売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E00984 IFRS

売上高

1.60兆 円

前期

1.28兆 円

前期比

125.3%

時価総額

9.75兆 円

株価

5,010 (04/26)

発行済株式数

1,947,034,029

EPS(実績)

103.24 円

PER(実績)

48.53 倍

平均給与

1,120.0万 円

前期

1,095.0万 円

前期比

102.3%

平均年齢(勤続年数)

45.3歳(20.3年)

従業員数

5,756人(連結:17,435人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは、当社と子会社49社、関連会社2社の計52社で構成され、医薬品等の製造販売を主な事業内容としております。

 当社グループの営んでいる主な事業内容と当社グループを構成している各関係会社の当該事業に係る位置付けは、次のとおりであります。

 なお、当社グループは、報告セグメントが単一であるため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

国内(13社):

当社は医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。連結子会社の第一三共プロファーマ㈱及び第一三共ケミカルファーマ㈱は医薬品の製造を行っております。連結子会社の第一三共エスファ㈱は医薬品の研究開発・販売を、第一三共ヘルスケア㈱は一般用医薬品等の研究開発・販売を、第一三共バイオテック㈱はワクチンの研究開発・製造をそれぞれ行っております。

第一三共プロファーマ㈱、第一三共ケミカルファーマ㈱、第一三共エスファ㈱、第一三共バイオテック㈱は当社に製品を供給しております。当社は連結子会社の第一三共バイオテック㈱及び第一三共RDノバーレ㈱に研究開発業務を委託しております。

連結子会社の第一三共ビジネスアソシエ㈱は当社及び国内グループ各社に人事や経理等の事務サービスを提供しているほか不動産賃貸及び保険代理業務等多岐にわたる業務を行っております。

海外(39社):

米国において、持株会社である連結子会社の第一三共U.S.ホールディングスInc.のもと、連結子会社の第一三共Inc.は医薬品の研究開発・販売を行っております。当社は第一三共Inc.に製品の供給、研究開発業務の委託をしております。第一三共Inc.の子会社であるアメリカン・リージェントInc.は医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。

欧州において、連結子会社の第一三共ヨーロッパGmbH及びそのグループ会社17社は、欧州各国で医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。当社は第一三共ヨーロッパGmbHに原料の供給、製造の委託、研究開発業務の委託をしております。

その他の地域において、連結子会社の第一三共(中国)投資有限公司、第一三共製薬(上海)有限公司及び第一三共ブラジルLtda.等は医薬品の研究開発・製造・販売を行っており、当社はそれぞれの会社に中間体及び製品を供給しております。

当社グループの状況について事業系統図を示すと次のとおりであります。

※画像省略しています。

 

 

23/06/19

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月19日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、積極的なグローバル事業の展開による企業価値の向上に資するために、基準とすべき会計及び財務報告のあり方を検討した結果、資本市場における財務情報の国際的な比較、グループ内での会計処理の統一、グローバル市場における資金調達手段の多様化等を目的として、2014年3月期よりIFRSを適用しております。

当社グループの連結財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としており、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載しております。

 

(1) 業績等の概要

当社グループの当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)の連結業績は、次のとおりであります。

 

<連結業績(コアベース)>

 (単位:億円)

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減

売上収益

10,449

12,785

2,336

22.4%

売上原価

(注)

3,480

3,491

10

0.3%

販売費及び一般管理費

(注)

3,521

4,701

1,180

33.5%

研究開発費

(注)

2,541

3,367

826

32.5%

コア営業利益

(注)

906

1,226

320

35.3%

一過性の収益

(注)

39

219

180

459.7%

一過性の費用

(注)

215

239

24

11.3%

営業利益

730

1,206

476

65.1%

税引前利益

735

1,269

533

72.6%

親会社の所有者に帰属する

当期利益

670

1,092

422

63.0%

当期包括利益合計額

1,303

1,490

187

14.4%

(注)当社グループは、経常的な収益性を示す指標として、営業利益から一過性の収益・費用を除外したコア営業利益を開示しております。一過性の収益・費用には、固定資産売却損益、事業再編に伴う損益(開発品や上市製品の売却損益を除く)、有形固定資産及び無形資産並びにのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益の他、非経常的かつ多額の損益が含まれます。
本表では、売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費について、一過性の収益・費用を除く実績を示しております。

<主要通貨の日本円への換算レート(期中平均レート)>

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

米ドル/円

112.38

135.48

ユーロ/円

130.56

140.97

 

売上収益

売上収益は、前連結会計年度比2,336億円(22.4%)増収の1兆2,785億円となりました。国内における共同販促終了(2021年9月)に伴うネキシウムの減収影響があったものの、グローバル主力品エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン:T-DXd/DS-8201)、リクシアナ(一般名:エドキサバン)等の伸長及び円安の進行による為替の増収影響等により、増収となりました。売上収益に係る為替の増収影響は939億円でありました。

 

コア営業利益

コア営業利益は、前連結会計年度比320億円(35.3%)増益の1,226億円となりました。売上原価は、売上収益が増加したものの、製品構成の変化に伴う原価率改善により、前連結会計年度並みの3,491億円となりました。販売費及び一般管理費は、エンハーツに係るアストラゼネカとのプロフィット・シェアの増加による費用増等により、1,180億円(33.5%)増加の4,701億円となりました。研究開発費は、3ADC(トラスツズマブ デルクステカン、ダトポタマブ デルクステカン:Dato-DXd/DS-1062、パトリツマブ デルクステカン:HER3-DXd/U3-1402)への研究開発投資の増加等により、826億円(32.5%)増加の3,367億円となりました。コア営業利益に係る為替の減益影響は65億円でありました。

 

営業利益

営業利益は、前連結会計年度比476億円(65.1%)増益の1,206億円となりました。第一三共九州支店ビル売却益や第一三共製薬(北京)有限公司譲渡益等の計上により、一過性の収益が増加したため、コア営業利益に比べて増益額が増加いたしました。

 

税引前利益

税引前利益は、前連結会計年度比533億円(72.6%)増益の1,269億円となりました。受取利息の増加等により、営業利益に比べて増益額が増加いたしました。

 

親会社の所有者に帰属する当期利益

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比422億円(63.0%)増益の1,092億円となりました。

 

当期包括利益合計額

当期包括利益合計額は、前連結会計年度比187億円(14.4%)増益の1,490億円となりました。前連結会計年度に比べ、海外子会社の純資産に係る為替換算差額の増加額が減少したため、親会社の所有者に帰属する当期利益に比べて増益額が減少いたしました。

 

<連結業績(IFRSベース)>

 (単位:億円)

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減

売上収益

10,449

12,785

2,336

22.4%

売上原価

3,534

3,635

101

2.9%

販売費及び一般管理費

3,625

4,712

1,088

30.0%

研究開発費

2,603

3,416

812

31.2%

その他の収益

43

191

148

342.0%

その他の費用

0

7

7

営業利益

730

1,206

476

65.1%

税引前利益

735

1,269

533

72.6%

親会社の所有者に帰属する

当期利益

670

1,092

422

63.0%

当期包括利益合計額

1,303

1,490

187

14.4%

 

<グローバル主力品売上収益>

(単位:億円)

一般名

(主な製品名)

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減

トラスツズマブ デルクステカン

(エンハーツ)

抗悪性腫瘍剤

(抗 HER2 抗体薬物複合体)

808

2,584

1,776

219.7%

エドキサバン

(リクシアナ)

抗凝固剤

2,056

2,440

383

18.6%

 

エンハーツは、既上市国での市場浸透及び上市国の拡大により、前連結会計年度比1,776億円(219.7%)増収の2,584億円となりました。エドキサバンは、日本、欧州等で売上が伸長し、前連結会計年度比383億円(18.6%)増収の2,440億円となりました。当社は、第5期中期経営計画でエンハーツを始めとした「3ADC最大化の実現」及び「既存事業・製品の利益成長」を戦略目標として定めております。第5期中期経営計画の内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

当社グループのユニット別売上収益状況は次のとおりであります。

 

① ジャパンビジネスユニット(JBU)

ジャパンビジネスユニットの売上収益には、イノベーティブ医薬品事業、ワクチン事業及び第一三共エスファ株式会社が取り扱うジェネリック事業の製品売上収益が含まれております。

当ユニットの売上収益は、リクシアナ、タリージェ等が伸長したものの、ネキシウムの共同販促終了や薬価改定の影響等により、前連結会計年度比316億円(6.4%)減収の4,579億円となりました。

 

当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。

・2022年4月、片頭痛発作の発症抑制薬エムガルティが在宅自己注射の対象薬剤に指定されました。

・2022年6月、片頭痛治療剤レイボ―を新発売いたしました。

・2022年11月、エンハーツのHER2陽性乳がんの2次治療を対象とした承認の取得及びプロモーションを開始いたしました。

・2022年12月、抗悪性腫瘍剤エザルミアを新発売いたしました。

・2023年3月、エンハーツのHER2低発現乳がん(化学療法既治療)を対象とした承認の取得及びプロモーションを開始いたしました。

 

<ジャパンビジネスユニット主力品売上収益>

(単位:億円)

製品名

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減

リクシアナ

抗凝固剤

925

1,051

127

13.7%

タリージェ

疼痛治療剤

301

385

84

27.8%

プラリア

骨粗鬆症治療剤・関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制剤

379

402

23

6.1%

エフィエント

抗血小板剤

167

209

42

24.9%

テネリア

2型糖尿病治療剤

237

219

△17

△7.3%

ビムパット

抗てんかん剤

183

219

37

20.0%

ランマーク

がん骨転移による骨病変治療剤

204

204

△1

△0.3%

カナリア

2型糖尿病治療剤

168

163

△5

△3.0%

ロキソニン

消炎鎮痛剤

222

185

△36

△16.4%

エンハーツ

抗悪性腫瘍剤

(抗 HER2 抗体薬物複合体)

96

117

22

22.5%

エムガルティ

片頭痛発作の発症抑制薬

46

63

16

35.1%

 

② 第一三共ヘルスケアユニット(DSHCU)

第一三共ヘルスケアユニットの売上収益は、ルル、ロキソニン等の伸長により、前連結会計年度比56億円(8.7%)増収の703億円となりました。

 

③ オンコロジービジネスユニット(OBU)

オンコロジービジネスユニットの売上収益には、第一三共Inc.(米国)の製品売上収益及び第一三共ヨーロッパGmbHのがん製品売上収益が含まれております。

当ユニットの売上収益は、欧米におけるエンハーツの伸長により、前連結会計年度比1,158億円(166.4%)増収の1,854億円、現地通貨ベースでは、749百万米ドル(121.0%)増収の1,369百万米ドルとなりました。

当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。

・2022年5月、エンハーツのHER2陽性乳がんの2次治療を対象とした米国における承認の取得及びプロモーションを開始いたしました。

・2022年7月、エンハーツのHER2陽性乳がんの2次治療を対象とした欧州における承認の取得及びプロモーションを開始いたしました。

・2022年8月、エンハーツのHER2低発現乳がん(化学療法既治療)を対象とした米国における承認の取得及びプロモーションを開始いたしました。

・2022年8月、エンハーツのHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がんの2次治療を対象とした米国における承認の取得及びプロモーションを開始いたしました。

・2022年12月、エンハーツのHER2陽性胃がんの2次治療を対象とした欧州における承認の取得及びプロモーションを開始いたしました。

・2023年1月、エンハーツのHER2低発現乳がん(化学療法既治療)を対象とした欧州における承認の取得及びプロモーションを開始いたしました。

 

<オンコロジービジネスユニット主力品売上収益>

(単位:億円)

製品名

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減

エンハーツ

抗悪性腫瘍剤

(抗 HER2 抗体薬物複合体)

544

1,816

1,272

233.7%

 

エンハーツ(米)

454

1,446

992

218.5%

エンハーツ(欧)

90

371

280

310.0%

TURALIO

抗腫瘍剤

28

38

10

36.6%

 

④ アメリカンリージェントユニット(ARU)

アメリカンリージェントユニットの売上収益は、ヴェノファー等の増収により、前連結会計年度比379億円(25.4%)増収の1,874億円、現地通貨ベースでは、53百万米ドル(4.0%)増収の1,383百万米ドルとなりました。

 

<アメリカンリージェントユニット主力品売上収益>

(単位:億円)

製品名

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減

インジェクタファー

鉄欠乏性貧血治療剤

531

540

9

1.7%

ヴェノファー

鉄欠乏性貧血治療剤

338

513

175

51.9%

 

⑤ EUスペシャルティビジネスユニット(EUSBU)

EUスペシャルティビジネスユニットの売上収益には、がん製品を除く第一三共ヨーロッパGmbHの製品売上収益が含まれております。

当ユニットの売上収益は、リクシアナの順調な伸長により、前連結会計年度比222億円(17.3%)増収の1,504億円、現地通貨ベースでは85百万ユーロ(8.6%)増収の1,067百万ユーロとなりました。

 

<EUスペシャルティビジネスユニット主力品売上収益>

(単位:億円)

製品名

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減

リクシアナ

抗凝固剤

969

1,171

202

20.8%

Nilemdo / Nustendi

高コレステロール血症治療剤

31

71

39

126.0%

オルメサルタン

高血圧症治療剤

203

200

△3

△1.4%

 

⑥ ASCAビジネスユニット(ASCABU)

ASCA(注)ビジネスユニットの売上収益には、海外ライセンシーへの売上収益等が含まれております。

当ユニットの売上収益は、ブラジルにおけるエンハーツ、中国におけるオルメサルタン等の伸長により、前連結会計年度比286億円(25.1%)増収の1,428億円となりました。

(注)Asia, South & Central Americaの略。

 

ユニット別売上収益構成比は次のとおりであります。

※画像省略しています。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

医薬事業

682,216

129.2

合計

682,216

129.2

(注)1.金額は正味販売価格によっております。

2.エンハーツ及びリクシアナの生産量が増加したこと等により、生産実績が著しく増加しております。

 

② 受注実績

当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これにより生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

医薬事業

1,278,478

122.4

合計

1,278,478

122.4

 (注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

アルフレッサ ホールディングス

株式会社及びそのグループ会社

187,782

18.0

180,523

14.1

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① 財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げております。2025年ビジョンである「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を実現し、2030年ビジョン達成に向けた持続的な成長ステージへの移行を可能とするべく、2021年に第5期中期経営計画(2021~2025年度)を策定いたしました。今般、その後2年間の事業状況変化を踏まえ、2025年度経営目標を達成する見通しを得ました。具体的には、売上収益2兆円(第5期中計策定時プラス4,000億円)、がん領域売上収入9,000億円以上(同プラス3,000億円)、研究開発費控除前コア営業利益(注)率40%(同変更なし)、ROE16%以上(同変更なし)を見込んでおります。また、期間中のキャッシュ・アロケーションについても、成長投資と株主還元の双方をバランス良く実施するという基本方針は変更しておりません。

成長投資については、DXd-ADC開発を優先する形で5年間総額1兆8,000億円規模の研究開発投資(同プラス3,000億円)、また、ADCの供給体制強化を中心とした同じく6,000億円規模の設備投資(同プラス1,000億円)を見込んでおります。

株主還元については、2022年度はエンハーツの想定以上の売上拡大を受け、年間配当を1株当たり3円増配の30円とし、2023年度については、2025年度主要計数目標の達成確度が高まっていることから、4円増配の34円とする計画としております。今後も利益成長に応じた増配、あるいは機動的な自己株式取得を実施することで、株主還元のさらなる充実を図っていきます。株主還元に関するKPIとして採用している、株主資本を基準とする株主資本配当率(DOE)についても2025年度に8%以上(株主資本コストを上回る水準)という目標を変更することなく、引き続き株主価値の最大化を目指します。

(注)固定資産売却、事業再編、減損、訴訟等に関連する特殊要因を除く

 

② 資金調達の方法及び状況

当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本的な考えとしており、手元資金及び外部資金を有効に活用しております。当社グループは、戦略的投資もしくは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、手元流動性残高(現預金及び短期投資債券等)から有利子負債を控除した、ネット・キャッシュを重視しております。

手元資金としては、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応のため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。適正な現金及び現金同等物の保有額は、月商の3ヶ月程度を考えており、これを超える部分については企業価値向上に資する事業戦略投資に対する資金として確保しております。これらは金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の極めて高い短期金融商品で運用しております。

外部からの資金調達の手段としては、直接金融又は間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境を考慮した上で当社にとって有利な手段を機動的に選択し、資金調達を行っております。直接金融としては、国内社債発行登録枠として3,000億円及びコマーシャル・ペーパー発行枠として1,500億円を有しております。2016年には超低金利の環境を活かし、国内ヘルスケアセクターでは初となる償還年限が20年、30年の超長期無担保社債を発行し、1,000億円の長期低コスト資金を確保いたしました。間接金融としては、当社は取引先金融機関と良好な取引関係を維持しており、複数の銀行から資金調達をしております。また、複数の銀行との間で当座貸越契約及び200億円のコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性担保の手段も確保しております。

なお、円滑な外部資金調達を行なうため、当社は株式会社格付け投資情報センター(R&I)と、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)の2社から格付けを取得しております。

当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。

 

長期

短期

格付投資情報センター(R&I)

AA/安定的

a-1+

ムーディーズ・ジャパン(Moody's)

A2/安定的

 

なお、連結子会社は、原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、親会社もしくは現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスやグループ・ファイナンスの活用により、資金調達の集約と資金効率化、流動性の確保を図っております。

 

③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析

(ⅰ)財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末から2,875億円増加し、2兆5,089億円となりました。

現金及び現金同等物が2,206億円減少した一方で、その他の金融資産(流動)が2,018億円、並びに棚卸資産が837億円それぞれ増加いたしました。

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末から1,925億円増加し、1兆630億円となりました。

シンジケートローンの返済等により社債及び借入金(流動負債及び非流動負債)が204億円減少した一方で、エンハーツの承認マイルストーン及びダトポタマブ デルクステカンの戦略的提携の契約一時金の入金等によりその他の非流動負債が1,029億円、並びに営業債務及びその他の債務が993億円増加いたしました。

当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末から950億円増加し、1兆4,459億円となりました。

配当金の支払による減少があった一方で、当期利益の計上及びその他の資本の構成要素の増加等により増加いたしました。

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は57.6%となり、前連結会計年度末より3.2%減少いたしました。

 

※画像省略しています。

 当社グループでは、これまで非事業用固定資産の売却、政策保有株式の解消や長期収載品の譲渡など、ノンコア資産の圧縮を進めて参りました。今後も事業活動上の重要性と代替可能性に加え、維持・改修費用などのライフサイクルコストや事業継続計画(BCP)を考慮し、適切なタイミングも踏まえて売却の可否判断を行い、事業ポートフォリオの見直しを含めたノンコア資産の圧縮に努め、成長投資と株主還元のための原資創出を強化して参ります。

 

(ⅱ)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、2,206億円減少の4,419億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、1,145億円の収入(前連結会計年度は1,392億円の収入)となりました。

税引前利益1,269億円、減価償却費及び償却費678億円等の非資金項目の他、エンハーツの販売及び承認マイルストーン、ダトポタマブ デルクステカンの戦略的提携の契約一時金の収入等がありました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、2,578億円の支出(前連結会計年度は2,123億円の収入)となりました。

設備投資や無形資産の取得による支出があった一方で、定期預金の払戻等による収入等がありました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払及び借入金の返済等により、896億円の支出(前連結会計年度は862億円の支出)となりました。

 

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(4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2025年度における計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、株主資本配当率(DOE)8%以上を目指しております。

当連結会計年度においては、売上収益12,785億円、研究開発費控除前コア営業利益率35.9%、ROE7.8%、DOE4.1%となりました。また、エンハーツの当初計画を上回る売上拡大等により、2023年4月時点において、以下の通りの達成を見込んでおります。

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なお、目標達成に向けた主な取り組み課題と実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり行った重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。