売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E05712 IFRS


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の「5類感染症」への移行に伴い社会経済活動の正常化が進み、緩やかな回復傾向がみられました。一方、地政学的リスクの長期化、世界的な物価・金利上昇などを背景に、世界経済は依然として先行き不透明な状況が続いております。バイオテクノロジー・セクターにおきましても同様に、全世界的に先行き不透明感を完全に払しょくするまでには至っておりません。

このような状況下におきましても、株式会社ジーエヌアイグループ(以下「当社」)及びその関連会社(以下合わせて「当社グループ」)は、主要事業におきまして前年同期比で売上収益の増加を達成しました。

 

特に、当社グループ主要子会社である北京コンチネント薬業有限公司(以下「北京コンチネント」)の主力製品であるアイスーリュイの販売が堅調に推移し、売上収益の増加に大きく寄与しました。同社は、次期製品の有力な候補であるF351の第Ⅲ相臨床試験を中国にて進めており、当該試験は2023年内の被験者登録完了を目前に控え着実に進捗しております。

 

また、2022年12月に開示いたしました米国Nasdaq上場企業のCatalyst Biosciences, Inc.(以下「CBIO」)との取引に関しては、F351の中国以外の権利を譲渡する取引1を完了している現在、当社グループが保有する北京コンチネント株式をCBIOに現物出資し、その対価としてCBIO株式を当社グループが受領する取引2の完了に向け、鋭意進めております。2023年8月29日開催のCBIO株主総会では、関連議題の全てが承認されております。

 

米国及び中国を中心に研究開発に特化している米国子会社Cullgen Inc.(以下「Cullgen」)は、独自の標的タンパク質分解誘導技術プラットフォームuSMITE™(ubiquitin-mediated, small molecule induced target elimination)を活用した創薬に引き続き邁進しております。2023年6月に開示いたしましたとおり、Cullgenはアステラス製薬株式会社(以下「アステラス製薬」)と革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及び独占的オプション契約を締結いたしました。本戦略的提携におけるアステラス製薬との共同研究は、順調に進展しております。また、Cullgenは、同社初のTRK分解剤を使用した抗がん剤候補の臨床試験を中国にて進め、2023年7月に開示いたしましたとおり、ヒトにおける最初の臨床試験となる第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を開始しております。同時に、他の複数のプログラムについても、臨床試験申請を目指して開発を進めております。

 

医療機器事業に関しましても、米国で生体材料事業に携わるBerkeley Advanced Biomaterials LLC(以下「BAB」)を筆頭に、業績は堅調に推移しております。当社グループはこの生体材料事業を更に発展させるべく、2023年9月19日に開示いたしましたとおり、米国においてバイオロジクスの開発と商品化を行うElutia Inc.(ナス

ダック上場、証券コード:ELUT、以下「Elutia」)から、デューデリジェンスが成功裏に完了することを条件に、オーソバイオロジクス事業の一部を譲り受けること、及びその受け皿となる当社グループ 100%出資子会社を米国に設立することを決議し、デューデリジェンスを進めております。また、2023年8月1日に開示いたしましたとおり、今後の中国市場における医療機器事業の収益拡大を目指し、当社グループ会社であるBABの既存ディストリビューターであり、輸入医療機器と消耗品の販売に特化した専門的な医療流通企業であるShanghai JIUCE Medical Device Technology Co., Ltd.を持分法適用会社化しております。

 

①セグメント別の経営成績

医薬品事業

北京コンチネントの主力製品であるアイスーリュイの中国市場での売上収益は堅調に推移しました。また、Cullgenとアステラス製薬との戦略的提携による契約一時金による売上収益4,838,400千円を計上しました。

その結果、医薬品事業セグメントの売上収益とセグメント利益は、それぞれ18,272,865千円(前年同期比65.4%増)、5,915,025千円(前年同期比643.5%増)となりました。

医療機器事業

医療機器事業セグメントの売上収益とセグメント利益は、BABの主力製品である骨移植関連製品の売上収益が引き続き好調に推移したことにより、それぞれ2,275,030千円(前年同期比32.7%増)、887,511千円(前年同期比27.0%増)となりました。

 

②販売費及び一般管理費並びに研究開発費

(単位:千円)

 

前第3四半期連結累計期間

当第3四半期連結累計期間

差額

販売費及び一般管理費

△7,498,561

△9,556,455

△2,057,894

人件費

△2,733,706

△3,131,738

△398,033

研究開発費

△1,819,132

△1,776,530

42,601

 

当第3四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、9,556,455千円(前年同期比27.4%増)となりました。この販売費及び一般管理費の増加は、主に医薬品事業セグメントの人件費及び営業体制の構築費用やマーケティング活動関連費用の増加によるものです。

当第3四半期連結累計期間の研究開発費は、1,776,530千円(前年同期比2.3%減)となりました。この研究開発費の減少は、主に北京コンチネントにおけるF351の研究開発費の資産計上の増加によるものです。

 

③金融収益及び金融費用

(単位:千円)

 

前第3四半期連結累計期間

当第3四半期連結累計期間

差額

金融収益

347,752

505,384

157,632

金融費用

△618,870

△904,311

△285,441

 

金融収益

当第3四半期連結累計期間の金融収益は、505,384千円(前年同期比45.3%増)となりました。この金融収益の増加は、主に受取利息と為替差益の増加によるものです。

金融費用

当第3四半期連結累計期間の金融費用は、904,311千円(前年同期比46.1%増)となりました。この金融費用の増加は、主にCullgenの資金調達に関する現金支出を伴わない利息費用の増加によるものです。

 

(2)財政状態に関する分析

連結財政状態

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当第3四半期連結会計期間

差額

資産合計

33,906,981

48,468,006

14,561,025

負債合計

14,096,013

21,881,395

7,785,382

資本合計

19,810,968

26,586,611

6,775,642

 

資産合計

 当第3四半期連結会計期間における資産合計は、48,468,006千円(前連結会計年度末比42.9%増)となりました。この資産の増加は、主にCullgenの営業債権及び資金調達による現金及び現金同等物の増加によるものです。

負債合計

 当第3四半期連結会計期間における負債合計は、21,881,395千円(前連結会計年度末比55.2%増)となりました。この負債の増加は、主にCullgenの資金調達及びそれに関する現金支出を伴わない利息費用の追加計上によるものです。

資本合計

 当第3四半期連結会計期間における資本合計は、26,586,611千円(前連結会計年度末比34.2%増)となりました。主に利益剰余金の増加によるものです。

 

連結キャッシュ・フロー

(単位:千円)

 

前第3四半期連結累計期間

当第3四半期連結累計期間

差額

営業活動によるキャッシュ・フロー

△162,928

4,442,988

4,605,916

投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,909,505

△3,697,727

△788,221

財務活動によるキャッシュ・フロー

△299,280

4,981,492

5,280,772

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

 当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、4,442,988千円の収入(前年同期は、162,928千円の支出)となりました。これは主に、税引前四半期利益6,376,072千円に対して、営業債権及びその他の債権の増加1,974,714千円によるものです。

投資活動によるキャッシュ・フロー

 当第3四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、3,697,727千円の支出(前年同期は、2,909,505千円の支出)となりました。主な支出は、中国における長期性預金の取得及び工場拡張に係る有形固定資産の取得によるものです。

財務活動によるキャッシュ・フロー

 当第3四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、4,981,492千円の収入(前年同期は、299,280千円の支出)となりました。主な収入は、Cullgenの資金調達に伴う非支配持分からの払込によるものです。

 

(3)事業上及び財務上の対処すべき課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。また新たに生じた課題はありません。

 

(4)研究開発活動

 

〔研究活動〕

 当社グループの創薬研究では、Cullgenを中心に革新的な新規開発候補化合物(NCE)の開発を目指しております。Cullgenは、がん、痛み、及び自己免疫疾患に対する酵素及び非酵素タンパク質を標的とした複数の新規化合物を含む創薬パイプラインの拡充のための研究開発を進めております。

 

 2023年6月15日に開示いたしましたとおり、Cullgenはアステラス製薬と、革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及び独占的オプション契約を締結いたしました。本戦略的提携において、両社は新規E3リガンドを活用したCullgen独自の技術プラットフォームuSMITE™とアステラス製薬の創薬ケイパビリティを融合し、複数のタンパク質分解誘導剤の創出を目指します。Cullgenとアステラス製薬は共同研究を行い、アステラス製薬は開発及び商業化を担います。乳がんやその他の固形がんを対象として、アステラス製薬が同定したリードプログラムである細胞周期タンパク質に対する分解誘導剤候補化合物の米国におけるアステラス製薬との共同研究は、順調に進展しております。

 

〔開発活動〕

■アイスーリュイ〔中国語:艾思瑞®、英語:ETUARY®(一般名:ピルフェニドン)〕- 北京コンチネント

 

糖尿病腎症(DKD)

 アイスーリュイの適応を糖尿病腎症に拡大する臨床試験は、第Ⅰ相を完了しておりますが、次フェーズ臨床試験の規制上の方向性を決めるため、クラス2会議(臨床試験に関する技術的な会議)の申請を中国のCDE(Center for Drug Evaluation、医薬品評価センター)に提出し、今後の進め方を協議しております。

 

結合組織疾患を伴う間質性肺疾患(SSc-ILD及びDM-ILD)

 アイスーリュイの適応を全身性硬化症(強皮症、SSc-ILD)と皮膚筋炎(DM-ILD)の2つに拡大するため、第Ⅲ相の臨床試験を継続しておりますが、現時点ではF351の臨床試験を優先しております。

 

じん肺治療薬(Pneumoconiosis, PD)

 アイスーリュイの適応をじん肺に拡大する臨床試験は、2022年6月から第Ⅲ相に入っております。2022年末から2023年初頭の中国における新型コロナウイルス蔓延の影響が多少ありましたが、現時点では被験者の登録も再開しております。

 

■F351(肝線維症等治療薬)- 北京コンチネント

 

 F351(一般名:ヒドロニドン)は肝線維症向け治療薬候補として、北京コンチネントの医薬品ポートフォリオにおける重要な創薬候補化合物であり、他の世界の主要医薬品市場へ臨床開発活動を拡大する戦略の重要な部分を占めております。F351は、アイスーリュイの誘導体である新規化合物であり、内臓の線維化に重要な役割を果たす肝星細胞の増殖及び、TGF-β伝達経路を阻害します。

 

 F351は、中国のCDEとの協議を経て、2021年3月にNMPAより肝線維症の画期的治療薬の指定を受けました。これにより、F351についてのCDEとの協議が優先的、かつその協議結果を生かした臨床試験を進めることが可能となり、2021年7月29日には中国における第Ⅲ相臨床試験の許可申請が承認されました。2022年1月に開始した当該試験は、2023年内の被験者登録完了を目前に控え、順調に進捗しております。

 

 なお、F351の権利は、中国においては北京コンチネントが保持しておりますが、日本、豪州、カナダ、米国及び欧州各国を含む中国以外におけるF351の権利は、CBIOに譲渡しております(この取引の詳細については、2022年12月27日の適時開示と2022年12月30日及び2023年1月18日開示のQ&Aをご参照ください)。

 

 CBIOは、米国で代謝障害関連脂肪肝炎(MASH: Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis)*の治療薬として第Ⅱ相臨床試験開始申請(IND)を行う予定です。現在、MASHの治療薬として日米欧で承認された製品はありません。

*:MASHは以前NASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれていた疾患の病名が変更されたものです。上記日本語訳は仮称です。

 

 

 

■F573(急性肝不全(ALF)・慢性肝不全の急性増悪(ACLF)治療薬)-北京コンチネント

 

 F573はアイスーリュイ及びF351に次ぐ3番目の創薬候補化合物として、カスパーゼを阻害する可能性を持つ強いジペプチド化合物であり、急性肝不全(ALF)や慢性肝不全の急性増悪(ACLF)に関連して発生するアポトーシスや炎症反応に重要な化合物です。

 

 2023年3月に最初の被験者を登録した第Ⅱ相臨床試験は、順調に進捗しております。

 

■CG001419(TRK分解剤)- Cullgen

 

 2022年8月9日に「連結子会社CullgenのTRK分解剤に関するIND申請承認のお知らせ」で開示いたしましたとおり、Cullgenは中国のNMPAから固形がん治療用途でのトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)分解剤開発候補化合物であるCG001419のIND承認を取得いたしました。CG001419は、非小細胞肺がんや乳がん、膵臓がん等を含む多くの固形がんで見出される神経栄養性チロシン受容体キナーゼ(NTRK)融合遺伝子にコードされるTRKタンパク質異常の進行がんの治療に使用が期待される、ファースト・イン・クラスの選択的かつ経口剤となり得る標的タンパク質分解誘導作用を持つ開発候補化合物です。

 

 2022年末から2023年初頭にかけての中国における新型コロナウイルス流行を受け、臨床試験の開始が想定より遅れておりましたが、2023年7月に開示いたしましたとおり、ヒトにおける最初の臨床試験となる第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を中国にて開始いたしました。また、米国FDA(食品医薬品局)との米国での臨床試験前の協議は継続しております。