E00919 IFRS
前期
3.57兆 円
前期比
112.8%
株価
4,122 (04/23)
発行済株式数
1,582,418,725
EPS(実績)
200.35 円
PER(実績)
20.57 倍
前期
1,105.1万 円
前期比
99.3%
平均年齢(勤続年数)
42.8歳(14.0年)
従業員数
5,486人(連結:49,095人)
当社グループは連結財務諸表提出会社(以下、「当社」)と連結子会社(パートナーシップを含む)180社、持分法適用関連会社17社を合わせた198社により構成されております。当社グループの主要な事業は、医薬品の研究、開発、製造および販売であり、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー(がん)、およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の主要ビジネスエリアにフォーカスしております。研究開発については、「消化器系・炎症性疾患」、「ニューロサイエンス」、「オンコロジー」、「希少遺伝子疾患および血液疾患」を4つの重点疾患領域とした「革新的なバイオ医薬品」に、「血漿分画製剤」および「ワクチン」を加えた3つの分野に当社グループの研究開発分野を絞り込み、研究開発拠点における研究開発活動、および社外パートナーとの提携を通じてパイプラインの強化に取り組んでおります。
当年度末における、当社グループを構成している主要な会社の当該事業に係る位置付けの概要は次のとおりであります。なお、当社グループは、「医薬品事業」の単一セグメントのため、セグメント情報の記載を省略しております。
日本においては、当社が研究開発、製造および販売を行っております。
日本を除くその他の地域においては、各国に展開している子会社・関連会社が研究開発、製造および販売機能を担っております。これらのうち米国における主要な子会社は武田ファーマシューティカルズ U.S.A., Inc.、バクスアルタUS Inc.、米州武田開発センター Inc.等であり、欧州およびカナダにおいては、武田ファーマシューティカルズ・インターナショナル AG、武田 GmbH等です。またその他の地域における主要な製造および販売会社は武田(中国)国際貿易有限公司、武田 Distribuidora Ltda.等であります。
以上で述べた事項の概要図は次のとおりであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当年度の業績および財政状態は以下のとおりとなりました。
なお、当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの経営成績の記載を
省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照下さい。
③ 生産、受注及び販売の状況
(a) 生産実績
当年度における生産実績は次のとおりであります。
(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 生産実績金額は、販売価格によっております。
(b) 受注状況
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しており、一部の受注生産における受注高および受注残高の金額に重要性はありません。
(c) 販売実績
当年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 販売実績は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお、総販売実績に対する割合が100分の10未満となっている年度については記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
(a) 当年度の経営成績の分析
(ⅰ) 当社グループの経営成績に影響を与える事項
事業の概況
当社は、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業です。当社は、幅広い医薬品のポートフォリオを有し、研究、開発、製造、およびグローバルでの販売を主要な事業としており、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー(がん)、およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の5つの主要ビジネスエリアにフォーカスしております。研究開発においては、消化器系・炎症性疾患(注)、ニューロサイエンス、オンコロジー、希少遺伝子疾患および血液疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。当社は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。当社は、約80の国と地域で医薬品を販売しており、世界中に製造拠点を有するとともに、日本および米国に主要な研究拠点を有しています。
当社はこれまで、地理的拠点の拡大、オンコロジー、消化器系疾患ならびにニューロサイエンス領域を強化するとともに、希少疾患および血漿分画製剤での主導的地位を構築し、パイプラインの拡充にも取り組んできました。販売においては、米国、欧州および成長新興国におけるプレゼンスを飛躍的に向上させました。また、当社は事業運営をより効果的かつ効率的に行い、より大きなイノベーションを創出し、ステークホルダーに価値を提供することに繋げるため、データとテクノロジーの活用促進に集中して取り組みました。
当社グループの事業は単一セグメントであり、資源配分、業績評価、および将来業績の予測においてマネジメントの財務情報に対する視点と整合しております。2023年3月期における売上収益および営業利益はそれぞれ4兆275億円および4,905億円であります。
(注)本疾患領域名は、従来の「消化器系疾患」から「消化器系・炎症性疾患」に名称変更しています。詳細は「6 研究開発活動」をご参照ください。
当社グループの経営成績に影響を与える事項
当社グループの経営成績は、グローバルな業界トレンドや事業環境における以下の事項に影響を受けます。
特許保護と後発品との競争
医薬品は特に、特許保護や規制上の独占権によって市場競争が規制されることにより、当社グループの業績に貢献する場合があります。代替治療の利用が容易でない新製品は当社グループの売上の増加に貢献します。ただし、保護されている製品についても、効能、副作用や価格面で他社との競争が存在します。一方で、特許保護もしくは規制上の独占権の喪失や満了により、後発品が市場に参入するため、当社グループの業績に大きな悪影響を及ぼすことがあります。当社グループの主要製品の一部は、特許やその他の知的財産権保護の満了により、厳しい競争に晒されており、あるいは晒されると予想しております。例えば、米国において当社グループの最大の売上製品の一つであるベルケイドに含まれる有効成分のボルテゾミブの特許権が満了したことにより、ボルテゾミブを含む競合製品が販売されています。これにより、2022年にベルケイドの売上が減少し、その結果、競合品がさらに市場に参入することにより売上がさらに大幅に減少する可能性があります。VYVANSEに対する特許保護は、2023年8月に米国において失効する予定であり、また、2023年2月にアジルバの後発品が日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)により承認されたことを受け(競合品の薬価収載は2023年6月に承認)、関連する国・地域において、VYVANSEおよびアジルバの売上が減少すると予想しております。後発品を販売する他社が特許権の有効性に対する申し立てに成功する場合、もしくは想定される特許侵害訴訟に係る費用以上のベネフィットを前提として参入することを決定する場合があります。また、当社グループの特許権の有効性、あるいは製品保護に対する申し立てが提起された場合には、関連する無形資産の減損損失を認識する可能性があります。
買収
当社グループは、研究開発能力を拡大し(新たな手法に展開することを含みます。)、新しい製品(開発パイプラインや上市済み製品)やその他の戦略的領域を獲得するために、新たな事業または資産を買収する可能性があります。同様に、当社グループの主な成長ドライバーに注力するため、また当社グループのポートフォリオを維持するために、事業や製品ラインを売却しております。
2023年2月、当社グループは、高度に選択的な経口アロステリックチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬TAK‑279に関連する知的財産権およびその他の関連する資産を所有または支配する、Nimbus Therapeutics, LLC(以下、「Nimbus社」)の完全子会社であったNimbus Lakshmi, Inc.の全株式を取得しました。契約条件にもとづき、当社グループは一時金として40億米ドルを本取引完了後に支払い(注1)、また、「TAK‑279」(Nimbus社における旧「NDI‑034858」)のプログラムから開発された製品の年間の売上高が40億米ドルと50億米ドルとなった場合には、それぞれにつき10億米ドルのマイルストンを同社に支払います。さらに、本取引に関連して、当社グループは、Nimbus社とBristol‑Myers Squibおよびその子会社である Celgene Corporationとの間の2022年1月の和解契約におけるNimbus社の義務である「TAK‑279」のプログラムから開発された製品の開発、薬事規制上の承認、および売上に関するマイルストン支払い義務を引き受けることに合意しました。
これらの買収は企業結合または資産の取得として会計処理されております。企業結合の場合、取得した資産および引き受けた負債は公正価値で計上されております。当社グループの業績は、通常、棚卸資産の公正価値の増加や、取得した有形固定資産および無形資産の償却費により影響を受けます。また、資産の取得の場合、取得した資産は取引価格で計上されております。企業結合または資産の取得の対価が追加的な借入金で賄われている場合、支払利息の増加も当社グループの業績に影響を与えます。
買収および上記の影響により、当社グループの業績は期間比較ができない可能性があります。
(注1)当社グループは、一時金40億米ドルのうち、2023年2月に30億米ドル、2023年4月に9億米ドルを支払っております。残額の1億米ドルは2023年8月に支払を予定しております。
事業売却
買収に加え、当社グループは、主要な成長ドライバーに注力し、また長期借入金を速やかに返済するための追加キャッシュ・フローを創出するため、事業や製品ラインを売却しました。2022年3月期から2023年3月期および本報告書提出日時点における主要な事業売却は以下となります。
• 2021年4月、当社グループは、日本における当社の非中核資産である一部の製品を、総額1,330億円で、帝人ファーマ株式会社に資産譲渡しました。2022年3月期において税引前当期利益に対する1,314億円の増益影響を計上しました。
• 2022年3月、当社グループは、中国で販売する当社の非中核資産である一部の医療用医薬品を、総額230百万米ドル(307億円(注1))でHasten Biopharmaceutic Co., Ltd. (China) に資産譲渡し、2022年3月期において56億円の譲渡益を計上しました。
(注1) 2023年3月31日期末為替レートである1米ドル133.5円を用いて日本円に換算しております。
原材料の調達による影響
重要な原材料を社内外から調達することができない場合に、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ヒト血漿は当社グループの血漿分画製剤において重要な原材料であります。血漿をより多く収集するため、調達および外部との契約を強化し、原料血漿の収集や血漿分画に関連する施設への委託、および規制当局から承認を受けることに成功するための取り組みを行っております。
外国為替変動
2023年3月期において、当社グループでは日本以外の売上が87.3%を占めております。当社グループの収益および費用は、特に当社の表示通貨である日本円に対する米ドルおよびユーロの外国為替レートの変動に影響を受けます。円安は日本円以外の通貨による収益の増加要因となり当社グループの業績に好影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の増加により相殺される可能性があります。とりわけ、2023年3月期において、他の通貨に対する円安により、当社の売上収益はプラスの影響を受けました。反対に、円高は日本円以外の通貨による収益減少要因となり当社グループの業績に悪影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の減少により相殺される可能性があります。以下は、2023年3月期の売上収益を2022年3月期における同一の為替レート(CER)で換算し、2022年3月期の売上収益と対比させたものです。
(単位:億円、%以外)
前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益は、IFRSに準拠して作成された指標ではありません(以下、「非IFRS指標」)。投資家におかれましては、当社グループの過去の財務諸表全体を確認し、IFRSに準拠して表示されている指標を当社グループの業績、価値、将来の見通しを評価する際の主要な指標として使用し、非IFRS指標を補足的な指標として使用することを強く推奨します。前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益に対して最も直接的に比較可能な指標は、IFRSに準拠して作成された売上収益であります。上表には、前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益から売上収益への調整が示されております。
当該指標が、当社グループの事業に対する為替レートの影響をよりよく理解し、為替レートの変動の影響を除外した場合に、当社の経営成績が対前年度でどのように変動したかを理解するために、投資家にとって有用であると考えられるため、当社グループは前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益を表示しております。当該指標は、当社グループの経営者が、当社グループの経営成績を評価するにあたって使用する主要な方法であります。また、証券アナリスト、投資家、その他のステークホルダーが、当社グループが属する業界の同業他社の経営成績を評価する際、類似する業績指標を使用することが多いため、投資家にとっても有用な指標であると考えています。
前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益は、ある会計年度において、当会計年度の売上収益を、対応する前会計年度の為替レートで換算した売上収益として定義されます。ただし、前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益は、前会計年度においてIFRSに基づき表示された売上収益の算定に用いられた為替レートと同一の為替レートを用いて算定されていますが、当該会計年度中に締結された取引が同一の為替レートで締結された、または計上されたとは限らないという点で、この表示の有用性には重要な限界があります。当社グループの業界の同業他社が類似する名称の指標を使用している場合であっても、同業他社が当該指標を当社グループとは異なって定義し、異なる算定を行っている可能性があるため、指標が直接的に比較可能ではない場合があります。したがって、前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益は単独で検討すべきではなく、またIFRSに準拠して作成、表示される収益の指標としてではなく、当該指標の代替的指標としてみなされるべきです。
為替変動リスクを低減するため、当社グループは重要な一部の外貨建取引について、主に先物為替予約、通貨スワップおよび通貨オプションを利用しヘッジを行っております。
季節的要因
当社グループの売上収益は、2022年3月期および2023年3月期において第4四半期に減少しています。これは、卸売業者は年末年始休暇に向けてあらゆる国・地域における在庫数を増やす傾向にあること、年間にわたって価格が上昇していること、暦年の年初の米国における保険の年間免責額の改定等によるものです。
(ⅱ) 重要な会計方針
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成されております。当連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産および負債の金額、決算日現在の偶発資産および偶発負債の開示、ならびに報告期間における収益および費用の金額に影響を及ぼす見積りおよび仮定の設定を行うことが求められております。見積りおよび仮定は、継続的に見直されます。経営者は、過去の経験、ならびに見積りおよび仮定が設定された時点において合理的であると判断されたその他の様々な要因に基づき当該見積りおよび仮定を設定しております。実際の結果はこれらの見積りおよび仮定とは異なる場合があります。
経営者の見積りおよび仮定に影響を受ける重要な会計方針は以下の通りであります。なお、見積りおよび仮定の変更が連結財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。
収益認識
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針 (5) 収益」をご参照ください。
のれんおよび無形資産の減損
当社グループは、のれんおよび無形資産について、資産の帳簿価額が回収不能であるかもしれないことを示す事象または状況の変化がある場合には、減損テストを行っております。のれんおよび償却開始前の無形資産については、年次および減損の兆候を捕捉した時点で減損テストを実施しております。2023年3月31日時点において、当社グループはのれんおよび無形資産をそれぞれ4兆7,907億円および4兆2,697億円計上しており、これは総資産の64.9%を占めております。
上市後製品に係る無形資産は特許が存続する見込期間または見込まれる経済的便益に応じた他の指標に基づき、3年から20年の耐用年数を用いて定額法で償却しております。開発中の製品に係る無形資産は、特定の市場における商用化が規制当局により承認されるまで償却をしておりません。商用化が承認された時点で、当該資産の見積耐用年数を確定し、償却を開始しております。
のれんおよび無形資産は、通常、連結財政状態計算書上の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には減損していると判断されます。無形資産にかかる回収可能価額は個別資産、またはその資産が他の資産と共同で資金を生成する場合はより大きな資金生成単位ごとに見積られます。資金生成単位は独立したキャッシュ・インフローを形成する最小の識別可能な資産グループであります。のれんの減損テストは単一の事業セグメント単位(単一の資金生成単位)で実施しており、これはのれんを内部管理目的で監視している単位を表しています。回収可能価額の見積りには以下を含む複数の仮定の設定が必要となります。
·将来キャッシュ・フローの金額および時期
·競合他社の動向(競合製品の販売開始、マーケティングイニシアチブ等)
·規制当局からの承認の取得可能性
·将来の税率
·永続成長率
·割引率
将来キャッシュ・フローの金額および時期を見積るための重要な仮定には、研究開発プロジェクトの成功見込みおよび製品に係る売上予測があります。特にのれんにかかる回収可能価額の見積りにおいては、特定の製品に係る売上予測が重要な仮定となります。これらの仮定に影響を与える事象としては、開発の中止、大幅な上市の遅延、規制当局の承認が得られないことによる研究開発プロジェクトの失敗、もしくは一般的には新たな競合製品の販売開始や供給不足による、一部の上市後製品にかかる売上予測の低下があげられます。これらの事象が発生した場合、プロジェクト獲得以降に実施した当初もしくは事後の研究開発投資額が回収できない、もしくは見積った将来キャッシュ・フローが回収できない可能性があります。
これらの仮定に変更が生じた場合は、当該連結会計年度において減損損失および減損損失の戻入れを認識しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 のれんおよび12 無形資産」をご参照ください。
訴訟に係る偶発事象
当社グループは、通常の営業活動において主に製造物責任訴訟および賠償責任訴訟に関与しております。詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
偶発負債は、その特性から不確実なものであり複雑な判断や可能性に基づいております。訴訟およびその他の偶発事象に係る引当金を算定する際には、該当する訴訟の根拠や管轄、その他の類似した現在および過去の訴訟案件の顛末および発生数、製品の性質、訴訟に関する科学的な事項の評価、和解の可能性ならびに現時点における和解にむけた進行状況等を勘案しております。さらに、未だ提訴されていない製造物責任訴訟については、主に過去の訴訟の経験や製品の使用に係るデータに基づき、費用を合理的に見積ることができる範囲で引当金を計上しております。当社グループが関与する重要な訴訟のうち、それらの最終的な結果により財務上の影響が見込まれる場合であっても、その額について信頼性のある見積りが不可能な訴訟等については、引当金の計上は行っておりません。また、保険の補償範囲期間内である場合は保険による補償についても考慮しております。補償範囲の検討の際に、当社グループは、保険契約の制限や除外、保険会社による補償の拒否の可能性、保険業者の財政状態、ならびに回収可能性および回収期間を考慮しております。引当金および関連する保険補償額の見積りは、連結財政状態計算書上において負債および資産として総額で計上しております。2023年3月31日現在において、係争中の訴訟案件およびその他の案件について643億円の引当金を計上しております。
法人所得税
当社グループは、税法および税規制の解釈指針に基づき税務申告を行っており、これらの判断および解釈に基づいた見積額を計上しております。通常の営業活動において、当社グループの税務申告は様々な税務当局による税務調査の対象であり、これらの調査の結果、追加税額、利息、または罰金の支払いが課される場合があります。法律および様々な管轄地域の租税裁判所の判決に伴う法改正により、不確実な税務ポジションに関する負債の見積りの多くは固有の不確実性を伴います。税務当局が当社グループの税務ポジションを認める可能性が高くないと結論を下した場合に、当社グループは、税務上の不確実性を解消するために必要となる費用の最善の見積り額を認識します。また、未認識の税務上の便益は事実および状況の変化に伴い調整されます。これらの税務ポジションは、例えば、現行の税法の大幅改正、税務当局による税制または解釈指針の発行、税務調査の際に入手した新たな情報、または税務調査の解決により調整が行われる可能性があります。当社グループは、不確実な税務ポジションに係る当社グループの見積りは、現時点において判明している事実および状況に基づき適切かつ十分であると判断しております。
また、各報告期間の末日において繰延税金資産の回収可能性を評価しております。繰延税金資産の回収可能性の評価においては、予想される将来加算一時差異の解消スケジュール、予想される将来課税所得およびタックスプランニングを考慮しております。収益力に基づく将来課税所得は、主に当社グループの事業計画を基礎として見積られており、当該事業計画に含まれる特定の製品に係る売上収益の予測が変動した場合、認識される繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。過去の課税所得の水準および繰延税金資産が認識できる期間における将来の課税所得の見積りに基づき、実現する可能性が高いと予想される税務上の便益の額を算定しております。2023年3月31日現在における繰延税金資産を認識していない未使用の繰越欠損金、将来減算一時差異、および未使用の繰越税額控除はそれぞれ1兆1,818億円、2,598億円、および112億円であります。将来における見積りおよび仮定の変更は法人所得税費用に重要な影響を与える可能性があります。
事業構造再編費用
当社グループでは、費用削減に関連した取り組みおよび買収に係る事業統合に関連して事業構造再編費用が発生します。退職金が事業構造再編費用の主な内訳であり、事業構造再編に係る引当金については、事業構造再編に係る詳細な公式計画を作成した時点で計上しております。当該計画の対象となる従業員については、根拠のある予想に基づき、計画が実施されると見込まれます。事業構造再編に係る引当金の認識には、支払時期や、事業再編により影響を受ける従業員数等の見積りが必要となります。最終的なコストは当初の見積りから異なる可能性があります。
当社グループは、将来において買収および売却に関連した事業統合に係る追加の事業構造再編費用を計上すると見込んでおります。2023年3月31日現在において、当社グループは、事業構造再編に係る引当金を90億円計上しております。詳細および事業構造再編に係る引当金の推移は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 23 引当金」をご参照ください。
(ⅲ) 当年度における業績の概要
当年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(注1) 「(ⅳ) 当年度におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
〔売上収益〕
売上収益は、前年度から4,585億円増収(+12.8%、CERベース増減率:△0.8%)の4兆275億円となりました。これは主に、為替相場が円安に推移したこと、および事業が好調に推移したことによる増収影響が、前年度に売上収益に計上した日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの帝人ファーマ株式会社への譲渡価額1,330億円の減収影響を上回ったことによります。
主要な疾患領域(消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー(がん)、およびニューロサイエンス(神経精神疾患))の売上収益は、前年度から6,280億円増収(+21.3%)の3兆5,729億円となりました。円安による増収影響、および各疾患領域における好調な業績があったことにより、オンコロジーを除き、それぞれ全社の売上収益の増収に貢献しました。オンコロジーにおいては、円安による増収影響により一部相殺したものの、一部の製品が後発品の参入や競争の激化による影響を受けました。
当社の主要な疾患領域以外の売上収益は、前年度に非定常的な売上収益として計上した日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円が当年度はなくなったことを主な要因として、前年度から1,696億円減収(△27.2%)の4,546億円となりました。
地域別売上収益
各地域の売上収益は以下のとおりです。
(単位:億円、%以外)
(注1) 「(ⅳ) 当年度におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
(注2) 前年度は、日本における糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円を含みます。
(注3) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
当社グループの売上収益の大部分は、主要な医療用医薬品により占められております。当年度の各領域における主要製品の売上は以下のとおりです。
(注1)「(ⅳ) 当年度におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
(注2)国内製品名:エンタイビオ
(注3)配合剤、パック製剤を含む。
(注4)一般名:pantoprazole
(注5)国内製品名:ビバンセ
(注6)前年度においては、2021年4月1日に売却した日本における糖尿病治療薬4剤(ネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠)の帝人ファーマ株式会社への譲渡価額1,330億円を含む。
各疾患領域における売上収益の前年度からの増減は、主に以下の製品によるものです。
- 消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年度から2,189億円増収(+25.0%、CERベース増減率:+8.7%)の1兆945億円となりました。
当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ENTYVIO」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年度から1,810億円増収(+34.7%)の7,027億円となりました。米国における売上は、円安による増収影響、および炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎とクローン病に対する生物学的製剤の新規投与患者が引き続き増加したことにより、前年度から1,424億円増収(+40.7%)の4,919億円となりました。欧州およびカナダにおける売上は、皮下注射が新たに複数国で上市されたこと、および円安による増収影響により、前年度から265億円増収(+19.5%)の1,625億円となりました。また成長新興国における売上は、主にブラジルにおける伸長により、前年度から99億円増収(+39.6%)の349億円となりました。
逆流性食道炎治療剤「DEXILANT」の売上は、米国におけるオーソライズド・ジェネリックの売上の伸長、および円安による増収影響により、前年度から186億円増収(+36.7%)の694億円となりました。
短腸症候群治療剤「GATTEX/レベスティブ」の売上は、主に日本における上市以降に市場への浸透が進んだこと、小児適応の需要が増加したこと、および円安による増収影響により、173億円増収(+22.9%)の931億円となりました。
酸関連疾患治療剤「タケキャブ/VOCINTI」の売上は、主に中国における増収により、前年度から63億円増収(+6.2%)の1,087億円となりました。日本においては、処方量は増加したものの、2022年4月に適用された市場拡大再算定による価格引き下げの影響のため、前年度から減収となりました。
「その他」に含まれる、潰瘍性大腸炎治療剤「PENTASA」の売上は、米国において2022年5月から後発品が参入したことにより、118億円減収(△58.3%)の84億円となりました。
- 希少疾患
希少疾患領域の売上収益は、前年度から1,122億円増収(+18.4%、CERベース増減率:+4.8%)の7,234億円となりました。
希少血液疾患領域の売上収益は、210億円増収(+7.4%、CERベース増減率:△5.1%)の3,047億円となりました。
血友病A治療剤「アディノベイト/ADYNOVI」の売上は、58億円増収(+9.6%)の666億円、血友病Aおよび血友病B治療剤「ファイバ」の売上は、21億円増収(+5.4%)の413億円となりました。いずれも、主に円安による増収影響が米国における競合品による減収影響を相殺し、伸長しました。
希少血液疾患領域のその他の製品の売上合計は、主に効能追加や新たに連結した製品、および円安による増収影響により、前年度から増収となりました。
希少遺伝子疾患およびその他の疾患領域の売上収益は、912億円増収(+27.9%、CERベース増減率:+13.4%)の4,187億円となりました。
遺伝性血管性浮腫治療剤「タクザイロ」の売上は、引き続き米国において需要が増加したこと、販売エリアが拡大したこと、および円安による増収影響により、486億円増収(+47.0%)の1,518億円となりました。
ファブリー病治療剤「リプレガル」の売上は、2022年2月のライセンス契約の終結に伴い、日本における製造販売権を当社が承継したこと、および成長新興国において需要が増加したことを主な要因として、前年度から150億円増収(+29.1%)の667億円となりました。
その他の酵素補充療法のハンター症候群治療剤「エラプレース」およびゴーシェ病治療剤「ビプリブ」の売上は、主に円安による増収影響により、それぞれ122億円増収(+16.7%)の853億円、60億円増収(+14.1%)の484億円となりました。
2021年12月に最初に米国で上市し、その後、複数の国でも上市した移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療剤「LIVTENCITY」の当年度の売上は105億円となりました。
- 血漿分画製剤(免疫疾患)
血漿分画製剤(免疫疾患)領域の売上収益は、前年度から1,715億円増収(+33.8%、CERベース増減率:+15.3%)の6,784億円となりました。
免疫グロブリン製剤の売上合計は、前年度から1,363億円増収(+35.3%)の5,222億円となりました。原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に用いられる静注製剤「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」および皮下注製剤である「CUVITRU」と「HYQVIA」の三つのグローバル製品の売上は、パンデミックによる下方圧力が緩和した米国を中心に引き続きグローバルに需要が堅調に推移し供給量が増加したこと、皮下注製剤は静脈注射に比べ投薬の利便性が高いこと、また円安による増収影響により、前年度から2桁台の売上収益増収率となりました。
主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「HUMAN ALBUMIN」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は、米国と中国における需要が増加したことにより、また、円安による増収影響もあったことから、前年度から314億円増収(+34.9%)の1,214億円となりました。
- オンコロジー
オンコロジー領域の売上収益は、前年度から300億円減収(△6.4%、CERベース増減率:△14.4%)の4,387億円となりました。これは米国において、多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」の後発品が急速に浸透したことによります。
「ベルケイド」の売上は、2022年5月から複数の後発品が米国市場に参入したことにより、前年度から823億円減収(△74.8%)の278億円となりました。
悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、アルゼンチンやイタリア、日本などで好調に伸長し、前年度から147億円増収(+21.3%)の839億円となりました。
白血病治療剤「アイクルシグ」の売上は、米国において堅調に伸長したことと円安による増収影響もあり、前年度から123億円増収(+35.4%)の472億円となりました。
非小細胞肺がん治療剤「アルンブリグ」の売上は、欧州諸国や中国をはじめとする成長新興国、および日本における需要増加により、前年度から69億円増収(+50.7%)の206億円となりました。
「その他」に含まれる、卵巣がん治療剤「ゼジューラ」の売上は、カプセル製剤に加えて新たに錠剤を2022年6月に日本で上市したことが寄与し、前年度から49億円増収(+61.7%)の129億円となりました。
子宮内膜症・子宮筋腫・閉経前乳がん・前立腺がん等の治療に用いられる特許満了製品の「リュープリン/ENANTONE」は、主に円安による増収影響により、前年度から49億円増収(+4.6%)の1,113億円となりました。
多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、円安による増収影響を、主に米国における競争激化の影響や需要減少の影響が一部相殺し、前年度から15億円増収(+1.6%)の927億円となりました。
2021年9月に最初に米国で上市し、その後、複数の国でも上市した非小細胞肺がん治療剤「EXKIVITY」の当年度の売上は37億円となりました。
- ニューロサイエンス(神経精神疾患)
ニューロサイエンス領域の売上収益は、前年度から1,554億円増収(+32.2%、CERベース増減率:+12.1%)の6,377億円となりました。
注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「VYVANSE/ELVANSE」(国内製品名:「ビバンセ」)の売上は、主に米国において、「ADDERALL」の後発品である競合他社の即放性製剤の供給不足の影響もあり、成人向け市場が拡大したこと、および円安による増収影響により、前年度から1,322億円増収(+40.4%)の4,593億円となりました。
大うつ病(MDD)治療剤「トリンテリックス」の売上は、日本における処方の増加、および円安による増収影響により、前年度から178億円増収(+21.6%)の1,001億円となりました。
「その他」に含まれる、ADHD治療剤「ADDERALL XR」の売上は、主に後発品である競合他社の即放性製剤の供給不足による本剤に対する増収影響、および円安による増収影響により、前年度から77億円増収(+36.9%)の286億円となりました。
〔売上原価〕
売上原価は、前年度から1,372億円増加(+12.4%、CERベース増減率:△0.1%)の1兆2,441億円となりました。この増加は主に当年度における円安の為替影響を受けたことによるものです。
〔販売費及び一般管理費〕
販売費及び一般管理費は、主に当年度における円安の為替影響により、前年度から1,109億円増加(+12.5%、CERベース増減率:△0.9%)の9,973億円となりました。
〔研究開発費〕
研究開発費は、主に当年度における円安の為替影響により、前年度から1,072億円増加(+20.4%、CERベース増減率:+3.5%)の6,333億円となりました。
〔製品に係る無形資産償却費及び減損損失〕
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、主に当年度における円安の為替影響により、前年度から695億円増加(+14.7%、CERベース増減率:△3.2%)の5,424億円となりました。
〔その他の営業収益〕
その他の営業収益は、主に条件付対価契約に関する金融資産及び金融負債の公正価値変動による評価益および特定の訴訟に係る和解金等の受取額を前年度に計上した影響により、前年度から177億円減少(△41.0%、CERベース増減率:△44.2%)の254億円となりました。
〔その他の営業費用〕
その他の営業費用は、前年度から138億円減少(△8.7%、CERベース増減率:△21.1%)の1,452億円となりました。この減少は主に、Shire社との統合が実質的に前年度において完了したことに伴い事業構造再編費用が減少したこと、および承認前在庫に係る評価損が減少したことによるものです。これらの減少は、主に提携契約に伴い当社グループが認識したオプション権に係る評価損を含む、その他の評価損および引当金繰入額の増加および当年度における円安の為替影響により一部相殺されております。
〔営業利益〕
営業利益は、上記の要因を反映し、前年度から297億円増益(+6.4%、CERベース増減率:△1.8%)の4,905億円となりました。
〔金融損益〕
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は1,068億円の損失となり、前年度の1,429億円の損失から361億円減少(△25.3%、CERベース増減率:△28.8%)しました。この損失の減少は主に、当社が株式を保有する企業のワラントにかかるデリバティブの再測定によるプラスの影響によるものです。
〔持分法による投資損益〕
当年度の持分法による投資損益は、前年度の持分法による投資損失から67億円減少(△43.8%、CERベース増減率:△50.6%)の86億円の損失となりました。この損失の減少は、主に武田ベンチャー投資Inc.が保有する株式にかかる投資の損失を前年度に計上したことによるものです。
〔法人所得税費用〕
法人所得税費用は、前年度から144億円減少(△19.8%、CERベースの増減率:△18.0%)の581億円となりました。この減少は主に、前年度に認識した、2014年にShire社がAbbVie社からの買収申し出の取下げに関連して受領した違約金に対するアイルランドでの課税を巡る税務評価から生じた税金および利息の合計と関連する税務便益5億円との純額654億円、ならびに当年度における繰延税金資産の認識による税務便益の増加によるものです。これらの減少は、税引前当期利益の増加に加え、前年度の米国における州税の適用税率の変更による影響と一部相殺されております。
〔当期利益〕
当期利益は、上記の要因を反映し、前年度から869億円増益(+37.7%、CERベース増減率:+23.3%)の3,170億円となりました。
(ⅳ) 当年度におけるCore業績の概要
Core財務指標とCERベースの増減の定義
当社は、業績評価において「Core財務指標」の概念を採用しています。本指標は、国際会計基準(IFRS)に準拠したものではありません。
Core売上収益は、売上収益から重要性のある本業に起因しない(非中核)事象による影響を控除して算出します。
Core営業利益は、当期利益から、法人所得税費用、持分法による投資損益、金融損益、その他の営業収益及びその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、非定常的な事象に基づく影響、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(非中核)事象による影響を調整します。
Core EPSは、当期利益から、Core営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(非中核)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、報告期間の自己株式控除後の平均発行済株式総数で除して算出します。
CER(Constant Exchange Rate:恒常為替レート)ベースの増減は、当年度の財務ベースの業績もしくはCore業績について、前年度に適用した為替レートを用いて換算することにより、前年度との比較において為替影響を控除するものです。
Core業績
〔Core売上収益〕
当年度のCore売上収益は、前年度から6,069億円増収(+17.7%、CERベース増減率:+3.5%)の4兆275億円となりました。前年度のCore売上収益は、主に非定常的な日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円を控除し3兆4,205億円でした。当年度においては、売上収益から控除した重要性のある本業に起因しない(非中核)事象による影響はなかったことから、Core売上収益は財務ベースの売上収益と同額でした。タケダの成長製品・新製品(注)は、前年度から4,358億円増収(+37.6%、CERベース増減率:+18.8%)の1兆5,948億円となり、好調に推移した事業を牽引しました。なお、タケダの成長製品・新製品には、当年度に欧州やインドネシア、ブラジルなどで承認を取得し、幾つかの非流行国において上市したデング熱ワクチンのQDENGAを含めています。
(注)当年度のタケダの成長製品・新製品
消化器系疾患:ENTYVIO、アロフィセル
希少疾患:タクザイロ、LIVTENCITY
血漿分画製剤(免疫疾患):GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRUを含む免疫グロブリン製剤、
HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含むアルブミン製剤
オンコロジー:アルンブリグ、EXKIVITY
その他:スパイクバックス筋注、ヌバキソビッド筋注、QDENGA
〔Core営業利益〕
当年度のCore営業利益は、主要な疾患領域の売上が増加したこと、および当年度における円安の為替影響により、前年度から2,332億円増加(+24.4%、CERベース増減率:+9.1%)の1兆1,884億円となりました。
〔Core EPS〕
当年度のCore EPSは、前年度から134円増加の558円(+31.5%、CERベース増減率:+13.9%)となりました。
〔資産〕
当年度末における資産合計は、前年度末から7,797億円増加し、13兆9,578億円となりました。無形資産は、償却による減少があったものの、主にNimbus Lakshmi Inc.の取得および為替影響により4,511億円増加しました。のれんおよび有形固定資産は、主に為替換算の影響により、それぞれ3,830億円および1,084億円増加しました。さらに、棚卸資産が1,333億円増加しております。これらの増加は、現金及び現金同等物の減少3,162億円と一部相殺されております。
〔負債〕
当年度末における負債合計は、前年度末から1,086億円増加し、7兆6,031億円となりました。仕入債務及びその他の債務は1,329億円増加し、引当金は686億円増加しました。社債及び借入金は、当年度に社債の償還があったものの、主に米ドル建ておよびユーロ建て債務における為替換算の増加影響により前年度末から369億円増加の4兆3,823億円(注)となりました。これらの増加は、繰延税金負債の減少1,809億円と一部相殺されております。
(注)当年度末における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆6,583億円および7,240億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
借入金:
当社グループは、2015年6月に発行した米ドル建無担保普通社債219百万米ドルについて、2022年6月23日の償還期日に先立ち、2022年4月23日に繰上償還を実行しました。2022年10月27日には、2018年11月に発行した米ドル建無担保普通社債の残高1,000百万米ドルについて、2023年11月26日の償還期日に先立ち繰上償還を実行しました。2022年11月21日には、2018年11月に発行した変動利付のユーロ建無担保普通社債の残高750百万ユーロについて満期償還を実行しました。2023年3月31日には、バイラテラルローン750億円について満期返済を実行するとともに、同日に2029年3月30日を返済期限とする新たなバイラテラルローン契約750億円を締結しました。さらに、コマーシャルペーパー400億円を発行しました。
〔資本〕
当年度末における資本合計は、前年度末から6,711億円増加し、6兆3,547億円となりました。この増加は、主に円安の影響による為替換算調整勘定の変動によりその他の資本の構成要素が5,739億円増加したことによるものです。利益剰余金は、主に2,783億円の配当金を支払ったものの、当期利益の計上により、614億円増加しております。
資金の調達および使途
当社グループにおいて流動性は、主に営業活動に必要な現金、資本支出、契約上の義務、債務の返済、利息や配当の支払いに関連して必要となります。営業活動においては、研究開発費、マイルストン支払い、販売およびマーケティングに係る費用、人件費およびその他の一般管理費、原材料費等の支払いにあたり現金が必要となります。また、法人所得税の支払いや運転資金にも多額の現金が必要となります。
当社グループは、生産設備の能力増強・合理化、減価償却を終えた資産の入れ替え、業務管理の効率化等のために設備投資を行っています。無形資産に係る資本的支出は、主に第三者のパートナーから導入したライセンス製品に対するマイルストン支払い、およびソフトウェア開発費です。連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産および無形資産に係る資本支出は、2022年3月期および2023年3月期において、それぞれ2,399億円および8,987億円であります。また、2023年3月31日現在において、有形固定資産の取得に関する契約上のコミットメントは153億円であります。加えて、2023年3月31日現在において、無形資産の取得に関して契約上の取決めを有しております。無形資産に係るマイルストン支払いの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記32 コミットメントおよび偶発債務」をご参照ください。また、資本管理の一環として、当社グループは、資金需要、市場等の環境、またはその他の関連する要因に照らして、定期的に資本的支出の評価を行っております。
当社の配当金の支払額は、2022年3月期および2023年3月期において、それぞれ2,842億円および2,808億円であります。これまで1株当たり年間配当金額を180円(中間配当金および期末配当金それぞれ90円)としてきましたが、2024年3月期については、中間配当金および期末配当金をそれぞれ94円ずつとし、年間188円とすることを目指しています。当社の配当政策については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
当社グループは、有利子負債に対し元本と利息を支払う必要があります。2023年3月31日現在において、1年内に必要となる利息の支払額および負債の返済額は、それぞれ1,042億円、3,404億円であります。詳細は、「有利子負債および金融債務」をご参照ください。
当社グループの資金の主な調達源は、主に現金及び現金同等物、短期コマーシャル・ペーパー、コミットメントラインによる借入、グローバル資本市場における社債発行を含む長期債務による資金調達であります。さらに、当社グループは、コンティンジェンシーの調達源として、2022年3月31日時点および2023年3月31日時点において、金融機関から極度額1,500億円および750百万米ドルの短期アンコミットメントライン契約を締結しております。
当社グループは、キャッシュ・フロー予測に基づき保有外貨を監視し、調整しております。当社グループの事業の大部分は日本国外で行っており、多額の現金を日本国外に保有しております。日本国内で必要なキャッシュ・フローを創出するために外貨を使用することは国内規制による影響を受ける可能性があり、また比較的影響は小さいものの、日本へ現金を移転することから生じる所得税による影響も受けます。
当社グループは、引き続き、資金調達の状況について注視しており、短期的には、一般的な市況による資金調達不足または流動性不足は現在見込んではおりません。なお、必要に応じた市場およびその他の供給源からの追加の資金調達力に加えて、当社グループの資本支出計画を必要かつ適切な範囲で見直すことによって、資金調達および流動性の需要を管理する場合があります。
2023年3月31日現在において、当社グループは、ワクチン運営および売上債権の売却プログラムに関係して当社が第三者に代わり一時的に保有していた制限付き預り金1,258億円を含む、5,335億円の現金及び現金同等物と、7,000億円の未使用のバンク・コミットメントライン契約を保有しており、現在の事業活動に必要となる資金は十分に確保できていると考えております。また、当社グループは、事業活動を支えるため、持続的に高い流動性を保ち、資本市場へのアクセス拡大を追求していきます。
連結キャッシュ・フロー
連結キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(単位:億円)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度の1兆1,231億円から1,459億円減少の9,772億円となりました。これは、主に仕入債務及びその他の債務の変動により、営業活動に関連する資産および負債の純増減における減少影響があったこと、および法人税所得税等の支払額の増加によるものです。これらは、非資金項目およびその他の調整項目を調整した後の当期利益の増加と一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度の△1,981億円から4,090億円減少の△6,071億円となりました。これは主に、事業取得による支出(取得した現金及び現金同等物控除後)が497億円減少したものの、主に当年度におけるNimbus Lakshmi Inc.の取得(注)により無形資産の取得による支出が4,302億円増加したことによるものです。
(注)当社グループは、一時金40億米ドルのうち、2023年2月に30億米ドル、2023年4月に9億米ドルを支払っております。残額の1億米ドルは2023年8月に支払を予定しております。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度の△1兆703億円から3,611億円増加の△7,091億円となりました。これは主に、社債の償還及び長期借入金の返済による支出(借換に伴う社債の発行及び長期借入れによる収入と相殺後)の減少2,791億円、およびコマーシャル・ペーパー発行額の増加400億円によるものです。また、前年度と比較して当年度に実施された自己株式取得金額が減少したことに伴い、自己株式の取得による支出は506億円減少しております。
有利子負債および金融債務
2022年3月31日時点および2023年3月31日時点において社債および借入金はそれぞれ4兆3,454億円、4兆3,823億円であります。これらの有利子負債は、当社が発行した無担保社債、普通社債、バイラテラルローン、およびシンジケートローン、また、Shire社買収に必要な資金の一部を調達するための借入金、およびShire社買収により引き受けた負債、借り換えた負債を含み、連結財政状態計算書に計上されております。当社の借入金は主に買収関連で発生したものであり、季節性によるものではありません。
当社グループは、2015年6月に発行した米ドル建無担保普通社債219百万米ドルについて、2022年6月23日の償還期日に先立ち、2022年4月23日に繰上償還を実行しました。2022年10月27日には、2018年11月に発行した米ドル建無担保普通社債の残高1,000百万米ドルについて、2023年11月26日の償還期日に先立ち繰上償還を実行しました。2022年11月21日には、2018年11月に発行した変動利付のユーロ建無担保普通社債の残高750百万ユーロについて満期償還を実行しました。2023年3月31日には、バイラテラルローン750億円について満期返済を実行するとともに、同日に2029年3月30日を返済期限とする新たなバイラテラルローン契約750億円を締結しました。さらに、2022年3月31日現在においてはコマーシャル・ペーパーを発行しておりませんでしたが、2023年3月31日現在、400億円のコマーシャル・ペーパーを発行しております。
2023年3月31日時点において、当社グループは一定の財務制限条項の含まれる長期融資契約を保有しております。当該財務制限条項の重要な条項は、毎年3月末および9月末において連結財政状態計算書における純負債の過去12か月間の調整後EBITDA(調整後EBITDAは契約書にて定義されたもの)に対する比率が一定水準を上回らないことを求める財務制限条項が含まれています。2023年3月31日時点においては、2022年3月31日時点と同様に、当社グループは全ての制限条項を遵守しております。また、2019年に設定された7,000億円の未使用のコミットメントラインからの借入を制限する事象はありません。当コミットメントラインは、現在の期限は2026年9月であります。
当社グループは、短期の流動性の管理のため、日本の無担保コマーシャル・ペーパープログラムを保有しております。2022年3月31日現在においてはコマーシャル・ペーパーは発行しておりませんが、2023年3月31日点現在、400億円のコマーシャル・ペーパーを発行しております。当社グループは、さらに2022年3月31日時点および2023年3月31日時点において、極度額1,500億円および750百万米ドルの短期アンコミットメントライン契約を締結しておりますが、借入はしておりません。
借入金の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
信用格付け
当社グループの信用格付けは、当社グループの財務の健全性、業績、債務の返済能力等に関する各格付機関の意見が反映されております。本報告書時点における当社グループの信用格付けは以下のとおりです。
(注1) ムーディーズは、2023年6月26日に長期発行体の信用格付をBaa2からBaa1に、アウトルックをポジティブから安定的にそれぞれ改訂しております。
この格付けは、社債の購入、売却、保有を推奨するものではありません。この格付けは指定された格付機関によって適宜改訂あるいは撤回される可能性があります。それぞれの財務の健全性レーティングは、独立評価されたものであります。
契約上の負債
2023年3月31日現在における契約上の負債は以下のとおりです。
(単位:億円)
(注1) 2023年3月31日現在における日本円以外の通貨建債務は、期末為替レートで日本円に換算しており、為替レートの変動により金額が異なる可能性があります。
(注2) 当社グループが関連する金融商品の財務制限条項違反を行った場合、返済義務が早まる可能性があります
(注3) 利息支払義務を含みます。
(注4) 社債の契約額のうち、「1年超3年以内」の金額には、劣後特約付きハイブリッド社債(以下、「ハイブリッド債」)元本全額を2024年10月6日以降の各利払日において早期償還する可能性があるため、当ハイブリッド債の元本5,000億円が含まれています。ハイブリッド債の元本および利息の詳細については、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
(注5) 2024年4月以降の年金および退職後給付制度への拠出額については、拠出の時期が不確実であり、利率、運用収益、法律およびその他の変動要因に依存するため、確定することはできません。
(注6) 確定給付債務、訴訟引当金および長期未払法人税等、時期を見積もることができない契約上の負債、また、金額が公正価値の変動により変化するデリバティブ負債および条件付対価契約に関する金融負債は含まれておりません。なお、2023年3月31日現在のデリバティブ負債および条件付対価契約に関する金融負債の帳簿価額は、それぞれ407億円および81億円であります。また、特定の将来の事象の発生に左右されるマイルストン支払いも含んでおりません。
(注7) 通常の事業活動における購買に関する発注は含んでおりません。
オフバランス取引
マイルストン支払
新製品の開発に係る第三者との提携契約に基づき、当社グループは、パイプライン品目の開発、新製品の上市および上市後の販売等にかかる一定のマイルストン達成に応じた支払義務が生じる場合があります。2023年3月31日現在における潜在的なマイルストン支払の契約金額は1兆4,556億円であります。これらは、潜在的なコマーシャルマイルストン支払を除いた金額であります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 13 共同研究開発契約およびライセンス契約 および 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。