売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E01755 US GAAP

売上高

8,760.8億 円

前期

7,629.3億 円

前期比

114.8%

時価総額

1.12兆 円

株価

5,425 (03/29)

発行済株式数

206,244,872

EPS(実績)

358.12 円

PER(実績)

15.15 倍

平均給与

898.7万 円

前期

849.7万 円

前期比

105.8%

平均年齢(勤続年数)

45.5歳(16.3年)

従業員数

4,621人(連結:28,034人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

 当社グループは、当社および子会社117社(国内26社、海外91社)、関連会社45社(国内40社、海外5社)により構成(2023年3月31日現在)されており、電気機械器具、電子応用機械器具、精密機械器具、医療用機械器具、およびその他の一般機械器具の製造・販売およびこれらに付帯する業務を中心とした事業を営んでいますが、その製品の範囲は産業用制御機器コンポーネントの全分野およびシステム機器、さらには生活・公共関連の機器・システムへと広範囲に及んでいます。

 

 オペレーティング・セグメントごとの主要な事業内容、および主な関係会社は次のとおりです。

  なお、主な製品・サービスは「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  連結財務諸表注記事項 Ⅱ-Vセグメント情報」に記載しています。

 

(1)インダストリアルオートメーションビジネス(IAB、制御機器事業)

制御機器事業は、「オートメーションで人、産業、地球の豊かな未来を創造する」をビジョンに、オムロンがこれまでに培ってきた“センシング&コントロール + Think”のコア技術を基盤に、世界中の製造業のモノづくりを先進のオートメーションで革新し、産業の発展に貢献してきました。独自の価値創造コンセプト“i-Automation!”(*)を掲げ、業界随一の幅広い制御機器を軸に、製造業を中心に急激に変化する社会課題を革新的ソリューションで解決し、産業の高度化とともに働く人々の幸せの実現に貢献する社会価値の創出を目指します。

※画像省略しています。

(*)当社は、モノづくり現場の課題解決を通じて社会価値を創出する価値創造コンセプト“i-Automation!”を提唱し、モノづくり革新を牽引しながら地球環境との共存と人々の働きがいを実現するサステナビリティに向けたオートメーションの提供を推進しています。“i-Automation!”は、人をより創造的な役割に誘い、現場生産性の最大化とエネルギー効率を両立する「人を超える自働化」、人の可能性を最大に引き出し、人と機械が共に成長・進化する「人と機械の高度協調」、そして製造現場や設備をデジタル空間で再現し、モノづくり現場のDXを加速させ、業務プロセスの革新に貢献する「デジタルエンジニアリング革新」の3つのコンセプトの具現化を目指しています。

 

(2)ヘルスケアビジネス(HCB、ヘルスケア事業)

ヘルスケア事業は、「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」をミッションに、誰でも簡単・正確に測定できる使いやすさと、医療現場からも信頼される精度にこだわり、商品やサービスを開発しています。商品では、血圧計や体温計、喘息治療薬を吸入するための機器であるネブライザなど、各国の医療機器認証を取得したデバイスの販売を世界110ヵ国以上で展開しています。サービスでは、医師が遠隔で患者をモニタリングし処方・治療支援を行う遠隔診療サービスの提供を主要国から進めています。

※画像省略しています。

 

(3)ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(SSB、社会システム事業)

社会システム事業は、「世界中の人々が安心・安全・快適に生活し続ける豊かな社会を創造する」をミッションとしています。太陽光発電用パワーコンディショナー、蓄電システム、自動改札機や券売機などの駅務システム、交通管制システム、決済システム、無停電電源装置などのデータ・電源保護といった、多岐にわたる端末・システム、さらにソフトウェア開発、保守メンテナンスによるトータルソリューションを提供し、社会インフラを支えています。

※画像省略しています。

 

(4)デバイス&モジュールソリューションズビジネス(DMB、電子部品事業)

電子部品事業は、「我々のデバイスとモジュールで、顧客の価値を創造し、地球上の人と社会に貢献する」をミッションとしています。家電製品や産業機器、モビリティ、エネルギーインフラなど、幅広い業界の顧客に対して、電気を繋ぐ・切るためのコア部品となる、リレー、スイッチ、コネクターや、さまざまな製品の目や耳になるセンサなどのデバイスやモジュールを、全世界で提供するオムロンの基盤事業です。

※画像省略しています。

 

 

 

セグメント名

主な関係会社

日本(26社)

米州(13社)

欧州(34社)

中華圏(18社)

東南アジア他(26社)

IAB

オムロン関西制御機器㈱

㈱エフ・エー・テクノ

SKソリューション㈱

オムロンエレクトロニクス(米国)

オムロンロボティクスセーフティテクノロジー(米国)

オムロンメキシコ

オムロンヨーロッパ(オランダ)

オムロンエレクトロニクス(スペイン)

オムロンエレクトロニクス(イタリア)

オムロン上海(中国)

オムロンインダストリアルオートメーション(中国)

オムロン台湾エレクトロニクス(台湾)

オムロンアジアパシフィック(シンガポール)

オムロンエレクトロニクスコリア(韓国)

オムロンエレクトロニクス(タイ)

HCB

オムロンヘルスケア㈱

オムロンヘルスケアマーケティング㈱

オムロンヘルスケア(米国)

オムロンヘルスケアブラジル

オムロンヘルスケアヨーロッパ(オランダ)

オムロンヘルスケア(イギリス)

オムロンヘルスケアロシア(オランダ)

オムロン大連(中国)

オムロンヘルスケア(中国)

オムロンメディカル北京(中国)

オムロンヘルスケア韓国

オムロンヘルスケアシンガポール

オムロンヘルスケアインド

オムロンヘルスケアマニュファクチャリングベトナム

SSB

オムロンソーシアルソリューションズ㈱

オムロンソフトウェア㈱

オムロンフィールドエンジニアリング㈱

オムロン阿蘇㈱

 

 

 

 

 

DMB

オムロンリレーアンドデバイス㈱

オムロンスイッチアンドデバイス㈱

オムロンアミューズメント㈱

オムロンエレクトロニックコンポーネンツ(米国)

オムロンエレクトロニックコンポーネンツヨーロッパ(オランダ)

オムロンオートモーティブエレクトロニクスイタリア

上海オムロンコントロールコンポーネンツ(中国)

オムロンエレクトロニックコンポーネンツ深圳(中国)

オムロンエレクトロニックコンポーネンツトレーディング上海(中国)

オムロンマレーシア

オムロンエレクトロニックコンポーネンツ(韓国)

オムロンエレクトロニックコンポーネンツ(タイ)

 

(事業系統図)

 当グループにおける主要な関係会社は、概ね次の図のとおりの位置付けにあります。なお、事業系統図内の矢印は、製品およびサービスの流れを示しています。

※画像省略しています。

23/06/23

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 事業環境、経営成績等の状況・分析・検討

①当社グループの経営成績の実績及び見通し

<2022年度実績>

 新たな中期経営計画(SF 1st Stage)の初年度となる当期(2022年度)における当社グループを取り巻く事業環境は、上海ロックダウンやグローバルでのインフレ拡大、部材の逼迫など、1年を通じて大きく変化しました。

 このような中、売上高は、第1四半期(4月~6月)で制御機器事業を中心に上海ロックダウンの影響を大きく受けましたが、第2四半期以降、生産回復に加え高水準の受注残に対応すべく供給力強化を加速した結果、前期比で大幅に増加しました。部材価格高騰や第1四半期における制御機器事業の主力工場の稼働率低下などの影響がありましたが、全社で価格適正化などの付加価値率改善に継続して取り組み、売上総利益率は45.0%(前期比△0.5P)となりました。また、SF 1st Stageの目標達成に向けた積極的な投資を継続して実行しました。以上の結果、営業利益、税引前当期純利益、当社株主に帰属する当期純利益は前期比で大幅に増加しました。また、ROIC(投下資本利益率)とROE(株主資本利益率)は、ともに10%を超える水準となりました。

 なお、売上高は8,761億円(前期比14.8%増)、営業利益は1,007億円(同12.7%増)、税引前当期純利益は984億円(同13.5%)となり、過去最高業績を更新しました。

 

<2023年度見通し>

 次期(2023年度)の事業環境は、インフレの拡大や地政学リスクの高まりなど、上期を中心に不透明な状況が継続すると見込まれますが、当社グループが事業活動を展開する事業領域においては、下期以降、回復基調に向かうと認識しています。一方で、社会・産業構造の変化が進み、長期ビジョン「SF2030」で捉える社会的課題(カーボンニュートラルの実現・デジタル化社会の実現・健康寿命の延伸)や、地政学リスクを背景としたグローバルでのサプライチェーン再編の動きはさらに顕在化し、当社グループにとって多くの事業機会が出現すると認識しています。

 当社グループでは、このようなチャンスとリスクが混在する事業環境下で、中期経営計画「SF 1st Stage」で設定した戦略を着実に遂行し、収益体質のさらなる強化と着実な成長を目指します。また、長期ビジョンの新たな価値創造に向けて、制御機器事業やヘルスケア事業を中心とした成長投資を積極的に実行します。

上記の取組みを進めることで、3期連続での増収増益を見通します。

 なお、2023年度は、売上高は8,900億円(当期比1.6%増)、営業利益1,020億円(同1.3%増)、売上総利益率は46.6%(同1.6ポイント増)を計画しています。

 

 

<売上高・営業利益・売上総利益率の推移>

※画像省略しています。

(注)2019年度に車載事業を非継続事業に分類したことに伴い、2018年度の売上高、営業利益は非継続事業を除いた継続事業の数値に組み替えて

   表示しています。

 

 

<2023年度の経営方針と重点取組み>

 2023年度の経営方針は、「トランスフォーメーションの大加速」と定めました。オムロンは、大きく変化する社会・事業環境に適応し、持続的な成長を成し遂げるため、「事業」、「企業運営・組織能力」のトランスフォーメーションを進めています。また、中期経営計画(SF 1st Stage)の 2年目となる2023年度は、不透明な事業環境においても産業構造の変化から生じる事業機会を確実に捉え、売上に結実させていく「自走的成長力の強化」を進めていきます。具体的には、SF 1st Stageで設定した3つのグループ戦略のうち、「事業のトランスフォーメーション」、「企業運営・組織能力のトランスフォーメーション」を加速すべく、5つの重点取組みを推進していきます。

 

2023年度の5つの重点取組み

① お客様への社会価値・経済価値の訴求とソリューション提供の加速

 多くの社会的課題の出現やグローバルサプライチェーン再編の動きなどにより、弊社が推進する共創型ソリューションの提案機会がより多く出現しています。各事業における営業・マーケティング力を強化し、必要な投資とアクションを加速することで、顧客接点の質と量を飛躍的に高め、売上拡大へと結実させていきます。

 

② 社員の能力発揮を高める人財マネジメントの強化

 価値創造・そして戦略推進の主体者は社員であり、高度化する社会的課題解決を実現するため、社員ひとり一人の能力発揮度を高め、企業の競争力をより高めていきます。各事業・各機能において社員に成長機会を提供するとともに、ジョブ型制度の運用やキャリア形成支援の強化を図り、「人的創造性」の向上へと繋げていきます。

 

③ キャッシュの持続的創出力の強化

 常態化するインフレ・不安定なサプライチェーンや金融不安など、多くの経済リスクを内包した事業環境下において、将来成長に向けた投資を実行し続けるためには強固なキャッシュ創出力を備える必要があります。売上成長・価格適正化などにより利益創出力を高めるとともに、徹底した在庫マネジメントにより資産回転率の向上を図ることで、キャッシュの持続的創出力を高めます。

 

④ グローバルのビジネスバリューチェーンの最適化

 米中対立などに端を発したサプライチェーンの混乱は、依然としてリスクを抱えた状態であり、安定的な生産・供給の実現に向け、各事業のサプライチェーン最適化のアクションを加速させていきます。地産地消を基本スタンスとし、主に、生産の移管や分散、重要製品における部材調達の現地化・複線化を進めていきます。

 

⑤ DX基盤構築の推進

 データに基づく企業運営の加速に向けて、経営基幹システムの導入推進と徹底した活用を進めていきます。2022年度に欧州での初期構想の構築は完了しており、2023年度は、設計・開発と試験導入による検証を完了させます。また先行エリアとなる欧州と連携し、日本での初期構想の具体化を着実に進めていきます。

 

 

 

 

(参考)健康経営アライアンス

 人生100年時代を迎え、長く働き続けられる社会が実現に向かう一方で、日本の産業界は、「社員の健康増進」、「健康保険組合の財政の健全化」、「医療費抑制への貢献」の課題に直面しています。このような状況の中で健康経営の推進は、企業の生産性向上や医療費の適正化のみならず、社員を企業の財産と捉える人的資本経営の実践においても重要な経営課題となっています。また、世界における日本産業界全体の競争力を高めることにもつながります。こうした社会課題解決に向け、業界を超えた8社(味の素株式会社、SCSK株式会社、オムロン株式会社、キリンホールディングス株式会社、株式会社島津製作所、株式会社JMDC、日本生命保険相互会社、株式会社三井住友銀行)が健康社会の実現を目指して結集し、2023年3月10日にアライアンス設立を発表しました。

 本アライアンスは、「健康経営の型づくりと成果創出のためのソリューションの共創および産業界への実装」を実現します。そのアプローチとして、健康経営を実践する企業とソリューションを提供する企業の叡智を集結させます。具体的には、ヘルスケアデータを活用し、社員の生活習慣病由来の脳・心血管疾患や腎疾患、メンタル不調といった重症化の予測ができる疾病リスクの対処に取り組みます。また、ヘルスケアデータを活用した社員の健康の維持・増進を、アライアンス参画企業が自ら実践しフィードバックするとともに、各社の健康経営に関する製品・サービスをアライアンス内で導入し、新たな開発・実証も行います。モデルケースとなる成功事例は、アライアンス外にも展開し、アカデミアや省庁とも連携しながら社会実装・海外展開を目指します。本アライアンスは、2023年6月末の設立を予定しています。

 

 

<SF 1st Stageの財務目標と2022年度における進捗>

※画像省略しています。

(注)営業C/Fは、SF 1st Stage終了時の評価としており、単年度の計画値は公表していません。

 

<SF 1st Stageの非財務目標と2022年度における進捗>

※画像省略しています。

 

(注)1「 カーボンニュートラルの実現」、「デジタル化社会の実現」、「健康寿命の延伸」に繋がる注力事業の売上高。

     2 2022年度のGHG排出量は、上海ロックダウン等の一時的な影響を含めた数値。

      3 2023年4月3日出資完了したオムロンキリンテクノシステムズ株式会社を含む4月20日時点の当社及び連結子会社集計値。

        2023年3月31日時点の連結子会社について集計した女性管理職比率は16.8%。

   4 リージョン:米州、欧州、アジア、中華圏、韓国、日本。

   5 GHG:温室効果ガス

   6 非財務目標の⑧から⑩は、社員投票で決定した目標。

 

 

<(参考)サステナビリティ目標と2022年度の進捗>

※画像省略しています。

(注)1 2023年4月3日出資完了したオムロンキリンテクノシステムズ株式会社を含む4月20日時点の当社および連結子会社集計値

        2023年3月31日時点の当社および連結子会社について集計した女性管理職比率は16.8%

      2 Scope1・2: 自社領域から直接的・間接的に排出される温室効果ガス

      3 Scope3カテゴリー11: 自社のバリューチェーンからの温室効果ガスの排出のうち製造・販売した製品・サービス等の使用

                            に伴う排出

      4 JaCER:一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構

      5 以下のサステナビリティ目標に対する2022年度の実績は、第三者機関による限定的保証業務を受け、

        今年度発行の統合レポートに掲載する予定です。

         ・海外コアポジション現地化率

         ・日本国内の障がい者雇用率

      6 以下のサステナビリティ目標に対する2022年度の実績は、オムロンコーポレートサイトに掲載し、ビューローベリタス

        ジャパン株式会社による限定的保証業務により第三者保証等を実施中であり、2023年6月中に完了する見込みです。

         ・温室効果ガス排出量(Scope1・2、およびScope3カテゴリ1,2,3,6,7)

         ・環境貢献量

      7 上記限定的保証業務は、いずれも国際監査・保証基準審議会の国際保証業務基準(ISAE)3000「過去財務情報の監査又は

        レビュー以外の保証業務」に準拠した業務です。

 

 

 

②各事業セグメントの実績及び見通し

※画像省略しています。

<「SF2030」における価値創造の取組み>

 制御機器事業では、事業ビジョン「オートメーションで人、産業、地球の豊かな未来を創造する」を設定しました。オートメーションを通じ豊かな医・食・住環境を支える持続的な産業の発展と、働く人々の幸せ、そして地球環境の維持との両立を目指しています。制御機器事業は、事業ビジョンの設定において、今後10年で直面するであろう社会の変化を想定しました。それは、目まぐるしく世界が変化する中で、さまざまな社会的課題が浮き彫りになる時代だと考えています。このような市場背景の中で、制御機器事業が解決すべき社会的課題を、「働く人」と「産業の高度化」の二つの側面で捉えました。

 「働く人」とは、ミレニアル世代やZ世代に代表される価値観の変化や技術の進化に伴う働く人のマインドの変化、そして働く人にとっての労働機会の変化です。そして、「産業の高度化」とは、次々と生まれる先進技術により2次産業でのモノづくりの革新だけでなく、1次産業や3次産業にまで広がる大きな変革です。制御機器事業が取り組むべき社会的課題は、制御機器事業が強みとするオートメーションにより、働くすべての人々の幸せと産業の高度化の両立を実現し、さらに社会的要請でもある地球環境の保全にも貢献していくことです。制御機器事業が目指すのは、持続可能な産業の進化により、世界中の人々が共通して求める医・食・住環境が充実した社会です。これは、長年に渡りモノづくりを源流で支えてきたオムロンだからこそ可能なチャレンジであり、事業ビジョンには、このような思いを込めました。

 その実現に向け2016年に提唱した独自のモノづくりコンセプト、「i-Automation!」を進化させ、業界随一の幅広い制御機器の品揃えと技術・ソリューションで社会的課題を解決するイノベーションを量産し、持続可能な社会を支えるモノづくりの高度化に貢献していきます。

 

<2022年度の業績と2023年度の見通し>

2022年度の業績

売上高の

状況

 製造業全体の設備投資需要は足元で減速リスクが高まりましたが、当社が注力する半導体製造装置・電気自動車(EV)・二次電池向けなどの需要は依然として堅調に推移しました。

 このような状況において、第1四半期に上海ロックダウンによる当社主力工場の稼働率低下の影響を大きく受けましたが、第2四半期以降は、高水準の受注残の解消に向けた供給力強化の取組みを進めるとともに、注力業界を中心としたソリューションビジネスの拡大を加速しました。これらの結果、売上高は4,857億円(前期比16.2%増)と前期比で大きく増加し、過去最高となりました。

営業利益の

状況

 売上高の大幅な増加により、営業利益は858億円(前期比12.6%増)と前期比で大きく増加し、過去最高となりました。

 

2023年度の見通し

売上高の

見通し

 製造業全体の設備投資需要は、インフレ等の影響もあり不透明な状況ではありますが、注力する半導体製造装置・電気自動車(EV)・二次電池業界の設備投資需要も堅調に推移すると見ています。

 このような状況の中、受注残の正常化の取組みを着実に実行するとともに、注力業界を中心にソリューションビジネスの拡大を引き続き加速していきます。

これらの取組みにより、次期の売上高は4,900億円(当期比0.9%増)と当期比で増加を見込みます。

営業利益の

見通し

 売上高の増加や生産性の向上により、次期の営業利益は880億円(当期比2.5%増)と当期比で増加を見込みます。

 

<売上高・営業利益・売上総利益率の推移>                <社会価値創出のKPIの進捗>

 

※画像省略しています。  ※画像省略しています。

(注)経営管理区分の見直しにより、2022年度より、IABの一部をDMBに含めて開示しています。

   これに伴い2021年度を新管理区分に組み替えて表示しています。

 

 ※画像省略しています。

<「SF2030」における価値創造の取組み>

 ヘルスケア事業では、家庭で測定した血圧が人々の健康に役立つという信念のもと、その普及に取り組んできました。今では、高血圧治療の現場で家庭で測った血圧データが活用されるようになり、高血圧患者の降圧コントロールにも成果が見られます。しかし、高齢化に伴い高血圧患者はグローバルに増え、高血圧に起因する脳・心血管疾患の発症も増加しています。加えて、新興国を中心に増え続ける呼吸器疾患患者、日常生活に大きな影響を与える膝や腰、肩の慢性的な痛み。これらは人々のQOLを著しく低下させてしまいます。

 「SF2030」のビジョン「Going for ZERO 〜予防医療で世界を健康に〜」には、世界中の一人ひとりが健康ですこやかに生活できる社会を、オムロンの手で切り拓いていく、という強い意志を込めました。

 これまで培ってきた技術と知見を活用し、「循環器」「呼吸器」「ペインマネジメント」領域において、脳卒中や心不全などの「脳・心血管疾患の発症ゼロ」、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの「呼吸器疾患の増悪ゼロ」、膝痛や腰痛などの「慢性痛による日常生活の制限ゼロ」の3つのゼロにチャレンジします。

 そして、病気にならない、病気を重症化させないための予防医療という新しい価値を提案し、「健康であり続けたい」という世界中の人々の願いをかなえます。

 2021年、グローバルでの家庭用血圧計の累計販売台数は3億台を突破しました。しかし、世界を見渡すと、まだ普及率は低く、市場規模は2020年の6,100万台から2024年には、8,700万台に拡大するとされています。中で

も、今後ますます市場の拡大が見込まれる中国・インドに注力し、基盤事業を強化します。

 

<2022年度の業績と2023年度の見通し>

2022年度の業績

売上高の

状況

 世界的なインフレ影響による消費マインドの冷え込みと、中国でのゼロコロナ政策継続に伴う販売店休業や物流網停滞の影響を受け、血圧計を中心に需要は低調に推移しました。

 そのような中でもグローバルにおける健康意識の高まりへのニーズを着実に捉えるとともに物流の改善なども迅速に実施したことに加え、為替影響もあり、売上高は1,421億円(前期比7.0%増)と前期比で増加しました。

営業利益の

状況

 固定費抑制や価格適正化に取組みましたが、部材価格の高騰や将来成長への投資継続により、営業利益は160億円(前期比13.6%減)と前期比で大きく減少しました。

 

2023年度の見通し

売上高の

見通し

 中長期的な慢性疾患患者数の増加傾向がグローバルで継続する中、中国での個人消費の回復もあり、血圧計などの需要はグローバルで増加すると見ています。このような中、各エリアにおけるオンラインチャネルでの販売強化に加えて、新興国における需要拡大を的確に捉えることで、次期の売上高は1,460億円(当期比2.7%増)と当期比で増加を見込みます。

営業利益の

見通し

 部材価格高騰の影響が継続するものの、売上高の増加に加え、価格適正化の取組みを継続していくことで、次期の営業利益は170億円(当期比6.1%増)と当期比で増加を見込みます。

 

<売上高・営業利益・売上総利益率の推移>                <社会価値創出のKPIの進捗>

 

※画像省略しています。  ※画像省略しています。

 

 

 ※画像省略しています。

<「SF2030」における価値創造の取組み>

 2030年に向かうこれからは、地球温暖化を起因とした自然災害の多発や、少子高齢化に伴う労働人口の不足など、暮らしの安心・安全・快適への障害となる、新たな社会的課題が顕在化する時代です。そして、そのような時代を生きる人々の価値観も多様化していきます。社会システム事業は、顧客のニーズに応えることに加え、顕在化する社会的課題を踏まえ、社会システムのあり方を考え、その答えを導き出してまいります。そして、その答えに共感していただいたステークホルダーの皆様とともに、 「次世代の社会システム」をつくっていく。この一連のプロセスと想いを「SF2030」の事業ビジョンの「Design」に込めました。社会システム事業は、暮らしをよくする“ソーシャルグッド”を生み出しながら人々の暮らしをより良くし、笑顔溢れる明るい未来を実現します。

 「SF2030」においてオムロンが捉えた解決すべき社会的課題は、「カーボンニュートラルの実現」と「デジタル化社会の実現」です。CO2総排出量の増加や気候変動の加速、少子高齢化の加速による労働力不足といった社会的課題は深刻化し、社会生活にもさまざまな不都合や不安が生じます。また、企業各社では事業運営の効率化や省力化の進展と同時に、事業継続や環境配慮への対応が求められるなど、経営課題は複雑化していきます。これからは、既存の機器やサービス提供による現場課題の解決だけではなく、お客様の経営課題の解決に、ともに取り組むことが必要です。これからの安心・安全・快適な社会とは何か?オムロン自身が将来像を描き、社会システム事業で培ってきたノウハウを活かしたソーシャルオートメーションで、次世代の社会システムの実現を目指します。

 

<2022年度の業績と2023年度の見通し>

2022年度の業績

売上高の

状況

 エネルギーソリューション事業では、エネルギー価格の高騰などにより自家消費を中心に 再生エネルギー関連に対する堅調な需要が継続しました。駅務システム事業では、鉄道利用者数の回復に伴い、顧客の更新投資需要が第2四半期以降は回復傾向で推移しました。これらの結果、売上高は1,073億円(前期比22.3%増)と前期比で大きく増加しました。

営業利益の

状況

 外貨建て仕入の為替影響はあるものの、売上高の増加に加え価格適正化に継続して取り組んだ結果、営業利益は75億円(前期比15.1%増)と前期比で大きく増加しました。

 

2023年度の見通し

売上高の

見通し

 エネルギーソリューション事業では、エネルギー価格の高騰や補助金支援の継続などにより住宅・産業領域での再生エネルギー関連に対する需要は堅調に推移すると見ています。駅務システム事業では、鉄道利用者数の回復に伴う顧客の設備投資が堅調に推移すると見ています。

 これらの需要に迅速に対応して、製品とサービスを組み合わせたソリューションを提供することによって、次期の売上高は1,140億円(当期比6.3%増)と当期比で増加を見込みます。

営業利益の

見通し

 売上高の増加や生産性向上により、次期の営業利益は90億円(当期比20.2%増)と当期比で大幅な増加を見込みます。

 

<売上高・営業利益・売上総利益率の推移>                <社会価値創出のKPIの進捗>

 

※画像省略しています。 ※画像省略しています。

(注)環境事業のSSBへの移管により、2020年度より「その他」の事業セグメントを「SSB」の事業セグメントに

   含めて開示しています。これに伴い、2018年度および2019年度を新管理区分に組み替えて表示しています。

 

 ※画像省略しています。

<「SF2030」における価値創造の取組み>

 電子部品事業は、「SF2030」において、3つのトランスフォーメーションを実現していきます。

 1つ目は、事業のトランスフォーメーションです。オムロンの注力ドメインの一つとして、「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会」の社会的課題を解決する事業を目指します。コア技術と多彩な機能の組み合わせで製品の価値を向上させ、お客様が必要な機能をデバイス&モジュールを軸としたソリューションとして提供し、社会課題の解決に取り組んでいきます。コアとなる“繋ぐ・切る”技術は、創業以来、社会・お客様に提供し続けているリレー、スイッチ、コネクター、センサーなどのデバイス&モジュールの高機能化と品質向上で磨き続けてきた製品に流れる電気を繋ぐ・切る(オン・オフする)機能や、センシングする機能です。これらで、「新エネルギーと高速通信の普及」に貢献する新たな社会価値を創出していきます。

 2つ目は、注力領域のシフトです。コア技術を軸とした事業の強みが最大限発揮でき、さらなる成長機会が見込まれる4つの事業領域にフォーカスしていきます。注力領域は、DCドライブ機器、DCインフラ機器、高周波機器、遠隔/VR機器です。DCドライブ機器、DCインフラ機器においては、環境負荷対応により電源の直流化・高容量化、インフラの電動化が進んでいきます。製品の普及促進に向けて課題となるのが、感電や発火を防ぐための安全対策です。高周波機器、遠隔/VR機器においては、急速なデジタルシフトで高速通信・データの大容量化を実現する技術・デバイスが必要となります。これら課題解決の根幹を、我々の“繋ぐ・切る”技術で実現します。

 3つ目は、提供価値のシフトです。これまでの価値に加えて、「グリーン・デジタル・スピード」を軸とした新たな価値を加えていきます。脱炭素社会の実現に貢献するデバイス群の創出、デジタル価値の提供、営業・開発・生産が一体となり、社会変化に柔軟かつタイムリーに対応するコンカレント活動などにより提供価値スピードを加速していきます。

 

<2022年度の業績と2023年度の見通し>

2022年度の業績

売上高の

状況

 民生業界向け部品は、グローバルでのインフレ影響により需要が低下傾向となったものの、注力する太陽電池や蓄電などのエネルギー関連、半導体検査装置関連向け需要は堅調に推移しました。

 これらの需要に対応すべく柔軟かつタイムリーな生産・物流・販売に注力した結果、売上高は1,389億円(前期比14.8%増)と前期比で大きく増加し、過去最高となりました。

営業利益の

状況

 原材料価格高騰などの影響を受けたものの、売上高の大幅な増加に加え、価格適正化や過去に取り組んできた構造改革の成果などにより、営業利益は155億円(前期比53.7%増)と前期比で大きく増加し、過去最高となりました。

 

2023年度の見通し

売上高の

見通し

 民生向け需要は上期を中心に低迷すると見ています。一方で、注力する太陽光発電や蓄電などのエネルギー関連業界や半導体検査装置関連業界での需要獲得に向けたソリューション提案などの取組みを加速することで、次期の売上高は1,390億円(当期比0.1%増)と当期比で横ばいを見込みます。

営業利益の

見通し

 原材料価格高騰の影響などが継続する中で、価格適正化や生産性向上に引き続き取り組むことにより、次期の営業利益は155億円(当期比0.0%増)と当期比で横ばいを見込みます。

 

<売上高・営業利益・売上総利益率の推移>                <社会価値創出のKPIの進捗>

 

※画像省略しています。  ※画像省略しています。

(注)経営管理区分の見直しにより、2022年度より、IABの一部をDMBに含めて開示しています。

   これに伴い2021年度を新管理区分に組み替えて表示しています。

 

 

 

 

(2) 財政状態、キャッシュ・フローの状況・分析・検討

①財政状態

 当期末の資産の部は、現金及び現金同等物が減少した一方、売上の増加に伴う売上債権の増加、部材逼迫に対応した部材確保や急激な需給変動影響による棚卸資産の増加により、前期末に比べ675億円増加して9,982億円となりました。また、負債の部は、短期借入金が減少する一方、仕入債務や未払税金、リース債務が増加したことにより、前期末に比べ43億円増加の2,669億円となりました。純資産の部は、自己株式の取得を実行する一方で、当社株主に帰属する当期純利益の計上、為替変動による為替換算調整金の増加などにより、前期末に比べ633億円増加し7,312億円となりました。株主資本比率は73.0%となり、強固な財務基盤を維持しています。資金流動性については、当期末現在の手元現預金を1,053億円保有していることに加えて、金融機関との間で300億円のコミットメントライン契約を維持しており、高い水準を維持しています。また、今後の成長投資資金の確保に備え、格付機関から長期発行体格付として高格付を維持するとともに、グローバルで金融機関との良好な関係を維持することで、資金調達力を確保してまいります。

 なお、重要な財務指標であるROE(株主資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)は当社グループの想定資本コストを上回る水準を維持しています。当期末は当社グループが目標とする水準10%を超える水準となりました。一方で当期末の手元現預金の対月商月数は、金融機関からの一時借入の影響もあり、1.4ヶ月と平時の目安としている1ヶ月~2ヶ月の水準を維持しています。さらなる企業価値向上のためには、蓄積されたキャッシュと今後生み出すキャッシュを既存事業の強化と新たな成長機会に再投資し、成長を加速することが必要と認識しています。引き続き、経営資本の適正配分により、将来キャッシュ・フローの創出能力と資本効率を高めて企業価値向上を実現し、株主の皆さまの期待に応えてまいります。

 当社グループでは、過去に実行した変化対応力の強化や事業ポートフォリオの組み替え、さらにはサステナビリティ課題への取組みなどにより、株価の安定や資本コストの低減が見られます。これらを考慮し、2021年度以降の想定資本コストは、5.5%と設定しました。引き続きROICの改善と資本コストの低減により企業価値の向上に努めます。

 

 

2022年3月末

2023年3月末

増減

資産合計(資産の部合計)

9,306 億円

9,982 億円

+675 億円

負債の部合計

2,627 億円

2,669 億円

+43 億円

株主資本

6,652 億円

7,285 億円

+632 億円

非支配持分

27 億円

28 億円

+0 億円

純資産の部合計

6,680 億円

7,312 億円

+633 億円

負債及び純資産合計

9,306 億円

9,982 億円

+675 億円

 

  <ROIC>                    <ROE>

    ※画像省略しています。

 

    (注)車載事業売却影響除くROIC、ROEは、当期純利益から車載事業売却益を控除して計算したものです。

 

  <株主資本、株主資本比率>

   ※画像省略しています。

 

②キャッシュ・フローの状況

キャッシュアロケーションの方針と状況

 当社グループでは、SF 1st Stageおけるキャッシュアロケーションポリシーと株主還元方針について、以下のとおりとしました。

 

<キャッシュアロケーションポリシー>

(ⅰ)長期ビジョン「SF2030」の実現による企業価値の最大化を目指し、中長期視点で新たな価値を創造するための投資を優先します。SF 1st Stageにおいては、社会的課題の解決やソーシャルニーズ創造のための人財や研究開発などへの投資、増産やDXなどの設備投資、M&A&A(買収・合併・提携)などの成長投資に加えて、脱炭素・環境負荷低減やバリューチェーンにおける人権尊重などのサステナビリティへの取組みに対する投資を優先します。その上で、安定的・継続的な株主還元を実行していきます。

 

(ⅱ)これら価値創造のための投資や株主還元の原資は内部留保や持続的に創出する営業キャッシュ・フローを基本とし、必要に応じて適切な資金調達手段を講じて充当します。なお、金融情勢によらず資金調達を可能とするため、引き続き財務健全性の維持に努めます。

 

<株主還元方針>

(ⅰ)中長期視点での価値創造に必要な投資を優先した上で、毎年の配当金については、「株主資本配当率(DOE)3%程度」を基準とします。そのうえで、過去の配当実績も勘案して、安定的、継続的な株主還元に努めます。

 

(ⅱ)上記の投資と利益配分を実施したうえで、さらに長期にわたり留保された余剰資金については、機動的に自己株式の買入れなどを行い、株主の皆さまに還元していきます。

 

 当社グループでは、SF 1st Stageの目標として、2022年度~2024年度の3年間の営業キャッシュ・フロー累計を2,500億円としています。稼ぐ力の強化と運転資金の効率的な運営により増加を目指します。一方で、注力するIAB(制御機器事業)、HCB(ヘルスケア事業)を中心に、将来の成長に向けた設備投資やM&A投資などの戦略的な投資を実行しています。また、株主還元については、安定的な配当を継続するとともに資本効率を考慮した機動的な自己株式取得も実施しています。引き続き、将来の成長のための投資を実行して、資本コストを上回るリターンに結びつけることで企業価値を高め、株主の皆さまの期待に応えてまいります。

 

<キャッシュ・フローの推移>

  ※画像省略しています。

(注)1 為替レートの影響は除いて表示しています。

   2 投資キャッシュ・フローについては、事業売却・買収等による影響を分けて表示しています。

     事業売却・買収等による収入・支出には、連結キャッシュ・フロー計算書の「事業売却(現金流出額との純額)」

     「事業買収(現金取得額との純額)」および 「関連会社に対する投資の増加」が含まれています。

 

 

2022年度のキャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度は、当期純利益が増益となりましたが、売上債権や棚卸資産等の運転資金の増加などにより、535億円の収入(前期比140億円の収入減)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当期も将来成長のための積極的な投資を継続して実行した結果、555億円の支出(前期比946億円の支出減)となりました。前期との差の主な要因は、前期に実施した、医療統計データサービスの分野での株式会社JMDCとの資本業務提携による同社への出資1,122億円などによるものです。

 

 なお、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除したフリーキャッシュ・フローは21億円の支出(前期比807億円の支出減)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 配当金の支払いや自己株式の取得に加え、借入金の返済などにより、588億円の支出(前期比292億円の支出増)となりました。

 

 以上の他、当期末における現金及び現金同等物残高は、前期末から502億円減少し、1,053億円となりました。

 

 

2022年3月期

2023年3月期

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

674 億円

535億円

△140億円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,502 億円

△555億円

+946億円

フリーキャッシュ・フロー

△827 億円

△21億円

+807億円

財務活動によるキャッシュ・フロー

△296 億円

△588億円

△292億円

 

 

2023年度の財政、キャッシュ・フローの見通し

 次年度(2023年度)においては、長期ビジョン「SF2030」の実現に向けた成長につながる設備投資・投融資を引き続き積極的に実施します。特に設備投資は全社グループのITシステム刷新を行うなど、当期比90億円の増加を見込んでいます。

財務活動では、金融情勢を鑑みながらグループ全体の効率的な資金配置を行い、柔軟な調達・運用を実施してまいります。

 なお、重要な財務指標であるROE(株主資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)は当社株主に帰属する当期純利益の増加などによりいずれも当期比で改善を見込んでいます。

 

<2023年度の財政状態に関連する指標>

 

2022年度

(実績)

2023年度

(見通し)

増減

  ROE(株主資本利益率)

10.6%

10%程度

  ROIC(投下資本利益率)

10.4%

10%程度

 

<2023年度のキャッシュ・フロー関連項目>

 

2022年度

(実績)

2023年度

(見通し)

増減

  減価償却費

266 億円

290 億円

+24 億円

  資本的支出(設備投資)

450 億円

540 億円

+90 億円

 

  (注)資本的支出は、連結キャッシュ・フロー計算書記載の金額

 

 

資金調達、資本政策の方針

 当社グループは、成長投資の実行と安定的な事業運営を行うため、資本効率を高めつつ、事業運営に必要な流動性と多様な調達手段を確保することを基本方針としています。そのための資金調達を含む資本政策については、以下の基本方針としています。

 

(ⅰ)株主価値を維持向上するために、投下資本利益率(ROIC)、株主資本利益率(ROE)および1株当たり利益(EPS)の目標水準を考慮した経営を行います。また、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢によらず資金調達が可能な高格付けを維持できる自己資本比率を目標とします。

 

(ⅱ)支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策については、取締役会において、上記の目標とする投下資本利益率(ROIC)、株主資本利益率(ROE)および1株当たり利益(EPS)等への影響を十分に考慮した上で合理的な判断を行います。

 

(ⅲ)大規模な希釈化をもたらす資本調達を実施する場合には、資金使途の内容と回収計画を取締役会において十分に審議のうえ決議するとともに、投資家・株主への説明を行います。

 

<格付情報>

 

格付

長期

短期

  スタンダード&プアーズ

   A

  A-1

  格付投資情報センター

   AA-

  a-1+

 

 

<社債情報>

 現在発行している社債はありません。

 

(参考)ROIC経営への取組み
 当社グループはROICを重要な経営指標としています。全社一丸となってこの指標を持続的に向上させるため、「ROIC経営」を社内に広く浸透させています。長期ビジョン「SF2030」においても、ROIC経営を推進し、今後も飛躍的な成長を実現していきます。

 事業特性が異なる複数の事業部門を持つ当社グループにとって、ROICは各事業部門を公平に評価できる最適な指標です。営業利益の額や率などを指標とした場合、事業特性の違いや事業規模の大小で評価に差が出ますが、投下資本に対する利益を測るROICであれば、公平に評価することができます。独自の事業ポートフォリオを展開していく当社グループにとって、ROICは欠かすことができない指標です。当社グループのROIC経営は、「ROIC逆ツリー展開」、「ポートフォリオマネジメント」の2つで構成しています。

※画像省略しています。

 

 

<ROIC逆ツリー展開>

 ROIC逆ツリー展開により、事業戦略を起点にROICを各部門のKPIに分解して落とし込むことで、現場レベルでのROIC向上を可能にしています。ROICを単純に分解した「ROS」、「投下資本回転率」といった指標では、現場レベルの業務に直接関係しないことから、部門の担当者はROICを向上させるための取組みをイメージすることができません。例えば、ROICを自動化率や設備回転率といった製造部門のKPIにまで分解していくことで、初めて部門の担当者の目標とROIC向上の取組みが直接つながります。現場レベルで全社一丸となりROICを向上させているのが、当社グループの強みです。

※画像省略しています。

 

 

<ポートフォリオマネジメント>

 全社を約60の事業ユニットに分解し、ROICと売上高成長率の2軸で経済価値を評価するポートフォリオマネジメントを行っています。これにより新規参入、成長加速、構造改革、事業撤退などの経営判断を適切かつ迅速に行い、全社の価値向上をドライブしています。

 また、限られた資源を最適に配分するために、「経済価値評価」だけではなく、「市場価値評価」も行っています。それにより、各事業ユニットの成長ポテンシャルを見極められ、より最適な資源配分を可能にしています。

※画像省略しています。

 

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当連結財務諸表は米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。連結財務諸表の作成にあたり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示および報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。長期性資産の減損、のれんおよび非償却性の無形資産の減損、および繰延税金資産の回収可能性等については、原材料価格高騰の影響を考慮して見積りおよび判断を行っています。

 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 Ⅰ 重要な会計方針の概要 F 会計処理基準」に記載していますが、当社の経営戦略および連結財務諸表に与える影響から重要性があると考えられるものは以下のとおりです。

 

戦略投資等にかかるのれん等の評価

 当社は将来に向けた成長力強化の一環として積極的な戦略投資を行っています。

 HCBにおいては、脳・心血管疾患の重症化を防ぎ、治療をサポートする事業での協業を目的として、米国を中心に心疾患の診断と治療の支援サービスおよび商品を提供するAliveCor,Inc.へ2020年2月に出資を行いました。

 長期ビジョン「SF2030」ではデータを基軸とした価値創造への収益構造転換が重要になると考えており、その先駆けとして、2022年2月に医療データサービス会社である株式会社JMDCとの資本業務提携のために同社株式の取得を行いました。

 

 当社では、投資管理プロセスを策定しており、買収案件の投資回収状況やのれん減損テストの結果、買収事業の進捗と今後の計画については年に1回、取締役会へ報告しています。

 

 

①のれん評価

 当社は、のれんの評価について、のれんの償却は行わず、少なくとも年に1回又は減損の兆候が識別された場合に減損テストを実施しています。

 減損テストの実施に当たっては、当該報告単位の公正価値をディスカウント・キャッシュ・フロー法により算出し、対応する帳簿価額と比較して評価を行っています。公正価値は経営者により承認された事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの見積額を、加重平均資本コストをもとに算定した割引率で現在価値に割り引いて算定しています。事業計画は、マクロ経済状況、市場成長率、利益率、設備計画等の仮定を用いて策定し、事業計画予測期間以後のキャッシュ・フローは、各事業の所在国のインフレ率で永続的に成長するものと仮定して算出しています。

 加重平均資本コストは、リスクフリーレート、所在国の経済や市場の状況を反映させるためのリスクプレミアム、インフレ率、負債コスト、類似企業の決定、類似企業に対してプレミアムもしくはディスカウントが適用されるべきかの決定等、多くの見積りを使用して算出しています。当年度の減損判定で使用した割引率は7.4%から10.9%の範囲です。

 当年度の減損判定においては、公正価値が帳簿価額を超過していたため、のれんの減損損失は認識しておりません。

 

②関連会社に対する投資の評価

 当年度末連結貸借対照表に計上されている関連会社に対する投資及び貸付金には、ヘルスケア事業のAliveCor,Inc.に対する持分法による投資9,835百万円が含まれており、純資産に対する当社の持分相当額を上回る8,199百万円は、主に持分法適用開始時に識別したのれん相当額によるものです。

 当社は、関連会社に対する投資について、投資先の超過収益力に基づく公正価値評価を行い、その価値の下落が一時的とは認められない場合には、持分の簿価が当該関連会社の公正価値の当社持分を超過した分について持分法損失を認識しています。同社についてはスタートアップ企業であるため将来事業計画の達成可能性の不確実性やのれん相当額の重要性を鑑み当該公正価値をのれんの評価と同じ方法で算出した結果、公正価値が投資簿価を上回ることから、評価損失の計上は不要と判断しています。当年度の公正価値の算出にあたっては将来事業計画の期間ごとの達成可能性の評価に応じ、割引率を11.7%から20.0%の範囲で使用しています。

 また、関連会社に対する投資及び貸付金には株式会社JMDCに対する当社持分121,918百万円が含まれており、純資産に対する当社の持分相当額を上回る101,427百万円は主に持分法によるのれん相当額の残高です。

 同社については、市場株価の推移分析、株式市場における市場価格に基づく評価額が帳簿価額を下回る期間及び程度の評価、投資先の業績や取り巻く環境の評価及びディスカウント・キャッシュ・フロー法による評価額と帳簿価額との比較などの定性的、定量的な要素を総合的に勘案した結果、一時的でない価値の下落は生じておらず、評価損失の計上は不要と判断しています。当年度のディスカウント・キャッシュ・フロー法による評価に使用した割引率は、7.0%から8.0%の範囲です。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

 当年度におけるセグメントごとの販売実績は、「(1) 事業環境、経営成績等の状況・分析・検討」に記載のとおりです。なお、当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額で示すことはしていません。

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しています。