売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E35496 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。

(1)財政状態の状況

(資産)

 当第3四半期会計期間末における流動資産は3,728,543千円となり、前事業年度末に比べ64,191千円減少いたしました。これは、有価証券が301,390千円、原材料及び貯蔵品が125,648千円、製品が26,422千円増加した一方で、現金及び預金が452,185千円、仕掛品が52,131千円減少したことが主な要因であります。

 固定資産は198,174千円となり、前事業年度末に比べ338,143千円減少いたしました。これは、有形固定資産が18,916千円、無形固定資産が7,550千円及び投資その他の資産が311,676千円減少したことが要因であります。

 この結果、総資産は3,926,718千円となり、前事業年度末に比べ402,335千円減少いたしました。

(負債)

 当第3四半期会計期間末における流動負債は225,971千円となり、前事業年度末に比べ195,614千円減少いたしました。これは、未払費用が10,173千円増加した一方で、未払金が157,680千円、買掛金が49,069千円減少したことが主な要因であります。

 固定負債は1,029,546千円となり、前事業年度末に比べ125,418千円減少いたしました。これは、長期借入金が120,006千円減少したことが主な要因であります。

 この結果、負債合計は、1,255,517千円となり、前事業年度末に比べ321,033千円減少いたしました。

(純資産)

 当第3四半期会計期間末における純資産は2,671,200千円となり、前事業年度末に比べ81,302千円減少いたしました。新株予約権の行使による新株の発行により資本金と資本剰余金がそれぞれ195,722千円増加した一方で、四半期純損失469,561千円を計上したことが主な要因であります。

 この結果、自己資本比率は67.8%(前事業年度末は63.3%)となりました。

 

(2)経営成績の状況

 当第3四半期累計期間における国内の医薬品業界は、新薬創出の難易度が高まる中、医療費を含む社会保障費の適正化政策の方針継続や薬価制度の改正の影響等により、厳しい事業環境の中で推移いたしました。

 このような事業環境のもと、当社は、国内事業において、将来のBNCT※1の業容拡大を見据え、国立大学法人筑波大学が計画している初発膠芽腫※2を対象とした第Ⅰ相医師主導治験に関する契約を締結したほか、当社と三菱ケミカル株式会社及び国立大学法人東京大学との間で、ポリビニルアルコール※3とボロノフェニルアラニン※4から構成されるBNCT用製剤の実用化に向けた共同研究契約を締結いたしました。さらに創薬パイプラインにおいても、2023年12月に「切除不能な皮膚血管肉腫※5」を対象として、希少疾病用医薬品※6の指定を受けることができました。同指定を受けることにより、製造販売承認審査手続きにおける優先的な審査や国からの研究費の助成を受けることができるなどの優遇措置が付与されることになりました。

 また、海外事業においては、欧米市場への薬剤提供体制の構築に向け、引き続き医薬品受託製造会社及びコンサルティング会社と協議を進めるとともに、2025年から治療開始を予定している海南島医療特区への薬剤提供に向け現地関連当局や物流企業と輸出入手続きなどを進めております。

 BNCTの認知度向上に向けた取り組みに関しては、ライフサイエンス分野の最先端の情報を提供するビジネス誌であるLife Sciences Reviewにおいて、BNCTの実用化を達成したこれまでの取り組みが評価され、当社が同誌のTop 10 Therapeutics Companies in APAC 2023 に選出されました。また、医薬品の製造・開発に関する専門誌であるPHARM TECH JAPANにおける連載企画に寄稿を行いました。さらに、在日フランス大使館において、当社のBNCTに関心を示すフランスのリヨンベラールがんセンター(Centre Léon Bérard)の研究所長と面談を行いました。

 以上の結果、当第3四半期累計期間の売上高は200,193千円(前年同期比14.3%増)、営業損失は466,969千円(前年同期の営業損失は503,005千円)、経常損失は466,654千円(前年同期の経常損失は480,498千円)、四半期純損失は469,561千円(前年同期の四半期純損失は483,220千円)となりました。

 なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

<創薬パイプラインの状況>

① SPM-011[対象疾患:悪性神経膠腫※7

 再発悪性神経膠腫については、日本国内において、2015年12月に第Ⅱ相臨床試験の治験届を提出し、2017年4月には厚生労働省の「先駆け審査指定制度」※8の対象品目に指定され、2020年7月に治験終了届を提出いたしました。

 当該治験の主要評価項目は、BNCT施術後1年後における生存割合とし、安全性及び有効性について評価しております。その結果、再発膠芽腫24例の1年生存率が79.2%となり、試験開始前の設定期待値60%を超える結果となりました。当該試験結果をもって、先駆け審査指定制度の枠組みにおいて独立行政法人医薬品医療機器総合機構と一部変更申請に向けた協議を行っておりましたが、当該試験の主要評価項目である生存率は、年齢やがんの組織型(grade)、術前の全身状態等の患者背景因子が影響することから、同機構からは、当該因子の相違を排除した上で有効性を示す追加的な臨床データの必要性について指摘されました。

 これらを踏まえ、今後の方向性については初発悪性神経膠腫への適応拡大も視野に入れ、再検討することとしております。

 また、国立大学法人筑波大学が計画している医師主導治験への協力を通じて、初発膠芽腫への適応拡大を視野に入れています。

 

② SPM-011[対象疾患:再発高悪性度髄膜腫※9

 大阪医科薬科大学病院において、医師主導治験※10として第Ⅱ相臨床試験を実施しており、2021年9月には当該試験の被験者登録が終了しました。今後は被験者の経過観察期間(最長3年間)を経て、評価、データ解析等の試験が実施される予定であり、当該試験の終了後はPMDAと申請に向けた協議を開始いたします。

 なお、当該試験で使用された治験薬は当社が提供しております。

 

③ SPM-011[対象疾患:悪性黒色腫※11及び血管肉腫]

 2022年11月に血管肉腫を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験を開始し、2023年1月には最初の被験者への照射も実施されました。なお、血管肉腫に関しては、希少疾病用医薬品の指定に向けて、厚生労働省と協議を進めた結果、2023年12月に同指定を受けることができました。

 引き続き血管肉腫を優先的に開発することとしながら、悪性黒色腫の開発は第Ⅰ相臨床試験で対象とした疾患から適応を広げることも含めて検討していく予定です。

 なお、本試験は株式会社CICSが開発した加速器中性子捕捉療法装置「CICS-1」を用い、国立研究開

発法人国立がん研究センター中央病院において実施しております。

 

<語句説明>

※1「BNCT」

 BNCT(Boron Neutron Capture Therapy)とは、放射線治療の一種であり、新しいがんの治療法です。ホウ素の安定同位体であるB-10(天然ホウ素に約20%含まれる)の原子核はエネルギーの低い低速の中性子(熱中性子)をよく吸収し、直ちにヘリウム原子核(He核(α粒子))とリチウム原子核(Li核)に分裂します。これら原子核は細胞を破壊する能力が非常に大きい一方で、影響を及ぼす範囲が4~9ミクロン(μm)と極めて短いことが特徴です。また、熱中性子自体の細胞破壊能力は小さいため、B-10を含む物質ががん細胞に選択的に集積し、そこに熱中性子が照射されると、そのがん細胞は選択的に破壊されます。この原理に基づいて考案された医療技術がBNCTです。

 

※2「膠芽腫」

 神経膠腫のうち、悪性度が高い神経膠腫を悪性神経膠腫と呼び、特にグレードⅣの神経膠腫を膠芽腫と呼びます。膠芽腫を含む悪性神経膠腫は、現在なお治療が困難な疾患とされています。

 

※3「ポリビニルアルコール」

生体適合性に優れた無色無臭の水溶性高分子であり、医用材料として既に様々な形で利用されております。

 

※4「ボロノフェニルアラニン」

必須アミノ酸のフェニルアラニンと類似した構造を持ちながら、ホウ素原子を含有した化合物です。がん細胞に

選択的かつ効率的に取り込まれることが知られており、熱中性子を当てると化合物中のホウ素原子が核反応を起こ

し、がん細胞を殺傷いたします。

 

※5「血管肉腫」

 血管肉腫とは、血管の内皮細胞から発生するがんのことです。体のいたるところにできる可能性があり、皮膚に生じることが多いがんです。

 

※6「希少疾病用医薬品」

 厚生労働大臣から指定を受け、優先的に審査される医薬品です。指定には、当該医薬品の用途に係る対象者数が本邦において5万人未満であること、重篤な疾病を対象とするとともに、代替する適切な医薬品または治療法がない、または既存の医薬品と比較して著しく高い有効性または安全性が期待されるなど、医療上の必要性が高いこと、対象疾病に対して当該医薬品を使用する理論的根拠があること、その開発に係る計画が妥当であると認められることが必要とされています。

 

※7「悪性神経膠腫」

 神経膠腫とは、脳に発生する悪性腫瘍であり、原発性脳腫瘍の約30%を占めます。神経膠腫は、その悪性度によって4段階(グレードⅠ~Ⅳ)に分類されます。中でもグレードⅢ~Ⅳに分類される悪性度が高い神経膠腫を悪性神経膠腫と呼びます。

 

※8「先駆け審査指定制度」

 一定の要件を満たす新薬等について、厚生労働省が、開発の比較的早期の段階から薬事承認に係る相談・審査等において優先的な取扱いを行う制度です。具体的には、「①治療薬の画期性、②対象疾患の重篤性、③対象疾患にかかる極めて高い有効性、④世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思」の4つの要件を満たす画期的な新薬等を開発段階で対象品目に指定し、新たに整備された相談の枠組みを優先的に適用し、かつ優先審査を適用することにより、審査期間を6ヶ月(通常は12ヶ月)まで短縮することを目指すものとされています。

 なお、先駆け審査指定制度においては、対象品目の指定時に予定される効能又は効果も指定されることから、製造販売承認取得後に適応疾患を拡大する際には同制度の対象外となります。当社は、現在、再発悪性神経膠腫と切除不能な局所再発頭頸部癌並びに局所進行頭頸部癌(非扁平上皮癌)について、対象品目の指定を受けています。

 

※9「高悪性度髄膜腫」

 髄膜とは、脳と脊髄を保護している薄い組織層で、髄膜腫とはその内側の層の一つにできるがんのことです。髄膜腫は良性であることが多く、高悪性度髄膜腫は希少疾患である一方で、再発や転移を起こしやすい、治りにくい腫瘍の一つです。

 

※10「医師主導治験」

 医師主導治験とは、製薬企業等と同様に医師自ら治験を企画・立案し、治験計画届を提出して実施する治験を指します。大阪医科薬科大学病院において実施している再発高悪性度髄膜腫の臨床試験に使用されたホウ素薬剤は、当社から提供しています。

 

※11「悪性黒色腫」

 悪性黒色腫は皮膚がんの一つで、単に黒色腫又はメラノーマと呼ばれることもあります。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞で、表皮の基底層に分布しているメラノサイト又は母斑細胞が悪性化した腫瘍と考えられています。

 

 

(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(4)経営方針・経営戦略等

当第3四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(6)研究開発活動

当第3四半期累計期間における研究開発活動の金額は、208,524千円であります。

なお、当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。