売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E02632 Japan GAAP

売上高

3.36兆 円

前期

3.29兆 円

前期比

102.1%

時価総額

5,339.8億 円

株価

2,413 (04/25)

発行済株式数

221,291,342

EPS(実績)

175.36 円

PER(実績)

13.76 倍

平均給与

787.3万 円

前期

777.9万 円

前期比

101.2%

平均年齢(勤続年数)

48.1歳(19.0年)

従業員数

173人(連結:12,795人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは、株式会社メディパルホールディングスを中核として子会社31社と関連会社18社で構成し、医薬品、化粧品・日用品、動物用医薬品等の販売やサービスの提供を主とする事業活動を展開しております。

 

 なお、当社は、新中期ビジョンにおける健康寿命の延伸ニーズや、予防・未病への関心の高まりに対する取組みの強化・充実の一環として、2023年3月31日付で、住友ファーマ株式会社(以下、住友ファーマという)より、住友ファーマの完全子会社である住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を取得いたしました。これに伴い、同社を連結子会社とするとともに、セグメントの名称を「動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業」から「動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業」に変更しております。

 

 事業に関する各会社の位置付けは次のとおりであります。

 なお、次の「医療用医薬品等卸売事業」「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」「動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業」の事業区分は、セグメントの区分と同一であります。

 

事業区分

会社名

主要取扱品等

 医療用医薬品等卸売事業

㈱メディセオ

医療用医薬品、医療機器、医療材料、臨床検査試薬

 

㈱エバルス

医療用医薬品、医療機器、医療材料、臨床検査試薬

 

㈱アトル

医療用医薬品、医療機器、医療材料、臨床検査試薬

 

SPLine㈱

スペシャリティ医薬品の流通企画

 

㈱MMコーポレーション

医療機器、医療材料

 

㈱アステック

医療機器、医療材料

 

㈱MVC

医療機器、医療材料

 

㈱ファルフィールド

疫学研究・臨床研究等の受託

 

メディエ㈱

医療材料データベースの構築、医療施設向け物品マスターの作成

 

㈱エム・アイ・シー

医療事務員の養成・派遣、医療事務業務の受託等

 

㈱メディパル保険サービス

損害保険代理店業、生命保険の募集に関する業務

 

㈱メディスケット

医薬品等の配送、検体集荷、その他ヘルスケア領域の物流業務等の受託

 化粧品・日用品、
 一般用医薬品卸売事業

㈱PALTAC

化粧品、日用品、一般用医薬品

動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業

MPアグロ㈱

動物用医薬品、飼料添加物

 

住友ファーマフード&ケミカル㈱

食品素材、食品添加物、化学製品材料

 

メディパルフーズ㈱

食品加工原材料、食品添加物

 関連事業

㈱トキモ

清掃管理業務

 

㈱物流二十四

物流センターの管理運営、納品業務の受託、人材派遣

 

エバルスオーディエス㈱

物流センターの管理運営、納品業務の受託、人材派遣

 ※2023年4月1日付で、MP五協フード&ケミカル株式会社に商号変更。

 

 なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

 

事業系統図等は次のとおりであります。

                                    (2023年3月31日現在)

 

※画像省略しています。

 

23/06/27

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の概況

a.中期ビジョンの策定

当社グループは、「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」の経営理念に基づき事業活動を行っております。「ありたい姿」として「『医療と健康、美』を広げ、支え、つなぐ 健康応援オーケストラ」を掲げ、「医療と健康、美」の事業フィールドで社会価値、顧客価値を創造する事業を「広げ」、強固な流通インフラで「支え」、また、様々な分野のパートナーが持つ価値を「つなぐ」ことで、誰もが心身ともに健やかに暮らせる社会の実現と、企業価値の向上を目指しております。この実現に向けて、「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever~たゆまぬ変革を~」(以下、本中期ビジョンという)を策定し、2022年10月31日に発表いたしました。

 

b.中期ビジョンの実現に向けた主な取組み

本中期ビジョンでは、人材戦略・財務戦略を基盤とし、事業ポートフォリオのシフトに向けた成長戦略として「海外への進出」「予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大」「デジタルを活用したビジネス基盤の強化」「持続可能な流通の構築」「地域医療における価値共創」を掲げており、これら5つの成長戦略をパートナーとの積極的な協働により展開しております。

 

成長戦略①「海外への進出」

 2022年10月、当社はJCRファーマ株式会社(兵庫県芦屋市、以下、JCRという)と、ライソゾーム病の中でも超希少疾病を対象疾患とする4つの新薬候補物質(以下、対象物質という)の、日本を除く全世界における事業化に関する独占的交渉権付与に関する覚書(以下、本覚書という)を締結いたしました。また、本覚書に基づき、両社は対象物質のうちフコシドーシス※1を対象疾患とする物質に関する実施許諾契約を併せて締結いたしました。今後は、世界中の治療薬を待ち望む人々のために、グローバルな研究開発を進めてまいります。

[用語解説]

※1 フコシドーシスとは、ライソゾーム病の一種で、遺伝子変異により糖たんぱく質の代謝酵素(α-フコシダーゼ)の活性が低下し糖鎖や糖たんぱく質が全身に蓄積する常染色体劣性遺伝性疾患であります。

 

成長戦略②「予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大」

 2023年3月、住友ファーマフード&ケミカル株式会社(大阪市北区、以下、住友ファーマフード&ケミカルという)の全株式を取得し、完全子会社といたしました。住友ファーマフード&ケミカルが自社にて研究開発した天然由来の多糖類※2やヘルシーな機能性素材※3などの競争力のある製品と、当社グループが有する広範な流通ネットワークの活用により、予防・未病領域における高いシナジーが期待できるものと考えております。当社グループは住友ファーマフード&ケミカルのグループインにより、両社の事業価値を新たに創造し、より多くの人々にその価値を提供してまいります。なお、同社は同年4月1日付で、商号を「MP五協フード&ケミカル株式会社」に変更いたしました。

[用語解説]

※2 多糖類とは、グルコースやマンノース等の単糖が長くつながったものの総称で、広義では10個以上の単糖が結合することで構成されている炭水化物を指しております。たれ・ソース・ドレッシング・佃煮・ゼリー・プリン・アイスクリームなどの加工食品にユニークな食感を付与したり、つくりたての状態を保持するなどの機能を有するとともに、嚥下困難者の皆さま向けの食品にも活用されております。また、近年では、化粧品など、食品以外の商品にも用いられております。

※3 機能性素材とは、健康食品や飲料等に使用されるオリジナルの食物繊維類であります。

 

成長戦略③「デジタルを活用したビジネス基盤の強化」

 株式会社エムティーアイ(東京都新宿区)との協業により、母子手帳アプリ「母子モ」の全国自治体への導入を進めており、2023年3月末現在520以上の自治体で導入されております。これをプラットフォームとし、当社グループがもつリアルの強みを活かし、情報の集約、整理、分析を行うことで、子育てを側面から支援し、収益を得られる仕組みを構築してまいります。また、2023年1月にはMEDIPAL Innovation 投資事業有限責任組合を通じて、かかりつけ医の医療DXを支援するプロダクトなどを提供する株式会社レイヤード(福岡市博多区)への出資を行いました。レイヤードのDX製品・サービスの社会実装を支援することで、クリニックにおけるDXを強力に推進するとともに、デジタルプラットフォームの構築を加速させ、クリニックの業務効率化と利便性向上に貢献してまいります。

 

成長戦略④「持続可能な流通の構築」

 2022年4月、H.U.グループホールディングス株式会社(東京都新宿区)と、医療・ヘルスケア領域における物流合弁会社「株式会社メディスケット(埼玉県三郷市、以下、メディスケットという)」を設立いたしました。メディスケットは同年12月1日から地域別に順次稼働しており、GDPガイドライン※4に準拠した高品質な物流機能をプラットフォーム化することによって、医薬品・検査資材等の供給と臨床・治験・研究等の検体集荷の最適化実現に加え、様々なヘルスケア関連企業との協業に向けた参画促進を行っております。

 また、当社は株式会社ジェイ・ウィル・パートナーズ(東京都千代田区、以下、JWPという)による日医工株式会社(富山県富山市)の再生支援に協力することが、安全・安心な後発医薬品を安定的に供給する医薬品生産流通モデルの実現及び当社の持続的な企業価値の向上に繋がると判断し、2023年3月、JWPが管理・運営する合同会社ジェイ・エス・ディー(東京都新宿区)に対してJWPファンド(JWPが管理・運営するファンドのこと)と共同で匿名組合への出資を行いました。

 さらに、2023年2月1日、東七株式会社(長崎県佐世保市、以下、東七という)と株式交換契約を締結し、同年4月3日、東七を完全子会社といたしました。今後は長崎県、佐賀県の流通インフラをより強固にし、多くの人々の健康に貢献してまいります。

[用語解説]

※4 GDPガイドライン(Good Distribution Practice=医薬品の適正流通)とは、流通経路(仕入・保管・供給)の管理が保証され、医薬品の完全性が保持されるための手法、さらに、偽造医薬品の正規流通経路への流入を防止するための適切な手法を定めたものであります。

 

成長戦略⑤「地域医療における価値共創」

 医薬品の専門知識とスキルを有するAR※5が、地域医療における新たな価値を創造するビジネスの推進役として、質の高い営業活動を展開しております。希少疾病領域に特化して活動するARを、RD-MR※6として任命し、主に病院市場において希少疾病用医薬品の情報提供・収集活動を行っております。また、2022年4月、女性特有の疾病(月経困難症・子宮頸がん等)に関する予防・診断・治療等の情報を総合的に医療従事者へ提供することを目的に「ウィメンズコーディネーター※7」を設置し、女性の健康を側面から支援する取組みを開始いたしました。いずれも、地域医療コーディネーターとして、地域の顧客である医療機関、自治体、学校等が抱えるヘルスケア課題を抽出し、その解決策を提案することで新たな価値共創を目指しております。

[用語解説]

※5 AR(Assist Representatives)とは、MR認定試験に合格したMS(医薬品卸売業の営業担当者)や薬剤師などに付与した社内呼称であります。

※6 RD-MR(Rare Disease MR)とは、希少疾病領域に特化したARなどに付与した社内呼称であります。

※7 ウィメンズコーディネーターとは、女性診療科領域の専門知識を有するARなどに付与した社内呼称であります。

 

国内外のベンチャー企業への投資による収益基盤の拡大と企業価値の最大化

 当社は、MEDIPAL Innovation 投資事業有限責任組合を通じて、国内外のベンチャー企業への投資を行い、収益基盤の拡大と企業価値の最大化を目指すとともに、持続可能な経済社会の実現に貢献しております。

 2022年5月、がん領域の研究開発に特化したバイオベンチャー企業であるChordia Therapeutics株式会社(神奈川県藤沢市)へ出資を行うとともに、業務提携に関する基本合意書を締結いたしました。同年8月には、CAR-T※8細胞療法を主とした新規がん免疫療法の開発を行うノイルイミューン・バイオテック株式会社(東京都港区)への、同年9月には医薬品向けヒト末梢血由来完全ヒト抗体の研究・開発を行う株式会社イーベック(札幌市中央区)への出資を行いました。

[用語解説]

※8 CAR-Tとは、白血球の一種であるTリンパ球に、がん細胞に特異的に発現する抗原を認識する抗体を導入した細胞製剤であります。

 

c.サステナビリティ方針の策定

 2022年10月、メディパルグループサステナビリティ方針「未来へつなごう『元気と、かがやき』」を策定いたしました。また、当社グループの経営理念に基づく事業活動やSDGsをはじめとした社会課題との関連性を整理し、その解決と当社グループの持続的な成長を両立させるための重要課題(マテリアリティ)として、「持続可能な『医療と健康、美』の流通」、「新たな価値創造による収益性の向上」、「未来を担う人材の育成」、「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」、「脱炭素への取組み」、「健全で透明性の高い企業経営」の6項目を特定いたしました。

 さらに、同年10月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、これに沿った情報を開示いたしました。今後もTCFD 提言に沿って、より精度を高めた開示に努めるとともに、財務に影響するリスクおよび機会を織り込んだ経営計画をもとに事業を継続し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

d.当期の業績

 当連結会計年度における経営成績は、以下の通りであります。

・売上高

 売上高は全てのセグメントで前期を上回りました。主に化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業が前期から584億16百万円増加し、前期から690億86百万円(2.1%)増収の3兆3,600億8百万円となりました。

・営業利益

 売上総利益は、売上高の増加に加え、医療用医薬品等卸売事業において売上総利益率が改善されたことにより、前期から68億59百万円(3.2%)増益の2,243億4百万円となりました。

 販売費及び一般管理費は、将来の事業領域拡大に向けた事業投資費用が増加したことなどにより、前期から35億10百万円(2.0%)増加の1,753億31百万円となりました。

 その結果、営業利益は、前期から33億48百万円(7.3%)増益の489億72百万円となりました。

・経常利益

 経常利益は、営業利益が増加したことにより、前期から30億76百万円(5.0%)増益の651億22百万円となりました。

・親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益などを計上したことにより、前期から93億82百万円(31.9%)増益の388億6百万円となりました。

 

セグメントの経営成績は次のとおりであります。

 

医療用医薬品等卸売事業

 医療用医薬品等の市場は、薬価の引き下げ、新型コロナウイルス感染症の拡大による受診抑制の影響はあったものの、同感染症治療薬の販売が増加したことなどにより、前期と比べ伸長いたしました。

 このような状況の中、本事業では、近年増加する厳格な温度管理が必要な医薬品等を安全・安心にお届けするため、高品質・高機能かつ災害対策を施したALC※1において、超低温を含む全温度帯に対応できる物流プラットフォームを構築しており、その技術やノウハウは新型コロナワクチンの保管・配送にも活かされております。また、医療従事者の業務効率化と新型コロナウイルス感染リスクの軽減を目的に導入を進めた「個口スキャン検品」※2の比率も83.3%まで上がっております。

 営業面においては、専門知識とスキルを持つARの育成や医療情報ポータルサイト「Clinical Cloud」でのLIVEセミナーの実施など、デジタルを活用した情報提供にも力を入れております。また、専門領域に特化して情報提供・収集活動を行うことを目的に、「RD-MR」「ウィメンズコーディネーター」を設置し、疾患啓発活動にも取り組んでおります。

(当期の業績)

 売上高については、医療用医薬品は前年同期を下回ったものの、新型コロナウイルス感染症関連商品を含むメディカル商材が順調に推移したため、前期をわずかに上回りました。

 売上総利益は、利益率が改善されたことにより、前期から64億15百万円(5.1%)増益の1,322億47百万円となりました。

 販売費及び一般管理費は、将来の事業領域拡大に向けた投資費用等の発生を、配送の集約や発注の締め時間の前倒し、建屋・支店の統廃合などによる費用削減で吸収できず、前期から11億13百万円(1.0%)増加し、1,103億28百万円となりました。

 これらの結果、医療用医薬品等卸売事業における売上高は2兆1,896億67百万円(前期比0.6%増)、営業利益は219億18百万円(前期比31.9%増)となりました。

 

[用語解説]

※1 ALC(Area Logistics Center)とは、医療用医薬品や医療材料などを扱う高機能物流センターで、主に調剤薬局、病院、診療所に商品を供給しております。

※2 個口スキャン検品とは、従来の伝票読み上げ方式から、納品箱単位でのバーコードスキャン方式に変更することで、検品時間を短縮する方法であります。

 

化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業

 化粧品・日用品、一般用医薬品の市場は、新型コロナウイルスの感染状況の落ち着きとともにコロナ関連需要は縮小しつつある一方で、外出機会の増加に伴って、メイクアップや洗顔などの化粧品、ドリンク剤や胃腸薬などの医薬品が好調に推移いたしました。また、前年に比べ気温が高く推移したこともあり、制汗剤や殺虫剤、花粉関連商材などの春夏季節品も好調に推移いたしました。

 このような状況の中、当社の連結子会社である株式会社PALTAC(大阪市中央区)は、お取引先様との連携・協働による「売れる仕組みの強化」や、差し迫る物流の2024年問題やホワイト物流※1への対応を視野に入れた「配送改善」、組織的に強化した全ての取組みを支える「デジタルの活用」、中長期の成長を担う「人財の積極採用」など、サプライチェーン全体の最適化・効率化に向けた取組みを進めました。

(当期の業績)

 売上高については、小売業様の幅広いニーズに対応できるリテールソリューション※2機能の充実と、連携・協働による同機能の積極的な活用に注力いたしました。中でも、店頭活性化による売上拡大及びインストアシェア拡大を図りました。具体的には、店頭の活きた情報や業界最大の流通情報を活用した需要変動への迅速な対応や、これまでのメーカー様には取り扱いがなかった商品を含め、市場環境の変化を先読みした新たな品揃え提案に努めました。

 販売費及び一般管理費については、中長期の成長に向けた人財の確保を進める中、電気代高騰などの影響を受けましたが、庫内作業の生産性向上に継続して取り組むとともに、配送費上昇とホワイト物流への対応を同時に実現する配送改善などに努めました。

 なお、営業利益については、最大市場である関東エリアの出荷規模拡大及び生産性向上を目的とする栃木物流センターの新設に伴う一過性の費用等が発生し、約14億円の引き下げ要因となりました。

 これらの結果、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業における売上高は1兆1,041億52百万円(前期比5.6%増)、営業利益244億72百万円(前期比5.6%減)となりました。

[用語解説]

※1 ホワイト物流とは、トラック運転者不足が深刻になっていることに対応し、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済の成長に役立つことを目的とした「トラック輸送の生産性向上・物流の効率化」や「女性や60代の運転者等も働きやすい、よりホワイトな労働環境の実現」のことであります。

※2 リテールソリューションとは、「商品が生活者にわたる現場(店頭)」を起点にマーチャンダイジングや生産性向上など流通全体の幅広い課題を解決することであります。

 

動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業

 動物用医薬品のコンパニオンアニマル向け市場は、動物用治療薬の進歩による長寿化が進む一方、相次ぐ物価の上昇による節約意識の高まりなどにより、横ばいで推移いたしました。畜水産向け市場は、景気低迷と過去最大の鳥インフルエンザの感染拡大や飼料価格や生産コストの高騰による低価格商材へのシフトや使用中止などにより事業環境は厳しさが増しております。

 このような状況の中、当社連結対象の完全子会社であるMPアグロ株式会社(北海道北広島市)は、コンパニオンアニマルの健康維持・増進に貢献できる取組みを行っております。また、家畜などの産業動物の疾病の予防とまん延を防止することで「食の安全・安心」に貢献すべく注力しております。

 食品加工原材料の市場は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限の解除などにより、外食産業等においても回復の動きが見られましたが、原料高騰や鳥インフルエンザの感染拡大などにより、価格上昇や鶏卵関連製品の供給不足など引き続き厳しい環境下にあります。

 このような状況の中、当社連結対象の完全子会社であるメディパルフーズ株式会社(札幌市中央区)は、「食の安全・安心」と「おいしさ」をテーマに、人々の健康で豊かな食生活を支える取組みを行っております。

(当期の業績)

 動物用医薬品等卸売事業では、自社企画品の普及・定着や、独自の動物病院向けWEB発注情報システム「MP+(エムピープラス)」の利用拡大、流通機能とマーケティング機能を融合させた新しい営業モデルの取組みを推進したものの、販売はやや低調に推移いたしました。

 食品加工原材料卸売等関連事業では、全国展開の強みを活かした営業の推進や、商品の調達と提案、商品付加価値を高める新製品の企画開発の推進、お得意様の商品企画から流通に至るまでをトータルにサポートする取組みなどにより、販売は順調に推移いたしました。

 これらの結果、動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業における売上高は739億54百万円(前期比2.9%増)となりましたが、営業利益はMP五協フード&ケミカルの株式取得関連費用が約2億円発生したことにより、前期から1億62百万円(6.0%)減益の25億25百万円となりました。

*当社は、2023年3月31日付で、住友ファーマフード&ケミカルを完全子会社といたしました。これに伴い、同社を連結子会社とするとともに、セグメントの名称を「動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業」から「動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業」に変更しております。なお、住友ファーマフード&ケミカルの株式取得日が当連結会計年度末のため、期末の貸借対照表のみ連結しております。

 

[用語解説]

※ コンパニオンアニマルとは、伴侶動物とも表現され、日常生活の中で人とより密接な関係を保つような動物を指しております。

 

(注)セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は1兆7,038億71百万円となり、前連結会計年度末より56億3百万円減少いたしました。

 流動資産は1兆1,792億80百万円となり、前連結会計年度末より304億85百万円減少いたしました。これは主に、住友ファーマフード&ケミカルの株式取得や新株予約権付社債の償還により現金及び預金が481億19百万円減少したことによるものであります。

 固定資産は5,245億90百万円となり、前連結会計年度末より248億82百万円増加いたしました。これは主に、住友ファーマフード&ケミカルの株式取得に伴うのれん(無形固定資産)の計上によるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債は1兆158億16百万円となり、前連結会計年度末より445億68百万円減少いたしました。

 流動負債は9,715億19百万円となり、前連結会計年度より372億97百万円減少いたしました。これは主に、1年内償還予定の新株予約権付社債の償還による減少300億78百万円、支払手形及び買掛金の減少170億31百万円によるものであります。

 固定負債は442億97百万円となり、前連結会計年度末より72億71百万円減少いたしました。これは主に、リース債務(その他の固定負債)の減少56億86百万円、繰延税金負債の減少22億33百万円によるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は6,880億55百万円となり、前連結会計年度末より389億65百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金の増加291億11百万円、非支配株主持分の増加79億13百万円によるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より668億89百万円減少し、当連結会計年度末には1,935億61百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の増加は、161億46百万円(前期比450億70百万円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が700億61百万円、減価償却費143億93百万円、投資有価証券売却益130億44百万円、売上債権の増加53億64百万円、棚卸資産の増加22億74百万円、仕入債務の減少233億41百万円、法人税等の支払247億9百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の減少は、394億94百万円(前期比151億51百万円の増加)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出104億83百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入178億32百万円、住友ファーマフード&ケミカルの取得関連の支出391億72百万円、匿名組合出資金の払込による支出43億22百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の減少は、435億41百万円(前期比270億70百万円の増加)となりました。これは主に、転換社債型新株予約権付社債の償還による支出300億円、配当金の支払121億37百万円によるものであります。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

a.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

医療用医薬品等卸売事業

2,189,667

100.6

化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業

1,104,152

105.6

動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業

73,954

102.9

3,367,774

102.2

調整額(セグメント間消去)

△7,766

合計

3,360,008

102.1

 (注)セグメント間の内部売上高を含んでおります。

b.仕入実績

仕入実績と販売実績の差額は僅少であるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況等に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容については、「3  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況、②財政状態の状況、③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

②資本の財源及び資金の流動性

 当社グループにおける資本の財源は、主に営業活動によるキャッシュフロー、現金および現金同等物、政策投資株式の売却に伴う収入等になります。当連結会計年度末の借入金残高はありませんが、今後は、財務健全性を確保しつつ、当社グループにとって最適な資本構成を追求してまいります。

 資金の流動性につきましては、事業活動を支える観点で充分な流動性を確保するとともに、金融機関からの当座貸越枠として1,971億円を設定し、突発的な資金需要にも対応しうる体制の構築をもって、流動性リスクに備えております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目事象は以下のとおりです。

なお、当社グループの取り扱う商品は、医薬品や食品、日用品など人々が生活をしていくうえで必要不可欠なものであることから,その需要が大きく減少することは想定しづらいと考えております。従いまして、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定において、新型コロナウイルスの影響は軽微であります。

 

a.繰延税金資産

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

b.独占禁止法関連損失引当金

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

c.のれん

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

d.退職給付債務及び退職給付費用

 退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い国債利回りなどを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、現在及び予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在及び将来期待される長期の収益率などを考慮して設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

e.固定資産の減損

 当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。

 固定資産の回収可能価額について、正味売却価額により測定しておりますが、売却予定の資産については売却予定価額を基に算定しておりますので、前提条件に変更があった場合、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

f.納入価格の見積り設定について

 当社グループの主要取扱商品である医療用医薬品は、納入停滞が許されない生命関連商品であることから、取引価格が未決定のまま医療機関等に納入し、納入後に価格交渉を行うという取引慣行が存在しております。取引価格が決定するまでは、過去の実績等を勘案し、合理的に判断した見積価格で売上計上を行っておりますが、見積りによる不確実性があるため、実際に決定した取引価格との差異が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2023年3月期における医療用医薬品の売上高2.1兆円のうち、取引価格の決定比率(金額ベース)は99.6%となっており、期末には取引価格がほぼ確定する傾向となっております。

(過去3年間の取引価格の決定比率 2020年3月期:99.7%、2021年3月期:99.9%、2022年3月期:99.8%)