株式会社LTTバイオファーマ

医薬品バイオ創薬

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最終更新:

E00982 Japan GAAP

売上高

1,527.1万 円

前期

511.6万 円

前期比

298.5%


3【事業の内容】

 当社グループ(当社及びその他の関係会社)は、医薬品の研究開発と、医療分野での中国企業と日本企業の協業支援を主たる業務としております。

 

 当社は、聖マリアンナ医科大学発ベンチャーである株式会社エルティーティー研究所(1988年設立)の創薬事業を継承した企業であります。当社の経営理念は、最先端の科学技術を医療に応用し、世界中の人々の健康と命を守ることへの貢献です。

 創設者で初代会長の水島裕博士は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)研究の草分け的存在であり、リポPGE1(パルクス、リプル)を始め、多くの新薬開発を成功に導きました。また、いち早く中国での医薬品ビジネスの将来性を見抜き、1995年に中国政府系病院と共同で北京泰德製薬股份有限公司(以下、北京泰徳製薬)を設立し、リポPGE1を始め多くの新薬を開発しました。2008年に会長を引き継いだ水島徹博士は、大学教授としてわが国にドラッグ・リポジショニング(DR)を広めました。また、熊本大学に創薬研究センターを設立しその初代センター長を勤めました。現在北京泰德製薬の副董事長として同社研究所での指導や医薬品開発の支援も行っています。

 以上のことから、当社は他のバイオベンチャーにはない多くの特徴(財産)を持っています。

・DDSとDRという効率的な創薬手法において、世界をリードするコア技術

・産学官に広がる人的ネットワーク(特に、アカデミアとの繋がり)

・中国有数の製薬企業に成長した北京泰德製薬との強い繋がり

・会社の継続実績に基づく信頼と、蓄積された創薬ノウハウ(経験豊かな社員・役員)

・安定的な収益に基づく医薬品開発推進力

 2019年6月の株主総会後に発足した水島徹を代表取締役とする経営陣は、以下の4つの柱を中心に研究開発活動を推進してまいりました。

Ⅰ.既存パイプラインの上市へ向けた研究開発の加速

Ⅱ.湘南研究所における新規パイプラインの創成

Ⅲ.北京泰德製薬、及び中国生物製薬(以下、シノバイオと称します)との連携

Ⅳ.当社の強みを活かした他社・アカデミアとの協業

 これらの試みは全て、前述の当社の財産を活かしたもので、既に多くの成果も得られております。当事業年度は、前事業年度に開始したPC-SOD(LT-1001)のCIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)を対象とする第Ⅱ相臨床試験において、予想を上回るペースで被験者のリクルートを完了しました。ノーベルファーマ株式会社との共同開発品であるLT-5001に関しては、当事業年度に第Ⅲ相臨床試験を開始しました。シノバイオとの連携に関しては、2021年3月25日に調印した資本業務提携基本契約に則り、当事業年度に業務提携契約を結び具体的な支援活動を開始しました。また、アカデミアとの連携も質・量ともに向上しており、当事業年度では岩手医科大学を始め、三つの公的研究期間と共同研究契約を締結しました。

 

(1)ポートフォリオ型創薬ベンチャー

当社は、「ポートフォリオ型創薬ベンチャー」を目指しています。これは、自社研究開発に絞り込むのではなく、資金力を活用して環境や状況に応じて外部の経営資源を有効に活用し、安定的にリターンを獲得する事業戦略です。そこで、研究開発活動と事業開発活動を当社の柱と位置づけています。

 

※画像省略しています。

 

 

(2)DDSについて

 DDSは、医薬品を必要な場所に、必要な時間、必要な量だけ送達する技術です。この技術によって薬物投与量や投与回数の軽減が可能になります。つまり薬の効果を高める一方で副作用を軽減することで、患者様の負担を減らすことができます。DDSは、既に臨床で使用されている既承認薬(既に疾患治療薬として承認されている医薬品)を使用することが多いので、一部の安全性試験などを省略でき、効率的かつ高い成功確率で医薬品を開発できます。また、望ましい薬効がありながら、その副作用や製剤上の理由で開発を断念した薬物をDDSにより復活させることも可能です。さらに最近では、最初からDDS化して開発しなければならないもの(例えば、核酸医薬や抗体-薬物複合体[ADC:Antibody-Drug Conjugate]など)も増えています。このようにDDSは、新薬開発に要する開発期間の大幅な短縮とコストの削減、開発リスクの低減、及び上市の早期実現を可能にします。

 大手製薬企業は研究開発の効率化を目指し、研究開発の一部分を自社実施から外部委託に転換しております。例えば、DDSを含む製剤開発も外部委託化が進んでおります。当社としては、この動きを大きなチャンスと捉え、当社の持つDDSを含む製剤開発技術を活かし、大手製薬企業からの製剤開発受託事業が新しいビジネスになると考えました。これにより、当社の経営課題である売上の増加と、大手製薬企業との信頼関係の深化に役立てたいと考えています。当事業年度では、過去に当社が行った受託研究の品質と当社のDDS技術を評価した大手製薬企業から別のDDS製剤開発を受託し、実施しました。

※画像省略しています。

 当社はDDS分野のリーディングカンパニーであると自負しています。当社の開発したDDS製剤・リポPGE1はピーク時の日本での売り上げが500億円を超える医薬品となりました。また北京泰德製薬は、中国でのリポPGE1の上市に成功し、その売上はピーク時300億円を超えました(全医薬品中、売上4位)。リポPGE1は脂肪微粒子に封入することによりPGE1の失活を防ぐと共に、疾患部位へターゲッティングするDDS製剤で、脂肪微粒子を使ったDDS製剤としては世界初でした。我々はこの技術を応用し、リポNSAIDなど複数の脂肪微粒子製剤の開発に成功しました。なお、リポNSAIDも北京泰徳製薬の主力医薬品に成長し、その売上はピーク時で200億円を超えました。

 

 

(脂肪微粒子の構造)

※画像省略しています。

 

 その後も、世界初の新しいDDS技術を開発し、医薬品としての上市を目指して来ました。例えば、当社が現在一番力を入れて開発しているPC-SOD(LT-1001、LT-1002)は、SODというタンパク質にリン脂質を結合させ(レシチン化)、その医薬品としての効果を格段に高めたDDS製剤です。タンパク質のレシチン化技術を持っているのは当社のみであり、この技術は他のタンパク質にも適応可能ですので、現在大学と共同で新たなレシチン化製剤の開発を進めています。

 

(SOD(2量体)にリン脂質(phosphatidylcholine)を4分子共有結合させたDDS製剤)

※画像省略しています。

 

 また、我々が開発したステルス型ナノ粒子も画期的なDDS技術です。これまでのDDS技術は、ターゲッティング(疾患部位に薬物を選択的に送達させる)、あるいは徐放化(薬物を徐々に放出させる)のどちらかだけを狙っていましたが、ステルス型ナノ粒子は、この両方の目的を同時に達成した世界初のDDS製剤です。例えば、この粒子にPGE1を封入したナノ粒子(ナノPGE1、LT-2003)は、血管病変部に集積しそこでPGE1を放出するため、我々が上市したリポPGE1よりも、少ない量と投与回数でもより高い薬効を発揮することが期待されています。

※画像省略しています。

 

 リポソーム医薬品は既に世界で20品目が上市されています。抗がん剤、核酸を含む多くの薬物をリポソーム(リピドナノパーティクルを含む)に封入することにより、標的とする組織・細胞へのパッシブターゲティング、アクティブターゲティングが可能となります。

 

※画像省略しています。

 

(3)DRについて

 当社は、DRも推進しています。DRとは、ヒトでの安全性・体内動態が充分に証明されている既承認薬の新しい薬理効果を発見し、その薬を別の疾患治療薬として開発(適応拡大)することです。

 DRのメリットは、既に臨床で使われている医薬品なので、ヒトでの安全性や体内動態などがよく分かっており、臨床試験で予想外の副作用や体内動態の問題が発見され開発が失敗する可能性が少ない、即ち医薬品開発の成功確率が高いことです。さらに、既にあるデータ(試験管内での毒性試験、動物での毒性試験やADME試験、第Ⅰ相臨床試験など)を再利用し、開発にかかる時間とコストを削減できることもDRのメリットです。欧米では、2007年頃からメガファーマが急激にDRへ創薬戦略をシフトし、DRによる成果も次々に産まれています。一方、我が国ではDRへのシフトが遅れていました(当時、DR関連の国際会議に日本から参加していたのは、当社CEOのみでした)。しかし、当社の研究成果がマスコミ等で紹介された結果、我が国でもDRが注目されるようになってきました。このように我が国でDRへの関心が急速に高まっている中で、DRのリーディングカンパニーである当社は、その更なる推進を図っています。

※画像省略しています。

 

 既承認薬の適応拡大はこれまでも行われていましたが、臨床の現場でたまたま見つかった効果を基にした適応拡大であったり、製薬企業が自社医薬品の適応を類似疾患へ拡大したりするパターンでした。これに対し当社では、網羅的・体系的・科学的なDRを行っています。具体的には、日本で承認された薬(既承認薬)だけを集めた化合物ライブラリ(既承認薬ライブラリ)を独自に構築し、これを用いて様々なスクリーニングを実施し、DR研究を進めてまいりました(COPD、ドライアイ、肺線維症など)。

 この研究戦略において、独創的なスクリーニング系は大変重要です。一方、大学などのアカデミアには独創的な基礎研究に基づく優れたスクリーニング系が存在し、それを活かしてDR研究を行いたいという要望が増えています。しかし、研究方法が分からない、有効な特許が獲得できない、臨床試験への進め方が分からない、製薬企業が興味を持ってくれない、などの点で苦労しています。そこで当社は、既承認薬ライブラリ、DRノウハウ、研究資金をアカデミアに提供し、アカデミアの基礎研究成果を効率的に臨床応用や製薬企業へのライセンスへ繋げるための仕組み『DRグラント』を創設し、推進してまいりました。その結果、既に7件のプロジェクトを開始しております。当事業年度においても、新たに岩手医科大学など3つの公的研究期間と共同研究契約を結び共同研究を開始したほか、既承認薬ライブラリのリニューアルも進めております。

 

※画像省略しています。

 

 一方、スクリーニングで得られた既承認薬の薬効をさらに高めるため、あるいは物質特許を得るために、既承認薬をリード化合物として誘導体を合成し、新規物質を創成しております(LT-3001、LT-3002など)。また、臨床情報が豊富になる既承認薬の特徴を活かし、臨床情報からAIなどを活用し目的の既承認薬を探すシステムの確立も目指しています。

 臨床での安全性は確認されたものの、薬効不足などにより臨床開発が中断した化合物(お蔵入り新薬)を抱える製薬企業は多く、DRにより新たな薬理効果を発見し別の疾患治療薬として開発することができれば、大きなメリットとなります。当社は大手企業からこのようなDRを受託するビジネスも展開しています。

 DRに対する製薬企業の関心は年々高まっており、当社代表取締役である水島徹は多くの製薬企業からの様々な相談を持ち掛けられております。そこで、これをコンサルビジネスとして発展させ、売上に寄与させたいと考えました。当事業年度では、あすか製薬株式会社より、DRに関するコンサルティング業務の依頼を受け、コンサルティング業務を行いました。具体的には、同社が有するDRに関するプロジェクトに関し、研究・知財・薬価・臨床・製造など、様々な観点から当社が助言を行いました。

 

 

(4)北京泰德製薬、及びシノバイオと連携した医薬品開発・事業開発について

 1995年に当社と中国の政府系病院が設立した北京泰德製薬は、中国有数の大手製薬企業に成長しました。自社MRが2,000人以上在籍し、販売網は中国全域をカバーしており、その販売力には定評があります。また、当社からの導出品を中心に多くの医薬品の中国での上市に成功しておりその開発力も抜群です。当社は北京泰徳製薬と資本業務提携、並びに包括支援契約を結び、密接に連携してきました。さらに最近は、北京泰徳製薬の成長を取り込むために、北京泰徳製薬が必要としている薬を当社が研究開発したり、他の日本企業を北京泰徳製薬に紹介したりする新たなビジネスも行っております。当社が北京泰徳製薬の業績をさらに向上させるよう活動したところ、2021年に引き続き2022年の北京泰徳製薬の決算は、売上、利益とも増加となり、当社が受け取る配当金も2021年の1株あたり0.8元から、2022年は1株あたり1元へと増配されました。

 さらに、北京泰徳製薬の親会社であるシノバイオとの連携を深めることが当社の企業価値の向上に繋がると考え、これまで当社と先方のCEOが定期的に交流してまいりました。その中で、当社の技術・ノウハウ・人材・パイプラインを評価したシノバイオが、当社との資本業務提携を目的とした公開買付けを前事業年度に実施しました。そして、公開買付け終了後の2021年3月25日、シノバイオと当社は資本業務提携基本契約を締結しました。本業務提携により当社は以下のようなシナジー効果を得られると考えています。

① ライセンスアウト成功による当社の収益拡大

 シノバイオグループ企業に当社パイプラインをライセンスアウトすることによる、当社の収益拡大

② 資金支援による当社の研究開発の加速や収益基盤の向上

研究開発の加速や他の製薬企業等への投資に充当する資金が必要となった場合に、シノバイオが資金支援を行い、当社単独の資金力では実行できなかった研究開発や投資案件の実行が可能となることによる、当社の研究開発の加速や収益基盤の向上

③ 新ビジネスによる当社のビジネス拡大

ⅰ)中国や東南アジアへの進出を目指す日本企業をシノバイオに紹介し、当社が紹介した日本企業又はシノバイオより、ロイヤリティや売上の一部を紹介報酬として受け取るビジネスの拡大

ⅱ)シノバイオが日本企業から医薬品を導入する際、及びシノバイオのパイプラインを日本企業へ導出する際の仲介を当社が行い、当社が紹介した日本企業又はシノバイオより、ロイヤリティや売上の一部を紹介報酬として受け取るビジネスの拡大

 

 このように本業務提携は、当社の研究開発の加速や収益の多角化(北京泰徳製薬の配当以外の収入源の確保)に繋がると期待しています。当事業年度においては、多くの事業提携案件に関して協議を進めました。これを評価したシノバイオは、当社との間に事業提携契約を結ぶことに合意し2022年12月に締結しました。業務提携の内容は多岐に渡りますが、例えば、日本の優れた医薬品の同社へのライセンスを当社が支援する業務、同社が中国で開発・販売している医薬品の日本企業へのライセンスを当社が支援する業務、同社の日本企業への投資を当社が支援する業務などが含まれます。本業務にあたり、当社はシノバイオから毎月一定の報酬を受け取ります。また、シノバイオが日本企業とライセンス契約を結ぶなど、支援業務が成功した場合には成功報酬も受け取ります。本支援業務を真摯に実施することによりシノバイオの発展を助けると共に、当社の売上向上にも繋げていきたいと考えています。

※画像省略しています。

 

 

※画像省略しています。

 

(5)パイプラインについて

① CIPN、心筋梗塞、ARDS、腎障害治療薬としてのPC-SOD

 多くの病気の根本的な原因となっている活性酸素を効果的に消去するPC-SODは、様々な疾患の治療薬として有望です。実際、特発性肺線維症と潰瘍性大腸炎に関しては、当社が行った臨床試験で有効性が示唆されています。また動物モデルで有効性が示された疾患は、この二つの疾患に加えて、COPD、ドライマウス、脳梗塞、脊髄損傷、熱傷、外傷性脳損傷、移植時傷害、心筋梗塞、強皮症、ARDSなど多岐に渡っています。まず、注射剤(LT-1001)として第Ⅱ相臨床試験まで研究開発を進めましたが、静脈内投与では患者様が長期の入院を余儀なくされるため、通院のみで治療が可能な新しい投与方法(ネブライザーを用いた吸入投与、LT-1002)を考案しました。しかし特発性肺線維症を対象とした臨床試験では、安全性は確認できたものの、有効性を証明することが出来ませんでした。そこで現在では、急性、かつ臨床ニーズが高い疾患を対象に、注射剤での開発を進めています。特に、CIPN、心筋梗塞、ARDS、腎障害に注目しています。この内心筋梗塞に関しては、北京泰徳製薬が中国で第Ⅰ・Ⅱ相臨床試験実施の許可を得て、既に第Ⅱ相試験を完了し、次相へ向けて準備をしています。一方、当社においては、CIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)を対象とする臨床試験に向けて準備を進めてまいりました。CIPNはオキサリプラチンなどの抗がん剤による副作用の一種であり、抗がん剤投与後にしびれなどが生じ、重篤な場合には抗がん剤の投与を止めなくてはならなくなり、臨床現場で大きな問題になっています。現在、この副作用を予防する方法(薬)がないこと、及びこの副作用の原因が活性酸素であることに着目した当社はこれまで動物実験を進め、PC-SODが顕著な効果を示すことを発見しました。2021年9月には臨床試験実施計画書を完成させ、PMDAに治験届を提出しました。2022年1月には最初の被験者が登録となり、治験薬の投与を開始しました。この薬に対する臨床医の関心は高く、そのため予定より早く、2022年11月には目標としていた数の被験者登録が完了しました。尚、CIPNというアンメットメディカルニーズ(臨床で解決されていない課題)に興味を持った国内製薬企業と既に共同研究契約を締結しており、今回の臨床試験もこの契約に則って行います。そこで、この臨床試験で効果が確認できましたら、上市への道筋が見えてまいります。

開発コード:LT-1001(注射剤)、LT-1002(吸入剤)(PC-SOD)

対象疾患:CIPN、心筋梗塞、腎障害、脳梗塞、ARDS、潰瘍性大腸炎、特発性肺線維症など

開発ステージ:第Ⅰ相臨床試験終了、一部第Ⅱ相臨床試験終了

知財:物質特許、用途特許、製剤特許

 

② 集積性と徐放性を併せ持つDDSキャリア・ステルス型ナノ粒子

 これまでのDDSキャリアは、集積性、あるいは徐放性のどちらかだけを目指したものでしたが、当社はその両者を同時に達成するステルス型ナノ粒子の開発に世界で初めて成功しました。次に記載の③と④はこの技術を利用したものですが、この粒子を使った他社との共同開発も行っています。

 

③ 末梢動脈閉塞症治療薬としてのナノPGE1

 当社が開発したリポPGE1は、多くの患者様の治療に貢献してきました。しかし、毎日注射をする必要があり、QOLの点では問題がありました。そこで当社は、集積性と徐放性を併せ持つDDSキャリア・ステルス型ナノ粒子にPGE1を封入したナノPGE1を開発しました。この製剤は、2週間に1回程度の投与で、リポPGE1の毎日投与を上回る効果が期待されています。

開発コード:LT-2003(ナノPGE1)

対象疾患:末梢動脈閉塞症

開発ステージ:基礎研究

知財:製剤特許

 

※QOL(Quality of Life)とは、生活を物質的な面から量的にのみとらえるのではなく、精神的な豊かさや満足度も含めて、質的にとらえる考え方であります。

 

④ 肺高血圧症治療薬としての、ナノPGI2誘導体

 現在、肺高血圧症の治療には、PGI2のポンプによる持続投与、あるいはPGI2誘導体の経口投与が行われていますが、前者はQOLの面で、後者は効果の面で問題があります。そこで当社は、集積性と徐放性を併せ持つDDSキャリア・ステルス型ナノ粒子に、PGI2誘導体を封入したナノPGI2誘導体を開発しました。この製剤は血管病変部に集積し、そこでPGI2誘導体を徐放しますので、2週間に1回程度の投与でも、十分な効果を発揮することが期待されます。

開発コード:LT-2004(ナノPGI2誘導体)

対象疾患:肺高血圧症

開発ステージ:基礎研究

知財:製剤特許

 

⑤ 胃潰瘍を起こしにくく、かつ速効性に優れた新規NSAID

 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、解熱鎮痛抗炎症薬として臨床上必要不可欠ですが、胃潰瘍副作用が大きな問題になっています。当社は、既存のNSAIDに比べ,格段に胃潰瘍を起こしにくく、かつより速やかに鎮痛効果を発揮する新規NSAID(LT-3001)を創出しました。

開発コード:LT-3001(新規物質)

対象疾患:炎症性疾患

開発ステージ:非臨床試験実施中

知財:物質特許

 

⑥ 長時間作用性の気管支拡張効果と抗炎症効果を併せ持つCOPD治療薬

 COPD治療には現在、症状を改善するための長時間作用型気管支拡張薬と、病気の進行を抑制するためのステロイドが使用されています。これに対して当社が創出したLT-3002は、動物実験において、既存の気管支拡張薬よりも長く気管支を拡張するだけでなく、ステロイドよりも強力な抗炎症作用を発揮します。このようにLT-3002はCOPD治療薬として大変有望な新規物質です。

開発コード:LT-3002(新規物質)

対象疾患:COPD

開発ステージ:非臨床試験実施中

知財:物質特許

 

⑦ 気管支拡張効果と抗炎症効果を併せ持つCOPD治療薬(既承認薬)

 COPD治療には現在、症状を改善するための長時間作用型気管支拡張薬と、病気の進行を抑制するためのステロイドの両者が使用されています。これに対して当社では、既承認薬ライブラリから、気管支拡張効果と抗炎症効果を併せ持つ既承認薬LT-4001を発見しました。

開発コード:LT-4001(既承認薬)

対象疾患:COPD

開発ステージ:既承認薬のため、非臨床試験は完了

知財:用途特許、製剤特許

 

⑧ 新しいメカニズムのドライアイ治療薬

 ドライアイに対しては、様々なメカニズムの医薬品が上市・開発されていますが、未だ治療法は確立されていません。現在、涙液の高浸透圧化による傷害から角膜を守る薬がないことに着目し、当社では医薬品を既承認薬ライブラリから検索し、既承認薬LT-4002を発見しました。前期第Ⅱ相臨床試験を実施し有効性と安全性を確認しました。一方、後期第Ⅱ相臨床試験では、プラセボと比較して主要な評価項目(自覚症状等)において改善傾向が認められておりますが、目標としたレベルの統計的有意差は得られておらず、有効性を明確に示すことはできませんでした。そこで現在は、今後の開発を共同で進めて頂けるパートナーを探しております。

開発コード:LT-4002(既承認薬)

対象疾患:ドライアイ

発ステージ:後期第Ⅱ相臨床試験終了

知財:用途特許、製剤特許

⑨ 新しいメカニズムの肺線維症治療薬

 特発性肺線維症は肺が徐々に線維化し呼吸機能が低下する疾患で、5年生存率は40%以下で肺がんよりも予後が悪いと言われています。この疾患では筋線維芽細胞が活性化することが原因と考えられています。そこで我々は武蔵野大学と共同で、筋線維芽細胞の活性化を抑制する薬を既承認薬ライブラリからスクリーニングしLT-4010を発見しました。

開発コード:LT-4010(既承認薬)

対象疾患:肺線維症

開発ステージ:既承認薬のため、非臨床試験は完了

知財:用途特許

 

⑩ 新しいメカニズムの新型コロナウイルス感染症治療薬

 当社は社会貢献の観点から新型コロナウイルス感染症にも取り組みました。具体的には、筑波大学医学部と共同でスクリーニングを行い、既承認薬LT-4012を発見しました。新しいメカニズムで新型コロナウイルスの増殖を抑える薬であり、試験管内ではウイルスの増殖をほぼ完全に抑える効果が得られております。また、動物実験において新型コロナウイルス依存の個体死をこの既承認薬が抑制することを見出しました。そこで、この薬を販売している大手製薬企業とライセンスや共同開発に関する交渉を進めると共に、国からの研究費の獲得に向けた活動を筑波大学と協力して進めております。

開発コード:LT-4012(既承認薬)

対象疾患:新型コロナウイルス感染症

開発ステージ:既承認薬のため、非臨床試験は完了

知財:用途特許

 

⑪ ノーベルファーマ株式会社と共同開発している既承認薬(同社との契約により詳細は非開示)

開発コード:LT-5001(既承認薬)

対象疾患:非開示

開発ステージ:第Ⅲ相臨床試験実施中

知財:非開示

 

 創薬事業における現在開発中のパイプラインの状況は下記のとおりであります。

 

※画像省略しています。

 

〔事業系統図〕

 研究開発に係る事業系統図は次のとおりであります。

 

※画像省略しています。

 

(注)北京泰徳製薬及びSINO BIOPHARMACEUTICAL LIMITED(シノバイオ)は、その他の関係会社であります。

 

 

23/06/29

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

 (1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。

 

a.財政状態

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末と比較して179,669千円増加して4,214,922千円となりました。当事業年度末の負債合計は、前事業年度末と比較して109,160千円増加して212,442千円となりました。当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末と比較して70,508千円増加して4,002,480千円となりました。

 

b.経営成績

 当事業年度のわが国経済は、新型コロナウイルス蔓延によるダメージからの回復が本格化しましたが、ウクライナ情勢とそれに連動した円安・物価高・物不足の影響により、厳しい状況が続いております。

 医薬品業界では、薬剤費の抑制、新薬開発コストの増大などの問題は厳しさを増していますが、創薬におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)も進み、期待が高まっております。当社も「DR(ドラッグ・リポジショニング)のパイオニア企業」という自負を持ち、AI(人工知能)などを積極的に取り入れ、次世代のDRを確立したいと考えております。

 このような環境の中、当社の当事業年度の売上高は、中国生物製薬(シノバイオ)との事業提携契約、及び北京泰徳製薬との包括的支援契約に基づく報酬や製薬企業からのDRコンサルの受注等により15,271千円(前期比198.4%増)となりました。販売費及び一般管理費の研究開発費は、CIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)を対象とする臨床試験費用等により637,413千円(前期比46.5%増)、販売費及び一般管理費のその他は役員退職慰労引当金繰入額の増加等により242,527千円(前期比28.6%増)となったため、営業損失は864,730千円(前期は営業損失618,643千円)となりました。営業外収益として、北京泰徳製薬の2021年12月期に属する配当金929,433千円を計上しました。また、2023年1月に開催された同社の株主総会において、2022年12月期に属する受取配当金1,099,468千円が支払われる事が決定しており、翌事業年度におきましては、当事業年度を上回る受取配当金を見込んでおります。以上より、経常利益は81,000千円(前期は経常損失221,583千円)、当期純利益は70,254千円(前期は当期純損失263,499千円)となりました。

 

 創薬事業における現在開発中のパイプラインの状況は下記のとおりであります。

 

※画像省略しています。

 

 

 「PC-SOD(LT-1001)」は、ライセンス先の北京泰徳製薬による心筋梗塞を対象とする開発に関して、当事業年度において全ての被験者への治験薬投与が完了しました。当社においては、CIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)を対象とする臨床試験を前事業年度に開始し、当事業年度において当初の予想をはるかに上回るペースで登録が進み、2022年11月に目標症例数に達し被験者登録を終了しました。これは、抗がん剤治療において障害となるCIPNを予防する薬は世界的に見ても開発されておらず、本臨床試験に対する臨床医の関心が大変高いためです。また被験者登録が進まないことに危機感を感じ、治験実施医療施設を当社役員が訪問したり、関係する医師やスタッフが参加する勉強会を開催したりしたことも、迅速な被験者登録に貢献したと考えております。既にご報告しておりますように本剤に興味を持った国内製薬企業と共同研究契約を締結しており、今回の臨床試験も本契約に則って実施しております。そこで今回の臨床試験で有効性と安全性が確認できましたら、上市への道筋が見えてまいります。

 ノーベルファーマ株式会社との共同開発では、同社が既に発売している既承認薬(LT-5001)を別の疾患に適応拡大(DR)することを目指し、臨床試験を共同で実施しました。その結果、統計的有意差を持って有効性を確認することができました。PMDAとの対面助言を実施するなど第Ⅲ相臨床試験の実施に向け準備を進め、当事業年度において第Ⅲ相臨床試験を開始し、2022年9月に最初の治験者に治験薬が投与されました。このままのペースで治験が進みますと、翌事業年度中には結果が判明しますので、2024年度中の医薬品上市も可能となります。当社が第Ⅲ相臨床試験を実施するのは、2006年以来であり、その成功(医薬品の上市)に向けて今後も鋭意努力してまいります。

 「新型コロナウイルス感染症治療薬(LT-4012)」は、筑波大学医学部のスクリーニング系と当社の既承認薬ライブラリとDR技術を用いて発見し、特許を共同で出願したパイプラインです。LT-4012は、試験管内ではウイルスの増殖をほぼ完全に抑え、動物実験では、新型コロナウイルス依存の個体死を抑制しました。当事業年度においてウイルスの増殖を抑えるメカニズムを解析したところ、これまでに報告されている薬とは違うメカニズムで作用していることが示唆されました。現在、投与法や投与タイミングを変えて実験を行い、最適な投与プロトコールを検討しております。

 

 以上、主要なパイプラインの研究開発状況につきましては「6研究開発活動」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ339,039千円減少し、2,374,175千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得た資金は、64,229千円(前事業年度は235,991千円の支出)となりました。この主な要因は、利息及び配当金の受取額が523,893千円増加したこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、403,034千円(前事業年度は295,750千円の収入)なりました。この主な理由は、投資有価証券の取得による支出703,131千円があったこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により使用した資金は、前事業年度と比較して861千円減少し235千円となりました。これは、配当金の支払額が減少したことによるものであります。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社の業務は、業務の性格上、生産実績として把握することが困難であるため、その実績は記載しておりません。

 

b.受注実績

 当社の売上高(事業収益)は、北京泰徳製薬の包括的支援契約に基づく報酬等であり、受注生産は行っておりませんのでその実績は記載しておりません。

 

c.販売実績

 当社は単一セグメントであり、その実績は以下のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

前期比(%)

創薬事業(千円)

15,271

298.4

合計(千円)

15,271

298.4

 (注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

当事業年度

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

中国生物製薬有限公司

12,000

78.5

あすか製薬株式会社

3,000

58.6

400

2.6

北京泰德製薬股份有限公司

2,000

39.0

2,071

13.5

 

 

 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(資産の部)

 当事業年度末における資産合計の残高は、前事業年度末と比較して179,669千円増加して4,214,922千円となりました。この主な要因は、投資有価証券の増加と繰延税金資産の計上によるものであります。

(負債の部)

 当事業年度末における負債合計の残高は、前事業年度末と比較して109,160千円増加して212,442千円となりました。この主な要因は、役員退職慰労引当金が80,792千円増加したこと等によるものであります。

(純資産の部)

 当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末と比較して70,508千円増加して4,002,480千円となりました。この主な要因は、繰越利益剰余金が70,254千円増加したことによるものであります。

(売上高)

 当事業年度の売上高は、15,271千円(前期比198.4%増)となりました。内容は北京泰德製薬股份有限公司に対する包括的支援契約による報酬や中国生物製薬(シノバイオ)との事業提携契約による報酬、製薬企業からのDRコンサルティングの受注等が主なものとなっております。

(営業損失)

 当事業年度の営業損失は、864,730千円(前事業年度は営業損失618,643千円)となりました。この主な要因は、役員退職慰労引当金繰入額の増加や研究開発費の増加等によるものであります。

(経常利益)

 当事業年度の経常利益は、81,000千円(前事業年度は経常損失221,583千円)となりました。この主な要因は、受取配当金の増加等によるものであります。

(当期純利益)

 当事業年度の当期純利益は、70,254千円(前事業年度は当期純損失263,499千円)となりました。この主な要因は、経常利益を計上したことによるものであります。

 

②資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社の事業資金は北京泰徳製薬の配当金によりそのほとんどが賄われており、キャッシュ・フローの状況につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。