売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E01831 Japan GAAP


2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)財政状態及び経営成績の状況

 当第3四半期連結累計期間における当社グループを取り巻く環境は、国内においては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の分類が5類へ移行するなど社会経済活動の正常化が進んでおり、インバウンド需要の回復や設備投資意欲の高まりなど、景気は緩やかな回復傾向にあります。一方で、原材料価格の高止まりや物価の上昇、不安定な国際情勢による地政学的リスクに加え、為替相場の急速な変動や中国の経済成長鈍化など、世界経済の先行きについては依然として不透明な状況が続いております。

 このような環境の下、当社グループでは企業価値である「Smiles for the Public ――人々が笑顔になれる社会をつくる――」の実現に向け、2030年を見据えた経営ビジョンとして、「Dr.Sound -社会の音を良くするプロフェッショナル集団-になる」を掲げております。お客さまに選ばれる良い音体験の継続的提供を通じ、社会課題の特定、解決、改善の一連のサイクルをお客さまと共に実現してゆく頼れるパートナーとして、人々の安心・信頼・感動の価値実現を目指しております。

 当第3四半期連結累計期間では、PCに文章を入力するだけで簡単に放送アナウンス音源を作成できる「YUTTE」(2023年度グッドデザイン賞受賞)のβ版サービスの提供開始や、ネットワーク上の様々なシステムと連携し、制御することができる放送システム「IPオーディオシリーズ」のラインアップ拡充など、お客さまと多様な接点で価値提供を実現する“つながるビジネス”の展開を推進しております。

 また、当社は2025年日本国際博覧会に「運営参加 ブロンズパートナー」として協賛を開始いたしました。当社は会場全体を「未来の街」のモデルと捉え、今回の取り組みを通じて、新たな情報伝達とコミュニケーションの姿を創造・発信し、未来社会に実装していくチャレンジを進めてまいります。

 このような状況の下、当第3四半期連結累計期間における売上高は34,389百万円(前年同四半期比+2,835百万円、9.0%増)となりました。利益については、国内販売が伸長したことによる収益性の改善などにより、営業利益は1,990百万円(前年同四半期比+1,378百万円、225.1%増)、経常利益は2,438百万円(前年同四半期比+1,571百万円、181.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,558百万円(前年同四半期比+677百万円、77.0%増)となりました。

 

 セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

(日本)

 売上高は19,303百万円(前年同四半期比+1,232百万円、6.8%増)、セグメント利益(営業利益)は3,909百万円(前年同四半期比+881百万円、29.1%増)となりました。

 国内の工場や病院、交通市場向けの売上が伸長しました。北米の鉄道車両向けの売上は減少しましたが、セグメント全体の売上高は増加し、セグメント利益は増加しました。

 

(アジア・パシフィック)

 売上高は6,838百万円(前年同四半期比+681百万円、11.1%増)、セグメント利益(営業利益)は1,319百万円(前年同四半期比+231百万円、21.3%増)となりました。

 イスラム圏においては、ラマダン需要の取り込みにより宗教市場向けの販売が伸長しました。また、ベトナムでは官公庁や大型都市開発プロジェクト、タイでは教育市場向けの納入が進んだことなどにより、セグメント全体の売上高は増加し、セグメント利益は増加しました。

 

(欧州・中東・アフリカ)

 売上高は4,757百万円(前年同四半期比+796百万円、20.1%増)、セグメント利益(営業利益)は672百万円(前年同四半期比+300百万円、81.1%増)となりました。

 欧州での販売が堅調に推移し、イギリスでは国立図書館、南部アフリカでは病院向けの納入が進んだことなどにより、セグメント全体の売上高は増加し、セグメント利益は増加しました。

 

(アメリカ)

 売上高は1,992百万円(前年同四半期比+157百万円、8.6%増)、セグメント利益(営業利益)は143百万円(前年同四半期比+75百万円、110.0%増)となりました。

 アメリカでは官公庁や教育市場向け、カナダでは病院や教育市場向けの納入が進んだことなどにより、セグメント全体の売上高は増加し、セグメント利益は増加しました。

 

(中国・東アジア)

 売上高は1,498百万円(前年同四半期比△32百万円、2.1%減)、セグメント利益(営業利益)は135百万円(前年同四半期比+9百万円、7.6%増)となりました。

 中国や香港では市況の回復により販売が堅調に推移し、中国では博物館や教育市場向けの納入も進んだことなどにより売上高は増加しました。台湾では半導体を中心とした工場向けの納入は進みましたが、前年同四半期に大型スポーツ施設への納入があった反動により、売上高は減少し、セグメント全体の売上高は減少しました。

 売上高は減少しましたが、営業費用の減少により、セグメント利益は増加しました。

 

 当第3四半期連結会計期間末における総資産は65,315百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,410百万円の増加となりました。資産の部は、売上債権の減少などありましたが、棚卸資産の増加などにより増加しました。負債及び純資産の部は、為替換算調整勘定の増加などにより増加しました。

 

(2)研究開発活動

 当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、2,131百万円であります。

 なお、これらの研究開発活動は全報告セグメントを対象とするものであり、当第3四半期連結累計期間における、主な成果は以下のとおりです。

 

・文章を入力するだけで放送アナウンス音源を簡単に作成できる「YUTTE(ゆって)」のβ版サービスを提供開始しました。

 「YUTTE」は、PCでテキスト入力を行い、話者の性別、感情、抑揚のレベルなど合計26パターンから選択すると、簡単にアナウンス音源が作成でき、その場でダウンロードして利用することができます。そのほか、チャイムやBGMなどを加えたアレンジも可能なため、公共施設、イベント会場、商業施設など、アナウンスを流す場所に応じた音声のカスタマイズが可能です。「YUTTE」をご活用いただくことにより、さまざまな状況変化に応じて放送内容の変更をタイムリーに行うことができ、マイク放送業務の低減や、アナウンサー録音と比べて短納期・低コストであるなど、放送に関わる業務の効率化に貢献できます。

 「YUTTE」はユーザーの皆様が実際に操作いただき、機能を実感いただけるようβ版サービスをおおよそ1年間提供いたします。すでに観光施設や公共交通機関では試験的に導入いただいており、今後はチャイム・BGMの楽曲数や話者バリエーションの拡充といったアップデートを予定しております。

 

・ネットワーク上の様々なシステムやソリューションと連携可能な放送システム「IPオーディオシリーズ」3機種を発売しました。

 「IPオーディオシリーズ」は、放送システムをネットワークに組み込むことで、SIP電話やVMSソフトウェア(防犯カメラ、インターカムシステムなど)といった外部システムからの音声放送や、IoTセンサーやAIによるセンシングと連携した自動放送などが可能です。これまでに発売した本シリーズのスピーカーや音声インターフェースに加えて、新たにマイクロホン2機種と小型アンプを発売しました。ユーザーの利用目的に合わせた音源選択や双方向の音声コミュニケーションを実現したことで、放送ソリューションの柔軟性をさらに向上させています。

 また本シリーズの特徴として、機器自身に最大20種類の音源を登録できることや、カレンダー形式での放送スケジュールの設定、放送の優先度設定や音量制御をスピーカー単位で設定できるなど、従来のアナログ放送に比べてより緻密で柔軟なシステムを構築できます。当社製品だけでなく他社製品・システムとも連携し、適切な情報を適切なタイミングと音量で必要な人に届けられる、きめ細やかな放送ソリューションをご提供できます。

 

・多彩なバリエーションからシーンを選ばずに利用可能なコンパクトスピーカー「Fシリーズ」をリニューアルし、ローインピーダンススピーカー6機種を発売しました。

 今回のリニューアルでは、幅広い建築意匠と調和するようデザインコンセプトを刷新し、音源を忠実に再現することにこだわり完全自社設計のスピーカーユニットを導入しました。また、取付金具の改良による施工性の向上など「空間調和性(音・デザイン)と施工性を両立する形」を追求しております。

 

・音を正確に再生することにこだわったプロフェッショナルモニタースピーカー「ME-50FS」を発売しました。

 「ME-50FS」は「再生音の原器」を目指して社内評価と教育のために開発されました。その高性能かつ高音質が音質を探求する業界内から非常に高い評価を頂きこのたび商品化に至りました。

 「ME-50FS」はスピーカーユニットに必然的に現れる位相や特性の乱れを一つ一つ丁寧に補正し、理想的な周波数特性、位相特性、インピーダンス特性を実現したことにより、原音を正確に再生することが可能となりました。良い音を追求する全ての方々、その中でも特に、高い再生能力が求められる放送局やマスターリングスタジオ向けのモニタースピーカーです。自社開発、国内生産による徹底した品質管理、購入後のユーザーサポートによる高い信頼性を誇る完全受注生産モデルです。