売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E01903 Japan GAAP

売上高

2,066.0億 円

前期

2,051.3億 円

前期比

100.7%

時価総額

3,562.8億 円

株価

4,038 (03/18)

発行済株式数

88,230,980

EPS(実績)

193.92 円

PER(実績)

20.82 倍

平均給与

899.7万 円

前期

891.9万 円

前期比

100.9%

平均年齢(勤続年数)

42.0歳(15.3年)

従業員数

3,623人(連結:5,751人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

 

3 【事業の内容】

 当社グループは、当社、子会社31社の合計32社(2023年3月31日現在)で構成されており、医用電子機器の研究開発・製造・販売および修理・保守等の事業活動を展開しています。当連結会計年度はソフトウェアチーム㈲が増加しています。

 当社グループの事業における位置付けは、次のとおりです。
 国内では、当社および日本光電富岡㈱が医用電子機器の研究開発・製造を行っています。また、㈱日本バイオテスト研究所が免疫化学製品の開発・製造・販売、㈱ベネフィックスが医療情報システム製品の製造・販売を行っています。
 海外では、上海光電医用電子儀器㈲が医用電子機器、デフィブテック LLCが救命救急医療機器の開発・製造・販売を行っています。日本光電オレンジメッド㈱は人工呼吸器の開発・製造・販売、日本光電マレーシア㈱は医用電子機器の製造・販売・販売促進を行っています。日本光電インディア㈱、日本光電ミドルイースト㈱は医用電子機器の販売および試薬の製造・販売、日本光電フィレンツェ㈲は試薬の製造・販売を行っています。2022年11月に買収したソフトウェアチーム㈲は医用電子機器用ソフトウェアの開発・販売を行っています。日本光電デジタルヘルスソリューションズ㈱、アンプスリーディ㈱、ニューロトロニクス㈱および日本光電イノベーションセンタ㈱が医用電子機器・ソフトウェアの研究開発を行っています。
 国内での販売は、当社の12支社支店が担当しています。
 海外での販売・販売促進は、米州を日本光電アメリカ㈱など4社、欧州を日本光電ヨーロッパ㈲など6社、アジア州を日本光電シンガポール㈱など4社が担当しています。
 当社グループの総務関連・派遣業務は㈱イー・スタッフが行っています。
 当社グループは医用電子機器関連事業の単一セグメントでありますが、開発・製造・販売の機能別分社制度を採用しており、各社における事業部門等の区分が困難なため、事業部門等に関連付けての記載はしていません。
 なお、2023年4月に、米国において子会社を再編し、持株会社体制に移行しました。日本光電オレンジメッド㈱を中間持株会社とし、日本光電アメリカ、ニューロトロニクス、日本光電デジタルヘルスソリューションズ、アンプスリーディ、日本光電イノベーションセンタを株式会社からLLCに組織変更するとともに、リサシテーションソリューション㈱を解散しました。また、NKSバンコク㈱は日本光電タイランド㈱に社名変更しました。

 

 

 以上に述べた事業の系統図は次のとおりです。

 2023年3月31日現在

 

※画像省略しています。
23/06/29

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 経営成績の状況

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、各国におけるウィズコロナ政策により世界経済は緩やかな回復が見られたものの、部材および資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱、欧米での金融引き締めにより、景気の先行きは不透明な状況で推移しました。国内では、感染拡大の状況により医療機関への負荷が変動する中、昨年4月の診療報酬改定に基づき、新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築や医療従事者の働き方改革等が推進されました。医療機器業界においても、各企業は感染症への対応および医療の質向上と効率化に寄与するソリューション提案がより一層求められる状況となりました。海外では、米国や英国などで看護師不足が深刻化する中、医療従事者の負荷軽減に資する医療機器の需要は概ね堅調に推移しました。

 このような状況下、当社グループは、3ヵ年中期経営計画「BEACON 2030 Phase I」を推進し、事業と企業活動を通じたサステナビリティを推進するため、「コンプライアンスの徹底とグループガバナンスの一層の強化」「既存事業の収益性の改善と戦略的な先行投資」「グローバル・サプライチェーン・マネジメント(SCM)の構築とコーポレート主要機能の強化」に取り組みました。商品面では、新生児蘇生に特化した生体情報モニタやネットワーク対応型の脳波アンプを日本で発売、無線LANを内蔵した心電計を国内・海外で発売しました。また、中位機種ベッドサイドモニタおよびマスク型人工呼吸器を米国市場に投入するとともに、米国の日本光電オレンジメッド㈱で開発した人工呼吸器の中位機種モデルを海外の一部地域で発売しました。さらに、米国子会社の再編・持株会社体制への移行を決定したほか、生体情報モニタなどの医療機器から取得したアラーム情報をスマートフォンに転送するソフトウェアを開発・販売するイタリアのソフトウェアチーム㈲を買収するなど、海外事業の基盤強化を図りました。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は前期比0.7%増の2,066億3百万円となりました。利益面では、部材価格等の上昇や売上構成の変化による売上原価率の上昇、人員の増強および営業・サービス活動の正常化に伴う販管費の増加により、営業利益は前期比31.9%減の211億2千万円、経常利益は前期比30.2%減の241億2千2百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比27.0%減の171億1千万円となりました。

 

<市場別の状況>
 国内市場においては、急性期病院、中小病院、診療所といった市場別の取り組みを強化するとともに、医療安全、診療実績、業務効率につながる顧客価値提案を推進、消耗品・サービス事業の強化に注力しました。検査・手術件数の回復や設備投資の再開により、生体計測機器や検体検査装置は好調に推移したものの、前期に感染症対応のため整備が進んだ生体情報モニタや人工呼吸器の反動から減収となりました。市場別では、大学市場、診療所市場は堅調に推移した一方で、官公立病院、私立病院市場が前期実績を下回りました。PAD(※)市場におけるAEDも減収となりました。この結果、国内売上高は前期比0.4%減の1,357億3千4百万円となりました。
 海外市場においては、現地通貨ベースでは全ての地域が減収となりましたが、円安効果により円ベースでは前期実績を上回りました。前期に感染再拡大地域で需要が増加した生体情報モニタ、人工呼吸器の反動に加え、昨年3月末から5月末の上海ロックダウンの影響を受けました。米州では、米国が円ベースでは増収となったものの、中南米はメキシコ、チリを中心に減収となりました。欧州では、現地通貨ベースでは減収となりましたが、円ベースでは増収となりました。ドイツ、イギリスは好調に推移しましたが、フランス、スペインが低調でした。アジア州他は、前期に好調だったエジプト、インド、ベトナムでの反動により減収となりました。中国も、昨年12月の感染再拡大により生体情報モニタ等の整備が進みましたが、上海ロックダウンの影響を補うには至らず減収となりました。この結果、海外売上高は前期比3.0%増の708億6千9百万円となりました。

※PAD(Public Access Defibrillation):一般市民によるAEDを用いた除細動。PAD市場には公共施設や学校、民間企業などが含まれる。

 

<商品群別の状況>

[生体計測機器]国内では、診断情報システムは前期実績を下回ったものの、心臓カテーテル検査装置群、脳神経系群が二桁成長となり、心電計群も堅調に推移しました。海外では、心電計群は上海ロックダウンによる現地生産への影響もあり全ての地域で減収となりましたが、脳神経系群が好調に推移しました。この結果、売上高は前期比9.1%増の432億8千7百万円となりました。

[生体情報モニタ]国内では、前期に需要が好調だった送信機、医用テレメータの反動により減収となりました。臨床情報システムは好調に推移し、センサ類など消耗品も堅調でした。海外では、前期の需要増加の反動により減収となりました。全ての地域が現地通貨ベースでは減収でしたが、米州、欧州は円安効果により前期実績を上回りました。この結果、売上高は前期比4.8%減の808億1千5百万円となりました。

[治療機器]国内では、感染症対応のための需要が一巡した人工呼吸器、更新需要の谷間にあったAEDが前期実績を下回ったことから、減収となりました。除細動器、その他に含まれるアブレーションカテーテルは好調に推移しました。海外では、AEDが底堅い需要に支えられ全ての地域で大幅に伸長し、増収となりました。人工呼吸器、除細動器は感染症対応のための需要が一巡し前期実績を下回りました。この結果、売上高は前期比2.5%増の444億6千3百万円となりました。

[その他]国内では、医療機器の設置工事・保守サービス、検体検査装置が好調に推移した一方、現地仕入品は減収となりました。海外では、中南米、欧州で血球計数器・試薬の売上が大幅に伸長しました。この結果、売上高は前期比2.3%増の380億3千6百万円となりました。

 

売上高を商品群別に分類すると次のとおりです。

 

 

金額(百万円)

対前期増減率(%)

生体計測機器

43,287

+ 9.1

生体情報モニタ

80,815

△ 4.8

治療機器

44,463

+ 2.5

その他

38,036

+ 2.3

合 計

206,603

+ 0.7

 機器

108,904

△ 4.9

 消耗品・サービス

97,699

+ 7.9

 

 

  (参考)地域別売上高

 国内売上高

135,734

△ 0.4

 海外売上高

70,869

+ 3.0

  米州

36,818

+10.1

  欧州

12,349

+ 7.9

  アジア州他

21,701

△ 9.3

 

 

区 分

内 容

生体計測機器

脳波計、筋電図・誘発電位検査装置、心電計、心臓カテーテル検査装置、診断情報システム、関連の消耗品(記録紙、電極、電極カテーテルなど)、保守サービスなど

生体情報モニタ

心電図、呼吸、SpO(動脈血酸素飽和度)、NIBP(非観血血圧)等の生体情報を連続的にモニタリングする生体情報モニタ、臨床情報システム、関連の消耗品(電極、センサなど)、保守サービスなど

治療機器

除細動器、AED(自動体外式除細動器)、人工呼吸器、心臓ペースメーカ、麻酔器、人工内耳、関連の消耗品(電極パッド、バッテリ、アブレーションカテーテルなど)、保守サービスなど

その他

血球計数器、臨床化学分析装置、超音波診断装置、消耗品(試薬、衛生用品など)、設置工事・保守サービスなど

 

 

② 財政状態の状況

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ65億2千7百万円増加し、2,167億2千8百万円となりました。
 流動資産は前連結会計年度末に比べ6億2千4百万円増加し、1,725億円となりました。これは在庫や固定資産などの取得により有価証券(譲渡性預金)が減少した一方で、安定した供給を確保するため原材料や製品の在庫を積み増したことなどによるものです。
 固定資産は前連結会計年度末に比べ59億2百万円増加し、442億2千8百万円となりました。これは鶴ヶ島新工場用地の取得や、日本光電インディア㈱における新工場の建設のため土地や建設仮勘定などが増加したことなどによるものです。
 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ46億9千6百万円減少し、491億2千4百万円となりました。これは未払法人税等が減少したことなどによるものです。
 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ112億2千3百万円増加し、1,676億4百万円となりました。これは、利益剰余金が増加したことなどによるものです。
 これらの結果、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に比べ139.91円増加して1,992.30円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末の74.4%から2.9ポイント増加し77.3%となりました。
 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ161億7百万円減少して439億8千8百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動の結果使用した資金は、25億1千3百万円(前期は256億9千9百万円の収入)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益247億1千6百万円、棚卸資産の増加85億9千万円、売上債権の増加47億5千3百万円、仕入債務の減少24億6千5百万円、および法人税等の支払103億2千2百万円などです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動の結果使用した資金は、前期比33億4千4百万円増の76億4千7百万円となりました。主な内訳は、土地や生産設備、販促用製品などの有形固定資産の取得74億5千8百万円などです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動の結果使用した資金は、前期比1億8千4百万円増の74億8千5百万円となりました。主な内訳は、配当金の支払57億3千3百万円、自己株式の取得10億1百万円などです。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

当社グループの事業は、医用電子機器関連事業の単一セグメントであり、セグメントごとの業績は、記載を省略しています。

 当連結会計年度における生産、受注および販売の実績を商品群別に示すと次のとおりです。

 なお、表中の金額は販売価格によっています。

 

  イ. 生産実績

区分

金額(百万円)

前期比(%)

生体計測機器

45,465

108.4

生体情報モニタ

82,268

98.9

治療機器

47,919

112.4

その他

39,427

101.6

合計

215,080

104.1

 

  (注) 上記金額には、商品購入高が合計で56,128百万円含まれています。

 

 ロ.受注実績

当社グループの商品は、需要予測による見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

 ハ.販売実績

区分

 金額(百万円)

前期比(%)

生体計測機器

43,287

109.1

生体情報モニタ

80,815

95.2

治療機器

44,463

102.5

その他

38,036

102.3

合計

206,603

100.7

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。当社グループの事業は、医用電子機器関連事業の単一セグメントであり、セグメントごとの業績は、記載を省略しています。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に貸倒引当金、賞与引当金、退職給付に係る負債であり、見積りおよび判断・評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っています。

詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

イ.当連結会計年度の経営成績および「BEACON 2030 Phase I」の進捗状況

 当連結会計年度においては、半導体の需給ひっ迫や上海ロックダウンに伴う製品供給問題に対応するため、開発・調達・生産・物流・販売部門が一丸となってサプライチェーンマネジメント改革を推進し、グローバルでの製品供給の継続に取り組みました。国内では、過去2年間のコロナ禍で低調だった医療機器の需要が回復するとともに、検査・手術件数の回復に伴い消耗品の需要も好調に推移しました。国内売上高は、コロナ関連需要の反動により前期実績を下回ったものの、顧客価値提案の推進、消耗品・サービス事業の強化に注力した結果、期初計画を上回ることが出来ました。海外では、製品供給問題に伴う機会損失や新製品供給遅延が上期に発生しましたが、下期は米国の中位機種ベッドサイドモニタやマスク型人工呼吸器などの新製品効果や円安効果もあり、売上が回復しました。また、欧州、中南米、インド等における医療提供体制の強化に向けた需要を着実に取り込むことが出来ました。通期では、円安効果により期初計画を上回ったものの、米国の新製品供給遅延や上海ロックダウンの影響を補うには至らず、現地通貨ベースでは未達となりました。以上の結果、2023年3月期の業績は、売上高は過去最高を更新することが出来ました。

 商品群別では、生体計測機器は、国内で心臓カテーテル検査装置群や脳神経系群、海外で脳神経系群が好調に推移したことから、前期比9.1%の増収となりました。海外では上期に上海ロックダウンの影響を受けたものの、国内で検査・手術件数が回復、設備投資が再開したことから、計画を上回ることが出来ました。生体情報モニタは、国内外ともに前期の感染症対応のための需要の反動により、前期比4.8%の減収となりました。一方で、国内では臨床情報システムが好調に推移し、センサ類など消耗品も堅調だったことから、計画を大きく上回ることが出来ました。治療機器は、国内で人工呼吸器やAEDが減収となったものの、海外でAEDが底堅い需要に支えられ全ての地域で大幅に伸長したことから、前期比2.5%の増収となりました。また、国内で除細動器やアブレーションカテーテルが好調に推移したことから、計画を上回ることが出来ました。その他商品群は、国内で医療機器の設置工事・保守サービス、検体検査装置が好調に推移し、海外で血球計数器・試薬が前期実績を上回ったことから前期比2.3%の増収となり、計画を上回りました。

 営業利益については、増収効果に加え、売上総利益率が想定を上回ったことから、期初計画を達成することが出来ました。

 2023年度は中期経営計画の最終年度となりますが、引き続き6つの重要施策を着実に実行します。インフレに伴う部材価格や光熱費、人件費等の上昇が見込まれますが、価格適正化やサプライチェーンマネジメント改革を推進し、売上総利益率50%以上、営業利益率10%以上を定常的に確保できる企業体質への変革に取り組みます。

 

ロ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 事業への資源配分については、新製品の投入による売上、利益の成長に資する投資を最優先としながら、研究開発や設備投資、M&A・提携、人財育成など将来の企業成長のために必要な資源配分を安定的かつ継続的に実施します。設備投資は50億円程度、研究開発費は72億円程度を計画しています。

 株主還元については、経営の最重要政策の一つと位置付けており、内部留保の確保に配慮しながら、優先順位については、ⅰ)研究開発や設備投資、M&A・提携、人財育成など将来の企業成長に向けた投資、ⅱ)配当、ⅲ)自己株式取得とし、連結配当性向30%以上を目標に長期に亘って安定的な配当を継続することを基本方針としています。

 資金調達については、当社グループの主な運転資金および設備資金として自己資金を充当しており、M&Aや新規事業など資金調達が必要になった場合には、資金需給のバランスを見ながら、借入を資金調達の有効な手段として検討し、負債コストも考慮した加重平均資本コストの最適化を図ります。

 また、当社グループでは、財務健全性を維持した持続的成長と企業価値の向上を目指して、資金の効率化と流動性の確保に努めています。資金の効率化については、キャッシュ・コンバージョン・サイクルを指標とし、売上債権回収の早期化や棚卸資産の適正化により、運転資金の効率化を図っています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金は当社に集中し、不足するグループ会社に配分する制度を運用しています。安定的な経営に必要な手元現預金の水準は、概ね月商の3ヵ月程度と考えています。当連結会計年度においては、原材料調達難への対応としての在庫の積み増しや新工場の土地取得等の成長投資により大きく資金を支出したものの、1年を通じて必要な資金の水準を維持できたと認識しています。なお、資金の流動性を確保するため、複数の取引金融機関と当座貸越契約を締結しています。

 

ハ.経営指標の分析

 当社は、企業価値・株主価値増大に向けて連結ROE(連結自己資本当期純利益率)を経営目標としており、3ヵ年中期経営計画「BEACON 2030 Phase I」において、資本コストを上回る10%を目標としています。資本コストは毎年見直しており、現在5%前後と見ています。

 中期経営計画の推進による利益率の改善を最優先としつつ、在庫圧縮や債権回収の早期化などキャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮による運転資本の改善、投資判断基準の設定、株主還元の充実等により、経営指標の達成を目指します。

 当連結会計年度の連結ROEは10.6%と、10%以上を確保しました。

 2020年度以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要増加や半導体の需給ひっ迫に対応するため、部品や製品の在庫を積み増したことから、キャッシュ・コンバージョン・サイクルが長期化し、2022年度は235日となりました。2023年度は、半導体不足が解消する見込みであることから、在庫管理を強化し、2021年度水準である190日への回復を目指します。

 また、成長投資による企業価値向上に向けて、2022年度に投資判断基準に正味現在価値(NPV)と内部収益率(IRR)を採用し、新規投資案件の評価を開始しました。ハードルレートである資本コストを上回る10%をIRRの目標としています。一定額を超える投資案件の場合、投資後の進捗状況、効果を毎年取締役会で検証します。