売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E25269 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の状況

当第3四半期連結会計期間におけるわが国経済は、コロナ禍からの経済活動正常化の動きが続いたことにより、引き続いて緩やかな回復を見せております。日銀短観9月調査によれば、大企業・非製造業の景況感がインバウンド需要の回復を受けて6四半期連続で上昇したことに加え、大企業・製造業の景況観も2四半期連続で改善しました。

医薬品業界におきましては、ドラッグ・ラグ/ロスの深刻化や、後発医薬品を中心とした医薬品の供給不安といった課題に関する議論が様々な場で行われています。9月20日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会では、2024年4月の次期薬価制度改革に向けて業界団体から意見聴取があらためて行われ、新薬メーカー、後発品メーカー、海外医薬品メーカー、医薬品卸等の業界団体に加えて、創薬ベンチャーを中心とした業界団体である日本バイオテク協議会も出席しました。イノベーションの推進と国民皆保険の持続性を両立し革新的新薬を迅速に導入するための提言がなされ、診療側、支払側等の委員も交えた活発な質疑応答が行われました。

このような環境下において、当第3四半期連結累計期間における当社グループの業績は以下の通りとなりました。

 

ヒト用医薬品につきましては、HK inno.N Corporation(本社:韓国・オソン、以下「HKイノエン社」)が韓国で販売中の胃食道逆流症治療薬K-CAB®(一般名:tegoprazan、以下「tegoprazan」)の売上が引き続き順調に推移しております。本年1月から9月の売上累計額(院外処方データ)が1,141億ウォン(約114億円/1韓国ウォン=0.10円、前年同期比18.7%増)であり、韓国における抗潰瘍薬の市場シェアは13%となりました。

Tegoprazanのグローバル展開も着実に進展しております。当社は、HKイノエン社との間で、tegoprazanの開発・販売及び製造の再実施許諾権(サブライセンス権)付き独占的ライセンス契約を締結しております。当第3四半期連結会計期間末の時点で、韓国を除く35の国において、HKイノエン社とライセンス契約を締結した企業(以下「サブライセンス先企業」)がそれぞれの国・地域で開発・製造・販売にかかる取り組みを進めております。当第3四半期連結会計期間におきまして、新たにインドネシア及びシンガポールにおいて製品の販売が開始され、これによりtegoprazan製品が販売されている国は韓国、中国、モンゴル、フィリピン、メキシコ、インドネシア及びシンガポールの7カ国となりました。韓国に続く2カ国目として、2022年に製品販売が開始された中国では、現在、31の省・行政区でtegoprazan製品が販売されております。さらに、ペルーにおいては、びらん性胃食道逆流症をはじめとする4つの適応疾患に対する販売承認をサブライセンス先企業が取得しました。このほか、アルゼンチン等、20以上の国で現地の規制当局による承認審査が進行しております。

ペット用医薬品につきましては、Elanco Animal Health Inc.(本社:米国・インディアナ州)に導出した犬の骨関節炎治療薬GALLIPRANT®(一般名:grapiprant)、犬の食欲不振症の適応を持つENTYCE®(一般名:capromorelin)、及び慢性腎疾患の猫の体重減少管理の適応を持つELURA®(一般名:capromorelin)の売上が順調に推移しております。

その他の導出済みプログラムにつきましても、導出先企業及びサブライセンス先が前臨床開発段階以降の取り組みを進めております。当第3四半期連結会計期間におきましては、当社が株式会社AskAt(本社:愛知県名古屋市、以下「AskAt社」)に導出し、AskAt社からOxford Cannabinoid Technologies Holdings plc(本社:英国・ロンドン、以下「OCT社」)にライセンスされたカンナビノイドCB2受容体作動薬(RQ-00202730/AAT-730/OCT461201)につきまして、OCT社が第Ⅰ相臨床試験を英国で開始しました。OCT社は、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を主な適応症として今後の臨床開発を進めることを計画しております。

 

導出準備プログラムにつきましては、対面での面談とオンライン会議を機動的に組み合わせて、さらなるライセンス先の獲得に向けた事業開発活動を展開しております。Tegoprazanにつきましては、日本における開発・製造・販売にかかる権利を当社が保有しておりますが、前四半期に引き続いてライセンス先候補企業との協議を行っております。また、大型のライセンス契約の獲得を目指して、自社で開発を進めているグレリン受容体作動薬につきましては、前臨床試験及び臨床試験用原薬製造を引き続き実施しました。

探索研究段階におきましても、新たな開発化合物の創出に向けた探索研究プログラムに注力しているほか、当社の成長戦略の根幹である創薬研究基盤の強化に取り組んでおります。「モダリティ」、「創薬標的」、「疾患領域」及び「基盤技術」という4つの切り口で、既存技術と新たな取り組みの相乗効果によって次世代の自社創薬バリューチェーンを確立することを目指し、自社単独の研究に加えてスタートアップ・創薬ベンチャーとの協業を進めております。

当社連結子会社のテムリック株式会社がSyros Pharmaceuticals Inc.(本社:米国・マサチューセッツ州、以下「シロス社」)に導出したレチノイン酸受容体α作動薬(タミバロテン/AM80/TM-411/SY-1425)につきましては、骨髄異形成症候群(MDS)及び急性骨髄性白血病(AML)を対象とした臨床試験が米国においてシロス社により進められております。

 

以上の結果、当第3四半期連結累計期間の経営成績は、事業収益1,495百万円(前年同四半期比21.5%減)、営業損失108百万円(前年同四半期は、営業利益501百万円)、経常損失36百万円(前年同四半期は、経常利益676百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失117百万円(前年同四半期は、親会社株主に帰属する四半期純利益467百万円)となりました。

なお、事業費用の総額は1,603百万円(前年同四半期比14.3%増)、その主な内訳は事業原価189百万円(前年同四半期比12.8%増)、研究開発費934百万円(前年同四半期比11.2%増)及びその他の販売費及び一般管理費479百万円(前年同四半期比21.4%増)となりました。

 

(2)財政状態の分析

(資 産)

当第3四半期連結会計期間末における総資産合計は、前連結会計年度末に比べ710百万円増加(11.4%増)し、6,968百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加319百万円、売掛金及び契約資産の減少133百万円、前払費用の増加189百万円及び工具、器具及び備品の増加115百万円によるものであります。

 

(負 債)

当第3四半期連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ27百万円減少(3.7%減)し、732百万円となりました。これは主に、リース債務の増加87百万円及び未払金の減少131百万円によるものであります。

 

(純資産)

当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ738百万円増加(13.4%増)し、6,235百万円となりました。これは主に、第三者割当増資に伴う資本金及び資本剰余金の増加786百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失117百万円の計上によるものであります。

 

以上の結果、自己資本比率は89.1%(前連結会計年度末比1.4ポイント増)となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、前連結会計年度末に比べ236百万円増加(6.4%増)し、3,915百万円(前年同四半期は3,355百万円)となりました。

当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により使用した資金は、405百万円(前年同四半期は、資金の獲得952百万円)となりました。これは主に、税金等調整前四半期純損失37百万円及び減価償却費120百万円を計上したことのほか、売上債権の減少133百万円による資金の獲得、前払費用の増加172百万円、未払金の減少137百万円による資金の使用及び法人税等の支払額119百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は、268百万円(前年同四半期は、資金の獲得57百万円)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出100百万円、有形固定資産の取得による支出189百万円、投資有価証券の取得による支出160百万円及び投資有価証券の償還による収入200百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により獲得した資金は、812百万円(前年同四半期は、資金の使用11百万円)となりました。これは主に、長期借入れによる収入50百万円、株式の発行による収入782百万円及びリース債務の返済による支出32百万円によるものであります。

 

(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当第3四半期連結累計期間において、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(6)研究開発活動

当社グループの研究開発活動における当第3四半期連結累計期間の研究開発費は、前年同四半期に比べ94百万円増加し、934百万円(前年同四半期比11.2%増)となりました。これは主に、臨床開発費の増加46百万円によるものです。なお、当第3四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、事業活動のための適切な流動性の確保と株主価値向上のための資金調達戦略の提示と実行を基本方針としております。

資本の財源につきましては、医薬品の上市品目が増えたことにより、長期的かつ安定的なロイヤルティ収入が主要な財源となっております。一定規模以上の臨床開発を除き、ロイヤルティ収入を財源として医薬品の研究開発を進めてまいります。また、今後の臨床開発等の資金需要に対して、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保するため、複数の金融機関と総額17億円のコミットメントライン契約を締結しているほか、ファイナンス・リースや銀行借入等の活用により財務基盤の強化を図っております。

資金の流動性につきましては、当第3四半期連結会計期間末における流動比率は1,529.6%となっており、十分な流動性を確保しております。

当第3四半期連結累計期間の四半期連結キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。