E25884 Japan GAAP
前期
10.2億 円
前期比
147.0%
株価
204 (03/31)
発行済株式数
62,684,509
EPS(実績)
-30.23 円
PER(実績)
--- 倍
前期
786.1万 円
前期比
110.2%
平均年齢(勤続年数)
46.8歳(1.3年)
従業員数
18人(連結:85人)
当社グループは、当社及び連結子会社9社で構成され、MITより自己組織化ペプチド技術に係る特許の独占的実施権の許諾を受けて、同技術を基盤技術とした製品の研究開発・製造・販売を実施することを目的とした医療製品事業を行っております。
当社グループは、医療製品事業の単一セグメントであり、医療製品開発・販売で構成されております。その内容は以下のとおりです。
(医療製品事業の構成)
(1)自己組織化ペプチド技術の特徴
当社グループの基盤技術となっている自己組織化ペプチド(*)のうち最も開発が先行し複数の製品を上市しているペプチドRADA16は、体を構成するアミノ酸(*)であるアルギニン(R)(*)、アラニン(A)(*)、アスパラギン酸(D)(*)からなる(RADA)の繰り返し配列である16残基のペプチド(*)であり、このペプチドを溶解した水溶液はpH(*)が酸性から中性になると速やかにゲル化(*)する性質を有しています。具体的には、分子同士が繊維状に結合(自己組織化)してナノファイバーを形成し、そのナノファイバーが絡み合うことでゲル化します。形成されたゲルは生体内で細胞が培養される環境に近く、コラーゲン等の細胞外マトリックス(*)に似た網目構造をしています。
自己組織化ペプチドは、生物由来の原材料を含まず化学合成により生産されることから、生物由来の原材料から生じるウイルス等の感染や未知の成分の混入の可能性がないため安全性が高く、ほぼ均一の品質で大量生産が可能な点が特長として挙げられます。自己組織化ペプチドは、これまでに実施したADME試験(*)において、特定の臓器に蓄積されることなく、生体内のタンパク質と同様にタンパク質分解酵素(*)により分解され、30日程度で体外に排出されることが確認されています。
(2)医療製品開発
医療製品開発は、自己組織化ペプチド技術を基盤技術として外科領域、組織再生領域、DDS(*)領域において医療機器及び医薬品の開発を行う事業です。
主要な開発パイプラインのうち、外科領域では吸収性局所止血材・粘膜隆起材・癒着防止材、組織再生領域では歯槽骨再建材・創傷治癒材についてはそのいずれについても、医療機器として自ら開発し製造販売承認を取得する方針ですが、地域によっては薬事規制、市場動向、当社グループのリソース等を勘案して現地企業等と提携することでの製品化も実施していく方針です。販売についても製品、地域に応じて、代理店を通じての直接販売及び販売パートナーに対する販売権許諾の双方の戦略を適切に選択しあるいは組み合わせていく方針です。DDS領域では、自己組織化ペプチドを薬剤の担体(*)とし、各薬剤と組み合わせた製品化に向け取り組んでおりますが、医薬品として開発することとなる可能性が高く当社独自で薬剤や治療物質について技術を取得するには時間を要することからも、製薬会社等に技術供与(ライセンス)を行うことによりロイヤリティー等のライセンス収入の獲得を目指してまいります。
その他当社グループでは、大学等の研究機関とのMTA契約(*)及び共同研究契約に基づく共同研究によって、自己組織化ペプチドを基盤とした応用技術の獲得に取り組んでいます。
A 各領域及び各パイプラインの概要
(A) 外科領域
当社は、外科領域において、吸収性局所止血材、粘膜隆起材、癒着防止材の開発パイプラインを有しています。
a)吸収性局所止血材
当社は、自己組織化ペプチドであるRADA16を基に、出血部に塗布して用いる外科手術用の吸収性局所止血材(開発コード:TDM-621)(以下「TDM-621」という。)の開発を進めています。RADA16の水溶液は、血液等の体液と接触するとpHが中性化され、自己組織化してナノファイバーを形成しゲル化します。ゲルは体組織との接触面を隙間なく被覆し、被膜が形成されて表面皮膜及び血管浅部を物理的に閉鎖し、血管深部では血液凝固が生じることで止血されます。
<自己組織化ペプチドのゲル化形成>
自己組織化前のペプチド分子
<止血方法 概略図>
TDM-621は、RADA16の水溶液をシリンジに無菌充填したプレフィルドシリンジ(*)形態で、ブリスター包装(*)された製品であるため、手術現場では、パックを開封してすぐに使用することが可能であること、使用前の調製の必要がないなど適用量が調整しやすく操作性に優れていることといった特長を有しています。また、澄明な液体形状であることから術野を妨げることがなく、カテーテルや組織の狭部への適用も容易です。
既存の止血剤製品群(*)は、糊状・シート状・粉末状等の形状がありますが、主として糊のように機能して接着することにより止血効果を得るものであるのに対し、TDM-621は物理的に表面皮膜及び血管浅部を閉鎖して止血するものであるため、既存製品と異なり接着による待ち時間、圧迫による圧着時間を短縮することが可能です。また、既存製品は、一度組織に接着すると除去が困難であるのに対し、TDM-621は、余剰部分を生理食塩水により洗い流すことで容易に除去することができます。既存製品の多くは、フィブリノゲン(*)等の人や動物の血液から生成又は動物の皮膚から生成したコラーゲン等を原材料としており、これらの原材料から生じるウイルス感染等のリスクは完全には否定できないことから、生物由来製品又は特定生物由来製品として指定されており、医療現場においては、① 患者(又はその家族)への適切な説明、② 使用記録の作成と保管、③ 感染症等情報の報告等における管理体制の厳格化が要請されます。これに対してPurastatは、生体内に存在するアミノ酸を化学的に合成したもので生物由来の細胞。組織等を原材料として含まないため、これらの原材料から生じるウイルス等の感染や未知の成分の混入によるリスクがありません。また、生物由来製品又は特定生物由来製品に求められるプロセスが不要なため、TDM-621は患者と医療従事者の負担の軽減にも貢献できるものと考えられます。
(研究開発の状況)
TDM-621の日本での製造販売承認については、2019年10月に消化器内視鏡治療における漏出性出血に対する止血を対象として製造販売承認申請を行い、2020年7月に製造販売承認を取得し、2021年12月からは保険適用が開始されました(製品名はピュアスタット)。
また、当社は、TDM-621の海外展開に向け開発を進めております。欧州においては、2014年1月にCEマーキングの指令適合について第三者認証機関から認証を受け、EU加盟国において製品販売を開始しております。アジア・オセアニア・南米地域の主要国では、CEマーキングを活用し、登録承認を取得し、製品販売を開始しております。米国においてはまず消化器内視鏡の領域において、510(k) (*)のプロセスにて承認申請を行い、2021年6月に承認を取得し、欧州において製造を開始しており、2023年4月期からの販売を予定しております。
b)粘膜隆起材
当社は、自己組織化ペプチドを基に、消化器内視鏡治療による胃癌や食道癌等の粘膜切除術や粘膜下層剥離術(*)において、腫瘍部位の粘膜隆起を形成する内視鏡用粘膜下注入材(*)(開発コード: TDM-644)(以下「TDM-644」という。)の開発を進めています。胃や食道等の早期癌治療において行われる内視鏡による粘膜切除術や粘膜下層剥離術では、粘膜下層に生理食塩水や内視鏡用粘膜下注入材を病変部の粘膜下層に注入し、病変部を隆起させ、隆起させた根元部分に細いワイヤーをかけて締めたうえで高周波を流して焼き切り(内視鏡的粘膜切除術)、又は隆起させた病変部を粘膜下層の深さで電気メスにより引き剥がし(内視鏡的粘膜下層剥離術)、病変部を取り除きます。この病変部を隆起させるために用いられる内視鏡用粘膜下注入材として開発しているのがTDM-644であり、血液等の体液と接触することで中性化しゲル化する特徴から、必要な隆起を形成するとともに、副次的には止血効果も有することが動物実験により確認されています。
<粘膜隆起方法 概略図>
(研究開発の状況)
本製品は治験を必要としない改良医療機器での製造販売承認を申請し、2020年12月に2021年5月に製造販売承認を取得しております。2021年12月には販売用製品の製造を開始しました。現在保険適用に向けた準備を進めており、今後は早期に止血材とのクロスセルができる体制を構築してまいります。
c)後出血予防材
当社グループにおいては、TDM-621について治療後に起こる後出血について医療機器としての承認を得るべく開発を進めています。治療時に後出血が生じると、再手術が必要となることから患者及び医療機関双方の負担が大きく、強いニーズがあります。消化器内視鏡治療における出血はおおよそ5%程度であるのに対し、治療後に後出血が懸念されるリスクの高い患者・手技はおおよそ30%あるとされており、本適応の追加により当社製品が獲得可能な市場は数倍に拡大する可能性があります。
(研究開発の状況)
欧州においては、消化器内視鏡治療時に生じる後出血予防効果に関して、2018年12月に適応追加が承認されております。また、オーストラリアにおいても後出血予防効果に関して、2019年9月に適応追加が承認されました。さらに、米国においては2021年6月に止血材の承認と合わせて後出血予防の適応も同時に承認を受けております。
d)癒着防止材
RADA16について、止血材だけではなく、癒着防止材、創傷治癒材としての開発も進めております。米国においては耳鼻咽喉科領域においてすでに販売承認を受け、販売を介しておりますが、今後、はるかに大きな市場が存在する産婦人科等の領域に適応拡大をすべく、日本と欧州双方で医師主導治験の準備を進めております。
(研究開発の状況)
米国においては2019年4月に耳鼻咽喉科領域において、FDAより癒着防止材兼止血材「PuraSinus」の販売承認を受けております。本製品は、癒着防止、止血、創傷治癒を同時に行える現状唯一の製品であることから、鼻甲介切除術や鼻中隔形成術等において高い臨床的価値を提供でき得るものと期待しております。特に術後のパッキング(鼻に詰め物をする処置)は患者のQOLを著しく悪化させているといわれておりますが、当社製品によってパッキングを極力減らすことが可能となり、患者のQOLを重視する米国市場では強いニーズが期待できます。
e )次世代止血材
RADA16とは異なる、当社が独自に開発し特許を保有する新規ペプチド配列を用いた開発品です。現在の止血材より止血効果に優れ、原価を大幅に削減できる等の優位性があると考えられることから、将来的に主力製品として市場に供給すべく開発を進めております。
(研究開発の状況)
欧州においては、2021年5月に治験計画届の承認がなされ、2021年7月より脳神経外科を対象とした治験を開始しております。本試験開始前の探索的臨床試験については、2021年12月に全ての患者への投与が完了し、安全性が確認されたことから、本試験への移行が開始されました。
f)血管塞栓材
当社は、自己組織化ペプチドであるRADA16を基に、肝動脈塞栓術及び子宮動脈塞栓術における塞栓物として用いるための血管内塞栓促進用補綴材(*)(開発コード:TDM-631)(以下「TDM-631」という。)の研究開発を進めています。肝臓癌や子宮筋腫に対する肝動脈塞栓術及び子宮動脈塞栓術では、カテーテルを通じて動脈内に塞栓物を注入し、血管内腔を物理的に塞栓することで、腫瘍の栄養血管である動脈を塞いで腫瘍への栄養を絶ち、腫瘍を死滅させます。TDM-631は、血液と接触するとゲル化するため、カテーテルから動脈内に注入されると血管内腔を塞ぐことが可能であり、当社は新たな塞栓物としてTDM-631の開発を進めております。
(研究開発の状況)
当社は、前臨床試験により、TDM-631を造影剤に溶解しカテーテルを通して血管内に注入するとゲル化することや、ゲル化したTDM-631はX線カメラにより視認可能なことを確認しております。また、TDM-631の生体内における血管塞栓効果をみるために、動物モデルを用いた実験を行っております。
(B) 組織再生領域
自己組織化ペプチドは細胞の増殖を支える細胞外マトリックスに似た物理構造を有することから、当社グループでは、組織再生領域において創傷治癒材、歯槽骨再建材を開発パイプラインとして有しております。また当社グループは、当該パイプライン以外に、歯槽骨以外の骨の再建、軟骨・腱の再生、心筋の再生等に関する研究を行っております。
a)直腸における粘膜炎の創傷治癒材
当社グループは、直腸における粘膜炎により損傷した粘膜組織に塗布することで粘膜組織上に保護膜を形成し、二次炎症の防止や痛みの軽減に加え創傷治癒に最適な湿潤環境を維持する創傷治癒材を開発しております。
(研究開発の状況)
米国において、2022年4月に直腸の粘膜炎の創傷治癒に対する501(k)の承認を取得いたしました。この承認は直腸の粘膜炎などの治癒に幅広く使える可能性がある承認であり、止血材よりさらに付加価値の高い製品としての販売が可能となります。例えば一つの適応事例としての放射線性直腸炎は、前立腺がんや子宮がん等への放射線療法に起因する副作用で、大腸粘膜の炎症を高頻度で引き起こします。また、2割程度の患者は慢性的な下血、頻繁な排便、激しい腹痛等の晩期障害に悩まされており、有効な治療法の確立が望まれております。
この領域で早急に成長を蓄積し、さらに巨大な市場である炎症性腸疾患(IBD)への適応拡大を進めてまいります。IBDは消化管の難治性炎症で、原因不明で一度発症すると再燃と寛解を繰り返す難治性疾患であり、日本においては特定疾患として指定されています。IBDはグローバルに数兆円の顕在市場が存在します。現在日米欧にて複数の医師主導治験を計画し、早期にPOC(Proof Of Concept)を取得したい考えであります。
b)創傷治癒材
当社グループは、皮膚(表皮、表皮・真皮)からの出血を迅速に止血する局所止血材、皮膚の創傷部の創傷治癒に適切な湿潤環境を維持する、創傷治癒材(開発コード:TDM-511)(以下「TDM-511」という。)を開発しております。
(研究開発の状況)
2014年10月に医療機器として市販前届510(k)を米国FDAに申請し、切り傷、すりむき、創傷、I度熱傷及び医師指導の下での表皮から真皮層までの皮膚創傷(圧迫による褥瘡、下肢潰瘍、糖尿性病性潰瘍、手術痕等)を適用として2015年2月に販売承認を得ました。創傷治癒材としての活用に加え、他薬剤とのコンビネーションによる治療効果の増大が期待できることから、熱傷治療、皮膚がん治療などへの応用研究を進めていく計画です。また、米国において巨大な市場である美容整形分野にアクセスするために、現在米国FDAに対して適応の拡大を申請しております。
c)歯槽骨再建材
当社グループは、歯周病による歯槽骨の退行で歯が脱落した場合等に、インプラント術前にインプラント固定に充分な骨量を確保するために行う歯槽骨再建術において、骨再生のための足場材(*)となる製品(開発コード:TDM-711)(以下「TDM-711」という。)の開発を行っています。
ゲル化された自己組織化ペプチドは、ナノファイバーによる3次元構造が維持され、生体内で細胞が増殖する環境に近く、生体組織の再生をサポートする特性を有しています。TDM-711は、骨量不足箇所に充填されると、かかる特性により足場材として骨再生を促進します。米国でのインプラント治療における歯槽骨再建術では、代替骨を用いる施術も少なくなく、自家骨(*)や他家骨(*)、人工骨を用いた再建術が行われていますが、当社グループは、他家骨や人工骨を用いた再建術において、その生着を高めるためにTDM-711を用いることの開発を進めております。
(研究開発の状況)
当社グループは、GLP(*)下において歯槽骨に欠損がある状態でのTDM-711の有効性の確認試験を実施し、通常の欠損群に比べ有意な骨再生が認められたため、その後も研究開発を進めてまいりました。当社グループは、TDM-711につき、2012年2月には、米国ハーバード大学の医学部・歯学部の付属研究所であるフォーサイス・インスティテュート(Forsyth Institute)において、臨床試験を開始し、プロトコルで規定した15症例の施術および経過観察が完了しております。骨再生に有効なデータを得ておりますが、プロトコルに改善の余地があったため、2018年4月期に症例を追加して現在も臨床試験を継続しており、今後も製品化に向けた開発を進めてまいります。
(C) DDS領域
当社は、DDS領域において、自己組織化ペプチドをDDSにおける薬剤や治療物質のキャリア担体として活用するための研究開発を行っており、bFGF(*)・PDGF(*)等のタンパク質の徐放においても複数の有効性試験を実施しております。中でも、ハイドロゲルを形成する自己組織化ペプチドとは異なり界面活性(*)作用を持つペプチド(A6K(*))については、溶液中でナノチューブを形成する性質を有するため、当社は、癌細胞へのsiRNA(*)の導入試験において、かかる性質を活かし、ナノチューブに内包された形で癌細胞膜透過性をもたらし、導入効率を高めていく研究を行っております。
(研究開発の状況)
国立がん研究センターとの「RPN2標的核酸医薬によるトリプルネガティブ乳がん治療」共同プロジェクトにおいて、界面活性剤様ペプチドA6Kを核酸医薬のDDSとして提供しておりました。当社は、国立がん研究センターと共同でがん幹細胞に対する治療薬や診断方法の特許を取得しており、同分野や関連分野の共同研究/共同開発に向けた取り組みを進めております。
広島大学との共同プロジェクトにおいても、悪性胸膜中皮腫を対象疾患とする革新的抗腫瘍核酸医薬にA6Kを提供し共同開発を進めておりましたが、広島大学の田原栄俊教授により新たに設立された株式会社PURMX Therapeuticsが今後の製品開発を主導することとなりました。当社も同社株式を一部取得し、今後も引き続き共同で製品開発を進めてまいります。2022年1月には、医師主導治験(第I相)において第一症例の組み入れが実施され、臨床試験が開始されております。
核酸医薬へのDDSとして当社製品がヒト臨床で使用されるのはこれで2件目となります。今後の核酸医薬の広まりとともに、当社の技術が核酸のデリバリーのオプションとして更なる広がりをみせる可能性が出てきております。
B 医療製品の開発プロセス
当社グループが自社による開発や製造販売承認取得を目指している医療製品の多くは、医療機器に分類されます。
新たに医療機器や医薬品を開発する場合、その開発プロセスは、基礎研究、前臨床試験、臨床試験、製造販売承認申請という基本的な流れは共通ですが、医薬品の場合には臨床試験が多段階に設定されており、一般に試験を行うことが要求される対象例や症例数が多く、医薬品の開発プロセスは長期に亘ります。
医薬品の開発プロセスでは、臨床試験の試験相が第Ⅲ相まで(第Ⅰ相・第Ⅱ相で少数の健常人や患者に対して投与し安全性や有効性の評価を行い、第Ⅲ相で多数の患者に投与し、安全性や有効性の確認・実証を行う)に分かれるのに対し、当社グループが開発している医療機器では1つの相で比較的短期間に臨床試験が実施されます。
当社グループでは、現在、外科領域における吸収性局所止血材・粘膜隆起材・癒着防止材、組織再生領域における創傷治癒材・歯槽骨再建材を医療機器として開発し、当社グループ自ら製造販売承認を取得しています。なお、DDS領域における自己組織化ペプチド薬剤の担体については、医薬品としての開発となる可能性が高いこと、また、当社独自で薬剤や治療物質についての技術を取得するには時間を要することなどから、主に大手製薬企業への技術供与(ライセンス)を行うことでロイヤリティー等のライセンス収入の獲得を目指します。
当社の医療機器の研究開発プロセスの概要は以下のとおりです。
当社グループでの医療製品開発における、主要なパイプラインの進捗状況は以下のとおりです。
(主要なパイプライン開発の状況)
(注)1 吸収性局所止血材
欧州:2014年1月にCEマーキング指令適合を受け2015年4月期に製品販売を開始。
日本:2020年7月に製造販売承認を取得、2022年4月期に製品販売を開始。
米国:2021年6月に510(k)での承認を取得。
韓国:CEマーキングでの製品登録申請済、2023年4月期での承認取得及び製品販売開始を予定。
南米地域(ブラジル、メキシコ、コロンビア等):2016年4月期に各国での製品登録が完了。2017年4月期より製品販売を開始。
他アジア・オセアニア地域:香港、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、オーストラリアタイの各国にて2017年4月期に製品販売を開始。
2 癒着防止材
米国において2019年4月に耳鼻咽喉科領域においてFDA(米国食品医薬品局)へ市販前届510(k)申請による承認取得。適応拡大を申請中。
3 歯槽骨再建材
米国において2012年2月に臨床試験を開始、2018年4月期に症例を追加し継続中。
4 創傷治癒材
2014年10月にFDA(米国食品医薬品局)へ市販前届510(k)を申請、2015年2月に同承認を取得。2022年4月に直腸における粘膜炎についてFDAより承認を取得。
5 DDS領域
DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)領域において当社ペプチドを医薬品等のキャリアとする大学等の研究機関との共同開発を行い、当社単独での事業化ではなく大手製薬企業への技術供与(ライセンス)を目標。
C 医療製品開発の事業体制
当社グループでは、小規模・少人数の組織体制で医療製品開発を効率的に進めるため、外部機関を有効に活用して事業を遂行しています。研究開発においては、当社グループがMITから独占的実施権を得ている自己組織化ペプチド技術を基盤技術として、大学・研究機関等とMTA契約又は共同研究契約を締結し共同研究等によって応用技術の獲得に取り組んでいます。
当社グループにおける基本的な医療製品事業の流れは以下のとおりです。
(注)1 製品販売/代金回収を示しております。
2 契約一時金は提携契約締結時に収益となるものであり、マイルストーンペイメントは開発過程において提携契約に定める一定の段階を達成した場合に収益となるものです。
3 業務委託先とは受託臨床試験機関(以下「CRO」という。)や薬事アドバイザー等です。
4 連結子会社である3-D Matrix,Inc.であります。
D MITとのライセンス契約について
当社が開発・販売している製品の基盤となる自己組織化ペプチド技術はMITの研究者の発明によるものであり、MITは、かかる技術に関連する技術を多数有しています。当社子会社は2003年4月にMITとの間でExclusive Patent License Agreementを締結し、MITから、全世界における医療・生命科学・美容の分野にかかる同特許の独占的実施権(再許諾権付)の許諾を受け、また、当社は2004年10月に当社子会社との間でLicense and Supply Agreementを締結し、当社子会社からアジア地域における同分野にかかる同特許の実施権の再許諾を受けています(なお、2007年10月の米国3-D Matrix,Inc.の当社子会社化に伴い、当社及び当社子会社は2009年4月に同契約について必要な改訂を行っております。)。なお、MITからライセンスを受けている特許以外にも、当社は、次世代の自己組織化ペプチドを独自に開発して、また、当社グループ独自にまた共同研究パートナーと共同で開発した自己組織化ペプチド技術を基盤とした応用技術に関し、当社グループ単独または共同研究パートナーと共同で特許出願を行い、その中のいくつかについて特許登録を受けております。
(3) 製造
吸収性局所止血材の製造に関して、扶桑薬品工業株式会社との間での従前の製造受委託契約は一旦解消されましたが、改めて製造受委託契約を締結して継続して製造を委託しており、さらにドイツのPharmpure社との間で製造委受託契約を締結し、同社における製造も開始しております。
(4) 販売
販売が先行している欧州地域においては、消化器内視鏡手技向けに、2019年6月にFUJIFILM Europe B.V.(以下「FUJIFILM」という)とTDM-621の独占販売契約を締結し、同社において販売を開始しております。また、心臓外科手術領域及び耳鼻咽喉領域については主に直販体制による販売を行っております。
オーストラリアに関しては、当初現地代理店による販売を行いましたが、販売力強化のため、2019年4月期より、直販体制に移行しております。
日本においては、扶桑薬品工業株式会社との間で締結されていた独占販売権許諾契約の終了後、当社による直販による新たな販売体制を構築し、営業職員を採用するとともに内視鏡関連の販売に非常に強い代理店を23社、地域毎に選定し、代理店契約を締結し、各代理店との緊密な協業活動を行っております。
米国においては、耳鼻咽喉科領域を皮切りに消化器内視鏡領域等での販売拡大に向けて直販のための販売体制を強化しており、2023年4月期より相当の規模での販売拡大を目指しております。
その他の地域においては、アジア地域を中心に、韓国をはじめとする多くの地域において現地パートナーとの独占販売契約を締結し、地域内での独占販売権を許諾しております。また、2013年3月には、医療機器の品質マネジメントシステムのための国際標準規格ISO13485の認証を取得しており、各国への輸出を実施しております。
(用語解説)
①経営成績の分析
当社グループは米国Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学)の研究者の発明による自己組織化ペプチド技術を基にした医療製品の開発・製造・販売に引き続き注力しております。自己組織化ペプチド技術は幅広い応用が可能なプラットフォーム技術です。既に安全性が確認されており人への使用も広く認められていること、また、医療機器の適応拡大としての開発が可能なこと等から、当社においては幅広い領域での事業展開を可能にしております。
現時点では主に、外科領域、組織再生領域、ドラッグ・デリバリー・システム(以下「DDS」という。)領域で事業を展開しております。外科領域においては、日米欧3極においてそれぞれ複数の承認済製品を獲得しており、規模の経済を獲得するための製造のスケールアップ等にも取り組んでおります。
今後は自己組織化ペプチドの技術優位を活用し、将来的にさらに大きなニーズが見込める組織再生領域やDDS領域において、3極展開の強みを活かしグローバル最適の開発・販売方針を採用してまいります。
[販売進捗の状況]
欧州における製品販売は、820,592千円となり前年同期比で79.7%増と拡大し引き続き高い成長性を維持しております。当第4四半期は、年末より蔓延したCOVID-19のオミクロン株の影響を受けたものの、一時的ではありますが単月黒字を達成し確実に成長しております。このままの成長性を維持し、2023年4月期の通期黒字化を目指します。
オーストラリアにおける製品販売は、510,430千円となり前年同期比で3.1%増となりました。当期に入りCOVID-19の感染者数が大幅に増加し、さらに、2021年12月以降のオミクロン株の急拡大により病院に対する規制が強化され、当社が狙う選択的手術(命に関わらない手術)が大幅に延期されております。このため当社の販売活動も大きな制約を受けており、成長速度が一時的に鈍化しました。しかしながら、こうした状況は一時的であり選択的手術といえども長期に延期することは難しいことから、2023年4月期にむけて需要は回復することを見込み高成長の軌道に戻る準備を進めております。
米国では、耳鼻咽喉科領域の癒着防止材兼止血材「PuraSinus」の販売を直販体制で開始しました。当初アカウント開拓は順調であったもののオミクロン株の急拡大により病院の業務が逼迫し、当社が狙う選択的手術が大幅に減少しました。このため、当期下期以降ターゲットをCOVID-19の影響を受けにくい市場セグメントにシフトし、将来的に十分な使用件数を確保できるよう顧客ポートフォリオの入れ替えを図っております。本施策の成果は2023年4月期第1四半期に現れると見込んでおります。
日本においては、2021年12月から内視鏡用止血材の保険適用が開始となりました。病院が費用負担なしで使用できることとなったため、引き続き強い引き合いを頂いている状況です。その効果もあいまって顧客獲得は計画を上回るペースで進んでおります。現時点で2023年4月期のターゲット施設の多くが既にトライアルに進んでいる状況であり、これらの施設の早期顧客化に向けて引き続き営業力を強化してまいります。
このような結果、当期の業績については、止血材の製品販売は欧州で820,592千円、オーストラリアで510,430千円、米国で52,028千円及び日本では84,023千円を計上し、その他地域39,155千円を含めますと、事業収益1,506,230千円(前年同期比481,855千円増加)と前年同期の47.0%増となりました。
費用面に関しては、日本及び米国での販売開始に伴い、営業体制確立等のために相当額の先行費用を計上しております。移動平均法による見かけ上の原価が想定のスピードで下がらない等費用削減施策に遅れが出ており、全体として費用は増加しております。
この結果、経常損失1,807,067千円(前年同期は経常損失1,900,344千円)、親会社株主に帰属する当期純損失1,894,757千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失2,012,615千円)となりました。
②財政状態の分析
当連結会計年度末における総資産は5,610,723千円(前連結会計年度末比2,102,436千円の増加)、総負債は4,153,004千円(同2,304,545千円の増加)及び純資産は1,457,719千円(同202,109千円の減少)となりました。
当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況に関する分析は以下のとおりです。
当連結会計年度末における残高は5,577,520千円(同2,101,534千円の増加)となりました。これは主に、現金及び預金の増加1,710,841千円、売掛金の増加273,030千円及び棚卸資産の増加223,370千円がある一方で、前渡金の減少126,920千円があることによるものです。
当連結会計年度末における残高は33,203千円(同901千円の増加)となりました。これは主に、投資その他の資産に含まれる敷金の増加1,341千円によるものです。
当連結会計年度末における残高は867,096千円(同93,443千円の増加)となりました。これは主に、未払金の増加91,058千円及び未払法人税等の増加23,936千円がある一方で、未払費用の減少18,592千円及び短期借入金の減少7,600千円があることによるものです。
当連結会計年度末における残高は3,285,907千円(同2,211,102千円の増加)となりました。これは主に、転換社債型新株予約権付社債の増加2,215,093千円によるものです。
当連結会計年度末における残高は1,457,719千円(同202,109千円の減少)となりました。これは主に、資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,238,081千円の増加がある一方で、親会社株主に帰属する当期純損失による利益剰余金の減少1,894,757千円及び為替換算調整勘定の減少808,195千円があることによるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,710,841千円増加し、2,848,641千円となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。
当連結会計年度における営業活動の結果、減少した資金は2,903,268千円(前連結会計年度は3,249,736千円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失が1,893,547千円であり、増加原因として減損損失92,239千円、前渡金の減少127,087千円や未払金の増加67,335千円等があるものの、減少要因として為替差益861,101千円、売上債権の増加255,916千円や棚卸資産の増加195,015千円等があることによるものです。
当連結会計年度における投資活動の結果、減少した資金は79,861千円(同160,321千円の減少)となりました。これは主に、長期前払費用の取得による支出67,702千円によるものです。
当連結会計年度における財務活動の結果、得られた資金は4,663,641千円(同3,462,805千円の増加)となりました。これは主に、株式の発行による収入2,094,883千円及び転換社債型新株予約権付社債の発行による収入2,565,093千円があることによるものです。
当社グループは、医療製品事業の単一セグメントであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額は、製造原価によっております。
当連結会計年度における受注実績を示すと、次のとおりであります。
(注) 当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは主に医薬製品事業においてFujifilm Europe B.V.、St. John of God Hospital及びNicolai Medizintechnik GmbH等への販売が増加したことによるものであります。
当連結会計年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。
(注)1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
2 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは医薬製品事業においてFujifilm Europe B.V.、St. John of God Hospital及びNicolai Medizintechnik GmbH等への販売が増加されたことによるものであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りを用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択、適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては第5経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)及び2.財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①経営成績の分析」に記載のとおりです。
③ 当連結会計年度の財政状態の分析
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ②財政状態の分析」に記載のとおりです。
④ 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性について
(資金の需要)
当社グループは、自己組織化ペプチド技術を基盤技術とした医療製品の開発・製造・販売を行っております。当社グループの資金需要のうち主なものは、研究開発費用、販売費及び一般管理費等の事業運営費用であります。
(資金の調達及び流動性)
当社グループは医療製品事業においてグローバルに展開している止血材の製品販売による売上収入を計上してまいります。また親子会社間での研究開発成果の共有・事業運営上の効率化も進んでいることから、諸経費の節減等にも注力し販売費及び一般管理費の圧縮にも取り組んでまいります。
また、当社グループの研究開発及び事業運営を進めるための十分な資金確保に向けて、米国においてバイオ業界への投資に多くの実績を有する投資ファンドのハイツ・キャピタル・マネジメント・インクに対し、2021年8月に第4回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第30回新株予約権を発行し、2022年4月に第5回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第31回新株予約権を発行しました。これにより、当連結会計年度において、第4回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行並びに第30回新株予約権の発行及び全ての権利行使により2,298,805千円、第5回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第31回新株予約権の発行により1,771,928千円、また既発行分の第27回新株予約権の残り全ての権利行使により619,500千円を調達することができております。今後も既発行分の新株予約権も含めて順調に行使が進むものと考えております。
しかしながら、今後も新株予約権の行使に関しては株価下落などにより当初想定した資金調達を確保できないリスクもあります。そのため、当該リスクに備えるためにも新たな資金調達手段の検討を進めてまいります。その他の機動的な資金調達手段として、株式会社りそな銀行との間で借入コミットメントライン契約を締結しております。
⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等及び(3)目標とする経営指標 に記載のとおりとなっております。当期の経営成績並びに研究開発活動の詳細につきましては「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」及び「第2 事業の状況 5研究開発活動 (2)研究開発活動」をご覧ください。