売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS




E00642 Japan GAAP


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。

なお、2025年3月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2025年3月期中間連結会計期間に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映しています。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

①経営成績に関する説明

当社グループは、2025年度から2027年度を対象とする「中期経営計画2027」を「長期ビジョン2035」(「(3)経営方針・経営戦略等」に詳細を記載)の実現に向けた基盤を固める準備期と位置づけ、資本効率の改善に重点を置いた取り組みを進めます。事業戦略としては、外部環境の変化によるコスト高の着実な価格転嫁、製造拠点の安定操業及び競争力強化、グループ営業体制の強化、高付加価値品へのシフトを通じて既存事業の収益力を強化します。また、低収益事業については撤退を含めた構造改革を断行していきます。王子ネピアでは、2025年8月に同社江戸川工場を閉鎖しました。海外事業では、2025年6月にOji Fibre Solutionsが段ボール原紙事業から撤退しました。こうした最適生産体制の構築等を通じて、既存事業の収益力強化を図っていきます。

一方で、高い経済成長が見込まれるインド・東南アジアなどのエリアや、サステナブルパッケージ、木質バイオマスビジネスなどの戦略事業には成長投資を集中させていきます。幅広くバイオマス技術を取り入れ、イノベーションと事業ポートフォリオ転換を加速させ、木質バイオマスビジネスの中核化を図っていきます。

これらの取り組みを通じ、2027年度に連結営業利益1,200億円、親会社株主に帰属する当期純利益800億円、ROE8%を達成します。

 

当中間連結会計期間の売上高は、Walki社の買収・連結子会社化等もありましたが、海外でのパルプ市況の悪化や円高による海外子会社の円貨換算差等により、前中間期を79億円△0.9%)下回る9,150億円となりました。

営業利益は、海外でのパルプ市況悪化や、原燃料価格・物流費・人件費等のコスト上昇等により、前中間期を205億円△55.0%)下回る167億円となりました。

経常利益は、営業利益の減益に加え、外貨建債権債務の評価替えによる為替差損の発生等により、前中間期を306億円△77.7%)下回る88億円となりました。

親会社株主に帰属する中間純利益は、特別利益に保有株式の縮減の取り組みに伴う投資有価証券売却益及び退職給付信託返還益を計上したものの、経常利益の減益に加え、特別損失にOji Fibre Solutions及び王子ネピアで事業構造改善費用を計上したこと等により、前中間期を134億円△55.0%)下回る109億円となりました。

 

当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち、経済的特徴、製品の製造方法又は製造過程、製品を販売する市場又は顧客の種類等において類似性が認められるものについて集約を実施し、「生活産業資材」「機能材」「資源環境ビジネス」「印刷情報メディア」の4つとしています。報告セグメントに含まれない事業セグメント等は、「その他」としています。

なお、報告セグメントの業績をより適切に評価するため、当中間連結会計期間より、従来「その他」に区分していたサステナブルパッケージング事業、液体紙容器事業につきましては、「生活産業資材」に区分を変更しています。また、従来各報告セグメントに配賦していたグループ本社費用は、コーポレート関連業務として各セグメントには配賦せず、「その他」に含めて表示する方法に変更しています。前中間期比較については、前中間期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。

 

 

各セグメントの主要な事業内容は以下のとおりです。

なお、従来の生活産業資材の「家庭紙事業」は「ホームケア事業」に、「紙おむつ事業」は「ウェルネスケア事業」に名称を変更しました。

 

 生活産業資材・・・・・段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業、

            サステナブルパッケージング事業、液体紙容器事業、

             ホームケア事業、ウェルネスケア事業

 機能材・・・・・・・・特殊紙事業、感熱事業、粘着事業、フィルム事業

 資源環境ビジネス・・・植林・木材加工事業、パルプ事業、エネルギー事業

 印刷情報メディア・・・新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業

 その他・・・・・・・・商事、物流、エンジニアリング、不動産事業、コーポレート関連業務 他

 

〈生活産業資材〉

当中間連結会計期間の売上高は前中間期比2.7%増収4,620億円、営業利益は同39.3%減益52億円となりました。

国内事業では、段ボール及びウェルネスケアの大人用おむつは価格修正により増収となりましたが、子供用おむつが2024年9月に国内事業から撤退したことにより、売上高は前年に対し減収となりました。物流費や人件費等のコストの上昇等により、営業利益も減益となりました。

海外事業では、サステナブルパッケージング事業におけるWalki社の買収・連結子会社化により、売上高は前年に対し増収となりましたが、段ボール事業におけるマレーシアでの競争激化等により、営業利益は減益となりました。

 

〈機能材〉

当中間連結会計期間の売上高は前中間期比4.9%減収1,155億円、営業利益は同32.1%減益54億円となりました。

国内事業では、特殊紙は戦略商品である通販向けヒートシール紙・非フッ素耐油紙等の拡販や価格修正等により増収となりましたが、2024年8月にチューエツを売却した影響のほか、感熱フィルムにおける一部需要の減少により売上高は前年に対し減収となりました。営業利益は原燃料価格・物流費・人件費等のコスト上昇があったものの、価格修正やコストダウンへの取り組み等により前年並みとなりました。

海外事業では、感熱事業で拡販により販売数量は増加しましたが、価格競争の激化により、売上高は前年に対し減収、営業利益も減益となりました。

 

〈資源環境ビジネス〉

当中間連結会計期間の売上高は前中間期比5.6%減収1,909億円、営業利益は同70.0%減益53億円となりました。

国内事業では、エネルギー事業は増収となりましたが、パルプ事業は溶解パルプ市況の悪化や輸出品の円高影響により、売上高は前年に対し減収となりました。営業利益はエネルギー事業における燃料費下落等により増益となりました。

海外事業では、PanPac社でサイクロンによる被災からの復旧による増収がありましたが、パルプ市況の悪化や円高による円貨換算差により、売上高は前年に対し減収、営業利益も減益となりました。

 

〈印刷情報メディア〉

当中間連結会計期間の売上高は前中間期比6.8%減収1,362億円、営業利益は同44.4%減益35億円となりました。

国内事業では、価格修正を進めてまいりましたが、新聞用紙及び印刷・情報用紙は需要の減少傾向が継続しており、売上高は前年に対し減収となりました。古紙等の原材料価格の上昇等により、営業利益も減益となりました。

海外事業では、江蘇王子製紙において生産効率の向上に伴う生産量増加も、円高による円貨換算差により、売上高は前年に対し減収となりましたが、営業利益はコストダウンへの取り組み及び石炭等の原燃料価格の下落等により増益となりました。

 

②財政状態に関する説明

 「中期経営計画2027」における財務戦略としては、非コア資産の売却によるコア事業への経営資源の集中や資本コストを意識したハードルレートの適用による投資の厳選により、資産管理を厳格化します。また、配当性向の50%への引き上げ、自己株式取得の機動的な実施により自己資本をコントロールし、借入も活用することで資本構成の見直しを進めます。これらの取り組みを通じて、継続的な資金確保と株主還元強化を両立しつつ、強固な財務基盤を構築します。なお、「中期経営計画2027」の3年間では次の数値を計画しています。

  ・政策保有株式の売却 450億円

  ・退職給付信託拠出株式の見直しによる縮減 210億円

  ・自己株式取得 1,200億円

   ・ネットD/Eレシオ 1.0倍以内

 

当中間連結会計期間末の総資産は、円高の進行による為替換算差や政策保有株式等の売却等により、前連結会計年度末に対し610億円減少し、25,741億円となりました。負債は、支払手形及び買掛金の減少があったものの有利子負債が増加したこと等により、前連結会計年度末に対し65億円増加し、15,087億円となりました。純有利子負債残高(有利子負債-現金及び現金同等物等)は、前連結会計年度末に対し430億円増加し、8,806億円となり、ネットD/Eレシオ(純有利子負債残高/純資産残高)は0.8倍となりました。目標である1.0倍以内を維持しています。純資産は、円高の進行による為替換算調整勘定の減少、自己株式の取得(2025年度自己株式取得額154億円)、退職給付信託株式返還による退職給付に係る調整累計額の減少等により、前連結会計年度末に対し674億円減少し、10,654億円となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間の現金及び現金同等物の残高は、570億円(前中間連結会計期間は1,148億円)となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、221億円の収入前中間連結会計期間は136億円の収入)となりました。主なキャッシュの増加は、税金等調整前中間純利益に減価償却費を加えた金額641億円(前中間連結会計期間は841億円)であり、主なキャッシュの減少は、仕入債務の減少211億円(前中間連結会計期間は270億円の減少)及び法人税等の支払額173億円(前中間連結会計期間は228億円の支払)によるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入等がある一方で、有形及び無形固定資産の取得による支出等により、340億円の支出前中間連結会計期間は932億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出等がある一方で、借入金等の調達等により、62億円の収入前中間連結会計期間は1,246億円の収入)となりました。

当社グループの営業活動に関する資金需要は、生産・販売活動のために必要な運転資金や研究開発費等です。投資活動に関する資金需要は、経営戦略の遂行に必要な投資、品質改善・省力化・生産性向上・安全・環境のために必要な設備投資等です。今後も海外事業や有望な事業等の成長分野に対しては、M&Aや設備投資等を積極的に行っていく予定であり、また、「環境行動目標2040」の達成に向けた取り組みも進めていきます。

資本効率性の改善と株主還元に関しては、配当性向を2025年度より50%に引き上げるとともに、長期的な企業価値向上に向けた成長投資に備えるための資金需要を勘案しつつ、自己株式の取得を実施することとしています。

資金の外部調達は、営業活動によるキャッシュ・フローと資金需要の見通し、金利動向等の調達環境、既存の借入金や社債償還時期等を総合的に勘案の上、調達規模、調達手段等を適宜判断し実施しています。

財務の健全性は、主にネットD/Eレシオを用いて管理しています。

総資産効率向上と財務ガバナンス強化を目的として、国内主要子会社とはキャッシュ・マネジメント・システムを導入することで資金の一元管理を行い、海外子会社においても、中国及びマレーシアでキャッシュ・マネジメント・システムを導入するなど、同一地域内のグループ各社間で資金融通を行った上で、余剰となった資金は随時当社に集約し、現金及び現金同等物の保有は必要最小限に留めています。なお、不測の事態に備え、主要取引行とコミットメントライン契約等を締結しています。

 

(3) 経営方針・経営戦略等

当社グループは、「革新的価値の創造」「未来と世界への貢献」「環境・社会との共生」を経営理念とし、変わり続ける時代のニーズを充足し、新しい未来を支えるモノづくり、そして持続可能な社会の発展を目指しています。

また、企業存続の根幹である「コンプライアンス・安全・環境」を経営の最優先・最重要課題と位置付け、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守、労働災害リスク撲滅、環境事故防止等を全役員・従業員へ確実に浸透させる取り組みを続けています。

経営理念を踏まえ、当社グループのあるべき姿として、「森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」という当社グループのパーパス(存在意義)を策定しています。

当社グループの事業の核は、大切な財産である「森林」です。森林を適切に育て、管理することは、二酸化炭素の吸収固定や生物多様性保全、水源涵養、土壌保全等、森林が持つ様々な公益的機能を高めることにつながり、森林資源を活用した製品群は、化石資源由来の素材・製品を置き換えていくことが可能です。今後も森林資源に根付いた事業活動を通じて環境問題・社会課題への対応に尽力していきます。

また、当社グループは、2035年までの長期ビジョン「長期ビジョン2035」において、「資本効率向上」「ポートフォリオ転換」「サステナビリティ促進」を基本方針に掲げ、企業価値の最大化と社会課題解決に向けた取り組みを通じて、「サステナビリティへの貢献」を実現する企業グループを目指します。

 

・資本効率向上

非コア資産の売却や投資基準の厳格化、自己株式の取得などを通じて、資産のスリム化と資本構成の見直しを進め、成長投資と株主還元の両立を図り、ROEの向上を目指します。

・ポートフォリオ転換

成長性のある事業やエリアへの進出を加速させるとともに、不採算事業の撤退基準を厳格化し、構造改革を断行することを通じて、健全で強靭な事業ポートフォリオへの転換を進めます。

サステナビリティ推進

カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーに向けた取り組みを発展させ、持続可能な社会の実現に向けて環境負荷低減の取り組みを強化しています。また、自然資本会計の時代へ向け、ネイチャーポジティブ経営を進化させます。

 

資本効率向上のための「資産のスリム化」の施策として、2024年度から2030年度までに保有株式を総額1,200億円(政策保有株式 850億円、退職給付信託株式 350億円)縮減することを計画しており、2025年度中間期までに570億円を縮減しました。「株主還元」につきましては、1株当たりの年間配当24円を下限として配当性向を50%に引き上げました。2025年度の配当予想は1株当たり年間36円です。長期的な企業価値向上に向けた成長投資に備えるための内部留保を勘案しつつ、収益力に応じた安定的な配当を継続していきます。また、自己株式についても2024年度から2027年度までに1,500億円の取得を計画しており、2025年度中間期までに447億円取得しました。自己資本と有利子負債のバランスを見直し、成長投資と株主還元の充実を図ります。

 

事業別の具体的な取り組みは以下のとおりです。

 

(a) 生活産業資材

・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業、サステナブルパッケージング事業、液体紙容器事業

国内市場では、当社グループが持つ多様なパッケージング製品の品揃えを活かし、グループ連携を強化してお客様の期待に応えることで、販売拡大に努めます。生産体制の効率化や原紙加工一貫生産化を進めるとともに、M&Aや生産拠点再編により、需要に見合った最適生産体制の構築を進めます。

海外市場のうち東南アジアでは、当社グループの多様な生産拠点が連携し、お客様に最適化したソリューションを提供することでさらなる販売拡大を目指します。段ボール需要の伸びが期待されるインドでは、さらなる事業拡大を目指すとともに、他の包装資材への展開も進めてまいります。ベトナムにおける液体紙容器新工場の建設も決定しました。一方で、ニュージーランドのOji Fibre Solutionsでは、事業環境の変化を受け、2025年6月に段ボール原紙事業から撤退したほか、9月には豪州パッケージング事業の売却を決定しました。欧州では、脱プラスチック包装の分野で最先端の原料加工技術を保有するフィンランドのWalki社、液体紙容器用加工紙や充填機を製造販売するイタリアのIPI社を中心に、サステナブルパッケージをグローバルに拡大してまいります。

 

・生活消費財(ホームケア事業、ウェルネスケア事業)

王子ネピアでは、2025年4月から「ネピア ティシュ」「ネピア トイレットロール」シリーズの新イメージキャラクターに目黒蓮さん、桜田ひよりさんを起用するなど、マーケティング戦略を通じて「nepia」ブランド価値のより一層の向上を図るとともに、「人と地球に、ここちいい。」、人々のくらしと環境に寄り添う製品づくりを行っています。

ホームケア事業では、江戸川工場を2025年8月に閉鎖し、苫小牧工場は2026年3月に停止・閉鎖することを決定しました。生産拠点集約による家庭紙生産体制の再構築を行い、競争力を強化していきます。また、2025年3月からはティシュの枚数や厚みをそのままにボックスティシュの箱サイズコンパクト化を進めているほか、「ネピア トイレットロール」の品質向上や、「ネピア 激吸収キッチンタオル」のパッケージリニューアル等を実施しています。今後も、お客様に寄り添う製品づくりを通じて、事業拡大を目指してまいります。

ウェルネスケア事業では、需要の拡大が予想される大人用おむつに注力していきます。他社との共同輸送といった環境負荷低減の取り組みを進めながら、介護・看護の現場に寄り添い、介護・看護をする人・受ける人双方から信頼される製品を供給してまいります。

このほか、2025年3月に、王子グループ初のスキンケア製品である洗顔ソープ「ネピア 鼻セレブSKINLISMモイストクリアバー・モイストクレンジングバー」を発売しました。今後も様々なスキンケア製品の発売を計画しており、新たな事業の柱に育ててまいります。

 

(b) 機能材(特殊紙事業、感熱事業、粘着事業、フィルム事業)

サステナブル素材及び製品の開発を進めるとともに、市場ニーズを先取りし、お客様の期待に応える製品やサービスを迅速に提供します。また、今後も市場拡大が期待されるような新たな事業領域で高付加価値製品を展開することにも積極的に取り組んでいます。

国内では、高機能なサステナブル製品の積極的な開発に継続的に取り組んでいます。王子エフテックスから販売している、非フッ素タイプの耐油紙「O-hajiki(オハジキ)」や、農業用紙製マルチシート「OJIサステナマルチ」は、高い評価をいただいており、2025年4月にはFDA(米国食品医薬品局)の規格に適合した新製品の「O-hajiki(W)FDA CoC」を発売しました。今後も販売拡大に努めてまいります。また、王子エフテックス滋賀工場で、電動車のモーター駆動制御装置のコンデンサに用いられるポリプロピレンフィルムの生産設備増設を進め、2025年1月に4台目の製造設備が稼働しました。同社中津工場では、変圧器用セルロース系プレスボードの需要拡大に対応し、生産能力を約3倍に増強する増設工事を実施します。今後も需要の動向を見極め、生産体制の増強や高品質化への取り組みを進めてまいります。

海外では、感熱製品の世界市場での拡販と印刷・加工を含めた競争力強化を進めています。より高品質で付加価値の高い感熱紙やラベル製品を開発し、製品の差別化を通じて、既存市場での競争力強化、成長市場での販売拡大を目指してまいります。

 

(c) 資源環境ビジネス(植林・木材加工事業、パルプ事業、エネルギー事業)

グループの経営基盤である持続可能な森林経営を推進し、植林事業の拡大を図るとともにその資源を活用したパルプ事業、木材加工事業、再生可能エネルギー事業、グループの原燃料調達など、総合的な資源環境ビジネスを展開しています。既存事業の競争力強化を図りつつ、新規事業参画によるポートフォリオ転換を進め、豊富な森林資源から様々な価値を生み出し、収益力向上を進めてまいります。

植林事業では、持続可能な森林資源の拡大を推進しています。2024年7月にはウルグアイにおいて3.5万haの植林地を取得したほか、2025年3月には森林アセットマネジメント会社New Forests社との提携により、森林投資ファンド「Future Forest Innovations ファンド」を設立し、本ファンドを通じた約7万haの植林地取得を目指しています。また、2025年5月にはブラジルの植林会社を買収しました。植林地では、森林の成長性改善や森林施業の効率化を図り事業の価値向上を進めるとともに、新規製材工場、林地残材を活用した後述のバイオ炭生産など、新たな事業の検討も進めています。

パルプ事業では、事業基盤強化のため、海外主要拠点での戦略的収益対策を継続して実施しています。また、国内では、成長性のある溶解パルプ事業で増産・拡販を進めるとともに、高付加価値品の生産拡大による収益力向上を図っています。

エネルギー事業では、既存のバイオマス発電事業に加えた新たな再生可能エネルギー事業として、社有林地を活用した風力発電事業の検討を進めています。また、国内外の拠点を活かし、エネルギー事業の拡大に合わせたバイオマス燃料の調達・販売強化を進めてまいります。

 

(d) 印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)

需要に見合った生産体制の最適化を進め、キャッシュ・フロー経営を徹底していくとともに、森林資源と既存事業のリソースを有効活用したポートフォリオ転換により、カーボンニュートラルな社会の実現へ貢献してまいります。

引き続きコストダウンを徹底すると同時に、保有するパルプ生産設備・バイオマス発電設備等の資産を最大限有効活用し、当社グループ全体としての最適生産体制再構築等を通じて、収益力・競争力の強化に取り組んでいます。構造的な環境変化から、2025年3月には塗工紙・微塗工紙生産設備1台を停止し、このたび、さらに新聞用紙生産設備1台の停止を決定しました。また、王子製紙米子工場では、既存のパルプ生産設備に連続工業プロセスを導入し、高品質な溶解パルプの生産を行っています。

 

(e) その他(商事、物流、エンジニアリング、不動産事業、コーポレート関連業務、他)

当社グループは持続可能な社会の構築に貢献すべく、サステナブルな素材である木質資源の有効活用や新規事業の開発を推進し、新しいビジネスモデルの創出に取り組んでいます。

2025年3月に、製薬業界向け微結晶セルロースの製造、販売をグローバルに事業展開する、インドのChemfield社を買収しました。パルプ事業の下流工程にあたる同社を当社グループに加えることで、パルプ加工品の製造販売一貫体制を確立しました。また、2025年9月には欧州で最も先進的なバイオリファイナリー企業であり、溶解パルプ及びバイオエタノール製造販売事業を展開するオーストリアのAustroCel社の全株式を取得する株式譲渡契約を締結しました。幅広くバイオマス技術を取り入れ、イノベーションと事業ポートフォリオ転換を加速させ、木質バイオマスビジネスの中核化を図っていきます。

また、資産スリム化の取り組みとして、賃貸不動産の売却検討を進めてまいります。

 

(f) イノベーションによる新たな価値創造

創業から紙づくりや森づくりで培ってきたコア技術と、豊富な森林資源を活用し、「(ⅰ) 木質由来新素材の開発」「(ⅱ) 未利用バイオマス資源の有価物化」「(ⅲ) 医薬・ヘルスケア領域への本格参入」「(ⅳ) サステナブルパッケージ(環境配慮型製品)の展開」の4つの軸を中心に研究開発を推進し、持続可能な社会への貢献を目指します。

(ⅰ) 木質由来新素材の開発では、化石資源に依存した燃料やプラスチック原料を、バイオマス由来原料に置き換えるべく、木質由来の「糖液」「エタノール」「ポリ乳酸」の技術開発を進めています。「糖液」はバイオものづくりの基幹原料として、「エタノール」はバイオ燃料(SAF、バイオ混合ガソリン)やバイオマスプラスチックをはじめ基礎化学品の製造原料としての需要拡大が見込まれます。「ポリ乳酸」は代表的なバイオマスプラスチックの一つであり、食品用容器・フィルムなどの包装材をはじめとする幅広い用途に利用拡大が期待されています。2024年12月には王子製紙㈱米子工場内に工場のインフラを活用した国内最大級の木質由来糖液のパイロット製造設備を、また、2025年3月には木質由来エタノールのパイロット製造設備を立ち上げ、実証実験を開始しています。今後、製造条件の最適化等を行うと共にサンプルワークを進め、事業化を推進します。

そして、最先端半導体向けの木質由来バイオマスレジストの開発も進めています。今後さらなる成長が見込まれる半導体市場では高性能化に伴い微細加工技術の進化が求められているなか、独自技術によりPFAS不使用(有機フッ素化合物を含まない)かつ次世代EUV(極端紫外線)露光装置にも対応可能なレジストを実現しました。環境配慮と高性能を両立したレジストで顧客ニーズに沿った開発に取り組み、事業化を目指します。

セルロースナノファイバー(CNF)は、透明で軽くて丈夫、変形にも強く、高い増粘効果を有する優れた材料として多種多様な分野での活躍が期待されています。2024年5月には天然ゴムとの複合材の量産試作設備を導入し、タイヤ市場への本格参入を目指して開発体制を強化しています。また、CNFを用いた全熱交換型換気システムの部材である全熱交換エレメントの開発のほか、燃料電池用高分子電解質膜の開発やポリカーボネート樹脂との複合材のロボット部材等への展開にも取り組んでおり、今後も様々な用途で社会実装を進めます。

(ⅱ) 未利用バイオマス資源の有価物化では、バイオ炭によるCO2削減と土壌改良に取り組んでいます。バイオマスを炭化してバイオ炭にすることで、炭素を長期間固定し、大気中のCO2を削減することにより地球温暖化の緩和に寄与します。また、土壌改良剤として、土壌の保水性や通気性を向上させ、植物の生育を促進する効果も期待されています。2025年度より、植林木の未利用樹皮を原料としたバイオ炭をベトナム社有林にて施用する実証試験を開始しました。

(ⅲ) 医薬・ヘルスケア領域への本格参入については、木材中の未活用成分でパルプ製造時の副産物であるヘミセルロースから得られる「硫酸化ヘミセルロース」を原薬とした医薬品の事業化を推進しています。木質由来の原料を使用することで、人畜共通感染症のリスク低減、環境負荷の低減、トレーサビリティ向上といった動物原料依存の問題を回避することが可能となります。現在、動物用関節炎治療薬の承認取得とヒト用医薬品の研究開発を並行で進めており、2025年9月には豪州で動物用医薬品原薬の製造・輸出に関する承認を取得しました。2025年2月には医薬品事業の拡張のため、希少疾患であるホモシスチン尿症治療薬の国内における後発医療用医薬品の製造販売承認申請を行いました。また、創薬における動物実験の回避や再生医療の促進を目指し、細胞培養基材の開発にも注力しています。

さらに、薬用植物「甘草(カンゾウ)」の大規模栽培技術を確立しました。輸入品に依存せずに国産化することで、高いトレーサビリティと安全・安心を確保した持続可能なビジネスを進めていきます。社内シナジー創出により、2024年12月に国産甘草を配合した漢方薬を商品化、テスト販売を実施し、2025年3月には、甘草エキスを配合した『鼻セレブ SKINLISM』の洗顔ソープを発売しました。今後医薬・化粧品、食品分野へのさらなる展開を進めていきます。

(ⅳ) サステナブルパッケージ(環境配慮型製品)の展開では、ポリ乳酸のラミネート紙やポリ乳酸フィルムなどのサステナブル素材、モノマテリアルに適したフィルムの商品化を進めています。ポリ乳酸フィルムは2024年度に㈱伊藤園のティーバッグフィルターに採用されました。

また、2025年9月には、従来の紙のリサイクルから、さらに一歩踏み込んだ資源循環の取り組みとして、紙コップやアルミ付き紙パックといった難処理古紙のマテリアルリサイクルなど、当社グループが推進する様々なリサイクルの取り組みを象徴するブランドとして「Renewa(リニューワ)」を新たに策定しました。今後は本ブランドのもと、様々な企業・団体と連携し、これまでリサイクルが難しかった素材のマテリアルリサイクルを推進することで、サーキュラーエコノミーの実現により一層貢献していきます。

 

(4) 研究開発活動

当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、5,712百万円です。

なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。