E02688 Japan GAAP
前期
5,452.0億 円
前期比
107.6%
株価
1,298 (07/12)
発行済株式数
171,459,479
EPS(実績)
64.79 円
PER(実績)
20.03 倍
前期
573.5万 円
前期比
100.3%
平均年齢(勤続年数)
40.7歳(13.4年)
従業員数
4,388人(連結:38,117人)
当社グループは提出会社(以下「当社」という。) ならびに子会社162社および関連会社9社で構成されており、医療機器、医薬品および医療用硝子製品等の製造販売を主として行っております。
当社グループの事業にかかる位置づけおよびセグメントとの関連は次のとおりであります。
以上に述べた事項の概要図は次のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による各種制限の緩和により緩やかに持ち直す動きが見られましたが、原材料価格の高騰やエネルギー価格の変動は継続しており、金融政策の動向も気になる中で完全な回復には至らず先行き不透明な状況で推移いたしました。一方で、世界経済は高インフレに対する各国の金融引き締めに加えて、欧州地域の地政学的リスクと中国経済の不安定さもあり、多くの不確実性が残る状況での推移となりました。
医療機器、医薬品業界におきましては、物資の高騰や医療従事者の慢性的な人手不足等、各医療機関の経営環境はより一層厳しさが増しつつあります。さらには医療機器、医薬品の安全性に対する規制はより強化される傾向にあり、関連当事者のコンプライアンス強化がより一層求められるようになりました。その一方で、中長期的には高齢化の進展、新興国における医療インフラの整備、先進国における医療デジタル化の推進など、多くの成長要因を含んでおり、安定的な成長が引き続き見込まれます。このような状況下において、当社グループは、すべての人が適切な医療を受けることができる持続可能な世界を実現すべく、より安全な医療環境を整備するための一翼を担い、医療機器・医薬品メーカーとしての責任と役割を果たしてまいりました。
当連結会計年度における連結売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されるなか、主力の透析、ホスピタル関連製品の需要機会を逃すことなく販売、プロモーション活動に注力したことで堅調に推移しました。特に海外売上高においては、為替相場が期間を通じて円安方向で推移したことが売上高増加を支えました。国内においては、2022年12月に販売を開始したエソメプラゾールが当期の売上高増加に大きく寄与しました。一方で、医薬品の供給不足問題はいまだ継続しており、安定供給在庫の確保まで一部製品の出荷制限を余儀なくされたことや、次年度の薬価改定を控えての買い控えもあるなど、期末付近にかけて多少減速しました。この結果、連結売上高は前期比7.6%増加の5,867億85百万円となりました。
利益面におきましては、原材料やエネルギー価格の高騰および円安による輸入資材のコストアップなど、厳しい環境下にありましたが、販売価格の適正化と生産数量増加によるコスト削減により利益を確保しました。また、新型コロナウイルス感染症による物流の混乱が収束し、海上運賃は大幅に改善しました。運送費の減少と治験費用の減少が販売費及び一般管理費の増加を抑制し、営業利益は前期比で大きく向上しました。一方で、下半期から終盤にかけては、大館工場で新しく完成した第7工場でのダイアライザの新生産ラインの稼働開始や医薬品の新規設備の稼働開始による減価償却費の増加、品質管理体制の強化に伴う不適合品の在庫廃棄の増加などのコストアップ要因も増加し、営業利益は前期比26.0%増加の223億35百万円となりました。
経常利益は、金利上昇の影響を受け、利息費用が増加しましたが、営業利益の下支えがあって前期比27.1%増加の195億9百万円となりました。
財務改善を目的とした資本効率改善を進める過程における、政策保有株式や旧本社等の不動産売却により特別利益を計上しましたが、中国での合弁解消による関係会社出資金の売却損や関連会社株式の評価損等の特別損失も計上しました。また、課税所得増加による法人税等の増加の一方で、税効果も改善したため税金費用も多少抑制することができ、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比142.8%増加となる111億9百万円となりました。
なお、当期におけるセグメント別の概況は以下のとおりであります。
国内販売におきましては、メディカル営業部門では販売価格改定により注射・輸液関連製品が好調に推移したほか、SARSコロナウイルス抗原キット、インフルエンザウイルスキットの販売が好調に推移しました。しかしながら、バスキュラー関連製品の当社占有市場に対する他社参入の影響や、透析装置設置の減少により全体では低調な推移となりました。
医薬営業部門では、薬価改定前の買い控えが発生したものの、引き続きネキシウムAGのエソメプラゾールの販売が好調で、かつ不採算品再算定品で薬価が引き上げられた結果、売上高、利益ともに堅調に推移しました。しかし、依然として供給問題が解消しないなか、厳しい対応が続いておりますが、得意先への丁寧な説明と真摯な対応を行うことで現場MRが評価をいただき、ニプロの存在感向上につながっております。
海外販売におきましては、学術活動の深耕と技術営業の向上、各国KOLとの連携強化を拡充することで、高付加価値商品の販売に注力しました。このような状況下、主力の透析関連商品は、欧州、アジア、インド等、各地域での販売が順調に推移した結果、前年比は増収となりました。また、2024年3月に台湾での感染症学会に参加し、同地域でのニプロブランドの浸透と販売強化を図ってまいりました。
自社透析センターにおいても、引き続き世界各国で市場を拡大しており、当第4四半期においてはタイ、南アフリカで計4施設を新規開設しました。新興国を中心に質の高い治療を提供できる環境を整え、地域医療に貢献し続けてまいります。
運送費におきましては、海上運賃が正常に戻りつつある一方、国内外の陸送コストは上昇傾向となっているため、今後も地産地消の促進、ハブ倉庫の活用、安全在庫の確保などにより、安定供給および経費削減を推進してまいります。これらの活動を通し医療現場のニーズに迅速に対応することにより、顧客満足の向上に努め、売上高の拡大、利益の確保につなげてまいります。
生産拠点におきましては、2024年3月に合肥工場で4ライン目となる新たなダイアライザ生産ラインの稼働が開始されました。当期は前期に発生した大館工場第5工場火災による生産ラインの一部損傷もありましたが、従来から稼働している生産ラインに加え、インド工場、大館工場、合肥工場における新生産ラインにおいてもそれぞれ順調に稼働を開始し、安定供給に努めてまいりました。今後、大館工場において更なるダイアライザ生産ラインの稼働を予定しており、さらなる供給能力の拡大に尽力してまいります。
この結果、当事業の売上高は4,536億13百万円(前期比8.0%増)、セグメント利益(営業利益)は423億21百万円(前期比9.6%増)となりました。
医薬関連事業におきましては、複数の先発医薬品の新規受託製品の商用出荷開始や、新型コロナウイルス感染症の流行時に減少していた一部品目の回復が寄与し、売上高の増加につながりました。一方で後発医薬品の終売や既存の受託製品の販売終了による出荷減少もあり、結果として売上高は前年同期比で微増となりました。
営業利益につきましては、依然として原材料の高騰、物価高による外注費用等の増加により製造経費は高止まりしておりますが、埼玉試験棟の稼働による試験業務の分散効果に伴う出荷数増や、原価上昇に伴う仕切価格の変更により収益の改善に繋がりました。しかし、前述の受託製品の販売終了や出荷減少による利益の減少が大きかったため、前年同期比で減益となりました。
この結果、当事業の売上高は743億20百万円(前期比2.2%増)、セグメント利益(営業利益)は44億32百万円(前期比21.1%減)となりました。
ファーマパッケージング事業におきましては、医薬用包装容器およびガラス管(医薬用包装容器の材料)の増産体制を整備するとともに、人的リソースの確保を進め、あわせてインフレに伴うコスト増を緩和する施策を展開しました。収益確保策としては、工場横断的な生産性の向上および調達単価低減のほか、高付加価値品の市場開拓を鋭意推進しました。
日本市場においては、硝子関連製品に加え、高利益品である溶解液注入針や輸液システム等の販売が堅調に推移しました。海外市場はアフターコロナの在庫調整途上にあることから、硝子管、包装容器ともに出荷が軟調でしたが、販売単価の適正化や製品ミックスの効果により増収を達成しました。利益面においては、米国の工場が高い操業度を維持した一方で、ワクチン向け需要が激減した中国、市場競争が激しいインドでは苦戦を強いられました。なお当連結会計年度において、フランスの硝子管工場立ち上げに係る関連費用を一括計上しております。
この結果、当事業の売上高は580億35百万円(前期比12.1%増)、セグメント利益(営業利益)は24億52百万円(前期比10.5%減)となりました。
その他事業におきましては、不動産賃貸等による売上高が8億16百万円(前期比8.5%増)、セグメント利益(営業利益)は80百万円(前期比68.8%減)となりました。
また、財政状態の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産合計は、1兆1,098億21百万円(前期比8.0%増)で、前連結会計年度末に比べて824億22百万円の増加となりました。このうち流動資産は348億76百万円の増加、固定資産は475億45百万円の増加となりました。流動資産の増加の主な要因は、商品及び製品が126億17百万円増加したことによるものであり、固定資産の増加の主な要因は、建物及び構築物(純額)が405億83百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は、8,400億32百万円(前期比7.0%増)で、前連結会計年度末に比べて548億7百万円の増加となりました。このうち流動負債は635億65百万円の増加、固定負債は87億57百万円の減少となりました。
流動負債の増加の主な要因は、短期借入金が297億97百万円増加したことによるものであり、固定負債の減少の主な要因は、長期借入金が137億36百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の純資産合計は、2,697億88百万円(前期比11.4%増)で、前連結会計年度末に比べて276億14百万円の増加となりました。このうち株主資本は88億円の増加、その他の包括利益累計額は175億48百万円の増加となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は965億82百万円と前連結会計年度末に比べ118億86百万円(前期比14.0%増)の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は、729億36百万円(前期比601.6%増)となりました。収入の主な項目は、減価償却費560億30百万円、税金等調整前当期純利益192億19百万円であり、支出の主な項目は、棚卸資産の増加額138億47百万円であります。
投資活動の結果使用した資金は、870億75百万円(前期比21.4%増)となりました。支出の主な項目は、固定資産の取得による支出942億3百万円であります。
財務活動の結果得られた資金は、221億42百万円(前期比48.6%減)となりました。収入の主な項目は、長期借入れによる収入725億86百万円であり、支出の主な項目は長期借入金の返済による支出654億91百万円であります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、製造原価によって算出しております。
2 上記金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
当社グループは、見込生産形態を採っておりますので、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
売上高は前連結会計年度に比べ415億86百万円増加し、5,867億85百万円(前期比7.6%増)となりました。これは主に、国内販売が前期比5.0%、海外販売が10.7%とそれぞれ増加したことによるものです。この結果、各セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、医療関連事業が77.3%、医薬関連事業が12.7%、ファーマパッケージング事業が9.9%、その他が0.1%となりました。
営業利益は前連結会計年度に比べ46億5百万円増加し、223億35百万円(前期比26.0%増)となりました。これは主に、運送費の減少と治験費用の減少が販売費及び一般管理費の増加を抑制し、営業利益は前期比で大きく向上しました。
営業外収益は前連結会計年度に比べ16億38百万円増加し、89億40百万円(前期比22.4%増)、営業外費用は前連結会計年度に比べ20億80百万円増加し、117億65百万円(前期比21.5%増)となりました。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ41億62百万円増加し、195億9百万円(前期比27.1%増)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税および法人税等調整額を計上したことにより、111億9百万円(前期比142.8%増)となりました。
なお、財政状態の分析内容及びセグメントごとの経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。なお、当社グループの設備投資額は,2024年3月期の実績は953億円、2025年3月期は624億円を予定しております。
次期以降の配当に関しましても業績連動の利益配当方針は維持しつつも、長期的な視点に立った安定的な配当を継続する方針で現在検討をおこなっております。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結することで、資金の流動性を確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。