売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E01085 IFRS


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 業績の状況

 

前第3四半期
連結累計期間

当第3四半期
連結累計期間

増減率

 

百万円

百万円

売上収益

615,764

692,505

12.5

 

タイヤ

539,389

612,947

13.6

 

MB

68,576

72,920

6.3

 

その他

7,799

6,638

△14.9

事業利益

46,105

49,190

6.7

 

タイヤ

43,844

44,750

2.1

 

MB

1,735

4,372

152.0

 

その他

490

43

△91.2

 

調整額

35

25

営業利益

45,327

52,366

15.5

税引前四半期利益

51,526

60,128

16.7

親会社の所有者に

帰属する四半期利益

33,284

44,583

33.9

 

(注) 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。

 

当第3四半期連結累計期間(2023年1月1日~2023年9月30日)における当社グループをとり巻く環境は、国内では、供給制約の緩和などを背景に自動車が上昇するなど幅広い業種で改善が見られ、またインバウンド需要の回復を受けて宿泊・飲食サービスが回復するなど、景気は総じて改善傾向にあります。

一方、海外においては、米国は個人消費は堅調なるも、製造業は調整局面が長期化し、金融引き締めなどを受けた財需要の低迷を反映し、新規受注は減少しています。また、中国は春以降一転して伸び悩み、不動産開発投資やインフラ投資の低迷が重しとなり景気は減速しています。欧州は、ウクライナ情勢に改善の兆しがみられない中、エネルギー価格の高騰による原材料価格の上昇や世界的な製造業の不調を受けて外需の低迷が続いています。

こうした状況の中、当社グループは、既存事業における強みの「深化」と、大変革時代のニーズに応える新しい価値の「探索」を同時に推進し、次世代の成長に向けた「変革」を図ることを位置づけた中期経営計画「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」に取り組んでおり、当第3四半期連結累計期間の連結売上収益は、6,925億5百万円前年同期比12.5%増)、利益面では、連結事業利益は491億90百万円前年同期比6.7%増)、連結営業利益523億66百万円前年同期比15.5%増)、また、親会社の所有者に帰属する四半期利益は445億83百万円前年同期比33.9%増となりました。

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

① タイヤ

売上収益は6,129億47百万円前年同期比13.6%増)で、当社グループの連結売上収益の88.5%を占めており、事業利益は447億50百万円前年同期比2.1%増)となりました。

新車用タイヤは、中国での日系自動車メーカーの販売不振による影響があったものの、国内や北米では好調に推移し、売上収益は前年同期を上回りました。

市販用タイヤは、国内では年初の降雪により冬用タイヤの販売が堅調に推移したほか、海外では中国、アジア地域で販売を伸ばし、売上収益は前年同期を上回りました。

OHT(オフハイウェイタイヤの略)全体の売上収益は、欧州、北米では厳しい市場環境が続きYOHT(Yokohama Off-Highway Tires、旧ATG)の販売は伸び悩みましたが、5月に買収完了したY-TWS(旧Trelleborg Wheel Systems Holding AB=TWS)の業績が加わったことで、前年同期を大きく上回りました。

 

② MB(マルチプル・ビジネスの略)

売上収益は729億20百万円前年同期比6.3%増)で、当社グループの連結売上収益の10.5%を占めており、事業利益は43億72百万円前年同期比152.0%増)となりました。

ホース配管事業は、米国で米系自動車メーカーにおけるストライキの影響はあったものの日系自動車メーカー向けホースが堅調に推移したことなどから売上収益は前年同期を上回りました。

工業資材事業は、コンベヤベルトの販売が国内、海外ともに大きく伸長したほか、海洋商品も好調で、また航空部品も民間航空機向け補用品販売が好調だったことから売上収益は前年同期を上回りました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,113億66百万円となり、前連結会計年度末に比べて357億93百万円の増加となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当第3四半期連結累計期間における営業活動による資金の増加は1,003億6百万円(前年同期比969億2百万円の収入増加)となりました。

これは、主として売上債権の減少及び棚卸資産の減少によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当第3四半期連結累計期間における投資活動による資金の減少は3,361億56百万円(前年同期比2,972億88百万円の支出増加)となりました。
 これは、主として子会社取得のための支出によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当第3四半期連結累計期間における財務活動による資金の増加は2,662億77百万円(前年同期比1,998億33百万円の収入増加)となりました。
 これは、主として有利子負債の増加によるものです。

 

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

当第3四半期連結累計期間において新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題はありません。

 

(4) 研究開発活動

当社グループの研究開発は、会社の基盤技術に関する研究開発活動を研究先行開発本部が、直接商品に係る研究開発活動をタイヤ、MB及びその他の技術部門が担当となり、世界的な技術の先端に挑戦し、世界初の商品を市場に提供することで、お客様に満足いただくべく努力を重ねています。

当第3四半期連結累計期間における研究開発費の総額は、130億1百万円であります。

 

当社研究先行開発本部においては、環境貢献企業における研究部門として、精緻でかつ高度な分析・解析技術をベースに物質構造や反応機構等の解明による新素材開発やシミュレーション技術の開発を行い、環境にやさしいタイヤ材料の開発や電子材料用素材・省エネルギー関連への適用技術の開発などを中心に技術の先端に挑戦しています。

研究先行開発本部の当第3四半期連結累計期間における研究開発費の金額は、7億11百万円であります。

 

・信州大学と劣化なくリサイクル可能な高分子微粒子から亀裂が進みにくいゴム材料を開発

信州大学学術研究院(繊維学系)の鈴木大介准教授らの研究グループと共同で、高分子微粒子※1を活用し有機溶剤や補強剤などの添加剤を使わずに、亀裂(クラック)に対して高い耐久性を有するゴム材料を開発しました。本研究で得た知見をもとにさらに研究を進めることで、人や環境にやさしく、より安全で耐久性の高いタイヤやゴム製品の開発に繋げることが期待できます。また、開発したゴム材料は簡単に劣化なくリサイクルすることが可能であり、サーキュラーエコノミーへの貢献も期待できます。

この微粒子フィルムは超分子化合物※2として知られるロタキサン分子※3を微粒子の内部に架橋剤として導入することで、補強剤などその他の添加剤を一切使用せずに、切れ目から亀裂が広がりにくい性質を持たせることに成功しました。また、この微粒子フィルムはゴム材料としての高い伸縮性も維持しています。

さらに、微粒子フィルムは環境負荷の小さい水とエタノールの混合溶媒に浸すだけで微粒子個々に分解することができます。その後、揮発性の高いエタノールのみを蒸発させて元の微粒子と水から成る分散水溶液に戻すことができるため、同じ微粒子フィルムを簡単に劣化なく再生することが可能です。

なお、本成果は米国化学会のLangmuir誌に掲載されました。

※1:高分子微粒子とはマイクロスケール(1マイクロメートル=100万分の1メートル)より小さい高分子の粒子。

※2:複数の分子が比較的弱い相互作用によって秩序高く会合して形成される分子集合体。分子を集合させることで、分子の機能を制御したり、新機能を発現することができる。

※3:ロタキサン分子は環状分子に軸分子が貫通し、その環状分子が軸分子から抜けないようにした構造を有する分子集合体。

 

  当第3四半期連結累計期間におけるセグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。

 

1)タイヤ

既存事業における強みの「深化」と、大変革時代のニーズに応える新しい価値の「探索」を同時に推進し「YX2023」の次世代の成長に向けた「変革」を図ることを目標とし以下のような活動をしました。

当第3四半期連結累計期間における研究開発費の金額は、108億53百万円であります。

 

①キャンピングカー専用タイヤ「BluEarth-Camper」を新発売、CP規格適合サイズをラインアップ

2023年3月に、高荷重に対応し、高い耐久性と操縦安定性を両立した当社初のキャンピングカー専用タイヤ「BluEarth-Camper(ブルーアース・キャンパー)」を日本国内で発売しました。

キャンピングカーは高荷重、高重心の車両特性による運転時のふらつきなどが発生しやすく、それに対応するタイヤ商品がキャンピングカーユーザーより求められており、「BluEarth-Camper」はその要望に応えるためキャンピングカー専用タイヤとして開発し、高い耐久性と操縦安定性を両立しています。さらに雨の日の運転にも配慮し、優れたウェット性能を実現しています。構造には専用設計を採用し、トレッド全体にベルトカバーを配置したフルカバー構造とし、ベルト部の耐久性を向上させています。ビードフィラーには低発熱のコンパウンドを採用し、負荷時の発熱を低減することにより高荷重への耐久性を高めました。トレッドパターンには実績のある、雨に強い「BluEarth-Van RY55」の技術・デザインを採用し、高硬度のキャップコンパウンドを組み合わせることで、運転時のふらつきの抑制と優れた操縦安定性を実現します。また、タイヤサイドにはキャンピングカーにふさわしく雄大な山岳をモチーフにしたデザインを施し、キャンプやアウトドアをイメージさせる外観に仕上げました。

 

 ②商用ピックアップトラック向けオールテレーンタイヤ「GEOLANDAR A/T XD」を北米と豪州で発売

2023年3月に、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR(ジオランダー)」の新商品として、フルサイズピックアップトラックなど商用車両向けのオールテレーンタイヤ「GEOLANDAR A/T XD(ジオランダー・エーティー・エックスディー)」を北米とオーストラリアで発売いたしました。

「GEOLANDAR A/T XD」は鉱業や農作業などの現場で用いられる商用車両向けに、過酷な使用環境に耐える性能を備えたオールテレーンタイヤです。開発にあたっては耐久性に主眼を置きつつ、オフロードや雪上などでの悪路走破性、ロングライフ性能を追求しました。冬用タイヤとして認められた証「スノーフレークマーク」を取得しており、冬季の使用にも対応します。

 

③EVバスでタイヤソリューションサービスの実証実験を開始

2023年3月より、当社が開発したタイヤ内面貼り付け型空気圧センサーとタイヤ空気圧遠隔監視システム(Tire air Pressure Remote access System=TPRS)のEVバスでの実証実験を神奈川中央交通㈱の協力の下、開始しました。同実験は神奈川中央交通㈱が神奈川県平塚市で運行しているEVバスを使用しています。

当社は輸送事業者向けのタイヤソリューションサービスとして、タイヤ空気圧モニタリングシステム「HiTES(ハイテス)」とタイヤ運用を総合的にサポートするタイヤマネジメントシステム「T.M.S(ティーエムエス)」を展開しています。今回、すでに乗用車向けとしてカーシェアリング事業者やタクシー事業者と行っている実証実験を初めてEVバスで行い、EV車両に求められるエネルギー消費の効率化と「TPRS」の精度向上の効果を検証します。

車両のEVシフトが世界的に本格化する中、高レベルな燃費(電費)性能、耐久性、静粛性がタイヤに求められるEVバスで実施することにより、EVバスにおいても経済性や安全性の向上、効率的なタイヤ運用に貢献できるソリューションサービスの確立を目指します。併せてEVバスに対応するタイヤ開発にも活かします。

 

 ④EV 専用ウルトラハイパフォーマンスサマータイヤ「ADVAN Sport EV」を発売

2023年秋頃より、EV専用ウルトラハイパフォーマンスサマータイヤ「ADVAN Sport EV(アドバン・スポーツ・イーブイ)」を、欧州などで順次発売します。

「ADVAN Sport EV」は、当社のハイパフォーマンスカー向けタイヤである「ADVAN Sport V107(アドバン・スポーツ・ブイイチマルナナ)」をベースに、EV をはじめとした電動車の代表的なニーズである「低電費」「静粛性」に応えるべく開発した、プレミアムEV 向けウルトラハイパフォーマンスサマータイヤです。当社はすでにBMWやメルセデスAMGなどのプレミアムEVを含む様々な電動車向けに新車装着(OE)用タイヤを納入しており、「ADVAN Sport EV」にはそれらの開発で培った技術を惜しみなく投入しています。

「低電費」については、OEタイヤ開発で実績のある低転がり抵抗のコンパウンドを採用することで航続距離の拡大に貢献します。また、ウェット性能も高い次元で両立しており、濡れた路面での安全性を提供します。「静粛性」については、専用設計のポリウレタンフォーム「SILENTFOAM(サイレントフォーム)」をタイヤの内面に貼り付けることで、走行時に路面の凹凸により発生する空洞共鳴音を低減し、不快なノイズを減らすことで快適な車内空間を作り出します。タイヤサイドには「SILENTFOAM」の刻印を施しています。

 

<YOHT>

革新、技術、低コスト生産により、商品のライフサイクルを通じて最も安いコストで最高の価値をお客様に提供するべく活動をしております。

1)各種展示会への出展

2023年1月から3月にかけては、世界最大規模の建設機械展示イベントであるCONEXPO-CON/AGG(コネクスポ-コン/アグ)への出展や各種プレスイベントの企画、開催等を通じて、製品及びサービスを理解していただく場を設けました。

2023年4月から6月にかけては、スウェーデンで行われる林業博覧会SWEDISH FORESTRY EXPO2023(スウェーディッシュフォレスト―リーエクスポ2023)への出展、その他各種プレスイベントの企画、開催等を通じて、製品およびサービスを理解していただく場を設けました。

2023年7月から10月にかけては、北米最大級の屋外農機展FARM PROGRESS SHOW 2023(ファームプログレスショー2023)への出展や各種プレスイベントの企画、開催等を通じて、製品およびサービスを理解していただく場を設けました。

 

2)新商品の発売

多くの商品を市場に投入し販売拡大に努めており、商品のサイズラインナップ拡充を行いました。

 

2)MB

「成長性・安定性の高いポートフォリオへの変革」をテーマに掲げ、安定収益の確保を目指した技術開発を積極的に行いました。

当第3四半期連結累計期間における研究開発費の金額は、12億7百万円であります。

 

<工業資材事業>

①耐熱性コンベヤベルトとして好評を博している「HAMAHEAT」シリーズから高温耐熱性コンベヤベルト「HAMAHEAT Super 80(ハマヒート・スーパーハチジュウ)」を発売

高温耐熱性ベルトの主要業種は鉄鋼やセメントであり、焼結鉱※1やコークス※2、焼結成品※3、クリンカー※4など高温または中温の物質を運搬する用途で使用されます。搬送物の温度や環境温度などの使用条件によりベルト表面の温度は上昇し、ベルトが劣化することで寿命が短くなるため、以前より熱によるベルトの劣化を防ぐ商品が求められていました。

「HAMAHEAT Super 80」は、高温耐熱性が非常に高く評価されている「HAMAHEAT」シリーズのハイグレード商品「HAMAHEAT Super 100」をベースに、より使用条件に合わせて性能を最適化し、コストパフォーマンスに優れた商品の提供を目指して開発したミドルグレード商品です。耐熱老化特性及び耐摩耗性能に優れ、許容ベルト表面温度180℃までの高温搬送物、特にセメントのクリンカー搬送用途に最適なコンベヤベルトです。

※1:粉状にした鉄鉱石に粉コークスと石灰石を混ぜ一定の大きさに焼き固めた物

※2:石炭を高温で蒸し焼きにして抽出した物

※3:金属やセラミックスの粉末を成形し融点より低い温度で焼き固めた物

※4:石灰石などをキルンで焼成して作るセメント原料であり、鉱物などが焼き固まった物

 

②中温耐熱性と難燃性を兼ね備えた難燃中温耐熱性コンベヤベルト「FLAME GUARD #2110(フレイムガード・ニセンヒャクトオバン)」を発売

耐熱性と難燃性を両立した難燃耐熱性ベルトとしては、2021年に発売した難燃高温耐熱性ベルト「FLAME GUARD Super 100(フレイムガード・スーパーヒャク)」に続き、第2弾商品となります。

近年、焼結鉱※1やコークス※2、焼結成品※3など高温または中温の物質を運搬するコンベヤベルトは、熱によるベルトの劣化を防ぐ耐熱性に加えて、安全性をより高めるため、ベルトの燃焼を防ぐ難燃性(自己消火性)を有する商品のニーズが高まっています。横浜ゴムはこうしたニーズに応えるため、様々な耐熱性ベルトや難燃性ベルトを生み出してきたゴム配合技術を駆使し、中温域において両性能を併せ持つ「FLAME GUARD #2110」を開発しました。

「FLAME GUARD #2110」は、国内外で中温耐熱性が高く評価されている耐熱性コンベヤベルト「HAMAHEAT #2110」をベースに開発した商品です。耐熱性能は「HAMAHEAT #2110」と同様の運搬物温度70~200℃(塊状:70~200℃、粉状:70~150℃)、許容ベルト表面温度60~100℃を確保しながら、日本産業規格(JIS)のJIS K6324:2013 難燃性コンベヤゴムベルト3級の難燃性を実現しています。

※1:粉上にした鉄鉱石に粉コークスと石灰石を混ぜ一定の大きさに焼き固めた物

※2:石炭を高温で蒸し焼きにして抽出した物

※3:金属やセラミックスの粉末を成形し融点より低い温度で焼き固めた物

 

上記のほか、ゴルフクラブ等のスポーツ用品にかかる研究開発費が2億30百万円あります。

 

(5) 従業員数

第2四半期連結会計期間においてTrelleborg Wheel Systems Holding ABを買収したこと等により、当第3四半期会計期間末日の連結ベースでの従業員数は、前連結会計年度末に比べ5,106名増加しております。