E02152 IFRS
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)が判断したものです。
(1) 業績の状況
当第3四半期連結累計期間の売上収益は、自動車売上台数の増加および為替変動による増収効果などにより、3兆4,964億円と前年同期比6,884億円(24.5%)の増収となりました。
利益面についても、諸経費等の増加および原材料価格の上昇などがあったものの、自動車売上台数の増加および為替変動による増益効果などにより、営業利益は3,710億円と前年同期比1,573億円(73.6%)の増益、税引前四半期利益は4,162億円と前年同期比2,011億円(93.5%)の増益となりました。また、親会社の所有者に帰属する四半期利益も2,989億円と前年同期比1,444億円(93.5%)の増益となりました。
当第3四半期連結累計期間のセグメントの状況は以下の通りです。
① 自動車事業部門
生産および調達などにおける各種取り組みを継続してきたことにより、当第3四半期連結累計期間の国内の生産台数は49.1万台と前年同期比3.3万台(7.3%)の増加、海外の生産台数は26.6万台と前年同期比5.2万台(24.3%)の増加となりました。以上の結果、国内と海外の生産台数の合計は75.7万台と前年同期比8.5万台(12.7%)の増加となりました。
売上台数は、重点市場である米国を中心に堅調に推移し、海外の売上台数は66.0万台と前年同期比10.1万台(18.1%)の増加、国内の売上台数は7.5万台と前年同期比0.1万台(1.0%)の減少となりました。その結果、海外と国内の売上台数の合計は73.6万台と前年同期比10.0万台(15.8%)の増加となりました。
売上収益は、自動車売上台数の増加および為替変動による増収効果などにより、3兆4,215億円と前年同期比6,712億円(24.4%)の増収となりました。またセグメント利益は、諸経費等の増加および原材料価格の上昇などがあったものの、自動車売上台数の増加および為替変動による増益効果などにより、3,671億円と前年同期比1,556億円(73.6%)の増益となりました。
なお、当第3四半期連結累計期間の地域別の売上台数は以下の通りです。
② 航空宇宙事業部門
「ボーイング787」の引き渡しが増加したことなどにより、売上収益は711億円と前年同期比171億円(31.7%)の増収となりました。セグメント損失は3億円となりましたが、前年同期比22億円の改善となりました。
③ その他事業部門
売上収益は前年同期並みの38億円となりました。また、セグメント利益は、38億円と前年同期比9億円(19.5%)の減益となりました。
(2) 財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の資産は、4兆3,549億円と前連結会計年度末に比べ4,107億円の増加となりました。主な要因は、外貨建定期預金の増加および為替の影響などにより「その他の金融資産(流動)」が2,364億円増加したこと、設備投資などにより「有形固定資産」が498億円増加したこと、「無形資産及びのれん」が393億円増加したことなどです。
負債は、1兆9,805億円と前連結会計年度末に比べ1,463億円の増加となりました。主な要因は、長期借入金の増加およびグリーンボンドの発行により「資金調達に係る債務(流動および非流動)」が405億円増加したこと、「未払法人所得税」が397億円増加したこと、為替の影響などにより「その他の非流動負債」が337億円増加したことなどです。
資本は、2兆3,744億円と前連結会計年度末に比べ2,644億円の増加となりました。主な要因は、四半期利益の計上、配当金の支払いおよび取得した自己株式の消却により「利益剰余金」が1,921億円増加したこと、為替換算調整勘定の増加などにより「その他の資本の構成要素」が778億円増加したことなどです。
(百万円)
(3) キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、9,688億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は4,679億円(前年同四半期連結累計期間は3,257億円の増加)となりました。主な要因は、税引前四半期利益4,162億円、減価償却費及び償却費1,605億円、法人所得税の支払額1,012億円などです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は4,188億円(前年同四半期連結累計期間は2,018億円の減少)となりました。主な要因は、定期預金の純増額1,702億円、有形固定資産の取得による支出(売却による収入との純額)1,269億円、無形資産の取得及び内部開発に関わる支出875億円などです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は997億円(前年同四半期連結累計期間は942億円の減少)となりました。主な要因は、親会社の所有者への配当金の支払額651億円、自己株式の取得による支出400億円などです。
(百万円)
当社グループは、ありたい姿「笑顔をつくる会社」に向けて、私たちがお客様に提供する価値である「安心と愉しさ」と経営理念である“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、SUBARUを自動車と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドとして持続的に成長させ、中長期的な企業価値の向上を図っていきます。また、新経営体制への移行に伴い、2023年8月2日に「新経営体制における方針」の説明を実施しました。
① ありたい姿、提供価値、経営理念
<ありたい姿> 笑顔をつくる会社
<提供価値> 安心と愉しさ
<経営理念> “お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す
② 基本方針
<品質方針>
1.お客様に安心して長くお使いいただける商品をお届けします
2.お客様の声に常に耳を傾け、商品とサービスに活かします
3.法令・社会規範・社内規則を遵守し、お客様に信頼される仕事をします
<SUBARUグローバルサステナビリティ方針>
1.事業を通じて、地球環境の保護を含む様々な社会課題の解決と、持続可能な社会の実現に貢献します。
2.高品質と個性を大切にし、先進の技術で、SUBARUならではの価値を提供し続け、SUBARUグループに関わるすべての人々の人生を豊かにしていきます。
3.国際社会における良き企業市民として、人権および多様な価値観・個性を尊重し、すべてのステークホルダーに誠実に向き合います。
4.従業員一人ひとりが、安全に安心して働くことができ、かつ働きがいを感じられるよう職場環境を向上させます。
5.国際ルールや各国・地域の法令を遵守するとともに、その文化・慣習等を尊重し、公正で透明な企業統治を行います。
6.ステークホルダーとの対話を経営に活かすとともに、適時かつ適切に企業情報を開示します。
③ 新経営体制における方針
当社は2023年8月2日に「新経営体制における方針」の説明を実施し、「2030年に向けた電動化計画のアップデート」と「2030年を見据えたうえでの2028年までの直近5年間に向けた決意」を公表しました。
「新経営体制における方針」においても前中期経営ビジョン「STEP」で掲げた「個性を磨き上げ、お客様にとってDifferentな存在になる」「お客様一人一人が主役の、心に響く事業活動を展開する」「多様化する社会ニーズに貢献し、企業としての社会的責任を果たす」という3つの目指す方向については変わることはありません。また、これまで重点取り組みに据えてきた「組織風土改革」「品質改革」については、当社が持続的に成長していくうえで根底にあるものであり、新経営体制においても企業競争力を高める土台として取り組み続けていきます。そして「SUBARUらしさの進化」については、SUBARUの提供価値である「安心と愉しさ」をBEV*時代においても追求し続けるために、「モノづくり革新」「価値づくり」という2つの取り組みにステージアップしていきます。
* BEV (Battery Electric Vehicle):電気自動車
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
自動車業界は100年に一度の大変革期にあると言われていますが、さらに非連続で従来以上にスピード感のある変化が生まれています。この急速な変化に対して当社も柔軟性と拡張性を念頭に置きながら、よりタイムリーに対応していきます。
① 2030年に目指す姿
<2030年に目指す販売台数の電動化比率を大きく見直し>
当社は、脱炭素社会の実現に貢献するべく、2050年にWell-to-WheelでCO2排出量を2010年比で90%以上削減することを目指しています。これに向けて2030年代前半までには全世界で販売するSUBARU車のすべてに電動化技術を適用します。2030年時点でのマイルストーンについて、従来は全世界での販売台数の40%以上をBEVとハイブリッド車に転換していく計画としていましたが、新たに電動化比率をBEVのみで50%を目指すという目標に大きく見直しました。
<生産体制の再編計画をアップデート>
2022年5月以降、段階的に発表してきた生産体制の再編計画についてもアップデートを行いました。具体的には、これまでに公表してきた国内生産体制の再編に加え、新たに米国においてもトヨタハイブリッドシステムを搭載した次世代e-BOXER車両およびBEVの生産を開始することとしました。これにより、全世界の工場生産キャパシティは120万台レベルを持つこととなります。
また、2028年末までにはBEVを4車種追加し、2026年末までに投入することを公表済みの4車種に加えて、合計8車種のBEVをラインアップします。
② 2028年に向けた決意
2030年に向けて、従来の電動化計画を大きくアップデートいたしましたが、これらを実現するうえで、当社は2028年までの5年間を大変重要な期間として位置づけ、「モノづくり革新」と「価値づくり」の2つの取り組みを進めていきます。自動車業界の大変革期のなかで決して埋没することのないよう、「モノづくり」と「価値づくり」においては、世界最先端でありたいと考えています。内燃機関からBEVに替わっていく過渡期において、国内外工場再編による「生産体制」の刷新を決断したタイミングに「開発プロセス」や「商品企画」の刷新を合わせ、BEVへ資源を集中することで、早期に「モノづくり革新」「価値づくり」を実現します。このチャレンジを「2028年までの今後5年間でやり切る」ということが新体制の決意です。
<モノづくり革新>
100年に一度の大変革期においては、同業他社のみならず、異業種のまったく新しい価値観を持った競合と戦い、凌駕していかなければならない状況を迎えています。モノづくり革新を通じて、小回りの利く私たち「SUBARUの規模だからこそできる」製造・開発・お取引先様領域まで含めたサプライチェーンが一体となった“ひとつのSUBARU化”を進めることで、高密度なモノづくりを推進していきます。この考え方を軸に、開発手番半減、部品点数半減、生産工程半減を実現し、世界最先端のモノづくりを成し遂げます。
現在は商品構想、設計、生産などが、それぞれ前工程の手離れを待ちリレー式に進めてきた業務を、モノづくり革新のなかでは、各領域をアジャイルに進めていくことで、モノづくりに要する時間の半減につなげます。また、このような取り組みを絶え間なく推進していくことで、既存領域にかかる開発日数、生産手番などの抑制を図り、先行きの見えない時代における「非連続に変化する領域」への対応力も強化していきます。
<価値づくり>
当社はお客様の人生に寄り添うクルマづくりをしてきました。そのクルマたちが、お客様との想い出をつくり、米国ではお客様の心の中でLoveという言葉が生まれています。そのLoveをさらに拡げたいという思いから、米国販売子会社であるスバル オブ アメリカ インクでは、全米の販売店と一体となったLove Promiseという活動として実を結んでいます。SUBARUの商品を核として、お客様、販売店、SUBARU、そして地域社会の人と人を強固につなげるこの取り組みこそが「SUBARUの社会と未来への価値貢献」であり、これを守り、さらに取り組みの輪を拡げていきます。このような取り組みを拡げていこうという想いは、この先の大変革期や電動化時代となっても決して変わるものではありません。お客様、販売店、そして私たちSUBARUのつながりの中心にある「商品」において、その価値をさらに進化させていきます。
BEV時代の「価値づくり」において、まず重要となるのがSUBARUの提供価値である「安心と愉しさ」のさらなる進化です。BEV時代においては、「SUBARUらしさは失われるのではないか?」という問いを受けることがあります。その答えの1つとして、当社が長年培ってきたAWD性能は、BEV化により、緻密な制御を可能にし、「安全・安心」という強みをさらに強化することができると考えています。またBEV時代のシームレスやストレスフリーといった使い勝手の追求や、クルマの魅力を減らすことなく、長くお付き合いいただきたいという考えに基づく減価ゼロの発想など、BEVの時代においても、SUBARUはテクノロジーで応えていきます。このような商品や機能を核とし、お客様には「安心」「挑戦」「いつでも新しい」といった、「SUBARUと共に過ごすことでの色褪せない情緒的な価値」を感じていただけると考えています。電動化が進むことにより、「今まで以上にお客様の人生の寄り添うSUBARU」を目指していきます。
これらの「モノづくり革新」「価値づくり」の原動力となるのは人財であり、人財を育てていくことこそが当社にとっての企業競争力の源泉です。前中期経営ビジョン「STEP」から重点的に取り組む「個の成長」に焦点を当てた活動を加速させ、その先にある「変革をリードする人財」を育む風土を醸成し活躍できる場を作っていきます。そして「変革をリードする人財」が部門横断で活躍し、社内外で仲間を増やして新たな時代のスタンダードとなるプロセスや技術を生み出していきます。
③ 事業継続計画(BCP)への対応
当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「対処すべき課題 ①事業継続計画(BCP)への対応」について重要な変更はありません。
④ アライアンスの深化
当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「対処すべき課題 ③アライアンスの深化」について重要な変更はありません。
(6) 資本政策の方針
① 財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開し、強固な財務体質と高い資本効率を維持し、中長期的な企業価値の向上を図っています。
当社は2023年8月に実施した「新経営体制における方針」の説明において、2022年より段階的に発表してきた電動化計画のアップデートを行い、BEVへ資源を集中し世界最先端の「モノづくり革新」と「価値づくり」を目指すことを公表しました。この実現に向け、財務健全性(自己資本比率50%以上)と財務安定性(相応のネットキャッシュポジション)を維持しつつ、2030年頃までに約1.5兆円の電動化対応投資(バッテリー調達、生産工場設備、BEV開発など)を見込みます。加えて電動化に向けた革新の原動力となる人的資本への投資も着実に実施していきます。また、保有する円とUSドルのバランスおよび最適な資本構成を踏まえ、資金調達が適当と判断される場合はサステナビリティファイナンスなども念頭に円建て債務での調達を行っていきます。
持続的な成長に向けては資本コストと株価を意識した経営の実践が不可欠です。当社の現状の資本コスト(WACC)は6%半ばであり、事業の収益性・効率性を表す自己資本利益率(ROE)は、これまでも役員業績連動報酬のKPIとするなど重要な指標と位置付けており、現状は10%以上を目指すべき水準と認識し取り組んでいます。
株主還元の考え方については、総還元性向30%~50%を目安に、業績、投資計画、経営環境を総合的に勘案し、安定的・継続的な配当と機動的な自己株式の取得を実施していきます。投資が増加するなかでも株主還元を重視し、その時々の経営状況やバリュエーションを踏まえ、株主と当社の双方にとって最適かつバランスの取れた資本政策を柔軟に実施していきます。なお、2023年5月11日に資本効率の向上を目的に約400 億円の自己株式の取得を決定し、2023年9月22日に取得を終了しました。取得した自己株式は2023年11月15日に全株消却いたしました。
② 経営資源の配分に関する考え方と資金調達及び資金の流動性に係る分析
当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した経営資源の配分に関する考え方と資金調達及び資金の流動性に係る分析について重要な変更はありません。
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体での研究開発支出は909億円、要約四半期連結損益計算書に計上されている研究開発費は810億円です。