株式会社スリー・ディー・マトリックス

精密機器バイオ創薬グロース

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最終更新:

E25884 Japan GAAP

売上高

23.1億 円

前期

15.1億 円

前期比

153.6%

時価総額

99.2億 円

株価

125 (03/29)

発行済株式数

79,350,709

EPS(実績)

-30.82 円

PER(実績)

--- 倍

平均給与

879.4万 円

前期

866.1万 円

前期比

101.5%

平均年齢(勤続年数)

46.2歳(1.7年)

従業員数

21人(連結:108人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

 

3【事業の内容】

当社グループは、当社及び連結子会社8社で構成され、MITより自己組織化ペプチド技術に係る特許の独占的実施権の許諾を受けて、同技術を基盤技術とした製品の研究開発・製造・販売を実施することを目的とした医療製品事業を行っております。

当社グループは、医療製品事業の単一セグメントであり、医療製品開発・販売で構成されております。その内容は以下のとおりです。

 

(医療製品事業の構成)

区分

内容

医療製品開発・販売

自己組織化ペプチド技術を基盤技術として外科領域・組織再生領域・DDS領域において医療機器及び医薬品の研究開発を行う事業です。

主要な開発パイプラインとしては、外科領域では吸収性局所止血材、粘膜隆起材、後出血予防材、癒着防止材を有しており、組織再生領域では創傷治癒材、歯槽骨再建材、DDS領域では核酸医薬等のためのDDSを有しています。

 

 

(1)自己組織化ペプチド技術の特徴

当社グループの基盤技術となっている自己組織化ペプチド(*)のうち最も開発が先行し複数の製品を上市しているペプチドRADA16は、体を構成するアミノ酸(*)であるアルギニン(R)(*)、アラニン(A)(*)、アスパラギン酸(D)(*)からなる(RADA)の繰り返し配列である16残基のペプチド(*)であり、このペプチドを溶解した水溶液はpH(*)が酸性から中性になると速やかにゲル化(*)する性質を有しています。具体的には、分子同士が繊維状に結合(自己組織化)してナノファイバーを形成し、そのナノファイバーが絡み合うことでゲル化します。形成されたゲルは生体内で細胞が培養される環境に近く、コラーゲン等の細胞外マトリックス(*)に似た網目構造をしています。

自己組織化ペプチドは、生物由来の原材料を含まず化学合成により生産されることから、生物由来の原材料から生じるウイルス等の感染や未知の成分の混入の可能性がないため安全性が高く、ほぼ均一の品質で大量生産が可能な点が特長として挙げられます。自己組織化ペプチドは、これまでに実施したADME試験(*)において、特定の臓器に蓄積されることなく、生体内のタンパク質と同様にタンパク質分解酵素(*)により分解され、30日程度で体外に排出されることが確認されています。

 

(2)医療製品開発

医療製品開発は、自己組織化ペプチド技術を基盤技術として外科領域、組織再生領域、DDS(*)領域において医療機器及び医薬品の開発を行う事業です。

主要な開発パイプラインのうち、外科領域では吸収性局所止血材・粘膜隆起材・癒着防止材、組織再生領域では歯槽骨再建材・創傷治癒材についてはそのいずれについても、医療機器として自ら開発し製造販売承認を取得する方針ですが、地域によっては薬事規制、市場動向、当社グループのリソース等を勘案して現地企業等と提携することでの製品化も実施していく方針です。販売についても製品、地域に応じて、代理店を通じての直接販売及び販売パートナーに対する販売権許諾の双方の戦略を適切に選択しあるいは組み合わせていく方針です。DDS領域では、自己組織化ペプチドを薬剤の担体(*)とし、各薬剤と組み合わせた製品化に向け取り組んでおりますが、医薬品として開発することとなる可能性が高く当社独自で薬剤や治療物質について技術を取得するには時間を要することからも、製薬会社等に技術供与(ライセンス)を行うことによりロイヤリティー等のライセンス収入の獲得を目指してまいります。

その他当社グループでは、大学等の研究機関とのMTA契約(*)及び共同研究契約に基づく共同研究によって、自己組織化ペプチドを基盤とした応用技術の獲得に取り組んでいます。

 

A 各領域及び各パイプラインの概要

(A) 外科領域

当社は、外科領域において、吸収性局所止血材、粘膜隆起材、癒着防止材の開発パイプラインを有しています。

a)吸収性局所止血材

当社は、自己組織化ペプチドであるRADA16を基に、出血部に塗布して用いる外科手術用の吸収性局所止血材(開発コード:TDM-621)(以下、「TDM-621」という。)の開発を進めています。RADA16の水溶液は、血液等の体液と接触するとpHが中性化され、自己組織化してナノファイバーを形成しゲル化します。ゲルは体組織との接触面を隙間なく被覆し、被膜が形成されて表面皮膜及び血管浅部を物理的に閉鎖し、血管深部では血液凝固が生じることで止血されます。

 

<自己組織化ペプチドのゲル化形成>

 

  自己組織化前のペプチド分子

※画像省略しています。

 

 

<止血方法 概略図>

※画像省略しています。

 

TDM-621は、RADA16の水溶液をシリンジに無菌充填したプレフィルドシリンジ(*)形態で、ブリスター包装(*)された製品であるため、手術現場では、パックを開封してすぐに使用することが可能であること、使用前の調製の必要がない等、適用量が調整しやすく操作性に優れていることといった特長を有しています。また、澄明な液体形状であることから術野を妨げることがなく、カテーテルや組織の狭部への適用も容易です。

既存の止血剤製品群(*)は、糊状・シート状・粉末状等の形状がありますが、主として糊のように機能して接着することにより止血効果を得るものであるのに対し、TDM-621は物理的に表面皮膜及び血管浅部を閉鎖して止血するものであるため、既存製品と異なり接着による待ち時間、圧迫による圧着時間を短縮することが可能です。また、既存製品は、一度組織に接着すると除去が困難であるのに対し、TDM-621は、余剰部分を生理食塩水により洗い流すことで容易に除去することができます。既存製品の多くは、フィブリノゲン(*)等の人や動物の血液から生成又は動物の皮膚から生成したコラーゲン等を原材料としており、これらの原材料から生じるウイルス感染等のリスクは完全には否定できないことから、生物由来製品又は特定生物由来製品として指定されており、医療現場においては、① 患者(又はその家族)への適切な説明、② 使用記録の作成と保管、③ 感染症等情報の報告等における管理体制の厳格化が要請されます。これに対してTDM-621は、生体内に存在するアミノ酸を化学的に合成したもので生物由来の細胞、組織等を原材料として含まないため、これらの原材料から生じるウイルス等の感染や未知の成分の混入によるリスクがありません。また、生物由来製品又は特定生物由来製品に求められるプロセスが不要なため、TDM-621は患者と医療従事者の負担の軽減にも貢献できるものと考えられます。

 

(研究開発の状況)

TDM-621の日本での製造販売承認については、2020年に消化器内視鏡治療における漏出性出血に対する止血を対象とした吸収性局所止血材「ピュアスタット」として製造販売承認を取得しており、2021年12月からは本製品の保険適用が開始されております。これにより、医療機関の費用負担なく「ピュアスタット」を使用できることになり、今後の販売加速が見込まれます。

また、当社は、TDM-621の海外展開に向け開発を進めております。欧州においては、2014年にCEマークを取得しており、現在欧州全域において販売中です。今後は中枢神経分野等領域の拡大や創傷治癒等機能の拡大等、継続して複数の分野で適応拡大を進め、オンリーワンの製品となれるよう価値を一層高めていく方針です。米国では、消化器内視鏡治療領域において、2021年1月に米国食品医薬品局(以下、「FDA」という。)に市販前届510(k)を申請し、2021年6月に販売承認を取得しており、2022年7月より販売を開始しております。また、2022年8月に手術等の処置に伴うものではない病変等から起こる自然出血(以下、「Primary Bleeding」という。)への適応拡大を目的とした市販前届510(k)を申請しておりましたが、2023年3月に販売承認を取得いたしました。Primary Bleedingの日米欧での市場規模は100億円程度と推計され、本適応拡大によってより一層製品力を高め、米国における消化器内視鏡治療の広まりや安全性の向上に貢献していきたいと考えております。アジア・オセアニア・南米地域の主要国においても、CEマーキングを活用し登録承認を取得し、製品販売を開始しております。

 

b)粘膜隆起材

当社は、自己組織化ペプチドを基に、消化器内視鏡治療による胃癌や食道癌等の粘膜切除術や粘膜下層剥離術(*)において、腫瘍部位の粘膜隆起を形成する内視鏡用粘膜下注入材(*)(開発コード: TDM-644)(以下、「TDM-644」という。)の開発を進めています。胃や食道等の早期癌治療において行われる内視鏡による粘膜切除術や粘膜下層剥離術では、粘膜下層に生理食塩水や内視鏡用粘膜下注入材を病変部の粘膜下層に注入し、病変部を隆起させ、隆起させた根元部分に細いワイヤーをかけて締めたうえで高周波を流して焼き切り(内視鏡的粘膜切除術)又は隆起させた病変部を粘膜下層の深さで電気メスにより引き剥がし(内視鏡的粘膜下層剥離術)、病変部を取り除きます。この病変部を隆起させるために用いられる内視鏡用粘膜下注入材として開発しているのがTDM-644であり、血液等の体液と接触することで中性化しゲル化する特徴から、必要な隆起を形成するとともに、副次的には止血効果も有することが動物実験により確認されています。

 

<粘膜隆起方法 概略図>

 

※画像省略しています。

 

(研究開発の状況)

日本においては、2021年5月に製造販売承認を取得しており、2021年12月には販売用製品「ピュアリフト」として製造を開始いたしました。また、2022年8月には販売開始に向けた更なるデータ拡充のため臨床研究を開始しております。さらに、2022年12月より保険適用が開始され、医療機関が使用した「ピュアリフト」の特定保健医療材料費については、医療機関は保険償還価格にて保険請求が可能となります。これにより、医療機関の費用負担なく「ピュアリフト」を使用できることとなります。止血材「ピュアスタット」販売時のフックとして「ピュアスタット」販売拡大にも貢献すべくクロスセルでの販売を予定しております。

 

c)後出血予防材

当社グループにおいては、TDM-621について治療後に起こる後出血について医療機器としての承認を得るべく開発を進めています。治療時に後出血が生じると、再手術が必要となることから患者及び医療機関双方の負担が大きく、強いニーズがあります。消化器内視鏡治療における出血はおおよそ5%程度であるのに対し、治療後に後出血が懸念されるリスクの高い患者・手技はおおよそ30%あるとされており、本適応の追加により当社製品が獲得可能な市場は数倍に拡大する可能性があります。

 

(研究開発の状況)

欧州においては、消化器内視鏡治療時に生じる後出血予防効果に関して、2018年12月に適応追加が承認されております。また、オーストラリアにおいても後出血予防効果に関して、2019年9月に適応追加が承認されました。さらに、米国においては2021年6月に止血材の承認と合わせて後出血予防の適応も同時に承認を受けております。

 

d)癒着防止材

RADA16について、止血材だけではなく、癒着防止材、創傷治癒材としての開発も進めております。米国においては、耳鼻咽喉科領域において既に販売を開始しておりますが、今後、はるかに大きな市場が存在する産婦人科等の領域に適応拡大をすべく、日本と欧州双方で医師主導治験の準備を進めております。

 

(研究開発の状況)

米国では、耳鼻咽喉科領域において、2019年4月にFDAより癒着防止材兼止血材「PuraSinus」の販売承認を受けております。本製品は、癒着防止、止血、創傷治癒を同時に行える現状唯一の製品であることから、鼻甲介切除術や鼻中隔形成術等において高い臨床的価値を提供でき得るものと期待しております。特に術後のパッキング(鼻に詰め物をする処置)は患者のQOLを著しく悪化させているといわれておりますが、当社製品によってパッキングを極力減らすことが可能となり、患者のQOLを重視する米国市場では強いニーズが期待できます。

 

e )次世代止血材

RADA16とは異なる、当社が独自に開発した新規ペプチド配列を用いた開発品です。現在の止血材より止血効果に優れ、原価を大幅に削減できる等の優位性があることから、将来的に主力製品として市場に供給すべく開発を進めてまいります。

 

(研究開発の状況)

欧州においては、2021年5月に治験計画届の承認がなされ、2021年7月より脳神経外科を対象とした治験を開始しております。本試験開始前の探索的臨床試験については、2021年12月に全ての患者への投与が完了し、安全性が確認されたことから、本試験への移行が開始されました。

 

(B) 組織再生領域

自己組織化ペプチドは細胞の増殖を支える細胞外マトリックスに似た物理構造を有することから、当社グループでは、組織再生領域において創傷治癒材、歯槽骨再建材を開発パイプラインとして有しております。また当社グループは、当該パイプライン以外に、歯槽骨以外の骨の再建、軟骨・腱の再生、心筋の再生等に関する研究を行っております。

 

a)直腸における粘膜炎の創傷治癒

当社グループは、直腸における粘膜炎により損傷した粘膜組織に塗布することで粘膜組織上に保護膜を形成し、二次炎症の防止や痛みの軽減に加え創傷治癒に最適な湿潤環境を維持する創傷治癒材を開発しております。

 

(研究開発の状況)

米国において、2022年4月に粘膜炎の創傷治癒に対する承認を取得いたしました。これは直腸の粘膜炎等の治癒に幅広く使える可能性がある承認であり、止血材よりさらに付加価値の高い製品としての販売が可能となります。例えば一つの適応事例としての放射線性直腸炎は、前立腺がんや子宮がん等への放射線療法に起因する副作用で、大腸粘膜の炎症を高頻度で引き起こします。また、2割程度の患者は慢性的な下血、頻繁な排便、激しい腹痛等の晩期障害に悩まされており、有効な治療法の確立が望まれております。

この領域で早急に成長を蓄積し、さらに巨大な市場である炎症性腸疾患(以下、「IBD」という。)への適応拡大を進めてまいります。IBDは消化管の難治性炎症で、原因不明で一度発症すると再燃と寛解を繰り返す特定疾患であり、グローバルで数兆円の顕在市場が存在します。2023年6月には、日本においてIBD領域での効果確認のための医師主導特定臨床研究が開始しております。今後も日米欧にて複数の医師主導特定臨床研究を計画し、早期にPOC(Proof Of Concept)を取得することを目指します。POC を取得した暁には、本格的な開発を開始する計画です。

 

b)創傷治癒材

当社グループは、皮膚(表皮、表皮・真皮)からの出血を迅速に止血する局所止血材、皮膚の創傷部の創傷治癒に適切な湿潤環境を維持する、創傷治癒材(開発コード:TDM-511)(以下、「TDM-511」という。)を開発しております。

 

(研究開発の状況)

米国では、2015年2月にFDAより、切り傷、すりむき、創傷、I度熱傷及び医師指導の下での表皮から真皮層までの皮膚創傷(圧迫による褥瘡、下肢潰瘍、糖尿性病性潰瘍、手術痕等)を適用として、販売承認を取得しております。より高い臨床的価値が求められる重度の熱傷や皮膚がんの分野への進出を目指して、他薬剤とのコンビネーション(抗生物質、抗がん剤等)も視野に入れて研究を進めております。また、巨大市場である美容整形分野にもアクセスすべく、2020年5月に適応を拡大しております。欧米において複数の臨床研究を進め、有望な結果が観察され始めており、論文発表も行われております。

 

c)歯槽骨再建材

当社グループは、歯周病による歯槽骨の退行で歯が脱落した場合等に、インプラント術前にインプラント固定に充分な骨量を確保するために行う歯槽骨再建術において、骨再生のための足場材(*)となる製品(開発コード:TDM-711)(以下、「TDM-711」という。)の開発を行っています。

ゲル化された自己組織化ペプチドは、ナノファイバーによる3次元構造が維持され、生体内で細胞が増殖する環境に近く、生体組織の再生をサポートする特性を有しています。TDM-711は、骨量不足箇所に充填されると、かかる特性により足場材として骨再生を促進します。米国でのインプラント治療における歯槽骨再建術では、代替骨を用いる施術も少なくなく、自家骨(*)や他家骨(*)、人工骨を用いた再建術が行われていますが、当社グループは、他家骨や人工骨を用いた再建術において、その生着を高めるためにTDM-711を用いることの開発を進めております。

 

(研究開発の状況)

当社グループは、GLP(*)下において歯槽骨に欠損がある状態でのTDM-711の有効性の確認試験を実施し、通常の欠損群に比べ有意な骨再生が認められたため、その後も研究開発を進めてまいりました。当社グループは、TDM-711につき、2012年2月には、米国ハーバード大学の医学部・歯学部の付属研究所であるフォーサイス・インスティテュート(Forsyth Institute)において、臨床試験を開始し、プロトコルで規定した15症例の施術及び経過観察が完了しております。骨再生に有効なデータを得ておりますが、プロトコルに改善の余地があったため、2018年4月期に症例を追加して現在も臨床試験を継続しており、今後も製品化に向けた開発を進めてまいります。

 

(C) DDS領域

当社は、DDS領域において、自己組織化ペプチドをDDSにおける薬剤や治療物質のキャリア担体として活用するための研究開発を行っており、bFGF(*)・PDGF(*)等のタンパク質の徐放においても複数の有効性試験を実施しております。中でも、ハイドロゲルを形成する自己組織化ペプチドとは異なり界面活性(*)作用を持つペプチド(A6K(*))については、溶液中でナノチューブを形成する性質を有するため、当社は、癌細胞へのsiRNA(*)の導入試験において、かかる性質を活かし、ナノチューブに内包された形で癌細胞膜透過性をもたらし、導入効率を高めていく研究を行っております。

 

(研究開発の状況)

国立がん研究センターとの「RPN2標的核酸医薬によるトリプルネガティブ乳がん治療」共同プロジェクトにおいて、界面活性剤様ペプチドA6Kを核酸医薬のDDSとして提供しておりました。当社は、国立がん研究センターと共同でがん幹細胞に対する治療薬や診断方法の特許を取得しており、同分野や関連分野の共同研究/共同開発に向けた取り組みを進めております。

広島大学との共同プロジェクトにおいても、悪性胸膜中皮腫を対象疾患とする革新的抗腫瘍核酸医薬にA6Kを提供し共同開発を進めておりましたが、広島大学の田原栄俊教授により新たに設立された株式会社PURMX Therapeuticsが今後の製品開発を主導することとなりました。当社も同社株式の一部を取得し、今後も引き続き共同で製品開発を進めてまいります。2022年1月には、医師主導治験(第I相)において第一症例の組み入れが実施され、臨床試験が開始されております。

核酸医薬へのDDSとして当社製品がヒト臨床で使用されるのはこれで2件目となります。今後の核酸医薬の広まりとともに、当社の技術が核酸のデリバリーのオプションとして更なる広がりをみせる可能性が出てきております。

また、当社技術をCOVID-19を含めた各種ワクチンのDDSに応用する検討も進めております。各種ワクチンによる防御免疫反応を高め、強力なアジュバント(主剤の効果向上並びに補助を目的として併用される物質)の反応性を排除することで、効率的かつ安全なワクチンデリバリーシステムを開発することを目的とし、米国Tulane Universityと共同研究を開始いたしました。本共同研究により、同レベルの免疫を獲得するために必要なワクチンの接種回数を減らすことができる可能性や患者の負担を軽減できる可能性あるいは各種ワクチンの経鼻投与ができるようになる可能性が期待されます。

 

B 医療製品の開発プロセス

当社グループが自社による開発や製造販売承認取得を目指している医療製品の多くは、医療機器に分類されます。

新たに医療機器や医薬品を開発する場合、その開発プロセスは、基礎研究、前臨床試験、臨床試験、製造販売承認申請という基本的な流れは共通ですが、医薬品の場合には臨床試験が多段階に設定されており、一般に試験を行うことが要求される対象例や症例数が多く、医薬品の開発プロセスは長期に亘ります。

医薬品の開発プロセスでは、臨床試験の試験相が第Ⅲ相まで(第Ⅰ相・第Ⅱ相で少数の健常人や患者に対して投与し安全性や有効性の評価を行い、第Ⅲ相で多数の患者に投与し、安全性や有効性の確認・実証を行う)に分かれるのに対し、当社グループが開発している医療機器では1つの相で比較的短期間に臨床試験が実施されます。

当社グループでは、現在、外科領域における吸収性局所止血材・粘膜隆起材・癒着防止材、組織再生領域における創傷治癒材・歯槽骨再建材を医療機器として開発し、当社グループ自ら製造販売承認を取得しています。なお、DDS領域における自己組織化ペプチド薬剤の担体については、医薬品としての開発となる可能性が高いこと、また、当社独自で薬剤や治療物質についての技術を取得するには時間を要すること等から、主に大手製薬企業への技術供与(ライセンス)を行うことでロイヤリティー等のライセンス収入の獲得を目指します。

 

当社の医療機器の研究開発プロセスの概要は以下のとおりです。

※画像省略しています。

 

 

各プロセス

内容

基礎研究

当社技術が適用可能で医療機器として開発可能なアプリケーションの探索及び製品スペックの最適化を行う。

前臨床試験

医療機器としての条件を満たす安全性、有効性を動物実験により検証を行う。

臨床試験

患者に対する医療機器の安全性、有効性について検証を行う。

製造販売承認申請

厚生労働省/PMDA、米国のFDA等の各国の許認可審査機関へ製造販売承認の申請を行う。

製造販売承認取得

厚生労働省/PMDAや各国の許認可審査機関から製造販売承認を得る。

保険収載

各健康保険の適用が可能な償還価格(*)を得る。

上市

医療機器製品として製造及び販売を行う。

 

 

C 医療製品開発の事業体制

当社グループでは、小規模・少人数の組織体制で医療製品開発を効率的に進めるため、外部機関を有効に活用して事業を遂行しています。研究開発においては、当社グループがMITから独占的実施権を得ている自己組織化ペプチド技術を基盤技術として、大学・研究機関等とMTA契約又は共同研究契約を締結し共同研究等によって応用技術の獲得に取り組んでいます。

 

         当社グループにおける基本的な医療製品事業の流れは以下のとおりです。

 

※画像省略しています。

 

(注)1 製品販売/代金回収を示しております。

2 契約一時金は提携契約締結時に収益となるものであり、マイルストーンペイメントは開発過程において提携契約に定める一定の段階を達成した場合に収益となるものです。

3 業務委託先とは受託臨床試験機関(以下、「CRO」という。)や薬事アドバイザー等です。

4 連結子会社である3-D Matrix,Inc.であります。

 

D MITとのライセンス契約について

当社が開発・販売している製品の基盤となる自己組織化ペプチド技術はMITの研究者の発明によるものであり、MITは、かかる技術に関連する技術を多数有しています。当社子会社は2003年4月にMITとの間でExclusive Patent License Agreementを締結し、MITから、全世界における医療・生命科学・美容の分野にかかる同特許の独占的実施権(再許諾権付)の許諾を受け、また、当社は2004年10月に当社子会社との間でLicense and Supply Agreementを締結し、当社子会社からアジア地域における同分野にかかる同特許の実施権の再許諾を受けています(なお、2007年10月の米国3-D Matrix,Inc.の当社子会社化に伴い、当社及び当社子会社は2009年4月に同契約について必要な改訂を行っております。)。なお、MITからライセンスを受けている特許以外にも、当社は、次世代の自己組織化ペプチドを独自に開発して、また、当社グループ独自にまた共同研究パートナーと共同で開発した自己組織化ペプチド技術を基盤とした応用技術に関し、当社グループ単独又は共同研究パートナーと共同で特許出願を行い、その中のいくつかについて特許登録を受けております。

 

(3) 製造

吸収性局所止血材の製造に関して、扶桑薬品工業株式会社との間での従前の製造受委託契約は一旦解消されましたが、改めて製造受委託契約を締結して継続して製造を委託しており、さらにドイツのPharmpure社との間で製造委受託契約を締結し、同社における製造も開始しております

 

(4) 販売

販売が先行している欧州地域においては、消化器内視鏡手技向けに、2019年6月にFUJIFILM Europe B.V.(以下、「FUJIFILM」という)とTDM-621の独占販売契約を締結し、同社において販売を開始しております。また、心臓外科手術領域及び耳鼻咽喉領域については主に直販体制による販売を行っております。

オーストラリアに関しては、当初現地代理店による販売を行いましたが、販売力強化のため、2019年4月期より、直販体制に移行しております。

日本においては、扶桑薬品工業株式会社との間で締結されていた独占販売権許諾契約の終了後、当社による直販による新たな販売体制を構築し、営業職員を採用するとともに内視鏡関連の販売に非常に強い代理店を23社、地域毎に選定し、代理店契約を締結し、各代理店との緊密な協業活動を行っております。

米国においては、耳鼻咽喉科領域を皮切りに消化器内視鏡領域等での販売拡大に向けて直販のための販売体制を強化しております。

 

 

(用語解説)

用語

意味・内容

自己組織化ペプチド

生理的条件下(中性pH、塩の存在)に置くと、ペプチド分子同士が規則的に集合し、ナノファイバーを形成するペプチド群。

アミノ酸

同一分子内にカルボキシル基(-COOH)とアミノ基(NH2)を有する化合物。

アルギニン(R)

タンパク質を構成する塩基性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。
略号はR又はArgで表記される。

アラニン(A)

タンパク質を構成する中性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。
略号はA又はAlaで表記される。

アスパラギン酸(D)

タンパク質を構成する酸性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。
略号はD又はAspで表記される。

ペプチド

アミノ酸が2個以上結合した化学物質(結合するアミノ酸の数によってジペプチド、ポリペプチド等とも呼ばれる)。

pH

酸性、アルカリ性を表す指標(水素イオン濃度)。

ゲル化

液体的な柔軟性を持ちつつ、個体のような弾力性を有する吸収性高分子素材であるゲルを生成すること。

細胞外マトリックス

細胞の外側にあるコラーゲン等の構造タンパク質、細胞の生着・増殖等を支える足場(Scaffold)材。

ADME試験

ADMEとはAbsorption(吸収)・Distribution(分布)・Metabolism(代謝)・Excretion(排泄)の頭文字をとった名称で、医薬品等が体内に服用されてから体外に排泄されるまでの経過のこと。ADME試験とは、体内にある薬又は同等物の体内での存在期間、排出過程を時間単位で追跡していく薬物の動態試験。

タンパク質分解酵素

タンパク質又はペプチドのペプチド結合を加水分解して、複数個のアミノ酸又はペプチドを生成する酵素であり、プロテアーゼ・ぺプチダーゼともいう。

DDS

必要な薬物を必要な部位で必要な長さの時間、作用させるための薬物送達システム(工夫や技術)。Drug Delivery Systemの略称。

担体

吸着や触媒活性を示す物質を固定する土台となる物質。

MTA契約

研究試料供給契約をいう。研究試料(試薬、遺伝子や細胞、実験動物等)の提供を行うための契約で、その試料の取扱や権利、免責等について規定する。

プレフィルドシリンジ

治療等に必要である医薬品が注射器(シリンジ)にあらかじめ充填され、すぐに使用できる状態のもの。

ブリスター包装

片面を比較的堅い材質の板状のものを使う薬の包装や厚紙を台紙とし商品名等を印刷し、商品を板状のプラスチックをバキュームフォーム等で成型し囲み込み台紙に接着した又はスライド式着脱可能な包装のこと。

止血剤製品群

外科手術等で生じた比較的狭い範囲での出血を止めるために使用されるもので、外科手術等において止血用途で使用される止血剤や組織接着剤等を含めた広義の製品群。

フィブリノゲン

血液凝固因子の一つで、線維素性の血漿蛋白原。

 

 

用語

意味・内容

510(k)

既存の医療機器と同等の機能を有する医療機器の登録制度。

粘膜下層剥離術

癌の周囲にヒアルロン酸等の薬液を注射し、十分な粘膜下膨隆を作ったうえで、さまざまな電気メスを用いて癌を少しずつ切りはがしていく早期胃癌や早期食道癌に対する比較的新しい手術方法。電気メスを用いて切り取るため、内視鏡的粘膜切除術とは異なり、切除する組織の大きさに制限がなく大きい病変を一括して切除することが可能。

内視鏡用粘膜下注入材

内視鏡的粘膜切除術や内視鏡的粘膜下層剥離術を実施する際に、病巣部を取りやすくするために、病巣部を隆起させるために使用する生理食塩液やヒアルロン酸等のもの。

血管内塞栓促進用補綴材

血管内に投与して塞栓を形成させ(血管を詰まらせ)、病巣部の血流を遮断することで病巣部の治療を意図する医療機器。

足場材

体内にあるコラーゲン等の細胞間マトリックスであり、細胞増殖のための足場となるもの。

自家骨

自分自身の骨。

他家骨

他人の骨。

GLP

医薬品・医療機器の開発のために行われる前臨床試験(動物試験等、特に安全性試験)のデータの信頼性を確保するための実施基準。
Good Laboratory Practiceの略称。

bFGF

塩基性線維芽細胞成長因子。創傷時における線維芽細胞増殖や血管新生に関与する。

PDGF

血小板由来成長因子。主に間葉系細胞(線維芽細胞、平滑筋細胞、グリア細胞等)の遊走及び増殖等の調節に関与する。

界面活性

少量で液体の表面張力を低下させる物質。

A6K

自己組織化ペプチドの一種で、アミノ酸配列AAAAAAKであるもの。水溶液中で粒子径が約50-100nmのナノチューブを形成する。

siRNA

21-23塩基対から成る低分子二本鎖RNA。siRNAはRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、伝令RNA(mRNA)を分解することによって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。

償還価格

健康保険の給付対象となる医療機器等について、厚生労働省が定めた価格。

 

 

23/07/27

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

①経営成績の分析

当社グループは米国Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学)の研究者の発明による自己組織化ペプチド技術を基にした医療製品の開発・製造・販売に引き続き注力しております。自己組織化ペプチド技術は幅広い応用が可能なプラットフォーム技術です。既に安全性が確認されており人への使用も広く認められていること、また、医療機器の適応拡大としての開発が可能なこと等から、当社においては幅広い領域での事業展開を行っております。

現時点では主に、外科領域、組織再生領域、ドラッグ・デリバリー・システム(以下、「DDS」という。)領域で事業を展開しております。外科領域においては、日米欧3極においてそれぞれ複数の製造販売承認を取得しており、規模の経済を獲得するための製造のスケールアップ等にも取り組んでおります。

今後は自己組織化ペプチドの技術優位を活用し、将来的にさらに大きなニーズが見込める組織再生領域やDDS領域において、3極展開の強みを活かしグローバル最適の開発・販売方針を採用してまいります。

 

 

[販売進捗の状況]

欧州における製品販売は、1,155,803千円となり前期比で40.8%増となりました。主要製品である消化器内視鏡領域の止血材は、既に顧客となっているKOL(Key Opinion Leader)と同じ病院に属する新規ユーザーをターゲットとすることで販売スピードを飛躍的に拡大させる計画としておりましたが、計画を大きく下回りました。特に欧州で最大規模の売上計画としていたドイツにおいて、2022年5月頃に想定していた既存代理店からのFUJIFILM EUROPE B.V.(以下、「FUJIFILM」という。)への販売代理店切替手続きが、想定以上時間がかかり2022年11月まで遅れました。協議中は既存代理店のコミットメントが大幅に下がったため、売上計画を大きく割り込むこととなり、欧州の計画未達の最大の原因事象となりました。しかしながら、ドイツでのFUJIFILM体制は2023年3月から本格稼働し、欧州全体としての第4四半期における過去最高の製品販売額達成に貢献いたしました。

心臓血管外科領域及び耳鼻咽喉科領域における直販体制については、販売チャネル拡大のために投資したコストが短期的には想定どおりの貢献を見せず、結果として欧州の営業赤字を拡大する結果となりました。今後当面は、貢献利益の高い消化器内視鏡領域にリソースを絞り、欧州単体での早期黒字化を狙ってまいります。

日本における製品販売は、457,251千円となり前期比で444.2%増となりました。販売開始以来継続して高い成長率を維持しており、オーストラリアの売上高を超え地域別第2位の規模まで成長いたしました。また、営業一人当たりの貢献利益は黒字化に転じており、キャパシティ拡大の準備が整いつつあります。

オーストラリアにおける製品販売は、376,515千円となり前期比で26.2%減となりました。前期から続く政府による選択的手術(命にかかわらない手術)の規制緩和が大幅に遅れ、規制の影響による一時的な病院のスタッフ不足により手術件数の回復も遅れました。また、2022年7月に実施された民間保険価格の見直しによる製品販売価格の低下の影響を受けておりましたが、2023年3月から製品販売価格がさらに20%下方に見直されたことにより、製品販売額は前期比を下回りました。それでも主要病院を中心に需要を取り込み、当期は月次で過去最高の販売本数を達成しております。2024年4月期以降は回復しつつある需要をさらに取り込み、収益の最大化を狙ってまいります。

米国における製品販売は、306,721千円となり前期比で489.5%増となりました。2022年7月から販売を開始した消化器内視鏡領域において順調な成長を維持しており、顧客獲得数及び顧客当たり売上高双方においてほぼ計画どおりの高い成長を達成する結果となりました。耳鼻咽喉領域においては、ターゲット施設の戦略変更の結果、アカウント獲得はでき始めているものの変更後のターゲット施設の購入行動の特性が想定と異なり、獲得に至るまでに想定以上の時間がかかっております。特定の病院では製品の使用量が増加しており、製品のポテンシャルは感じているものの直販体制への先行投資に対し大幅な売上増にはまだ時間を要する見込みです。これらを受けて2024年4月期は、営業リソースを消化器内視鏡領域に振り分け、同領域での成長を極大化する方針です。

このような結果、当期の業績については、止血材の製品販売は欧州1,155,803千円、日本では457,251千円、オーストラリアで376,515千円及び米国では306,721千円を計上し、その他地域等売上17,791千円を含めますと、事業収益2,314,083千円(前期比807,852千円増加)と前期比で53.6%増となりました。

費用面に関しては、外貨ベースのコストに対する営業体制の刷新に伴う費用増に加え、期中は一貫して円安傾向で為替相場が推移したことにより、円ベースでのコストが相当程度膨らんでおります。今後は販売領域の集中と選択を進め、確実な成果と確度の高い売上増が期待できる消化器内視鏡領域にさらにフォーカスし、現時点で利益への貢献が低いその他の領域については短期的には大幅縮小し、その分のコストを削減してまいります。これらにより、今後の利益水準を着実に改善させていく所存です。

この結果、経常損失2,356,571千円(前期は経常損失1,807,067千円)、親会社株主に帰属する当期純損失2,445,978千円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失1,894,757千円)となりました。

 

②財政状態の分析

当連結会計年度末における総資産は5,825,518千円(前連結会計年度末比214,795千円の増加)、総負債は5,300,746千円(同1,147,742千円の増加)及び純資産は524,771千円(同932,947千円の減少)となりました。

当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況に関する分析は以下のとおりです。

(流動資産)

当連結会計年度末における残高は5,667,419千円(同89,898千円の増加)となりました。これは主に、売掛金の増加196,613千円、棚卸資産の増加1,190,776千円及び前渡金の増加319,524千円がある一方で、現金及び預金の減少1,677,737千円があることによるものです。

(固定資産)

当連結会計年度末における残高は158,099千円(同124,896千円の増加)となりました。これは、投資その他の資産の増加によるものです。

(流動負債)

当連結会計年度末における残高は1,302,897千円(同435,800千円の増加)となりました。これは主に、短期借入金の増加100,000千円、未払金の増加243,598千円及び未払費用の増加58,982千円があることによるものです。

(固定負債)

当連結会計年度末における残高は3,997,849千円(同711,941千円の増加)となりました。これは主に、転換社債型新株予約権付社債の増加608,726千円によるものです。

(純資産)

当連結会計年度末における残高は524,771千円(同932,947千円の減少)となりました。これは主に、資本金及び資本剰余金のそれぞれ1,124,548千円の増加がある一方で、親会社株主に帰属する当期純損失による利益剰余金の減少2,445,978千円及び為替調整勘定の減少771,408千円があることによるものです。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,677,737千円減少し、1,170,903千円となりました。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果、減少した資金は4,585,082千円(前連結会計年度は2,903,268千円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失が2,443,874千円であり、増加原因として減損損失61,957千円、未払金の増加253,170千円や未払費用の増加52,058千円等があるものの、減少要因として為替差益996,613千円、売上債権の増加164,213千円、棚卸資産の増加1,054,315千円や前渡金の増加315,590千円等があることによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果、減少した資金は81,504千円(同79,861千円の減少)となりました。これは主に、長期前払費用の取得による支出49,334千円等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果、得られた資金は2,955,543千円(同4,663,641千円の増加)となりました。これは主に、株式の発行による収入304,100千円及び転換社債型新株予約権付社債の発行による収入2,550,000千円があることによるものです。

 

 

(2) 生産、受注及び販売の状況

 当社グループは、医療製品事業の単一セグメントであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

医療製品事業

1,723,812

+3.5

合計

1,723,812

+3.5

 

(注) 上記の金額は、製造原価によっております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

医療製品事業

2,322,207

+54.4

3,094

△5.9

合計

2,322,207

+54.4

3,094

△5.9

 

(注) 当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは主にFujifilm Europe B.V.等からの受注が増加したことによるものであります。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

医療製品事業

2,322,401

+54.2

合計

2,322,401

+54.2

 

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

Fujifilm Europe B.V.

404,652

26.8

709,762

30.6

Nicolai Medizintechnik GmbH

210,877

14.0

142,364

6.1

 

(注) 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは主にFujifilm Europe B.V.等への販売が増加されたことによるものであります。

 

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りを用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択、適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては第5経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)及び2.財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。

 

② 当連結会計年度の経営成績の分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①経営成績の分析」に記載のとおりです。

 

③ 当連結会計年度の財政状態の分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ②財政状態の分析」に記載のとおりです。

 

④ 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性について

  (資金の需要)

当社グループは、自己組織化ペプチド技術を基盤技術とした医療製品の開発・製造・販売を行っております。当社グループの資金需要のうち主なものは、研究開発費用、販売費及び一般管理費等の事業運営費用であります。

  (資金の調達及び流動性)

当社グループは医療製品事業においてグローバルに展開している止血材の製品販売による売上収入を計上してまいります。また親子会社間での研究開発成果の共有・事業運営上の効率化も進んでいることから、諸経費の節減等にも注力し販売費及び一般管理費の圧縮にも取り組んでまいります。

当社グループの事業運営及び研究開発を進めるための十分な資金確保に向けて、米国においてバイオ業界への投資に多くの実績を有する投資ファンドのハイツ・キャピタル・マネジメント・インクに対し、2022年10月に第6回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第33回新株予約権を発行し、2023年3月に第7回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第34回新株予約権を発行しました。これにより、当連結会計年度において、第6回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第33回新株予約権の発行により2,059,835千円、第7回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行並びに第34回新株予約権の発行及び一部権利行使により812,860千円を調達することができております。

また、2023年6月29日開催の取締役会において、2023年7月に第8回無担保転換社債型新株予約権付社債、第35回及び第36回新株予約権を発行することを決議しており、同日付で関連する契約を締結しました。これにより、第8回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行により660,660千円、また既発行の第34回新株予約権の残り全ての権利行使により342,600千円を、2023年7月18日までに調達することができており、第35回新株予約権の発行及び行使により2,290,555千円を調達する予定です。さらに、第36回新株予約権は、既発行分の第25回、第28回、第31回及び第33回新株予約権につき、現在の株価水準が各回の行使価額を下回り行使が進んでいないため、本資金調達に併せて買入消却を行い、同数を現在の株価水準に基づく行使価額で再度発行するものです。これにより、従前よりも今後の新株予約権の行使の蓋然性が高まり、十分な資金確保につながるものと考えております。

また、株式会社りそな銀行とコミットメントライン契約を締結しており、安定的な事業資金の確保に取り組んでおります。今後も引き続き、金融機関からの借入を含む様々な資金調達を検討し、継続的な財務基盤の強化に努めてまいります。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等及び(3)目標とする経営指標」に記載のとおりとなっております。当期の経営成績並びに研究開発活動の詳細につきましては「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」及び「第2 事業の状況 5研究開発活動 (2)研究開発活動」をご覧ください。