売上高

利益

資産

キャッシュフロー

セグメント別売上

セグメント別利益

配当

ROE 自己資本利益率

EPS BPS

バランスシート

損益計算書

労働生産性

ROA 総資産利益率

総資本回転率

棚卸資産回転率


最終更新:

E01780 US GAAP

売上高

2.18兆 円

前期

1.90兆 円

前期比

114.7%

時価総額

2.86兆 円

株価

7,357 (04/24)

発行済株式数

388,771,977

EPS(実績)

293.71 円

PER(実績)

25.05 倍

平均給与

789.5万 円

前期

782.0万 円

前期比

101.0%

平均年齢(勤続年数)

43.0歳(17.9年)

従業員数

5,902人(連結:102,908人)

株価

by 株価チャート「ストチャ」

3【事業の内容】

当社はIFRSによって連結財務諸表を作成しており、当該連結財務諸表を基に、関係会社についてはIFRSの定義に基づいて開示しております。「第2 事業の状況」及び「第3 設備の状況」においても同様であります。

2023年3月31日現在、当社グループは、TDK株式会社(当社)及び連結子会社140社、持分法適用関連会社6社により構成されており、「受動部品」、「センサ応用製品」、「磁気応用製品」、「エナジー応用製品」のセグメント区分及びそれらに含まれない「その他」の製造と販売を営んでおります。

事業内容と当社及び関係会社の当該事業に係る位置付けは、次のとおりであります。

区分

主要事業

主要な会社

受動部品

セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、

フィルムコンデンサ、インダクティブデバイス

(コイル、フェライトコア、トランス)、高周波部品、圧電材料部品・回路保護部品

当社、TDK Europe GmbH

TDK Electronics AG

TDK HONG KONG COMPANY LIMITED

TDK(Shanghai)International

               Trading Co., Ltd.

その他59社(国内1社、海外58社)

               (会社数 計64社)

センサ応用製品

温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサ

当社

InvenSense, Inc.

TDK-Micronas GmbH

その他14社(国内2社、海外12社)

               (会社数 計17社)

磁気応用製品

HDD用ヘッド、HDD用サスペンション、

マグネット

当社

SAE Magnetics (H.K.) Ltd.

Magnecomp Precision Technology

                 Public Co., Ltd.

Headway Technologies, Inc.

TDK Ganzhou Rare Earth

          New Materials Co., Ltd.

その他12社(国内0社、海外12社)

               (会社数 計17社)

エナジー応用製品

エナジーデバイス(二次電池)、電源

当社

Amperex Technology Ltd.

Navitasys Technology Limited

Poweramp Technology Limited

Navitasys India Private Limited

TDK (Malaysia) Sdn. Bhd.

その他27社(国内2社、海外25社)

               (会社数 計33社)

その他

メカトロニクス(製造設備)、スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータ 等

当社

TDK Corporation of America

その他18社(国内8社、海外10社)

               (会社数 計20社)

 

 

※画像省略しています。

23/06/22

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におきましては、一部地域における新型コロナウイルス感染症の感染再拡大からの社会経済活動及び生産活動の回復傾向は続いているものの、長引くウクライナ危機等に起因するインフレの継続、欧米各国による政策金利上昇等により、世界経済は減速しました。当第4四半期連結会計期間に入り、米国金融機関の破綻や欧州金融機関の経営危機懸念を発端とした金融不安から、世界経済の先行きに対する不透明感がさらに高まりました。また、国内外の金利差が為替相場に大きく影響し、円安が進行しました。

当社の連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場を概観しますと、最終需要の低迷から市場全体の生産は大きく減速しました。ICT(情報通信技術)市場では、スマートフォンの生産台数が前連結会計年度の水準を大きく下回りましたが、一部新モデル向けの需要は堅調に推移しました。また、コロナ禍において旺盛であったノートパソコンやタブレット端末向けの需要は大幅に減少しました。HDD(ハードディスクドライブ)の生産台数は前連結会計年度の水準を大きく下回り、パソコン向けのみならず、データセンター向けの需要も大幅に減少しました。一方、自動車市場においては、一部半導体不足の懸念が残るものの、生産台数は緩やかに回復し前連結会計年度を上回る水準となりました。xEV(電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の電動車)化の伸展により部品搭載点数が増加し、部品需要は堅調に推移しました。また、産業機器市場においては、エネルギー価格高騰に伴い、再生可能エネルギーや家庭用蓄電システム向けの需要が拡大しました。

 

このような経営環境の中、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

2023年3月31日現在の資産合計は、前連結会計年度末に比べ105,374百万円増加し、3,041,653百万円から3,147,027百万円となりました。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ53,738百万円減少し、1,737,898百万円から1,684,160百万円となりました。

資本合計は、前連結会計年度末に比べ159,112百万円増加し、1,303,755百万円から1,462,867百万円となりました。

b.経営成績

当社の連結業績は、売上高2,180,817百万円(前連結会計年度1,902,124百万円、前連結会計年度比14.7%増)、営業利益168,827百万円(同166,775百万円、同比1.2%増)、税引前利益167,219百万円(同172,490百万円、同比3.1%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益114,187百万円(同131,298百万円、同比13.0%減)、基本的1株当たり当期利益301円19銭(同346円44銭)となりました。また、当社は2021年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行いました。基本的1株当たり当期利益につきましては、前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出しております。

当連結会計年度における対米ドル及びユーロの平均為替レートは、135円46銭及び140円89銭と前連結会計年度に比べ対米ドルで20.6%の円安、対ユーロで7.9%の円安となりました。これらを含め全体の為替変動により、約2,922億円の増収、営業利益で約689億円の増益となりました。

当社グループの事業は、「受動部品」、「センサ応用製品」、「磁気応用製品」及び「エナジー応用製品」の4つの報告セグメント及びそれらに属さない「その他」に分類されます。なお、当連結会計年度における組織変更により、従来「その他」に属していた一部製品を「受動部品」及び「センサ応用製品」に区分変更するとともに、前連結会計年度の数値についても変更後の区分に組替えております。

受動部品セグメントの連結業績は、売上高は575,939百万円(同507,826百万円、同比13.4%増)、セグメント利益は95,519百万円(同76,804百万円、同比24.4%増)となりました。

センサ応用製品セグメントの連結業績は、売上高は169,543百万円(同130,769百万円、同比29.7%増)、セグメント利益は10,726百万円(同損失281百万円)となりました。

磁気応用製品セグメントの連結業績は、売上高は200,573百万円(同248,446百万円、同比19.3%減)、セグメント損失は56,392百万円(同利益4,522百万円)となりました。

エナジー応用製品セグメントの連結業績は、売上高は1,173,355百万円(同965,345百万円、同比21.5%増)、セグメント利益は147,389百万円(同123,212百万円、同比19.6%増)となりました。

4つの報告セグメントに属さないその他は、売上高は61,407百万円(同49,738百万円、同比23.5%増)、セグメント損失は434百万円(同1,432百万円)となりました。

地域別売上高の状況は、次のとおりであります。
 国内における売上高は、前連結会計年度の149,038百万円から18.4%増の176,436百万円となりました。エナジー応用製品セグメント及び磁気応用製品セグメントが増加しました。
 米州地域における売上高は、前連結会計年度の129,857百万円から33.0%増の172,703百万円となりました。受動部品セグメント及びエナジー応用製品セグメントが増加しました。
 欧州地域における売上高は、前連結会計年度の175,580百万円から19.8%増の210,321百万円となりました。受動部品セグメント及びエナジー応用製品セグメントが増加しました。
 中国における売上高は、前連結会計年度の1,059,718百万円から12.7%増の1,194,013百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。
 アジア他の地域における売上高は、前連結会計年度の387,931百万円から10.2%増の427,344百万円となりました。磁気応用製品セグメントが減少したものの、エナジー応用製品セグメントの増加により当地域の売上高が増加しました。
 この結果、海外売上高の合計は、前連結会計年度の1,753,086百万円から14.3%増の2,004,381百万円となり、連結売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度の92.2%から0.3ポイント減少し91.9%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によって得たキャッシュ・フローは、262,772百万円となり、前連結会計年度比83,785百万円増加しました。これは主に、前連結会計年度において長期前渡金が増加したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用したキャッシュ・フローは、234,402百万円となり、前連結会計年度比47,144百万円減少しました。これは主に、定期預金の預入の減少によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によって得たキャッシュ・フローは、14,947百万円となり、前連結会計年度比98,796百万円減少しました。これは主に、社債による調達額の減少によるものです。

これらに為替変動の影響を加味した結果、2023年3月31日現在における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比66,846百万円増加して506,185百万円となりました。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

生産実績

(百万円)

前連結会計年度比増減(%)

受動部品

588,144

12.4

センサ応用製品

189,289

38.2

磁気応用製品

213,657

△16.8

エナジー応用製品

1,163,450

17.0

その他

58,064

7.0

合計

2,212,604

12.5

(注)1.金額は販売価格により算出しております。

 

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

受注高

(百万円)

前連結会計

年度比増減

(%)

受注残高

(百万円)

前連結会計

年度末比増減

(%)

受動部品

500,621

△21.5

275,107

△19.9

センサ応用製品

141,891

△25.9

71,481

△31.3

磁気応用製品

194,547

△20.8

14,459

△26.9

エナジー応用製品

1,270,291

15.5

245,807

39.5

その他

54,507

3.1

15,757

△6.0

合計

2,161,857

△3.0

622,611

△5.7

(注)金額は販売価格により算出しております。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

販売実績

(百万円)

前連結会計年度比増減(%)

受動部品

575,939

13.4

センサ応用製品

169,543

29.7

磁気応用製品

200,573

△19.3

エナジー応用製品

1,173,355

21.5

その他

61,407

23.5

合計

2,180,817

14.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお文中の将来に関する事項は、2023年3月31日現在において判断したものであります。

①重要な判断を要する会計方針及び見積り

重要な判断を要する会計方針とは、その適用にあたり不確実な事象について見積りを要し、経営者の主体的、複雑かつ高度な判断が要求される会計方針であります。

IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債及び収益・費用の報告額並びに偶発資産・偶発負債の開示に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っております。実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

以下は、会計方針を網羅的に記載したものではありません。重要な会計方針及び見積りについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の見積り及び判断、 3. 重要な会計方針に詳しく開示しております。

当社グループが、重要な判断を要する会計方針として認識した項目は次のとおりであります。

 

有形固定資産、のれん及び無形資産の減損

2022年3月31日及び2023年3月31日現在、当社グループの有形固定資産、のれん及び無形資産の総額はそれぞれ1,151,424百万円及び1,141,045百万円であり、総資産のそれぞれ37.9%、36.3%に相当します。当社グループは、その回収可能性が経営成績に及ぼす影響の大きさを考慮し、有形固定資産、のれん及び無形資産の減損は当社の連結財務諸表にとって重要であると認識しております。

当社グループは、有形固定資産及び特定の識別可能で耐用年数を確定できる無形資産につき、減損の兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額に基づく減損テストを実施しております。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年同じ時期に減損テストを実施しており、さらに減損の兆候が存在する場合は、その都度減損テストを実施しております。減損テストの結果、資産、資金生成単位または資金生成単位グループの帳簿価額が回収可能価額を超過する場合に、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識します。

経営者は、回収可能価額の見積りは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して回収可能価額が当初の見積りを下回った場合、資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。当社グループは、製品の将来の収益性や投資の回収可能性を十分考慮した上で投資を行っております。

棚卸資産の評価

棚卸資産は、取得原価または正味実現可能価額のいずれか低い金額で測定しております。予想される陳腐化について、将来の需要予測に基づき、取得原価と正味実現可能価額の差額が棚卸資産の帳簿価額から減額されます。当社グループは、過去の需要や将来の予測に基づき、棚卸資産の過剰及び陳腐化の可能性を考慮し帳簿価額の見直しを行っております。さらに、既存及び予想される技術革新の要求は、棚卸資産の評価に影響を与えます。正味実現可能価額の変動が当社グループの経営成績に影響を与えるため、棚卸資産の評価は重要であると認識しております。実際の需要が予想されたものより著しく低い場合は、棚卸資産の過剰及び陳腐化に関する棚卸資産の評価について追加的な調整が必要となり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に著しく不利な影響を及ぼす可能性があります。

過去の見積りの妥当性について、当社グループは四半期ごとに見積りと実績を比較し検討しております。例えば、特に技術革新がめまぐるしい一部の事業の運営においては、顧客が求める高性能製品へのタイムリーな対応が求められており、棚卸資産の陳腐化評価を行い四半期ごとに見直しております。

 

確定給付制度債務

従業員の確定給付費用及び確定給付制度債務は、保険数理人がそれらの数値を計算する際に使用する基礎率に基づいております。基礎率には、割引率、退職率、死亡率、昇給率等が含まれます。使用した基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異をその他の包括利益として認識し、直ちに利益剰余金に振り替えられるため、包括利益、利益剰余金及び帳簿上の債務に影響を与えます。当社グループはこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果及び基礎率の変更による差異は将来における確定給付費用及び確定給付制度債務に影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度の連結財務諸表の作成において、当社グループは割引率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ1.4%及び4.2%に設定しております。割引率は、給付が見込まれる期間に近似した満期を有する優良社債の利回りを参照して決定しております。

割引率の減少は、確定給付制度債務の増加をもたらす可能性があります。

繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産の認識にあたり、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の一部または全部が、将来の課税所得を減額できるまたは税額を控除できる可能性が高いかどうかを考慮しております。繰延税金資産の最終的な回収可能性は、一時差異、繰越欠損金及び繰越税額控除が将来減算される期間における課税所得の水準により決定されます。当社グループは、回収可能性の評価に当たって将来加算一時差異の解消時期、将来の課税所得の予測及び税務戦略を考慮しております。認識された繰延税金資産については、過去の課税所得の水準及び繰延税金資産が控除可能な期間における将来の課税所得の予測に基づき、回収される可能性が高いと考えております。しかしながら、将来の利益計画が実現できない、もしくは達成できない場合、または当社グループがその他の要因に基づき繰延税金資産の回収可能性評価を変更した場合、回収する可能性が高くなくなった部分を減額することが必要となります。

引当金の認識及び測定、並びに偶発負債の将来の経済的便益の流出の可能性

当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的義務を有しており、義務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が必要となる可能性が高く、かつその義務の金額について信頼性のある見積りが可能な場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要な場合には、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及びその負債に特有のリスクを反映した割引率を用いて現在価値に割り引いております。

当社グループは、製品・工程等が第三者の知的財産権を侵害した場合や通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。当社グループは、専門家と相談の上、こうした偶発負債が重要な影響を及ぼす可能性を評価しており、不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつその金額を合理的に見積もることができる場合には、当該引当金を計上します。発生した引当金は見積りに基づいており、将来における偶発負債の発展や解決に大きく影響されます。これらの引当金は、期末日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される引当金の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績及び経営成績に重要な影響を与えた要因

当連結会計年度の業績は、連結売上高が前連結会計年度比14.7%増の2,180,817百万円、営業利益が同比1.2%増の168,827百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益が同比13.0%減の114,187百万円となりました。

 当社グループの連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場においては、特にICT市場における需要の低迷が継続した一方、xEV向けや産業機器等のEX需要が堅調に推移しました。この需要を確実に取り込み、売上高は前期比14.7%の増収、営業利益は同1.2%の増益となり、売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。

 ICT市場においては、コロナ禍で好調だったPCやタブレット端末の需要が期初想定を大きく下回ったものの、スマートフォン新モデル向けに二次電池やセンサの販売が拡大しました。一方、データセンター向け投資は急速に減速し、HDDヘッドやサスペンションの販売が大幅に減少しました。

 自動車市場では、半導体供給不足等サプライチェーン上の制約が継続しているものの、全体で緩やかな回復が見られました。特にxEV比率の高まりやADAS化の進展により部品搭載点数が増加し部品需要が堅調に推移した結果、受動部品やセンサの販売が拡大しました。

 地政学的リスクの高まりにより、世界的にエネルギーの供給不安や価格高騰影響が出ているため、再生可能エネルギーや省エネ関連設備、また家庭用蓄電システムの需要が継続的に拡大しており、中型二次電池や産業機器用電源の販売も拡大しました。

 

 対ドル等の為替変動により、売上高は約2,922億円の増収、営業利益で約689億円の増益となりました。この影響を含み、売上高は2兆1,808億円、前期比2,787億円、14.7%の増収、営業利益は1,688億円、前期比21億円、1.2%の増益、税引前利益は1,672億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,142億円、基本的1株当たり当期利益は301円19銭となりました。営業利益は一時費用357億円の影響を受けております。また、一時費用の多くは税金費用の減少効果がないため、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比で減益となっております。

 為替の感応度については、営業利益において前回同様、円とドルの関係において1円の変動で年間約20億円、円とユーロの関係において約6億円と試算しております。

 

営業利益21億円増益の主な要因は、次のとおりであります。

※画像省略しています。

 ICT市場の需要減少の影響を大きく受けているHDDヘッド・サスペンション及び二次電池の販売数量減少により、売上による利益変動は△831億円と大幅減益でした。一方、円安による増益効果689億円によりある程度吸収できたことに加え、二次電池や受動部品を中心とした合理化コストダウンの推進、前期実施の構造改革効果、販管費の効率化により、前期より実質約282億円の増益となりました。

 なお、HDDヘッド等の需要環境が大きく変化していることを踏まえ、第3四半期連結会計期間に加え第4四半期連結会計期間においても構造改革を実施しました。一時費用は通期で357億円計上となり、前連結会計年度比261億円の増加となりました。この結果、営業利益はトータル21億円の増益となりました。

 

資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、現預金、短期投資、有価証券等を含む流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めております。具体的には日本、米国、欧州、中国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金効率の向上を図るとともに、コミットメントライン契約などにより流動性を担保しております。2023年3月31日現在の流動性資金の残高は円換算で522,413百万円であり、月平均売上高の2.9ヶ月相当の流動性を確保しております。新型コロナウイルス感染の再拡大、地政学的リスクによる世界経済の不確実性等(米中貿易摩擦問題、ロシアによるウクライナ侵攻等)が当社グループの資金繰りに及ぼす影響に備え、流動性資金の拡充、金融機関からの借入金長期化、コマーシャルペーパーや社債の発行による調達の多様化など、対策を講じております。

当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費、さらには継続的な新製品開発に向けた研究開発費であります。また、長期性の資金需要は、エレクトロニクス市場における急速な技術革新や販売競争の激化に的確に対応するための設備投資やさらなる成長戦略に向けたM&A等によるものです。

資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金、金融機関からの短期借入及びコマーシャルペーパーを基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債での調達を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は752,158百万円となっております。

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループが描いた成長戦略を、財務・資本戦略はもとより、現場の施策にいたるまで有機的につなげながら、その実現を図るための取り組みの一環として業績管理フレームワークの強化を進めております。当社グループは、当社グループ独自の付加価値指標として、利払前税引後利益と各事業の事業用資産に対して最低限求められる収益(株主資本コスト)を比較するTVA(TDK Value Added)を採用しております。このTVAに結びつくロジックツリーで、各事業の収益性評価や事業資産の効率性評価、キャッシュの獲得能力の評価などを実施するとともに、現場の各種施策及び特性に合わせたKPIにまで要素分解しモニタリングします。これによって成長戦略を全社一丸となって推進していくと同時に、投資効率の管理強化により設備投資の選択と集中につなげながら、2024年3月期を最終年度とする中期3か年計画で14%以上の親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を実現できる体質の構築を目指しておりました。しかしながら需要環境が急激に変動したこと等もあり、2024年3月期については9.8%の見通しとなります。

当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度の11.6%から3.3ポイント悪化し、8.3%となりました。

前連結会計年度比でのROEの悪化要因の分析として、ROEを売上高利益率(ROS)、総資産回転率、財務レバレッジの要素に分解して検討すると、総資産回転率、財務レバレッジはおおむね横ばいに推移しており、減損等の一時費用発生によってROSが低下したためとなります。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における組織変更により、従来「その他」に属していた一部製品を「受動部品」のその他受動部品及び「センサ応用製品」に、「受動部品」のその他受動部品に属していた一部製品を「受動部品」のコンデンサ及びインダクティブデバイスにそれぞれ区分変更するとともに、前連結会計年度の数値についても変更後の区分に組替えております。

 

(受動部品セグメント)

受動部品セグメントは、①コンデンサ ②インダクティブデバイス ③その他受動部品 で構成され、売上高は575,939百万円(前連結会計年度507,826百万円、前連結会計年度比13.4%増)、セグメント利益は95,519百万円(同76,804百万円、同比24.4%増)、セグメント資産は804,150百万円(同702,979百万円、同比14.4%増)となりました。

当セグメントの売上概況を事業別にみますと、次のとおりであります。

コンデンサは、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ及びフィルムコンデンサから構成され、売上高は、239,693百万円(同198,145百万円、同比21.0%増)となりました。インダクティブデバイスの売上高は、198,481百万円(同180,239百万円、同比10.1%増)となりました。その他受動部品は、高周波部品及び圧電材料部品・回路保護部品で構成されており、売上高は、137,765百万円(同129,442百万円、同比6.4%増)となりました。xEV向けを中心とした自動車市場向け販売が好調に推移し、大幅な増収増益を達成しました。

 自動車、産業機器向けの売上構成比率が高いコンデンサ、アルミ・フィルムコンデンサ、インダクティブデバイスは増収増益を確保しました。

 一方、スマートフォンへの需要が減少した結果、スマートフォン向け売上構成比率が高い高周波部品は減収減益となりました。今後の需要動向を見据えた生産能力調整のため、構造改革費用約3億円を計上しました。

 圧電材料部品・回路保護部品は増収となりましたが、数量ベースでは販売が減少し、減益となりました。

 

(センサ応用製品セグメント)

センサ応用製品セグメントは、温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサで構成され、売上高は169,543百万円(同130,769百万円、同比29.7%増)、セグメント利益は10,726百万円(同セグメント損失281百万円)、セグメント資産は325,442百万円(同279,479百万円、同比16.4%増)となりました。

 一時費用25億円を含みながらも増収効果により収益が大きく改善し、前連結会計年度比110億円の増益となりました。

 温度・圧力センサは、自動車及び家電向けの販売が数量ベースで減少したうえ、拠点整理等の構造改革費用13億円を計上したため減益でした。

 磁気センサにおいては、ホールセンサの自動車及びスマートフォン向け新製品販売が拡大しました。TMRセンサは、自動車向け売上が堅調に推移していることに加え、スマートフォン向け販売の採用も拡大しました。磁気センサ全体では大幅増収となり、収益も大きく増加しました。収益性も向上しております。

 MEMSセンサは、需要が低調なICT市場向けの売上が減少した一方、自動車及びウェアラブル、ゲーム機向けの販売が順調に増加し増収となりました。在庫処分等による一時費用12億円も計上しておりますが、MEMSセンサ全体の収益は改善に向かっております。

 

(磁気応用製品セグメント)

磁気応用製品セグメントは、HDD用ヘッド、HDD用サスペンション、マグネットで構成され、売上高は200,573百万円(同248,446百万円、同比19.3%減)、セグメント損失は56,392百万円(同利益4,522百万円)、セグメント資産は436,910百万円(同436,787百万円、同比0.0%増)となりました。

 HDD用ヘッド、HDD用サスペンションにおいてはPC向けの需要が減少し、ニアラインHDD向けでも景気減速等の影響によるデータセンター投資が減少、HDDの在庫調整によりHDD総需要も前連結会計年度比で40%弱の減少となりました。この結果、HDD用ヘッド、HDD用サスペンションとも販売数量は前連結会計年度比で大幅に減少し大幅な減収、赤字を計上しました。HDD需要の回復にはしばらく時間がかかることを見越し、ヘッド関連事業全体(ヘッド及びサスペンション、サスペンション応用製品)で減損損失や構造改革にかかる一時費用を第3四半期連結会計期間の10億円と合わせ通期で257億円計上しました。

マグネットはxEV向け販売が増加し増収となったものの、生産性改善の遅れにより減益となり、収益改善も進まず減損損失22億円を計上しました。

 

(エナジー応用製品セグメント)

エナジー応用製品セグメントは、エナジーデバイス(二次電池)、電源で構成され、売上高は1,173,355百万円(同965,345百万円、同比21.5%増)、セグメント利益は147,389百万円(同123,212百万円、同比19.6%増)、セグメント資産は1,672,805百万円(同1,661,860百万円、同比0.7%増)となりました。

 中国スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどモバイル用途向けの販売数量が減少しましたが、スマートフォン新モデル向けの販売は増加したうえ、家庭用蓄電システム向けを中心とした中型電池の売上拡大でカバーしました。営業利益は小型バッテリーの数量減による減益影響があるものの、製品ミックスの好転や販売費及び一般管理費も含めたコスト効率化、中型電池の収益改善により増益を確保しました。なお、スマートフォン旧モデル向け専用設備52億円の除却損を計上しております。

 産業機器用電源は、半導体製造装置等の産業機器及び医療用機器向けで需要が堅調に推移し増収増益となりました。収益性も大きく向上しております。なお、EV用電源については順調に売上を伸ばしてきましたが、コスト改善の遅れや需要動向の変化による受注見込みの減少もあり、減損損失118億円を計上しました。

(その他)

4つの報告セグメントに属さないその他は、メカトロニクス(製造設備)、スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータ等で構成され、売上高は61,407百万円(同49,738百万円、同比23.5%増)、セグメント損失は434百万円(同1,432百万円)、セグメント資産は67,514百万円(同63,483百万円、同比6.3%増)となりました。

メカトロニクスは、産業機器市場向けの販売が増加しました。スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータは、ICT市場向けの販売が増加しました。