台までの幅広い生産に対応できる体制を確立しています。
(5) 品質管理体制について
当社の製品は、一瞬の事故もあってはならない放送事業に使用される装置で、放送局や通信事業者施設において長期にわたりインフラを形成するものであり、高度な品質が要求されます。設計開発における設計品質はISO9001(品質マネジメントシステム)をベースとした管理体制に基づき、設計品質を維持管理しています。製品の品質に関しては、委託する工場に依存するのではなく、自社の基準を定め、どこの工場で生産されたものであっても一定の品質を保持できる管理体制を確立しています。製造委託先では、品質はもとより環境に関しての配慮がされていることを選定基準とし、ISO14001(環境マネジメントシステム)を取得している工場を当社グループの製造委託先に位置づけています。
(6)販売および保守サポート体制について
当社製品の販売は当社及び子会社2社(米国法人であるMEDIA LINKS, INC.およびオーストラリア法人であるML AU PTY LTD)で行っています。販売部門は、機器やシステムの販売を行うだけでなく、市場、顧客のニーズを素早くキャッチし、設計開発部門にフィードバックを行い、新製品開発のレスポンスの高速化に努めています。また、メーカーとして、保守体制やお客様のサポート体制の確立と各種情報の一元化を目指しています。
当社販売部門は、アジア営業部、子会社のMEDIA LINKS, INC.、ML AU PTY LTDが、それぞれ販売地域を担当しています。子会社は、海外各国の諸事情に対応し、代理店などの販売チャンネルを構築し、海外販売における営業拠点・保守サポート拠点となっています。同時に、それぞれの国に適応した製品を開発するために必要なカスタマイズ、製品仕様等の情報を収集する役割もになっています。日本国内だけでは把握しきれない世界における情報が、子会社のマーケティング活動・販売活動により当社グループ内で共有化され、ワールドワイドでの顧客ニーズや市場動向、新製品動向等が把握でき、当社グループの新製品企画開発に大きく貢献しています。
(事業の系統図)
※画像省略しています。
(注1) 国内海外部品メーカーより仕入れた部品は、当社より製造委託先へ支給され、当社製品の製造に使用されます。
(注2) 販売部門及び販売子会社が収集したマーケティング情報と設計開発部門が収集した技術情報により、両者によって行われる会議において、製品化の実現可能性、実現時期等が検討されます。販売部門及び販売子会社は本検討内容による技術的な背景を踏まえ顧客に対し新製品や新ビジネスの提案を行い営業活動に反映させており、設計開発部門は必要技術の習得に生かしています。当社グループの顧客への提案力を強化するとともに設計開発部門の強化につながる販売部門及び販売子会社の情報収集は当社グループにおいて重要な位置付けです。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」、の状況の概要はつぎのとおりであります。
①財政状態及び経営成績等の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済状況は、新型コロナウイルス感染症の新たな段階への移行が進む中、経済活動が徐々に正常化し、景気も緩やかに持ち直しの動きがみられました。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化に加えて、エネルギー価格、原材料価格の高騰や半導体不足の常態化についての収束はみえておらず、また為替相場も不安定な状況が続くなど、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
このような状況の下、当社グループは米国及び日本を中心に事業展開を進めました。アジア市場は、前連結会計年度に比べ減収となりました。これは前連結会計年度に韓国において、大手放送局2社向けのネットワーク更新案件の売上を計上した影響によるものです。北米市場は、前連結会計年度に比べて増収となりました。これは、主要顧客である大手通信事業者向けの販売が堅調に推移したことによるものです。オーストラリア市場は、メンテナンスサポートサービスはほぼ横ばいで推移したものの、ハードウエア製品の販売が減少したことにより、前連結会計年度に比べて減収となりました。EMEA市場は、ロシア・ウクライナ情勢を巡る地政学的リスクの影響に伴う案件の中断等により、前連結会計年度に比べ減収となりました。この結果、当連結会計年度の当社グループの売上高は、2,523百万円(前連結会計年度比1.1%増)、営業損失は169百万円(前連結会計年度は営業損失661百万円)、経常損失は228百万円(前連結会計年度は経常損失726百万円)、親会社株主に 帰属する当期純損失は、248百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失758百万円)となりました。
なお、当社グループは、映像通信機器のメーカーとして事業を行っており、当該事業以外に事業の種類がないため、セグメント別に事業を分類していません。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ154百万円増加し、473百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果減少した資金は795百万円(前連結会計年度は315百万円の減少)となりました。その主な要因は、棚卸資産の増加530百万円、税金等調整前当期純損失243百万円の計上、売上債権の増加117百万円、仕入債務の増加110百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は12百万円(前連結会計年度は34百万円の減少)となりました。その主な要因は、有形固定資産の取得による支出17百万円、定期預金の払戻による収入9百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は932百万円(前連結会計年度は320百万円の減少)となりました。その主な要因は、株式の発行による収入1,137百万円、長期借入金の返済による支出135百万円、短期借入金の減少70百万円によるものです。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
製品種類の名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
ハードウエア製品 |
2,465,417 |
42.61 |
合計 |
2,465,417 |
42.61 |
(注)1 金額は、期中平均販売価格によっております。
2 上記の金額には、他勘定振替分及び他勘定受入分は含まれておりません。
(2)受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
製品種類の名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
ハードウエア製品 |
1,676,696 |
△11.1 |
16,210 |
△79.8 |
メンテナンス・サポート |
403,502 |
△41.5 |
270,278 |
△36.4 |
その他 |
244,560 |
59.5 |
23,218 |
1144.3 |
合計 |
2,324,758 |
△14.8 |
309,706 |
△39.0 |
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
製品種類の名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
ハードウエア製品 |
1,740,902 |
△3.9 |
メンテナンス・サポート |
558,431 |
11.5 |
その他 |
223,208 |
22.0 |
合計 |
2,522,541 |
1.1 |
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
|
前連結会計年度 自 2021年4月1日 至 2022年3月31日 |
当連結会計年度 自 2022年4月1日 至 2023年3月31日 |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
AT&T Corporation |
675,220 |
27.1 |
1,288,839 |
51.1 |
Telstra Corporation Limited |
362,029 |
14.5 |
298,004 |
11.8 |
IISN SYSTEMS CO., LTD. |
304,653 |
12.2 |
22,040 |
0.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)財政状態
(資産)
当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度末に比べ908百万円増加し、3,183百万円となりました。主な変動要因は、特定顧客向けのビジネスで、既に開発期間を終え、プログラムの改良・強化のフェーズに入っている案件による仕掛品の増加310百万円、現金及び預金の増加145百万円、売上債権の増加133百万円、原材料及び貯蔵品の増加124百万円によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債は前連結会計年度末に比べ33百万円減少し、1,434百万円となりました。主な変動要因は、長期借入金の減少85百万円、短期借入金の減少70百万円、買掛金の増加110百万円によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べ941百万円増加し、1,750百万円となりました。主な変動要因は、資本金の増加570百万円、資本剰余金の増加570百万円、親会社株主に帰属する当期純損失248百万円の計上による利益剰余金の減少によるものです。
2)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の当社グループの売上高は、2,523百万円(前連結会計年度比1.1%増)となりました。製品グループ別内訳では、ハードウエア製品が1,741百万円(同3.9%減)、その他が782百万円(同14.3%増)となりました。海外売上高比率は、前期の70.6%から72.2%へと増加しました。
(売上総利益)
当連結会計年度における、売上総利益率は62.7%、売上総利益は1,581百万円(同18.4%増)となりました。
(販売費及び一般管理費)
経費面では、販売費及び一般管理費は、1,751百万円(同12.3%減)となり、研究開発費は455百万円(同40.0%減)となりました。これは特定顧客向けのビジネスで、既に開発期間を終え、プログラムの改良・強化のフェーズに入っている案件を仕掛品として計上したことによるものです。
(営業利益)
当連結会計年度における営業損失は169百万円(前連結会計年度は営業損失661百万円)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における経常損失は228百万円(前連結会計年度は経常損失726百万円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
上記の結果、親会社株主に帰属する当期純損失は、248百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失758百万円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループのキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な資金を確保するとともに、経済環境の急激な変化に耐えうる流動性を維持することを基本方針としております。
主な資金需要は、製品製造のための材料及び外注加工費の支払のほか、製品開発のための研究開発費であります。
資金需要には、内部資金、金融機関からの借入及び第三者割当による新株予約権並びに社債の発行により対応しております。また、グループ内の資金の効率化を目的としグループ間で融資を行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたり、見積りが必要な事項については、合理的な基準に基づき実施しております。
詳細につきましては、「第一部 企業情報、第5 経理の状況、1連結財務諸表等、(1)連結財務諸表、注記事項、(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成の状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループの競争力の一つとして世界トップクラスの技術力があります。その競争力を維持し続けるためには、継続的に研究開発費を投入する必要があります。研究開発費を確保するためには比較的高い売上総利益率が必要になります。当連結会計年度におきましては、売上総利益率は前連結会計年度の53.5%に比べ9.2ポイント増加し、62.7%となりました。