売上高

利益

資産

キャッシュフロー

配当(単独)

ROE

EPS BPS




E01971 IFRS


2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。

(1)財政状態及び経営成績の状況

①経営成績の状況

 当第3四半期連結累計期間の世界経済は、WHOが新型コロナの感染拡大を受けて発出した「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を終了し正常化に向けて歩み始めたかのように見えたものの、楽観視できない状況が続いています。米欧においては長引く物価高を抑え込むための更なる金融引き締めが、また中国においては経済活動の再開に伴うリバウンド需要の一巡後に顕在化した不動産市況の悪化が、それぞれ景気回復の重しになっています。金融政策においては、米欧で更なる引き締めが進む一方で中国では緩和が行われた中、日銀が長短金利操作の運用を柔軟化しつつも大規模な金融緩和を維持したこと等により、米ドル、ユーロ、人民元の全てに対し年初から円安が進行しました。

 電子部品業界は、PC、スマートフォンやタブレット端末等の家電関連の需要が引き続き低迷しており、主に台湾メーカーの生産回復の遅れとなって現れるなど、影響が出ています。この中で、車載市場では半導体の供給が大幅に改善し、全世界的に完成車生産が回復局面に入っています。過去数年間に亘る供給制約が解消に向かう中、米欧、日本といったペントアップ需要が旺盛な地域を中心に自動車販売台数が増加しています。一方で、米欧の政策金利上昇が自動車ローン金利の上昇に波及していること、また、全米自動車労働組合が労使交渉で合意に至らずストライキを決行していることの影響にも注意が必要です。EV/xEVについては、最大の市場である中国でやや減速感はあるものの依然として力強い成長を見せていることや、米欧でも着実に成長していることから、世界全体での成長トレンドが継続しています。また、EV/xEVの普及に重要な役割を果たす充電ステーションについても、規格を統一する動きが出てきており、充電インフラの整備が進む上での追い風になると見ています。

 こうした中、当社グループではEV/xEV関連を中心とした受注済み案件の生産立ち上げ及び新規案件の獲得を進めました。特に、製品設計、生産技術及び品質管理などの領域における専門性の高い技術者を中心に拠点間の往来を再開しつつあり、設計拠点と生産拠点とが異なる製品の量産を確実に行うための体制づくりを進めています。生産においては、継続的な設備投資の実行、量産製品の生産効率向上及び品質水準の向上など、付加価値を高める不断の活動を進めています。

 当第3四半期連結累計期間における当社グループの業績は以下の通りです。

 売上収益は家電関連のパソコン、スマートフォン向けが伸び悩んだものの、車載関連でEV/xEV向けの受注が好調に推移し、また、インダストリー関連における太陽光発電設備向けも堅調に推移しました。また、前第3四半期連結累計期間と比較して、円に対して米ドル高、ユーロ高、人民元高で推移したことも円建ての売上収益増に寄与し、前第3四半期連結累計期間比9.9%増の110,933百万円でした。

 当第3四半期連結累計期間は前第3四半期連結累計期間と比較して、経費の増加があったものの、為替変動、売上収益増及び生産効率の向上が増益要因となりました。加えて、一時的要因として、車載市場向け製品の品質補償に係る引当金をその他の営業費用に認識したこと等により、営業利益は前第3四半期連結累計期間比38.6%増の7,415百万円でした。また、支払利息等による金融収益/金融費用の影響が1,945百万円のマイナスであったこと等から、税引前四半期利益は同29.3%増の5,469百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同43.8%増の4,362百万円でした。

 

◎参考:営業利益の増減要因分析(2023年第3四半期会計期間 vs 2022年第3四半期会計期間)

※画像省略しています。

 

◎参考:期中平均為替レート

 

2022年第3四半期

連結累計期間

2023年第3四半期

連結累計期間

米ドル/円

125.86

137.24

ユーロ/円

135.10

148.63

人民元/円

19.17

19.53

 

当社グループは、2021年初頭に策定した中期経営計画において、経営基盤を強化する方策として脱炭素関連のアプリケーションに注力することを掲げました。具体的には、車載関連市場におけるEV/xEV向けアプリケーションでマーケットリーダーになることを目指し、2023年に売上全体に占めるEV/xEV関連の割合を20%以上にすることを目標にしています。EV/xEV関連の売上推移は以下の通りです。

 

◎参考:EV/xEV関連売上                            (単位:百万円)

連結会計期間

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

2021年

2,786

3,189

3,191

3,846

2022年

4,429

5,886

7,684

7,335

2023年

6,464

7,094

6,935

-

 

 

(市場別の概況)

当第3四半期連結累計期間における市場別の概況は次の通りです。

1) 車載関連

 世界的な半導体不足、サプライチェーン(供給網)混乱が緩和したことにより新車生産台数が伸び、更にEV/xEV向け売上も好調に推移しました。車載関連の売上収益は前第3四半期連結累計期間比7.7%増の63,960百万円でした。

2) インダストリー関連

 脱炭素化およびウクライナ情勢を受けたエネルギー保障の動きから欧米の太陽光発電設備向けや急速充電設備向けが堅調に推移しました。インダストリー関連の売上収益は前第3四半期連結累計期間比46.0%増の30,482百万円でした。

3) 家電関連

 ノートパソコンやタブレット端末、スマートフォン等の需要が引き続き弱含みで推移しました。家電関連の売上収益は前第3四半期連結累計期間比20.2%減の16,490百万円でした。

(単位:百万円)

 

2022年第3四半期

連結累計期間

2023年第3四半期

連結累計期間

増減率(%)

車載市場

59,408

63,960

7.7

インダストリー市場

20,880

30,482

46.0

家電市場

20,668

16,490

△20.2

 

(報告セグメントの状況)

当第3四半期連結累計期間における報告セグメントの状況は次の通りです。

1) アジア・パシフィック事業

 アジア・パシフィック事業では、車載関連およびインダストリー関連の売上が堅調に推移したものの、家電関連の売上が大きく落ち込んだことから、売上収益は前第3四半期連結累計期間比1.0%減の72,611百万円でした。前第3四半期連結累計期間に比べ米ドル高/円安であったことから現地通貨ベースでの売上はほぼ横ばいとなりましたが、不断の生産効率改善に加え、サプライチェーンが正常化に向かう中での原価低減等が寄与し、セグメント利益は同12.4%増の5,023百万円でした。

2) EU事業

 EU事業では、新車生産台数に回復が見られる中、EV/xEV関連を中心に車載関連売上が順調に伸び、また、太陽光発電設備向けや急速充電設備向けなどのインダストリー関連売上が大きく伸びたことから、売上収益は前第3四半期連結累計期間比36.4%増の45,464百万円でした。増収効果に加え、前第3四半期連結累計期間に比べユーロ高/円安で推移したこと等から、セグメント利益は同106.5%増の3,191百万円でした。

 

②財政状態に関する説明

(資産)

 当社グループは、第2四半期連結会計期間において新株式発行により6,698百万円(調達コスト控除後)を調達しました。調達した資金は設備投資に充当する計画で、具体的には、EV/xEV関連の新製品対応及び生産効率向上、車載関連市場における既存製品の増産および新製品対応、インダストリー関連市場および家電関連市場の顧客需要に対応する工場移転および増床、並びに家電関連市場における新製品対応及び生産効率向上を目的としています。この新株式発行による調達額は、そのまま資産および資本の増加として現れます。当第3四半期連結会計期間末における資産合計は149,591百万円で、前連結会計年度末比14,744百万円増加しました。新株発行により調達した資金と、前連結会計年度末より累積した利益に加え、円安により外貨建て資産の換算額が大きくなったことも資産増加の一因です。なお、当社の保有する資産の約91%は外貨建てです。

 流動資産は6,134百万円増加しました。新株式発行による資金調達を中心に現金及び現金同等物が増加したこと等によります。

 非流動資産は8,610百万円増加しました。生産設備及び工場の生産能力拡充のため有形固定資産及び使用権資産が増加したことによります。なお、当社グループの有形固定資産のうち約95%が国外の有形固定資産です。

 当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は6,439百万円でした。第2四半期連結会計期間末においては、新株式発行により調達した資金が現金及び現金同等物のまま残っていましたが、順次設備投資に充てられています。手元資金をはじめとする流動性管理については、国内外連結子会社各社に資金が滞留することにより資金効率が低下するリスクに鑑み、主要子会社の最低手持資金額を設定し毎月その設定額と実際手持資金とを比較することで、グループ全体での余剰資金を削減し借入金の圧縮に努めています。また、3ヶ月先までのローリング・フォーキャストを毎月実施しています。

 

(負債)

 当第3四半期連結会計期間末における負債合計は85,873百万円となり、前連結会計年度末比95百万円減少しました。1年内返済予定又は償還予定の長期有利子負債、短期有利子負債等が減少したことから、流動負債が5,935百万円減少しました。他方、長期有利子負債、リース債務等が増加したため、非流動負債が5,839百万円増加しました。

 当第3四半期連結会計期間末におけるネット有利子負債残高は45,090百万円で、前連結会計年度末から5,599百万円減少しました。当第3四半期連結会計期間末のネットDEレシオは0.73倍で、前連結会計年度末から0.35ポイント低下しました。当第3四半期連結会計期間末現在、短期有利子負債(1年内返済予定又は償還予定の長期有利子負債を含む)の残高は30,074百万円で、長期有利子負債の残高は21,455百万円です。なお、当社グループの借入金のうち約58%が変動金利、約42%が固定金利によるものです。

 当社グループでは、主要な銀行と定期的にミーティングを行い、良好な関係を築いています。銀行団のオープン・コミットメントラインは110億円を維持しており、これら全てが未使用です。

 当社の保有する資産のうち大部分が外貨建てであることに対応し、為替の影響を少なくするため、現地通貨での調達を増やしています。外貨建て借入金の割合が借入金全体の約90%を占めています。主要通貨別の構成比は以下表の通りで、借入金の平均金利は3.9%です。

 

◎参考:銀行団のオープン・コミットメントライン

  ※画像省略しています。

 

◎参考:借入金の主要通貨別構成比

 

2023年第3四半期

連結会計期間末

米ドル

30.2%

ユーロ

32.9%

人民元

21.4%

9.7%

その他

5.8%

 

(資本)

 当社グループは、第2四半期連結会計期間において新株式発行により6,698百万円(調達コスト控除後)を調達しました。この新株式発行による調達額は、そのまま資産および資本の増加として現れます。当第3四半期連結会計期間末の資本合計は63,718百万円で、前連結会計年度末から14,840百万円増加しました。新株式発行に加え、四半期利益の計上、また在外営業活動体の換算差額の変動を主要因としたその他の包括利益の計上等により、親会社の所有者に帰属する持分合計は61,426百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の34.7%から、当第3四半期連結会計期間末に41.1%となりました。また、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末の1,722円から、当第3四半期連結会計期間末は1,882円となりました。

 

◎参考:期末為替レート

 

2022年12月期末

2023年第3四半期連結会計期間末

米ドル/円

131.71

148.77

ユーロ/円

140.57

157.97

人民元/円

18.91

20.40

 

③キャッシュ・フローの状況

 当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は6,439百万円で、前連結会計年度末比3,494百万円増加しました。

 当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は次の通りです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は13,650百万円(前第3四半期連結累計期間は5,374百万円)でした。税引前四半期利益5,469百万円、減価償却費及び償却費6,792百万円等によるものです。

 当社グループでは運転資本をモニターするKPIとしてCash Conversion Cycle(CCC)を採用しています。当第3四半期連結会計期間末のCCCは101日で、前連結会計年度末から5日短くなりました。

 当社グループはB-to-Bビジネスを営んでいるため、DSO(売上債権回転日数)の短縮、つまり営業債権の回収期日の短縮は顧客からの値引き交渉に繋がりえます。同様に、DPO(仕入債務回転日数)についての取り組みも仕入先からの値上げ交渉に繋がりえます。従って、DIO(在庫回転日数)の管理が現実的な取り組みとなっています。DIOはサプライチェーンの混乱等のため顧客から納品の先延ばし要請を受けた影響で2022年6月末時点で116日まで伸びました。その後、地域別、会社別に毎月モニタリングを実施し棚卸資産を減らす取り組みを行い、前連結会計年度末には92日まで短縮しました。引き続き棚卸資産を減らす取り組みを継続しており、当第3四半期連結会計期間末のDIOは89日でした。

 売上債権回転日数は73日、仕入債務回転日数は61日でした。

 

 

実績(日)

増減

(日)

計画(日)

2022年

連結会計年度

2023年第3四半期

連結累計期間

2023年

連結会計年度

DSO(売上債権回転日数)

78

73

△5

78

DIO(在庫回転日数)

92

89

△3

80

DPO(仕入債務回転日数)

64

61

△3

64

Cash Conversion Cycle

106

101

△5

94

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により支出した資金は7,250百万円(前第3四半期連結累計期間は6,141百万円)でした。

 当社グループでは、顧客からの受注に基づき設備投資をしています。設備投資については、新製品、増産、生産効率改善、更新と目的別に計画を立て、規模の大きい設備投資については、NPV分析、モンテカルロシミュレーション等の手法を採用し、その採算性について検討後、実施を決定しています。当第3四半期連結累計期間はEV/xEVを中心とした新規設備投資案件等により、有形固定資産の取得による支出は6,599百万円でした。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により支出した資金は3,286百万円(前第3四半期連結累計期間は548百万円)でした。第2四半期連結会計期間に実施した新株式発行により調達した資金がある一方で、ビジネスが好調なことにより得られたフリー・キャッシュ・フローの一部を借入金の返済に充てています。有利子負債が6,890百万円純減したことによる支出に加え、配当金の支払額1,646百万円、リース債務の返済による支出1,277百万円等の支出がありました。

 当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常にめざし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に進めています。成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金は、主に手元の現金と営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入等により調達しています。

 

(単位:百万円)

 

2022年第3四半期

連結累計期間

2023年第3四半期

連結累計期間

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

5,374

13,650

8,276

投資活動によるキャッシュ・フロー

△6,141

△7,250

△1,109

財務活動によるキャッシュ・フロー

△548

△3,286

△2,738

現金及び現金同等物に係る換算差額

635

380

△254

現金及び現金同等物の増減額

△679

3,494

4,174

現金及び現金同等物の期首残高

4,237

2,944

△1,292

現金及び現金同等物の四半期末残高

3,558

6,439

2,881

 

(2)経営方針・経営戦略等

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等については、有価証券報告書(2023年3月24日提出)の記載から重要な変更はありません。

 

(3)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題については、有価証券報告書(2023年3月24日提出)の記載から重要な変更又は新たな発生はありません。

 

(4)研究開発活動

 当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の総額は3,728百万円です。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。